人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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209話 勝てる仕組み

季節は学生達の卒業シーズンとなる3月へと入る。

 

3年生組は高校も含めて進学して新たなる進学先へと移り変わっていく。

 

見滝原市で暮らす巴マミは見滝原中学校の高等部に進学したようである。

 

杏子達が通う見滝原中学校も付属学校であったためそのまま高校まで進学したようだ。

 

神浜の魔法少女達も進学して四月からは新たなる学生生活が始まっていくのだろう。

 

「みふゆ…進学おめでとう。貴女なら私の大学の薬学部に受かれると信じてたわ」

 

「みふゆの進学を心配してたけど、やれば出来る子だったんだね!進学おめでとう!」

 

みかづき荘では浪人生のみふゆが大学の薬学部に進学出来たお祝いのパーティが開かれている。

 

みふゆの隣には同じ大学に進学出来た都ひなのもいるようだ。

 

「フ…フフフ…私だって…やれば出来るんですよ…やっちゃん…鶴乃さん…」

 

進学出来たというのに彼女の目はハイライトが消えたまま。

 

何があったのかを勉強指導を担当したひなのに聞いてみると、禁じ手に手を出した反動だと言う。

 

「こいつはな…今の学力では確実に落ちていた。だからな…あたしの実験に付き合ってもらった」

 

「ひなのの科学実験!?なんだか怪しい気配がプンプンしてきたよ!?」

 

どうやらみふゆはひなのが科学実験で生み出したスペシャルドーピング薬に手を出したようだ。

 

頭が冴えわたった事により受験を乗り越えられたようなのだが、実験の副作用に苦しんでいる。

 

頭脳を強制的に引き上げる代わりに暫くの間は何も考えられないぐらいに頭がパーになるという。

 

「身長を伸ばす薬を開発していた時期に生み出せたドーピング薬に手を出してたのね…あなた」

 

「あーっ!?みふゆはズルしてるよー!()()()()()()に手を出すなんて悪い子ちゃんだよーっ!」

 

「えへへー…私は意外といけない子なんですよー?そんな事よりー…お祝いのお酒飲みたーい♪」

 

「二十歳になってから飲みなさい…。貴女はまだ19歳よ」

 

「えーっ!?ヤダヤダァ!お酒飲みたいー!!のーみーたーいーっ!!」

 

今年で二十歳になる女なのに子供のようにジタバタと暴れ出す。

 

困り顔を浮かべるやちよと鶴乃はひなのに振り向く。

 

「まぁ…このような副作用が生まれる。暫くの間は家で休んでてもらったが…まだ治らない」

 

「ちゃんと完治するんでしょうね…?」

 

「経過観察中だが…状況が好転しない。だから症状を改善させる薬を開発しているんだ」

 

「大丈夫なのかなぁ…?これじゃあ四六時中酔っぱらってるようなみふゆだよ…」

 

「もっと心配なのは…ズルして受験を合格したみふゆの大学生活ね…」

 

「その点はあたしも責任を感じてる。同じ大学に入学した者として、これからも鍛えていくさ」

 

「お願いね、都さん。さて…みふゆも進学出来たことだし!みふゆのバイク選びの時間よ!」

 

「楽しいツーリング仲間が生まれるんだね!私のオススメバイクもあるから皆で見ようよ!」

 

皆が新しい学生生活を夢見ながら桜の開花を待つ季節。

 

しかしそんな楽しい時間を共に過ごせない者もいるようだ。

 

国政選挙への出馬を決めた尚紀は来年の選挙に向けた準備に追われている。

 

資本家である尚紀は選挙資金を集めるための政治資金パーティーや個人献金を募る必要はない。

 

しかし出馬する彼を支える後援会を創設する必要があり、そのための準備を進めているようだ。

 

尚紀は忙しい合間を縫って後援会のメンバー集めに奔走していた。

 

「後援会の後援会長は俺と共に選挙活動を行う重要人物。だからこそ影響力のある者が必要だ」

 

家にあるウッドデッキの椅子に座って向かい合うのは家主の尚紀と客人の織莉子。

 

織莉子は尚紀の政治活動を支援する事を表明した魔法少女であり微力ながら手助けをしてくれる。

 

しかし彼女は高校進学を控えている年齢の子供という立場であり多くの助けにはならないようだ。

 

「父の選挙活動の応援に来てくれたのは…八重樫でした。尚紀さんはどのような人を探します?」

 

「政界入りを果たすには現職の政治家の応援を要請するのが妥当だが…俺は無所属出馬を望む」

 

「国会政党のどれにも属さない出馬になると…国政政治家の応援は期待出来ませんね…」

 

「だからな…俺は日本の財界と太いパイプを持つ銀子に頼ろうとしたんだ」

 

「銀子…?存知ない人物ですけど…お知り合いなんですか?」

 

「マダム銀子と呼ばれる女は日本の財界の重要人物達に憩いの場を提供する者。コネが沢山ある」

 

「それで…その銀子さんの協力で誰かいい人を見つけだせたんですか?」

 

問われる尚紀だが顔をしかめていく。

 

それでも話題を出した者として伝える責任があると思ったのか語ってくれたようだ。

 

「俺はもう一度東京に戻ることにした。会員制のBARクレティシャスの東京支店にな…」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

銀座にそびえ建つのはガラス張りのスタイリッシュな高層ビル。

 

変わらぬ外観をしたビルの最上階フロアにある店とは選ばれたエリートだけが利用出来る店。

 

この国の政財界の大物しか会員になれない特別な社交場であるBARクレティシャスであった。

 

「ようこそ我らの神よ!マダムから貴方様を紹介してもらえる日が訪れようとは感激です!」

 

タキシード姿をした尚紀の元に集まってきたのは日本を代表する大富豪達。

 

啓蒙神を崇める信者達であり、イルミナティに飼われるフリーメイソンの下部メンバー達である。

 

隣に立つ銀子と共に尚紀は富裕層達が集まった席へと案内されていく。

 

席に座った尚紀を囲むようにして富裕層達が座り込む。

 

顔を向ける皆に向け、尚紀は重い口を開いてくれた。

 

「集まってくれて感謝する。俺は来年の国政選挙に出馬する…その為にお前達の協力を求めたい」

 

イルミナティが崇める啓蒙神へのゴマすりを行う目的で集まっていた者達だが表情を変える。

 

驚きと不安で周囲の者達がざわめく中、尚紀は言葉を続けたようだ。

 

「後援会を組織するため会長となってくれる者を探したい。支援を名乗り出る者はいないか?」

 

「その…啓蒙神様?貴方様はこの国に何を求めておられるのですか?」

 

「そうです…我々もそれを拝聴しなければ、協力しようにも…」

 

「そうだったな…すまない。先ずは俺が政治に求める主義・主張を聞いてくれ」

 

嘉嶋尚紀が掲げる社会主義、そして日本の対米自立という思想を語られていく。

 

戦後レジームからの脱却を謳う彼の思想を聞いた富裕層達は動揺の表情を浮かべていた。

 

「どうだ?俺についてくる者はいないか?」

 

周囲を見ても彼の思想に反対する者は出てこない。

 

権威主義に支配されるしかないのは富裕層達も同じ。

 

権威主義によって民衆を支配する者達もまた自分達が利用する支配の枠組みに囚われていた。

 

「す…素晴らしい思想です!我々もぜひ支援をさせて下さい!」

 

「そうです!啓蒙神様が日本を統治されるなら…我らは神の選民!神の庇護を我々は求めたい!」

 

出てくる言葉は勝ち馬に乗って自分達だけが儲けたいという言葉ばかり。

 

彼らは富裕層という生まれながらの勝ち組であり自分の実力だけで地位を築いた者達ではない。

 

だからこそ彼らが求めるのは勝ち馬を手に入れて利益を独占する事しか頭になかったのだ。

 

庶民でありホームレスにまで落ちた尚紀から見れば、あまりにも醜悪な者達に見えるだろう。

 

「啓蒙神様!私が会長を務めます!いっしょに国政を変えていきましょう!」

 

名乗り出たのは日本を代表する車メーカーの代表一族の当主。

 

日本を代表する大企業であったが今では外資に飼われる犬に過ぎないが発言力は大きい。

 

名乗り出てくれた者に視線を向ける。

 

尚紀の表情は恐ろしい程にまで凍り付いていた。

 

「お前はたしか日本を代表する車メーカーの代表だったな?お前は俺の社会主義を望むのか?」

 

「勿論ですとも!啓蒙神様の庇護の下、我々一族は社会的弱者救済を掲げてまいります!」

 

それを聞いた彼の眉間にシワが寄り切る。

 

立ち上がった彼が国内トップの車メーカー代表一族当主の元にまで歩み寄る。

 

「啓蒙神様…?」

 

怒り心頭に達した彼が胸倉を掴み、車メーカーの代表一族の当主を掴み上げる。

 

「ヒィィィーーッッ!!?」

 

悪魔の如き恐ろしい顔を向けてくる者は支援を申し出た男の企業が繰り返した罪を並べていく。

 

「貴様の企業は労働者達に何をしてきた?汗水流して働いてくれた労働者達をどう扱ってきた?」

 

「そ…それは…その……」

 

「期間工という奴隷を大量に雇い、ゴミクズのように扱って用済みとなれば捨ててきたよな?」

 

「それは…ええと…正社員ばかりでは企業の人件費が膨らみ過ぎて…利益がですね…」

 

「大量の派遣切りを利用して仕事と住居を失った者達を家畜の如く扱った貴様が社会主義だと?」

 

燃え上るような怒りの表情を向けてくる悪魔の恐ろしさに震え上がり、股間が失禁していく。

 

「このクズめ…俺の求める政治とはな…貴様のような拝金主義者共を滅ぼすための政治だぁ!!」

 

怒りのまま独裁者の如き男を投げ捨てる。

 

ミサイル速度で投げ飛ばされる姿は男の企業の車がネットでミサイルと比喩される光景そのもの。

 

男の体はゲストルームの扉にまで投げ飛ばされ、扉を突き破った後に倒れ込む。

 

荒ぶる啓蒙神の姿を見せられた信者達がパニックとなり悲鳴を上げていく。

 

そんな者達に視線を向けた尚紀の表情は憎しみに支配されていた。

 

「…こんな場所で支援者を探したのがバカだった。貴様らが求めるのは外資と自分の儲けだけだ」

 

それ以上は何も言わずに立ち去っていく。

 

1人だけ動じない態度で座っていた銀子はこの結果が分かり切っていたようにして沈黙していた。

 

……………。

 

何があったのかを語られた織莉子の顔は俯いている。

 

日本の財界がこれ程までの拝金主義で支配されている現実を織った彼女はショックを受けていた。

 

「庶民の苦労は庶民の生活を経験した者でしか分からない。財界の代表者共はクズばかりだった」

 

「そんな心無き者達が企業という人間の共同体の代表を務めている…これは国政も同じなんです」

 

「受験戦争や出世レースで人を蹴落としてきた連中が社会的弱者の気持ちなど分かる筈がない」

 

「庶民にとってはまるで異世界住人です。そんな心無い政治家さえ政党に入れば支持が集まる」

 

自分で動かず個人に向けた信任でなし、厄介事を押し付けたまま責任逃れを繰り返す政治屋。

 

自分の損得しか考えず、濡れ手で栗とぬか喜びして政党に投票した支持者達は裏切られていく。

 

分かり易く日本の政治や選挙に触れる者達を語るなら、このようなものだろう。

 

「民衆も救いようがない。面倒万事宜しく頼むな態度だが…政党が腐れ外道共なのだと知らない」

 

「民主主義の限界ですね…。自由であるほど娯楽しか望まない…政治の裏を知る努力もしない…」

 

「民主主義国家も社会主義国家も崩壊のトリガーを引くのは…判断力のない無知な人間だ」

 

「国民こそが()()()()()()()()になるべきです…。だからこそ、学びを止めてはいけないんです」

 

「民主主義国家とは個が成熟した者が多数派となって初めて機能する。日本は民主主義ではない」

 

「外国の人々から日本人は独裁支配がお似合いの権威主義民族だと言われるのも無理ないです…」

 

「日本人は東大入学した権威だけで優秀者だと勝手に思い込む。()()()()()()()()()()()なのさ」

 

コンプレックスの塊でしかない民衆は面倒事を権威ある上の者に向けて丸投げしていく。

 

優秀だと思う人間に丸投げしてしまえば、後は上手くやってくれるだろうと確証もなく信じ込む。

 

そうしてしまえば空いた時間はスマホ片手にエンタメを楽しめるというわけだ。

 

代表者が自分達に都合のいいことをしてくれると勝手に思い込んでしまう。

 

代表者というリーダーがしている事を誰も検証しないし止めることもしない。

 

気が付けばリーダーの勝手な判断によって登山家一行のように全員が人生の山道に遭難して死ぬ。

 

()()()()()()()()()()()()()()が生まれている現実を誰も意識などしてくれないのだ。

 

「今の俺は振り出しに戻ってしまった…。後援会長と出納責任者探しは上手くいっていない…」

 

「後援会長は豊富な人脈や候補者に負けない演説力が要求される。見つけるのは難しいですね…」

 

「出納責任者も収支報告書を選挙管理委員会に提出する重要な役目だ。中々見つからないな…」

 

「私は十代の学生です…尚紀さんの手助けをしたくても公職選挙法が許してくれません…」

 

「織莉子とこのはが後援会長と出納責任者を務めてくれたら心強かったが仕方ない…他を探すよ」

 

話を終えた尚紀達が立ち上がる。

 

織莉子を駅に送るためフルサイズバンを走らせて行く。

 

「キリカと小巻に内緒で来て良かったのか?あの子達が心配するだろうが?」

 

「日帰りだからとコッソリ来ちゃいました。私は携帯も家の電話も全て解約してる身ですし…」

 

「連絡手段が無いから自分の足で来るしかないか。手紙では話のやり取りも迅速にはいかないし」

 

「キリカや小巻さんのスマホを借りるわけにもいかないです…。こればかりは仕方ありませんね」

 

「……駅に向かわず高速道路を目指そう。このままお前の家まで運んでやるよ」

 

「えっ…?でも…悪いですよそんなの…。尚紀さんは明日仕事なんですよね?」

 

「構わない。帰りのお前を独りにして帰したら、俺がキリカと小巻に文句を言われることになる」

 

「本当にごめんなさい…。これからはキリカと小巻さんに守ってもらいながら神浜に来ますね」

 

車は高速道路に入っていく。

 

見滝原市に向けて運転を続ける車内は重苦しい沈黙に包まれている。

 

沈黙に耐えられず先に口を開いたのは織莉子であった。

 

「私のお父様も…選挙資金を集めるために奔走していた時期があります」

 

織莉子が語ってくれたのは彼女の父親が生きていた頃の出来事だ。

 

国政出馬するためには何千万円もの選挙資金が必要だからこそ銀行や企業家に融資を募りに行く。

 

「家は豪邸でも…私の一家は中流家庭でしかなかったんです。だからこそ…資金が必要でした」

 

美国久臣は選挙資金を集めるために企業家や富豪の元へと出向いていく。

 

しかし家に帰ってくると彼の表情は怒りの感情で満ちていたと語ってくれた。

 

「選挙資金を出す代わりにこんな政策が欲しい。企業家や富豪達をぼろ儲けさせる政策を作れ…」

 

「…()()()()()()()か。理想論だけでは選挙にさえ出馬出来ない…望みの政策さえ作れない」

 

「お父様は独りで酒を飲んでいる時にはこんな愚痴を零していました…これが現実なんです」

 

「戦争だろうが革命だろうが政治だろうが資金が必要だ。この世はまさに資本制経済だな」

 

「例え資金を用意出来たとしても…勝てるかどうかは()()()()()。お父様はそう言ってました」

 

深刻な顔つきを浮かべる織莉子は語り出す。

 

日本の選挙が如何にズルがまかり通る恐ろしい()()()()であるのかを。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日本の選挙は()()()()()()()()と呼ばれる機械が使われる。

 

投票用紙計数機を使えば迅速に集計作業を終えて当選発表に役立つだろう。

 

しかし、この開票集計システムである投票用紙計数機は悪用されているのだ。

 

「この機械を開発してるのは一社だけ。その企業を株主として支配すれば…不正は容易いんです」

 

「俺もな…あまりにも早い当選発表をテレビで見た時に違和感を感じてた。やはりそうなのか?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…日本メディアも不正のグルなんですよ」

 

織莉子の父から聞かされた選挙不正手口とはこうだ。

 

矢部元総理はこの機械を開発する企業の大株主である。

 

つまり総理大臣が投票用紙計数機を自由自在に操ることが出来ることになろう。

 

選挙の中立性・公平性は消えて無くなり、操り人形のようなオペレーターが自由に操作する。

 

日米合同委員会の傀儡である政権与党の邪魔をする立候補者は全員落選させられるしかない。

 

分かりにくいように僅差をつけた集計を意図的に行えば誰にも気が付かれないという手口。

 

それを聞かされた尚紀の表情は怒りが滲むようにして眉間のシワを寄せてしまう。

 

「総理大臣が株主のコンピューターソフト会社が…選挙の集計を一手に独占してやってるか…」

 

「実は…その不正の決定的証拠を押さえたジャーナリストがいたんですが…殺されたんです」

 

「大阪のジャーナリストだったかな…マンションから飛び降り自殺の新聞を読んだことがある」

 

「あの背後には与党の連立政党の母体である似非仏教カルトの青年部隊が関与してます」

 

「海外からセクトとして認められているあの国家転覆宗教団体か。してやられたってわけかよ…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()…。あるのは敗戦国を支配する米国とその飼い犬共だけです」

 

「それが事実なのだとしたら…俺が選挙に立候補しようとも……結果は見えているな」

 

重苦しい沈黙によって車内は再び静寂に包まれる。

 

先を考えれば考えるほど八方塞がりとなり、それ以上2人は口を開かなかったようだ。

 

織莉子の屋敷にまで車を走らせた頃には夜も深まっている。

 

車から降りてきた織莉子は運転席に座る尚紀の元にまで来て頭を下げてくれた。

 

「私は…まだ諦めるつもりはありません。会って欲しい人物がいるんです」

 

「そいつは誰なんだ?」

 

「美国本家の家長を務める者であり私の叔父…美国公秀環境大臣です」

 

「現職大臣を俺に紹介するということは…そいつを俺の後援会長に推薦したいということか?」

 

「それが出来るかは尚紀さんが判断して下さい。ただ私は…公秀叔父様を信じてみたいんです」

 

「お前の固有魔法は予知なんだろ?上手くやっていけるかの答えを知らないのか?」

 

「先を知る事はあまりにも恐ろしいんです。知ればさらなる地獄に突き落とされるかもしれない」

 

「そうだな…。お前はまだ病み上がりなんだし、魔法の行使は必要な時以外は止めておけ」

 

話を終えた尚紀が窓を閉めていくが声をかけられたため窓を開ける。

 

外を見れば別れが名残惜しいのかモジモジした態度を見せてくる織莉子がいたようだ。

 

「…帰っちゃうんですか?なんだか…尚紀さんがいてくれないと…私…凄く心細いです…」

 

頬を染める彼女の望みを想像するとしたら、朴念仁な尚紀でも察してしまう。

 

「すまないが…明日も仕事なんだ。早めに帰って休みたい」

 

「そうですね…我儘を言ってごめんなさい。私も出来る限り警戒しながら生活していきます」

 

残念そうな織莉子の顔を見つめる尚紀の心には罪悪感が広がっていく。

 

彼女も自分に好意を向けてくれているのかもしれないと考えると複雑な気持ちも抱えてしまう。

 

尚紀に好意を寄せる魔法少女は沢山いたとしても、彼はその気持ちに応える余裕など欠片も無い。

 

なによりも自分の体に表れだした恐ろしい兆候によって未来に何が待ってるのかさえ分からない。

 

先が保障されない尚紀が選んだ選択とは、彼女達の好意を遠ざける道でしかなかったのだ。

 

「尚紀さん…貴方だけが私の希望なんです。だから私は…ずっと貴方について行きます」

 

「俺は日本の闇と戦う覚悟で突き進む…命を落とすことになるかもしれないぞ?」

 

「覚悟の上です。どの道狙われ続ける立場ですし…貴方がいなくなった時が私の命の最後です」

 

「…お前の覚悟は受け取った。何処までも俺の背中について来い…織莉子。俺が導いてやる」

 

「……はいっ!」

 

満面の笑みを浮かべてくれた織莉子に微笑んだ後、尚紀は車を発進させる。

 

あまりにも過酷な道となった国政選挙の道を考える尚紀は辛い表情を浮かべていく。

 

「権力にしがみ付きたい連中は()()()()()()()()。権力を守るためならどんな不正も喜んでやる」

 

権力者に向ける憎しみもあるが、それ以上の感情こそが堕落を選ぶ民衆達に向ける憂いである。

 

尚紀も独りだけでは何も成し得ない者であり、支えてくれる者達が大勢必要だ。

 

しかしそんな彼を支える者などきっと現れないだろう。

 

人々は何も考えない者達であり、御上に全てを丸投げして娯楽しか望まない者達なのだから。

 

「権力者はな…民衆が飢えて死のうが嘲笑うだけだ。しかし、権力者は()()()()()()()()()()()

 

頂点の支配層血族の望みとは、人類の知覚やマインドの支配。

 

人々の認識を管理操作する事が支配構造を維持するためにも必要不可欠。

 

彼らは人々に支配の構造について考えて欲しくない。

 

政治の左右だの、自由だの民族だの差別だのという与えられた概念の枠からはみ出る者を恐れる。

 

世界の仕組みについて気が付かれてしまう事が彼らにとって一番恐ろしい事態なのだ。

 

「俺が魔法少女を教育しようとも砂粒程度の変化しか生まれない。教育政策は国の役目だからな」

 

このまま選挙に突き進もうとも、待っているのは確実なる敗北。

 

それでも尚紀は諦めないだろう。

 

この世は勝てる仕組みを生み出した者達だけが全てを手に入れられる。

 

ならばこそ、尚紀もまた仕組みを生み出す側になりたいと考えてしまうのだ。

 

「俺を崇拝する者は多過ぎる…俺にはそれ程の価値があるのか?世界を導く立場になれるのか?」

 

もしそれが出来るのならば、彼は手段を選ばないやもしれない。

 

理想と現実はあまりにもかけ離れている。

 

理想論を喚き散らすだけでは奇跡でも起きない限り勝ちようがない。

 

「俺は奇跡など信じない。ギャンブルで神頼みしながら敗北する者達の仲間入りを果たすだけだ」

 

世の中の仕組みを生み出して施行する立場の者達こそが国政政治家である。

 

だからこそ尚紀は手に入れたい。

 

民衆を守る仕組みを生み出す事が出来る力である政治を求める旅は続いていくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「2020年の日本を今から変えられないのであれば…10年後は何をどうしても手遅れだ」

 

尚紀が訪れている場所とは美国本家の応接間である。

 

織莉子から尚紀を紹介された美国家当主は予定を全てキャンセルしてでも彼と会う事を優先した。

 

長年国政政治に関わる者としてイルミナティの存在は知っており、崇拝対象も知っていたからだ。

 

窓際に立ち、美国公秀に向けて己が望む日本の政治の在り様を語る彼の姿がそこにはあった。

 

「これ程までに日本が貧困になった原因なら…国会議員として知っているだろう?」

 

顔も向けずに語り掛けてくる尚紀の声は恐ろしい程にまで冷たい。

 

まるで罪の糾弾をされている気分になる公秀は椅子に座りながらも震えていたようだ。

 

「日本は労働者を薪木にする国家に成り果てた。それもこれも政府と経団連の飼い主共のせいだ」

 

「…仰る通りです。経団連の飼い主こそが国際金融資本家達…在日米軍さえも操る悪魔なのです」

 

「お前はその経団連が飼っている政権与党政党の飼い犬だったな?今までお前は何をしてきた?」

 

罪を問う者は顔さえも向けてはくれない。

 

日本庭園に視線を向けるのみの尚紀であったが、怒りに支配されている態度なのは分かるだろう。

 

冷や汗が溢れ出す現職大臣は絞り出すようにして何をしてきたのかを語っていく。

 

それを聞き終えた尚紀の眉間にはシワが寄り切っていたようだ。

 

「私達がしてきたことは…国民の信任の裏切り行為…。外患誘致罪が適応される程の罪です…」

 

外患誘致罪とは外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた場合に成立する罪。

 

刑法第81条に規定され、 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は死刑に処する。

 

極刑しか存在しない極めて重い大罪であった。

 

「貴様らは国賊だ。米国と共謀して多くの日本人の人生を殺す武力的政策を行使した罪は重いぞ」

 

日本を売り続けた国会議員として裁かれるのかと、現職大臣は顔を俯けながら震えている。

 

顔を上げてみると尚紀の左手には地面に立てかけるようにして日本刀が握られていた。

 

「私を…裁くのですか…?裏切り者の国賊として…美国家が繰り返した罪を断罪すると…!?」

 

怒りに燃え上る背中を見せる男を前にした美国家当主は歯がガチガチ揺れる程にまで震え上がる。

 

混沌王と呼ばれる人修羅はイルミナティや黒の貴族を纏めるエグリゴリの長になれるだろう存在。

 

彼の怒りに触れたのならば、彼が手を下さなくとも大統領だろうが総理大臣だろうが死ぬだろう。

 

それ程までの権威を持つ混沌王であろうとも、今はただの日本国民として訪れている。

 

「貴様らを裁くべきなのは検察だ。しかし()()()()()()()()()()…そして検察庁は法改正された」

 

日本は三権分立しているが検察官や裁判官等は司法機関ではなく行政機関の特別公務員である。

 

そのため行政機関を統括する内閣に支配される現実があるのだ。

 

内閣の閣議決定によって政権に近しい者が次期検事総長となることになったのである。

 

「検察庁法は国家公務員法を上回る筈だったのに、閣議決定で簡単に解釈変更出来てしまった」

 

()()()()()()()()()()()…。そのため三権分立は機能しない…日本に正義は無いのです…」

 

「…日本の裁判所にあるのは恣意的な法律だけか」

 

自由に法律が作れる政府が所有する裁判所に社会正義など存在しない。

 

本物の裁判所は私的で、法と正義に基づいて紛争を解決するものでなければならない。

 

立法府により恣意的に制定された法律は正義とは何の関係も無い。

 

正義とは、二者間の紛争を中立的に誠実に扱うことである。

 

三権分立が機能しない裁判所など犯罪組織として扱うべきであった。

 

「…検察が役立たずなら、国会議員の罪を起訴する事さえ出来ない。命拾いしたようだな」

 

左手に握られていた怨霊剣を収納するかのようにして消し去る。

 

振り返った尚紀の表情からは怒りの気配は消えているようだ。

 

「お前を国賊だと罵ったが…俺もまた国賊だ。俺が叫んだ神浜人権宣言で何が起こる?」

 

「移民の大量流入やグローバル化が大きく進む…。早い話…()()()()()()()()()()()()()()…」

 

「俺が叫んだ神浜人権宣言こそが…世界政府誕生の引き金となる。だからこそ…責任を果たす」

 

「貴方が叫んだ神浜人権宣言の内容を推進させることを…自ら止めようと仰られるのですか?」

 

「俺がもたらした人権宣言によって一都市は救われても…世界の国々が終わる。それを避けたい」

 

微笑みを浮かべた尚紀が右手を差し伸べてくる。

 

「同じ国賊同士…やり直してみないか?どちらも裁かれるべきなら…不退転の覚悟にもなるさ」

 

「もう一度機会をくれるのですか…?国を売り続けた美国家に…慈悲を与えてくれるのですか?」

 

「俺も多くの罪を犯した者さ…だからやり直している。やり直す気があるなら…俺と手を組もう」

 

それを聞けた美国公秀の目が見開いていく。

 

弟と夢見た正義の政治家になる道をもう一度目指してみたい気持ちが蘇ってくる。

 

立ち上がった公秀が差し伸べられた手を両手で握り締め、決断した表情を浮かべてくれた。

 

「…覚悟は出来ました。美国を滅ぼす事になろうとも…啓蒙神と呼ばれる貴方について行きます」

 

「流石は織莉子が信じてもいいと言う程の男だな?俺の道は命懸けとなる…悪いが命をもらうぞ」

 

「はいっ!!この命…貴方に差し出す覚悟で突き進みます!どうか美国家を導いて下さい!!」

 

こうして尚紀は後援会長となってくれる現職大臣と巡り合う事が出来た。

 

これから先の選挙戦に向けた話し合いも行っていき長々と話し込んでしまう。

 

気が付けば夕日が沈む時間となっており、尚紀は美国本家の屋敷を後にする。

 

「やれやれ…織莉子と結婚してくれと言われちまったよ。政治家一族の家長らしく政略的だな」

 

政略結婚の申し出はやんわり断った彼はクリスを停めてある駐車場へと向かって行く。

 

そんな彼の後ろ姿を高級住宅街の一角で見つめていたのは氷室ラビと鳥悪魔の姿であった。

 

「人修羅…あの男も世界を滅びに導く蛇だというの?」

 

「我々神は未来のタイムラインを視れる者が多い。あの男が未来にもたらすのは…()()()()だ」

 

「第三次世界大戦のこと…?」

 

「混沌王と呼ばれる蛇と大魔王と呼ばれる蛇…二匹の蛇の共食いが如き戦争で世界は焼かれる」

 

「あの男は…黙示録の騎士におけるレッドライダーを解き放つ存在だというわけね…」

 

「最初に解き放たれたホワイトライダーとなる者達が世界にばら撒くのは…()()()()()だ」

 

「中国から端を発した病魔の国内感染者が1月に現れたわ…もう直ぐ世界全土に飛び火する」

 

「それと同時に世界規模の飢饉が始まる。いずれは虫を主食にしろと言われ始めるだろうな」

 

「この2020年から世界の黙示録が始まるのね…。人類は虚無へと導かれるべきよ…」

 

「足掻くだけ無駄なのだ。だからこそ我々が終わらせてやろうではないか…この蟲毒の世界をな」

 

人類に終止符をもたらす者達の姿が蜃気楼のようにして消えていく。

 

人修羅がもたらすのは世界の救済か?世界の滅びか?

 

今はまだ人間の守護者だと信じる者だが、いずれ人修羅は思い知らされる事になっていくだろう。

 

勝てる仕組みを生み出す側でなければ何も成し得ないという現実を味わうことになるのであった。

 




マギレコの第二部エンディングで魔法少女のその後がずらーっと並びましたけど、みふゆさんが大学の薬学部入学出来たとか不正入学だろ!と独りツッコミを入れていた僕です。
カイジの漫画通り、世の中は勝てる仕組みを用意出来る者だけが全てを支配するというわけですね。
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