人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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181話 太陽神の座をかけて

人修羅の仲魔達はそれぞれの障害を乗り越えていき、合流を急ぐ光景が続く。

 

だが、彼らを待ち受けていたのは強大なる魔王であった。

 

合流を果たした直後に現れた梟の悪魔によって異界に飲み込まれてしまう。

 

彼ら、彼女達が見た異界光景とは古代エジプトの都市を彷彿とさせる廃墟の街並みであった。

 

「あれが……アモンなの?」

 

古代エジプトの廃墟を覆うのは漆黒の影。

 

廃墟の向こう側に見えるのはエジプト王権を示すピラミッド。

 

それに巻き付くようにして屹立する存在こそがアモン。

 

「なんて巨大な……悪魔なのですか」

 

天に向かわんばかりの巨大なる悪魔を見上げるタルト達は感情が無くとも戦慄の言葉を口に出す。

 

2千mにも上る巨大な蛇の尾。

 

本体である梟の体だけでも500mはある巨体。

 

長く伸びた赤き両腕と、大きく広げた梟の翼をもって相手を威圧する禍々しさ。

 

タルト達が立っている廃墟を覆う影とはアモンを照らす月の光によって生み出された影だった。

 

「…違う世界で見かけたことがあった奴の姿だが、あれ程の巨体を晒す姿は初めて見る」

 

「大方、本霊を召喚してもらえたといったところだろうなぁ」

 

「ナラバ、奴ノ実力ハ他ノ世界デ見カケタ時トハ比ベ物ニナルマイナ」

 

「上等だ。暇を持て余してた分、俺様も楽しめるってもんよ」

 

「尚紀はリリスと戦ってくれている。ならばこそ、我らがアモンを抑えねばなるまい」

 

「人修羅ガ応援二来ルマデモナイ。我ラノ力デ奴ヲ打チ倒シテ見セヨウゾ」

 

「フッ…その意気だ」

 

ボルテクス界を超えてきた悪魔達は戦慄の言葉すら口にしない態度を示す。

 

アモン程の巨体をもった悪魔と戦うのは初めてではない経験からくる自信の表れだ。

 

三体の悪魔達は武器を構えて歩んでいく。

 

恐れず突き進む男達の背中を見守る女達は、感情が無いながらも信頼感を感じたようだ。

 

「私の中に溶けたリズならこう言うわ。男達もまた魔法少女を守ってくれる存在だったと」

 

「ジャンヌ・ダルクは男達と共に戦場を駆けました。そして私達もまた男達と戦場を共に出来る」

 

「これが女達だけで完結するしかない魔法少女と、男達と共に駆けた魔法少女との違いね」

 

――男の力を信頼して背中を託せる嬉しさというものは…代えがたいものなのよ。

 

頷き合い、現代を生きるタルトとリズの現身達もまた男達の背中に続いていった。

 

天空に聳え立つが如きアモンの両目が真紅に光る。

 

赤き両腕を持ち上げ、両手から業火を発する構えを行う。

 

「無限光カグツチの前に立てた豪の者達よ。吾輩は手加減をせん…心ゆくまで死合おうぞ!」

 

両手から放たれるのは無数の巨大火球。

 

全体火炎攻撃魔法である『マハラギダイン』を放つアモンに向け、悪魔達が駆け抜ける。

 

着弾した町が蒸発する程の火炎地獄が荒れ狂う中、激しい死闘が繰り広げられるのだ。

 

炎の侯爵と呼ばれる力は圧倒的であり、邪教の館で鍛えられた悪魔達とて苦戦を強いられる。

 

リリスと共に在ったが実力においてはリリスを上回る程の魔王の力が荒れ狂う。

 

魔法少女達に戦わせるわけにはいかない程の脅威の力はまさに神の次元であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

射程圏内にまで迫りくる相手に向け、アモンの巨体が動く。

 

ピラミッドに巻き付いていた尾が揺れ、一気に薙ぎ払いを仕掛けてくる。

 

尾の高さだけでも200mはあろうかという巨体が迫りくる光景は山が動く驚天動地そのもの。

 

「遅れるなよ!犬っころ共!!」

 

左手で印を結んだセイテンタイセイが筋斗雲を生み出して飛び移る。

 

「誰に向かって言ってる!!」

 

「貴様コソ遅レルナ!!」

 

クーフーリンはケルベロスの上に飛び移り、迫りくる尾の山に目掛けて飛ぶ。

 

筋斗雲で飛翔する横には尾の壁を爪を用いて登り続けるケロべロスとクーフーリンが共にある。

 

「リズ!!」

 

「心得ているわ!!」

 

アモンの巨影を利用して影移動を2人は行う。

 

薙ぎ払った一撃によって膨大な土煙が上がる中、悪魔達は尾の道の上に立つ。

 

「虫けら共が…吾輩の体に飛び乗り接近戦を仕掛けてくるか!!」

 

尾の道を駆けるケルベロスとクーフーリンの頭上を越え、セイテンタイセイが先に仕掛ける。

 

「いくぜぇぇぇーーーッッ!!!」

 

振りかぶった如意棒が大きく伸び、一気に振り抜く。

 

気合によって攻撃力が上がった如意棒に対し、アモンは右腕を持ち上げてガードを行う。

 

「ぐっ!?」

 

アモンは優れた物理耐性を持つ魔王であるが、セイテンタイセイは貫通スキルを手に入れている。

 

耐性の上から貫通する物理ダメージが右腕に決まり梟の顔を歪めるのだが…。

 

「ぬるいわ!!」

 

如意棒ごと右腕を払い、セイテンタイセイを大きく跳ね除ける。

 

落下していく主を筋斗雲が回収するが、巨大な右手からは追撃の巨大火球の雨が放たれていく。

 

「チッ!!」

 

回避飛行を行いながら反撃のチャンスを狙う…フリをしているだけだ。

 

「ぬぅ!?」

 

一直線に放たれた光の一撃に気が付き、左腕で光の一撃を受け止める。

 

尾の道の遥か先に見えたのは、クロヴィスの剣から放つメギドの光を発射したタルトの姿。

 

「吾輩の意識を逸らせた隙の援護攻撃か…面白い!!」

 

尾の道が一気に跳ね上がる。

 

「タルト!!」

 

リズは悪魔の魔法である風魔法を纏いて大きく跳躍。

 

暴れ狂う尾の道に跳ね上げられてしまったタルトを掴み、影で編んだ鍵縄を投擲。

 

尾の道の皮膚に突き刺さった鍵縄によって落下を未然に防ぐことが出来たようだが…。

 

「くっ!!」

 

尾の道はうねるように暴れまくり、飛び乗った者達を振るい落とそうとする。

 

ケルベロスも爪を地面に突き立てて耐えるが、しがみつくだけで精一杯の状態だ。

 

「近寄レヌナラバ!!」

 

ケルベロスは雄叫びを上げ、アモンに目掛けて地獄の業火を放つ。

 

しかし炎を吸収する耐性をもつアモンは逆に体力を回復させる効果しか与えられない。

 

「奴の耐性は優れている!万能魔法を除いてまともに効くのは雷魔法と風魔法ぐらいだ!!」

 

魔槍ゲイボルグを構え、槍に風の魔法を纏わせる。

 

槍を一気に振り抜き放つ一撃とは真空刃。

 

胴体に目掛けて迫る一撃に対し、アモンは業火が噴き上がるクチバシを大きく開ける。

 

口から放ったのは相手の耐性を貫通する大火球を放つ炎魔法である『トリスアギオン』だ。

 

魔法同士がぶつかり合い相殺するが二撃目を警戒する。

 

クーフーリンが放つのは、赤黒い魔力を纏わせた極大の一撃であるデスバウンド。

 

合わせるように後ろから迫るセイテンタイセイが放つのは八相発破。

 

前方から迫るゲイボルグと後ろから迫る八相発破の衝撃波に対し、アモンの両手が光り輝く。

 

「神に逆らう愚者共め!!我が太陽の光に焼き尽くされよ!!」

 

両手から放たれた一撃とは、相手の耐性を貫通する極大炎魔法であるメギドフレイム。

 

<<うおおぉぉーーーーッッ!!?>>

 

メギドの如き業火の世界が周囲を飲み込み、放たれた攻撃を掻き消しクーフーリン達を焼く。

 

炎を反射する耐性を持つケルベロス以外は炎に焼かれて地上へと落下していくのだ。

 

「オノレェェーーッッ!!」

 

ケルベロスは尾の道を高速で駆け抜け大きく跳躍。

 

反射された炎を吸収して回復したアモンに目掛けて大きく迫り、冥界波を放とうとする。

 

「ヌゥ!!?」

 

だが動きは読まれており、巨大な右手に掴まれてしまうケルベロスの体。

 

「グォォーーーッッ!!!」

 

力任せに握り込まれ、ケルベロスは全身の骨を砕かれていく。

 

「犬畜生めが!!太陽神たる吾輩に噛みつこうなど万死に値する!!」

 

ケルベロスを大きく投げ捨て地上に叩きつける。

 

流石のケルベロスも全身の骨を砕かれては身動きをとることも出来ずに瀕死の重傷だった。

 

<<アー!!モーッッ!!!>>

 

勝どきを上げるが如き雄叫びを上げ、全身から魔力を噴き出す。

 

大地が激しく地響きを上げて地割れを起こし、砕かれた大地がアモンの魔力で浮かされていく。

 

天変地異の世界で君臨する驚天動地の存在こそ、魔王の権威とは何かを周りに示す王の姿。

 

しかし、アモンは自身のことを魔王と呼ばれることを好む者ではなかった。

 

「我が名はアモン・ラー!!太陽神でありエジプトの主神である!!頭が高いわ虫けら共!!」

 

キリスト教圏から悪魔に貶められようとも、アモンは太陽神の誇りまでも捨てたわけではない。

 

トドメを刺されるのを待つしかないのは、メギドフレイムに焼かれた大地で蹲る者達。

 

「へへ…退屈しのぎって次元じゃねぇよな」

 

「まだ…我らは戦える…」

 

焼け爛れた体を持ち上げるのは、圧倒的戦力の差を見せつけられても折れぬ心を持つ者達。

 

武器を杖にして立ち上がろうとするのはタルト達も同じである。

 

「私の中に溶けたタルトは…どんな脅威が立ち塞がろうとも…決して諦めない者でした」

 

タルトの現身となった造魔の目に宿るもの。

 

それは太陽の光にさえも挑む信念を秘めた輝き。

 

「私は太陽神が相手だろうと恐れません。女の私とリズだけで貴方と戦うのではない!」

 

――男達の力もあったからこそ、圧倒的脅威とも戦うことが出来たのです!!

 

彼女の記憶の中に蘇った光景。

 

それは魔法少女であったジャンヌ・ダルクの最後の戦い。

 

売国妃イザボーが真の姿を晒した時、戦った記憶。

 

あの時、戦場に集ったのは魔法少女達だけではなかった。

 

ジャンヌ・ダルクを救国の英雄だと叫び、牢獄から助けに現れた男達の軍勢もいてくれた。

 

男達の声援がなければ、圧倒的脅威として立ち塞がった女王の黄昏を倒す心の力は出せなかった。

 

かつての世界で経験したタルトの思いが宿る現身だからこそ、こう言える。

 

「この過酷な世界で生きる力を示すのは…女だけではありません!!()()()()()()のです!!」

 

タルトの叫びに鼓舞された男女達が奮い立つ。

 

その光景を天高くから見下ろす神の如き魔王は吐き捨てる。

 

「天地を支配する太陽に挑むその勇気…虫けら共にしては見事なり」

 

体から光りを発し、魔力を強化していく。

 

魔法攻撃力を上げる魔法であるコンセントレイトをかけて再びメギドフレイムを放つ構え。

 

一発目をさらに上回る一撃をもって愚者を弔う鎮魂の炎とする。

 

トドメの一撃を放とうとした時だった。

 

<<よくぞ吠えてくれた、ジャンヌ>>

 

声がするのはアモンを超える天の空。

 

満月の光に十字の線が浮かび、切り開かれる。

 

アモンの異界領域に侵入してきた者。

 

それは女と共に生きる力を示す者である男の姿だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

上空から勢いよく降下してくる存在に向けてアモンが顔を上げる。

 

「リリスは敗れたか…流石は我らの叛逆の刻を告げる象徴たる混沌王殿である!!」

 

空の上から現れたのはリリスを打ち倒した人修羅の姿。

 

迎え撃つアモンはメギドフレイムを放つのを止め、左腕を空に向ける。

 

「リリスと同じく吾輩もまた貴殿の試練となろう!!」

 

左掌から放つのはコンセントレイトで威力が上がったマハラギダイン。

 

無数の巨大火球が雨の如く迫る中、滑空しながら迫りくる人修羅の体が光りを放つ。

 

全身から放つゼロスビートの光弾が次々と巨大火球と接触して爆発の光が生まれていく。

 

爆発の光を超えながら滑空してくる存在に向け、アモンは左腕を振りかぶる。

 

「我が剛爪の一撃をもって貴殿の力を測る!!リリスを倒した力を見せよ!!」

 

迎え撃つアモンが放つのは『狂乱の剛爪』の一撃。

 

巨大な左手の爪が迫る中、人修羅の両手には怨霊剣と光剣が握られている。

 

滑空する人修羅の体がドリルの如く急速回転。

 

右手から放出する光剣を前方に向ける破壊槌とし、左手に持つ怨霊剣を回転ノコギリとする一撃。

 

「イヤァァァーーーッッ!!!」

 

人修羅が放つのは『ディープ・スティンガー』と呼ばれる剣技だ。

 

突っ込んでいく一撃がアモンの剛爪と接触。

 

「グァァァーーーッッ!!?」

 

左掌を突き破った突進攻撃は尚も回転を続けていく。

 

怨霊剣の魔力によって斬撃範囲が伸びた刃が切り裂いていくのはアモンの左腕。

 

まるでスライサーにかけられる肉の如く腕の道を切り裂きながらアモンに迫る。

 

鈍化した世界。

 

アモンの顔面まで迫る人修羅は斬撃を止め態勢を一回転させる蹴りを放つ。

 

「グフッ!!!!」

 

流星脚の一撃が決まった余波がアモンの顔面周囲に広がっていく。

 

巨体がぐらついて地面に倒れ込む中、人修羅は宙に浮いていた岩盤大地の上に着地を行うのだ。

 

「待たせたな」

 

怨霊剣を右手に持ち替えた人修羅が左手に出現させたのは『宝玉輪』と呼ばれる回復道具。

 

それを左手で握り込んで砕き、周囲に回復の光を発していく。

 

焼け爛れたクーフーリン達の体が癒され、全身の骨を砕かれたケルベロスの傷も全回復する。

 

「へっ!随分と待たせやがってバカ弟子が!!」

 

「お前が遅いから先に戦わせてもらっていたぞ」

 

「モウ少シ遅ケレバ我ラガ先二仕留メテイタナ」

 

「それだけの強がりが言えるなら、まだまだやれるんだろ?」

 

「当たり前だ!天下のセイテンタイセイ様がコケにされたままで終われるかってんだ!!」

 

筋斗雲に飛び乗り再び空を目指すセイテンタイセイ。

 

クーフーリンもまた戦場に行くためにゲイボルグを呼び寄せようとするのだが…。

 

「御探し物はコレかしら?」

 

クーフーリンの影から現れたのはリズの姿。

 

彼女に振り返ったクーフーリンの目が見開いていく。

 

「バカな……」

 

そこにいたのは赤黒い魔力の波動を放つゲイボルグを右手で浮かせる姿をしたリズ。

 

「持ち主を選ぶ我が魔槍が…どうして!?」

 

「フフッ…この槍を振るうのも久しぶりよ」

 

左手で後ろ髪をかき上げる仕草を見せる。

 

彼女の姿を見たクーフーリンの脳裏に浮かぶ女悪魔がいた。

 

つばの長い黒帽子を被り、帽子から伸びる黒いヴェールに覆われる美しい頭部。

 

病的なまでに白い肌の左頬には薔薇の刺青を刻んだ女悪魔こそ、セタンタを鍛えた存在。

 

「お前の中に溶けた悪魔とは…私にゲイボルグを託してくれたスカアハ師匠なのか!!?」

 

造魔であるが微笑みを浮かべる姿がスカアハの顔と酷似して見えてしまう。

 

「私の中に溶けたスカアハの力…この槍をもって証明するわ」

 

見上げる彼方には、足場として使う岩盤大地の上に立つ人修羅に迫る脅威。

 

「ヌォォォーーーッッ!!!」

 

左腕を切り落とされても戦意を失わないアモンは残った右腕で狂乱の剛爪を仕掛ける。

 

鞘に納めた怨霊剣を構え、迎え撃つ人修羅であったが高速で飛来する魔力に気が付く。

 

「グォォーーーッッ!!?」

 

アモンの巨大な右手の甲を貫いたのは、光弾の速度で飛来したゲイボルグ。

 

「その意気だ。早く上がってこい!俺とセイテンタイセイだけにやらせる気か!」

 

下に向けて叫ぶ人修羅に目掛けて再び剛爪を放つが跳躍移動されて避けられる。

 

「お呼ばれしたから私は行くわね。タルトをお願いするわ」

 

「お、おい!」

 

「積もる話もあるだろうけど…後にしてちょうだい」

 

リズは影に入り込み再び尾の道の上に移動する。

 

「槍一郎さん!私もお願いします!」

 

駆けつけた黒の甲冑少女を見ながら飛来してくるゲイボルグの柄を受け止める。

 

「やれやれ…ジャンヌ・ダルクと師匠の姿をした造魔と組むことになるとはな。まぁいい!」

 

槍を回転させるクーフーリンの前に立ち、身を任せるようにして跳躍する。

 

彼女の足裏を打ち上げるようにして槍を払う一撃を放つ。

 

ゲイボルグに押し出された勢いを利用してタルトもまた尾の道に再び立つのだ。

 

「ヌゥゥゥーーーッッ!!!」

 

岩場を跳躍しながら破邪の光弾を放ち続ける人修羅の猛攻を梟の片翼を用いて防御する。

 

反対側面を飛行するセイテンタイセイが放つ如意棒の一撃もまた片翼で防御態勢。

 

左右に意識を振り回されるアモンは尾の道から迫りくる存在に意識を向けられていない。

 

「いい連携よ。昔のリズもこんな風に頼れる仲間達と共に戦場を駆ける事が出来たのかしら」

 

尾の道から跳躍して浮遊する足場を移動しながらアモンに接敵。

 

彼女は補助魔法のスクカジャを用いて回避力と命中率を強化している。

 

リズの存在に気が付いたアモンは口から再び大火球を放つ。

 

「遅い!!」

 

回避力が増したリズに難なく避けられるが、既に間合いはアモンの領域。

 

右腕を振りかぶり狂乱の剛爪を放つ。

 

迫りくる巨大な右手。

 

リズは跳躍突進しながら二本のダガーを構える。

 

刀身に風を纏わせる『疾風真剣』の魔法を行使して武器強化を行う。

 

飛来した剛爪の指の隙間を縫うようにして潜り抜けると同時に斬撃を放つ。

 

「グァァァーーーッッ!!?」

 

リズが潜り抜けた人差し指と中指が切断され、苦悶の雄叫びを上げるアモン。

 

『霞駆け』の一撃を放ち終えたリズは影で編んだアンカー付きのフリントロックピストルを撃つ。

 

アモンの右腕にアンカーが突き刺さり、伸びたワイヤーを利用して尾の道に向けた移動を行う姿。

 

激痛に苦しみ暴れ狂う尾の道。

 

暴れるからこそタルトが放つ一撃がアモンの尾を傷つける。

 

「ガァァァーーーッッ!!?」

 

尾の道の上に立つタルトはクロヴィスの剣を地面に突き立てメギドの光を放っている。

 

刀身から地上に至るまで放出された光の刃によって巨大な尾の道が縦に引き裂かれていくのだ。

 

「動きが止まりました!今です!!」

 

動きが止まった尾の道を駆けるのはケルベロスに跨ったクーフーリン。

 

「師匠に後れをとっては弟子の名が廃る!!」

 

赤黒い魔力を纏った槍を構える。

 

「貴様の心臓…貰い受ける!!」

 

ゲイボルグが投擲され一気に飛翔していく。

 

光弾の如くアモンに迫り胸を刺し貫くダメージを与えるのだが…。

 

「舐めるな虫けら共ーーーッッ!!!」

 

強靭なアモンの体を貫き通すまでとはいかず、ゲイボルクは表面部分に突き刺さったまま。

 

アモンの右掌に太陽の如き光の熱が収束していき、メギドフレイムを放つ構え。

 

同時にコンセントレイトをかけ、最大火力をもって勝負を決める覚悟を示す。

 

「合わせなさい!ケルベロス!!」

 

「何ヲヤルノカハ知ランガ…決メテミセロ!!」

 

リズの声に反応したケルベロスが爪を地面に突き立てながら旋回する。

 

空から降ってくるリズはワイヤーピストルから手を離し空中捻り込みを行いながら飛び込む。

 

ケルベロスは後ろ足を蹴り上げ、着地したリズの足裏を大きく跳ね上げるのだ。

 

「クーフーリンの師を宿した私の一撃…受けてみなさい!!」

 

アモンの懐まで入り込んだリズの体が一回転する蹴りを放つ。

 

「ハァァーーーッッ!!!」

 

リズの飛び蹴りが突き刺さったゲイボルグに直撃。

 

蹴りの重みが加わったゲイボルグがアモンの体を突き抜ける程の威力を示す。

 

「ガッ……アッ……ッッ!!!!」

 

心臓を刺し貫いたゲイボルグの槍が背中を突き抜け空を舞う。

 

鈍化した世界。

 

空を舞うゲイボルグのさらに上から迫る二体の影。

 

「これで…終わりだぁーーーッッ!!!」

 

頭上から降下してくる人修羅が放つのは『墜撃斬』と呼ばれる剣技。

 

怨霊剣から放つ兜割りの如く右腕を縦に切断し、メギドフレイム発射を阻止する。

 

同時に降下してきたセイテンタイセイがトドメの一撃を放つ。

 

「乾坤一擲!!!」

 

ヤマオロシの一撃がアモンの頭部に直撃して頭蓋を砕く一撃とする。

 

「バカ…な…太陽神である…吾輩…が……」

 

アモンの巨体がついに崩れ落ち、光を放って消失していく。

 

強大な魔王の力はついに倒されることとなる。

 

これこそがボルテクス界を超えてきた悪魔達の実力。

 

そして魔法少女が存在する世界で出会えた新たなる仲魔達の力なのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

地上に着地した人修羅達が周囲を伺う。

 

「異界領域が消失しない…奴はまだ生きているぞ」

 

「MAGの光じゃなかったからなぁ…何処に潜んでるんだ?」

 

「あれ程の致命傷を受けているのです。そう長くは持たない筈ですけど…」

 

「…見ツケタゾ」

 

ケルベロスの嗅覚が見つけ出した存在の元まで皆が歩いていく。

 

砂漠の大地に倒れ込んでいたのは人間サイズにまで小さくなってしまったアモンの姿。

 

両腕は切断されており、頭部と足、それに胸と背中からはおびただしい出血を流し続ける。

 

「ぐっ…うぅ…」

 

エジプトのファラオを彷彿とさせる血染めの衣服を纏うアモンが立ち上がろうとしていく。

 

「往生際が悪いわよ、アモン」

 

「トドメを刺し損ねたのは失敗だったな。会稽之恥にしてやるつもりはねーぜ、アモン」

 

如意棒を担いだセイテンタイセイがトドメを刺すため近寄ろうとするが、人修羅が片手で制する。

 

人型の姿をしたアモンの体には無数のヒビが入っていく。

 

トドメを刺さずとも長くはもたない状態であった。

 

「吾輩…は…アモンでは…ない……」

 

「何だと…?」

 

「その名は…唯一神を崇拝する者達が…吾輩を貶める為に生み出した呪いだ。吾輩の真の名は…」

 

――アメン・ラーだ…。

 

【アメン・ラー】

 

エジプトの創造神であり太陽神。

 

テーベ地方の神アメンが太陽神ラーとされ成った存在として知られている。

 

エジプトにおける神々の崇拝には王家の信奉が大きく関係しているという。

 

アメンは大気の神であり目立つ存在ではなかったが、テーベがエジプトを支配したことで変わる。

 

神々の父と呼ばれる太陽神ラーと一つになり人々から崇拝されるようになった存在であった。

 

「ぐっ…あぁぁ……ッッ!!」

 

意識が朦朧とするアメンの脳裏に浮かぶ呪いの言葉がある。

 

――アメンは神ではない!!

 

「やめろ……やめろぉぉ……」

 

――アメンは悪魔である!!

 

アメンの脳裏で叫ぶ存在こそ、人類初の唯一神教を生み出したファラオの声。

 

ツタンカーメンの父であるアメンホテプ4世の声であった。

 

――()()()こそが神だ!!アメンの神殿を焼き払え!!

 

「何故だ…なぜだぁぁぁぁ……!!!」

 

掠れた目に見える光景とは、かつては太陽神として崇拝してくれた人々の裏切り光景。

 

アメンを悪魔だと叫び、彼を祀り上げた神殿を破壊していく民衆達の姿が映ってしまう。

 

「貴様ら民衆は…吾輩を太陽神として崇めたはず!!なのに…どうして吾輩を悪魔にする!!?」

 

幻覚に苛まれるかのようにしてふらつきながら叫ぶアメン。

 

その無様な姿を見つめることしか出来ない人修羅達。

 

「吾輩は神だ!!太陽神だぁ!!悪魔ではない…悪魔ではないぃぃ……ッッ!!」

 

もがき苦しむアメンの姿を見つめる尚紀の心の中には、彼と同じ苦しみが蘇っていく。

 

太陽神アメンが魔王アモンとして人々から呪われていく光景こそ、現代でいう()()()()()()()()

 

太陽神として民衆のために在った存在が為政者側の勝手によって悪魔としてすり替えられる。

 

人間の守護者として戦った者が為政者側の勝手によって神浜テロの首謀者側だとすり替えられる。

 

「時代を超えようが…人間の本質なんて何も変わらないってわけかよ」

 

アメンに歩み寄る人修羅。

 

「…介錯が欲しいか、アメン?」

 

慈悲の言葉をかけてくる者の声が聞こえたアメンは視線を向けていく。

 

掠れた目には人修羅の姿が映っている訳ではない。

 

「貴様…は……!?」

 

アメンの目に映っていたのは赤き獅子。

 

獅子の頭部を持つ巨人であり、背中に翼を生やし体に大蛇が巻き付く悪魔。

 

「…吾輩から太陽神の座を奪いに来たか…()()()!!」

 

「何だと…?」

 

「それとも…吾輩を悪魔だと罵り…裁きに来たのか!?」

 

「何を勘違いしているんだ…お前?」

 

ミトラと勘違いされた時、尚紀の脳裏に浮かんだ光景がある。

 

かつてのボルテクス界において、東京議事堂で戦った悪魔がいた。

 

シジマ勢力に与する存在であり、裁きを司る司法神こそがミトラ。

 

ミトラは西洋ではミトラス、東洋ではミロク菩薩としても知られる契約神であり太陽神だった。

 

「渡さぬ…渡さぬぞぉぉ…ッ!!吾輩こそが太陽神だ…民衆から太陽と崇められる者だぁ!!」

 

体中のヒビ割れも進行していき限界が近い。

 

それでもアメンには捨てられないプライドがあった。

 

口を大きく開いたアメンは最後の抵抗として業火を放とうとする。

 

「バカ野郎ッッ!!!」

 

一瞬で抜刀した怨霊剣を用いて右切上げを行う。

 

ヒビ割れたアメンの上半身に一閃の跡が浮かび、血が吹き出す。

 

トドメの一撃を浴びたアメンが正気を取り戻すかのようにして…最後の言葉を残すのだ。

 

「…人間共は…何時の時代も…変わらぬものだ…」

 

アメンの上半身が一閃の跡に沿うようにしてずり落ちていく。

 

「見たいものしか見ないし…信じない…」

 

――()()()()()()……獣共で……あ…る……。

 

回転納刀によって鍔が鳴る音と共にアメンの体が弾け、膨大なMAGの光を放出。

 

無念を抱えた感情の光が天に昇っていく光景を見つめる尚紀。

 

その表情にはやりきれない感情が宿り、アメンの言葉を理解する者としてこう口にする。

 

「…そうだな。いつの時代でも…何処の世界でも…人々は変わってなんてくれないんだ」

 

見えざる者、隠れた者と呼ばれし悪魔は自ら真名を曝け出し、隠してきた己の業をも曝け出す。

 

それを受け止めてくれたのは、同じく悪魔として悪にされる運命を背負いし者達。

 

その苦しみは神浜の歴史においても悪とされてきた東の民衆達にも通じるものがあるだろう。

 

価値の無い神として扱われてきたが太陽神になる事が出来たからこそ、神の権威に縋りついた者。

 

太陽神アメン・ラーを魔王アモンとして貶めた存在こそが、アテンと呼ばれし唯一神教。

 

アメンホテプ4世が始めた()()()()()()こそが唯一神を崇めるユダヤ教を生んだという説がある。

 

アトンとも呼ばれしアテンは、アメン・ラーを崇める神官団に対抗するために神権を強化された。

 

アマルナ革命が行われた時期と出エジプト記は推定される年代がほぼ同じである事が根拠となる。

 

革命による弾圧が行われた事によるエジプトからの脱出が起こったとしても不思議ではない。

 

アテンはヘブライ語においては主(アディン)とも呼ばれ、唯一神を表す神名の一つとされる。

 

こうしてアテン信仰が後のユダヤ・キリスト・イスラム教の起源とする説が生まれたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

リリスとアモンの戦いを終える頃には沙優希の神浜凱旋ライブは終わりを迎えている。

 

表面上は何事もなく終了したように見えるが、アリーナ玄関前には警官隊が大勢詰めかけている。

 

警備員相手に暴れまくった怪しいカンフー男と怪しいシスターを探しているようだった。

 

表から脱出するのは困難と判断し、イベント資材を補完する大倉庫方面から逃げ出していく。

 

無事に駐車場まで辿り着いた尚紀達は警官に嗅ぎ回られるタルトを家に帰すためにリズを促す。

 

リズが運転するラ・フェラーリを見送った尚紀が踵を返して乗ってきた車を目指す。

 

フルサイズバンの中には身を隠すセイテンタイセイとケルベロス、運転席にはクーフーリンの姿。

 

後は尚紀が乗り込んでずらかるだけであったのだが…。

 

<<待って下さい!!>>

 

声がした方に視線を向ける。

 

そこに立っていたのは、ライブ衣装を着たままの沙優希の姿であった。

 

「俺は急いで帰りたいんだが…何か用事か?」

 

オドオドした態度を示す者を見て怪訝な表情を浮かべてしまう。

 

それでも伝えたい言葉があったのか、真剣な表情を浮かべた沙優希が口を開いてくれる。

 

「ご…御無沙汰してます、尚紀さん。その…私を助けに来てくれたんですよね…?」

 

「何を助けるというんだ?俺は仕事でこの場所まで訪れていただけだ」

 

「沙優希は魔法少女です。貴方達の戦う魔力はライブ中でも感じてました」

 

舌打ちをして顔を背けてしまう。

 

言い訳を考えていた時、微笑んでくれている沙優希の顔に気が付く。

 

その顔つきは何かを吹っ切れたような清々しさを感じさせる程だ。

 

「沙優希はですね…このライブを最後にして…芸能界を引退しようと考えています」

 

「突然だな、どういう心境の変化だ?」

 

「芸能界入りしたのは…友達が欲しかったから。だけど…沙優希はファンの人達を騙してます」

 

「お前の記事はコンビニに立ち寄った時に読んだことがある。フェミニストになったのか?」

 

「その記事内容は仕事だから仕方なく言わされていただけです。それがもう…耐えられません」

 

「仕事は嫌な事でも努力して乗り越えるもんだ。お前だけ楽がしたいのか?」

 

「マネージャーからも同じ事を言われました。乗り越える努力は沙優希の力になってくれるって」

 

「……………」

 

「でも…それは思いやりじゃありません、()()()()()です。ファンを貶めるなんて間違ってます」

 

「…だからこそ、お前のファンになってくれた人々のために身を引くのか?」

 

「ファンの人達に真実を語れない以上は…沙優希は皆の期待を裏切った者として…憎まれます」

 

「…もうアイドルとしては再起不能になるかもな」

 

「構いません。アイドルになれなくなっても…友達を見つける方法ならきっとあると思います」

 

迷いのない決意を語ってくれた者を見つめる尚紀の表情にも微笑みが浮かんでくれる。

 

「それでいい。個を尊重しない、己の考えを持たない臆病者に民主主義なんて豚に真珠だ」

 

「尚紀さん…」

 

「ローマは一日にして成らず。御上に己の正しさを委ねず、自分の正しさは自分で見つけていけ」

 

「はいっ!沙優希はアイドルを辞めますけど…魔法少女としての人生が残ってます!」

 

「魔法少女として友達を救っていけ。これからのお前の人生に…幸多いことを願おう」

 

車に乗り込み発進していく。

 

見送る沙優希は世話になった人達に向けて深々とお辞儀を行ってくれる。

 

助手席に座る尚紀は視線を外の景色へと向けていく。

 

「己の考えを持たず、周囲の同調圧力に屈してしまうから…民衆は過ちばかりを繰り返す」

 

悪のレッテルを張られた悪魔である尚紀は考え込んでしまう。

 

アモンが神として在った時代において、アマルナ革命は間違っていると叫ぶ民衆がいたのなら。

 

神浜の歴史差別において、差別の歴史は間違っていると叫ぶ西側民衆がいたのなら。

 

織莉子の政治活動を嘲笑う者達に向けて彼女は正しいと叫ぶ勇気をもった民衆がいたのなら。

 

「たとえ善人であっても勇気が出せずに保身を選び、見て見ぬフリを選ぶしかない社会圧力か…」

 

沙優希のようにリスクを承知で自分の意見を言えるような人間が欲しいと彼は思う。

 

そんな人間達ばかりがいてくれたら、人間や魔法少女だけでなく神々だって救われる。

 

「お前の道を進め、人には勝手なことを言わせておけ。ダンテの言葉こそが…民主主義の根幹だ」

 

流されない者としての覚悟を示す道こそ、美雨が語った事がある実存主義。

 

女が男を悪者扱いして罵倒することになっても、正しいと言える勇気を示さなければならない。

 

政治意見を叫ぶ者が罵倒されようとも、その人は正しいと言える勇気を示さなければならない。

 

「過ちを繰り返さないためにも必要なのは…知識だけでは足りない」

 

――社会リンチされる覚悟を持って自分を貫ける…()()()()()()()だったんだ。

 

夜空を見上げる尚紀の耳の奥にはアモンの叫びが未だに残る。

 

いずれまた、尚紀も悪魔として悪者レッテルを再び貼られる日がくるやもしれない。

 

それでも彼は正しいと叫んでくれる人は現れてくれるのか?

 

それを考えた時…人修羅として生きる尚紀は言い知れぬ不安に支配されるしかなかったのだ。

 




メガテン悪魔であるアモンは真女神転生ifだけでなく、漫画のデビルマンの主役に宿った悪魔としても有名ですよね。
デビルマンが一番苦しんだのは悪のレッテル貼りを受けた事でしたので、そこら辺を強調してみました。
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