人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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192話 次世代揚陸艦と次世代部隊

日本の行政機関の一つである防衛省の大臣執務室では防衛大臣を務める西が執務を行っている。

 

電話でのやり取りを終えた西は受話器を置き、忌々しい表情を浮かべながら溜息をつく。

 

「…霧峰村の連絡員から情報が届いた。どうやら神子柴は魔法少女に殺されたようだ」

 

大臣執務室の応接ソファーに座っていたのは黒頭巾を纏うヤタガラスの使者である。

 

「手間が省けたと喜ぶべきかもしれませんが…奴が余計なことを伝えていないか心配ですね」

 

「勝利を確信した者はお喋りになる。イルミナティとヤタガラスの繋がりを知られるのは不味い」

 

「時女一族殲滅を急いだ方がいいと思いますが…どうして米軍の動きが遅れているのですか?」

 

「今回の秘密作戦において、米軍は次世代部隊運用の実戦試験を行いたい考えなのだ」

 

「次世代部隊…ですか?」

 

西大臣は机のノートPCを操作してプロジェクターからスクリーンに向けて情報を映し出す。

 

「この戦闘服のデザインは何でしょうか…?」

 

「次世代部隊の兵士達が運用するデ(・)モ(・)ニ(・)カ(・)ス(・)ー(・)ツ(・)と呼ばれるものだ」

 

そこに映し出されていたのは、米軍が開発した次世代部隊が運用する戦闘スーツであった。

 

【デモニカ】

 

米軍が開発した着脱拡張型・時期能力統合兵装の略称である。

 

パワードスーツの開発は各国で進んでおり、強化外骨格とも呼ばれているものだ。

 

軍隊の運用としては荷物を運んだり負傷者の骨折を抑え込むギプスとしても運用されるという。

 

様々な機能が装備され、AI補助の運用も視野にいれている。

 

あらゆる極致で活動可能なタフネスさを有し、スーツ自身が成長するのが大きな特色であった。

 

「このデモニカスーツには、悪魔召喚プログラムの一部が搭載されている」

 

「悪魔召喚プログラムですって…?米軍は機械を用いて悪魔を使役する研究をしてたのですか?」

 

「その通り。しかし完成間近の時…主任研究員がデータを持ち逃げしてデータごと自殺した…」

 

「では…残された研究員達は悪魔召喚プログラムの一部をデモニカスーツに搭載したのですね?」

 

「この機能が与えられたデモニカスーツは悪魔の姿を視認出来るようになる。魔獣も同様だ」

 

「これで人類は悪魔召喚士や魔法少女に頼らなくとも、人類の脅威と戦えるというわけですか」

 

「これからの戦争は変わっていく。ハルマゲドン後は世界が統一されることになるからな…」

 

「世界が統一される弊害は…敵国がいなくなってしまうこと。軍産複合体にとっては不都合です」

 

「だからこそ…新たなる脅威が必要なのだ。新たなる世界の脅威こそ、悪魔や魔法少女なのだよ」

 

「世界の新たなる戦場に対応出来る性能があるかどうかを…今回の作戦で試すということですか」

 

「もう一つある」

 

ノートPCを操作して別のデータをスクリーンに映し出す。

 

そこに映し出されていたのは巨大な移動要塞にも思える巨大艦であった。

 

「この次(・)世(・)代(・)揚(・)陸(・)艦(・)こそが、宇宙軍時代を開拓する戦力の基礎となってくれるだろう」

 

まるで巨大な装甲車のようにも思える揚陸艦こそ、次世代部隊が運用する戦闘母艦であった。

 

【次世代揚陸艦】

 

最新鋭の巨大艦であり、正式名称はライトニング級揚陸艦である。

 

陸上や海上だけでなく空さえも短時間の飛行を可能とする戦闘母艦のようだ。

 

プラズマ装甲を展開することが出来るため非常に強力な防御力を有する揚陸艦であった。

 

「こんな巨大な鉄の塊が…空を飛べるのですか?米軍は重力制御技術を完成させていたとでも?」

 

「それについてはトップシークレットだ。知れば君でも命は無いぞ」

 

「そうですか。揚陸艦は兵器や兵員を輸送するためのもの…次世代部隊と共に運用するのですね」

 

「今回の作戦にも投入され、陸海空を制覇する揚陸艦の性能を試す。実戦ノウハウが必要なのだ」

 

「時女一族は魔法少女一族。実戦の相手としては不足なしといったところのようです」

 

「それだけが相手ではない。ヤタガラスから提供されたデータを元にしてもう一度確かめよう」

 

スクリーンに映し出されたのはヤタガラスから提供された霧峰村を含めた全体地図である。

 

霧峰村は人口が千人にも届かない小さな村。

 

しかし周囲は山々で囲まれており外敵を遠ざける地の利があるといえよう。

 

「今回の作戦は掃討戦。村人の誰一人生かして外に出すわけにはいかない。自衛隊も動く予定だ」

 

「自衛隊に存在しているという…噂に名高い秘密部隊を動かすのですか?」

 

「相手は日本人。日本人が日本人を殺すのには命令でも抵抗が出る。しかしあの部隊なら確実だ」

 

「パ(・)イ(・)ナ(・)ッ(・)プ(・)ル(・)・(・)ブ(・)リ(・)ゲ(・)イ(・)ツ(・)…。日本人を憎む在日共で構成されているという日本人虐殺部隊…」

 

「今回の作戦には米国空軍も協力してくれる。爆装した攻撃機とガンシップが向かう予定だ」

 

「我々ヤタガラスからは霧峰村周囲に仕掛けられている封印を発動させる人員を送りましょう」

 

「霧峰村周囲を取り囲む五芒星封印か?大昔のヤタガラスが時女一族を恐れて用意したという?」

 

「奇跡を行使出来る時女一族はヤタガラスでも手に余る存在。もしもの備えは必要だったのです」

 

「用意は盤石にする必要がある。次世代揚陸艦の最終調整が終わり次第…掃討戦を開始する」

 

ブリーフィングを終えたヤタガラスの使者であるが、懸念事項を西大臣に伝えてくれる。

 

「時女一族はヤタガラス一族として…とある神の封印を任されている一族なのです」

 

「とある神だと…?」

 

「それはヤタガラスが所有する霊的国防の要。必(・)殺(・)の(・)霊(・)的(・)国(・)防(・)兵(・)器(・)なのです」

 

「時女一族は有事の際、封印を解いてそれを使用する可能性も考えられるということか?」

 

「霊的国防兵器の力はあまりにも強大です。これだけの布陣を揃えたとしても…勝てるかどうか」

 

「なるほど。安心するがいい、今回の作戦にはエグリゴリの堕天使が二体参加する予定なのだ」

 

「エグリゴリの堕天使達が参加するのですか?雲の上の連中だと考えていましたが…」

 

「次世代揚陸艦と次世代部隊の実戦運用データを現場で確認したいそうだ。作戦の指揮も執る」

 

「そのエグリゴリの堕天使達の実力は…霊的国防兵器に匹敵する程のものなのですか?」

 

「その者の中にはエグリゴリの堕天使において三傑と呼べる者もいてくれる。実力は保障しよう」

 

「そうですか。霊的国防兵器の封印を解かれるよりも先に、作戦が遂行されることを願います」

 

「無論だ。作戦は速やかに遂行され、霧峰村は日本の地図から消えることとなるだろう」

 

ヤタガラスとイルミナティの箱舟計画は誰にも知られるわけにはいかない。

 

その秘密を知った者達は日本で蔓延る不審死の仲間入りを果たすのみ。

 

その秘密が閉鎖的な村で語られたならば瞬く間に村人達の間に拡散していくだろう。

 

誰一人生き残らせるつもりはない合同作戦計画は秘密裏に進められていく。

 

霧峰村の未来はもはや、絶望的な状況であったのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

神子柴との戦いが終わった後、静香達は今まで秘密にされてきた情報を全て村人達に伝えていく。

 

村長の屋敷の前に集められた村人達は酷く困惑している有様であった。

 

「大丈夫!この村のスポンサーだった神子柴はいなくなったけど…新しいスポンサーがいるわ!」

 

「静香さんよぉ…その人は本当に霧峰村を支えてくれるのかのぉ…?」

 

「たしかに神子柴の奴は許せねぇ…。けどよぉ…わしらにも生活があるんじゃ…」

 

「もしその人の支援がなかったら…若い連中は霧峰村には留まれん…」

 

「ワシら老人は行く当てすらない…。この村と心中するしかないんじゃ…」

 

現実に怯える村人達の不安を解消するには、嘉嶋尚紀を含めた多くの支援が必要である。

 

何よりも資本家である尚紀達を説得出来るだけの提案を行わなければならない。

 

いくらお人好しな尚紀であっても、巨額の資本を廃村間近の村に提供しろでは納得しない。

 

彼の資本は孤児となった子供達に提供されるものであり、孤児のために譲れないものでもあった。

 

どうにか村人達をなだめて家に帰していくようだが、問題はまだある。

 

「すなお…本当にいいのね?」

 

「ええ…覚悟は出来ている。私はもう…自分が犯した罪から逃げないわ」

 

「分かったわ…。この村の巫達を呼ぶ必要があるわね…」

 

里の巫達が利用する修練場にまで巫達を集めた静香達が一同を見回す。

 

横にいるすなおに顔を向けた後、頷いてくれた彼女のために真相を語っていく。

 

里では頼れるお姉さんとして慕われてきた者は、裳着という偽装殺人を繰り返した暗殺者だった。

 

その事実を突き付けられた巫達からどよめきの声が上がっていく。

 

「すなおはね…神子柴に弱みを握られていた。逆らえなかった彼女は…殺戮を繰り返したの」

 

横に顔を向ければ、俯いたまま体を震わせるすなおがいる。

 

全ての罪を里の巫達に伝えた上で罰を受けたい。

 

それが暗殺者として生きた土岐すなおの望みであった。

 

「私はね…すなおに罪はないと思う。神子柴が全ての原因だけど…貴女達はどう思う?」

 

どよめきが続く中、1人の巫が立ち上がる。

 

カラス面をつけた巫がすなおと顔を合わせ、自分が秘密にしてきたことを話してくれた。

 

「すなおさん…私は貴女を責められない。だって…私だって……暗殺者だもの」

 

「えっ…?」

 

驚きの声をすなおは上げてしまうが、立ち上がった巫に続くようにして他の者も立っていく。

 

「私はね…すなおさんと同じなの。悪鬼討伐だけじゃなかった…私達の力は…利用されてきたの」

 

静香達でさえ把握してなかった真相が集まった巫達から語られる。

 

時女の巫達を労働力としても利用してきた神子柴は彼女達の力を暗殺に使わせてきた。

 

ディープステートから暗殺依頼を受注してきた神子柴は彼女達に汚れ仕事をやらせたようだ。

 

日本に蔓延る不審死の中には時女の巫達が事件に関わったものが数多くあった。

 

「怖くて言えなかった…喋ったら村の人達から差別されると思ったから…喋れなかったの…」

 

「そんな…貴女達まで…私と同じ人殺しにされていただなんて…」

 

「私はね…すなおさんの苦しみが分かる。だからね…私達はね…すなおさんの味方がしたい!」

 

その言葉を聞いた瞬間、すなおの目に涙が溢れ出す。

 

「私達は同じ苦しみを背負う暗殺者だよ!辛い気持ちは分かるから…だから泣かないで!」

 

「すなお姉さんが裁かれるなら…私達も裁かれるべきよ!みんな貴女の味方だよ…っ!!」

 

「みんな……みんなぁぁぁ……っ!!!」

 

同じように涙を流す巫達がすなおの元まで駆け寄ってきて抱き締め合う。

 

人殺しの犯罪者になった者でしか人殺しの犯罪者の苦しみは分からない。

 

辛い気持ちを共有出来たすなお達はみんなで涙を流しながら許し合ってくれる。

 

横に座っていた静香達も貰い泣きして喜びを分かち合ったようだ。

 

時女一族は変わっていく。

 

辛い過去を清算することが出来た里の者達の新しい生活がスタートしていくのだ。

 

旭とちかは壊された山小屋の再建作業を続けている。

 

妖精郷からトロールも応援に駆けつけてくれたようであり、力仕事を頑張ってくれている。

 

彼女達が作業する横にはジュボッコのために用意された石の墓が作られていたようだ。

 

「むむっ!お洒落な建築案が閃いたぞ!旭、ちか、地面に描くから見て驚け!!」

 

「ほうほう?むむむ……これはなかなか難しそうでありますな?」

 

「ツリーハウスみたいですよねぇ?作るのは難しそうですけど…何だかワクワクしちゃいます♪」

 

「おお!オレのロマンを分かってくれるか!流石はお洒落なマタギとお洒落な自然ガイドだ!」

 

涼子の方はオベロンとティターニアの教育指導をしているようである。

 

「いいか?煩悩は人を苦しめるが、やる気も作ってくれる。大切なのは振り回されないことだ」

 

まるでお寺の座禅室のような特殊空間に囚われている妖精王夫婦。

 

引きつった表情を浮かべながら強制的に座禅させられている者達が叫び出す。

 

「ここはどんな空間なんですかー!?美男子について指導すると聞いて来たら囚われましたよ!」

 

「私達を解放しなさい!こんなへんてこな結界魔法は見た事が無いわよー!?」

 

「ここはあたしの固有魔法空間さ。別名は…あたしの説教部屋♪」

 

涼子の固有魔法に囚われたオベロンとティターニアは逆らうことも出来ずに座禅させられる。

 

強力な妖精であろうとも、この固有結界内では涼子が王様なのかもしれない。

 

「ギャーギャー!!もう足が耐えられない!!足を崩させて欲しいわーっ!!」

 

「心が乱れている証拠だ!集中力が足りん!喝ーーーっ!!」

 

警策で肩を叩かれたティターニアが悲鳴を上げていく。

 

その光景を見守っているシルフはオーバーに両手を広げながら横のコダマに聞いてくる。

 

「ここで暫く王様達を仕込んでくれたら、もしかしたらまともになるかも?」

 

「えー?あのバカ夫婦につける薬はないかもしれないよー」

 

妖精王夫婦の特殊性癖が矯正される日も近からず遠からずといった毎日が繰り返されたようだ。

 

静香は霧峰村の村おこし計画を考える毎日を送っている。

 

静香だけではグルグル目のまま机と睨めっこするばかりであり、すなお達にも相談したようだ。

 

「この村の特産品を売りにするとかはどうですか?」

 

「この村の特産品…果物のだいだいっことか?」

 

「それを美味しい和菓子にしたり、ケーキやアイスクリームとして売り出すとか」

 

「うーん…設備費用とか凄くかさみそう。でも、それもいい案かも♪」

 

「私からも提案があるよぉー!」

 

「ちゃるはどんな案を考えてたの?」

 

「霧峰村のマスコットキャラを作るの♪」

 

「マスコットキャラ!?」

 

「ますこっと?すなお…ますこっとって…なに?」

 

「そこからの説明になるんですか…?」

 

ちはるは一冊の絵本を取り出して静香達に見せてくる。

 

人間達から遠く離れた地で暮らす動物達が主人公となる物語のようであった。

 

「この虎さんと鳥さんと亀さんの仲良し物語が凄く好きなの♪村のマスコットにしようよぉ♪」

 

「で…でも、霧峰村観光の象徴にするのよ?亀や鳥はいるけど…虎は村の周囲にいないし…」

 

「なら、静香がその虎のマスコットになってみるとかは?」

 

「どうしてそうなるのよー!?」

 

「いないなら作っちゃえばいいじゃないですか♪私は亀さん役がいいです♪」

 

「じゃあ私は鳥さん役がいい♪」

 

「なんか凄い流れになってきたわね…。でも、背に腹は代えられない…この村のためだもの!」

 

こうして静香達の村おこし計画は色々な意味で心配を抱えながらも進んでいく。

 

旭とちかが村に戻ってくると、虎姿な静香と鳥姿なちはると亀姿なすなおを見かけたようだ。

 

「なんか…大丈夫なのでありますかねぇ?近寄ると我までコスプレさせられそうであります…」

 

「でも可愛い衣装ですよ♪旭さんは鹿さんが似合いそうだし…私は熊さんとか♪」

 

「か……勘弁して欲しいであります」

 

霧峰村のマスコット達が演目の練習をしていたら夜が明ける始末。

 

次の日の朝。

 

「みんなー!麓の集落で新聞をもらってきたよー!」

 

村に戻ってきたのは緑の和装服を纏う巫達である。

 

彼女達の顔には今まで纏ってきたカラス面や単眼の雑面布は見当たらない。

 

自由を掲げる静香の意見により、巫達は自分の顔を自由に晒してもいい幸福が与えられたのだ。

 

静香の屋敷にまで新聞を届けてくれた巫達が去っていく。

 

外の世界とは隔絶した霧峰村にとって、外で手に入る新聞は貴重な情報であったようだ。

 

静香は今日の新聞に目を通していく。

 

新聞を握っていた両手が震えていき、興奮のあまり叫び出す。

 

「キャーキャー!!凄い!凄すぎる!!流石は嘉嶋さんだわーーっ!!」

 

静香に呼び出されたすなおやちはる達が屋敷に集まり新聞の記事内容を一緒に読んでいく。

 

「尚紀先輩が…神浜の差別問題を解決したって書いてあるよ!!神浜人権宣言を叫んだって!!」

 

「東西差別が酷かった神浜を変える為に…差別主義者を相手にしてまで…戦ってくれるなんて!」

 

「流石はあたしのマブダチだぁ!!抜苦与楽の精神で神浜を救うなんて…本気で尊敬するよ…!」

 

「私…尚紀さんを心から尊敬します!旭さん、この人が私が出会った…嘉嶋尚紀さんなんです!」

 

「何という偉人でありましょうか!嘉嶋殿がいてくれたら我の故郷だって…救われたであります」

 

遠い田舎の地で尚紀の活躍を知った静香は気合十分な声でみんなを奮い立たせる。

 

「よし!私達も嘉嶋さんに負けてられないわ!この村を立て直す!いつか必ず…会いに行くわ!」

 

元気いっぱいな静香達の村おこし計画は力強い後押しを得て水を得た魚のように生き生きと進む。

 

しかし村人達からはいい顔をされず、静香のいないところでは村を捨てる話が出始めている。

 

それには静香も気づいており、だからこそ結果を残して村人達の不安を取り除きたいのだ。

 

新たなる時女当主となる者の責任はあまりにも重い。

 

浮かれて喜んでいるのは強がりであり、本当は怖くて堪らない気持ちを抱えている。

 

だからこそ尚紀の背中に続きたいと静香は思うのだ。

 

千人の差別主義者達に罵倒される恐怖を前にしてでも自由を叫んだ男の生き様を信じて。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

季節は過ぎていき、2019年も残すところあと僅か。

 

村人達の不安を取り除くために静香は家々を訪問していき元気を与えようとしている。

 

しかし状況は芳しくないため、彼女の顔にも暗い影が浮かんでいるようだ。

 

「これが現実の苦しみなのね…。早く村おこし計画を纏めて嘉嶋さんの元に向かわないと…」

 

川原沿いの田舎道を歩いていると、堤防の辺りに座っている魔法少女を見かける。

 

「ちゃる……?」

 

堤防で三角座りしながら壊れた橋の景色を見ていたのは広江ちはるであったようだ。

 

「あ……静香ちゃん」

 

皆の前では明るい表情を浮かべてくれていたようだが、彼女も静香と同じ苦しみを抱えている。

 

「何を考えてるのか…なんとなく分かるわ。私も隣に座っていい?」

 

頷いてくれたため、静香はちはるの横に座り込む。

 

黄昏れた表情を浮かべていたが、ちはるが重い口を開き始める。

 

「私達…正しかったのかな?ヤタガラスを怒らせたままなのに…神子柴まで倒しちゃったし…」

 

どうやら彼女はヤタガラスからの報復を恐れて恐怖心に支配されていたようだ。

 

村の今後の話でもあるため、村の自由を掲げた者として静香は答える責任がある。

 

「母様も…覚悟を決めてくれたわ。時女一族は私の代で変えてくれてもいいって…言ってくれた」

 

「静香ちゃんのお母さん…帰ってこないね。ヤタガラスのところに行ったんでしょ?」

 

「母様はヤタガラスのサマナーよ…。それでも、母様は私達の事情を伝えに行ってくれたわ…」

 

「どうして…霧峰村に帰ってこないんだろうね?もしかして…その……」

 

それを言いかけた時、ちはるは口をつぐんでしまう。

 

顔を俯ける静香の表情も恐怖で苦しみ、最悪の事態を考えてしまい震えているのだ。

 

「怖いよね…ちゃる。私も貴女も…不安で堪らない。だって…あんな秘密を抱えてたんですもの」

 

こんな事態になったのはそもそも広江ちはるがヤタガラスの秘密を知ったからである。

 

自責の念に再び支配されたちはるの顔が三角座りの膝の中に埋められてしまう。

 

恐怖に怯えた苦しみを吐き出すために神子柴との対決が終わった後、ちはるは静香達を集める。

 

空き家であった涼子の仮住まいを集合場所にして集まった者達はちはるから聞かされたようだ。

 

神浜市の地下に一体何が隠されていたのかを。

 

「もしこんな事態になっていなかったら…私達はきっと…ちゃるの話を信じなかったわ」

 

「私だって悪夢か何かを見てるような景色にしか見えなかった。だけど…確かにそこにはあった」

 

「巨大な地下都市が神浜の地下に建造されていただなんて…しかもヤタガラスが関わってるし」

 

「女子トイレに入ってた時にヤタガラスの女の人が言ってたの…もう直ぐ世界は終わるんだって」

 

「その言葉が事実だとしたら…地下都市の正体とは…日の本の民を生き残らせる都市だと思う」

 

「いつ世界が滅んじゃうんだろうね?もし明日世界が滅びるなら…私達がやってることなんて…」

 

あまりにも現実感を感じられない話となってしまい、静香も言葉に苦しむ。

 

未来に待っているのは世界の絶望かもしれない。

 

それでも静香は今を生きるしかないのだ。

 

「私はね…ちゃる。明日世界が終わるかもしれなくても…荒れた大地を耕したいわ」

 

「静香ちゃん…?」

 

「この村を開拓したご先祖様達だって明日も知れない恐怖に立ち向かった。だからこそ今がある」

 

「そうだね…。この村は隔絶された場所だから…開拓してくれた人達も先が怖かったと思うよ…」

 

「私はそんな人達の血を受け継ぐ者。だから私は立ち向かう…この村を守りたいから」

 

強い意志が未来を作ると信じて静香は立ち上がる。

 

顔を向けてくるちはるに向けて手をさし伸ばして微笑んでくれた。

 

「私にちゃるを守らせて。私はちっぽけな存在だけど…精一杯の気持ちを込めて…皆を守りたい」

 

自分と同じく怖くて堪らないのに強がりにも思える明るさを示してくれる。

 

そんな静香の背中にこそ自分は付いて行きたいと思った気持ちを思い出して微笑む。

 

「静香ちゃん達と出会えて良かった…。こんなにも付いて行きたい人と出会うことが出来たから」

 

差し伸べられた手を握り締め、起き上がらせてもらう。

 

夕暮れの道を手を繋いで帰っていく。

 

「私…この村の人達が好き。だから一緒に守ろうね…静香ちゃん」

 

「ええ♪ちゃるや皆がいてくれたら…私は誰にも負けないわ。私はそう信じてる…信じてるから」

 

握られた手の感触が強くなる。

 

まるでちはるに離れて欲しくないとでも伝えたいかのように。

 

今の静香では多くの村人達の心を繋ぎ留めることは出来ずに離れられていく。

 

だからこそ今の静香は孤独に苛まれているのだ。

 

「私はね…静香ちゃんの傍から離れない。たとえ村の人達が嫌っても…絶対に離れないから」

 

「……ありがとう、ちゃる」

 

言葉無き言葉が伝わってくれたのが嬉しかったのか、静香は左手で目元を擦る。

 

涙を拭った静香は進んでいくだろう。

 

霧峰村の未来を守る為にこそ、人々に希望を残せる長になりたいと願って。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

掃討作戦が決行されるXデーとなった今日、アメリカ空軍嘉手納基地では作戦が始まっていく。

 

滑走路から離陸しようとするのは爆装したストライクイーグル編隊。

 

次々と夜空の世界に飛行していく戦闘攻撃機編隊の次に離陸するのはガンシップである。

 

輸送機の側面に武装を施したスペクターガンシップも離陸していくようだ。

 

嘉手納基地よりも先に動いていたのは佐世保米軍基地である。

 

強襲揚陸艦部隊の拠点であり、ここで補給を終えた新型次世代揚陸艦が出動していたようだ。

 

霧峰村は内陸部の山間にある土地であり、大部隊は空からの侵入以外は難しい。

 

なので洋上まで航行した次世代揚陸艦はついにその力を発揮する時がきた。

 

揚陸艦のブリッジ内では多くのオペレーター達が操艦を行っている。

 

「Flight system activated.(フライトシステム起動)」

 

「Copy that. Shift to anti-gravity mode.(了解。反重力モードに移行します)」

 

「Booster deployment.(ブースター展開)」

 

「Plasma power output increase confirmed.(プラズマ動力出力上昇確認)」

 

「Output stable. Flight ready.(出力安定。飛行可能です)」

 

「All hands prepare for impact.(総員衝撃に備えよ)」

 

浮かび上がった揚陸艦側面からブースターがせり出し、洋上から上昇を始めていく。

 

全長300mをほこる巨大質量をもった揚陸艦が宙を浮くのである。

 

あまりにも信じられない光景であるが、それを可能にするやもしれない技術を米国は持っている。

 

次世代揚陸艦には米軍が開発した謎の技術が使われていると言われているのだ。

 

それは最新鋭戦闘機であると同時に地球製UFOとも呼ばれるT(・)R(・)-(・)3(・)B(・)ア(・)ス(・)ト(・)ラ(・)の技術である。

 

三角形型をした戦闘機であり、動力は反重力エンジンを搭載していると言われているようだ。

 

重力を無効化することによってこれ程までの質量を浮遊させる技術。

 

それはもはやエイリアンとも呼べるインキュベーターの技術力としか呼べない次元であった。

 

巡行形態に移行した次世代揚陸艦が日本の上空を通過していく。

 

ブリッジでは黒人艦長が指揮を執る中、艦長の背後には2人の男達が立っている。

 

黒と赤で彩られたモーニングコートを着た白髪の中年男が隣の男に視線を向けていく。

 

隣に立っていたのはフロックコートを纏い、黒のトップハットを被る英国貴族風な男であった。

 

<次世代揚陸艦こそ宇宙軍を象徴する技術となる。ハルマゲドン後は宇宙を開拓しなければな>

 

銀の装飾が施された貴族風の蛇杖を持つトップハット男が送られてきた念話に答えてくれる。

 

<デモニカの実戦運用データ次第では、魔法少女達は役目を終えることになるでしょうね>

 

<この世界の魔獣程度の力ならば現代兵器で十分殲滅出来る。数の力しかもたない雑魚共だ>

 

<魔法少女達は我々の生贄としての価値しかもたなくなる。MAGとしての価値しかないのです>

 

<魔法少女など、奇跡を起こした後の副産物に過ぎない。死ぬために生きる者共に情けは不要>

 

<デモニカ部隊は魔法少女捕獲任務も与えられることになる。だからこその…今回の作戦です>

 

<ハイテク軍隊は魔法少女達に匹敵するのか……試させてもらおうか>

 

日本の領空を我が物顔で飛行していく米軍の巨大揚陸艦。

 

なぜ日本の領空を守る航空自衛隊はスクランブル発進することさえ出来ないのだろうか?

 

それは日本の領空そのものが日(・)本(・)の(・)も(・)の(・)で(・)は(・)な(・)い(・)からだ。

 

日本の法律の条文には米軍の治外法権ともいえる特例法が制定されている。

 

航(・)空(・)法(・)特(・)例(・)法(・)第3項の内容は、米軍機と国連軍機については航空法第6章は適用されないとある。

 

航空法第6章とは航空機の安全な運行について定めた法律。

 

着陸する場所、飛行禁止区域、飛行計画の通報と承認などの制約が米軍には全く適用されない。

 

要するに、米軍機は日本の上空においてどれだけ危険な飛行をしても構わないということだった。

 

余りにも酷過ぎる米国支配を受ける敗戦国日本の現実。

 

これこそが見せかけにすぎない国家独立と安保改定であった。

 

「Arrive at the point of operation.(作戦ポイントに到着)」

 

「The mobility team must hurry to prepare for the sortie.(機動班は出撃準備を急げ)」

 

揚陸艦内部では地上降下のための準備が行われている。

 

夜間迷彩の特殊戦闘服を纏った兵士達がデモニカを装備するためのカプセル内へと入っていく。

 

内部では機械アームによって特殊戦闘服を纏った兵士達にデモニカ装備が装着されていくようだ。

 

最後にバケツめいた頭部ヘルメットを装備することによってデモニカスーツは完成する。

 

ヘルメットを装備した兵士達の目の前にはHUD画面が表示され視覚化されていく。

 

デモニカヘルメットにはOSが搭載されており、基本AI音声が最終チェックを行ってくれる。

 

<<Welcome to the Demonica Suit.(デモニカスーツへようこそ)>>

 

<<We will now register you as the wearer.(これから貴方を着用者として登録します)>>

 

<<Fingerprint authentication OK.(指紋認証OK)>>

 

<<Biometric authentication OK.(生体認証OK)>>

 

<<Retinal recognition OK.(網膜認証OK)>>

 

<<You have been registered as the wearer.(貴方を着用者として登録しました)>>

 

<<I hope your operation will be carried out.(貴方の作戦が遂行される事を願います)>>

 

<<Good Luck.(幸運を)>>

 

バケツヘルメットの目が赤く光り、装備カプセルが次々と開いていく。

 

中から現れる兵士達こそが次世代部隊と呼ばれるデモニカ部隊であった。

 

これから始まるのは米軍の日本本土攻撃作戦とも呼べる光景である。

 

この凄惨極まりない戦場こそが、日本と米国の本当の関係性を表す地獄となるだろう。

 

日本を中国や北朝鮮やロシアから守ってくれると信じられている米軍とは何なのか?

 

米国の外交軍事委員会は在日米軍に防衛戦力は無いと明言している。

 

日米軍事同盟など絵に描いた餅であり、建前に過ぎないのだ。

 

在日米軍は日本の実行支配の為に置かれているだけの進駐軍そのものである。

 

早い話、米国に都合のいい売国政策を押し通すための脅(・)し(・)道(・)具(・)と(・)し(・)て(・)使(・)う(・)存在でしかなかった。

 




いつか登場させたいと思っていた真女神転生DSJのデモニカ部隊と次世代揚陸艦をようやく登場させるところまで書き進められました。
描いてみたかったんですよね~魔法少女軍団VSハイテク軍隊。
現代武器が魔法少女や魔女に通用するのは暁美ほむらちゃんが体を張って証明してくれましたし。
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