人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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203話 私の居場所

二泊三日で訪れている見滝原組の二日目になる神浜での行動が開始していく。

 

槍一郎が作った朝食を食べ終えた一行は二つのグループに分かれるようだ。

 

まどかとほむらは被災地を回り、神浜テロの犠牲者達の冥福を祈る為に手を合わせに行くという。

 

「2人だけで大丈夫か?土地勘はないんだろ?」

 

「スマホの地図アプリを見ながら回ろうと思ってます」

 

「それだけでは迷いやすいだろう。杏子達を送った後、お前らを案内するために合流するよ」

 

「気を使わせて申し訳ないわ。でも、街を歩き回るのも大変だし運転手がいるのは有難いわね」

 

こうしてまどかとほむらの2人は先に街へと向かう事となっていく。

 

「お前らも準備出来たようだな?それじゃあ車に乗ってくれ」

 

魔法少女達は昨日尚紀が手配してくれた神浜魔法少女社会との交流会のために動き出す。

 

向かう先とは昨日訪れた業魔殿の調整屋であった。

 

調整屋に入ると見滝原の魔法少女と会えるのを楽しみにしていた大勢の魔法少女が迎えてくれる。

 

「見滝原で活動する皆さん、今日は遠いところから神浜に来てくれて本当に嬉しいです」

 

「貴女が常盤ななかさんですね?初めまして、見滝原中学校に通う三年生の巴マミです」

 

「では、巴さんは私と同い年ですね?気を楽にしてください、同じ年齢ですし♪」

 

「ウフフ♪そう言ってくれると助かります」

 

「俺はこいつらを皆に紹介した後、別の連れ合いのところに行かないといけない。後は任せる」

 

「承知しました。それでは皆さん奥にどうぞ♪店を貸してくれたみたまさんと皆が待ってます♪」

 

「楽しんで来い杏子、さやか。今日の主役はお前達だ」

 

「そうさせてもらうよ。離れていても大量のお菓子の匂いがするし、楽しみだ♪」

 

「あんたは遠慮なくがっつくし、神浜魔法少女達にドン引きされないようあたしが監視するよ!」

 

(さやかの調子も戻ってきている…この分なら大丈夫だろう)

 

集まった者達に3人を紹介し終えた後、尚紀は業魔殿から離れて車に乗り込む。

 

スマホでほむらと連絡をとってみると、夏目書房にいるという。

 

「なんでかこの店にいるんだ?やっぱりあいつら…道に迷ったな?」

 

迎えに行くため、尚紀は車を走らせていったようだ。

 

少し前に時間は戻る。

 

まどかとほむらは最大の被害地である水名区を周りながら被災場所に赴き、手を合わせていく。

 

その後は水名神社にまで赴き死者達の冥福を神様に祈った後、次の予定地である栄区を目指す。

 

しかし、見滝原市から出た事もないまどかとほむらは方角さえ上手く掴めない。

 

気が付いたら逆の北西方面に向けて歩いていったようだ。

 

「おかしいなぁ…この辺が栄区であってるのかな?」

 

「観光パンフレットを見ると、栄区にはファッション街があるようね。でも…この辺は…」

 

「うん…どちらかと言うと古書の街って雰囲気の通りだね。本屋さんが沢山並んでるし…」

 

「どうやら道に迷ったみたいね…。私がスマホで道を調べてみるわ」

 

「ちょっと待って。あそこの女の子に聞いてみようよ」

 

まどかが向かって行く方向には夏目書房が見える。

 

店の入り口で清掃作業をしていたのは、夏目書房の娘である夏目かこであった。

 

聞き込みをしているまどかであったが、悪魔であるほむらには店の少女の正体が分かる。

 

(あの子は魔法少女ね…。この街を歩いて気が付いただけでも相当数の魔法少女がいたわ…)

 

暁美ほむらが魔法少女として生きた記憶の中では、両手で数える程度の人数しか知らない。

 

しかしこの街には両手足では数えきれない魔法少女社会が形成されているのに驚いたようだ。

 

「ほむらちゃん、この子が道を教えてくれるみたいだから店の中に来て」

 

まどかに促され、ほむらは夏目書房の店内へと入っていく。

 

「古書の匂いに包まれたいい店ね。年代物の本も色々あるみたい」

 

「お好きに見て回って大丈夫ですよ。神浜市の地図帳を探してきます」

 

かこはカウンターの奥へと入っていく。

 

時間を潰すためにほむらは店の棚を色々と見て回るが、まどかはカウンターに目を向ける。

 

「あれ…?この本は……あっ!招き猫のワルツだ!」

 

まどかが見つけた小説とは、かこが店番中に読んでいた招き猫のワルツである。

 

どうやらまどかもこの小説が好きなようであり、つい声を出してしまったようだ。

 

「遅くなりました。あれ…?えっと…その小説が…気になるんですか?」

 

「えへへっ♪わたしもこの小説は好きなんだ♪だからつい目がいっちゃって…」

 

それを聞いたかこの目が見開き、満面の笑顔を向けてくれる。

 

「あっ…!私もっ…大好きです!愛読書です…!」

 

「素敵な小説だよね。なんといっても登場する猫ちゃんが可愛い♪」

 

「そう…!そうなんですよね…!嬉しいです…この本を知ってる人…少ないから…」

 

カウンターで話し込んでいるまどかの元にほむらが近寄ってくる。

 

「何を話しているのかしら?」

 

「えっとね、この子がわたしと同じ小説が大好きみたいだから…つい話し込んじゃって」

 

「お邪魔だったでしょうか…?」

 

楽しそうに話しているのを邪魔するのは気が引けるほむらは首を横に振り、微笑んでくれる。

 

「問題無いわ。私は書籍棚を見て回るから、楽しみなさい」

 

「うんっ♪ありがとうほむらちゃん」

 

いつの間にか友達のように接する2人を棚の影で見つめつつも、ほむらは溜息をつく。

 

(これは長くなりそうね…尚紀の迎えを待った方が早いかしら?)

 

そう考えているとスマホが鳴り出す。

 

渡りに船とばかりにスマホの通話ボタンをスライドさせ、迎えの催促を行う。

 

程なくして、有料駐車場に車を停めてきた尚紀が店の中に入ってきたようだ。

 

「まどかとほむらはいるか?迎えに来たんだが」

 

「あっ!尚紀さんじゃないですか!まどかさんとお知り合いだったんですか…?」

 

「えっ?2人は知り合いだったの?」

 

「俺もこの店をよく利用する客なんだ。それで仲良くなれたってわけさ」

 

それだけではないと言いたげな顔をしたかこであるが、彼は首を横に振る。

 

人間のフリをさせられている少女に自分達の存在を知らせるわけにはいかないようだ。

 

「この子達は神浜テロの犠牲者達の追悼を行う為に見滝原から来たんだ。今は俺の家で泊ってる」

 

「見滝原にもお知り合いがいたんですね…。まどかさんとは何処でお知り合いになったんです?」

 

「俺じゃなくて義妹の友達なんだ。義妹が泊まりに来るついでにこの子は神浜市に来たわけさ」

 

「そうだったんですね…ごめんなさい、長々と引き留めちゃって…」

 

「気にしなくてもいいわ。まどかも楽しそうだったし、私は文句ないから」

 

「後は俺がこの子達を案内していく。店番頑張れよ、かこ」

 

「はいっ!まどかさん、神浜市に来る機会があったら…またうちに寄って下さいね♪」

 

「いっぱいお喋り出来て楽しかった♪絶対に寄らせてもらうね、かこちゃん♪」

 

ひょんなことから神浜市で友達が出来たまどかは尚紀達と共に車へと向かって行く。

 

犠牲者達の追悼を目的にしていた彼女は暗い表情をしていたが、慰めになったのだろう。

 

嬉しそうなまどかを見守る尚紀とほむらも微笑み、栄区を目指すこととなったようだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

夏目書房を出る頃にはお昼が近かったため、尚紀達はお昼ごはんを済ませてから向かう事にする。

 

お昼を済ませた3人はようやく栄区に入ってきたようだ。

 

駐車場から降りる少女達であったが、まどかとほむらは胃のムカつきに苦しんでいる。

 

「だから万々歳の味に期待するなと言ったんだ…他の店だってあったのに」

 

「うぅ…何を食べても同じ味しかしない中華飯店だったね…。オマケに量も凄かったし…」

 

「そうね…味の点数を聞かれた時は30点以下だと言ってやりたかったわ…うっぷ…」

 

「そう言いたかったんだけど…言っちゃうと万々歳で働くお姉さんが泣きそうだったし…」

 

「あの店主も自分の味に疑問を持っている。来年から武者修行に行くそうだ」

 

「そうなんだ…?頑張って修行して、美味しい中華飯店になってくれるといいなぁ…うっぷ…」

 

ドラッグストアで胃薬を買った後、持ち直した3人が栄区の街を歩いていく。

 

ファッション街を通り超えると、神浜一の繁華街エリアに出たようだ。

 

「水名区程ではないけれど…ここも酷い有様ね…」

 

「うん……そうだね」

 

神浜一の繁華街であるため、神浜観光地としても名高いエリア。

 

だからこそ観光客を西側に独占された東住民達から憎まれ、派手に破壊されてしまっている。

 

道路や歩道は整理されたようだが、それでも多くの店舗が営業出来ない状態であった。

 

「この街でも大勢が亡くなった…。街の象徴的なファッションビルの1090も酷い有様だ」

 

尚紀に案内された2人が1090と呼ばれるファッションビルへと向かって行く。

 

ビルが見えてくるとまどかの顔も曇り切ってしまった。

 

「酷いよ……こんなの……」

 

閉鎖されてしまったビルは一階部分から火の手が上がったため黒ずんでいる。

 

ビルのガラスも熱破壊され、所々が割れたままであった。

 

その光景を見てしまったまどかの脳裏には、見滝原で起こってしまった大火災の光景が浮かぶ。

 

怖くなってしまった彼女の体は震えていた。

 

「わたしの街も…大火事があったの…。あの時ママは…危うく火の手に飲まれるところだった…」

 

「商業区で起こってしまった…あの大火災ね」

 

「ママや…ママの職場は無事だったから嬉しかったけど…他のビルで働いてた人達は…」

 

その時の現場に居合わせた尚紀の拳が握り締められていく。

 

「まどかの母親が働く街を燃やした奴なら…探偵の俺が必ず見つけ出す。報いを与えてやる…」

 

「嘉嶋さん…ありがとう。でも、嘉嶋さんの命も大事だよ…だから…無茶はしないでね?」

 

義憤の感情が燃えていた時、立ち入り禁止テープが張られた場所から撮影を行う人物を見つける。

 

「あいつは…令か?」

 

破壊された1090を撮影していたのは、南凪自由学園新聞部に所属する観鳥令である。

 

尚紀に気が付いた令は疲れた笑顔を見せ、彼らのところに近づいてきたようだ。

 

「見かけない子達を連れてるけど…尚紀さんのお知り合い?」

 

「俺の義妹の友達だ。街の案内をしてやってたんだが…それより、令はここで何をしている?」

 

「観鳥さんは新聞部で働く部員だよ。だからね…この街の記録を残していたんだ」

 

彼女は首にぶら下げたカメラを持ち上げて見せてくる。

 

そのカメラは令と共に神浜テロによって起こされた破壊痕跡を記録し続けたようであった。

 

……………。

 

栄区の繁華街には十七夜が働いていたメイド喫茶がある。

 

集まった4人が話を行える喫茶店を探していた時、一番近くにあったため入ったようだ。

 

無事だったメイド喫茶に入ってみると、客足はまばらである。

 

メイドさん達も心なしか元気が無い様子であり、店内は閑散としていたようだ。

 

4人分の注文を終え、出された飲み物を口にした後に令が話を始めていく。

 

「そうか…復興の記録を残すために被災地を定点撮影し続けることにしたのか」

 

「あの神浜テロは…観鳥さんが暮らす東地域の人々が起こしたもの。だから責任を感じてる…」

 

「お前がテロに加わったわけじゃないだろ?」

 

「でも…やっぱり同郷の者として、責任を背負いたくもなるんだよ…」

 

まどかは神浜テロの特番を見た事があるため、東の人々がテロを起こした原因を知っている。

 

苦しい表情を浮かべながらも、神浜の東住民に聞いてみたいことがあった。

 

「神浜の歴史差別があったから…あのテロは起きたんですよね?」

 

「うん…観鳥さん達はそれに苦しめられ続けた。それを変えるために新聞部で働いたけど…」

 

東西差別問題を知ってもらうために観鳥報というメディアを通して行動を起こしてきた。

 

それでも南凪自由学園に在籍する学生達からは他人事のようにして扱われてきたと語られる。

 

「差別問題を放置し続けた結果…あのテロは起きた。全ては…()()()()()()が生んだ結果さ…」

 

それを聞いたまどかは自責の念を感じてしまい、両手が握り締められていく。

 

あのテレビ報道があった時に初めて神浜市の歴史問題を知る事になった。

 

テレビニュースが流れなかったら、彼女は一生神浜の差別問題に気が付く事は無かった。

 

こんなにも狭い世界でしか生きていなかったのだと分かったまどかは謝ってしまう。

 

「ごめんなさい…。わたし…神浜の人達の苦しみに気付いてあげられずに…毎日遊んでました…」

 

今にも泣きそうなまどかの顔を見た令は首を横に振り、なだめるような表情で励ましてくれる。

 

「まどかちゃんだけじゃない…日本人の殆どがそうなんだ。楽に過ごす毎日しか見てくれない…」

 

令が語っていくのは、無関心極まりない人々が繰り返す無知によって生み出された悲劇。

 

判断材料になる知恵を求めないから、人々は差別を繰り返したのだと語ってくれた。

 

「政治や社会問題は知識を求めなければ本当の理解を得られない。狭い経験だけが全てじゃない」

 

「それを人々に与えようとしても…貴女はきっと悪者にされたはず。私も…経験があるの…」

 

「その通り…。観鳥さんはエンタメだけを求めたい人々から…邪魔者扱いされてきた…」

 

「日本人の悪癖だな…。出過ぎた杭は打たれる…どいつもこいつもマウント遊びが大好きなんだ」

 

「酷過ぎるよ…そんなの…。東の人達だって人間なんだよ…怒りたくもなるよ…」

 

「だからあのテロは起きてしまった…。これは無関心を選んだ全員の責任だ…君だけじゃないよ」

 

まどかだけの責任ではないと令は言いたかったのだが、それでも彼女は責任を背負い込む。

 

他人のためなら自分を犠牲にすることも厭わないまどかの優しさ。

 

その無鉄砲なまでの優しさこそ、尚紀とほむらにとっては恐ろしかった。

 

「わたし…この街の復興に協力したいです。お小遣いは少ないけど…この街にまた来ます…」

 

「だ、だから!まどかちゃんだけの問題じゃ…」

 

「まどか…彼女の言う通りよ。貴女だけの責任じゃないわ…だから落ち着いて…」

 

「ダメ!わたしは無関心だった…だから大勢の人達を救えなかった…だから復興を手伝いたい!」

 

彼女の決意は固いのか、令とほむらがなだめても止まってはくれない。

 

珈琲を飲んでいたカップを置き、尚紀はまどかの方に視線を向ける。

 

「個人であっても…出来る範囲で、成さねばならないことを成さねばならない」

 

「えっ……?」

 

「俺はそう考えている。だからこそ…俺には大きな目標が出来た。まどかはどうなんだ?」

 

「わたしの…目標…?」

 

「将来なりたいものとかあるだろ?神浜の人々を手助けしたいというなら多くの選択が生まれる」

 

鹿目まどかは人間としてこの世界で生きる者。

 

ならばこそ、人間のまま成せることを成して欲しいという人修羅の願い。

 

それはきっと悪魔ほむらとも通じ合える気持ちであった。

 

「令のようなジャーナリストでもいい。医者や看護師でもいい。お前だけの目標を作るんだ」

 

「わたしだけが目指す…わたしの人生の目標…?」

 

「お前だってもう直ぐ中学三年生だ。将来を見据えて動いてもいい時期になっている」

 

「尚紀……」

 

「この街で多くを経験しながら生きろ、まどか。それがお前の将来を開花させてくれるだろう」

 

――俺は将来のまどかと出会ってみたい。

 

――その頃のお前はきっと、自分に誇りを持てる素敵な女性に成長しているはずさ。

 

彼の気持ちが届いたのか、まどかは勘違いをしていたことにようやく気が付く。

 

罪を感じたのなら、目先の贖罪を求めるべきではない。

 

悲惨な歴史を目撃した者として将来に活かすという発想を与えてくれたのだ。

 

「…分かりました。わたし…将来を真剣に考えてみる。神浜を助けられる職業に就きたいです」

 

思い留まってくれたまどかを見た令とほむらが安堵の表情を浮かべてくれる。

 

「尚紀さんは…やっぱり大人だね。男の人の安心感って…凄いなぁ…」

 

「私も…そう思うわ。ありがとう尚紀…まどかを止めてくれて」

 

「言うべきことを…言ったまでさ」

 

女性から褒められても謙虚な態度を見せる大人な男。

 

その上で父性愛に溢れたイケメン。

 

密かに後ろの席に座っていた男が震えながらも立ち上がる。

 

「ステキ…ステキ過ぎて…惚れちゃうじゃないのぉぉーーッッ!!!」

 

素っ頓狂な叫び声に驚いた4人が後ろの席に振り向く。

 

「何だよ…オッサン?あんた一体…誰なんだ?」

 

「イヤン!オッサンだなんて言わないで!恋する乙女と呼んで頂戴!!」

 

「恋する乙女だぁ!?」

 

「イイ男に惚れた乙女なのよ!!アタシの心に火を点けた以上、アタシは恋路を突き進むわ!!」

 

見れば背後の男の両目にはハートマークが浮かんでしまっている。

 

嫌な予感が全身を襲い、冷や汗に塗れながらも何かに気が付く。

 

「あれ…?アンタ…何処かで見たような気が……?」

 

人修羅として生きる男が思い出してしまったのは、かつてのボルテクス界での記憶。

 

あれはギンザ大地下道でマネカタ達の隠れ家を見つけた時であった。

 

「あんた……もしかして……」

 

人修羅が思い出してしまった記憶。

 

それはマネカタ達の隠れ家で出会ったアイテム屋のオネェなマネカタであった。

 

「あの時のヤツか!!?」

 

「あぁ~ら?アタシとダーリンは何処かで出会ってたかしら?だとしたら…運命の再会ね!!」

 

「ま、待て…早まるな!!俺にはそういう趣味は無い!!」

 

「アタシがう~んとサービスしちゃう!!い・つ・で・も・オーケーよ♡」

 

席から飛び退いた尚紀が店内を逃げ惑い、男は彼を追い回す。

 

「アハハ…なんだか…凄い事になっちゃったね、ほむらちゃん」

 

「まぁ…尚紀はモテる男だと思うわ…」

 

「観鳥さんも…そう思うよ…ハハ……」

 

ドタバタ騒ぎに気が付いたメイド達が慌てて駆け寄り、男を羽交い絞めにしていく。

 

「落ち着いて下さい店長!!店の規則でご主人様との恋愛は禁止だって言ってましたよ!」

 

「アタシはオーナーよ!!オーナー特権を使わせて頂戴!!」

 

「ダーメーでーす!!ほら、ご主人様達!早く逃げなさい!!」

 

「恩に着る!!」

 

慌てて清算を済ませた尚紀がまどか達を連れて店から逃げていく。

 

「あぁ~ん!!待ってダーリン!!今ならしあわせチケット100枚進呈するわーっ!!」

 

「ロクなアイテムを引けなかったからいらねーよ!!」

 

こうして人修羅は恐ろしい男との再会をどうにかトンズラする事が出来たようである。

 

恐ろしい男が潜む栄区については、トラウマのせいか苦手意識がついてしまったのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

栄区から帰る頃には日も沈み始めている。

 

今日は帰る事となり、まどか達は車が停車してある駐車場へと向かって行く。

 

まどかとほむらは前を歩いている尚紀から少し離れた位置を歩いている。

 

2人が気を使ってしまうのは、尚紀の横を一緒に歩いている女性のため。

 

どうやら尚紀を見送りたい令は車が停めてある駐車場までついて来ているようだ。

 

「観鳥さんね…ジャーナリストを目指してるけど…本当はとても怖いんだ」

 

「お前が弱気な発言をするとはな?何を怖がっている?」

 

「この国に住んでる国民達の無関心が…怖いんだ」

 

不安に怯えている令が語るのは、メディアの情報を鵜呑みにすることしか出来ない者達のことだ。

 

日本では全国紙でも裏取りやファクトチェックをしない。

 

特に相手が悪の枢軸国と世間から認識されているロシアや中国ならお構いなし。

 

検証はなく、疑問もヘッタクレもない。

 

米国・NATO大本営の発表を一色になって拡声してきた。

 

ホワイトハウスや米国高官の発言は漏らさず垂れ流すこと自体が異様だと語るのだ。

 

「もっと酷いのは…情報に触れても民衆は()()()()()。つまらない情報よりもエンタメなのさ…」

 

「十代の子供だけの話じゃない。それは大人達にも言えることだ」

 

「飯時のニュースだけを視聴させられ…メディアの言う()()()()()()()()する…まるで洗脳だ…」

 

「固定観念に囚われた者は他人を縛り付ける。他人の行動を批判して自分に鞭を打つ生活を送る」

 

「きっと世界的なパンデミックでも起これば…それは現実となる。()()()()()()()()()()さ…」

 

既成概念、固定観念、権威主義。

 

皆と同じが正しいとされ、宗教や権力はそれを利用し、異端は科学を無視した多数決独裁を行う。

 

「自分なりの検証を行って叫ぶ者は悪者にされ、多数決で()()()()()総理大臣を担ぎ上げるのさ」

 

デマゴーグとは、煽動的民衆指導者のことを指す。

 

社会経済的に低い階層の民衆の感情、恐れ、偏見、無知に訴える事により権力を得る者である。

 

「民衆は自由を欲する癖に自由を恐れる。盲目的に秩序や法に縋りつく…どう正しいかも考えず」

 

これこそが、他の宇宙で繰り返されたLAW信者達の姿である。

 

おかしい事をおかしいと叫ぶCHAOSを行う者は悪にされ、制裁が叫ばれる。

 

メシア教はそれを利用して、多数決の名の元にメシア教を嗅ぎ回る犬共を民衆達に潰させた。

 

デマゴーグ大司教万歳と叫び、自分達が騙されていることすら疑わず法に縛り付けられる。

 

それがどう正しいのかも考えずに。

 

「令……?」

 

立ち止まってしまった令を心配して顔を向ける。

 

俯いたまま前髪で目元を隠す彼女の体は震えていた。

 

「こんなんじゃ…観鳥さんがいくら情報を必死になって伝えても…誰にも…届かない……」

 

ジャーナリストになりたいと願った者が、ジャーナリズムを信じられなくなってしまう。

 

届いて欲しいと願う気持ちなんて、自分勝手な理想を信じたいだけであり確証など得られない。

 

人は見たいものしか見ないし、信じない。

 

それを分析して民衆達に都合のいいモノを消費してもらう学問こそがマーケティングだった。

 

「観鳥さん……悔しい……悔しいよぉ……」

 

今にも泣きそうな令を心配した尚紀は周囲の店に目を向ける。

 

ファッション通りにまで歩いてきたようであり、周囲には無事だった服屋が並んでいた。

 

その一つに目を付けた尚紀が服屋に入っていく。

 

「尚紀さん……?」

 

茫然としながら尚紀の買い物を待つしかない少女達。

 

少しして、買い物を終えた尚紀が店から出てくる。

 

「何を買ったの…?」

 

「ジャーナリストに似合うものさ」

 

袋から取り出した品を令に手渡そうとする。

 

「これって……帽子?」

 

尚紀の手に持たれていた品とは、PRESSカードを挟めるベルト付きキャスケット帽であった。

 

「他人を信じても応えてなどくれない。ならばこそ、時にはエゴに生きる必要もあるだろう」

 

「観鳥さんの…エゴ……?」

 

「お前にはあった筈だ。目指したい女性ジャーナリストがいた筈だ」

 

「それは…その……うん…いるよ」

 

「ならばそれを望め。欲望が無くなった人間など強くなれない。憧れを必要として…極めろ」

 

「欲望が無くなった人間は…強くなれない…。だからエゴさえも必要とする…」

 

「自分を我慢し続ける人生など死んでいるも同然だ。だからこそ、お前が憧れる女性となれ」

 

「観鳥さんが…大正時代に活躍した女性ジャーナリストの…()()()()と同じになる……」

 

「その人も女性蔑視の偏見にさえ負けなかった強い人だ。その女だって求めたんだよ……」

 

――人生の楽しさをな。

 

それを聞かされた令の目が見開いていく。

 

オカルト記者だと馬鹿にされ、記事さえ馬鹿にされた女性ジャーナリストが大正の頃にいた。

 

それでも彼女は現実に打ちのめされながらも周囲を安心させてくれる笑顔を作れる人だった。

 

そんな彼女は不名誉であったとしても報道の歴史に名を残す人物として生涯を終える。

 

そして、そんな朝倉タヱに憧れを抱いてくれた同じ女性が21世紀にいてくれたのだ。

 

「人生は()()()()()()()だ。他人の評価に囚われずに、納得のいく人生を生きろ」

 

「なおき…さん……」

 

「これはお守り代わりだ。悔いる人生を生きるよりも、憧れを求めて…とことん楽しめ」

 

――ジャーナリストの観鳥令は、まるでオカルト記者の朝倉葵鳥みたいな胡散臭い記事を書く。

 

「周りの連中からそう言わせてみせろ。そうすれば、お前の勝ちさ」

 

令の顔が真っ赤となり、目から大粒の涙が零れ落ちていく。

 

尚紀に言われた言葉によって、信じられなくなったジャーナリストの道を再び目指したくなる。

 

「やだ…バカ…そんなこと言われたら…観鳥さん……本気になっちゃうよぉぉぉ……っ!!」

 

泣き出してしまった彼女の恥ずかしい顔を周囲に晒すまいと、強引に帽子を被せてくれる。

 

令は尚紀に抱きつき、胸に顔を埋めながら嗚咽を必死に抑え込む。

 

片腕で彼女を抱きしめ、落ち着くまではこのままでいさせてくれる。

 

男の優しさに甘える観鳥令を見守りながら、まどかとほむらは顔を向け合い微笑んでくれた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

帰る時に杏子から迎えの連絡があったため、まどか達と共に杏子を迎えに行く。

 

家に帰ってきた一行であったが、夕飯前に一悶着があったようだ。

 

神浜魔法少女社会との交流会の時、杏子とさやかは神浜の子を相手にリサーチを行っている。

 

リサーチ内容とは、車悪魔のクリスから聞いた話は本当なのかということだ。

 

尚紀の話になると神浜の魔法少女達は目を輝かせながら絶賛してくれた。

 

調整屋の八雲みたまは頬を染めながら、彼を心の底から慕っているという話まで出してくる。

 

クリスの話は事実なのでは?と疑っていたら、まどかから確信に至れる話が飛び出すのだ。

 

「なるほど…そんなことが栄区に行ってた時に起きたんだ?」

 

「うん。嘉嶋さんって、女の子にモテるタイプだと思ってたけど…本当にモテちゃうんだ♪」

 

「これで決まりだな…。クリスの話は事実だったんだよ…」

 

不気味な笑みを浮かべる杏子とさやかに不思議顔を向けるまどかである。

 

杏子とさやかに呼び出された尚紀は家から少し離れた森の方へと向かって行く。

 

少しした後、哀れな男の絶叫が小高い山に響き渡ったようだ。

 

やり遂げた表情を浮かべながら杏子とさやかが家に戻ってくる。

 

夕飯になっても尚紀が戻って来ないため、クーフーリンとケルベロスが家の周囲を捜索していく。

 

すると、哀れな男の姿を発見したようだ。

 

「うむ…女の嫉妬は恐ろしいものだ。私も女共から襲われた経験がある」

 

「悪魔デナケレバ死ンデイタナ」

 

クーフーリンとケルベロスが見上げる先には、槍から伸びた鎖に吊るされたボロボロな男の姿。

 

首に巻き付けられた鎖を用いて木の枝にぶら下げられていたようである。

 

なぜクーフーリンは女とのいさかい事だと気が付いたのか?

 

それは木の横に置かれていた手作り案内板にこう書かれていたためだった。

 

『女たらし』

 

哀れな男も救出され夜も更けていき、まどか達は就寝したようである。

 

かなえとメルは一泊だったため、尚紀は地下のソファーで寝ているようだ。

 

すると上の階に人の気配を感じた彼はソファーから起き上がる。

 

浅い睡眠しか出来ない彼はまだ眠気もなく、夜風に当たりたい気分だったため外に出た。

 

庭を少し歩いていくと誰かを見つけたようである。

 

「眠れないのか?」

 

尚紀から声をかけられた少女が振り向いてくれる。

 

同じように夜風に当たりにきていたのは鹿目まどかであった。

 

「うん…少し星を見たくなって…」

 

まどかの横にきた彼も星空を見上げていく。

 

街の明かりから離れた場所であるため、冬の夜空には美しい星の世界が広がってくれていた。

 

星空を見上げていたが俯いていき、まどかはこんな話を語り始める。

 

「わたし…毎日の生活は幸福だと思う。だけど、それが本当に正しいのか…分からなくなる」

 

さやかと同じく、彼女も己の本当の記憶を悪魔ほむらに奪われている。

 

もし彼女が本当の記憶を思い出した瞬間、彼女の半身と強いコネクト現象が起きるかもしれない。

 

そうなれば最後、宇宙を覆う悪魔結界があろうとも瞬時にアラディアは移動してくる。

 

そして鹿目まどかに憑りついたアラディアは、円環のコトワリ神として再び完成するのだ。

 

「わたしにもあったはず…。目指していた本当の姿があった気がする…それが思い出せない…」

 

「今のままではダメなのか?幸福に過ごせていると言ったじゃないか」

 

「幸福だけど…自分が死んでる気がする。心を押し殺すのは死んでるのと同じ…そうですよね?」

 

「…そうだな。そうかもしれない…」

 

「もっと大きな目標があったはず…。この美しい夜空の世界が…わたしの居場所だった気が…」

 

幸福に生きながらも自分の在り方に疑問を感じている概念存在。

 

それだけアラディアの影響が強まっている証拠なのだろう。

 

悪魔ほむらに伝えて記憶封印の力を強めるべきかと考えてもみるが、首を横に振る。

 

「お前は…()()()()()()()()が尊いと思うか?」

 

「偽りに塗れた人生…?」

 

「俺は偽りに塗れた人生を生きている…。神浜人権宣言を行った時から強くそれを感じてしまう」

 

「そんな…あの時の嘉嶋さんは本当に立派でした…。わたし…心から嘉嶋さんを尊敬してます」

 

「俺は嘘をついている。だけど…その嘘のお陰で…神浜の東西差別が消えてくれたんだ」

 

()()()便()…そう言いたいんですか?」

 

「仏の救済である衆生済度(しゅじょうさいど)も嘘をつく。他人を相手に本音が言えるか?」

 

「わたしは…ううん、クラスのみんなだって…本音を堂々と言う事なんて出来ないと思います…」

 

あいつはハゲだ、デブだ、口も臭い、ホモだのロリコンだのと心の中で思ってしまう。

 

そんな本音を人間達は嘘をつかずに堂々と相手に言えるだろうか?

 

「人間の言葉とはペテンで出来ている。相手を傷つけない言葉しか選べない取り繕う表現なんだ」

 

「それは…そうですね。わたしだって…最初の印象をそのまま相手に伝えるなんて…無理です」

 

「嘘をつくことによって、人間関係を良好に作れる。()()()()()()()()()()()んだよ」

 

「嘘って…詐欺師や犯罪者が使うイメージでした。だけど…わたしも嘘をついてたんですね…」

 

「みんな同じさ。万物は常に陰陽のコトワリで動いている…偏見だけで全てを判断するなよ」

 

彼の言葉によって迷いが生まれてしまう。

 

だからこそ尚紀に振り向き、こう聞いてしまった。

 

「わたし…他人の嘘によって救われてると思います。わたしは勉強もダメだし…運動だって…」

 

「まどかをそう思う奴がいたとしても…嘘をついてくれる。お前の心を傷つけたくないからだ」

 

「それが…人間の思いやりなんですね?」

 

「そうだ。まどかを大切に思うからこそ…嘘をついてくれる。その人の気持ちを考えてやれ」

 

言うべきことは伝え終えた尚紀が家に戻っていく。

 

道を歩いていると立ち止まり、木の後ろに隠れながら見物していた者に向けて念話を飛ばす。

 

<悪魔に堕ちようが…お前は人間として正しい。だから胸を張れ、ほむら>

 

彼は再び家に戻っていき、姿を消す。

 

木の後ろから現れたのは暁美ほむらである。

 

彼女の表情は喜びに包まれており、人修羅に向けて感謝の言葉を言ってくれた。

 

「私…貴方といると本当に安心する。私の気持ちをまどかに伝えてくれて…ありがとう」

 

残されたまどかは再び星の世界に目を向ける。

 

しかし直ぐに視線を逸らし、こんな言葉を言ってくれた。

 

「私の世界は…星の世界じゃない。綺麗だけど…()()()()()()()だと…思うから」

 

星は人間の心を傷つけたりはしないが、思いやりも向けてはくれない。

 

だからこそ概念存在である神は孤独の牢獄に繋がれた囚人のようにも思えてくる。

 

そんな世界に導かれてしまった女神の半身はこう思う。

 

傷つけられる世界ではあるけれど、同時に思いやりを与えてくれる人間の世界が好きなのだと。

 

……………。

 

次の日。

 

帰路につくため電車に揺られるまどかは視線を窓に向けている。

 

遠くなっていく神浜市を見ながらも、彼女の心は温かい気持ちに包まれていた。

 

「…わたしは神浜が好き。友達が出来たし…社会を大切にする人もいたし…嘉嶋さんもいる…」

 

まどかと接してくれた人達を思う彼女は笑顔を作ってくれる。

 

迷いを乗り越えた彼女は、自分の正直な気持ちを皆に聞こえないように呟くのだった。

 

――わたしを大切にしてくれる人達がいる限り、この世界こそが()()()()()()()

 




マギレコのユニークモブキャラって、味があるからつい使いたくなるんですよね(汗)
人修羅君はモテまくるけどペルソナ主人公にはなれないので、アルカナ目当てにヒロイン達と長い夜を過ごすイベントは与えられない(使命感)
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