人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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19話 最初の虐殺

東京には一人の悪魔がいる。

 

道を踏み外し人間の敵となった魔法少女に対して慈悲もなく殺す魔法少女の殺戮者である。

 

悪魔は始めから魔法少女を殺す事を何とも思わない程の殺人鬼であったのか?

 

それを知りたければ東京の魔法少女社会の闇へと足を踏み入れるといい。

 

これは悪魔が魔法少女を殺す決意をした物語である。

 

♦

 

佐倉牧師の教会から旅立ち、程なくして東京に戻ってくる。

 

「東京か…帰る家など無い、通うべき学校すら無い場所だ。それでもここは…俺の故郷だ…」

 

日本人である事を証明する戸籍すら持ってはいないためホームレスとして生きていく事になる。

 

「悪魔の力を使えば金など幾らでも奪える。だが犯罪者になれば…風華には顔向け出来ない…」

 

彼は手近な公園でテントも用意出来ずにゴロ寝をする生活となっていく。

 

「またホームレス生活か…腹は減るし体も臭くなっていく…この世界に訪れた頃を思い出すな」

 

最低限の身だしなみと食事ぐらいは手に入れられる金が欲しいと考えた彼は行動を開始する。

 

「よぉ、少年。新入りだな」

 

「あんたは?」

 

「上野公園のホームレスを取り纏めている者だ。何があったかは聞かないがせめてこれを使え」

 

渡されたのは持ち運べるタイプのマットレスである。

 

ベッドで寝るのが当たり前の連中は知らないだろう。

 

地べたで寝ると地面の冷たさで寝られたもんじゃないと聞かされていく。

 

「俺達はそれを毎日味わう。これは気持ちだ、とっておけ」

 

「いいのか…?ありがとう」

 

「気にすんな。俺は藤堂って呼ばれてるが…お前の名前は?」

 

「嘉嶋尚紀。ついでにホームレスが生活していくための知恵も教えてくれると助かるんだが…」

 

「それなら僕が教えよう」

 

「あんたは?」

 

「皆からは米さんと呼ばれてる。君が早くここから巣立てるよう、手を貸すよ」

 

「二人とも…すまない。見ず知らずの俺に良くしてくれた借りは…必ず返すよ」

 

ホームレスをしている男性達と相談した末に廃品回収業を紹介してもらう。

 

「低賃金だけど服を洗濯したり銭湯で体を洗ったり、粗末な食事ぐらいにはありつける」

 

「どれぐらいの稼ぎになるんだ?」

 

「一日中歩き続けてアルミ缶30キロを集めれば、一日3千円を手に入れられる計算だよ」

 

「廃品回収か…よし、やってみるよ」

 

「君はまだ子供なのに不憫なものだ…一日でも早くホームレス社会から卒業出来るよう祈るよ」

 

ホームレスとしての労働生活が始まっていく。

 

悪魔の体は普通の人間の仕事などではまったく疲れる事はないだろう。

 

「おいおい…どんだけ持ち運べるんだよ!?」

 

「まだまだ運べる。一日30キロを目標にしてるんだ」

 

「その細い体で…凄い力持ちだったんだね…」

 

そんな毎日を繰り返すうちにホームレス達とも交流するようになっていく。

 

そんなある日、迷惑な事件が起きてしまう。

 

「ホームレス晒しユーチューバーで~す!今日は上野公園にいる社会のゴミを実況しま~す!」

 

「なんだ…あの撮影機材を持っている奴は?」

 

「迷惑ユーチューバーってやつだな…再生数を稼ぐためなら手段を選ばない奴らだ…」

 

SNSの普及で一躍人気職業になったユーチューバーであるが競争も激しい。

 

そのため他人の迷惑を顧みない乱暴行為を見せつけて視聴数を稼ごうとする者が跡を絶たない。

 

「炎上記事でサイト閲覧数を稼ぐアフィ糞と変わらない奴みたいだ。今まではどうしてきた?」

 

「怒鳴り散らしても相手を喜ばすだけだ。ホームレスの印象を悪くする事を目的にしてやがる」

 

「他人を玩具にして晒し者にする…そんな連中がスマホの普及で増え過ぎたんだよ…」

 

「ネットというリスクのない匿名社会が人を乱暴者に変えやがる…やりきれねぇよな…」

 

「俺に任せろ」

 

そう言うと尚紀はユーチューバーの元へと歩いていく。

 

「ねぇねぇ、何でダンボールで寝てるの?人間として恥ずかしくない?」

 

「おい」

 

「何の悪さして社会から捨てられちゃったわけ?カメラの向こうにちょっとコメントくれよ~」

 

「俺がコメントしてやる」

 

「あっ?」

 

振り向いた瞬間、ユーチューバーの顔面に頭突きが炸裂する。

 

「がふっ!?」

 

鼻骨を砕かれて鼻血を撒き散らしながら地面に倒れ込み、藻掻き苦しむ。

 

「二度と俺達ホームレス社会の前に現れるな」

 

「テメェ!?こんな真似しやがって…警察に突き出してやる!!」

 

胸倉を掴みあげ、恐ろしい顔を向けてきた尚紀に対してユーチューバーは震え上がる。

 

「俺達の肖像権を侵害しておいて…都合が悪くなれば警察に頼るのか?クズ野郎が」

 

追い打ちの頭突きを連続で浴びせられ、左腕で掴まれているせいで倒れる自由すらない。

 

「お前の動画、俺も見てやるよ。新しい投稿で俺達をまた嘲笑う動画を投稿したら…」

 

「ヒィィィーーッッ!!しない!もうしない!!だから勘弁してくれぇ!!」

 

「そこまでだ、尚紀君」

 

さらに頭突きをお見舞いしようとする尚紀の肩を掴んだのは藤堂と米さんのようだ。

 

「ああ、これ以上は傷害事件になっちまうだろう。勘弁してやれ」

 

「……分かった」

 

開放された迷惑ユーチューバーは一目散に逃げていく中、米さんがハンカチを渡してくれる。

 

「顔の返り血を拭くといい。いい男が台無しだよ」

 

「いやースカッとしたぜ!お前みたいに行動出来る若さが俺も欲しいよ!」

 

「世話になっている人達を晒し者にされて怒れないぐらいなら、犯罪者になった方がマシだ」

 

「ハハハ!お前は本当に優しい奴だよ…気に入った!これからも宜しくな、尚紀!」

 

ホームレス達は彼を慕うようになっていき、尚紀はホームレス社会に溶け込んでいく。

 

その大事な縁はこれから先の尚紀の仕事にも助けとなるだろう。

 

生活に少し余裕が出てきた事もあって東京の魔法少女について調べてみる事になるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

東京の魔法少女社会は殺伐としている状況を尚紀は知る事になるだろう。

 

「魔女や使い魔から人間を救う事を使命として戦っている魔法少女なんて…いなかった」

 

自分の為にのみ魔女と戦い、魔法を娯楽として消費するような堕落社会がそこにはあるのだ。

 

「魔法少女の数も風見野市とは比べ物にならない程に多い…120人以上はいやがった」

 

それぞれが独自のグループを形成して活動を行っているのは調査済みである。

 

グループを象徴するアルファベットやカラー等を縄張り内のいたるところで刻む事を好む。

 

縄張りを奪ったグループは刻まれたグループの象徴を塗り替えて制圧した事を周りに示す。

 

魔法少女グループは東京の渋谷区・新宿区といった区ごとに縄張りを作っている。

 

まるでギャングのように縄張り争いを繰り返す魔法少女社会が東京には広がっている。

 

酷い時には表通りで魔法少女の殺し合い被害が出てくる時さえ生まれる程の地獄であった。

 

「これが…東京の魔法少女社会の現実なのかよ……落胆したぜ」

 

これ程の悪党揃いで形成された魔法少女社会ならば最悪の光景が思い浮かぶ。

 

「魔法という力を持った絶対者が人間の尊厳や命を尊いものだと考えるか?いいや、考えない」

 

いずれ何処かで人間をアリのように踏み潰す魔法少女と出くわすだろう。

 

彼には二つの約束がある。

 

それを果たす時が訪れたのであった。

 

♦

 

首都高速道路の中央環状品川線にある山手トンネル内を走る現金輸送車が見えてくる。

 

「最近は物騒らしいですよ?現金を奪う強盗事件が多発しているって話ですし…」

 

「ATM強盗の話か?防犯カメラは壊され現金自動預払機を重機も使わず持ち逃げした話だな…」

 

「しかもそのATMの周辺で火事が起きて住民がそっちに気を取られてる隙の犯行ですからねぇ」

 

世間話をしながら車を走らせている時、異変が起きてしまう。

 

「なんだ!?前のあれは…道いっぱいの炎だとぉ!?」

 

現金輸送車の前方が一気に燃え上がり、道路を封鎖する。

 

車を止めてバックに入れようとするが後方にも異変が起きてしまう。

 

「駄目です!!後ろの方も燃えてますよ!!」

 

後方も燃え上がり、後続車も炎が邪魔して急停止していく。

 

現金輸送車が炎で見えない中、前後を炎で阻まれてしまったようだ。

 

「今度は何だよ…コスプレ姿をしてるあの女は…何だよ…っ!?」

 

炎の中から一人の少女が現れ、現金輸送車に向かって歩いてくる。

 

民間や警察で使われるレミントンM870と酷似した魔法散弾銃に弾を込めながら進み続ける。

 

「マグネシウムのペレットと破片で作った、あたしのドラゴンブレス弾の味はどうだい?」

 

魔法少女がドラゴンブレス弾を生み出し、空気と激しい反応を起こせば火炎放射となるだろう。

 

「お、お前がこんな真似をしやがったのか!?」

 

「相手は散弾銃を持ってますよ!?まさか…現金強盗犯!?」

 

「よぉ…オッサン共、お勤めご苦労さん。現金はあたしが貰っていくからよぉ」

 

強盗だと分かった警備員達は車から降りて警棒を構えながら少女に襲いかかるが無駄である。

 

「ハハハ!人間が魔法少女に勝てると思ってるわけ?甘い甘い♪」

 

鈍重な警備員の警棒を楽々避け、魔法のショットガンストックで警備員ヘルメットを殴打する。

 

「うっ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

ヘルメットを砕く威力で殴り倒し、もう一人をバットプレート部分を使って顔面を強く打つ。

 

ただの人間が魔力で身体能力が高まった魔法少女相手に勝てるはずがないのだろう。

 

「人間が魔法少女の姿を見たからには消さなきゃねぇ。運が無かったなーオッサン共」

 

鉛の散弾を男の頭に撃とうとした時、感じたこともない恐ろしい魔力が迫ってくる。

 

「こ、この魔力は……何か来る!?」

 

業火を裂くようにして風と共に疾風となりながら現れたのは悪魔の姿。

 

その姿は風見野で暮らしてた時に使っていた帽子とパンダナで素顔を隠している。

 

「な、なんだテメェは!?あたしの現金を横取りしに現れた魔法少女かよ!」

 

「……………」

 

敵意を剥き出しにした彼女が武器を構えて威嚇する。

 

「誰だお前!?何処のグループの魔法少女か知らねーが、この金はあたしのもんだ!!」

 

次々とトリガーを引きながら散弾を放つ時、悪魔の体が揺れる。

 

「なんて身のこなしだよ!?」

 

素早くステップ移動を繰り返しながら回避する悪魔は相手の武器を見ながらこう思う。

 

(遅いトリガー速度だな。ダンテなら一秒間に二丁銃合わせて100発は撃ってきたぜ)

 

魔法少女に素早く踏み込み、発射する前のショットガンを左手で払う。

 

「ゲフッ!!?」

 

右ボディブローを左脇腹に打ち込み、怯んだ相手の頭を掴んで膝蹴り、続く右肘の一撃。

 

倒れ込んで手から落としたショットガンに手を伸ばそうとするが蹴り足の影が迫りくる。

 

「ギャァァーーッ!!?」

 

伸ばした右手は踵蹴りで踏み砕かれ、強盗犯魔法少女は悲鳴を上げてしまう。

 

明らかに格が違い過ぎる相手だと判断した魔法少女は命乞いを始めていく。

 

「ま…待って!殺さないで!!もうしない!金は諦める!!」

 

「……魔法を使って人間社会に害を与えるなら、俺がお前を殺してやる」

 

「その声…男!?お前一体…わ、分かった!もう魔法を悪い事には使わないから…許して!!」

 

観念して命乞いをしてきた魔法少女に対して足をどけてくれる。

 

「クソ…あいつ、絶対に忘れない……」

 

武器を拾って起き上がった魔法少女が逃げながら跳躍する。

 

炎の上を飛び越え、ガス弾を撃ちながら姿を隠して逃亡していったようだ。

 

見送る彼は警備員を起こして状態を確認していく。

 

「昏倒しているが、命に別状はないようだ」

 

(風見野で風華と一緒に戦っているうちに…俺も甘くなったな)

 

丸くなった自分に対して溜息をつく頃にはトンネルの両側で燃える炎も消えている。

 

消防車のサイレンの音が近づいてきたのを合図にして彼も踵を返しながら消えていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

池袋のある豊島区の南には新宿区がある。

 

新宿を代表する街である歌舞伎町を根城にする魔法少女グループが存在するようだ。

 

皆が魔法の銃を所持していることからガンナーと名乗る魔法少女犯罪集団として知られている。

 

歌舞伎町のとある廃ビルの潰れたBARにはガンナー達のアジトが存在している。

 

酒瓶や埃塗れの椅子が乱雑に放置されたアジトの中にはメンバー達が集まっているようだ。

 

「随分と派手にやられたじゃん?」

 

窓際ソファーで苦々しい顔をしながら夜の歌舞伎町を見下ろしているのは輸送車を襲った少女。

 

回復魔法をかけてもらった事で傷はほぼ完治している。

 

「相手は男だったんだって?魔法少女と間違ったんじゃないの?」

 

「顔は隠してたけど、声は完全に男のものだったよ。あんな声をした女なんているもんか」

 

「魔法少女とやり合える男なんているわけ?それこそ信じられないねぇ?」

 

「お前が炎を燃やし過ぎてさぁ、酸欠でラリって聞こえたんじゃないのー?」

 

笑い飛ばすメンバーに対して怒りで歪んだ表情を窓の外に向けている。

 

東京の魔法少女達はまだ悪魔の存在は知らないようだ。

 

「けど、あたしらのビズを邪魔する奴ってのは…ほっとけないねぇ」

 

暗い店内を照らすグラスに入った蝋燭の灯りに照らされるのはカウンター席に座る人物。

 

スミス&ウェッソンM500と似たリボルバー銃を指で回転させるのはリーダー魔法少女だ。

 

「あたし達の仕事の邪魔をする奴を生かしておいたら、他の魔法少女達に舐められる」

 

彼女達は魔法を使ってATM強盗を繰り返し、金を巻き上げ続ける魔法少女強盗グループ。

 

溜め込んだ金はBARのカウンター奥にある酒をストックしていた棚に並んでいた。

 

「いずれそいつには礼をするとして…そろそろあたし、計画を実行しようと思うんだ」

 

それを聞いた座っていたメンバー達が立ち上がっていく。

 

「あたしらは魔法が使える絶対者だ。もっとがっぽり稼がないといけないよねぇ~あんた達?」

 

ガンナーには大きく金を稼ぐ計画がある。

 

リスクも高いが、ガンナーは新しいメンバーも増えていき、今その力は最盛期なのだろう。

 

「お前ら!好き勝手に使える金に飢えてるか!」

 

<<おーーーっ!!>>

 

「ガンナーはなんだー!!」

 

<<魔法が使える強盗団だーっ!!>>

 

「スリルを楽しもうぜ!!デカく儲けろ!!」

 

リーダーの掛け声で士気が高まり、ガンナーの計画がいよいよ実行に移されるのであった。

 

♦

 

東京から郊外に向かう西の電車に乗っていると、ビルやマンションが林立する風景が続く。

 

次第に木々や緑も増えていき、一戸建て住宅が目立つようになる。

 

こういう場所は東京の魔法少女グループは寄り付かず、地元の魔法少女が数人で切り盛りする。

 

郊外の若者達でさえ都内に移り住むようになっていき、郊外人口の減少が進んでいるようだ。

 

風見野市同様、郊外というものは魔法少女にとって魅力的な場所には映らない。

 

都心に魔法少女達は集中すると考えるのが東京や近隣に住まう魔法少女社会の価値観である。

 

この現状を利用し、意表を突こうというのだ。

 

郊外なら東京の都心を縄張りにする魔法少女グループが乗り込んだとしても問題ない。

 

魔法少女グループが少ないお陰で背後を突かれる心配もないからだ。

 

強盗団は目立つ都心よりも郊外にビジネスチャンスを見出し、計画を実行する。

 

17時25分。

 

郊外のとある銀行内は勤務時間を終えようとしている職員達の働く姿が多い。

 

もうじき銀行のシャッターも全て降ろされ、今日の業務は終了するだろう。

 

何の変哲もない一日であったはずだが、それは突然起きるのだ。

 

「えっ……?」

 

店の窓や表玄関のシャッターが自動で次々と降りていく。

 

「キャァァーーーッ!!?」

 

店内には睡眠ガスが混入されたガス弾が突然撃ち込まれていき、煙塗れとなっていく。

 

即効性の睡眠ガスによって職員は警報装置を押す暇も無く眠りについてしまう。

 

「時刻は17時30分ジャスト。いい仕事だねぇ」

 

「シャッターも閉められ、外からは銀行がいつも通り営業を終了した光景に見えるだろうなぁ」

 

「ATM利用者達が来店したって深く詮索はしないだろうし、やっぱうちのボスって冴えてるわ」

 

銃の発砲音が煙の中で響き、監視カメラが次々と破壊されていく。

 

煙が消えてしまった店内ではガンナー魔法少女グループの姿が勢揃いしている。

 

顔はガスマスクで覆われ、睡眠ガスが充満した店内で行動をすることが出来たようだ。

 

「おやすみ紳士淑女諸君、いい夢を」

 

「おいっ!テメェだけは起きやがれ!!」

 

銀行の責任者と思われる男だけを叩き起こし、銃を突きつける。

 

「金庫はどっちだ?命がいらねーのか?言えよオラァ!」

 

「分かった!教えるから命だけは助けてくれ…っ!!」

 

金庫に案内させて扉を開けさせ、大きなカバンを持った魔法少女達が次々と入り込んでいく。

 

責任者に金庫室の棚を開けさせ、金目の物を全てカバンに詰め込んでいく。

 

「これであらかた手に入れたな、ズラかりましょうか」

 

「ご苦労だったねぇ、金目の物も手に入ったし、お駄賃あげるよ」

 

「あ…あぁ…やめて!命だけは勘弁……っ!!?」

 

責任者の男に対してリーダー魔法少女はマグナムリボルバーの引き金を引く。

 

「ガッ……!!」

 

頭が弾け飛び、金庫室で倒れる責任者を置き去りにしたまま金庫室の扉を閉める。

 

「外の様子は騒がしくない…計画は成功みたいね」

 

「静かに、スマートに、確実に。これがガンナーのモットーだからね、忘れるんじゃないよ」

 

銀行から抜け出した魔法少女達は陽が沈むのを待つ。

 

目立たなくなってから住宅街の屋根を飛び越えていき、縄張りに帰っていく。

 

「ハハハ!完璧な仕事ってこういうのを言うんだろうねぇ!!」

 

リーダーも他の魔法少女達もゴキゲンな顔つきだが、一人だけ不貞腐れている。

 

「……クソッ」

 

現金輸送車を襲った魔法少女だけは釈然としないまま姿を消すのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

個人で使っている目立たない位置に設置されたコインロッカーには魔法少女の姿が立つ。

 

彼女はカバンを開け、札束を次々と放り込んでいく。

 

彼女はグループからこっそり抜け出し、金をグループから掠め取ろうとしているのだ。

 

「あたしは願いで金持ちになる事を望んで魔法少女になった…」

 

彼女が契約した願いで宝くじが当たったが、彼女の親達はそれを奪って高跳びしてしまう。

 

彼女の家はとても貧乏であり、そんな生活が嫌だからそれを覆すために魔法少女になった者だ。

 

しかし、せっかく願いで手に入れた大金は両親に持ち逃げされ、娘は重荷として捨てられる。

 

「両親は殺したいほど憎い…でも、それが何だよ?魔法少女は魔法が使えるんだよ!」

 

金なんて魔法の暴力で幾らでも集められる、そう彼女は信じていた。

 

魔法少女として活動し、ガンナーというグループと出会ってメンバーになったが現実は残酷だ。

 

「あたしに回される取り分はいつも不公平!儲けは古参メンバーが持っていきやがる!!」

 

金持ちになる為に魔女と戦ってきたのに、これでは命の額としてあまりに釣り合わない。

 

その怒りの感情がこの現場の光景なのだろう。

 

中身の半分をロッカーに詰め、鍵を閉めてアジトに帰り、後でこっそり回収する計画である。

 

「メンバー共にはトイレにでも行っていたと言えばいい。何喰わぬ顔で帰ってやるわ…」

 

踵を返して後ろを振り向く。

 

そこには立っていたのは恐ろしい悪魔の姿であり、蛇に睨まれた蛙のようになってしまう。

 

「俺の慈悲は…お前には届かなかったようだな?」

 

「おま…ガァッ!!?」

 

裏拳を頬に叩きつけられた魔法少女は大きく吹っ飛びながら地面に倒れ込む。

 

チャックを締め忘れたカバンの中身が地面に撒き散らされていき、札束が宙を舞う。

 

「なんで!?なんでお前がここにいるんだよ!!どうしてあたしがここにいるのが分かった!」

 

「お前の魔力はあの時に覚えた。どうせこうなる事は分かっていたから…尾行していた」

 

「あたしの魔力が分かる?あんたは魔法少女と同じく魔力を探知する事が出来るってわけ!?」

 

あまりにも異常な存在に対して恐怖にかられていく犯罪魔法少女。

 

「お前が手に入れた魔法の銃弾には…どうやら幸運の女神は宿っていなかったようだな?」

 

「あ…あたしに手を出したら…魔法少女グループのガンナーがお前に報復するぞ!!」

 

「だから何だ?もうお前を許しはしない」

 

金色の悪魔の瞳に睨まれる魔法少女は確信してしまう。

 

「今度こそ……殺される!!」

 

彼女の防衛本能が刹那に体を動かす。

 

「チッ!!」

 

照明で使われるフレア弾を地面に発射し、眩い光が広がる。

 

目を開けた時には魔法少女の姿はその場から離れて逃げたようだ。

 

「まだ遠くには行っていない…逃がすかぁ!!」

 

悪魔はビルの上に跳躍し、犯罪魔法少女の後を追いかけていく。

 

「昔からあたし…言われてたんだよ…アンラッキーガールだって!」

 

親が仕事に失敗して貧乏になったのも、学校で不幸な事故が起きた時に現場にいた時もそう。

 

「あたしのせいにされた時に…皆に言われた!アンラッキーガールだって!」

 

貧乏神か不幸を呼ぶ祟り神だって馬鹿にされたトラウマが悪魔の言葉で蘇ってしまう。

 

後ろからは猛スピードで追いかけてくる悪魔みたいな男が駆け抜けてくる。

 

「どうして、どうしてあたしだけが…こんなに不幸にならないといけないの?どうしてぇ!!」

 

次のビルに跳躍しようとしたが心が錯乱していたためにミスを犯す。

 

「うわっ!!?」

 

足を滑らせてしまい、ビルから転落してしまう。

 

地面に背中を強く叩きつけられた犯罪魔法少女が咳き込み、苦しみを露わにする。

 

「何もかもがアンラッキー…このままあたしは…不幸に飲まれるのか?」

 

暗い路地裏で起き上がろうとした時に見つけたのは小さな子供の姿。

 

「お……お姉ちゃん、大丈夫?」

 

気がつけば路地に入る道から一人の幼い女子小学生が現れていたようだ。

 

その手にはラッピングがされた箱が持たれている。

 

「魔法少女共から貧乏くじを引かされ続け…謎の存在に追われて…今度は、コレ?」

 

魔法少女の姿を人間に見られるわけにはいかないのに、この始末。

 

「…ハハ!!何処までも…アンラッキーってわけね…」

 

ショットガンの銃口を少女に向けていく。

 

頭上からは悪魔が着地するために跳躍してくる。

 

「こんなの……糞食らえ!!」

 

トリガーにかけられた指が引き金を引いてしまう中、状況を理解した悪魔が叫んでくる。

 

「やめろぉーーーーッッ!!!」

 

放たれた散弾が少女の頭を破壊した光景に対して、地面に着地した悪魔は愕然としてしまう。

 

頭部を失った首から大量の血が吹き出し、残った体だけが倒れ込む。

 

ラッピングで包まれた箱は返り血で染まってしまう。

 

「あっ……あぁ……」

 

尚(・)紀(・)の(・)甘(・)さ(・)の(・)せ(・)い(・)で(・)差(・)し(・)伸(・)べ(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)手(・)の(・)先(・)の(・)命(・)が(・)消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)のだ。

 

「アハハハハハ!!!魔法少女と関わるからそうなるんだよぉ!!」

 

悪魔の耳に呪わしい声が響く。

 

人間の未来溢れる人生を平気で奪う、悪魔の如き魔法少女の声が響く。

 

「……貴様」

 

憤怒が拳を震わせる。

 

悪魔の荒い吐息が灼熱の高温を発する。

 

その目は金色の瞳から真紅の瞳へと移り変わる。

 

「貴様あああぁぁぁーーーーッッ!!!!」

 

「ヒ…ヒィィィーーーーッッ!!?」

 

犯罪魔法少女の頭部を悪魔の全力の力で殴り飛ばす。

 

頭が首から千切れ飛び、壁にぶつかって潰れたトマトと化す。

 

「でやあああああああああああああーーーーーーーッッ!!!!」

 

なおも拳を振るい続け、残された死体を殴り続ける。

 

ソウルジェムは砕け散り、死体もミンチ肉に変わっていく。

 

おびただしい血と、飛び出した臓腑の海が広がっていく。

 

「おおおおおおおおおおおぉぉぉーーーーッッ!!!!」

 

拳を肉塊に叩きつけ、叩きつけ、叩きつけ、地面がクレーターになっても叩き込む。

 

憎悪に塗れた悪魔の雄叫びが木霊する。

 

「呪わしき悪魔の如き魔法少女共めぇ!!お前達を殺してやる!!皆殺しにしてやる!!!」

 

真紅の瞳から赤い涙が流れていき、凄惨な光景がビルの谷間に広がっている。

 

そんな場所に吹き抜けるのは優しい夜風。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ…ハァ……」

 

風が吹き抜けた時、誰かが頬に触れてくれたような感触を悪魔は感じ取る。

 

とても懐かしく、愛した女性の手と似た感触を感じてしまう。

 

真紅の瞳が金色の瞳へと戻っていく。

 

「……俺は、また守れなかった…」

 

殺された少女の方に振り向くと、亡骸の横にはラッピングされた箱が転がる。

 

幽鬼のように体を揺らしながら呆然と歩き、箱を拾って中身を確認していく。

 

「クマのぬいぐるみ……それに、プレゼントカードも入っている…」

 

『だいすきなおかあさん、いつもやさしくしてくれてありがとう。おたんじょうびおめでとう』

 

「これは…この少女が自分の母に送るはずだった…誕生日プレゼントか…」

 

赤いペンキを被ったかのような血がプレゼントに滴り落ちていく。

 

ぬいぐるみとプレゼントカードを血で汚していく。

 

「大好きな母に送られるはずだった…誕生日プレゼントは……」

 

悪(・)魔(・)の(・)甘(・)さ(・)の(・)せ(・)い(・)で(・)頭(・)部(・)の(・)無(・)い(・)愛(・)す(・)る(・)娘(・)と(・)化(・)し(・)た(・)のだ。

 

<<おおーーい!!何処に行ったんだーーっ!!>>

 

近くで男の声が聞こえてくる。

 

きっとこの子の名前であり、この子の父親なのだろう。

 

「俺は誓う…もう二度と…この子のような犠牲は生み出さない……」

 

――俺はもう……甘(・)さ(・)を(・)捨(・)て(・)て(・)や(・)る(・)!!

 

魔法少女に慈悲などいらないと心に誓う尚紀の姿が血塗れの広場で屹立する。

 

父親に合わせる顔もなく、その場から逃げるしかないだろう。

 

路地裏から飛び出した自分の姿を見た通りの人々は悲鳴を上げていく。

 

表通りの店のガラスには自分の姿が映っており、血塗れの悪魔の姿がそこにあるのだ。

 

「……この姿がいずれ…魔(・)法(・)少(・)女(・)の(・)虐(・)殺(・)者(・)と呼ばれる者の姿か」

 

鮮血に染まるのは、かつての世界で人修羅と呼ばれし悪魔の姿。

 

周りの人々に対して何も言わずに走り去っていく人修羅の血の匂いだけが残るのであろう。

 

後にガンナーと呼ばれる魔法少女グループは悪魔の報復を受けることとなり壊滅する。

 

新宿区のグループが壊滅したこともあり、池袋の魔法少女グループが縄張りとするだろう。

 

この日を境にして魔法少女達の血煙舞う夜が増えていく。

 

皆は口々にこう言うだろう。

 

東京に魔法少女の虐殺者が現れたと語られるようになるのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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