人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
様々な色のネオン看板が輝くのは雨が降りしきる夜の歌舞伎町。
濡れた路面がネオンを反射し、様々な色に輝きを変えている幻想的な世界。
だが光が濃ければ闇もまた色濃くなるだろう。
客引き同士で縄張り争いを繰り返し、自転車を持ち上げて暴れる男達がいる。
ホスト狂いの女が飛び降り自殺した場所に群がる警察官と野次馬共。
様々な詐欺や風俗のキャッチを目的にした男達が佇み、道行く人達を闇に誘う。
ボッタクリの店では暴利を貪られる哀れな社会人がいる。
輝きに満ちた眠らない街である歌舞伎町とは東京の闇を一際輝かせる場所でもあるのだ。
「風見野とは大違いだな…。まったく、住むのが嫌になってくる街だよ」
黒い傘を持ち、雨の街を家に帰宅していく尚紀。
呼び込みやキャッチの男から声をかけられるが一切見向きもしない。
酔っぱらい同士の喧嘩が始まろうが野次馬には加わらない。
この街での生き方を彼は知っている立場なのだろう。
「余計な事に首を突っ込む奴が自分の首を締めて苦しむ羽目になる…そういう街さ」
人間を嘲笑い、扇動し、罠に嵌めて苦しみを与える悪魔のような人間共がひしめき合う。
乱雑に入り組んだネオン看板の道を通っていた時、か細い声が聞こえたような気がする。
「……たすけて」
声が響いてきた路地裏に彼は振り向く。
「人間…いや、違う…。この声は…人間の言葉ではない…?」
普通の人間がこの声を聞いたなら子猫の鳴き声に聞こえるだろうが、どうやら違う。
「魔女や使い魔がこんな真似出来るはずがない。この声…俺と同じ悪魔なのか…?」
声が聞こえた路地裏に足を踏み入れる。
程なくしてその声の主を見つけたようだ。
ダンボール箱に納められ、降りしきる雨で体が濡れて震えていたのは子猫の姿。
「お前が……俺を呼んだのか?」
子猫は震える体をビクッと震わせ、彼の顔を見上げてくる。
「……オイラの声が、分かるの?」
「お前は……この世界の悪魔なのか?」
「うん……オイラ、ケットシーっていうんだ」
尚紀はこの世界で初めて自分と同じ悪魔と思われる存在と出会うことが出来たのであった。
♦
歌舞伎町にあるマンションの18階の自宅に子猫を連れて帰る。
ベットに写真が飾られたPCスペース、テレビボードの上に液晶テレビ等が見られる。
中央には食事用と勉強用の机が置かれ、机の下には探偵業法関連の本が積まれている内装だ。
このマンションはペットも住んで良い物件なので子猫を連れ込んでも問題はない。
「積もる話を雨の中でする訳にもいかないからなぁ…」
濡れたケットシーの体をタオルで拭いてやり、ドライヤーで毛を乾かす。
毛並みが揃うとケットシーは猫本来の姿を取り戻す。
単色グレーのロシアンブルーの姿をした子猫であったようだ。
「さて、この世界の悪魔についてだが……」
「オイラ腹が減ったニャー。空腹過ぎて舌が回らないニャー」
「ニャー…?そういや、ボルテクス界で戦ったネコマタ悪魔もそういう言葉遣いをしてたっけ」
「オイラも猫悪魔だから当然こうなるニャー。情報が欲しいならモンプチを要求するニャ」
「……
悪魔会話とは人語を解する悪魔と交渉する事であり、悪魔会話と表現される。
様々な性格をした悪魔と交渉し、その結果を享受する。
戦闘を回避したり、物を貰ったり、相手を仲魔にすることが出来たようだ。
悪魔から要求されるのは主に体力、魔力、アイテム、マッカという悪魔の通貨。
その上で気分が乗らないと言われたら貢物を持ち逃げされる事も多々あった。
「オイラの情報は安くないニャー。モンプチが無いならチュールでもいいニャ」
「このふてぶてしい気分屋な態度…お前が悪魔だって実感させられる」
仕方がないので冷蔵庫を開けて中身を確認する。
料理など彼は出来ないのでインスタントや酒のツマミのようなものしか置かれていない。
「とりあえずチーズかまぼこがあった。これでも食って情報を吐け」
ケットシーは臭いを嗅ぎつつ尚紀の顔を見上げてくる。
「人間の食べ物は塩分多いから猫の肝臓に良くないニャー。そんな事も知らないのかニャ?」
「文句があるなら食うな」
紙皿を持ち上げ、冷蔵庫に入れようとする彼の足にケットシーが素早く掴まり懇願してくる。
「待つニャー!!誰も食べないだなんて言ってないニャー!食べる!情報も吐くニャー!!」
「状況次第でコロコロ態度を変えやがって。最初からそう言え」
お腹が空いていたケットシーは床に置かれたチーズかまぼこを夢中で食べ続ける。
「お前を見ていると……昔の仲魔達を思い出すよ」
「オイラの他にも悪魔の仲魔がいたのかニャ?」
「大勢いたよ」
ピクシー、クーフーリン、ケルベロス、セイテンタイセイ、ティターニア、パールヴァティ。
アラハバキ・ギリメカラ・ジャアクフロスト・ピシャーチャ、そしてダンテの名を伝える。
「大世帯だったのかニャー?みんな大事にしていたのかニャ?」
「みんな大切な仲魔達だった。アマラ深界の最奥で俺が人の心を失ってもついてきてくれた…」
最後の決戦の地、無限光カグツチへと至るオベリスクを登った記憶が蘇ってくる。
(ダンテ…お前はヨスガとシジマの最後の抵抗を一人で食い止めると去っていったな)
残された仲魔達と共に無限光カグツチと戦う戦場になっていく。
(無限光カグツチの力は圧倒的だった…当然だろうな)
一つの宇宙を生み出すエネルギー体が破壊の力となって襲ってくる。
言い換えれば一つの宇宙を破壊出来てしまうほどの力と戦う究極戦場であったのだろう。
超えねばならなかった最後の試練として立ち塞がった存在こそ、呪わしき大いなる神の分霊。
【カグツチ】
ボルテクス界の管理者たる存在となった神霊。
ボルテクスの中央に浮かぶ発光体であり、一定周期で満ち欠けを繰り返す月であり太陽となる。
コトワリを持つ者がカグツチまで到達したら、そのコトワリを世界のルールとする役目をもつ。
カグツチはその内に新たな世界を生み出す無限の未分化な創造の光を秘めている神霊。
その力は絶大であり、光が全開で解き放たれると照らされたあらゆる被造物は存在を焼かれる。
あまりにも純粋な光は他の意味を塗り潰して失わせてしまう破壊の側面をも持ち合わせていた。
(宇宙を生み出すエネルギーを破壊の力に変え…その一撃は俺達に浴びせられる事になった)
カグツチが放つ究極の一撃の名は『無尽無辺光』である。
無限の光を一点集中して放射する奔流によって尚紀以外の仲魔達は消滅させられてしまう。
(最後の力を振り絞り、俺はカグツチを倒す事は出来たが…失ったものは大き過ぎた)
かつての仲魔達やダンテの事を思い出していると猫悪魔が声をかけてくる。
「どうかしたのかニャ?暗い顔してるニャ」
「……なんでもない。少し昔を思い出しただけだ」
ケットシーを見つめながらかつて側にいてくれた仲魔達への思いを募らせてしまう。
お腹も膨れて安心したのかケットシーは丸くなって寝始めるのだが家主が注意してくる。
「おい、寝るな」
「んニャ……?あ、そうニャ!オイラ達のことを話すんだったニャー」
後ろ足で頭を掻いた後、ケットシーはこの世界の悪魔達の存在について語り始める。
「太古の昔、物質世界と魔界の境界が曖昧だった頃があったニャ。人と悪魔は身近な関係ニャ」
「嘘だろ?俺がまだ人間として生きていた時から…俺達の直ぐ裏で悪魔共が生きていたのか?」
「悪魔達は人間達に様々な知恵を与えて恩恵を与えたニャ」
神々の信仰が一神教の支配下に置かれてからは人間と対立する事になったと聞かされていく。
「キリスト教の迫害か…」
「魔界に帰る悪魔が殆どだった…でも悪魔である事を捨て、同化して生きた悪魔もいたニャ」
「それが…俺達の世界の裏側で生きてきた悪魔達?」
「人間や動物と同化して人間に危害を加えず、人々と共に生きた悪魔の末裔がオイラ達ニャ」
人間の中にも超能力や神通力といった特殊能力を持っている存在を歴史上見かけるだろう。
それらは悪魔と人間との混血児の末裔だと言われたらシックリくるやもしれない。
「動物も予知を使って主人を助ける動物がいるニャ。そういう存在も悪魔と動物の混血だニャ」
「子猫の癖に随分と物知りだったようだな」
「オイラ、さっきの話は全部ママから聞いたニャー」
「お前のママはどうした?」
「……車に跳ねられて死んだニャ」
「…そうか。行く当てのない子猫だから…あんな場所で雨に濡れながら震えていたのか」
行く当ての無い自分が路地裏に座り込み、世界を憎んでいた頃の姿と重なって見えてくる。
「悪魔の力は完全に失ったのか?」
「オイラ達のような存在は悪魔の力が活性化する満月の夜には本来の悪魔の姿に戻れるニャ」
「満月…月齢が関係していたんだな」
ボルテクス界においてもカグツチ齢が煌天の時、悪魔達はその影響を受けて血が騒ぎ興奮する。
「お前達は満月の夜に悪魔の姿を取り戻せたら人間を襲うのか?」
「そんな事するぐらいなら、オイラ達は人間世界と同化する生き方なんて選ばなかったニャ」
「なるほど、たしかに言われてみればそうだな」
「それにオイラ達の力なんて先祖達のような力なんてもう無いニャ…貧弱貧弱~~ニャ」
「たしかに全く魔力を感じないな。これなら魔法少女達でも気が付かないだろう」
「魔法少女!あいつらが幅効かせてる世界だから…オイラ達悪魔の子孫も肩身が狭いニャ…」
聞けば悪魔の姿に戻った際に少しだけ魔力を持つことが出来るそうだ。
ソウルジェムで魔力を感じ取られた悪魔は使い魔として追い回され死ぬ思いをしてきたという。
「全く…こんなプリチーな悪魔の子孫を恐ろしい魔女の親戚扱いされるのは心外だニャ」
「お前達はこの世界の魔女の存在は知っていたんだな」
「魔法少女の成れの果てだニャ。魔法を使う存在はいずれああいう堕ちた姿になるのかニャ?」
「お前達は世界と同化して力と凶暴さを捨てる事が出来たが…魔法少女はそれが許されない」
戦って魔力を回復させない限りは魔女として孵化してしまうと尚紀は説明してくれる。
「オイラ達のように自由を持つ事が許されないのかニャ…魔法少女も可哀想な奴らだニャ…」
「魔法少女達の自業自得の結果さ…
「魔法少女も悪魔と同じように自由に生きられれば良かったニャ」
もしそれが出来たなら魔法少女にだって人間としての幸せを望む自由だってあったはず。
そう思えてならない尚紀は世界の理不尽に対して落胆と苛立ちを感じてしまう。
「魔法少女は可哀想な奴だと思うニャ。でも力を失ったオイラにはどうする事も出来ないニャ」
「別にお前達に戦えとは言わない。今まで通り社会の片隅で静かに暮らしていたらいいさ」
「ニャ?なんか嫌な雰囲気になってきたニャ…」
「聞きたいことは聞いた。もうお前に用は……」
「待ってニャ!!オイラ行くところが無いニャ!!ここで面倒見て欲しいニャーッ!!」
「はぁ!?面倒臭い事になってきたな…」
(そういや、ボルテクス界の悪魔達も生命が危険に晒されたら命乞いを俺にしてきたもんだ)
何処の世界の悪魔も気分屋で状況次第で動く連中なのだろうと尚紀は納得してしまう。
「俺は仕事もあるし、色々用事も抱えてるからお前の面倒なんて見てられない」
「家で大人しくしてるニャー!餌だって場所が分かればオイラが勝手に食べるニャー!」
「お前は好きなだけ食いたいだけだろ!というか…俺が猫用の餌を買う生活になるのか?」
「トイレだってオイラ分かるニャ!トイレでちゃんとウンチして流すニャ!!」
頭を彼の足に擦りつけながら自分の臭いをつけて愛情と媚を売ってくる猫悪魔である。
(こんな時、風華ならどうしたんだろうな…)
路地裏で座り込んだ自分に手を差し伸べてくれた風華の事が頭を過ると答えは出てくる。
(彼女なら…きっとこう言っただろう)
「……分かった、お前は今日から俺の仲魔だ。今後ともヨロシクな」
「ニャー!!オイラ魔獣ケットシーだニャー!今後ともよろピーー♪」
(まさか、この世界でまた仲魔を作る事になるなんて…思わなかったよ)
それでも彼は何処か嬉しそうな顔つきであり、再び仲魔を得られた感覚が嬉しいのだろう。
こうして尚紀とケットシーの共同生活が始まったのである。
暫くして、まさか二匹目が現れる事になるとはこの時の彼は想像も出来なかった。
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季節は秋を迎えた東京の歌舞伎町。
帰宅しようと街を歩く尚紀の姿があったのだが様子がおかしい。
彼はふと立ち止まり、また歩く。
後ろから何かがついて来ているのが分かるだろう。
そっと後ろを振り向いた後、また歩く。
(なんだ…?あの長毛種の白猫は…?)
ブルーとグリーンのオッドアイをしたターキッシュアンゴラの白猫がついてくる。
だがそれよりも突出して目立つ個性がその猫にはあるようだ。
(というか…なんだよ、あの顔にかけた猫用アクセサリーの丸眼鏡?)
何処かの飼い猫だと思われるが、悪魔にはその猫が何なのかが大体検討がつく。
無言で白猫と共に歩いていたが立ち止まり、重い口を開きだす。
「…お前、ネコマタだろ?」
「あら?よく分かったわね」
「何となくケットシーと同じ雰囲気を感じていたが、俺に分かる言葉を喋れるなら確定だ」
「ご明察♪貴方が悪魔だって私も確認が取れたわけね」
「なんで俺の後ろをついてきてるんだ?」
「ここは天下の大通りよ?悪魔が勝手に歩いててもいいじゃない」
「…それもそうだな」
彼は気にせず帰宅する事にしていく。
自分のタワーマンションまでやってきたが、ネコマタはまだついてきている。
「おい、こんなところまでついてくるのか?」
「私はこのマンションの飼い猫かもしれないわよ?」
「…そうかもな」
マンションのエントランスドアを開け、ネコマタと共にエレベーターに乗り込む。
「自分の家には階段で帰らないのか?」
「貴方の住んでいる階が私の飼い主の家かもしれないじゃない」
「…………」
18階に辿り着き、自分の家に帰った彼が玄関ドアのセキュリティ番号を入力して家に入る。
扉を閉めたら自分の横にはネコマタが入ってきているのだ。
「…おい、いくらなんでも俺の部屋に上がり込む自由まであるわけないだろ!」
「細かい事をいちいち気にしてるのね~単細胞」
「単細胞…?猫なんぞに馬鹿にされちまったよ…俺の家に上がり込んで…何が目的だ?」
「今日から貴方が私の飼い主よ」
「……はぁ?」
「貴方は私達とは違う本物の悪魔なんでしょ?興味があるから貴方と暮らすわ」
「俺がいつそれを許可したんだ!」
「つべこべ言わないの。男の悪魔なんだから女の悪魔に甲斐性を見せてみなさい」
玄関前でブツブツ言ってる声が気になったケットシーが歩いてくる。
その体も月日が立った事で大きくなっているようだ。
「ニャー尚紀、おかえり……ニャ!?その猫は誰猫ニャ!?」
「あら?私以外にも猫の悪魔を飼ってるじゃない?なら何の問題もないわね」
「ふざけるニャ!!ここはオイラの縄張りニャー!勝手に入ってくるんじゃないニャー!!」
シャーと毛を逆立てて怒るケットシーの姿に対して白猫悪魔は涼しい表情である。
「何で今日はこんな事になったんだろうな…泣けてきたぞ」
ネコマタは食事用の机の上で丸くなり、尚紀とケットシーを見つめてくる。
尚紀とケットシーは床に座り、ネコマタを白い眼差しで見つめるようだ。
「結局、勝手に上がりこんで…勝手に自分の生い立ちを聞かされたニャ…」
「…それで、お前は飼い主を転々としながら暮らしてきた猫悪魔だったというわけか?」
「そうよ。美しい私が野良猫なんて似合うわけないでしょ?」
「自分の愛らしさを武器に人間に媚売って暮らしてきただなんて…腹立つ猫悪魔だニャ」
「それをお前が言うな」
「オイラと尚紀は出会うべくして出会った運命によって導かれた関係ニャ!?」
「そうよ。私も尚紀と出会うべくして出会う運命によって、ここで暮らす事になるの」
「お前らいい加減にしろよ…」
「それに、私はただの猫悪魔ではないのよ。そう…私は知的な猫悪魔なの!」
丸眼鏡を右前足でクイッと持ち上げ、ドヤ顔を見せるネコマタだったが白い視線を向けられる。
「知的ってなんだよ?お絵描きでも出来るのか?」
「私は人間に飼われ続けて子供の相手をするうちに…勉強に興味が出来て隣で見物していたの」
人間と同等の知能指数を手に入れたのだと自慢げに語るのだが、彼がツッコミを入れてしまう。
「……悪魔ならそれ、普通じゃね?」
「そうニャ!オイラ達は考える力を持ってるニャ!そんなのお茶の子さいさいニャ!」
「因数分解出来る?」
ネコマタが小さい鉛筆とノート一枚を要求する。
小さい鉛筆を口に咥え、ノートに因数分解の問題を書き込んだ後、前足で差し出してくる。
「オイラを舐めるニャ!こんな中学生でも解けそうな問題…門…宇宙が見える…ニャ…」
因数分解の問題を見たケットシーの脳内が理解不能の輝きに包まれていく。
「全宇宙に金色の粒子の糸が飛び交う光景が見える…宇宙と宇宙を繋ぎ合う巨大な螺旋問題…」
因数分解問題に対して神の御業を垣間見たようなオーバーアクション中のバカ猫は無視される。
「なるほど、たしかにお前は知的な猫だな」
「このアホ猫よりはまだ賢いわよ、私♪」
「そういえば、お前はケットシーみたいに猫語尾を使わないな?」
「そんな単細胞なマネごとを私がすると思ってるの?他のネコマタと私を同じにしないで頂戴」
(ボルテクス界のネコマタ共がそれを聞いたらこいつ…八つ裂きにされてたな…)
「私はネコマタよりも知的で賢い名前を好むの。何か私に知的な名前をつけて欲しいのだけど」
「おい、何で俺がお前の飼い主になる前提で語ってるんだ?」
「いいじゃない。つべこべ言わずに何か考えてみなさいな」
そう言われた尚紀は腕を組んで考えてみる。
「よし、お前の態度から名前を決めた。今日からお前は糞猫だ」
そう決めてくる尚紀に対して猫用丸眼鏡を光らせたネコマタが激おこぷんぷん丸と化す。
「ふざけるニャー!知的で賢い私に対してよくもそんなふざけた名前にする気になったわね!」
「……ニャー?」
「…おっと、失礼。興奮してしまったわね」
(どうやらこいつ…興奮したり動転すると他のネコマタと同じく猫語尾になるようだな)
「お前は飼い猫なんだろ?前の飼い主はいいのか?」
「動物に擬態した悪魔達の子孫はとても長生きなの。普通の猫以上に生きてたら怪しまれるわ」
「腐っても悪魔の血筋を抱えているから、それなりに弊害もあるというわけか」
頃合いを見計らいながら家を転々としてきたと彼女から説明されていく。
「ニャーハハハ!こいつおばさん猫だったニャ!オイラの方が若くてプリチー猫悪魔ニャ!!」
「年上のお姉さんって言いなさい!」
「ニャハハハ!!ばばぁ!ババァ!BBA!!」
「ニャーー!!いい加減にしなさいよアンタ!決着つけてやるニャー!!」
机の上で互いに後ろ足で立ち、猫パンチで喧嘩を始める猫悪魔達に対して白い目が向けられる。
「知的で賢い割には…沸点が低い女だよ」
そんな猫悪魔を見ているとかつての仲魔のクーフーリンとセイテンタイセイを彼は思い出す。
互いにライバル視していたし、性格も水と油だからよく喧嘩を繰り返している。
その度に彼が仲裁に入っていた記憶が蘇った事で懐かしい気分に浸ってしまう。
仲魔は多い方がにぎやかで楽しいのは変わらないと感じた彼が猫悪魔の首を掴んで持ち上げる。
「喧嘩して騒がしい鳴き声を出さないなら、俺が飼い主になってやる」
「え?本当にいいの?」
「ニャ!?こんなお転婆おばさん猫を飼う事になったら…オイラの胃がもたないニャ!!」
「あと、トイレはちゃんとトイレでしろよ。飯に文句言うなら飯抜きだ」
「分かってるわよ。私が何年飼い猫やってきたと思ってるの?私は知的で賢い猫なのだから」
「まぁ、そういうことだケットシー。こいつと仲良くしてやれよ」
「尚紀の大馬鹿野郎!!オイラのユートピアに異物を放り込むニャー!!」
「よろしくな、ネコマタ」
「しょうがないわね~それでいいわ。私は魔獣ネコマタ、今後ともヨロシクね」
こうして二体目の仲魔を迎え入れる事となったのはいいのだが、とある問題が出てくる。
夜中の尚紀の部屋では熟睡中の者達がいる。
ケットシーがマットソファークッションで丸まって寝ている時、モゾモゾした感触が巡る。
「うニャ…?どうもお腹の辺りがモゾモゾとこそばゆい…?」
フミフミ押されているような感触を感じ取る。
「何か…お腹に吸い付かれているような感触もするニャ…?」
ケットシーは目を開け、夜目が効くその目でお腹を確認してみると大きく見開いて驚く。
「ニャァァァン」
ネコマタがケットシーのお腹に吸い付いていたようだ。
「ニャァァァァァーーッツ!?何してるニャお前!?」
「うるさいわね、吸わせなさいよ」
ケットシーのお腹をまるで乳飲み子猫のようにしてネコマタが吸い付いている。
他の飼い主のところにいた猫や犬に対しても腹に吸い付く癖があったようだ。
「いい加減乳離れするニャー!!オイラでさえママのお乳を諦めたのに!!」
「悪魔は自由に生きていいのよ。だからこれは私の勝手ね」
「尚紀ーーッ!!助けてニャ!!変態女にオイラ汚されるニャーーッッ!!」
夜中でも喧しい猫達に対してベットで寝ている飼い主からクッションが放り込まれるのである。
「今後ともヨロシク!じゃねーニャーッッ!!!」
こうして二匹の猫悪魔と暮らす事になった尚紀の心は少しずつ温かさを取り戻すのであった。
読んで頂き、有難うございます。