人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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202話 悪魔ほむらの仲魔

学生達はクリスマスイブの日より冬休みに入っていく。

 

見滝原で学校に通う魔法少女達も冬休みに入ったため、神浜市に向かう事になる。

 

クリスマスを終えた12月26日には神浜市に来るという連絡が杏子からあったようだ。

 

年末の大掃除をしようかと考えていたのだが、突然の客の訪問を前にして尚紀も慌てている。

 

「槍一郎は屋根裏部屋で生活してるし、悟空は外で生活してるからいいんだが…」

 

彼女達を泊めるための部屋を準備している尚紀は掃除を行っていく。

 

「来るのは3人だけでなく5人と言われたな?杏子とさやかとマミだけじゃないのか?」

 

5人の少女達が寝泊まりする部屋を提供するには自分の部屋も貸すしかない状態である。

 

尚紀は地下のソファーで寝ることにしたわけであり、色々と準備に追われていたようであった。

 

次の日。

 

神浜市に初めて訪れる魔法少女達の迎えに行くため、フルサイズバンを走らせていく。

 

織莉子を迎えに行った時と同じく、車を駐車場に停めてから駅の改札口へと向かったようだ。

 

「よぉ、尚紀!お迎えごくろうさん!」

 

改札口から出て来た杏子達一行であったのだが、尚紀は彼女の隣にいる少女達に目を向ける。

 

「お…おい、杏子?なんでこの子達まで来てるんだ…?」

 

驚いた顔を向ける方向はさやかとマミの方ではない。

 

魔法少女達についてきていたのは悪魔少女と人間のフリをさせられている概念存在であった。

 

「あ…あの、初めまして嘉嶋さん。わたし…鹿目まどかって言います」

 

尚紀の前に来たまどかが笑顔でお辞儀をしてくれる。

 

驚きを隠せない尚紀は念話を用いてほむらに理由を聞いてみた。

 

<…話せば長くなるのよ。ごめんなさい…迷惑をかけるわ>

 

<まぁいい…どんな理由があるにせよ、この子の傍にはお前がいて当然だからな>

 

「今日は家に泊めてくれるんですよね?杏子ちゃんのお義兄さんが神浜に住んでて助かりました」

 

「ビジネスホテルに泊まるにしても、中学生のお小遣いだとキツイからな。気を楽にしてくれ」

 

「はいっ♪杏子ちゃんのお義兄さんって、とっても優しくて素敵だと分かって嬉しいです」

 

「隣の女の子は…お前の友達か?」

 

「あ、紹介しますね。私の親友の暁美ほむらちゃんです♪今日は私の付き添いで来てくれました」

 

「…暁美ほむらよ。今日はよろしくお願いします、嘉嶋さん」

 

他人行儀の振る舞いを続けるほむらに向け、同情するような視線を向けながら念話を飛ばす。

 

<お互い…周りに向けて嘘をつきながら生きるのも苦労するな>

 

<貴方も偽りに塗れた人生を生きているのね…気持ちは分かるわ>

 

「それにしても、神浜市って栄えてるんだねー!電車で見てビックリしたよ!」

 

「そうね。私も初めて訪れる街だから…少しだけ浮かれちゃうわ♪」

 

「こうやって観光気分に浸れるのも、尚紀がいてくれるからだな。本当に頼りにしてるよ」

 

「俺の事をまだ家族だと言ってくれる限り、協力は惜しまない。車に向かおうか」

 

5人の少女達の荷物を載せ、彼女達を乗せた車が発進していく。

 

家に向かいながらまどかとほむらがこの街に訪れる事になった理由も聞かせてもらったようだ。

 

家の庭に車を停めた尚紀が彼女達を下ろしていく。

 

「うわー!嘉嶋さんの家って大きなログハウスじゃん!別荘みたいだよー!」

 

「ここは元々別荘だった物件だ。空き家になってたから俺が買ったんだよ」

 

「杏子のお義兄さんはお金持ち!中も気になりますなー早く入ろうよ♪」

 

「美樹さん、はしゃぎ過ぎじゃないかしら?」

 

「そういうマミさんだって、お宅訪問とか好きそうな感じに見えたんですけどねー」

 

「まぁ…こんなお洒落な家なら気にならないこともないわね」

 

「あたし達は先に家の中に入っててもいいのか?」

 

「先に入ってろ、槍一郎が面倒を見てくれる。それと…悟空がスケベしたら張り倒せ」

 

「槍一郎に悟空ねぇ…それがあいつらの人間名ってところなんだな?了解したよ♪」

 

彼女達を見送った後、まどか達に振り向く。

 

まどか達はお泊り荷物をさやか達に任せており、車の中に戻っていくようだ。

 

再び車を発進させた彼らが向かう場所とはフラワーショップのブロッサムであった。

 

「神浜テロの犠牲者達の追悼に来てくれるなんてな…今時の中学生にしては珍しいな」

 

「あのニュースを見た時…私は凄く怖かったんです。どれだけの人達が死ぬのかなって…」

 

「今でも復旧作業は終わっていないし…水名区はほとんど焼け野原の状態なままなんだ」

 

「本当に悲しい事件でした…。だからわたしは何も出来なかったけど…花を贈りたいんです」

 

「本当に優しいよ…お前は。優し過ぎて…怖くもなってくる」

 

脳裏を過るのは、ワルプルギスの夜と呼ばれた魔女が存在した世界。

 

あのとき尚紀は杏子を探す為に見滝原市に赴き必死になって探し続けた。

 

それでも杏子の命は無いものだと悟り、絶望に打ちひしがられていた時にまどかと出会った。

 

(この子は…自分よりも他人を優先する。だからこそ…自分の命さえ犠牲にして…)

 

利他精神に溢れ、己の人生よりも他人を救うために命を投げ出せる女…それが鹿目まどか。

 

個人よりも全体を優先する生き方は人修羅として生きる尚紀とも通じるものがあるだろう。

 

だからこそ、あの時の悲劇は忘れられない。

 

<ほむら…俺はこの子と他の世界で出会っている。ワルプルギスの夜とお前が戦っていた時にだ>

 

<クロノスから聞かされてるわ。貴方も見届けたのね…まどかがコトワリ神になる瞬間を…>

 

<ああ…この子が魔法少女になり、自分の命を犠牲にして守護を呼んだ瞬間をな>

 

あの時まどかを守れなかった苦しみを抱えている2人だからこそ、互いに覚悟を決める。

 

<もう…あんな光景は二度と見たくない。だからこそ…必ずアラディアを倒すぞ>

 

<人修羅…貴方も私と同じ気持ちになってくれるのね。本当に…嬉しいわ>

 

ブロッサムに訪れた一行は店内で働く春名このみから注文していた花を受け取っていく。

 

「このみ、俺も花を買いたくなった。追悼用の花を見繕ってくれ」

 

「分かりました。私は今でも夢に見ます…本当に悲惨なテロ事件でした…」

 

「お前の分も献花しておく。それと、この子達の花の料金も纏めて払わせてくれ」

 

車に乗り込んだ一行は神浜行政が用意した追悼施設に向かう。

 

車から降りた3人が追悼施設の中に入り、追悼祭壇に花を置いていく。

 

手を合わせたまどか達が犠牲となった人々に追悼の気持ちを向けていくのだ。

 

「…あのテロの時、俺は多くの人々を救おうと街中を駆け巡った」

 

「嘉嶋さん…遠くにいるわたしの代わりに…みんなを助けようとしてくれたんですね?」

 

「助けられた人もいたが…ほとんどを死なせてしまった。俺が守れた人は…僅かだった」

 

その後はボランティア活動を行い、多くの人々の亡骸を瓦礫の中から探したと語っていく。

 

その時の尚紀の無念と、火災地獄に飲まれた人々の苦しみを思うまどかの目に涙が浮かぶ。

 

「わたし…何も出来なかった。遠くで大勢の人達が亡くなった時に…何も出来なかった…」

 

「何も出来なかったことはない、こうして献花を行いに来てくれている」

 

「でもわたし…悲しくて…悔しくて…心が張り裂けそう……」

 

「お前の気持ちは俺が背負う。この街で暮らす者として…お前の思いやりに感謝する」

 

彼なりの優しさを向けてくれるが、まどかは酷く落ち込んでいる。

 

失った沢山の命を前にして何も出来なかった自分への後悔に苦しみ抜く。

 

そんな彼女に向けて、悪魔であり神とも呼ばれだした人修羅は語ってくれた。

 

「どんなに力を手に入れても…神の如き存在になろうとも…守れないんだよ」

 

「えっ……?」

 

胸の内にある悲しみの感情が顔に浮かび、右手を持ち上げていく。

 

「守ろうと足掻いても…手から零れ落ちていく。神だろうが悪魔だろうが…万能なんかじゃない」

 

「神でも…悪魔でも…万能じゃない……」

 

「神仏の力でも守れない者達がいるんだ。人間のお前が全てを背負う必要はないんだよ」

 

「で、でも……」

 

「苦しみは独りで背負うもんじゃない…みんなと背負うべきだ。そうだろ…ほむら?」

 

顔を俯けたままであったが顔を上げ、頷いてくれる。

 

「彼の言う通りよ。神であろうが悪魔であろうが…人間と変わらないぐらい…ちっぽけなの」

 

「ほむらちゃん……」

 

「全てを貴女が背負う必要はない…みんなで背負うべき。だから私も…一緒に背負うわ」

 

「もちろん俺も背負うし…お前の家族や友達だって背負ってくれる。お前は独りぼっちじゃない」

 

2人になだめられたまどかを連れ、追悼施設を後にする。

 

道を歩いている時、まどかの横を歩くほむらが念話を送ってきた。

 

<ありがとう…貴方が言ってくれた言葉は…私の言葉そのものだったわ>

 

<経験から出た言葉だ。俺は大勢の人間達を守れなかった…宇宙規模でだ>

 

<私も同じ…だから貴方の苦しみは…私の苦しみそのものなのよ>

 

<魔法少女になっても…悪魔になっても…誰も守れない。お互いに…ちっぽけな存在だよな>

 

彼の心が痛い程に分かってしまうほむらは立ち止まり、尚紀に顔を向けてくれる。

 

その表情は心の同志を得たかのような喜びさえ感じさせる程の嬉しさに包まれていた。

 

<人修羅…いいえ、尚紀。貴方はもう1人の私よ…同じ運命を背負う者と出会えて良かったわ>

 

<俺も同じ気持ちだ。あの時は試練とはいえ、お前を傷つけて…すまなかった>

 

お互いに微笑みの表情を浮かべるのだが、まどかはキョトンとしている。

 

「2人とも…急に見つめ合っちゃってどうしたの?」

 

「「えっ?」」

 

まどかとて年頃の女の子だ。

 

色恋沙汰はご馳走であり、自然と笑顔になっていく。

 

「フフッ♪ほむらちゃん…嘉嶋さんと言葉を交わさなくても目と目で通じ合えるんだね♪」

 

まどかに勘違いされてしまったのだと分かり、不愛想な顔が火のように真っ赤となる。

 

「ま、まどか!?私はそういうつもりじゃなくて……!!」

 

「いいのいいの♪私はちゃんと分かってるからねー♪」

 

「もう!からかわないで頂戴!」

 

照れたほむらがまどかを追いかけていく光景に微笑み、彼は乗ってきた車へと向かう。

 

まどかとほむらはせっかく神浜市に来たこともあり、少し観光してから家に向かうという。

 

「帰る時は連絡しろ。うちの探偵事務所は正月休みに入ったから迎えに行ける」

 

2人を残した尚紀は杏子達が待っている自宅へと戻っていく。

 

運転している彼の目は何処か遠くの世界を見ていたようだ。

 

「鹿目まどか…お前は優し過ぎる。その無鉄砲なまでの優しさはまるで…祐子先生だ」

 

彼が思い出してしまうのは恩師である高尾祐子であった。

 

「先生もボルテクス界を生み出した自責の念に飲まれて…その命を散らしてしまった…」

 

思い出したくもない光景が脳裏に巡る。

 

恩師である高尾祐子の姿をしたアラディアが鹿目まどかの姿となり、憑りつく瞬間だった。

 

「先生に憑りついたアラディアは…鹿目まどかにさえ憑りついた。二度と…繰り返させない」

 

魔女達が生み出した偽神に過ぎない異邦の神に憑りつかれた女性は虚空の彼方に消え去った。

 

アラディアにさえ憑りつかれなければ高尾祐子は違う形で生き残ったかもしれない。

 

そう考えてしまう人修羅の心には…アラディアに対する抑えようのない憎悪が宿っている。

 

「円環のコトワリ神になろうが関係ない。かつてのコトワリ神共と同じ末路を与えてやる」

 

人修羅として生きる者が悪魔ほむらに与する理由。

 

それはかつての世界で果たせなかった復讐を実行するためであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

家に戻ってきた尚紀はリビングで杏子達と向かい合う。

 

さやかはかねてから聞きたかった悪魔と神浜の魔法少女達との触れ合いの出来事を聞いたようだ。

 

さやか達に向け、人修羅として生きる尚紀が神浜市で何をしてきたのかを語っていく。

 

それを聞かされた彼女達は複雑な心境となったようだ。

 

「あたしは…尚紀さんは間違ってなかったって…思うよ」

 

「魔法少女社会を大切に思うばかりに…人間社会の慟哭を蔑ろにする。私は賛成出来ないわ」

 

「仲良し社会って…こんなにも自分達に都合がいいものしか求めなくなるんだな…」

 

「私達は人間を守るために戦う者よ。なのに人間ではなく魔法少女を優先するでは本末転倒よ」

 

「マミさんの言う通り!あたし達は人間社会を守る正義の味方として生きてきたんだから!」

 

「この街の連中だってマミやさやかと変わらない正義の味方だ。だけど…バイアスは恐ろしいな」

 

「俺もまた…欠陥を抱えた政治思想を周りに押し付けてしまった。自分を見つめるのは難しいよ」

 

「互いに正しいと信じて努力するからこそ…意固地になる。私達も気を付けたい心理ね…」

 

さやかとマミは人間を守るために正義の味方となってくれた人間社会主義者達。

 

だからこそ嬉しい気持ちとなり、彼女達にこの街の長を紹介してやると彼は言いだす。

 

「常盤ななかさんかぁ…その人が不義理な裁判をした長達に代わって新しい長になったんだね?」

 

「彼女とその仲間もお前達と同じ気持ちになってくれた子だ。だからこそ彼女達に会わせたい」

 

「うわー!なんか楽しみだなー!地域間魔法少女社会交流なんて初めての経験だし♪」

 

「おいおい、あたし達が何をしに来たのかを忘れたのかー?」

 

「そうね、先ずは私達の避難場所となってくれる業魔殿に顔を出しましょう」

 

「ななか達と会わせるのは明日にしよう。今日は業魔殿に向かうとするか」

 

スマホでななかに連絡を行った後、尚紀は杏子達を車に乗せて業魔殿へと向かって行く。

 

南凪区の業魔殿に尚紀達が入って暫くした頃、同じように南凪区に訪れる者達がいた。

 

「メル…予知でさやかが視えたのは本当なの?」

 

「はい…さやかさん達が尚紀さんの家から業魔殿に向かう光景が視えたんです」

 

悪魔に転生してしまったが、雪野かなえと安名メルは円環のコトワリの一部だった者達。

 

だからこそこの世界に囚われた同じ円環のコトワリの使者であるさやかの身を案じていた。

 

「困ったな…あたし達はもう、円環のコトワリの使者じゃない。悪魔に転生したんだ」

 

「円環と繋がった頃のボク達だったら…失ったさやかさんの力を蘇らせれたんですけどね…」

 

「あたしはアラディアの一部として…見た。悪魔に引き裂かれたまどかの光景を…」

 

「あの悪魔となった魔法少女も一緒にいます。尚紀さんとお知り合いだったなんて…」

 

「あの悪魔と迂闊に戦うべきじゃない…。尚紀の仲魔だったら尚紀が怒りだす」

 

「それにボク達もアラディアを裏切ってまで同じ悪魔になったんです。似た者同士ですね…」

 

「あの悪魔とは一度話し合ってみたい。結果だけでその人の全てと決めつけるべきじゃない」

 

「それが…あの尚紀さんと神浜の魔法少女達との戦いで学ぶことが出来た教訓ですからね」

 

業魔殿の入り口まで歩いていくと、ホテルの入り口から尚紀達が出てくるのを見かける。

 

「いやーなんか舞い上がっちゃいますね!これが調整かぁ…力がモリモリ湧いてくる!」

 

「あんな奴がいるなんてなぁ…。長いこと魔法少女やってるけど、あたしは知らなかったよ」

 

「八雲さんが教えてくれたわ。美国さんのために調整屋を見滝原に手配してくれたみたい」

 

「あたし達は神浜まで遠出しなくても調整を受けられるって事だな?財布に優しくて助かるよ」

 

「それにしてもみたまさん…凄いオッパイしてましたな!マミさんと張り合ってますよ!」

 

「美樹さん…下品よ。まぁ大きかったのは事実だし…肩こりの話題で盛り上がれちゃうかも♪」

 

「巨乳同士の友情を…あたしの前で語るんじゃねーよ!」

 

「まぁまぁ、杏子だって14歳なんだからまだまだ成長出来るって♪」

 

歩きながら盛り上がっていた時、前を歩いていた尚紀が立ち止まる。

 

「どうしたんです?」

 

「知っている連中を見かけた。少し話をしてくるよ」

 

尚紀は見かけたかなえ達の元へと向かって行く。

 

美樹さやかに会いたいという望みを聞かされた彼がかなえ達と共に杏子達の元へと戻ってくる。

 

「紹介する。俺と同じ悪魔であり…元魔法少女だった雪野かなえと安名メルだ」

 

それを聞いたさやか達が驚きの声を上げ、動揺した顔を浮かべてしまう。

 

「魔法少女が…悪魔になったって言うのかよ!?」

 

「信じられない…そんな事が出来るっていうの!?」

 

「それが業魔殿の秘密でもある…。あたしとメルは…ここで再び生を受けたんだ」

 

「ボク達は…円環のコトワリに導かれた者達です。それは…さやかさんも同じでしょ?」

 

「えっ…?」

 

周囲の視線がさやかに集まってしまう。

 

「あたしが…円環のコトワリに導かれた…?」

 

悪魔ほむらの記憶操作魔法の影響を受けていないかなえとメルが語る現実。

 

しかし記憶支配によって記憶を奪われているさやかは思い出すことが出来なくなっていた。

 

「ちょ…ちょっと待てよ!?突然何を言い出すんだ!」

 

「そうよ!美樹さんが円環に導かれたというのなら…ここにいる美樹さんは何なの!?」

 

「あたしは…生きているはず…。だってあたしは…今でも魔法少女として…この世界で戦って…」

 

酷い混乱状態になってしまったさやかの体がふらついていく。

 

その状態を見て、かなえとメルは念話のやり取りを行うようだ。

 

<この状態から見て…まどかを引き裂いた悪魔から魔法攻撃を受けているみたいだ>

 

<記憶を奪うたぐいのものでしょうね…。ボク達のことを全然覚えてくれていないし…>

 

<ショックだよ…。円環の世界で仲良くなれた子だったのに…この世では通じ合えないなんて…>

 

これ以上真実を語るべきか迷っていた時、かなえの目がベイエリア方面に向かう。

 

「…気を付けて、メル」

 

「分かってますよ。あの悪魔…ボク達に気が付いたみたいです」

 

遠くの景色には神浜の観光地の一つが見える。

 

その海沿いに立つ人物こそ、業魔殿の前で行われている緊急事態に気付いた暁美ほむらなのだ。

 

彼女は両手を持ち上げていく。

 

悪魔の秘密を暴露しようとしている者達と、封印が破られようとしている者達の記憶を奪う行為。

 

しかし、それに待ったをかける者の念話が響いてきたようだ。

 

<お前達、もう止めておけ。知らなければ幸福を得られるチャンスもあると思う>

 

手を叩くのを止めたほむらが念話を返す。

 

<その女達…円環の使者ね?私の記憶封印を破りにきたようだけど…困るのよ>

 

<それは…さやかにもう一度この世界での人生を与えたいという目的がある…そういうこと?>

 

<その通りよ。円環のコトワリの使者に邪魔はさせない…まどかを危険に晒してしまうから>

 

<人間の幸せを守る優しい悪魔のようです…。実はですね、ボク達は円環の使者じゃないんです>

 

<どういう事なの…?>

 

<あたし達は…アラディアを裏切った者達。コトワリ神の一部から抜け出して…悪魔に転生した>

 

<何ですって!?>

 

<つまり、ボク達は貴女と同じ存在だというわけです>

 

<そういう事だ。こいつらも紹介してやる時間を作ってやるから…矛を下ろせ、ほむら>

 

<…分かったわ。その代わり…上手く誤魔化しておいて>

 

悪魔ほむらの望みを受け取った2人はこれ以上さやかについては追及しないと決める。

 

宇宙の法(LAW)を犯すことになったとしても、守りたい自由(CHAOS)があるためだった。

 

「…ごめん。よく見ると…別のさやかだったみたいだ」

 

「そうですね…髪型がよく似てたから…勘違いをしてたようです」

 

「要領を得ない連中だな…?本当にお前らは円環に導かれて悪魔になったヤツでいいのか?」

 

「その部分は間違いないです。そして、ボク達は尚紀さんと同じ悪魔となりました」

 

「詳しい事情を聞く必要があるわね。この人達とも時間を作ってもらえないかしら?」

 

「了解だ。さやか達は今夜うちに泊まる予定なんだが…どうする?」

 

「分かりました。ボク達も泊まりに行きますね♪」

 

「どうしてそうなる!?」

 

突然の提案を受け、泊まる部屋の数が足りていないことに慌ててしまう。

 

7人の少女達に泊り込まれてしまったら布団の数も足りない。

 

尚紀はイビキが喧しいセイテンタイセイのトレーラーハウス行きになるかもしれなかった。

 

話し合いも終わったことにより、再び車を目指して歩いていく。

 

ずっと俯いたままであったが、さやかは杏子の背中の衣服を摘まみながら引き留めてくる。

 

「杏子…あたしは…生きてるよ。生きてるんだよね…?」

 

「…ああ、生きてるよ。だから心配するなって。さやかは円環に導かれてなんていない」

 

「でも…なんだかあたし…上手く言えないけど…言われた言葉は正しい気もする」

 

「連中が勘違いだったと認めたんだ。勘違いを真に受けてどーすんだよ?」

 

「う…うん…」

 

車に乗り込んだ一行は連絡があったまどかとほむらを迎えに行く。

 

夕日が沈む窓の景色を黄昏た顔つきで見つめながらも、こんな言葉を残すのだった。

 

「みんなと一緒に過ごせて…今のあたしは幸せだと思う。だけど…だけど……」

 

――本当にあたしはこのままで…いいのかな?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんなこんなで、7人の少女達が集まった尚紀の家ではお泊り会が粛々と行われていく。

 

宴会になるかと思われたが、やはり会話はかなえとメルの話がメインとなっているようだ。

 

まどかとほむらが席を外してくれた隙に事情を説明される。

 

それを聞いた魔法少女達の顔にも動揺が浮かんでしまうが、それでも敵だとは思われなかった。

 

人間の守護者を務める悪魔の生き様を知っている者達だからこそ信じてもらえたようだ。

 

その後はお風呂タイムとなったり、お風呂を覗きに来た悟空を張り倒したりとどんちゃん騒ぎ。

 

日付も変わりそうな時間の頃には、まどか達は用意してもらえた部屋に入って就寝についたのだ。

 

今のリビングに残っているのは悪魔達しかいない。

 

「さて、そろそろ話してもらおうじゃねーか。テメェの話は尚紀から聞かされてるぞ」

 

「この世界で生まれた悪魔のようだな?そして…アラディアと戦う者だとも聞いている」

 

「コトワリ神ト戦ウ…人ナル悪魔カ。マルデ汝モ人修羅ノヨウニ見エテクル」

 

「貴方達が人修羅として生きる尚紀の仲魔ね。事情を説明されているのなら手間が省けるわ」

 

「俺はほむらと共にアラディアと戦う事にする。ボルテクスを超えたお前達はどうするんだ?」

 

それを問われた時、クーフーリンとセイテンタイセイとケルベロスは笑みを浮かべてくる。

 

「決まってんだろ?俺様達も円環のコトワリとかいうアラディアをぶちのめしに行くんだよ」

 

「かつての世界で奴とは決着をつけられなかった。それだけが心残りだったが…いい機会だ」

 

「コトワリ神ト戦ウ悪魔コソガ人修羅ダ。ソシテ我ハ、人修羅ノ生キ様ヲ見極メル者ナノダ」

 

「私と一緒に…貴方達も戦ってくれるのね?」

 

「勘違いするなよ。俺様はあのまどかって小娘を守る為に参加するわけじゃねぇ」

 

「武人として、アラディアとの決着を望む。我々が求めているのはそれだけだ」

 

「コトワリ神ト戦ウノハ初メテデハナイ。我々ノ力ヲ当テニシテクレテ構ワナイ」

 

「こいつらの力は俺が保障する。そして、ほむらの力も俺が保障してやるさ」

 

「マロガレとマサカドゥスの力を解放した尚紀と互角にやり合えた悪魔の力を疑いはしないさ」

 

「我々の背中を任せるに相応しい悪魔だ。安心して轡を共に出来る」

 

「本当に感謝するわ…。それと貴女達、私達を止めなくてもいいのかしら?」

 

ほむらが視線を向ける先にいるのは悪魔となったかなえとメル。

 

彼女達は元円環のコトワリの一部であり、ほむらが成そうとしているのはコトワリ神の破壊行為。

 

記憶が戻ったさやかとなぎさならば止めに入ってくるのだろうが、悪魔となった彼女達は違った。

 

「あたしはね…悪魔に転生して今を生きてる。だからね…貴女がさやかに望む気持ちも…分かる」

 

「もう一度人間のように生きられる喜びを知ったボク達は…ほむらさんを悪く言えません」

 

「貴女達…それでいいの?これは円環のコトワリへの叛逆行為なのよ?」

 

「あたし達は円環のコトワリを裏切った者達。同じ悪魔として自由(CHAOS)を望む者なんだ」

 

「宇宙の秩序(LAW)よりも…人の心を守ろうとしてくれるほむらさんの選択をボクは信じます」

 

「雪野かなえ…安名メル…円環の使者であった貴女達と心が通じ合えるなんて…」

 

「かなえでいい。あたしはもう…さやかとなぎさの元に行って記憶を揺り動かすマネはしない」

 

「メルでいいですよ。ボク達は遠くからでも戦いを応援します。同じ悪魔として」

 

「協力してあげたいけど…貴女達の力の次元には届かない。足手纏いになってしまう…」

 

「いいえ、貴女達のその気持ちを送ってくれるだけで…私の心には大きな力が与えられるわ」

 

「ボクとかなえさんはほむらさんを応援します。勝って下さい…円環のコトワリを相手に!」

 

皆がほむらに視線を送り、微笑みながら頷いてくれる。

 

魔法少女時代の頃は誰にも真実を話せず、悪者にされながら孤独に戦うしかなかった。

 

しかし悪魔となってからは、同じ悪魔達が暁美ほむらを支えてくれる。

 

それがどんなに嬉しかったのかは、目に涙を浮かべていくほむらの表情を見れば分かる。

 

「私…悪魔になって良かったわ…。だって…だって…仲魔達と出会えたから…」

 

<<今後ともよろしく、暁美ほむら>>

 

みんなが揃って暁美ほむらを仲魔として受け入れてくれた光景を見て、悟空がこう言ってくる。

 

「よし!そうと決まれば円環のコトワリ神を相手に勝利を誓うための祝杯だ!!」

 

「祝杯だと?まだ飲み足りないのか?」

 

「魔法少女共を相手に遠慮しながら飲まされてたんだぞ!まだ飲み足りねぇ!!」

 

「ホドホドニシテオケ。汝ガ酔ッパラッタ後ノイビキハ最悪ダ」

 

「どうする、ほむら?」

 

「フフッ♪偶にはいいじゃない。私も麦茶をもらえるかしら?」

 

「あ、だったらボクが淹れてきますよ♪」

 

「メルは止めて…この前のような乱痴気騒ぎになるかもしれないし…」

 

「ニャ―!だったらオイラ達が用意してくるニャ―」

 

「こんな力添えしか出来ないけれど許してね、ほむら。私とケットシーも応援してるわ」

 

「ありがとうネコマタ、ケットシー。色々な悪魔が存在してるのね…私も悪魔を勉強しないと」

 

ネコマタとケットシーは晩酌を用意するために台所へと向かって行く。

 

ツマミを用意したネコマタが最初に戻ってきて、丸盆にグラスを載せたケットシーも戻ってくる。

 

ケットシーから渡されたグラスを持ち、乾杯を行い一気に酒とお茶を飲み干すのだが…。

 

「おい…ケットシー?俺のグラスに入ってるのは麦茶だぞ?」

 

「ニャ?それじゃあ…尚紀の分のお酒が入ったグラスは誰に渡したのかニャ?」

 

「それぐらい覚えてろよ…」

 

ウイスキーと色が似ている飲み物であったため、騒動はまた起きてしまう。

 

「……ウイ~……ヒック」

 

全員の視線がほむらに集中。

 

見れば彼女の顔は真っ赤となっており、酒臭い息を吐きだしていた。

 

「なんかぁ…変わった麦茶ねぇー…でも、ヒック…悪魔の私には悪くない飲み物だわぁ~♪」

 

「お…おい、大丈夫なのかよ…?」

 

「ドォワイジォォブ…ドォワイジォォブ…ずぅえんずぇんなんともないから…ウフフフフ♪」

 

「台所に行って水でも飲んで来い…。ずっと中学生をやっていたお前は酒の耐性がないようだ」

 

彼女は言われた通り、ふらつきながら台所へと向かう。

 

祝杯を続けていくのだがほむらの帰りが遅いため尚紀が迎えに行ってみる。

 

するとそこには…。

 

「おい……」

 

尚紀の晩酌用の酒が入ったペットボトルのポンプを押しながらグラスに酒を注ぐ存在。

 

それはあまりにもへらべったい存在であった。

 

「ま…まさか……」

 

人の気配を感じたへらべったい存在が顔を向けてくる。

 

「ウフフ…私は悪魔よぉ。中学生なのに深夜にお酒を飲む私…なんて悪魔なのかしらぁ♪」

 

現れたのは、へらべったい姿をした()()()()()()()()であった。

 

「ほむら……お前もやちよ系のキャラだったのかよ!!??」

 

「やちよぉ?誰かは知らないけど、きっとピザを50人分は食べちゃう系の女子ねぇ」

 

「ピザだと……?」

 

「そろそろ出来たかしらぁ~」

 

ふよふよと翼をはためかせながら電子レンジに向かう。

 

中から取り出したのは温めた冷凍ピザであったようだ。

 

「ウフフ…今の私は乙女の摂理を乱し、女の体を蹂躙する存在♪」

 

「お前の貧相な体なら少し太るぐらいが丁度いいけど…そのノリ…なんとかならんのか?」

 

呆気にとられた尚紀の横では酒を見せびらかし、クッチャクッチャとドカ食いを始める謎の女。

 

「私の悪魔パワーは伊達じゃないの。厚切りステーキのカロリーを焼き切る事も出来るわぁ」

 

「しょうもない悪魔パワーだな…スキル欄で真っ先に削除したくなる能力だ…」

 

「実質0カロリーよぉ。これならいくらでも食べれるわぁ…あぁ恐ろしいわねぇ…ウフフ♪」

 

またふよふよと浮いていき、冷蔵庫の中からステーキ肉を取り出す。

 

「まだ食うのかよ……」

 

フライパンを手に取り鼻歌交じりにステーキを焼き始めてしまう悪魔ちゃんを見てガックリする。

 

胸がまな板女は大食い揃いなのかと考えていたら、遅い彼の様子をクーフーリン達が見に来る。

 

「ゲェ!!?ほむらの様子がおかしいぞ!?」

 

「随分と…薄っぺらくなったものだな…」

 

「心ナシカ…雰囲気モ変ワッテイルヨウナ気ガ……」

 

「むっ!?私のサバトを邪魔しに来るとは…よこしまな悪魔共ねぇ…お仕置きしてあげるわ!」

 

突然クワっとした顔つきとなり、飛び上がりながら両手を叩く。

 

<<なんだ!!?>>

 

景色が変化する。

 

尚紀達は星空の世界のような悪魔結界に囚われたようだ。

 

「見せてあげるわぁ…これがコトワリの外にある力よ!」

 

ゲンコツを作った悪魔ちゃんが浮遊していく。

 

「お…おい、あれは懐かしいような…俺達側から見えてはいけないもののような……」

 

悪魔ちゃんが迫っていくのは、多くのプレイヤーが頼ると同時に自爆するボタン。

 

レベルアップ作業の時にはお世話になった筈のA()U()T()O()()()()であった。

 

「あの右上のボタンを押すわ」

 

メタい存在がAUTOボタンをゲンコツで叩いてしまう。

 

すると尚紀達の様子が変化し、同じように悪魔姿に変化する。

 

「あ、あらぁ…?目が殺気立ってるけど……このボタンってなに???」

 

それに気が付いた時にはもう遅い。

 

突然襲い掛かってくる人修羅達の姿が高速で迫りくる。

 

先ずはケルベロスにどつかれる。

 

「ぐふぅ!!!」

 

次はセイテンタイセイにどつかれる。

 

「あふぅ!!!」

 

お次はクーフーリンにどつかれる。

 

「ぬふぅ!!!」

 

最後は人修羅の右フックパンチにどつかれた。

 

「うぎゃーーーッッ!!!」

 

可愛い悪魔ちゃんであるが悪魔耐性は優れている。

 

しかし彼らは物理無効を貫通するスキル持ちであったようだ。

 

全ての攻撃がクリティカルだったため、()()()()()()は後4つ残っている。

 

なので悪魔ほむらちゃんはもう一度全員からしばかれることとなるようだ。

 

「わ…私は……カボチャ……」

 

悪魔結界が解けていく。

 

何事もなかったかのようにして、尚紀達はリビングへと帰っていったようであった。

 

その頃、トイレに行きたくなったまどかが二階から降りてきている。

 

リビングで晩酌をしている者達をチラ見した後、トイレに向かってたら台所の様子に気が付く。

 

「ほ…ほむらちゃん!!?」

 

ボコボコ状態で台所に転がっていたのは、恥ずかしい悪魔衣装を着たへらべったい悪魔である。

 

「ダメじゃないほむらちゃん!嘉嶋さんの家で変なコスプレして遊んでたなんて!」

 

「ま、まろかぁ!!?これは違うの…その…私は悪魔じゃなくて…そう、悪魔ちゃんなの!」

 

「言ってる意味が分からないよ!なんだかお酒臭いし…ほむらちゃん勝手にお酒を飲んだね?」

 

「そんなぁ!?誤解よ…誤解なのよまどか…お願いだから話を聞いて頂戴!!」

 

「ダーメ!!ほら、酔っぱらって吐く前にベットの中に行こうよ」

 

「大丈夫よ…悪魔だからこの程度のお酒を飲んだぐらいでは…吐くわけ…うごっ…うごご…」

 

ボディにきつい一撃を浴びているため、ついに嘔吐感に耐え切れなくなる。

 

「オロロロローーーッッ!!!」

 

「キャァァーーーーッッ!!?」

 

盛大に虹を吐き出す悪魔ほむらの光景を前にして、様子を伺っていた尚紀も苦笑してしまう。

 

(やれやれ…ボルテクス時代から、俺の元には変わり者の悪魔ばかりが集まってきやがる)

 

ひょんなことから悪魔ほむらは多くの仲魔達と出会えることとなっていく。

 

前途多難ではあるが、それでも彼女はこれからの脅威と戦う事に恐れはないだろう。

 

彼女が恐れるとしたら…この惨状を見た鹿目まどかとの付き合いの行方だけであった。

 




見滝原組の話は長くなるので二つに分けます。
それにしても、叛逆の物語後のなぎさちゃんは魔法少女なのか人間なのかも判断がつかずに触れられない。
このままでは不思議系キャラのまま、ずっと触れずに終わってしまう(汗)
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