人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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182話 人類の父

神浜港に近い太平洋の海を渡るのは世界最大の豪華客船に匹敵する程の超巨大フェリー。

 

まるで海の上に聳え立つ巨大な城の如き船こそルシファーが仮の住まいにしている場所。

 

宮殿のような船内の回廊を抜けていくと城主が君臨する王宮執務室へと辿り着ける。

 

執務室の奥側に供えられた机の向こう側には複数のモニターを見つめる人物がいるようだ。

 

モニターに映し出されていたのは黒の貴族やイルミナティの司令塔であるロスチャイルドの姿。

 

皆が顔を青くして啓蒙神であるルシファーにどうすればいいのかを尋ねている。

 

黒の貴族とイルミナティにとっては指導者的立場であったリリスとアモンの死。

 

その知らせは瞬く間に拡散し、世界を支配する者達に不安と恐怖を植え付けてしまったようだ。

 

彼らが心配している案件とはイルミナティにとってはもう1人の啓蒙神であるサタンの存在。

 

サタンとして扱われる人修羅はリリスとアモンを殺しただけでなくマニトゥまで破壊する。

 

自分達の首を締め上げる存在に疑問を持ち、その存在は脅威そのものだと震え上がっている。

 

総力をもって排除するべきなのではないかとルシファーに進言しにきたというわけだ。

 

モニターの光に照らされるのは漆黒のダブルボタンスーツを身に纏うルシファーの姿。

 

高級な椅子に座り目を瞑って聞いていたが重い口を開きだす。

 

「案ずるな。たとえリリスとアモンが死んだとしても、それを超える存在を迎え入れればいい」

 

日本語で返すがAIによって自動翻訳され、彼らにも伝わる言葉として話し続ける。

 

「私は未来を知る者だ。今のサタンは脅威であったとしても…奴は()()()()()()()()()

 

その時こそサタンは我々側の啓蒙神として君臨する事になるだろうと告げてくる。

 

その言葉に皆が落ち着きを取り戻し、啓蒙神であるルシファーを信じると言い始める。

 

モニターの光が消えていき、静かな執務室へと戻ったようだ。

 

「リリス殿とアモン殿が亡くなられるとは…無念極まりない」

 

豪胆さを感じさせる男の声が背後から聞こえてくる。

 

「我々にとっては大きな損失ですな、閣下。ハルマゲドンにおける戦力低下に繋がります」

 

狡猾さを感じさせる男の声が背後から聞こえてくる。

 

「…アザゼルとシェムハザか」

 

後ろに控えていた男達こそ黒の貴族達の祖となったエグリゴリの堕天使を束ねる者達。

 

シェムハザと呼ばれた男はスーツとチェスターコートを纏う白髪が混じる黒髪の姿をしている。

 

彼こそが世界中に存在している生体エナジー協会の指導者である会長であろう。

 

アザゼルと呼ばれた男は日本の政治ニュースで見かけた事があるはず。

 

シェムハザの隣に立っていたのは八重樫内閣で防衛大臣を務める西であろう。

 

「マニトゥを一体失うことになったが、魔界を産む母の召喚に必要なMAGは他で補える」

 

「そのために膨大な数のマニトゥを生産しましたからな。百体いれば十分召喚出来ます」

 

「余ったマニトゥは破壊してMAGを抽出しろ。魔界から新たなる悪魔を召喚していく」

 

「その件ですが、朗報があります」

 

西と呼ばれる人間に擬態したアザゼルが話していくのは邪教の館についてであろう。

 

「悪魔合体に成功した初となる人間が生まれました」

 

「ほう?誰が最初の成功者となったのかね?」

 

「魔法少女です。ロスチャイルドの隠し子が志願を申し出たおり成功したと報告がありました」

 

それを聞いたルシファーの口元に不気味な笑みが浮かぶ。

 

「あの子は負けず嫌い極まった娘だ。悪魔の力を手に入れて…何を望む?」

 

「あの娘はネフィリムの末裔。これによりネフィリムは悪魔合体に適した素材だと証明された」

 

「確かに朗報だな。黒の貴族やイルミナティ指導者達はネフィリムの末裔…彼らの望みが叶う」

 

「彼らは神秘主義者であり次元シフトを望む者達。先祖帰りして我らと永遠を生きたい者です」

 

「よし、余ったマニトゥを破壊した時に抽出したMAGは邪教の館に運べ」

 

「連中と合体させる悪魔を召喚するためですね、承知しました」

 

「魔界には私の代わりに治世を任せている魔王や魔神達が大勢いる…彼らも必要なのだ」

 

「では、生体エナジー協会の総力を結集して抽出したMAGを邪教の館に運ばせるとしましょう」

 

「頼んだよ、シェムハザ」

 

一礼した後、シェムハザは執務室を出て行く。

 

残されたアザゼルに対し、ルシファーは命令を下す。

 

「私が君を日本政府に送り込んだ目的とは何だ?」

 

「世界を魔界化させるためです。閣下のオーダー18は近い…日本政府も本格的に動きます」

 

「君を現場指揮官として動かすための采配だ。失敗は許されんぞ」

 

「心得ております。我が身命を懸けて、必ずや閣下のお望みを叶えて見せましょう」

 

一礼をした後、アザゼルもまた執務室を出て行く。

 

独り残されたルシファーは椅子を動かして机の前を振り向く。

 

その姿は男の姿ではなく、藍家ひめなの姿をしているようだ。

 

「安らかに眠っていいからね、リリス。私チャンが貴女のフェミニズムを引き継いであげるよ」

 

邪悪な笑みを浮かべるひめなはこう語り出す。

 

たとえフェミニズムに疑問を持てたとしても、男女家庭を崩壊させる方法ならあるというのだ。

 

「両親を家から追い出し、働かせて税金を払わせる。そうなれば子育てや教育を自由に操れる」

 

親を家庭から引き離し、エリート主義者達の望み通りに子供を育てさせる。

 

夫婦が共働きになれば国家や社会の管理部分に収める税金の額も増えていく。

 

これを実現するために経済界がとった行動とは、()()()()()()()()()()()()()()()こと。

 

アメリカの労働男性は1973年をピークにして収入が減り続けている。

 

自動車工場で働いていたアメリカ人男性は中流クラスの生活が約束されていた時代があった。

 

日本の労働男性も状況は同じであり、男性一人で世帯を支えられる時代も今は昔の話となる。

 

男女同一賃金や職能給が当然となり、共働きしないと家計が厳しい世帯が大幅に増加したのだ。

 

「この世はピラミッド構造だよ。税金を預かる大蔵省とは()()()()()()()()()()()()()()()の」

 

アモンが太陽神として在った時代において、王であるファラオの下には神官団がいたという。

 

その神官達こそがエジプトの国庫を管理する大蔵省の役人達であった歴史背景がある。

 

税金を預かる大蔵省とは、太古の昔から宗教的側面を多大に受ける存在。

 

ルシファーをファラオとし、世界の中央銀行を支配するイルミナティは神官団と言えるだろう。

 

世界の裏側構造とはエジプトにおけるピラミッドであり、イルミナティトライアングルなのだ。

 

「現代でも宗教と金融は陰で密接に繋がっている。彼らに新税を作らせて税金を奪えばいいの」

 

地上の王であるルシファーに税金を貢がせるため、世界中の男女家庭を()()()()()()()()

 

夫婦が親密に過ごせる時間は激減し、家事や子育ての押し付け合いによって家庭崩壊に導く。

 

イルミナティの二大政策である金儲けと人口削減からは誰も逃れられない。

 

ルシファーに税金を貢がせるため、どれだけの子供達が犠牲となったのだろうか。

 

それによって、どれだけ社会の理不尽を憎む魔法少女が生まれたのだろうか。

 

その数はもはや計り知れないだろう。

 

「男女家庭なんて忘れちゃっていいよ♪同性カップルでも作ってさ~()()()()()()()()()()♪」

 

自由な恋愛を信じた少女、それこそが魔法少女として生きた藍家ひめなの在り方。

 

その思想は歪められて異性に拘らないフリーセックスとなり、これからも同性愛を世界に敷く。

 

性を標的にした社会改造プログラムはこれからも男女社会を蝕んでいくだろう。

 

それを乗り越えようとも経済的な現実を突き付けられ、男女家庭は崩壊へと導かれる。

 

ルシファーとイルミナティが張り巡らせた人間管理牧場の包囲網は完璧であった。

 

 

「そうか…私がエジプトに行っている間に…そんな出来事が起きていたのか」

 

南凪路にあるジュエリーRAGには尚紀が訪れている。

 

エジプトから帰って来たとニコラスから連絡が入り、近況報告を行っているようだ。

 

「シュウの事は残念だった…お前と同じく、数少ない東京の友人だったのに…」

 

「君が彼を紹介してくれて共に飲みに行った事がある。私も残念だよ…」

 

「沙優希から聞いたが、フェミニズムアイドルの彼女に接触したのが彼の姿を見た最後になる」

 

「フェミニズムか…私とペレネルの故国のフランスとて…フェミニズムに蝕まれた国となった」

 

ニコラスが語るのは、かつてはロマンスの国と讃えられたフランスの男女社会の惨状である。

 

フランスの女性誌が行った調査によると、フランス女性はこんなイメージを持っているという。

 

男勝りで男性に復讐心を持っており、力に飢えていて、性的能力で男性の価値を決める。

 

フランスの男性達の世論調査では、女性は手に負えない存在になったと嘆いているという。

 

女性が過大評価され、男性の肩身が狭くなり、家事等の女性的な性質を身につけろと脅される。

 

女性が男性を性的搾取するこの現象を()()()()()()()()()()()()()()と呼ばれるようになった。

 

「男女恋愛の国と呼ばれたフランスまで…なんてザマだよ」

 

「まさに男女の逆転現象…君が倒したリリスの思想は世界を蝕み続けるだろう…これからもな」

 

「神浜市においてもフェミニズムの嵐が吹き荒れた。男の俺は傍観者になるしかなかった…」

 

「魔法という力を手に入れた魔法少女は力を満たした者だ。ならば望むのは男性の役割だろう」

 

「男は邪悪な存在だと叫び…女を守れるのは女だと叫んできた。()()()()()()()()()()()()()

 

「百合の間に挟まりに来る男は死ね。ネットでよく見るフェミニスト的オタクの言葉だったな」

 

「それでも…男を守ろうとしてくれた魔法少女達もいた。男の俺は彼女達に心を救われたよ」

 

「それはきっと、男性である君と触れ合う事が出来たから…変わってくれた魔法少女なんだよ」

 

「そうだと…信じたいものだな」

 

重苦しい空気を出す尚紀の前から立ち上がり、店のカウンターから何かを持ってくる。

 

「話は変わるが、君が来るよりも先に美雨君と令君が私の店に来てくれたんだ」

 

「あいつらが?何をしに訪れたっていうんだ?」

 

「ちょうど私が店に帰って来た時に訪れてくれてね…これは何なのかを尋ねてきたんだ」

 

ジュエリーケースの蓋を開けば中にあったのは悪魔から手に入れられる魔石であろう。

 

「神浜から去った静香君達もこれを聞きに来た。錬金術師である私の答えは決まってる」

 

「悪魔にとっては食い物に過ぎないが…魔法少女にとっては穢れを吸い出す道具にも出来るか」

 

「魔獣と同じく倒す事で恩恵を得られるのなら…魔法少女は率先して悪魔と戦いたがるかもな」

 

「危険過ぎる…悪魔は意思の無い魔獣共とは違う。寝込みだろうが何だろうが襲ってくるぞ」

 

「かつての世界で経験した苦しみか。君は熟睡する事も出来ない戦場を彷徨った存在だったな」

 

「悪魔は耐えられたが…魔法少女は肉体と精神の負担を繰り返せば魔力減退に繋がり死を招く」

 

「それでも…彼女達とて死地に赴く運命。魔獣に殺されようが悪魔に殺されようが同じ結末だ」

 

「お前の言う通り…俺達は自己責任を背負う者だったな。魔石情報を伝えるかどうかは任せる」

 

商談席を立ち上がって店から出ようとするが立ち止まる。

 

自己責任を語った事により、思うところがあったようだ。

 

「俺は魔法少女を虐殺した者だ。その責任を背負う者として…これからは魔法少女を守りたい」

 

「償いか…彼女達のために、何と戦うつもりだね?」

 

「共に戦うつもりはない、子供の彼女達が手に負えない問題を俺が対処していきたい」

 

東京の片隅にあった路地裏において、我が子を失った両親に誓ったものがある。

 

悪の魔法少女に襲われるような人間を二度と生み出さない社会を築き上げると彼は誓っている。

 

しかし結果ばかり重視するあまり何故魔法少女が社会悪に染まったのかを考えない弊害を生む。

 

魔法少女達とて普通の人間として生活してきた者達。

 

彼女達の人生を苦しめてきた原因を背負ってきた者達なのだ。

 

「俺の行った事は…奪う事、縛る事だった。しかし、これからの俺は与える者となりたいんだ」

 

「与える事によって魔法少女が人間社会を憎まない結果を生みだす。それが新たなる抑止力か」

 

「彼女達の人生を壊した理不尽社会…それを変えていく事こそが…原因と結果の解決に繋がる」

 

「では君は…社会主義を掲げて国会議員にでもなろうというのか?」

 

振り返った彼が頷き、迷いのない目を向けてくる。

 

「シュウが死んだ事により…便利屋としての俺は廃業だ。時間が空いた分、勉強に費やす」

 

「探偵業は辞めるのかね?」

 

「そうなるな。丈二には言いにくい話になるが…タイミングを見計らって伝えようと思う」

 

「武ではなく文で救う道か…君は今年で戸籍上では24歳になるし、来年から出馬出来るな」

 

「東京の魔法少女社会も俺の圧政による疲弊が極まった。疲れた彼女達は話を聞き始めてる」

 

「今年は準備段階になるな。東京の魔法少女社会に生きる者達も救ってやるのだぞ」

 

「やり遂げて見せる。彼女達が背負った人生の苦しみを聞き、解決に導くと語っていこう」

 

店から出て行く尚紀の背中を見送るニコラスの表情は喜びを感じるかのように微笑んでいる。

 

「リスクを恐れず、どこまでも困難な道に挑戦していくか…君のような生き方こそ…」

 

――()()()()()というものだ。

 

南凪路を歩く尚紀はボルテクス界で生きた頃を思い出す。

 

彼が思い出すのはアモンからミトラと間違えられた事によるミトラとの戦いの記憶であろう。

 

「司法神ミトラか…俺も司法根拠を振りかざし、虐殺を正当化した。間違えられたのも頷ける」

 

ボルテクス界でミトラが君臨した場所こそ国会議事堂における本会議場内。

 

再びその場所を目指そうとする自分の在り方もまたシジマのミトラとなっていくと実感する。

 

物思いに耽りながら南凪路を出ようとした時、見知った少女が声を掛けてくる。

 

「あっ…尚紀さん…」

 

目の前で見かけた人物とは浮かない顔をしたまま歩いている常盤ななかであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

レストランの個室に案内された2人は向かい合う。

 

冬服の私服を着たななかは迷いを孕んだ表情を浮かべており、先に尚紀が喋り出す。

 

「もう2月に入ったし、3年生組は高校組も含めて卒業を残すだけだな」

 

「…そうなりますね」

 

「浮かない顔だな?受験結果が心配なのか?」

 

「そうではありません。その…色々と悩み事を抱えておりまして」

 

「魔法少女社会の長の心労は受験が終わっても関係ないか。それより…あの子達は大丈夫か?」

 

尚紀が気にしているのはフェミニズムを掲げた魔法少女達の状況であろう。

 

ななかの話ではフェミニスト魔法少女達は長に対する要求を撤回してくれたという。

 

その後は常盤ななか達が主催する教育の場にも顔を見せてくれるようになったようだ。

 

「古株の魔法少女達の状況はどうだ?」

 

「粟根さんの件が深刻でしたが…あきらさんと葉月さんが動いてくれる事になりました」

 

こころが抱えている両親の夫婦喧嘩について、あきらは助けられなかったのを後悔している。

 

過ちを繰り返したくないと、あきらはこころの両親を説得するために動いてくれたという。

 

あきらだけでなく交渉を得意とする葉月も動き、2人の力で対処してくれているようだ。

 

「問題なのは…警察に逮捕された月咲さんのお父様の方です」

 

「あの子の父親が逮捕されただと?」

 

「彼女のお父様はDV容疑で逮捕され…公判を待つばかり。調停すら無しで起訴されたのです…」

 

「そうか…あの子は竹細工工房のような零細企業を営んでいる…これから厳しくなるな」

 

「月咲さんは凄く後悔しています…女の我儘が家庭崩壊を築いたと自責の念に駆られるのです」

 

「アメリカでもそれは同じだ。近所の入れ知恵で警察に通報したら直ぐに夫が逮捕されるんだ」

 

「酷い話です…そうなれば子供がいようが…もう一緒に暮らせないかもしれませんね」

 

「官選弁護士の話では、女性は見境なく虚偽の通報を行う。それに対する罰則すらない」

 

「そんなのって…!妻が浮気をするためにだって悪用されますよ!!」

 

「…もう日本もアメリカも()()()()()()()()。フェミニズム警察国家の未来が待っている」

 

「国民を守る為の法すらまともに機能しないだなんて…法の信頼を失うばかりですね…」

 

尚紀はスマホを取り出して丈二に連絡を入れた後、通話を終えた彼は安心しろと告げてくる。

 

「丈二のツテでDV専門のベテラン弁護士を雇える事になった。弁護士費用なら払っておく」

 

「そ、そんな…!月咲さんのために身銭まで切ってくれるなんて…」

 

「あの子だってまだ若い…過ちから学べる事は多いはずだ。可能性の芽を潰したくない」

 

「尚紀さん…」

 

「疑うのも大事だが…信じる事も大切だ。男社会の一員として…彼女にやり直してもらいたい」

 

「妹の事で泣くばかりの月夜さんが聞けば喜んでくれます。本当に…感謝しています」

 

喜びの態度も束の間であり、重い沈黙に支配されてしまう。

 

それでも一番伝えたい話があったのか、真剣な表情を浮かべたななかが語り出す。

 

「十咎さんの件についても、月咲さんの件についても…全ては()()()()()()()()()です…」

 

「ななか…?」

 

「魔法少女社会は性の難民社会…男社会に魔法少女の真実を伝えられないせいで自己完結する」

 

「男社会とのわだかまりも解けず、争う事しか出来なくなるな…」

 

「私は悔しいです…魔法少女達は社会の直ぐ隣にいるというのに…本当の事が言えない!」

 

魔獣が引き起こした事件は天災として扱われ、世間では原因不明として片づけられる。

 

それを魔法少女が解決しても決して公になることなどない。

 

魔法など誰も信じないのだから無理もない話なのだ。

 

「世界中に魔法少女が沢山いるのに…私達の戦いも…願った奇跡も…誰にも届きません!!」

 

涙ぐんでいく彼女の顔を見つめる事しか出来ない尚紀の脳裏にはアモンの言葉が過る。

 

「見たいものしか見ないし、信じない…大衆は偏見極まったドグマ(常識)に支配されるんだよ…」

 

眼鏡を外すななかはハンカチで涙を拭く。

 

彼女の無念は全ての魔法少女達の苦しみ。

 

また佐倉牧師達のような人間だけでなく神々もまた同じ苦しみを背負っている。

 

誰にも話を聞いてもらえず、揶揄と嘲笑を与えられて悪者にされる苦しみなのだ。

 

「…ドイツの哲学者であるショーペンハウアーは、真実についてこんな言葉を残してくれた」

 

――全ての真実は三つの段階を辿る。

 

――第一は、からかわれる。

 

――第二に、暴力的な抵抗を受ける。

 

――第三に、自明の理として受け入れられる。

 

「天動説から地動説を唱えた人間でさえ誰にも信じてもらえなかった。それでも諦めなかった」

 

「私たち魔法少女も…歴史に名を残した偉人達のように…真実を伝えれる者になれますか…?」

 

「ニーチェもまた()()()()()()()()()()()()と語っている。視点を転換させねばならない」

 

発想の転換を迫る者は誹謗中傷のリンチを浴びせられるのは歴史が証明済み。

 

それでも国家、民族、宗教を超えた実践のモデルが必要になってくるだろう。

 

「ななか…お前達魔法少女の苦しみ、確かに聞かせてもらった。託してはもらえないだろうか」

 

「えっ……?」

 

「俺は政治の世界に行く。民衆達の代表として言葉を言える存在こそが政治家だ」

 

「私達のような魔法少女の代表として…私達の苦しみと向き合ってくれるのですか…?」

 

「俺はただの人間として皆に叫ぼう。国会議員になろうとも、1人の人間として叫んでやろう」

 

――この世には、魔法少女と呼ばれる人類の守護者達がいてくれたことをな。

 

彼の決意を聞かされた常盤ななかの頬が赤く染まり、目から涙が落ちていく。

 

右手で左胸を抑え込み、女として抑えきれない感情を隠そうとする。

 

彼女の心の中には女の感情だけでなく迷える子羊達が救いを求めるのと同じ感情も宿っている。

 

迷える羊は理不尽社会に苦しめられるのみの魔法少女達を照らす、光を見つけられたのだろう。

 

「ありがとう……ありがとう……」

 

席を立ち上がって尚紀の横にまで来た彼女が抱き着いてくる。

 

彼の胸の中で泣き続けるか弱き者の温もりを感じた尚紀の心に激しい感情が湧いてくる。

 

その感情は人間の守護者としての戦いを支えてくれた義憤の感情。

 

その感情が今、魔法少女を守る義憤の感情へと変わってくれたのだ。

 

店から出て来た者達が別れていく中、彼女の背中を見送る尚紀は決意の言葉を残す。

 

「俺はもう…人間と魔法少女の区別はしない。たとえ魔法が使えようとも…」

 

――お前達もまた、()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 

 

家に帰っていた時、黄昏ている魔法少女を見かけてしまう。

 

クリスを停車させた尚紀は彼女に見つからないよう近寄っていく。

 

尚紀が見つけた魔法少女とは彼を憎んだ十咎ももこ。

 

「アタシは…なんてバカだったんだろう…」

 

自分が貫いたフェミニストとしての在り方を振り返っていく。

 

批判を聞かず、自分の思想こそが女性と同性愛社会を救えると自尊心を満たしてきたのだろう。

 

自尊心を満たしたかった感情とは、自分に自信が持てなくなったから。

 

愛する親友を男に奪い盗られると被害妄想に陥り、だからこそ自分を肯定出来るものを欲する。

 

その結末とは壮大な勘違いでしかなかった彼女は自分を恥じるしかない。

 

「こんなんじゃ……アタシは……」

 

ももこの脳裏に浮かぶのは悪魔と化した十七夜との戦いの記憶。

 

あの時の彼女は世直しを望む十七夜に叫んだ言葉がある。

 

――正義の世直し人にでもなったつもりか…?

 

――お前は()()()()()()()()()()()()()()()だ!!

 

「世直しを望む十七夜さんを…否定する事なんて…もう出来ない…」

 

十七夜に分からず屋と叫んだ者が同じく分からず屋になっている。

 

他人の悪い部分なら簡単に見つかるのに、自分の悪い部分になると全く見えなくなる。

 

自分への自尊心と、自分の生き方にプライドを持つ者達なら猶更だ。

 

人の欠点の見える者は、自分に同じ欠点のある確実なる証拠。

 

自己批判を行えない者は偏見を振りかざし、何処までも勝手な事をやれる光景なのだ。

 

「アタシ…尚紀さんにどう謝ればいいんだよ…?」

 

雪が降る夜道の帰り、ももこはみたまから全ての事情を説明される。

 

ももこの被害妄想は全て勘違い。

 

誤った情報を鵜呑みにして嫉妬の感情を爆発させ、百合の間に挟まりに来る男を憎んでいる。

 

綾野梨花が経験した過ちをなぞるが如く、ももこもまた繰り返してしまう。

 

全ては自分の優越性を捨てきれず、()()()()()()()()()()()()が彼女達を突き動かしたのだ。

 

「俺がどうかしたのか?」

 

「へっ?ウワァァーーッッ!!?」

 

慌てて椅子から立ち上がったももこは後ろに振り向く。

 

背後にいたのは忍び寄ってきた尚紀であり、彼女の顔はみるみる真っ青になってしまう。

 

「よぉ、最近顔を見なかったな。元気にしてたか?」

 

「あ…あの…その……」

 

「誰かと待ち合わせ中か?それにしては浮かない顔をしてるな」

 

努めて普通に接しているが、ももこの事はみたま達から聞いている。

 

フェミニズムを掲げて男の自分を憎む者になろうとも、やり直せると信じようとしてくれる。

 

「な…尚紀さん…アタシ…アタシ……」

 

突然深々と頭を下げてくる彼女に対し、尚紀は喟然として嘆息をもらす。

 

「アタシは本当に…バカだよ。被害妄想ばかりして…尚紀さんを憎んで……」

 

「言っている意味が分からない。俺を憎むとはどういう意味だ?」

 

「アタシのこと…聞かされてないの?詳しく説明するのは…その……」

 

「何があったのかは知らないが、顔を上げろ。謝る必要は無い…俺はお前に怒ってなどいない」

 

「尚紀さん…」

 

「悪い事なんて誰もしていない、自責の念を感じる必要もない…敵なんて何処にもいないんだ」

 

敵なんて何処にもいないと言われた時、家族の顔が思い浮かぶ。

 

たとえ家庭に男社会を築かれ様とも、家族達はももこを大切にしてくれた事に変わりはない。

 

家族と幸福に過ごせた人間時代を思い出せたももこの目に後悔の涙が滲んでいく。

 

「ごめんなさい……ごめんなさいぃぃ……」

 

両膝が崩れて泣いてしまう彼女に近寄った後、ハンカチを渡す。

 

落ち着いてきたももこの両肩に手を置く尚紀は語り始める。

 

「日本人は人に迷惑をかけるなと教わるが…これは人に迷惑をかける事が前提となる」

 

「迷惑をかけちゃいけないけど…迷惑をかけるのが当たり前…?」

 

「大切なのは()()()。意見の相違があった時にも当て嵌まる…簡単なようでいて極めて難しい」

 

「許容する…たとえ考え方が違う人でも…」

 

「人は感情で動く生き物だ…反する相手を拒絶する。相手の尊厳に目を向けられないからだ」

 

「相手の尊厳…」

 

「他人に迷惑かけといて相手を許さない。日本人は借りを作るよりマウントをとりたい民族だ」

 

「自分達の優越性しか見ない…劣る存在を見つけて排除したい…」

 

「そんな感情に支配されてはいけない。誰にだって尊厳はある…尊重精神こそが大切なんだ」

 

――それこそが、()()()()()()()()なんだよ。

 

優しくありたい、人に迷惑をかけてはダメ。

 

そう言われ続けた子供が大人になったら自分は我慢してるのに何故周りは我慢しないと苛立つ。

 

自分が生きているだけで限りある配分の他人の分が減っていく迷惑をかけている。

 

競争で勝てば負けた者に迷惑がかかる。

 

他人に迷惑をかけずに生きることなど絶対に不可能だ。

 

だからこそ子供の頃から許す教育が必要になってくるのだろう。

 

「俺もお前も他人に迷惑をかけ続ける者…()()()()()。そう考えたら、許し合えるんだよ」

 

尚紀の言葉を聞いていたももこの目が見開いていく。

 

子供に諭すように語り掛けてくれる男の姿が小さい頃から見てきた異性のように感じられる。

 

(アタシ…どうして小さい頃には持ってた感情を…忘れてたんだろう…)

 

産まれた時から接してきた異性と接しているような感情を感じたももこが微笑んでくれる。

 

手を差し伸べてくれた手を握り、起き上がらせてもらえたようだ。

 

<<ももこ~~っ!!>>

 

声がした方に2人は振り向くとレナとかえでが駆け寄ってくる。

 

「「あっ……」」

 

尚紀の姿を見つけた2人は固まってしまう。

 

彼女達もフェミニズムを掲げて男達を罵倒した苦しみを背負っているからだろう。

 

そんな仲間達に対してももこが首を横に振る。

 

「大丈夫だよ。アタシ達はもう憎んでいないし…尚紀さんも怒ってない」

 

「えっ……?」

 

「それよりも!高校受験を乗り越えたレナをねぎらうパーティをするんだろ?」

 

「う…うん。ももこがそういうなら…それでレナは構わないわ」

 

仲間の元までやってきたももこが肩に両手を回し込み、笑顔を浮かべてくれる。

 

そんな3人はレナの家に向かおうとするのだが立ち止まり、尚紀の方に振り向く。

 

ももことレナとかえでは男性の尚紀に深々と頭を下げる。

 

そんな彼女達に対する尚紀も首を縦に振り、それぞれが踵を返して去っていく光景を残す。

 

レナの家に向かっていた時、心の中に思った感情をももこが言葉にしてくれる。

 

「どうしてアタシが男の子を好きになったのか…その気持ちをようやく理解出来たよ」

 

――アタシが男の子に求めたものは…小さい頃から感じさせてくれた()()()()()()んだよ。

 

「突然何を言い出すのよ、ももこ?」

 

「ううん、何でもない!レナとかえでもいつか気が付くさ…きっとね」

 

「ふゆぅ?」

 

「変なももこ」

 

歩きながら談笑していたが、尚紀に言われた言葉が脳裏を過る。

 

(アタシは…もう一度十七夜さんと出会った時、何をしてあげられるんだ?)

 

許す事の大切さを尚紀に語られたが、十七夜の世直しを許容する事は未だに出来ない。

 

(きっと戦うことになる…いくら叫んでも…圧倒的に力の差が開いてたんじゃ…死ぬだけだ)

 

魔法少女では超えられなかった悪魔との力量差。

 

それを乗り越えるためには彼女もまた魔法少女の域を超えなければならないと覚悟を決める。

 

(調整屋は隠してる…業魔殿の奥にある施設のことを…)

 

彼女の覚悟は実行に移されることになるだろう。

 

その時にこそ、魔法少女を超えられる次元にまで辿り着ける。

 

ももこが求めるものこそ、悪魔に対抗する為の悪魔の力であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「そうか…貧困や差別に苦しむ人々のために…国会議員を目指すっていうんだな?」

 

夕暮れの光が窓から差し込む聖探偵事務所内。

 

仕事がひと段落ついたのを見計らい、職員達に自分の決意を語っていく。

 

「すまない…丈二。ホームレスの俺を拾ってくれたお前を裏切る決断をして…」

 

「言うな。お前の決意は俺の故郷の人々を救うための決断だ。否定出来るはずがない」

 

「……寂しくなるわね」

 

「瑠偉…お前にも世話になってきた。勝手に出て行くような判断をして…すまない」

 

「貴方には新しい目標が出来たんでしょ?知恵を用いて世直しをすると決めたはずよ」

 

「そうなるな。一番心苦しいのは…俺の事を先輩と呼んでくれたちはるを裏切る事だな…」

 

「あの子が大人になってここに来たら…貴方の姿はいない。あの子も寂しがるでしょうね…」

 

「ちはるが送ってくれた品があったな…俺の分のグラスは処分してくれて構わない」

 

「いや、これは残しておく」

 

「どうしてだ?」

 

「職員でなくなっても顔見せに来てくれていい。そのためにこそ、俺は事務所を存続させる」

 

「あの子も揃ってお酒を飲みたいんでしょ?別に職員じゃなくなっても飲みに来たらいいわ」

 

職場仲間達は尚紀の決意を尊重し、温かく送り出す意思を示してくれる。

 

心が温かくなったのか尚紀の表情も微笑みが浮かんでくれたようだ。

 

「だがな、現実は厳しいぞ?来年は選挙権を手に入れられるが…選挙に勝てなきゃ意味がない」

 

「選挙資金の問題はクリアしているが…そこが問題になってくるだろうな」

 

「今年は準備期間になるわ。貴方が政治家になれるかどうかはまだ分からないし、焦らないで」

 

「ここの職員も増強していかないとな。頼れる探偵職員がお前1人なのが悩みの種だったし…」

 

「まだ世話になる事になる。これからも宜しくな」

 

今日の仕事は終わりとなり、それぞれが帰路につく。

 

事務所の鍵を閉め終えた丈二が振り返って尚紀に声をかけてくる。

 

「今日は早めに終われたんだ。お前に行って欲しい場所がある」

 

「場所はどこだ?」

 

「俺の故郷である神浜の東地区だ。お前が守ろうと決めた人々の苦しみを…見に行ってやれ」

 

「…そうしてくる。これは俺の責務とも言えるな」

 

クリスを運転しながら東地区を目指し、大東区に入った尚紀は車を駐車場に停める。

 

「ここからは歩きで行く。地域住民達の生活環境を直に見たい」

 

「未来の政治家が行う現地調査といったところね。早めに帰らないと新入りが文句言うわよ」

 

「善処するよ。それじゃ、行ってくる」

 

彼は市の東端に位置する区を見て回る。

 

余所者に対しては排他的な街であるが、神浜の英雄を嫌う東住民はいない。

 

尚紀を見つけては声をかけ、彼もまた彼らの生活面での問題事を聞いていく。

 

「西部は開発や再開発が進む一方で東部は放置されているか…就職先の選択肢も細過ぎる…」

 

この大東区は不良地区と呼ばれる地域であり、神浜市民から評判が悪い。

 

その部分についても聞き込みを行っていくと原因が見えてきたようだ。

 

「両親共働きで家族の時間もなく、家事や教育を巡って喧嘩ばかり…子供達もグレるわけか…」

 

何よりも問題なのは経済問題であり、これこそが若者達を荒廃させる直接原因に繋がる。

 

「日本の現実が詰まった街だ…日本は25年間も給与が下がり続けて貯蓄率も戦後最悪なんだ」

 

子供の貧困や母子世帯の貧困も先進国ワーストなのが今の日本。

 

子ども食堂どころか大人食堂まで出来ている上に、国から援助も貰えない。

 

「2004年の派遣法改悪で()()()()()()()()()()。それ以来何の生産もせず中抜き横行だ…」

 

一生懸命働く人々が馬鹿を見る社会こそ、神浜の東地区だけでなく日本そのものの現実。

 

外資規制の撤廃によって、外資が制度を決められるのが21世紀の日本の政治体制。

 

派遣強化、消費税増税、五輪招致、移民解禁、関税の撤廃、社会保障の切り捨て、大企業減税。

 

「全ては外資化した経団連企業の要望書に示されている。経団連は国際金融資本家の犬共だ」

 

経団連大企業は営利団体であり、株主である国際金融資本家達に利益を渡さなければならない。

 

利益をさらに上げるため、国政に要望書を出して日本の労働者をさらに切り捨てる政策を作る。

 

「まるでファラオと神官団の為に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ…今の日本はな」

 

これこそまさに売国者天国。

 

そして売国政策の法案を作るのが売国官僚であり、国会議員はそれをまともに審議すらしない。

 

「民を豊かにするのが政治家じゃないのか?消費を増やして経済を救うのが政治家だろうが…」

 

憤りの感情を抱えたまま神浜大東団地方面に歩いていく。

 

すると入り口近くで知っている魔法少女の姿を見かける事になるのだ。

 

「あっ……」

 

見かけた魔法少女とは大東学院制服姿の八雲みかげであろう。

 

尚紀が近寄ってくると手に持っていた物を背中に隠す。

 

おどおどした表情を見せる彼女に対し、目線を合わせるよう屈んでくれる。

 

「微かにスナック菓子の匂いがするな。背中に隠しているものは駄菓子か?」

 

「あの…これは…その……」

 

「この前、俺に言ったよな?古本屋に行って勉強するって。捗っているか?」

 

それを問われた彼女は顔を俯けていく。

 

どうやら古本屋には行かず、駄菓子屋でお小遣いを使い果たしたようだ。

 

「責めているわけじゃない。学生は遊ぶのも大事だが…勉強こそが本分だ」

 

「無駄遣いしてごめんなさい…やっぱりミィは…駄菓子屋のあした屋さんが凄く大切だったの」

 

「そんなに落ち込むな、怒っていない。月が変わったし、お小遣いを貰えたから行ったわけか」

 

「うん…欲しかったお菓子があったから…全部使っちゃった」

 

「駄菓子屋といってもそこまで高い品は並べてないだろ?古本と一緒に買えないのか?」

 

「ミィ…そこまでお小遣い貰えないの。姉ちゃだって貰えるお小遣いは少ないんだよ…」

 

それを聞かされた尚紀が真剣な表情を浮かべる。

 

毎月貰えるお小遣いの額を聞かされたため、眉間にシワが寄る程に目を瞑り込む。

 

「お前の両親は…そこまで生活苦だったのか。子供のささやかな我儘すら応えられないのか…」

 

政治に詳しい尚紀は八雲姉妹の両親という労働者達を追い詰める原因を知っている。

 

「ミィね、お小遣い少ないけど元気だよ!神浜の東西が仲良しになってくれたし毎日楽しい!」

 

「違う!!」

 

声を荒げた尚紀に驚き、目を丸くするみかげは彼の真心を聞かされる。

 

「差別が解消されるだけでは足りない!!物質的な豊かさがなくて…何が人間の幸福だ!!」

 

「尚紀お兄ちゃん…?」

 

「お前のような子供は…()()()()()()()()!大人は()()()()()()()()()()()()()()()()()だ!」

 

尚紀にとって物質的な豊かさがどれだけ大切なのかは経験済みであろう。

 

彼は両親から捨てられ、ホームレスとして生きるしか道がなくなった孤児なのだから。

 

「俺がお前の両親を助けてやる!子供の小遣いすらまともに出せない苦しさから救ってやる!」

 

彼の義憤の感情は八雲一家だけでなく、全ての日本人にも向けられている。

 

力強く抱き締めてくれた尚紀が生活に苦しみぬくか弱い魔法少女に対し、誓いを言い放つ。

 

「俺が神浜の東地区経済を救ってやる!日本を救ってやる!俺にやらせろ…やらせてくれ!!」

 

彼の叫びを聞かされたみかげの両目が見開いていく。

 

我儘を言えばいつも家族から怒られたのに、我儘を言うべきだと叫んでくれる大人がいる。

 

それに応えられる生活を手にするべきだと叫んでくれる大人がいる。

 

彼の力強い誓いの言葉を聞かされたみかげの顔は満面の笑みを浮かべながらこう告げる。

 

「……えへへ、なおたん!」

 

「な…なおたん…?」

 

「もしもね…ミィのパパやママだけでなく、他の子供達のパパとママも救ってくれたらさ…」

 

――ミィが将来お嫁さんになってあげる♪

 

「邪魔したな」

 

みかげの決意を聞かされた男はそそくさと去ってしまう。

 

「あ~~っ!?なんで逃げるのさ~~!!」

 

「小学生に求婚されても嬉しくない」

 

「ミィは今年で中学一年生だよ~!!大人のレディだよ~!!」

 

小さくなっていく尚紀の背中をプンスコしながら怒っていた時、肩に手を置く人物が現れる。

 

「コラコラ、大人の尚紀さんを困らせちゃダメよ~ミィ」

 

「あっ…姉ちゃ」

 

肩に手を置いていたのだが、ほっぺを摘まんでくる。

 

「それに~…尚紀さんが欲しいのはね、私だってミィに負けないんだから♪」

 

「姉ひゃほ狙っへふほ!?はほはんはヒィほははらぁ!」

 

姉妹でじゃれ合っていたが並び合い、小さくなった尚紀の背中を見送ってくれる。

 

「あれが尚紀さんなのよ。自分を犠牲にしてでも皆のために死に物狂いで働いてくれる人なの」

 

「なおたんが抱きしめてくれた時にさ…ミィね、凄く安心したの。この気持ち…覚えてるよ」

 

尚紀の背中を見つめながら微笑むみたま。

 

妹が感じた気持ちを彼女も思い出し、尚紀に抱きしめてもらえた時と同じ気持ちになっていく。

 

「それはきっと…私達と同じ女性が最初に出会う…異性の温もりだったのよ」

 

「なおたんの温もりは小さなミィが泣いてた時に…おぶって帰ってくれた()()()()()()だった」

 

女性が最初に出会う異性とは父親である。

 

父親は産まれた娘を我が子として愛し、我が子のために死に物狂いで働いてくれる。

 

家庭においては導き手となり、良き家族として産まれた娘の世話を懸命に務めてくれる存在だ。

 

自らが率先して働き、家族を導くリーダーこそが男性の本質であり父親の資質。

 

そんな男の姿にこそ女性達は安心感を感じてくれるし満足を得られる。

 

フェミニズムに染まった犠牲者もまた、父親の愛を得られなかった者が多い。

 

父と仲が悪かった粟根こころは同性愛者となり、父と仲がいい志伸あきらは異性愛者となる。

 

最初に出会う異性である父親こそが、女性を正しい道に進めるか過ちに進めるかを決める。

 

それ程までに父となる男の役割とは重いのだ。

 

男性とは父親になる者として女性を導く存在にならねばならない。

 

そんな男性にこそ、女性は信頼と尊敬を向けてくれるだろう。

 

女性とは()()()()者だ、男性とは()()()()()者だ。

 

男女の在り方とは唯一神が生み出したセックスの光景そのものであり、神聖なものなのだ。

 

嘉嶋尚紀は男の在り方をこれからも魔法少女達に示してくれるだろう。

 

「男の人生の土台とは()()()()()()()()()()。そのためにこそ俺は…政治を用いて働きたい」

 

女達にしてやれる道を見つけ出し、自分の快楽を犠牲にしてでも歩んでいく。

 

その道はきっと佐倉牧師の道であり、織莉子の父の道となるだろう。

 

無念に散った男達の魂を背負う男の姿にこそ、魔法少女達を安心させてくれる愛が宿っている。

 

魔法少女達が最初に出会っただろう異性である父親の愛、()()()なのだ。

 

キリスト教において、ルシファーは偽りの父だと言われている。

 

グノーシス主義では人類に知恵を授けたルシファーこそが父なのだと真逆を叫ぶ。

 

2人のルシファーの背中には啓蒙の光を放つ翼が存在している。

 

同性愛をばら撒くルシファーの翼こそが魔法少女の心を救う光をもたらす翼なのか?

 

異性愛を信じるサタンの翼こそが魔法少女の心を救う光をもたらす翼なのか?

 

自由を掲げる翼と秩序を掲げる翼をもつ存在こそが堕天使ルシファーである。

 

その翼の光に照らされた魔法少女達はどんな道を望むのだろうか?

 

自由と平等を叫ぶCHAOS(同性愛)か?伝統的秩序であるLAW(異性愛)か?

 

選択を迷う者達の判断を決めるキッカケがこれからも彼女達にもたらされていくだろう。

 

自由であると同時に秩序を司る天使。

 

それこそが、かつての天使長ルシフェルの在り方であった。

 

 

真・女神転生 Magica nocturne record

 

 

To be continued




これにて、レズって本当に正しいの?という僕の問いが詰まったフェミニズム編は終わりです。
ですが僕はももみた百合カップリングを滅ぼしたい訳ではありませんのであしからず。
人間は見たいものしか見ないものなので、百合こそ正義!という人らはそれはそれで構わないと思いますね。
静香ちゃん主人公の話が残ってますがもうしばらくお待ちください。
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