人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
男らしさとは力である。
男は私的な集団である家族に物理的、社会的、文化的な枠組みを与えてくれる。
男は守り、養う存在で、リスクを恐れず冒険心に富み、必要なものを造っていける存在だ。
女らしさとは愛し愛される事である。
女性の心には夫と子供の世話をする本能が宿っていて、その見返りに愛情が男に要求される。
女性は体に血液を循環させる心臓のように家族に愛を巡らせる事が出来る存在なのだ。
その愛を男に一押しさせるために必要なものこそが彼女達の愛という自己犠牲。
夫と子供、家庭への献身という愛情こそが女性を女性らしくしてくれる。
男が力を求め、女が愛を求める生き物ならば
女性は男性を信頼して自分が持っている愛を差し出す。
女性は男性への信頼によって愛情を表現し、男性はその信頼に応える契約関係を結ぶ事になる。
男性が女性の信頼を裏切れば契約関係は崩れ、力を失う事になるだろう。
女性は男性のリーダーシップを受け入れる代わりに真に求めているものを手に入れる。
それこそが愛した女性への忠実な愛情と男性の力。
女性は男性的な力に憧れをもつ生き物。
それは男性こそが与えるべきだとしたものこそが古来から続く道徳観。
舵の無い
船の無い
男女は協力し合う事によってはじめて厳しい社会で生きていく事が出来る。
それこそが唯一神から楽園を追放された男女が生き残る事が出来た原点の在り方。
陽と陰が描く陰陽太極図であり、強固なハニカム構造をした六芒星であろう。
伝統的な男女の役割分担が抑圧的、男尊女卑だなんて大間違い。
「…以上が、今の神浜魔法少女社会で起きている問題の報告よ」
暖炉前に置かれた高級家具に座っているのはペレネルであり、後ろには護衛のタルトがいる。
ペレネルに内偵報告を行っているのはリズであろう。
暖炉の灯りに照らされた眼鏡を指で押し上げた後、ペレネルは憂いの表情を浮かべる。
「フェミニズムに汚染され尽くした欧米だけでなく…この国まで汚染されていたというわけね」
「マスター、フェミニズムとは何ですか?私は神学者なので政治には疎いです」
タルトの疑問に対し、ペレネルは手短に説明を行ってくれる。
それと同時にフェミニズムによって欧米が深刻な社会汚染に晒されている事も語ってくれる。
「欧米の女性は
性的な話題になってしまったが、感情が殆どない造魔達は気にせず質問してくる。
「何故…そのような心理的な病気になったのでしょうか?」
「不感症を患う女はフェミニズム的な精神をもつ…そのため
「一種の発達障害ですね…その原因は何処からきているのでしょうか?」
「フェミニズムによって女らしさを失った弊害よ。それで肉体的にも精神的にも満足出来ない」
ペレネルは出版されたが政治的に正しくないと言われて絶版にされた精神科医の書籍を語る。
医師によると
夫と子供を第一に考える事で力が湧き、自己を表現していけるのだそうだ。
性的満足や精神的豊かさも
「男性と女性は元来異なる生き物。男は外的支配を行い、女は精神支配と家庭の支配を司るわ」
「フェミの理屈では、それが男社会の抑圧だと言っているようね。神浜の子もそう言ってたわ」
「私は中世から生きてきた者よ。昔の男女関係を知る者として、フェミが嘘つきだと分かるわ」
「マスターもニコラスさんを夫に迎えて男女の婚姻を果たした魔法少女でしたね」
ニコラスの事を言われたペレネルは溜息をついた後、暖炉に振り向く。
暖炉で燃える炎の灯りに眼鏡を照らしながら過去を語ってくれたようだ。
「夫と別れた頃から私も女らしさを失ったと思う…ビジネス世界に行ってから顕著に表れたわ」
ペレネルは錬金術師だけでなくキャリアウーマンとしても大成功を収めた資産家。
しかしビジネス世界で活躍すればする程に女らしさを失ってきたという。
「女性はビジネスとは違う存在だわ。全く別の務めを果たすように出来ている…私の経験談よ」
「神様が与えた役目ですね…男は労働の苦しみを、女は産みの苦しみを運命づけられました」
「唯一神から与えられた使命を否定した弊害を女性は味わう…女のアイデンティティを失うの」
ペレネルはフェミニズムによって巻き起こる異性愛社会の崩壊を危惧している。
現代の女性はもはや女として男から必要とされないまでに落ちぶれていると考えるのだ。
「産業革命前は家族が生の基盤だった…女は育児を行い服と食事を用意して農作業を手伝った」
「産業革命が起きてから…女性はどのように変化していったのでしょうか?」
「子供が重荷になったのよ。必要な物は何でも店で買え、家庭は閑散とした場所に変質したわ」
「子供は学校に行き、夫は仕事に出る。妻の女は家庭に独り取り残されてきたというわけね」
「…これに対抗するために女性が選んだものこそ、女らしさに反旗を翻す事だったのよ」
フェミニズム声明的な著書の中にはこのような言葉がある。
女性は男性とまったく同じである。
女性が自分の中の男性的な部分を引き出していくべきだと訴える内容だ。
「フェミニズムの教条は女性の特質や欲求を完全に否定し、男と同じを目指せとあるわ」
「産業革命に対する反動こそが…フェミニズムだったのですね」
「その反動はもう一つあるの。ヴィクトリア派がその一つね」
英国のフェミニズム運動はヴィクトリア時代の初期から第一次大戦までの間に猛威を振るう。
ヴィクトリア派の女性は自分達の性的感情を完全否定する事で男性に報復してくる。
彼女達の主張を大多数の男が信じ込み、科学者でさえ不感症は女性の本質だと考えてしまう。
「こうしてフェミニストとヴィクトリア派によって現代女性の神経症の素地が作られたわ…」
「基本的な女性教育において…生物学的、精神的な女性の理想像が完全否定されたのね…」
「大勢の女性達がそれに感化されてしまうなど…神様はどれ程の怒りを感じられたのでしょう」
家事、出産、育児、料理、忍耐、情愛、男への献身が貶められてきた近代歴史がある。
それは唯一神が楽園から追放した原初の男女に与えた運命を完全否定する事と同じであろう。
その光景はある意味、原初の男性であるアダムへの復讐の光景とも思えてくる。
「それまで目指してきた女性の生き方に、男性の目指す生き方が取って代わる…
「異性愛社会の未来は女に滅ぼされる…その光景の一端を私は神浜の魔法少女社会で見たわ…」
「百合の間に男が挟まりに来る…だから男を排除する。まさにフェミニズムの理想的な行動ね」
「そのような社会で生きるしかない女性は神様の幸せを得られません…孤独になっていく…」
「今までの私のようにね。キャリアウーマン…聞こえは良くても
タルトは神学者であるため、その光景が聖書の創世記で語られた女性存在と合致すると考える。
その女性は悪魔となり、アダムとエヴァを憎み血筋から生まれる新生児を殺戮する者となる。
「
「リリスの理想社会そのもののように私も感じるわ…資本主義社会こそ悪魔の理想世界よ…」
ペレネルが語った男女の逆転。
それこそがイルミナティを操る支配的存在でもあるリリスの悲願の光景でもあるのだろう。
重苦しい沈黙が場を支配する。
そんな時、車の音が外から聞こえてきたためタルトは窓を開けて来訪者の存在を確認する。
「尚紀のようです。マガタマの修復がどれぐらい進んだのかを見にきたのでしょう」
「急いではいないと言ってくれたのだけど…必要とする程の事態になったのかしら?」
「それも踏まえて、色々話を聞いてみる必要があるわね」
3人は尚紀を出迎えるために玄関へと移動していく。
その光景を静かに見つめているのは屋敷の屋根の上に立つキュウベぇ。
彼はイギリスのインキュベーター個体からの情報を転送してもらった後、こんな言葉を残す。
「フェミニストとヴィクトリア派の男性憎悪は母から娘に受け継がれ、多くの願いを生んだよ」
その望みとは大勢の女性にとって異性を敵視する憎しみを叶える願い。
それによってどれ程のフェミニスト魔法少女を生んだのかは計り知れない。
「彼女達の望みは受け継がれ、現代女性にも継がれてきた。根底には男性への憎しみがある」
明るい家庭を献身的に支える妻という男性の理想に賛同するフリをする事はある。
だがそれは単なるリップサービスに過ぎないとキュウベぇは語っていく。
内心ではそのような役目に強い不快感を覚え、男性は基本的に敵であり搾取する存在だと憎む。
心の奥底では男性に取って代わり、役割を逆転させたいという願望を持っている。
その事に自覚すらもたない女性も多いのだと語ってくれる。
「魔法少女達はフェミニズムによって自分達は救われると信じた。けど、
女性は不感症になり、情緒不安定になって離婚率が跳ね上がる。
ノイローゼや同性愛、若者の犯罪も増えたという。
「全ては女性が真の役目を放棄した結果さ。これもまた、僕達の主神の天罰であり…」
――精神を司る感情的な女性達の、
原因があるから結果が起こる。
これもまた女性達が起こした因果。
故に
自らの選択によって破滅していく因果からは逃れられないとインキュベーターは言葉を残した。
♦
自室にあるベットの上で三角座りをしながら顔を膝に埋めているのはレナである。
隣には落ち込んだ表情をしながら机の前に座るかえでもいるようだ。
「…レナちゃん、もう直ぐ高校進学の受験でしょ?勉強…しなくていいの?」
「今のレナ…そんな気分になれないからいい。勉強の手伝いに来てくれたのに…悪いわね」
「ううん…いいの。本当はね…勉強の手伝いよりも…謝りに来たかったんだ」
かえでの脳裏に浮かぶのは人間の守護者として立ちはだかった人修羅との戦いの記憶。
あの時、かえではももことレナを止める事が出来ずに無意識バイアスという偏りに陥っている。
周りに流され、勇気が無い自分の保身を優先するように付和雷同になった罪の記憶が蘇る。
「私…結局は魔法少女という女の子を優先したかっただけだと思う。止められなくて…ごめん」
「いいのよ…レナだって…レナやももこ達…それにさゆさゆが一番可愛かっただけなのよ…」
過ちを繰り返してしまう愚かな自分への怒りの感情によって、レナの両目に悔し涙が浮かぶ。
彼女は右腕で涙を拭った後、かえでに顔を向けてくれる。
「レナ…泣かないから。今回のレナ達が起こした騒動の中で一番辛かったのはももこだから…」
「私…ももこちゃんに頼り過ぎてたんだね…苦しみに気づいてあげられなかった…」
「レナも同じよ…ももこはいつだってレナを守ってくれた…だからレナも…甘え過ぎてたわ」
「本当のももこちゃんは私やレナちゃんと同じだった…か弱い女の子でいたかったんだね…」
そんなももこを追い込む原因を作ってしまったことを仲間達は激しく後悔する。
それでも繰り返したくない感情が再び湧いてきたレナとかえでは誓うのだ。
「もう…ももこに無理はさせない。日常生活だって…今度はレナがももこを守ってあげるわよ」
「私だって気持ちは同じ!私は臆病だけどレナちゃんと一緒だったらももこちゃんを守れる!」
「力を合わせてももこを支えていきましょう。あんなにも辛そうなももこは…見たくないから」
「やっぱり私達はチームワークだね♪足りない部分を補い合うから…人間関係は築けるんだよ」
「今回の騒動でレナもそれを学べたわ。男社会だって…レナ達の足りない部分を補ってくれる」
「男女合わせてチームワークを築けるから…きっと社会を維持する事が出来たんだって思うよ」
2人は頷き合い、自分達の過ちを認め合う。
フェミニズムは女性社会を救う政治思想にはなり得ないと悟ってくれたようだ。
ベットから降りたレナがかえでと向き合うようにして机の前に座る。
勉強道具を机に並べてはいるが、レナは机の下に纏めてあった雑誌を手に取って見せてくる。
「それにしても…どうしてさゆさゆはフェミニズムなんかに目覚めたのかしら?」
「レナちゃんが好きなさゆさゆって、今では売れっ子の芸能人なんでしょ?」
「芸能界に行く前のさゆさゆは…政治の話題なんて公で話すような子じゃなかったわ」
「何か目覚めたキッカケを語ってるような記事はないのかな?」
「さゆさゆが載ってるから無造作に買っただけだし…全部の記事には目を通してないわ」
気になったレナは雑誌の束を机の上に置き、かえでと一緒に記事を確認していく。
その時、かえでは売れっ子芸能人になった史乃沙優希が写った表紙の違和感に気が付く。
「ねぇ…レナちゃん?これって…偶然なのかな?」
「何に気が付いたのよ?」
「えっとね…気のせいじゃないと思う。どうしてさゆさゆが写った雑誌の表紙は…」
――
かえでが感じた違和感を感じ取ったレナが雑誌の表紙を机の上に並べていく。
そうすると浮かび上がるものに気が付いたようだ。
「な…何よ…コレ?レナ…全然気が付かなかった…」
「なんだか…気持ち悪いよね…」
まるで統一されるかのようにして沙優希の片目が強調された写り方。
雑誌の表紙を並べたため、机の上は
その写り方を体現する悪魔がかつていたのを悪魔ほむらは覚えているはず。
悪魔となる前の暁美ほむらの師匠となり、試練の相手となった魔人がいる。
第一の騎士ホワイトライダーが跨っていた
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日本やアメリカ等の芸能界においては
単眼サインとはイルミナティが崇拝するプロヴィデンスの目を表現するサイン。
米国の音楽関係のアーティストや芸能人はイルミナティと契約しないと売れないと言われる。
鳴かず飛ばずの売れないアーティストが突然売れ出した時には国際金融資本が動くようだ。
彼らと契約した芸能人はメディアを通して悪魔崇拝の洗脳を広げる役目を与えられる。
アルバムのジャケット、ミュージックビデオにはイルミナティを表すサインが組み込まれる。
世界中の人々が娯楽として消費しながらも、知らない間に
イルミナティは物理的な強制よりも教育やメディアを通して人々を洗脳する事を重視する存在。
その尖兵として利用されてきたのが芸能人や映画スターだったというわけだ。
しかし次第に耐えられなくなった芸能人も多くいる。
悪魔崇拝を自分の音楽や芸能活動で広める事に対し、後悔するようになった者達がいたという。
ここは東京の新宿、夜の歌舞伎町。
東京で暮らしてきた尚紀が生活していたエリアであり、相変わらず夜の繁華街は盛況のようだ。
新宿歌舞伎町には大人だけでなく少女達も大勢集まる。
理由は売春や援助交際、中には人身売買の被害に合う少女もいるという。
彼女達が新宿に集う原因は推しの男達に金を貢ぐこと。
ホストやコンセプトカフェのコスプレ店員、地下アイドル男などが彼女達を食い物にする。
推しという呪われた言葉に女の子はたぶらかされ、正常な判断を下せなくしてしまったようだ。
彼女達が集うエリアから因んでトー横キッズと呼ばれるようになっていった少女達である。
今日も歌舞伎町にはそんな少女達が大勢集まっているようだ。
「ねぇ…見てよあの子?」
16歳ぐらいの少女が椅子に座っている少女を見つめながら怪訝な表情を浮かべている。
「サングラスとマスクなんてつけて…どういうつもりなわけ?」
「もしかして、有名人とか?」
「そんな人がこんな場所をうろついてるわけないでしょ~」
「だよね~」
気にするのを止めた少女達は再びスマホに視線を向け、援助交際の声が掛かるのを待つ。
そんな光景をサングラス姿をした少女は見つめながらもマスクの中で溜息をつく。
(沙優希…逃げてきちゃった。彷徨ってたらこんな場所に来たけど…何だか凄く怖い場所…)
私服姿をしたサングラス少女とは今では売れっ子芸能人となった史乃沙優希。
どうやら所属事務所から逃げ出して東京を彷徨った果てに歌舞伎町に辿り着いたようだ。
膝の上に置いた両手をギュッと握り締める。
心細いのかサングラス奥の瞳には涙が浮かんでしまう。
(帰りたい…神浜市に…皆のところに帰りたいよぉ…)
神浜市の魔法少女達に助けを求める事は今の彼女は出来ない。
彼女はスマホを持たされず、SNSや電話さえ利用する事が出来ない立場。
SNS活動は事務所が行い、保護者からの連絡も沙優希のマネージャーが管理している。
着の身着のままで飛び出してきたため小銭すら持ち合わせがなかったようだ。
(友達が欲しかったからアイドルになった…芸能人になったら友達が増えると思ったのに…)
彼女の脳裏に浮かぶのはスポンサーの命令を遂行するかのような事務所命令。
沙優希は自分が思ってもいない事を記者達に語らされてきた芸能人。
それをさも本心のように伝えろと命令されてきたのだろう。
所属する芸能事務所の意思に逆らうのはスポンサーへの背信行為。
資本主義社会に組み込まれた者として選択の余地など無かったのだ。
「お嬢ちゃん達、トー横キッズだろ?」
「えっ?」
沙優希が顔を上げれば防犯ボランティア活動を行っている数人の男達が立っている。
奥の少女達に目を向ければ同様の人物達が声をかけているようだ。
「我々は防犯ボランティアをしている者だ。この街は危険な大人が多いから守る活動をしてる」
「そ…そうなんですか…?」
「歌舞伎町を知らないのかい?なら地方から来たんだろ?そういうトー横キッズも多いんだ」
「はい…地方都市の神浜市から来ました…」
「地方から流れて来る子達の多くは家に居場所がない、虐待を受けているから逃げた子も多い」
「沙優希は…家族と仲が悪いというわけではないです。家に帰りたいぐらいなんです…」
「そうなのか?では、家族とは連絡を取れないのかい?迎えを呼べないの?」
「その…着の身着のままで流れ着いたから…連絡が取れません…」
「そうか…ならお腹も空いてるだろう?我々は炊き出し活動も行ってるからついてくるといい」
「えっと…その……」
丁度お腹が空いていたのか空腹を示す音が響く。
他の少女達もボランティア男達について行く様子を見つめる彼女も流されてしまう。
炊き出しが行われているという場所まで案内されていくのだが、様子がおかしい。
「あ…あの…ここは……?」
沙優希が連れてこられた場所とは誰もいない開けた路地裏。
目立つのはスモークガラスで内部を隠した白いミニバンであろう。
「…ここが炊き出しの場所なんですか?他の子達の姿も見えませんが…」
怪訝な表情をマスクの中で浮かべる沙優希に振り向く男達が邪悪な笑みを浮かべてくる。
「馬鹿だね~君?ただのボランティアなんてするわけないじゃん」
「今どき正義の味方なんて流行らないんだよ」
「えっ!?」
男達の態度が豹変したのに慌てた彼女を背後から別の男達が掴み上げる。
「オラッ!!大人しくこっち来いやぁ!!」
「嫌っ!!放して下さい!!」
「うひょー!!カワイイお尻してやがるぜぇ♪」
「ダメェ!?スカートめくらないでぇ!!」
「サングラスとマスクなんてつけやがって!どんな可愛い顔が隠れてるのかな~?」
男が無理やりサングラスとマスクを外してくる。
「おおっ!?お前…もしかして、売れっ子アイドルのさゆさゆじゃねーのか!?」
「ラッキー!!こんなデカい獲物が引っかかるなんてよぉ…こいつは楽しめそうだぜ!」
「沙優希をどうする気なんですか!?」
「決まってんだろ?」
邪悪な笑みを浮かべた男がミニバンを指さす。
扉が開いたミニバンには下着姿の男がビデオカメラを手に持ちながら手を振ってくる。
「お前のハメ撮り撮影会をするに決まってんじゃん♪」
レイプされるのだと理解した沙優希の顔が赤面してしまう。
力任せに藻掻く抵抗を行うのだが男達は解放してくれない。
「いやっ!!助けてぇ!!誰かーーっ!!」
「暴れるんじゃねぇ!!コイツ…細い体してるのになんて力を出しやがるんだぁ!?」
「抑えきれねぇ!?アレを使え!!」
数人がかりで抑え込んでいたがミニバンまで走っていった男が何かの道具を持ってくる。
手に持たれていたのはスタンガンであり、邪悪な笑みを浮かべる男が近寄ってくる。
「抵抗するなら覚悟は出来てるんだろうなぁ!!」
「や…やめて…やめてぇぇーーっ!!」
スタンガンの一撃を浴びせられようとした時だった。
<<お巡りさん!!こっちです!!>>
男の叫び声が聞こえたレイプ魔達が慌て始める。
「くそっ!?誰かが通報しやがったのかよ!」
「畜生…こんな大物を楽しめる時だってのに!!」
慌てたレイプ魔達が沙優希を解放した後、ミニバンに乗り込んでいく。
車は急発進していき、どうにか難を逃れる事が出来たようだ。
地面に膝をつきながら泣いている沙優希の元にまでホストの服装をした男が近寄ってくる。
「糞野郎共め…あんな連中を防犯ボランティアだと思った僕が馬鹿だったよ…」
両膝を屈めた後、目線を沙優希に合わせてくれる。
「大丈夫だったかい?」
「グスッ…ヒック……あなたは?」
「ただのホストだよ。休憩中だったんだけど、外を歩いてたら君の叫び声が聞こえたんだ」
「グスッ…助けてくれて…本当にありがとうございます…」
彼女を助けたのは尚紀が便利屋活動を行う時の仕事の斡旋をしてくれている人物。
歌舞伎町で有名なホストクラブのナンバーワンホストであるシュウであった。
♦
怖かった彼女を落ち着かせるため、シュウは沙優希を連れながら場所を移動していく。
歌舞伎町公園にまで沙優希を連れていき、買ってあげた飲み物を彼女に手渡す。
飲み物を口にして落ち着きを取り戻した彼女のために連中が何者なのかを語ってくれる。
「連中はボランティア団体の皮を被った反社共さ。自警団を自称して犯罪行為を繰り返す」
暴対法で締め付けが厳しくなったのを逆手に取り、対反社という表の組織を作るヤクザは多い。
その実態、裏の顔は売春斡旋、薬物取引、人身売買等を目的にしていると語ってくれる。
「沙優希…気が付きませんでした。見た目はボランティアをしてる人に見えたから…」
「人間はね…
「まるで平和テロリスト集団です…偽装されたら直ぐには気がつきませんね…」
「見た目だけでなく、言葉や理論さえ偽装する事が出来る。それに騙される人達は多い…」
それを言われた時、沙優希は暗い表情を浮かべながら顔を俯けてしまう。
「……史乃沙優希さんでいいのかな?」
「えっ?シュウさんは…沙優希を知ってるんですか?」
「コンビニ雑誌でよく見かけていたからね。立ち読みしていた時…君の記事を読んだよ」
その内容を言われるのが辛いのか、沙優希はまた顔を俯けてしまう。
「君は…フェミニズムを信じている芸能人なんだよね?」
それを問われた彼女は俯きながら首を横に振る。
「なるほど…仕事だから考えてもない理屈を言わされていたというわけか。芸能人は辛いね」
「沙優希は神浜市の伝統的な街で育ちました…だからフェミニズム理論は受け入れられません」
歴史地区の伝統的な価値観をアイデンティティにしている彼女はフェミニズムを嫌悪している。
それによって、どれ程の女達が自由を叫んで社会を混乱させるのかを想像するだけで怖くなる。
ホストとしても思うところがあるのか、シュウはこんな話を語り始める。
「トー横キッズ達もそうだけど…今の時代、女は男から得られる
「えっ?」
顔を上げてシュウを見れば憂いを帯びたような表情をしている。
異性愛社会がフェミニズムに滅ぼされていく光景を見ながら悲嘆に暮れるような男の顔つきだ。
「心から信頼出来る人がいない。うわべだけの付き合いしか生まれず…心細くなっていく」
「それによって…あそこにいた少女達は…どうなっていくんですか?」
「セックスで人間関係の信頼を作ろうとする。みんな騙されているんだ…フェミニズムに…」
それを言われた沙優希は強い罪悪感に苛まれていく。
自分は助かったが連れていかれた他の少女達が傷つけられて捨てられていく事が耐えられない。
その後押しをするかの如く、芸能人の自分がフェミニズムをばら撒いた事が苦しかったようだ。
「ごめん…性的な話題になったね。恥ずかしかったかな?」
「いいんです…気にしてません。沙優希だってもう18歳ですし…」
「そうか…18歳以上の女の子なら、僕の話を聞いてくれるかな?」
頷く彼女の了解を得たシュウはフェミニズム問題についてこう伝えてくれる。
現代の女性は心から信頼出来る人と出会えず、それを求めるセックスを繰り返す。
しかしセックスを繰り返す程に男達の愛情からは遠ざかってしまう。
男達はアバズレのヤリマン女など、セックス相手としてなら利用するが捨てていく現実がある。
ホスト等の男達は女性が欲している信頼を食い物にし、パパ活や援助交際で金を貢がせる。
負の連鎖が起きている根本原因とは異性愛をぶち壊しにしたフェミニズムにあるというのだ。
「セックスは
「それを言ってくれるホストの人は…どれぐらいいるんですか?」
「…殆どいない。女がフェミニズムに染まってくれた方が利益になるんだ…」
「シュウさんは女性の弱みに付け込むホストではないんですね…凄く安心出来ます」
「その安心感こそが僕の売りだよ。異性愛社会の伝統こそが男女関係を固く結べると信じてる」
情動停止が解消されれば女性の本能が解放され、再び健全な状態に戻る。
それには
男を恐れたり張り合ったりする必要がない事を知り、それが女を守り女性らしさを開花させる。
「女性は男性を信頼出来て初めてセックスは快感となる。恭順は偏見や抑圧なんかじゃない」
「沙優希も信頼出来る人と巡り合いたいです。友達が欲しかったからアイドルになりました…」
「…君がこれからどう生きるのかは分からない。芸能界で頑張りたいなら…止めはしないよ」
それを言われた時、沙優希は決意を持った表情を浮かべる。
資本主義社会に組み込まれても捨てたくない信念があるのだろう。
「アイドルはファンという友達の為にあるべきだと思います…貶める為にあるんじゃないです」
「だからこそ…こんな場所まで逃げてきたというわけだね。自分を偽るのが耐えられないから」
「もう直ぐ神浜市で凱旋ライブイベントがあるんです。その時に沙優希は……」
「止めた方がいい」
「えっ!?」
「ファンを裏切りたくないとファンの前で真実を告白する気かい?どれだけの被害額が出る?」
「そ、それは……」
「ライブは個人でするものじゃない、協賛企業が大勢集まる。君は被害総額を支払えるのか?」
それを問われた時、返す言葉が見つからなくなる。
これからも芸能人という操り人形となり、ファン達に病魔の思想を撒き散らす以外にない。
そんな恐怖に晒されてしまい、芸能界入りに飛びついた自分を激しく呪ってしまう。
シュウに縋りつくようにして抱き着き、涙ながらにこう訴える。
「沙優希…こんなはずじゃなかった!魔法少女になったのは友達を貶めるためじゃないのに!」
「魔法…少女……?」
魔法少女という存在をシュウは尚紀から聞かされた事がある。
アニメか漫画の話だと思ったが、嘘をついているような態度ではなかったのを覚えている。
彼が語った魔法少女の特徴を思い出した彼は彼女の左手を見ると驚愕してしまう。
「こ…これは…っ!?」
沙優希の左手の中指に嵌められたソウルジェム指輪が穢れの光を放っている。
「尚紀さんが言ってた話は本当だったのか!?魔法少女が実在してたなんて!?」
「えっ…?シュウさんは…尚紀さんを知ってるんですか!?」
2人が驚愕の顔を向け合っていた時、近づいて来る足音に気が付いてしまう。
公園の入り口に顔を向ければ立っていたのは沙優希のマネージャー女性の姿なのだ。
後ろには黒スーツを着た屈強な男達まで控えており、冷たい顔つきのままこう告げてくる。
「……見つけたわよ、沙優希」
恐ろしい笑みを浮かべながらマネージャー女性が沙優希に近寄ってきて左手首を掴む。
「は、放して下さい!!」
強引に沙優希の左腕を持ち上げた後、厳しい表情を向けてくる。
「な…なんだ…アレは…?」
シュウの目には信じられない光景が映っている。
ソウルジェム指輪が発する穢れの光が掴んだ手によって吸い出されていく光景が見えるようだ。
「事務所の皆に迷惑かけて、どういうつもり?神浜のライブイベントが近いというのに」
「沙優希…もう芸能活動なんて…したくないです!!」
「なぜ?貴女はあんなにもファンから頂いたファンレターの数に大喜びしていたのに?」
「最初は嬉しかったです!でも…沙優希は言いたくもない話を記者達に語るのは嫌なんです!」
「仕事は嫌な事もしなければならない。他の人達は頑張ってるのに、貴女だけ楽したいの?」
「それは…その……」
「苦しみはいつかきっと貴女の力になってくれる。気の迷いで逃げ出した事は許してあげるわ」
「……………」
「帰りましょう、みんな心配しているから。私は貴女の味方よ」
「……はい、勝手に出て行って…すいませんでした…」
「貴女は皆の期待に応えていればいい。魔法少女として…もう戦わなくてもいいのだから」
暗い表情を浮かべながらも沙優希はシュウに向き直って一礼を行う。
マネージャー女性の後ろについて行き、停められた高級セダンの後部座席に乗車する。
沙優希の隣に乗ろうとするマネージャー女性が立ち止まった後、後ろに振り向く。
「沙優希がお世話になったみたいだから、礼をしてあげて頂戴ね」
シュウの前に残されていたのは屈強な男達であり、悪魔を表す真紅の瞳が輝きだす。
「お前…魔法少女の存在を知っているな?」
「運が無かったようだ」
景色が異界化していく光景の後ろでは高級セダンが発進していく。
異界に取り込まれたシュウの眼前には巨大化していく醜悪な存在が屹立する。
現実感を全て失い、地面にへたり込んだシュウは死期を悟る事になるだろう。
「すまない……尚紀さん……」
振り上げられた凶刃の一撃によって地面が激しく砕け散る。
クレーターの中には原型を留めない赤い血痕だけが残されてしまう。
その日の夜、尚紀と共に歌舞伎町を守り抜いたシュウは帰らぬ人となるのであった。
♦
1月の第三日曜日を迎えた頃。
まだ朝日も昇らない時間において嘉嶋尚紀の家は物々しい空気となっている。
「車ノ免許トヤラヲ取ッテオイテ正解ダッタヨウダナ」
「クリスは目立ち過ぎる。静かに動くなら目立たない車で向かう方がいい」
ガレージの前に立つ人間姿のクーフーリンと狼犬姿のケルベロスは顔を向け合う。
クリスの横に停められていたのはフォードのエコノラインと呼ばれるフルサイズバンであろう。
「犬っころの運転で行くのかよ?事故るんじゃねーの?」
歩いてきたのはカンフー着を身に付けた人間姿のセイテンタイセイである。
「嫌なら自慢の筋斗雲で向かってもいいのだぞ?」
「まぁいいさ。後ろ側で寝てるから、ついたら起こしてくれ…ふわ~……」
眠そうな顔つきで後部座席の扉を開けて中に入り込んでいく。
「緊張感ノ無イ奴メ」
「神経が図太いのだろう。プレッシャーに潰される者よりはマシだがな」
「セイテンタイセイノ酷イイビキト共二向カウノカ…ゾットスルナ」
ケルベロスも後部座席の中に入り込んでいく。
後部座席の扉を閉めるクーフーリンに対し、隣のクリスがブーイングを浴びせてくる。
「アタシも暴れたい~っ!!」
「今回は隠密行動になる、お前では無理だ」
「ブ~~~ッッ!!」
クリスのブーイングもどこ吹く風といった態度で運転席側に入り込む。
後は尚紀が来るのを待つだけであったが家の方から大声が聞こえてきたようだ。
<<なんだとぉ!!?>>
クーフーリンは明かりがついた窓を見るとリビングに見えたのは通話を行う尚紀の姿である。
その顔つきは動揺を隠しきれない表情を浮かべているようだ。
通話を終えた尚紀を心配そうに見つめるのは留守番を任されたケットシーとネコマタである。
「シュウが…行方不明ですって!?」
「そんな…シュウさんに一体何があったんだニャ!?東京で世話になってきた人なのに!!」
「連絡をくれたホストクラブの店長の話では休憩時間中に外に出て行方不明になったようだ…」
「心配ね…何かの事件に巻き込まれた可能性があるわ…」
「シュウさんはとても正義感が強い人だったニャ…きっと誰かを助けようとして…」
「シュウ……」
シュウがいなくなってしまった事により尚紀は便利屋として活動していく事は困難となる。
それ以上にシュウは友人でもあったため、尚紀の心は心配によってかき乱されてしまう。
「…何があったのかは知らんが、今は戦いに赴く時だぞ」
顔を向ければ車に来ない尚紀を迎えに来たクーフーリンが廊下に立っている。
「集中しろ。相手はあのリリスだ…それに他の悪魔共も潜んでいる事態も十分考えられる」
「……そうだな。今はそちらが優先だったよ」
「ペレネルの造魔達は先に会場に向かってくれている。我々も早く行くぞ」
そう言い残すクーフーリンは家から出て行く。
事前に手に入れておいたライブスタッフのアルバイト制服を着た尚紀もそれに続いていく。
フルサイズバンのヘッドランプに明かりが灯った後、車が発進していく。
助手席に座る尚紀はスタッフの帽子を目深く被りながらも視線を外の景色へと向けてしまう。
「シュウ……」
彼の脳裏に浮かぶのはシュウと初めて出会った日の記憶と便利屋として生きてきた記憶。
シュウがいてくれたからこそ彼は生活が出来てこれた者。
恩人でもあり友人でもあった大切な人が無事でいてくれる事を願う事しか今は出来ない。
夜道を進む車が向かう先は神浜アリーナ会場であり、男達は敵陣に向かって夜道を突き進む。
その先にあるのは男社会を破壊し尽くす野望に燃えた女悪魔の牙城であろう。
男の尊厳をかけて譲れない戦いがあると決意する尚紀の顔つきには迷いの色は消えていた。
版権ヒロインにちょっとエッチな事をしてしまいましたが、版権ヒロイン達がレ〇プされるような展開は描かないのでご安心下さい。