人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
静香の罰が執行される当日、時刻は日も沈みかけた頃。
静香は神子柴から呼び出された大神殿の元へと向かっているようだ。
神子柴家の使用人としても働いているすなおに先導される静香とちはるがついていく。
「ちゃる…これは私に与えられる罰なのよ。貴女がついてくる必要は…」
「ダメだよ!静香ちゃんにもしもの事があったら…私は…絶対に止めるから!」
「ちゃる…ありがとう。覚悟なら出来ている…ちゃるや皆の責任だけは問われないようにするわ」
「静香ちゃん……」
友達を心配するちはるであるが、すなおは重い口を閉ざしたままの態度を示す。
地下通路を超えていくと村の避難所としても使われる大神殿が建てられた空間に出たようだ。
篝火で明かりが灯された空間を歩いていると静香が驚いた声を上げてしまう。
「涼子!?ちか!?どうして貴女達までいるの!」
大神殿の入り口の前に立たされていたのは南津涼子と青葉ちかだったようだ。
「静香かよ!?あたしらは村の奴らに呼び出されてここまで連れてこられたんだけど…」
「その人もここまで案内したら帰ってしまったんです。私達ももう帰ろうかと考えてました…」
状況が飲み込めない魔法少女達であったが、大神殿の入り口が開く音に気が付き顔を向ける。
「全員揃ったようじゃのぉ」
大神殿から出て来たのは和服姿に身を包む神子柴である。
老婆の姿を見た涼子とちかは怒りの表情となり、大きな声でまくしたててくる。
「あたし達をここに連れてこさせたのはお前さんだったのかよ!目的は何だ!!」
「静香さんまで呼ぶということは…もしかして…ここで静香さんに罰を与えるんですか!?」
「その通りじゃ。そしてその罰はお前達にも与えられるだろう」
それを聞いた2人は驚愕の表情を浮かべた後、ソウルジェムを生み出して変身する。
「ふざけるなぁ!!もうお前らの好きにはさせない…あたしら分家組は…お前さんと絶縁する!」
「私達は自由に生きます!そして私達が望む自由とは…静香さん達を救うことです!」
涼子とちかは魔法武器を生み出して神子柴に襲い掛かろうとするのだが静香が2人の肩を掴む。
「待って!!私が罰を受ければそれで済むわ!!貴女達まで裁かれてしまう!!」
「ダメだ静香!こんな糞婆なんかに付いて行く必要はないんだよ!!」
「そうです!私たち巫の自由な願いを踏み躙ってきた独裁者なんかに…静香さんは渡しません!」
涼子とちかの気持ちに呼応されたちはるも魔法少女姿に変身する。
「涼子ちゃんとちかちゃんの言う通りだよ!静香ちゃんを傷つけるなら…オババでも許さない!」
今にも神子柴に襲い掛かりそうな親友達の心は嬉しい。
しかし静香は時女当主から胸の内の苦しみを聞かされた者として言える言葉があった。
「みんなの気持ちだけでは…この村は救えないの。神子柴様はね…この村のスポンサーなのよ」
「だからスポンサーの言いなりになるのかよ!?それでよく時女の矜持を語れるな!?」
「私の母様も苦しんだ!人間如何に生きるべきかを見て現実を考えないでは破滅するだけなの!」
「だからって…それでいいのかよ…お前ら時女本家の連中は!!」
悔し涙が浮かぶ魔法少女達を見下ろす神子柴が高笑いをしてくる。
「静香は大人じゃのぉ。浅慮な正義感だけで全てを判断する幼稚さを克服するとは…見事じゃ」
静香は神子柴が立つ石段の前にまで来て跪く。
「無責任な連中は我儘しか言わない。責任さえとらずに正義ばかりを語るが…お前は違うな?」
「私は…霧峰村を守る時女本家の女です。彼女達も時女一族の者…私が命をかけて守ります」
「どんな重い罰でも受ける覚悟か。流石は時女当主の娘じゃ」
「つかぬことをお伺いしますが…母様を知りませんか?朝から家にいないのですが…?」
「あの者はヤタガラスの任務があると聞いておる。お前が起きるよりも先に村を出たぞ」
「そうでしたか…。神子柴様…どうか私への罰だけで済ませてもらえないでしょうか?」
「先ほどのワシに向けての無礼の数々は忘れよう。お前の覚悟に報いようではないか」
「有難きお言葉…感謝します」
スポンサーに恭順の意思を示すことしか許されない静香の姿を見て、親友達は悔し涙を浮かべる。
巫達の自由や幸福を踏み躙る独裁者にさえ頭を下げることでしか下々の者達の生活を守れない。
これは企業社会でも同じであり、それこそが代表者になった者達が背負わなければならないもの。
巫達の生活や企業に勤める労働者達の生活を守るために犠牲となる者達の現実であったのだ。
「では…静香に与える刑罰を伝えよう」
神子柴の視線が石段の前に集まった者達から離れた場所に立つ者に向けられる。
「静香に与える罰は……静香を含めた全員の極刑じゃ」
<<えっ!!!?>>
驚愕した顔を浮かべた瞬間、背後から大きな魔力を感じとる。
静香達が後ろを振り向けば、すなおがマギア魔法を放つ構えをしていた。
「ごめんなさいッッ!!!!」
号泣したまますなおが放つのは、明日への戒めと呼ばれる極大魔法。
<<キャァァァァーーーッッ!!!>>
巨大な光玉の爆発が彼女達を襲い、吹き飛ばされた全員が石段に叩きつけられていく。
段差で転がり落ちていき、地面に倒れ込んだまま静香はすなおに顔を向けようとする。
「ぐっ…うぅ……。すなお…どうして……?」
涙を流しながら震える彼女は小さな呟きを繰り返すのだが静香達には聞き取れない。
「すなおも静香と同じく掟を破った者。あの娘は罰として…ワシに仕える暗殺者になったのじゃ」
「あ…暗殺者…?そんな…嘘だよね…すなおちゃん!!」
傷ついたちはるが叫ぶが、罪に耐えきれなくなったすなおは両膝が崩れてしまう。
「ごめんなさい…許して…静香…ちゃる…涼子さん…ちかさん…!許してぇぇぇ……ッッ!!」
両手で顔を覆いながら号泣する姿を見せられたため、それは事実なのだとちはるは理解した。
「どうしてですか…?さっきは私の罰だけで済ませるって言ったのに…どうしてぇ!!」
「それがヤタガラスから与えられた勅命だからじゃ」
「ヤタガラスから与えられた勅命…?私達の命をどうして…ヤタガラスが狙うんですかぁ!?」
「それは広江ちはるが一番知っておる筈なのじゃが…はて?聞かされておらんのか?」
それを語られた時、ちはるの顔が絶望に染まっていく。
静香達は自分のせいで殺されることになったのだと恐怖に怯え、ソウルジェムが酷く濁る。
「どういう事なんだよ…ちはる…?電車で帰る時から…お前さんの様子が変だったぞ…?」
「私達には語れない秘密を抱えていたんですか…ちはるさん…?」
倒れ込んだまま涙を流し、詫びる言葉を叫んでしまう。
「ごめんなさい…みんな…ごめんなさい!!私のせいで静香ちゃんやみんなが…殺される!!」
「この者は三羽鳥様の護衛任務の時、あのお方達の秘密を見た。それは死罪に当たる重い罪」
「ちはるがあの薄気味悪い連中の秘密を見たからって…どうしてあたし達まで殺されるんだよ!」
「そうです…!!私達はちはるさんからは…何も聞かされてないのに!!」
「真相はどうあれ、それがヤタガラスから与えられた勅命。ヤタガラスの勅命は絶対なのじゃ」
「それじゃ…私だけでなく…ちゃるや皆も…最初から殺す気だったのね!?この嘘つき!!」
「呪うならばヤタガラスを怒らせた広江ちはるを呪え。さぁ、すなお…トドメを刺すのじゃ」
ヤタガラスには逆らえないすなおは立ち上がり、魔法武器である水晶を頭上に掲げる。
静香も片膝をついて立とうとするが、恐怖に怯えるすなおは逆らえない態度しか示せない。
「やめて…すなお!!殺すなら…私だけを…殺しなさい!!」
「出来ないの…私…ヤタガラスに逆らうことが出来ないの!逆らえば…家族が殺される!!」
「静香ちゃんやみんなを殺さないで…!!私はすなおちゃんを恨まない…私だけを殺して!!」
「貴女にどんな理由があったとしても…私は恨まない!だから私だけを殺して…すなお!!」
大切な2人の親友達は暗殺者だった親友を責める事もせず、自ら命を差し出そうとする。
抵抗してくれたなら自分を呪いながらも彼女達に殺されても良かった。
しかし命を奪おうとする裏切り者に向けてくれる親友達の優しさが心を縛り上げていく。
「何をしておる…早く殺せ!!」
魔力を集中しようとするが、涙が溢れ続けるすなおはマギア魔法を放つことが出来ない。
「家族がどうなってもいいのかぁ!!」
ついに自責の念に堪えられなかったのか、宙に浮かび上がらせた水晶玉が落ちてしまう。
同じようにしてすなおの両膝も崩れ落ち、泣き喚きながらこう叫ぶ。
「できませんッッ!!!」
暗殺者だったのがバレたとしても、親友の頃と同じように接してくれる静香とちはるを殺せない。
すなおの心はついに折れ、静香達と共に殺される覚悟を決めてしまう。
不快極まった表情を浮かべた神子柴が封魔管を構える。
「情に負けおって。まぁいい…ヤタガラスの勅命に背いた者として、お前も始末してやろう」
封魔管の蓋が開いていき、MAGの光を解き放つ。
「嘘だろ…おい…?神子柴まで……デビルサマナーだったのかよぉ!!?」
大神殿を背に顕現したのは、下半身のない巨大な髑髏のような悪魔であった。
【ガシャドクロ】
戦死者など埋葬されず野垂れ死んだ人々の骨が怨念によって合体して人を襲う巨大妖怪である。
夜中にガチガチという音を立ててさまよい歩き、生者を見つけると襲い掛かって喰らうという。
昭和中期に創作された妖怪であり、民間伝承由来の妖怪とは出自が異なるようだった。
「やっとウチの出番のようやな!ムシュフシュばかりいい思いをして…ムカついとったんや!!」
「ワシのムシュフシュはもういない…望みのままに小娘共を喰い殺せ」
「サマナーさんのお許しがでたで!傷ついとるのは好都合…いてもうたるわぁ!!」
巨体な上半身を浮遊させながらガシャドクロが右腕を持ち上げていく。
傷ついた魔法少女達を掴み取って踊り食いをしたかったのだろうが、伏兵の存在に気付く。
「おや?あそこの岩場になんかおるぞ…?」
ライフル銃を構えながら岩場に潜んでいたのは、静香達が心配で後をつけていた旭であった。
「チッ!!」
銃剣を装備したボルトアクションライフルの銃口からライフル弾が発射され眉間に撃ち込まれる。
「あだっ!!?」
おでこを抑えて悶絶するが、魔力の籠った旭の銃弾をまともに受けてもビクともしない。
「このガシャドクロ様を怒らせよったな!どつきたおしたる!!」
「援護するであります!!早く外へ!!」
旭の援護射撃に助けられた魔法少女達が立ちあがって駆けていく。
「放して!!全部私が悪いの…私は殺されたらいい…それでみんなが助かるんだよぉーっ!!」
「お前の事情なら後で聞いてやる!!」
「先ずはこの場から離れましょう!!」
ちはるは涼子とちかに手を引っ張られながら大神殿空間に入れる出入口まで走る。
静香もすなおの元まで駆けてくるが、座り込んだまま彼女は首を横に振る。
「私の事はいい…静香達だけでも…助かって…」
「何を言ってるのよ!?私がすなおを見捨てる筈がないでしょ!」
「私は…暗殺者よ…。裳着という名の偽装殺人を繰り返した…ただの人殺しなのよ!?」
「裳着が…偽装殺人?それは本当なの…?」
「本当よ…。村から独り立ちしたい巫達を喜ばせて…私は多くの巫達を殺してしまった…」
今まで信じてきた時女一族の伝統が音を立てて崩れていく。
大きな衝撃を心に受けながらも、それでも静香はすなおに手を伸ばす。
「私はね…神浜で見たわ。殺戮者となった嘉嶋さんでも…好きになってくれる魔法少女達の姿を」
「わ…私のことも…尚紀さんやななかさんのように…皆は許してくれるの…?」
「私はもう…正義を誰かに押し付けはしない。殺戮者となった尚紀さんだって…やり直せたわ」
微笑んでくれる静香が手を差し伸べてくれる。
魔法少女の虐殺者として生きた尚紀と同じ殺戮者でも、やり直すことが出来るかもしれない。
そう思えたすなおは静香の手を握り締め、起き上がらせてもらう。
「急ぐであります!!」
旭の援護射撃のもと、静香とすなおも旭と共に洞窟通路へと走っていく。
「逃がさへんで!!と思ったら……入り口が狭過ぎるやないかーーっ!!?」
巨大な髑髏妖怪であるためガシャドクロは静香達が通った通路に入ることが出来ない。
頭を抱えて悩んでいたが、召喚者に強制的に封魔管へと戻されてしまう。
「あの小娘共…生きて村には帰さん!!ワシから逃げられると思うなよ!!」
神子柴は和服を掴んで脱ぎ捨てる。
巫蠱師の忍者衣装姿となった神子柴もまた静香達の後を追いかける。
静香に手を引っ張られながらも走り続けるすなおの心には、懺悔の気持ちよりも喜びの方が強い。
人殺しでもついて来いと手を引っ張ってくれる親友の姿が愛しくて堪らない表情を浮かべている。
「私…静香になら何処までもついて行く。たとえこの先に続く道が…破滅であったとしても…」
すなおの心は地上の光が差し込んでくるのと同じようにして、救いの光を感じてくれていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
地下で戦えば洞窟が壊れて生き埋めになる危険が大きかったため、魔法少女達は外に向かう。
既に日は沈んでおり、辺りは夜の暗闇に包まれていたようだ。
星空だけが光りを与えてくれる夜道を魔法少女達は駆けていく。
「涼子!どうしたの!」
先に外に出ていた涼子達に近寄る静香達。
状況を見ればちはるが座り込んでしまい泣き喚く姿を晒していた。
「ちはるの狼狽が酷過ぎる…。ソウルジェムの濁りが抑え込めない程に…」
「手持ちの魂魄で穢れを吸い出しましたけど…ちはるさんはこの場から動こうとしないんです…」
みんなが犠牲にされるのは自分のせいだと泣き喚く彼女はここで死にたがっている。
意を決した涼子は静香に顔を向け、決断する表情を浮かべた。
「ここはあたし達で食い止める。静香はちはるとすなおを連れて村まで逃げるんだ」
「すなおさん、私達の気持ちは静香さんと同じです。心配しないで、ちゃんと守りますから」
「ダメよ!悪鬼と違って悪魔共は魔法の力を使ってくる!2人だけでは危険過ぎるわ!」
「ならば3人で戦うでありますよ」
横を向けば旭が微笑んでくれている。
彼女も涼子とちかと同じ覚悟を示し、未来の時女一族の当主を守る決意を示す。
彼女達の覚悟を受け取った静香の顔から迷いは消え、ちはるを両手で抱き上げる。
「放して静香ちゃん!私さえ死んだらみんな救われる!口封じなら私だけを殺してぇ!!」
「ダメ!!ちゃるもすなおも死なせない…それこそが…私が信じる時女の矜持なの!!」
「涼子さん…ちかさん…旭さん…本当に有難う。貴女達を殺そうとした女なのに…助けてくれて」
「罪を憎んで人を憎まず。孔子の言葉は東西の宗教観にも根差してる…あたしの好きな言葉さ」
「すなおさんの罪という結果だけで全てを判断しません。尚紀さんの生き方から学べました」
「我も生き残れたら嘉嶋殿と出会ってみたいでありますね。だからこそ…戦うであります」
神子柴の追撃を待ち伏せる伏兵として涼子達はその場に残る。
静香達は村の方へと逃げていったようだ。
「気をつけろ…悪魔の結界に飲まれたようだ」
異界に取り込まれた3人の魔法少女達の前に現れたのは浮遊するガシャドクロである。
「急に管の中に放り込まれてビックリしたわ!隠れてても分かっとる!出てくるんや!!」
待ち伏せに気が付かれていたため涼子達は茂みの中から姿を晒す。
「神子柴のクソババアは何処にいる!!」
「サマナーさんなら獲物を追いかけていったで。あんさんらはウチの獲物となるんよ」
「ここは通しません!私達が食い止めます!!」
「そういう訳でありますよ。悪鬼だけでなく妖怪が相手だって巫は負けないであります」
魔法武器を構えていく魔法少女達。
しかしガシャドクロは旭の事が妙に気になる様子。
「むむっ!あんさん知ってるで!禁忌の森を彷徨ってるウィルオウィスプから聞いたんや!」
「あの亡霊悪魔共を知ってるでありますか…?」
「当たり前や!悪魔界隈では評判やで?男の亡霊達をメロメロにするプリティーアイドルやって」
亡霊悪魔界隈で変な噂をたてられていると知り、旭の顔が赤面してくる。
「おい…旭?お前さん…もしかしなくても亡霊悪魔共にモテモテなのかよ?」
「我の固有魔法のせいであります…。呼んでもいないのに森の中で酷くからまれたでありますよ」
「まぁ連中の気持ち悪さなら分かるよ…。憑りつかれた事があるし…」
「えぇ…?涼子さんは男の亡霊に憑りつかれてたんですか?よく無事でしたね?」
「我の中にも入りたいって我儘ばかり言ってきやがりましたしなぁ。エッチな事をされました?」
「されてない!!あたしの貞操はまだ綺麗なままだよ!!」
ガシャドクロの妙な態度もあり、戦場の空気が悪魔会話のような流れとなっていく。
「ところであんさんらは都会人やろ?ウチはスマホっていうのを知らんのよ。知っとるか?」
「なんか妙な流れになってきたな…知ってるけど、それがどうしたんだい?」
「ウチはあの板切れで何が出来るのか知りたいんや。電話が出来るっていうのはホンマなん?」
「電話機能だけじゃありませんよ。ネット検索も出来ますしSNSだって利用出来ます」
「ネット…?SNS…?そんな機能まであるんかい!ウチ妙に気になってきたわー」
巨大な手をすり合わせながら何やら物欲しそうな態度を示してくる。
悪魔会話とはこのようにして悪魔に貢ぎ物を手渡すことで機嫌をとり、要求を飲ませる。
悪魔とサマナーの関係性は人間社会と同じく相互利益によってしか機能しないのであった。
「あたしらのスマホが欲しいのかよ?だけどよぉ…こんなに小さいんじゃ扱えないぞ?」
涼子は赤い和服衣装めいた魔法少女服の懐からスマホを取り出してガシャドクロに見せてくる。
「げぇ!?それが噂のスマホかい!なんて小ささや…ウチの手じゃ操作出来へん!!」
ガックリと項垂れてしまうガシャドクロ。
険悪な空気となっていくが、3人の魔法少女達はひそひそ話を始めていく。
「なんか…話し合ったら分かってくれそうな雰囲気の悪魔だぞ?」
「悪魔は邪悪で統一されてるようではないですね?トロールさんも話せば分かってくれましたし」
「妖精と同じく気分屋なところがあるであります。まぁ…本物の邪悪な悪魔もいるのでしょうが」
期待を裏切られたためガシャドクロはこんな話を持ち出してくる。
「そうや。ウチは魔法少女連中から欲しいものがあるんや」
「まさかソウルジェムを渡せとか言うなよ?これはあたし達の命そのものなんだ」
「けちんぼやな!それなら仕方ない、魔力を吸わせてくれへんか?喉が渇いてるんや」
「我らの魔力は有限であります…。チューチュー吸われたら穢れが広がるでありますよ…」
「さらにけちんぼ連中やな!あー…なんか話すのも飽きてきたさかい、そろそろ始める?」
ゴゴゴゴと怒りのオーラを出し始めるガシャドクロ。
怒りを鎮める話術スキルを持った仲魔がいてくれたら怒りを鎮めてくれるやもしれない。
しかし話術に長けたシルフは現在、昨日の騒動が原因でこの場所にはこれなかったようだ。
「残念だよ。尚紀のように話せば分かってくれる悪魔ばかりだったら良かったのに」
「そこら辺も人間臭いですよね、悪魔って。私も残念です…こんな形で戦うなんて」
「悪鬼のように邪悪極まりない存在の方がやりやすかったでありますが…我も残念であります」
両手の骨をバキバキと鳴らし、ガシャドクロは戦闘の構えを見せてくる。
魔法少女達も魔法武器を構える姿をとっていく。
巨大な悪魔と戦い合うことになった魔法少女達は心の中でこう思う。
悪魔というだけで善悪を決めてはならない。
人殺しの犯罪者というだけで善悪を決めてはならないのだと心に誓うのであった。
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「いてもうたるでぇーーっ!!」
ガシャドクロの全身が帯電していき、周囲に飛び交う電撃を放つ。
『マハジオンガ』の全体雷撃魔法を潜り抜け、魔法少女達が反撃に出る。
「ハァァーーーッッ!!」
ちかが飛び込み両手に握られた片手斧の一撃をお見舞いするが巨大な右腕で受け止められる。
「あいたっ!!可愛い顔して骨に響いたで!?けっこうなゴリラ乙女やないかい!」
「既に全身が骨姿じゃないですか!?叩けば勝手に響きますよ!!」
「あかん!?そうやった!」
右腕で払い除けるが今度は逆の方向から涼子が攻めてくる。
「愚鈍な動きで巫を倒せると思うなよーーっ!!」
座禅を組んだ修行僧の肩を叩く警策を模した魔法武器で攻撃を仕掛ける。
ガシャドクロは巨大な左腕で受け止めるが、警策から業火が噴き上がり左腕が燃えていく。
「あたしの地獄の業火はどうだい!!」
「アチーーッッ!?炎はあかん!!火葬されてまうーーっ!!」
「炎が弱点か!これでもあたしは修行僧だし、骨妖怪の供養をしてやろうじゃないか!!」
怯んで後退していくガシャドクロに向けて旭も援護射撃を撃ち続ける。
「我とちか殿の攻撃ではビクともしないでありますが…涼子殿の炎が勝利の鍵であります!」
「援護してくれ!いっぱつデカイのをお見舞いしてやる!!」
暴れまくるガシャドクロを相手に果敢に攻めるちかと旭。
背後に回り込んだ涼子が警策に清めの炎を纏わせ、一気に跳躍。
巨大なガシャドクロの真上まで飛んだ涼子が一気にマギア魔法を放つ構えを見せる。
「骸で出来たお前さんを成仏させてやる!」
降下する勢いのまま警策を叩きつけようとする体勢だが、ガシャドクロが禍々しい光を放つ。
「あの呪いめいた光は……まずいであります!!」
駆けだした旭がガシャドクロ目掛けて一気に跳躍。
「おいっ!?」
一撃を放とうとした涼子に抱きつき、向こう側まで飛び越えていく。
ガシャドクロ周囲にはサンスクリット語の円陣が生み出され、『マハムド』が行使されたようだ。
「おしい!あのまま飛び込んでくれてたら坊さん巫をポックリ死なせてやれたのに!」
「あれがムドと呼ばれる呪殺魔法でありますか…。我も初めてみるであります」
「旭…お前は悪魔の魔法を知ってたのかよ?」
「妖精や亡霊悪魔達から悪魔の魔法について聞かされていたであります」
「呪殺魔法なんてスゲー魔法が使えるんだな…。悪魔は悪鬼よりも厄介だよ…」
「さぁ、どうするんや?坊さん巫と連れの連中!迂闊に飛び込めば冥途逝きやでぇー?」
接近戦を主体とする涼子が迂闊に踏み込めなくなり状況は一変する。
ガシャドクロの雷魔法と巨体から繰り出す物理攻撃に翻弄されて決め手を欠く光景が続くのだ。
「私の魔法でガシャドクロの動きを止めます!」
ちかが放つのは両手の片手斧から生み出す竜巻を発射するマギア魔法。
ネイチャー・リグレッションの竜巻を側面から受けたガシャドクロの体の動きが止まったようだ。
「今です、涼子さん!!」
「任せとけ!!」
涼子は大きく跳躍する。
竜巻の奔流ごとガシャドクロにマギア魔法を打ち込む体勢である。
「お経の唱え過ぎでアホになったようやな!好都合や!!」
竜巻で動きが止められているが、魔法を行使出来ない状態ではない。
再びマハムドを放とうとするのだが、ガシャドクロは視線を大きく上に向けていく。
「あ…あら……?」
涼子は頭上から攻撃を狙うことなく悪魔の背後まで跳躍して超えてしまう。
これには何かの狙いがあったようだ。
「弱点魔法が使える涼子殿ばかりに気を取られ過ぎたでありますね!!」
竜巻の奔流とマハムドが消え去った瞬間、ライフル銃を構えた旭が跳躍してくる。
「狩場で我と会ったのが運の尽き。苦しまず逝かせるのは我の得意とするところ」
跳躍状態から次々とライフル銃の射撃を繰り返す。
巨大な髑髏頭に次々と命中していき、巨体がぐらついた瞬間を狙って突撃する。
「ゼロ距離からの一撃…これでトドメであります!!」
銃剣を装備したライフル銃でガシャドクロの眉間に強烈な突き攻撃を放つ。
三浦旭のマギア魔法ともいえる『突貫!絶対必中弾雨』である。
「グワァァーーーッッ!!!」
銃剣が突き立てられた状態から放たれたライフル弾がガシャドクロの眉間を貫く。
髑髏を蹴り大きく後方宙返りしながら旭は叫ぶ。
「今であります!!」
旭の一撃でも仕留めきれなかったが、マハムドを放てる状態ではなくなっている。
ガシャドクロの頭上から降りたつのは炎を纏う一撃。
「あの世でいい夢見ろよ!!大炎魔警策茶昆!!」
ついに涼子のマギア魔法の一撃がガシャドクロの頭蓋骨にクリーンヒット。
「これだから坊さんは嫌いだーーーッッ!!!」
全身が業火に包まれ、巨大な体が倒れ込む。
野垂れ死んだ髑髏達が次々と火葬され、MAGの光に代わっていく。
ひび割れた髑髏だけが残り、最後にガシャドクロはこんな言葉を残すようだ。
「坊さんに供養されたけど…楽しみが増えたでぇ。いつかサマナーになった時は…召喚してくれ」
「ガシャドクロ…お前さんはバカだよ。神子柴なんかに付いて行かなきゃ死なずに済んだのに…」
「そうかもしれへん…でも、これでええんや。絶対に召喚してーや…とくに旭ちゃん!!」
「ええっ!?わ…我に召喚催促するでありますかぁ!?」
「ズドンと眉間を撃たれた時、ハートもズドンされてもうた!亡霊悪魔の気持ちが分かったで!」
「何を我に期待しているのでありますか…?もうこれ以上の亡霊悪魔はこりごりであります…」
「ウチら亡霊悪魔のプリティーアイドルのためなら死ねる!次会う時を楽しみにしてるで!」
「ガシャドクロ殿はもう死んでるでありますー!!」
彼なりの気持ちを受け取りながらも、MAGの光を放出して消え去る悪魔を見送ってくれる。
「ジュボッコ爺さんや妖精、それに亡霊悪魔からも好かれるなんて…旭はモテまくりだなぁ?」
「何か悪魔を引き寄せるフェロモンでも出してるんですか?」
「そんなフェロモンを出してるなら…我は風呂で一日かけて体臭を清めたいであります…」
照れてしまう旭をからかいつつも、涼子とちかは村に戻る道に顔を向けていく。
「神子柴が静香達を狙ってる。あたし達も追いつくぞ」
「今夜が勝負になりそうですね…。分家の者として、時女一族を変える手助けをします」
「我も傍観者は止めるであります。同じ分家の者として…この村に自由を望むであります」
3人の魔法少女達は頷き合い、静香達の後を追うために夜道を駆け抜ける。
神子柴から自由を奪われ、従属させられてきた歴史は終わるだろう。
これからの未来は巫達の自由が尊重される未来を目指したいと願う魔法少女達。
しかし自由は責任も伴う道。
村人全員の自由が尊重されたならば、村を捨てる自由も与えなければならない。
時女当主が憂いてきた廃村に至る責任さえもついてくるだろう。
それでも静香達は自由を望むと同時に責任も背負う強さも身に付けていくしかない。
時女一族の信念とは日の本の民を守ること。
日本は自由民主主義を掲げる国であり、民衆一人一人の自由を尊重するべき国である。
ならばこそ、日本で暮らす霧峰村の村人達の自由も尊重することも必要だ。
彼らの自由を尊重し、待っているだろう廃村の責任とも向き合う新たなる試練の道。
それでも静香達は負けないだろう。
彼女達の中には、先祖から受け継いできた時女の矜持を掲げる誇りがあった。
神子柴戦は長いので二つに分けます。