人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
霧峰村の集落から遠く離れた廃墟の神社に訪れているのはヤタガラスの使者である。
村の住人からも忘れ去られた神社の境内に入って来た時、後ろを振り向く。
「契約の天使、貴方も時女の里を捨てたようですね?」
振り向いた先にはキュウベぇが立っている。
ヤタガラスの使者もまたデビルサマナーとしての素質を持つ者であるため彼の姿が見えるのだ。
「霧峰村には新しい魔法少女を生み出せるだけの人口は無い。待つだけ無駄というものさ」
「分家から少女を呼び寄せた神子柴は死にました。たしかに、もうあの村での活動の意味もない」
「僕を崇拝してくれた一族だったけど、もう用済みだ。君達が終わらせてくれるんだろう?」
「そのつもりです。我々は今日…霧峰村を日の本から消すのです」
ヤタガラスの使者の前にまで歩いてきたキュウベぇが彼女を見上げてくる。
「霧峰村か…昔を思い出すよ。あの醜悪な悪魔を封印するために僕の力を必要とした時の事をね」
「あの荒神の力は強大であったと聞いております。時女の始祖となる少女が封印してくれました」
キュウベぇは霧峰村が起こるキッカケとなった歴史を語ってくれる。
600年前、この地方に顕現した巨大な荒神は日の本を焼き尽くす勢いで暴れ回ったという。
ヤタガラスの退魔師として生きた侍の男は荒神と戦うが力及ばず倒れることとなる。
彼の命を救った者こそ、時女の始祖となる少女であったようだ。
彼女は契約の天使に向けて願った。
荒神の怒りを鎮めてこの地に封印して欲しいと。
退魔師の男は命を救われることとなるが、少女は魔法少女として生きる人生となる。
自責の念を感じた侍の男は彼女の人生を支えるために生きる決心をしたようだ。
2人は恋仲となり、時女一族の血を残してくれる。
その者達が荒神封印の守り人となるために作った地こそが霧峰村であったのだ。
「時女の者達は退魔師として生きることになった。僕を崇拝したのは悪魔や魔獣と戦う力のため」
「それが霧峰村の歴史でしたわね。しかしそれももう終わる…後は我々に任せなさい」
「そうさせてもらうよ。それにしても珍しいね?君が戦場に出てくるなんて」
「私には霧峰村を滅ぼす以外の任務も与えられている…とだけ言っておきましょう」
「ヤタガラスは忙しそうだね。まぁいい、それじゃあ僕は行くよ」
そう言い残してインキュベーターは去っていく。
彼が駆け抜ける夜道の背後では巨大な光の柱が天を穿つ。
その光景は他でも起こっており、霧峰村を中心にして五芒星が描かれていくのだ。
「魔封結界は完成しました。これで巫や悪魔共は自由に魔法の力を行使することは出来ない」
ヤタガラスが用意していたのは、時女一族の巫や退魔師を滅ぼすための仕掛け。
この五芒星の力が発揮された時、五芒星に取り囲まれた者達は魔封状態となる。
相手の戦力を削り落とし、物量で叩き潰すために用意されたものであったようだ。
暗い夜道を走るのはインキュベーターだけではない。
霧峰村に入れる麓の集落の近くまで走ってきたのは静香の母であった。
航空機が夜空を飛んでくる音が聞こえてきた彼女は焦りを隠せない。
「間に合わなかった!!」
話し合いに向かったため今の彼女は丸腰である。
ヤタガラスから拘束を受けて軟禁状態となっていたが隙を見て逃げ出せたのだろう。
「村の皆が危ない……お願いだから間に合って!!」
必死の形相で彼女は夜道を走り続ける。
しかし麓の集落に入る前に静香の母は何かに気が付き木陰に隠れたようだ。
「何なの…?どうして自衛隊が道を封鎖しているのよ……?」
静香の母が見た光景とは、自衛隊によって麓の集落に入る道が封鎖されている光景である。
「誰も逃がさないつもりなのね…。酷く遠回りになるけど…獣道を使うしかないわ」
麓の集落から霧峰村に入るのを諦めた静香の母は大きく迂回する形で獣道を駆け上がる。
ヤタガラスとは決別する覚悟で村に向かっていた時、ついに恐れていた事態が現実となる。
「あぁ…あぁぁぁ……!!やめて……やめてーーーッッ!!!」
見上げる山の先からはついに霧峰村方面から火の手が上がる光景が見えてしまった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ついに次世代部隊が動き出すため次世代揚陸艦の左舷ハッチが開いていく。
主力部隊に先行して降下する降下誘導部隊がホバーリングする揚陸艦から次々と飛び降りていく。
「GO!GO!GO!!」
飛び降りていくデモニカ兵達には空挺部隊の装備が施されている。
HALO方式で降下してきたデモニカ兵達が地面に着地した後、周囲を警戒するために銃を向ける。
デモニカ部隊で使われる専用のアサルトライフルを構える兵士達は周囲の安全確保のために動く。
次世代揚陸艦の航続距離は長くないため、着陸拠点を確保する必要があるのだ。
街灯すら無い霧峰村の夜道でさえデモニカ兵達には何の障害にもならない。
デモニカ兵が装備するバケツめいたヘルメットはあらゆる極致での行動を可能にする装備がある。
暗視装置、サーマルカメラ、毒ガス装備、宇宙のような真空空間ですら空気を保つ機能があった。
降下部隊が潜伏する場所に近寄ってくるのは夜勤の巡回任務を任されている巫達である。
「空に何かが見えたのはこっちの方なの?」
「うん…パラシュートのようなものが沢山下りてくるのが見えたの」
巫達まで数百メートルの距離があるが、マークスマン狙撃兵もいるので問題にはならない。
「あっ…?」
右側の魔法少女の頭部が突然弾ける。
返り血を浴びた横の巫が顔を向けるよりも先に彼女の頭部も弾けた。
サイレンサーを装備した狙撃銃を構えるデモニカ兵の銃口からは硝煙が立ち上っている。
円環のコトワリに導かれる光景すら見えるデモニカ兵達は敵兵を無力化させたようだ。
「
見つからずに敵兵を仕留める戦い方こそが特殊部隊のもっとも望ましい戦闘形態。
完璧な仕事を遂行するデモニカ兵達は特殊部隊から集められた選りすぐりの精鋭達であった。
相手は魔力をもった魔獣や悪魔ではない人間の兵士達。
ソウルジェムの魔力探知は全く役に立たず、巡回任務を続けていた巫達は次々と殺されていく。
「
「
ホバーリングを続けていた次世代揚陸艦が地上へと降下してくる。
霧峰村の集落から離れた田舎道を潰す程の質量が空から降下してきたようだ。
「
「
次世代揚陸艦の巨大な後部ハッチが開いていく。
車両格納スペースから発進していくのは歩兵を援護するための米軍兵器。
M1A2C戦車、LAV-25歩兵戦闘車、M2A4ブラッドレー歩兵戦闘車等が次々と出撃していく。
火器管制はデモニカとデータリンクしており目標の視認が不可能だった悪魔にも狙いがつけれる。
後部ハッチの上部にもハッチが備わっており、左右にスライドしていく。
伸び出てきたのはヘリ空母として使われる揚陸艦の滑走路である。
発進していくのはV-22オスプレイと呼ばれる垂直離着陸機であり、兵員輸送を行う。
「
霧峰村の集落に向けて最新鋭の軍隊が攻め込んでくる。
時女一族は魔法少女一族であり、武器術や忍術にも秀でた戦闘集団である。
しかしこの一族には克服出来ない弱点がある。
あまりにも時代錯誤な道具しか使わないため迅速な連絡手段がない。
情報伝達力が著しく欠如しているため米軍の侵攻にさえ気が付いてくれないのだ。
寝静まる静香達が米軍の侵攻に気が付いたのは航空機が接近する音に感づいた時であった。
「この音は……?」
上空では霧峰村に接近するストライクイーグル編隊が迫っている。
爆撃コースに乗った戦闘攻撃機の両主翼下の大型パイロンからMark77爆弾が切り離された。
「な、何なの!!?」
突如として巨大な音が響き渡り、暗かった外が火のように真っ赤な明かりを生み出していく。
慌てて飛び起きた静香が襖を開けると絶句する。
「あ……あぁ……あぁぁぁぁ……っ!!!」
静香が見た光景。
それは彼女が愛した霧峰村が火の海に包まれている地獄の光景であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
霧峰村の火の見櫓からけたたましい半鐘の音が響き続ける。
ナパーム弾と効果が変わらないMark77爆弾が山に投下されたため村は火の海に囲まれている。
これは村人達の退路を断つためであり、火の手に阻まれ逃げられる場所が限られてしまう。
その逃げ道に陣を張り待ち伏せ攻撃を仕掛ける作戦なのだ。
静香の屋敷は村の奥まった場所にあり、霧峰村の全景が良く見える。
だからこそ米軍の装甲車や垂直離着陸機が迫ってきている光景が信じられなかったのだ。
魔法少女姿に変身した静香は大急ぎで屋敷の外に出てくる。
彼女に駆け寄ってきたのは巡回任務についていた巫達であった。
「大変です!!この村は軍隊の攻撃を受けています!!」
「見れば分かるわ!!いったいどこの軍隊が私達の村に攻め入ってきたというのよ!?」
「連中の使用している兵器から見て……米軍だと思われます」
「米軍ですって!?日の本と米国は日米安保条約が結ばれているんじゃないの!!」
「そんなの分かりません!!とにかく攻めてきているのは米軍で間違いないです!!」
静香の脳裏には神子柴から言われた言葉が過る。
寄生虫が語った言葉の内容で全ての合点がいったのか、静香の歯が食いしばられていく。
「私達は見捨てられたのね…。ヤタガラスからも…日の本の政府からも……
「ど、どうしよう!!私達の村が…家族が…みんな死んじゃうよぉーーっ!!!」
泣き喚きながらパニックに陥る巫達を見た静香は大きく息を吸い込んで吐き出す。
怒りに飲まれて戦えば死ぬという経験を積んだことで冷静さをどうにか保つ。
「巫集に伝令を届けて!村人達の避難誘導と敵軍を食い止めるのを両方行う必要があるわ!!」
「は……はいっ!!」
この村を守る巫達は飛ぶように行動を始めていく。
しかし彼女達の努力は無駄とも言える光景が生み出されるのだ。
四方を山という城壁に囲まれていようとも敵軍は空から城内に進軍してきた。
待っているのは籠城していた者達の大虐殺光景である。
「ヒィーーーッッ!!?」
老夫婦が暮らす家の玄関を蹴破って侵入してきたデモニカ兵達が銃を構える。
<<ギャァァァーーーーッッ!!!!>>
逃げようとしていた老夫婦は容赦なく撃ち殺されたようだ。
家から出てきたデモニカ兵を確認した外のデモニカ兵達が焼夷手榴弾を家に放り込む。
家に火を放ったデモニカ兵達は次の獲物を求めて駆けていく。
「お願いだから泣かないで!いい子だから……絶対に泣かないで!!」
赤子を隠し扉の奥に仕舞った若い母親だが、家の中に侵入してきた者が銃を構える。
「キャァァーーーーッッ!!!」
母親を撃ち殺したデモニカ兵は家を出ようとするが立ち止まる。
バケツめいたヘルメットのサーマル機能を使ってもう一度家の中を見回す。
「
隠し扉を開けると赤子のけたたましい泣き声がデモニカ兵を襲う。
しかし慈悲無き虐殺部隊は顔色一つ変えずに銃を構える。
「
家から出てきた兵士を確認した後、アサルトライフルに装備したグレネードを構えていく。
焼夷グレネードが撃ち込まれた家は激しく燃え上った。
後方で待機している戦車に代わり、歩兵戦闘車が集落の中まで進軍してくる。
村の人々が苦労して耕した畑を踏み壊し、機銃掃射を行い続ける。
上空からは兵員を輸送し終えたオスプレイの後部から撃ち続けられる機銃攻撃が地上を襲う。
ドアガンナーが撃ち続ける機銃攻撃で逃げ惑う人々が次々と撃ち殺されていくのだ。
村人達はパニックとなり、避難場所に向かう事も出来ず散り散りになって逃げ惑う。
焼かれた山を避けるようにして森の中に逃げ込んだ少数の村人達もいたようだ。
「大丈夫だ!俺達は絶対に死なねぇ!諦めるんじゃねーぞ母さん!!」
「あたしはいいから…あんただけでも走って逃げるんだよぉ!!」
「父さんは病気で死んだ!病気がちな母さんまで見殺しにして逃げられるかよー!!」
少数の村人達が逃げ込んだ森を歩いていくと自衛隊の兵士達と出くわしてしまう。
「自衛隊の人達か!?た、助かった…!助けてくれ…霧峰村が何処かの軍隊に襲われてる!」
母親を背負った中年の男が必死になって状況を自衛隊員達に伝えようとしてくれる。
しかし息子と母親を嘲笑う表情を浮かべた自衛隊員達が何かを向けてくる。
「ちょ…ちょっと……っ!!?」
自衛隊員達が構えていた武器とは携帯放射器と呼ばれる火炎放射器であった。
「汚物共は消毒だーーッッ!!!」
自衛隊員から火炎放射器を浴びせられた者達が悲鳴を上げながら焼け死んでいく。
焼け焦げた死体に近づいてきた自衛隊員は唾を死体に吐きかけてくる。
「ざまぁみろ!俺達を馬鹿にする日本人共め!いい日本人は死んだ日本人だけだよなー!!」
「俺達から逃げる奴はみんな日本人だ!逃げない奴はよく訓練された日本人だ!!」
「ホント、民族戦争は地獄だぜ!!フハハハハハーーーッッ!!!」
彼らこそが自衛隊に存在していると言われる在日部隊、パイナップル・ブリゲイツである。
在日部隊とは米軍から自衛隊に徴用された存在だ。
「こっちは逃げてくる奴らを待ち伏せるだけで退屈だなぁ。本隊の連中が羨ましいぜ」
「全くだ。霧峰村の麓の集落も…今頃俺達の本隊が焼き尽くしてる頃だろうなぁ」
殺戮部隊の隊員が語った言葉が事実ならば、土岐すなおが暮らした集落の終わりである。
霧峰村の麓の集落もまた霧峰村から近しい存在であり、掃討戦が行われていた。
「た…助けて……助けてくれーーーっ!!!」
牛小屋の中で追い詰められたのは土岐すなおの両親である。
燃え上る集落から迫ってくるのは火炎放射器を装備したパイナップル軍であった。
火炎放射器を向けられたすなおの母親は涙を流しながら叫ぶ。
「すなお…貴女だけでも……生き残ってーーーッッ!!!」
火炎放射の直撃を受けたすなおの両親が燃え上り絶命していく。
日本人に与える慈悲など存在しない在日部隊は残された村人を殺しに向かうようだった。
殺戮の上に殺戮が重ねられる地獄の如き戦場。
これがイルミナティとヤタガラスの秘密を嗅ぎ回った者に与えられる罰。
逃げ惑う人々はなぜ自分が殺されるのかさえ理解していないだろう。
この地獄は正義の探偵に憧れた広江ちはるが悪の秘密を追いかけたために生まれた惨劇であった。
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霧峰村の避難所として指定されているのは大神殿と呼ばれる洞窟の地下施設だ。
しかしそこに至るための橋が神子柴との戦いで破壊され、避難民達は大きく迂回させられる。
「みんな!!慌てないで下さい!!この橋は大勢で渡れる橋じゃありません!!」
「洞窟まで逃げ込めば攻撃は防げます!それまでどうか慌てないで下さい!!」
小さな橋に群がる避難民を誘導しているのはすなおとちかである。
恐怖で怯え切った表情を浮かべながらも静香から託された避難誘導を懸命に務めてくれる。
どうにか橋を渡りきらせたすなお達であるが、避難民と同じく焦っているすなおが叫び出す。
「私も…私も静香の援軍に行く!静香や巫集だけでは…あんな軍勢を押し留められない!」
「ダメです!静香さんに託された避難誘導はまだ終わってません!」
「この道を進めばみんな大神殿まで辿り着けるわ!私達も援軍に向かうべきよ!」
「いいえ!敵がいつ大神殿に気が付くか分かりません!私達は彼らの命を託されたんですよ!」
「どうしてそんなに冷静なの!?私…静香が心配で堪らない…怖くて堪らないの!!」
顔を真っ赤にしながら錯乱しているすなおに目掛けて手を上げる。
「ぐっ!?」
ちかからぶたれた痛みによって彼女は黙り込んでしまう。
「どんな窮地であっても冷静さを無くさないで!判断を誤れば皆が死ぬ…山と同じなんです!」
「ち…ちかさん……」
息を荒げるちかではあるが、彼女の目からも悔し涙が溢れ出していく。
「私だって静香さんの元に向かいたい!それでも絶対に譲れません!私は皆のガイドなんです!」
自然ガイドとしての経験と、尚紀との触れ合いによって青葉ちかの状況判断力は増している。
流されない者になろうと必死に感情を押し殺し続けるちかを見て、すなおも頷いてくれた。
「分かりました…私もちかさんと共に避難民を守ります。それが…静香の意思だと信じて!」
すなおとちかも小さな橋を渡りきり、避難民を守るために大神殿に向けて駆けていった。
村人を守るために巫集の全員が静香の屋敷の前に集まっている。
巫集の前に立つ静香は鬼気迫る程の表情を浮かべていた。
「私達は村人を守る盾となる!!これは死地に赴く戦いとなるわ!!」
忍者装備を纏った巫集も鬼気迫る表情を浮かべ、帰れない戦いに赴く覚悟を決めてくれる。
「私達は日の本を守るための刃!時女の矜持を貫く私は村の為に戦う!貴女達はどうなの!?」
<<私達も戦う!!>>
「この村で生まれた私は…この村が大好き!!死んでも守りたい!!貴女達はどうなの!?」
<<私達も守りたい!!命に代えても守りたい!!>>
「私と巫集の心は一つよ!!我ら一丸となりて敵を討つ!!この身に代えても敵を倒す!!」
<<おおぉぉぉーーーッッ!!!>>
決死の覚悟を決めた巫達の魂が燃え上る。
時女の長となるべき静香と共に時女一族の巫集が出陣していくのだ。
「静香…こんなことになっちまって…あたしは…悔しいよ…」
静香の横を走っているのは防衛戦に参加してくれた涼子である。
彼女の両目からは悔し涙が溢れ出し、顔を真っ赤にしながら慟哭を叫んでしまう。
「時女一族はやっと変われたのに……好きになれたのに……こんなのってないよぉーッッ!!」
立ち止まってしまった涼子が辛さのあまり泣き喚いてしまう。
気丈で熱血な性格をしている涼子でさえこの有様である。
生まれ故郷が焼かれていく巫達の心は涼子以上に泣き叫んでいる筈だ。
「涼子…この村を好きになってくれて…有難う。円環のコトワリに導かれるなら…一緒がいいわ」
自分よりも辛い立場の静香の優しい言葉が涼子の胸を貫いてしまう。
「ぐすっ…えっぐ……静香……静香ぁぁぁーーーッッ!!!」
泣き喚いたまま涼子は静香に抱きついてくる。
優しく彼女を抱きしめてあげる静香の両目も涙で溢れそうになっていた。
「静香さん!!娘を見ませんでしたか!!」
走ってきたのは広江ちはるの母親だったようだ。
「娘が家から飛び出して行ったんです!!こんな事になったのは自分のせいだと叫びながら!!」
「そんな……ちゃる……なんてことを!!」
「あたしが探しに行く!!自責の念に憑りつかれたあいつは…何をするか分からない!!」
「涼子…ちゃるを探して!あの子はきっと村人の救出に向かったのよ…自分の罪を償うために!」
それを聞いたちはるの母は理解した。
自分の娘のせいで地獄の戦場が生まれてしまったということに。
「…私が娘を探します。きっとこの地獄の光景は…ちはるが生み出したものだと思うから」
「ダメよ!!貴女は村人達と一緒に避難場所に向かって!」
「そうだよ!!そこらじゅう銃弾が飛び交ってるんだぞ!死にに行くようなもんだ!!」
「いいえ!一人娘の母としての責任があります!私はあの子を救いたい…私はあの子の母なの!」
踵を返して走り去っていくちはるの母を止める余裕は2人には無い。
「…信じるしかないわ。あの人が生き残れるチャンスを作る為に…戦いに向かいましょう」
「静香…いいや、大将。あたしは腹を括ったよ…お前さんとなら…轡を並べて死ねる!!」
静香と涼子は先に向かった巫集と共に命を散らす覚悟を示すために動き出す。
しかし魔法少女達は自分の異変に気がついてはいない。
だからこそ、その命を無駄に散らせることになっていく。
巫が迫ってきているのは村の上空を飛び交うプログラム飛行型ドローンのカメラに映っている。
映像データは揚陸艦だけでなくデモニカ兵達とも情報がリンクして表示されているようだ。
そのため敵を先に見つけ出したデモニカ部隊は航空支援を要請したのである。
「こ……こんなのって……」
「嘘だろ……おい……」
静香と涼子は駆け付けた現場を見て絶句する。
迫りくるデモニカ部隊を待ち構えるため隠密行動していた巫達が全滅している光景だ。
上空から爆撃されたかのようにしてクレーターが掘られた周りには巫達の死骸が転がっている。
原型を留めない死骸達が光りを放ち、次々と円環のコトワリに導かれている現場であったのだ。
「危ない!!!」
涼子が静香を庇うようにして抱き着きながら跳躍する。
彼女達がいた場所には上空からの砲弾が迫り、着弾と同時に爆発する。
村の上空を低空左旋回しながら飛んでいるのはガンシップである。
胴体内部から左側面に突き出す形で装備した榴弾砲の一撃が巫達をミンチに変えたのだ。
「ぐっ…うぅ……」
涼子に庇われた静香が起き上がるが、呻き声を上げる涼子の状態を見て顔を青くする。
「涼子……なんて酷い傷……」
背中には榴弾の破片が突き刺さっており臓器にまで達している。
「待ってて!今回復するから!!」
静香が回復魔法をかけようとするが異変に気が付く。
「どうして……どうして回復魔法が使えないの!?」
これこそが魔法が使える魔法少女達がなす術もなく殺された原因である。
ヤタガラスが構築した魔封結界によって巫達は魔法が封印されていた。
そのため巫集の魔法少女達は迫りくるガンシップに向けての有効攻撃が行えずに殲滅されたのだ。
「魔法が使えないからみんな殺されたのね…。私だって魔法が使えないなら…どう戦えば…」
迷っている暇もなく、涼子を両手で担いだ静香が駆けていく。
ガンシップから撃たれるバルカン砲と機関砲の嵐が地上に向けて撃ち込まれていくからだ。
肩に涼子を担いでいる静香は何かに気が付く。
「私の剣がない…?ご先祖様達の剣が…替えの効かない大切な剣が……」
静香は自分の魔法武器である七支刀を無くしている。
ガンシップから撃たれた榴弾砲の着弾によって何処かに飛ばされていったようだ。
「迷ってる暇は無い……走らなきゃ!!」
ガンシップの射線から逃げるようにして静香と涼子は逃げ惑う。
彼女達を追撃していくのはデモニカ兵達である。
「
絶体絶命の状態であるが静香の闘志は揺るぎない炎によって燃え上っている。
それは三浦旭も同じであり、彼女はガンシップに目掛けて果敢にも射撃を繰り返す。
「下りてこい!!我の銃弾が届く高度にまで下りてきやがれでありますーッッ!!」
魔法の力が使えない状態であっても旭はライフル弾を撃ち続ける。
魔力が籠らない銃弾ではガンシップを狙撃することは出来なかったようだ。
スナイパーが何度も狙撃を行っては敵兵に位置を特定されてしまう。
「
「
デモニカ兵から通信を受け取ったストライクイーグル編隊は旭が潜んだ山に飛行していく。
攻撃コースに乗ったストライクイーグルが放つのは空対地ミサイル。
次々と放たれた空対地ミサイルに気が付いた旭は木の枝から飛び降りる。
「うわぁぁぁぁーーーッッ!!!」
山に次々と着弾したミサイルの爆炎によって山が火の海と化していく。
必死になって山から駆け降りる狙撃兵魔法少女であるが、次の攻撃が迫っている。
「ぐわぁぁぁーーーッッ!!!」
至近距離にミサイルが着弾した旭は爆風に吹き飛ばされてしまう。
手を離してしまった旭の大切なライフル銃は爆発に巻き込まれて壊れてしまったようだ。
これが制空権を確保した米軍の圧倒的な航空優勢によるスナイパー狩りの光景であった。
「ぐっ…うぅ……まだで……ります……」
這い這いの姿で地面を進むのは全身に大火傷を負ってしまった旭の姿。
彼女の首から下は皮膚移植が必要な程にまで焼け爛れていたのだ。
旋回を続けるガンシップも旭がいる山に照準を向けていく。
榴弾砲と機関砲の雨が迫る中、旭は見つけた古井戸の中に滑り込むようにして避難する。
彼女がいた周囲に次々と榴弾砲と機関砲の雨が降り注ぎ、スナイパーを殺そうとしたようだ。
古井戸の中に落ちた旭は受け身をとることさえ出来ずに体を激しく強打する。
意識が遠のいていく中、旭の心の中には深い絶望の感情が広がってしまう。
「またで……ありますか……。どうして…我は……失って……ばかり……」
故郷で受けた迫害によって三浦旭は居場所を失った。
逃げるようにして故郷を飛び出し、霧峰村に流れ着いた彼女は新しい居場所を手に入れた。
なのにまた失うのである。
「我の人生は……虚無で……ありま…す……」
意識を失った彼女を救いに現れる者はいない。
それは霧峰村の人々とて同じ状況であり、空と地上からの同時攻撃によって次々と死んでいく。
業火に包まれた村の中を走り回る存在こそ、この事件を引き起こすキッカケとなった者。
「お願い!!もうやめてーー!!私を殺すだけで許してよーーッッ!!!」
泣き叫びながらちはるは逃げ遅れた人はいないかと燃え上る家の中に飛び込んでいく。
家の中に入れば撃ち殺された死体だけしか見つける事は出来ない。
自殺とも思える救出行為を繰り返すせいで彼女は火傷塗れの姿となっていた。
呼吸器官を焼かれてしまったちはるは息をするのも苦しい状態であるが、それでも走り続ける。
「誰か…誰かいないの…?お願い…誰か返事して…お願いだから…誰か生きてて!!」
泣き叫ぶ彼女が空を見上げる。
「戦闘機が飛んでいった方角って…もしかして……大神殿!!?」
ちはるの予想は的中する。
大神殿の情報はヤタガラスから伝えられており、村人達が大勢避難するのを待っていた。
ストライクイーグル編隊がGBU-28バンカーバスター攻撃を仕掛けていく。
大神殿に入れる神楽殿に向けて次々と地中貫通爆弾がロケット加速しながら迫りくる。
高速度で落下することでコンクリートや盛土などの遮蔽物を貫通し、目標に到達したのちに爆発。
<<ギャァァァーーーーーーーッッ!!!!>>
地下の大神殿に逃げ込んでいた人々の上から崩れた岩盤が次々と落ちてくる。
岩盤に潰されていく大神殿空間は程なくして完全に埋まってしまったようであった。
地中貫通爆弾が直撃、炸裂したことによって大量の土砂が降り注ぐ。
<<キャァァーーーーッッ!!?>>
村人達を守る為に外で待ち構えていたすなおとちかは大量の土砂に埋もれてしまった。
「みんな…私のせいで…死んでいく…。私のせいだ…私が
もはや茫然自失状態で業火の世界を歩く姿を晒すことしか出来なくなった広江ちはる。
彼女のソウルジェムは抑えの効かない絶望の色に染まっていくしかない。
大部分の村人を殺し終えたデモニカ部隊は残されている村人はいないかと捜索を続けている。
ちはるの姿もいずれ見つけられて殺されるか、ソウルジェムが砕けて死ぬのみとなってしまう。
静香達はデモニカ部隊の追撃とオスプレイの機銃掃射から逃げ続けることしか出来ない。
完全なる絶望によって支配されてしまった霧峰村。
かつてこの地に絶望を与えようとした悪者がいた。
悪者の寄生虫を打ち倒すことで正義のヒロイン達はハッピーエンドを迎えるのだと信じた。
しかし現実はどうだ?
神子柴を遥かに超える絶望によって霧峰村どころか麓の集落まで滅び去る。
正義のヒロインが勝利して正義を成してハッピーエンドなど、
理想と現実は余りにもかけ離れているもの。
正義を求める魔法少女の力など魔法が使えようが脆弱でしかない。
圧倒的な権力と資本を動かせる本物の悪の力の前では無力でしかない。
所詮は子供のヒーローごっこでしかなかったのだ。
正義という甘いお菓子に惑わされた魔法少女達は現実に打ちのめされ、泣き叫び、絶望していく。
もはや魔法少女達が救われるには、
それを与えてくれるやもしれない存在がこの世界にはいてくれる。
魔法少女達と共にこの世界に在ったのは、悪魔と呼ばれる存在。
悪魔を使役することが出来るデビルサマナー達。
魔法少女達は己の浅はかさを呪い、絶望しながら滅ぼされていくことなどあってはならない。
霧峰村の魔法少女達を救うために、ついに悪魔達は行動を起こす決意を示す時がきたのであった。
マギレコの静香ちゃんは炎属性なので、盛大な火属性付与を考えてみました(汗)
現実と因果に打ちのめされる物語こそまどマギとメガテンですよね!(確信)