人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
東京都には銀座と呼ばれる地区があり、都内有数のショッピング街として機能する。
高級ブティックや上品なバー、寿司店、高級宝飾品を売る店。
ハイテク製品を扱う最新銀座プレイス、歌舞伎座など週末に大勢人が訪れる地域である。
今日は銀座を訪れている尚紀の姿がいるようだ。
「もうすぐ風華の一周忌。佐倉牧師の家族とも久しぶりに会える…お土産は何がいいかな?」
返しきれない恩がある人々に喜んでもらえる品を選ぼうとしているが迷ってしまう。
「杏子やモモは味が濃いお菓子なら喜んでもらえるのは分かるが…佐倉牧師達は何がいい?」
質素を尊ぶキリスト教徒であるため高い品を送っても困らせるだけだと悩んでしまう。
どうやら贈り物として選んだのは食べてもらえるお菓子にしたようだ。
「杏子とモモは甘い洋菓子、佐倉牧師達には甘さ控えめの和菓子でいいだろうな」
お土産袋を持ちながら銀座の通りを歩いている時、気になる存在を見つけてしまう。
「なんだ……?」
不意に魔力を感じた彼の表情が変わって警戒し始める。
「魔法少女のものでも、魔女や使い魔のものでもない…そして悪魔とも何処か違う?」
今まで感じた事のない不思議な魔力を感じた方向に振り向く。
そこに建つビルの一階テナントに構えられていたのは小さなジュエリーサロンである。
「
悪魔から手に入れた宝石をアイテム、精霊、御霊に交換してくれた店として記憶している。
「同名の店だけだったという事もあるが…この不思議な魔力の出どころはこの店の中だな」
誘われるようにしてジュエリーRAGの店内に入っていく。
店の中はモダンな雰囲気に包まれ、かつての世界で利用した店の雰囲気ではない。
店主のカウンターと宝石の商談を行うレトロなソファーが目立ってくる。
周りはアンティークなショーケースに納められた宝石やアクセサリーが所狭しと並んでいる。
「…いらっしゃいませ。ジュエリーRAGにようこそ」
店主である年老いた外国人男性が声をかけてきたようだ。
(こいつか…不思議な魔力を感じさせる存在は?)
長めの白髪をオールバックにした髪、ベストと黒いビジネススーツを合わせた見た目。
右手には銀で飾られた高級杖を持った姿はまるで老紳士に見えるやもしれない。
「おや?貴方からは宝石の臭いがプンプンしますね?歓迎しますよ」
「俺は宝石を買いに来たわけじゃないし、売りに来たわけでもないんだがな」
「では、どのような要件で私の店にご来店されたのですかな?」
(悪魔とは違う…そして魔女や使い魔ですらない。この男は一体何者だ?)
「あんたがこの店の店主なのか?」
「ええ。私の名前は…ニコラス・フラメルと申します」
ニコラス・フラメルとは賢者の石を生み出した歴史上で有名な錬金術師である。
14〜15世紀にかけてパリの裕福な実業家、慈善家として著名な人物。
錬金術師としては具体的には金の生成や賢者の石の作製に成功した伝説がある。
ギリシャ語とヘブライ語で書かれた秘法書のアブラハムの書やカバラを解読してその力を得る。
1418年に死去し、サン・ジノサン墓地に入る最後を遂げた歴史人物のようだ。
後に墓を掘り起こした人物が言うには棺の中は空っぽだったという。
ニコラス・フラメルは不老不死の存在ではないのか?と歴史上語られてきた存在であった。
「何かの映画であんたの名前と同じキャラを見た事があるな」
「ハハハ。私の名前はフィクションの世界では有名ですからな」
「なら、あんたの存在はフィクションなのか?俺にはあんたが普通の人間には見えないな」
その一言を聞いたニコラスが静かに微笑む。
「椅子におかけなさい。貴方と話をしてみたい」
宝石の商談用ソファーに座り、互いに向かい合う。
「如何にも。私は普通の人間ではない…私は今年で688歳ですからな」
「ならお前は……本物なのか?」
「お察しの通り。私は歴史上語られたニコラス・フラメル本人なのだ」
(伝説の錬金術師が目の前にいるのか?まぁ…魔法少女や悪魔もいるんだし…不思議じゃない)
「賢者の石という存在をご存知ですかな?」
「名前だけなら…」
世界各地では不老不死になる霊薬の研究が続けられている。
中国では仙丹、インドではムップ、そしてヨーロッパでは賢者の石。
不老不死の霊薬は古今東西において重要なテーマだったのだろう。
「お前は賢者の石を生み出した人物なのか?」
「
「天界…つまり天使、もしくは堕天使から伝えられた魔術…それがカバラか?」
カバラとはユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想。
神智学とも呼ばれ、キリスト教神学者に強い影響をおよぼしている。
仏教の神秘思想である密教との類似性を指摘される事もあるという。
カバラはユダヤ教の密教的教義であり、仏教における
キリスト教のクリスチャンカバラと魔術カバラと呼ばれるヘルメティックカバラの二つがある。
中世以降、オカルティストや神秘主義派による秘儀的解釈から研究されて受け継がれていた。
「カバラにおいて世界創造は神
「その聖性の最終的な形が…この物質世界であると解釈するのか?」
「その通り。呑み込みが早くて助かるよ」
「生命の樹であるセフィロトについては、かつての仲魔から聞いた事がある存在なんだ…」
10個の球と22本の小径から構成された象徴図、それがセフィロトの樹。
一つ一つに神の属性が反映されている。
カバラは一神教でありながらも多神教や汎神論に近い世界観を持ち、仏教に近い。
アイン・ソフとは
創世記において原初の闇から最初の宇宙を生み出した存在として語られるものなのだろう。
(アイン・ソフ・オウル…悪魔が倒すべき大いなる神。一神教の唯一神であり…無限の光…)
アイン・ソフ・オウルこそ宇宙の光の秩序であり、それと戦う道こそがCHAOSの道である。
「カバラ魔術学を語ると長くなる。私が本物なのかと…未だに疑うかね?」
「石ころを飲み込んで不老不死にでもなったか?まるで悪魔だな」
「石とは固い石だけとは限らない。錬金術の世界では液体もまた石と呼ばれるのだ」
「不死の霊薬を飲んで…お前は不老不死になったというわけか?」
「そう、私の体の時間は止まってしまった。……石ころのようにね」
賢者の石は卑金属(鉛)を金などの貴金属に変えることが出来る。
ならば人間の生命も金属のような永遠の形にすることも可能だったのだろう。
「俺が感じたが魔力はカバラ魔術によって生み出した賢者の石の魔力だったのかもな…」
「さて、私の事は語らせてもらった。次は君の存在について語ってもらおう」
「俺はただの探偵見習いだ」
「それは表の顔だろう?君は…悪魔だと私は思うのだがね?」
その一言を聞いた尚記の顔は警戒心を持つ表情へと変わっていくのであった。
♦
「何故…俺が悪魔だと思う?」
「君は沢山の魔法少女を殺してきただろ?魔法少女以外で魔法が使えるのは悪魔としか思えん」
(俺の魔法少女狩りをこの男は知っている…そして魔法少女の存在についても知っているのか)
「私は石の賢者でもある。君からは宝石…いや、悪魔の魔石の臭いを感じている」
「持っていたとしたら、どうだと言うんだ?」
魔石とは龍脈のエナジーが生み出すもの。
エナジーとは感情エネルギーであり、感情エネルギー(MAG)によって悪魔が生み出される。
「つまり、君は悪魔の関係者だということだ」
(たしかに魔石なら沢山持っている。この男はそれを嗅ぎ取ったというわけか…)
「あんたは正直に自分を語った。なら俺も語ろう……俺は悪魔だ」
それを聞いたニコラスは満足そうにして微笑む。
「あんたは魔石に随分と詳しいな?もしかして魔石も生み出せるのか?」
「その通り。私はカバラや魔術神秘をより深く探求した事で魔石を生み出せた者なんだ」
「賢者の石を生み出した次は悪魔が生み出す魔石まで生み出せた錬金術師…まさに石の賢者か」
「その通り名を呼ぶ者達は限られているがね」
「カバラや魔術に詳しいなら、悪魔の存在も驚きはしないか。魔法少女も知っていたんだな?」
魔法少女という言葉を耳にしたニコラスは何処か辛そうな表情を浮かべてくる。
「知っているさ…。私の妻も…魔法少女だったのだから」
「お前の妻だと…?」
「聞いてくれるか、彼女のことを?長い話になってしまうがね…」
「構わないさ」
「私の妻の名はペレネル……ペレネル・フラメルだ」
♦
12世紀頃、イスラム科学から錬金術が輸入された欧州では賢者の石の探求熱が高まっていく。
神秘主義的なヘルメス思想とともに様々な伝説と風聞が広まり、黒魔術と関係付けて語られる。
14世紀頃、ペレネルは女でありながら錬金術の道を志した少女だと聞かされる。
「そんな彼女の元に現れたのが…キューブと名乗る契約の天使だった」
「キューブ…?契約の天使だとしたら…インキュベーターに違いないな」
「彼女は願った…錬金術や魔術の奥義を極める道に進む運命が欲しいとね…」
「どいつもこいつも…考えなしで天使に縋り付きやがって…」
「元々彼女はね、何かを利用して目的を達成することに迷いは無いタイプだった」
ペレネルは魔法少女となり、魔女と戦う運命を背負いながらも錬金術師として道を極める。
「だが彼女は知らされていなかった。魔法少女の重大問題によって道は閉ざされる事となった」
「魔法少女の重大な問題だと…?」
――魔法少女はね……
それを聞かされた尚紀は驚愕しながら席を立ち上がってしまう。
「馬鹿な!?そんな話はインキュベーターから聞いていないぞ!」
「あの生き物は必要が無いと判断した情報は一切相手に与えない連中なのだよ」
魔法少女は19歳を迎えた時期から戦う魔力が無くなっていくとしたら何が起こる?
日常生活に使う魔力の余裕すら無くなっていく事態となってしまうだろう。
「いずれ大きな魔法を行使する力も失い、魔法少女は魔女に敗れて早死する」
「そういう風に最初から作られていたのかよ…まるで
ただでさえ存在を秘匿して魔女と戦い、人間の世界で自由に生きる権利すら与えられない。
その上で魔力の減退という重荷まで背負い、戦いの世界で早死しなければならないだろう。
「まさに消耗品という概念でしか語れない存在…それこそが…魔法少女なのだよ」
「まるで神や世界の秩序のために短い人生を消費されるだけの…生贄じゃないか!!」
「その運命は私の妻をも襲った。彼女が19歳を迎えた時期にそれに気が付き…焦ったようだ」
「加齢による魔力の減退は…止められなかったのか?」
「残念ながら彼女の魔法の力を持ってしてもな。だからこそ彼女は違う存在に頼ろうとした」
「神の御使いである天使が魔法少女を救わないなら…頼るべき存在は大方の検討がつく…」
「ペレネルはカバラ神秘主義における降霊儀式によって…この世界に悪魔を召喚したのだ」
「光の秩序である天使が魔法少女を見放すのなら…混沌の悪魔を頼るか」
ペレネルはその魂を対価にして悪魔と契約を交わしたと聞かされる。
悪魔はその見返りとして彼女の肉体を不老不死に変えたというのだ。
「肉体が不老不死になれば19歳の若さを維持したまま魔法少女として生き続けられる計算か」
「彼女は長い時間を生き続けた…本来なら死んでいるはずの魔法少女の運命から解脱した」
そして彼女の願いの運命が実現される時がきたと聞かされていく。
「長い時間の中で私とペレネルはようやく出会う日が訪れた…。私達は恋に落ち、結婚した」
ニコラスも若い時期はフランスの出版業者の人間であったが錬金術の道に進む夢があった者。
そんな時、錬金術師であるペレネルと出会えたようだ。
「私は彼女からアブラハムの書を手渡された。そして彼女の勧めでスペインに向かった」
錬金術の道は己の力で道を切り開かなければならないとペレネルに厳しく言われたと語る。
「スペインのアンダルシア大学でユダヤ人のカンシュから学び、秘宝書に書かれた奥義を得た」
「どれぐらい勉強を続けてきたんだ?」
「秘宝書を解読するのに21年もかかった…その間にカンシュは死んでしまったよ」
秘宝書で得た錬金術の力を国に帰って使いたい。
愛する妻と同じ道に進めた事を妻に喜んでもらいたい気持ちで長い年月を耐え抜いたという。
「私は急ぎフランスに帰り自宅に戻った。そして…妻が不老不死である事の現実を直視した」
「……美しい姿のままだったか?」
「時間が凍り付いているような美しい娘のまま出迎えてくれた…私は年老いているのにね…」
「それを追求したのか?」
「その時はしなかった。錬金術の力で妻と一つの目標を実現させたいと願っていたからな」
「二人で賢者の石を作る…か」
「それこそが錬金術師としての私達夫婦の本懐だった」
年月が流れるのも忘れ、賢者の石を生成する研究を続けていく。
「そんな頃…周りの人間達が口々にこう言いだした」
――何故あの男の妻は、あんな小娘の姿をしたままなのだ?
「そして人々は…妻の存在を魔女だと言い始めた」
「……
魔女狩りという迫害の歴史が欧米には存在している。
キリスト教社会を脅かす存在として12世紀以降、教会の主導によって行われている。
「魔女狩りの原動力は…どちらかと言えば権力者にではなく、
理解出来ない者を拒む集団ヒステリー現象、それこそが中世魔女狩り。
魔女とされた被疑者には訴追、裁判、刑罰、あるいは法的手続を経ない私刑を受ける事になる。
「ただの人間でしかない私もまた…そんな民衆の不安と同じ気持ちを抱えていた…」
「我慢が出来なくなっていき…妻のペレネルに問いただしたのか?彼女の秘密を…?」
「ああ…我慢できなくなって…彼女を問い詰めてしまったよ」
ペレネルは愛する夫のために全てを語ってくれた魔法少女。
魔法少女の秘密、魔女の秘密、そして自分が何故不老不死なのかも語ってくれたようだ。
「妻は夜な夜な研究から離れ、家を出ていく毎日を送っていた。それが魔女との戦いだった…」
「なぜ小娘のままなのか…それは悪魔と契約して不老不死になったからだと伝えられたんだな」
これが明るみに出たら確実に魔女として人間達から裁かれる事なら分かっていたのだろう。
「妻は私にこう言った…。もう貴方と同じ時間を生きてあげる事は出来ないとね…」
「魔女として迫害され夫にも危害が及ぶ怖さ…夫が年老いて死ぬ事にも耐えられなかったか…」
「そして彼女は自分の研究成果を私に託し、私の元から去っていった…」
「愛するが故に…分かれるしかなかったか…」
「彼女の意思を継ぎ、賢者の石を完成させた。だが共に喜んでくれる人は…隣にいなかったよ」
彼の苦しみはあまりに深く、長い沈黙が続いていたがニコラスは続きを話してくれる。
「去ってしまってからも愛していた…彼女の苦しみを想像し続け…共に背負いたいと決意した」
「まさか…その時に?」
「私は…賢者の石を飲み込んだ。妻と同じく不老不死になり、彼女と共に生きたかったんだ…」
「やはり死去したというのは偽装だったか…」
「私は表の世界から消えた。私と妻は社会の裏で生き続け、共に錬金術を極めたかった…」
「妻の行方を探し続けたんだろうな」
「最初に彼女と再開出来たのは1431年、5月30日が過ぎたフランスのルーアンだった…」
その日はフランスの歴史上、最も悲しみに暮れる事件が起きた日。
歴史上では
「私はもう一度やり直そうとペレネルに復縁を求めた。だが…拒絶されてしまったよ…」
「無理もない…夫まで自分と同じ不老不死になってしまったんだからな…」
「妻はフランスから消えた。世界を探し歩いたが彼女を見つける糸口さえ見つからなかった…」
「偉大な錬金術師のお前の力でさえ…妻を見つけられなかったか…」
「だからこそ…私も彼女と同じ道を辿ろうと決意したんだよ」
「それが…悪魔の力とも言える魔石の研究か」
ニコラスは悪魔の存在とその力の研究に没頭していく。
そして魔石を生み出す力を得ることとなったようだ。
「膨大な時間が過ぎ去っていき…気がついたら20世紀初頭になってしまっていた」
ニコラスは魔石の力の一つである未来予知の力を用いて妻の行方を探す。
「そしてアメリカの地で彼女と再開した時……彼女は変わり果てていたんだ」
「変わり果てていた…?」
「長い年月は人の精神を擦り減らしていく。彼女はもう…私の知ってる錬金術師ではなかった」
錬金術と魔術を極める情熱は何処かに消え去ったかのように変わり果てた妻との再会を語る。
「彼女は錬金術で得た財で無意味な生を生きているだけだったんだよ…」
毎日酒に溺れてはろれつが回らない言葉を喋る女となったと語っていく。
長く生き過ぎ、朽ち果てた魔法少女に成り果てていたのだと辛そうに語ってくれるのだ。
「夫のお前さえ拒絶したというのか?」
「彼女を救いたかった…しかし私の言葉など…彼女は聞く耳をもってくれなかった…」
酔いに任せて夫を罵倒するだけの妻の姿に再会の喜びも消え去り、絶望してしまう。
「私は彼女の苦しみが分かる…私も長く生き過ぎて人間の情熱も擦り切れてしまった男さ…」
「それでもたった一つ残ったものが…妻への愛だけだったか」
「そうだ…その想いは…妻には通じなかった」
説得を続けた夫もついには妻から叩き出されてしまう末路となっていく。
その後は日本に流れ着き、妻と同じく無意味な人生を生きているだけだと語ってくれたようだ。
「それが魔法少女であり、お前の妻でもあるペレネル・フラメルか…」
「…長い話を聞いてくれて有難う。君の名前は何というのかな?」
「嘉嶋尚紀だ」
「ナオキ君か。聞き苦しい年寄りの昔話に付き合わせてしまったな」
「構わない。お前の気持ちは…分からなくもないからな」
彼もまた一人の魔法少女を愛したことがある男だからこそ気持ちに寄り添える男なのだろう。
「ナオキ君。頼みがあるのだが…聞いてはもらえないだろうか?」
「なんだ?言ってみろ」
――妻を…ペレネル・フラメルを…殺してやってはくれないか?
――――――――――――――――――――――――――――――――
「心から愛する妻を…俺に殺して欲しいだと?一体何を考えているんだ?」
「妻はね…死にたくても…死ねない体となったんだ」
体は不老不死であり、ガソリンを被って火を点けようが、体を爆発させようが死ねないという。
「不老不死…聞こえはいいが…死ぬ自由すら奪われる悪魔の呪いか…」
「アメリカにいた頃…錯乱した彼女の自殺劇を何度も見せられた私こそ…不老不死の証人さ」
「彼女が死を望んでいるのなら、自分のソウルジェムを自分で砕けばいいだけだろ?」
「さっき言ったが、彼女は悪魔にその魂を対価として差し出した。君なら分かるだろう?」
「まさか……ソウルジェムを?」
「そうだ…ペレネルは自分のソウルジェムを…悪魔に奪われてしまったのだ」
「残ったものは不老不死となった魔法少女の肉体だけか……」
契約の悪魔は常にペレネルと共にいると聞かされる。
彼女はソウルジェムが離れる心配も無く、魔法少女として活動を続けてこれたようだ。
「お前は俺に…その悪魔を倒させた上で、妻のソウルジェムを砕いてくれと言いたいのか?」
「そうだ…私は石の賢者だが、強大な力を持つ悪魔と戦う力はないんだ」
「ペレネルでさえ契約の悪魔を倒せない。だから俺に頼みたいのか?俺にアメリカに行けと?」
「妻は近いうちに日本に現れる。私は未来予知で既に分かっている」
「なんのために?」
「……
暫くの沈黙の跡、険しい表情をした尚紀が口を開く。
「……断る」
立ち上がって土産袋を両手に持ちながら店を出ようとするのだが、立ち止まる。
振り向きもせずに最後の言葉を残してくれるようだ。
「心から愛する魔法少女を救いたいなら自分でやってみせろ。これは…俺が出来なかった道だ」
「まさか…君も魔法少女を愛した男か…?」
「俺みたいにはなるなよ……ニコラス」
そう言い残した尚紀は店を出て行ってしまう。
「私の力で…愛する魔法少女を救う……か」
残された石の賢者は彼が言い残した言葉を繰り返す。
これは尚紀が成し遂げられなかった望みをニコラスに託す言葉でもあるのだろう。
もうすぐ救えなかった魔法少女の一周忌を迎える時期の出来事であった。
読んで頂き、有難うございます。