人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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211話 それいけ業魔殿

突然過ぎる14代目葛葉ライドウの出現はヴィクトルを驚かせた。

 

それでもかつての旧友と再び出会う事が出来たのは彼にとって大きな喜びであった。

 

ライドウと連絡先を交換出来たヴィクトルは即座に彼を呼び寄せる。

 

その目的とは、かつての旧友と昔話を楽しみたいという個人的な望みであった。

 

「いやー懐かしい!金王屋のクソジジィの話が出来る相手がいるというのは嬉しいものだな!」

 

会員制のBARクレティシャスのクラブラウンジ席では昔話を楽しむ2人がいる。

 

会員制の店であるがヴィクトルから事情を説明された銀子は彼を会員として認めてくれたようだ。

 

しかしライドウは大正時代の人間とはいえ十代後半になったばかりの年齢。

 

酒を飲む訳にもいかない彼が飲んでいる飲み物とはソーダであった。

 

「それにしてもヴィクトルよ、うぬは随分と落ち着いたな?昔はもっとこう…イカレていたぞ?」

 

出された皿に注がれた柑橘系のジュースを舐めているのは黒猫のゴウトである。

 

緑色をした目をヴィクトルに向けながら会話を担当してくれているようだ。

 

「吾輩も歳でな…色々とハッチャけるにも体がガタついた。片足も不自由だしなぁ…」

 

「半分吸血鬼のうぬらしからぬ意見だな?昔はこう…なんというか、情熱的だったのだが?」

 

それを問われた時、ヴィクトルは焦りを浮かべていく。

 

「お前達から見て…今の吾輩には情熱力が足りてないように見えるか…?」

 

「あの頃のうぬは、しがらみとなるどんな困難も気にしないような神経の図太さを持っていたぞ」

 

ゴウトがライドウに顔を向けると彼も頷いてくれる。

 

大正時代の旧友から見ても、今のヴィクトルは情熱力が足りてないという指摘を出してくるのだ。

 

錬金術師であり科学者のヴィクトルは顔を俯けてしまう。

 

研究者としてハングリー精神が欠乏してしまっては、これから先の研究生活に支障が出る。

 

「お前達の言葉を重く受け止めよう…。吾輩は悪魔研究者として枯れ果てるわけにはいかん…」

 

「まぁ…あの頃のイカレっぷりとまでいかなくとも、辛気臭い態度なのは改善した方がいいな」

 

「イカレっぷりか…昔の事だからと忘れていたが、あの頃の吾輩はどんな風に生きてきた?」

 

「それを語り出すと長くなるぞ?なにせ、うぬとライドウは生涯の付き合いをした者だからなぁ」

 

長い間語り合ったライドウ達だが今日はお開きとなる。

 

ホテル業魔殿の入り口前で待たせてあった個人用高級タクシーの中へと乗り込み帰路につく。

 

ロンドンタクシーとしても知られるブラックキャブの後部座席に座るライドウ達が喋り出す。

 

「それにしても、ヤタガラスから移動手段として提供されたこの車悪魔は落ち着かないな」

 

「……そうだな。書生に過ぎない自分には分不相応だ」

 

車内はレッドカーペットと皮張りシートで高級感が演出され、前の席とはカーテンで仕切られる。

 

まるでリムジンのようなタクシーを運転する者もいるため、運転手付きの贅沢仕様だ。

 

しかしこの車は人修羅の車悪魔であるクリスと同じく車の悪魔であった。

 

「うぉれはァァァ!!世界一のォォォ!!ロンドンタクシーマンだァァァァーーッッ!!」

 

前の席で運転しているタクシードライバーの表情はまるでマッドマンである。

 

涎を垂らしながら愉悦に狂った者こそ、オボログルマの本体となる悪魔であった。

 

【オボログルマ】

 

日本の車にまつわる妖怪であり、雲の多い朧月の夜に現れるという。

 

平安時代の京都で牛車の場所の取り合いによる恨みつらみが牛車に宿った悪魔である。

 

道を歩いていると後ろから牛車の音がした途端、鬼女の顔をした牛車が襲ってきたようだ。

 

現代では人力車から自動車へと移り、様々な愛憎がそれらに注がれる事になったようであった。

 

「ちゃんと運転するのだぞ、オボログルマよ。ライドウの拠点である水徳寺に向かってくれ」

 

「任せろォォ!!うぉれは世界一厳しい試験を合格したタクシードライバーだァァァーッッ!!」

 

「喧しい悪魔だな…。こんな悪魔で移動しなければならんとは…先が不安になってくる」

 

「……見た目は自分が生きた時代のオボログルマとよく似ている」

 

「うぬと生きた時代のオボログルマもタクシー姿だったな。今では擬態の力も身に付けたようだ」

 

「悪魔の姿は人間には見えない。普通の車に擬態することで、こうやって移動手段に出来る」

 

「うむ。擬態しないまま乗り込んでいたら…今頃ライドウと我は世間の注目の的だったぞ?」

 

ゴウトは透明な車に乗り込んで宙に浮かびながら道路を走って行くライドウの姿を想像してみる。

 

道行く者は茫然としながらもスマホ撮影を繰り返してSNSの晒し物とする光景は想像に難くない。

 

「それにしても、ヴィクトルの奴め…随分と落ち込んでおったな」

 

「自分はアレぐらい落ち着いたヴィクトルの方が好ましい」

 

「我もそうだ。しかし、奴にとっては加齢による自分の衰えを突き付けられたのだろうな」

 

「気にする程のことでもないと思うが…我々がそれを考えても仕方ない」

 

「そうだな。我らには我らの使命がある…そちらに集中しようではないか」

 

その頃、ライドウとの飲み会を終えたヴィクトルは業魔殿へと下りている。

 

自分が研究所内で過ごす部屋に入ってくるなり大きな溜息をついてしまう。

 

「このままではいかん…夢の船長生活が待っているというのに…枯れ果てたままではいかん!」

 

何を思ったのか赤いコートを脱ぎ捨てた彼は洗面所に向けて歩いていく。

 

鏡と向かい合った彼は鋏を取り出し、なんとその場で散髪していく姿を見せる。

 

ヴィクトルの長いセミロングヘア―は切り落とされ、白髪のミディアムヘアーにしたようだ。

 

ついでに髭も剃っていき整った顔立ちを取り戻す。

 

「見ていろ葛葉!吾輩はリボーンする!かつての若々しさを取り戻して業魔殿を活性化させる!」

 

杖をつきながら歩いていくのは業魔殿の心臓部である悪魔合体施設…ではない。

 

この施設は新しく手に入れた豪華客船に移す施設であり、そのうち閉鎖予定であった場所。

 

彼が向かっていたのは地下研究所に最初に移設した()()()()()()()であったようだ。

 

封印された扉を開けて中に入り込む。

 

「ククク…この施設より吾輩はスタートしたのだ!実に懐かしい…リビドーを感じてきたぞ!!」

 

机の上に脱ぎ捨ててあった白い手術ガウンを纏い、黒のゴム手袋を両手にはめ込む。

 

怪しいゴーグルを首にかけたヴィクトルはマッドな笑みを浮かべながら高笑いを始めてしまう。

 

「フォォォォ…!きたぞぉぉぉぉ…この感覚!これこそ吾輩に欠乏していた若さというものだ!」

 

帰ってきた主を迎え入れるようにして旧悪魔合体施設の電気が入っていく。

 

怪しい光に照らされていく合体施設にあったのは二つの巨大な檻。

 

邪悪な研究施設に再び帰ってきた者こそ、14代目葛葉ライドウがよく知っている者の姿である。

 

長い年月を得て性格が丸くなっていたのだが、かつての旧友と再会することで若さが蘇った。

 

まるで中年男が十代の頃の友人と出会ってテンションが高まりハッチャケる光景であろう。

 

男という生き物は悲しみを背負う存在。

 

何歳になろうとも童心を忘れることが出来ない子供っぽさがあった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

十咎ももこはある決意を秘めている。

 

悪魔となった十七夜を説得するために魔法少女の域を超えなければならない覚悟を宿していた。

 

そのため彼女は業魔殿スタッフをしている八雲みたまを呼び出すこととなったようだ。

 

業魔殿の奥にある施設について問われることになった彼女は危険過ぎると警告してくる。

 

「危険なのは分かってる…。それでもな…アタシには力が必要なんだ!」

 

「その…ね、ももこ?今は時期が悪いというか…その…決心が遅過ぎたというか…」

 

「要領を得ないな…?何が言いたいんだよ…?」

 

「ええとね…今の業魔殿の奥は…その、色々と問題を抱えているというか……」

 

「悪魔合体施設があるんだろ?そこでなら、魔法少女の力を高められる筈なんだろ?」

 

「ええ…それはそうなんだけど…その、ヴィクトル叔父様の都合で古い方を使うしかないの」

 

「古い方の…悪魔合体施設…?古い方だと何か問題でもあるのか…?」

 

「私もあの施設を使うことになって驚いてるの。それに…伯父様も何だか雰囲気が変わったし…」

 

「ヴィクトルさんの雰囲気が変わった…?」

 

「そうなの…。髪も切ったし髭も剃ったし色々とスッキリしたというか…頭が狂ったというか…」

 

「な…なんだか怪しい雰囲気がしてきたけど…それでもアタシの決意は変わらない!」

 

ももこの決意に押し切られる形で渋々と悪魔合体施設に案内することとなってしまったようだ。

 

後日となり、決意を秘めたももこと彼女を心配して付き添ってくれるレナとかえでがやってくる。

 

「ほ…本当にやるっていうの…ももこ…?」

 

「やめようよぉ…ももこちゃん…!魔法少女と悪魔が合体するんでしょ…?怖いよぉ…!」

 

「かえでの言う通りよ!悪魔と合体したら…元に戻れなくなるとかあるんでしょ!?」

 

「…覚悟の上できてる。アタシは十七夜さんを止めたい…それには魔法少女を超えるしかない!」

 

ももこの決意は固いためレナとかえでは彼女を止めることは出来ない。

 

運を天に委ねる気持ちで業魔殿の心臓部に進める扉を開けて奥へと進んで行く。

 

「ヒィィィーーッッ!!な、なんか気持ち悪いのがいる!?やっぱり怖い施設だったんだよぉ!」

 

造魔研究を行う施設が見えるガラス張りの通路を見たかえでが悲鳴を上げてしまったようだ。

 

青い顔をしたまま造魔の失敗作が放り込まれた試験管を見ているレナが声を荒げて止めてくる。

 

「ほら見なさいよ!やっぱり悪魔研究所になんて関わるべきじゃないのよ!ああなりたいの!?」

 

造魔の失敗作を見せられたももこも流石に怖くなってきたのか震えてしまっているようだ。

 

そんな彼女の元まで歩いて来るのは業魔殿スタッフのみたまであった。

 

「ここから先は悪魔合体施設である業魔殿の心臓部…ももこ、本当にいいのね?」

 

「し…失敗するとかも…あるのかな?」

 

「研究に失敗はつきものよ。特に今回のような初めての悪魔合体ケースはね…」

 

みたまにも念を押されたため、レナとかえでは必死になってももこを止めようとする。

 

顔を俯けながら震えていたのだが、それでも彼女の心を折ることは出来なかった。

 

「やるしかない…失敗は成功の元だ!もしアタシが失敗しても他の魔法少女が活かしてくれる!」

 

「それじゃアンタが救われないでしょ!!魔法少女と悪魔が合体するなんてできっこないわよ!」

 

「そ、そうだよぉ!あんなグチャグチャ姿のももこちゃんにされたら私…心臓停止しちゃうよ!」

 

「そうならないように私達も工夫するわ。私がももこに勧める悪魔合体方法とは…()()()()よ」

 

「み…みたま合体?みたまさんと同じ名前の悪魔合体なんてあるんだね…」

 

「それってどういう悪魔合体なわけ…?ももこの体がグチャグチャにならないようなものなの?」

 

御霊合体について詳しく説明されていく。

 

この合体方法は合体者の姿を変えないまま他の悪魔の魔法スキルや能力を継承させるもの。

 

魔法少女は形を保ったまま固有魔法を失わない状態で悪魔の魔法まで使いこなせるようになる。

 

御霊合体を研究してきたみたまはそのような仮説を作ったのだが、検証したわけではない。

 

「魔法少女と御霊合体させる悪魔は特殊なものなの。四種類の御霊の中から選ぶ必要があるわ」

 

「その御霊は…みたまさん達があらかじめ用意してくれていた悪魔なんですよね?」

 

「そうよ。貴女達はこの4つの御霊のどれかと合体することで…悪魔の魔法を継承出来るのよ」

 

「その御霊合体ってのは…ももこの体がヘンテコにならない合体なのよね?」

 

「…保証は出来ないわ。魔法少女と悪魔を合体させた実験例がないから…ぶっつけ本番よ」

 

青い表情を浮かべたレナとかえでがももこに視線を向けてくる。

 

ももこは鞄の中から封筒を取り出してレナに渡す。

 

「もしアタシに何かあったら…家族に渡してくれ。一応…別れの手紙のようなものだからさ」

 

「ももこ…やめてよ!お願いだから…誰か他の魔法少女にやらせてよ!」

 

「ダメだ。他の魔法少女を犠牲になんてさせられない…犠牲になるなら…力を望んだ者だけだ」

 

力を望んだ者として代償を支払う覚悟を示す彼女がレナに別れの手紙を渡してくる。

 

涙目になっていくレナとかえでに向けて気丈にも笑顔を見せてくれたようだ。

 

ももこが力を求めるのは、みたまの親友である十七夜を救うため。

 

彼女が身を挺して実験体になってくれるのは、みたまのためであった。

 

ももこの気持ちを受け取った彼女は決心してくれる。

 

「ももこ…本当にありがとう。私の親友のために…そこまでの覚悟を示してくれて…」

 

嬉し涙を浮かべたみたまが微笑み、ももこのためにも実験を必ず成功させると言ってくれる。

 

<<美しい友情の光景である!吾輩を信じたまえ、ももこ君!勇気を持ち奥に進むのだ!>>

 

研究所の館内放送から聞こえてきたのはヴィクトルの声。

 

意を決して奥の扉を開けると…何やら怪しい服を纏ったイッポンダタラメイドがいたようだ。

 

「え…えっと…ダタラちゃん?その恰好は何なの…?」

 

まるでマッドサイエンティストの助手を務める者のような怪しい看護師姿なメイドである。

 

一気に不安が爆発して青ざめるももこが視線を移すのは電動手術台である。

 

「こちらに寝転がりやがれであります」

 

不安を浮かべる3人がももこに視線を向けるのだが、ももこは意を決して手術台に寝転がる。

 

「なんだぁ!!?」

 

手術台に寝転がった瞬間、金属製の拘束具によって体が手術台に固定されてしまったようだ。

 

お人好しでバカな被検体に視線を向けるダタラナースが邪悪な笑みを浮かべながら言い放つ。

 

「捕まえたぞォォォォ!!被検体を逃がすわけにはいかねェェェェーーッッ!!」

 

高笑いを上げるダタラナースが電動手術台の車輪を動かしながら走り去っていく。

 

「うわぁぁぁぁーーーッッ!!?」

 

「ももこーーーっ!!?」

 

一気に掻っ攫われていったももこの姿を茫然と見ていたが、事態を飲み込めた3人が慌てだす。

 

「ももこが攫われちゃったわよ!?本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

「ふみゃみゃ!!これはもしかして…話に聞いたヴィクトルさんのイメチェンが原因なのぉ!?」

 

「だ…大丈夫だとは思うけどぉ…心配だから私達も向かいましょう!」

 

ただならぬ事態になったレナ達が慌てて旧悪魔合体施設方面へと駆けていく。

 

扉を開けた3人を出迎えた人物を見て、3人揃って目を丸くする程の驚きを見せた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ムハハハハ!!ようこそ、吾輩の業魔殿へ…。歓迎しようではないか…魔法少女諸君よ!!」

 

目の前に立っているのはヴィクトルなのであるが、かなりイメチェンしている。

 

マッドサイエンティストかと見間違うような怪しい姿となった彼がお辞儀をして挨拶してきた。

 

「ちょ…ちょっとアンタ!?ももこに何をするつもりなのよ!!」

 

「決まっておろう?彼女の望みを叶えようというのだよ」

 

「ももこちゃんは何処なの…って!?ももこちゃーん!!?」

 

かえでが視線を向けた先とは旧悪魔合体施設の奥にある二つの巨大な檻の一つ。

 

「ヒィィィーーッッ!!!」

 

滝のように涙を流すももこの横にあるもう一つの檻の中には悪魔が浮遊している。

 

赤い魂が形になったような浮遊物体であり、その表情は烈火の如くプンプンしているようだった。

 

【アラミタマ】

 

日本古神道における神や人を構成する一霊四魂の概念の内、特に荒々しい精神活動を象徴する魂。

 

激しい自然災害や天変地異、人の怒りなどの激しい心の動きにはこの魂が関わっているとされる。

 

黒・青紫・青緑を象徴色とし和魂と対に考えられる精霊であった。

 

「私はアラミタマ…今後ともよろしくお願い奉りたい所存……すわっ!!」

 

やる気満々な態度を見せる怪しい御霊悪魔を見たレナがヴィクトルに向けて文句を叫ぶ。

 

「ももこを解放しなさいよ!こんな気味が悪い施設で悪魔と合体なんてさせないんだから!」

 

「出来ん!魔法少女と悪魔が合体する…研究意欲が掻き立てられるこの実験の邪魔はさせん!」

 

「うぅぅぅ…なんかこのヴィクトルさん…気味が悪いよぉぉぉ……っ!!」

 

興奮した様子で皮手袋を嵌めた手をワキワキと動かしてくる。

 

血走った目を向けてくる悪魔研究者こそ、ライドウがよく知る大正時代のヴィクトルであった。

 

「案ずるな…ももこ君の命の安全なら保障しよう。みたま君、ダタラのサポートを頼む」

 

「わ…分かりました…。その…ももこの事をお願いします…」

 

みたまが合体機械操作に向かうのを見送った後、ヴィクトルは杖をつきながら歩いていく。

 

机の上に置かれていたのはももこのソウルジェムであった。

 

「吾輩の脳髄にあるデータのどれにも該当しない魔法少女の魂の形…実に素晴らしい!」

 

被検体の魂に顔を近づけるヴィクトルが様々な角度からソウルジェムに視線を向ける。

 

顔を近づけながら匂いまで嗅いでいる悪魔研究者を見るレナとかえでは背筋が寒くなる始末。

 

「ちょっと!ももこのソウルジェムに何てことしてるのよ!?この変態吸血鬼!!」

 

「ふみゃみゃ!ヴィクトルさん…頭がイッちゃってるよぉ!!」

 

「知的好奇心だ!これ程までにコンパクトな宝石に魂を作り替えるとは…御霊でもこうはいかん」

 

「そうじゃないわよ!女の子の匂いを気安く嗅ぎ回らないでって言ってるの!」

 

「ソウルジェムの魔性が吾輩の理論を奇跡の高みへと導くのだ!全てを味わい尽くしたい!」

 

「ふゆぅ…これじゃただのマッドサイエンティストだよぉ…」

 

ソウルジェムと悪魔の御霊が合体することによって、どれ程の高位の魂が生まれるのか?

 

契約の天使ですら実行したことがないオペレーションを前にした彼が高笑いを始めていく。

 

「吾輩とみたま君の悪魔研究成果と契約の天使の力が融合するのだ!実に興味深い!!」

 

ダタラナースにソウルジェムを運ばせたヴィクトルがついに悪魔合体を宣言する。

 

「クランケがどうなるかは運次第!オペレーションの幕開けといこう!!」

 

「「命の安全保障はどうしたのーーっ!!?」」

 

「細かい事は気にするな!!運を信じて、共に祈ろうではないか!!」

 

みたまは古い機械に備わったクランクを両手で握りながら回していく。

 

旧悪魔合体施設内に膨大な電力がほとばしり、二つの巨大な檻が大きな天上へと持ち上がる。

 

「うわーーっ!!怖い怖い怖い!!やっぱりやめるーーッッ!!」

 

「世知辛い世の中で御座います!!」

 

頂上にまで持ち上げられた巨大な檻が膨大な電力によって一つになろうとしていく。

 

眩しい光で目を瞑る少女達であるが、ヴィクトルは怪しいゴーグルで合体を見守る姿を見せる。

 

ついに一つとなった巨大な檻が勢いよく地上へと急降下。

 

地面に着地した巨大な檻が開く時、ヴィクトルはお辞儀をしながら後ろの存在を紹介してくれた。

 

「合体は成功だ!見たまえ…魔法少女と悪魔が合体した姿を!!」

 

目を開けた少女達が見た者とは、白煙の中から出てくる魔法少女。

 

「も…ももこ!!」

 

檻の中から出てきたのは魔法少女姿をした十咎ももこ。

 

御霊合体は合体者の見た目を変えないという効果は十分発揮されたようだ。

 

そして新たな力を得たももこの様子はというと…?

 

「だ…大丈夫なの…ももこ?」

 

「ふみゃみゃ…ももこちゃん…顔を上げてよぉ……」

 

俯いたままのももこであったが、不気味な笑い声を出してくる。

 

「凄い……凄いよ御霊合体は!!強い魔力が内側から溢れ出す…新しい力が爆発しそうだ!!」

 

御霊合体は悪魔の魔法スキルを継承させるだけでなく、悪魔の力も付与する悪魔合体方法である。

 

アラミタマと合体した彼女の力のステータスは一気に跳ね上がったようだ。

 

喜び勇んで顔を上げた時、レナとかえでとみたまが悲鳴を上げてしまう。

 

「えっ…?ど…どうかした……?」

 

状況が見えないももこのために、ヴィクトルは机に置いてあった手鏡を渡してくれる。

 

手鏡を見るとももこまで悲鳴を上げる有様であった。

 

「あんじゃコリャーーーーッッ!!?」

 

なんと、ももこの美しい顔が激おこぷんぷん丸なアラミタマ顔となっている。

 

「フーム……魔法少女と御霊が合体すると、このような副作用が生まれるようだな?」

 

「冗談じゃないよーーっ!!アタシの顔を元に戻してよーーッッ!!?」

 

「すまんが、御霊合体は元には戻れない。その顔つきのまま生きるか、運を天に任せるがいい」

 

「そんなのヤダーーーーッッ!!!」

 

こうして、悪魔の力を手に入れたまま魔法少女として生きられる者が誕生した。

 

彼女の力は本物であり、数々の魔獣討伐においてその力を遺憾なく発揮されることになるだろう。

 

ももこの力の噂は神浜魔法少女社会に広がっていき、御霊合体の駆け込み需要が生み出される。

 

ももこの変顔については、一週間は元に戻らないままが続いたようであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今日の業魔殿は大量の魔法少女達が押しかけており、ごった返している。

 

早く御霊合体させろと列を作る者達を見ていたヴィクトルが高笑いを行う姿を見せた。

 

「素晴らしいぞぉぉぉぉ!!魔法少女達の飽くなき合体欲は吾輩ですら畏怖を感じてしまう!」

 

手を交差させながら腕を開き、天に向けて高笑いを続けている業魔殿の主。

 

性格が極めてアレになってしまった者を見ながら、何があったのかを聞いてくる者がいた。

 

「旧友と語り合った勢いで若さを取り戻せたからイメチェンした……ですか?」

 

みたまから事情を伺っていたのは神浜魔法少女社会の長となった常盤ななかである。

 

「そうなのよぉ…。葛葉ライドウと呼ばれるデビルサマナーは…叔父様の旧友だったみたい」

 

「葛葉ライドウ…みたまさんはその人物を知っているのですか?」

 

「見た事ならあるわ…。尚紀さんの命を狙う危険なサマナーなのよ」

 

「尚紀さんの命を狙うですって!?尚紀さんと葛葉ライドウとの間に何の因縁があるのですか?」

 

「それは叔父様にも分からないみたい…。分かっているのは彼が大正時代の者だという事だけよ」

 

「大正時代から訪れたデビルサマナー…。時代を超える魔法でもあるのでしょうか…?」

 

「分からないわ…。私達は魔法が使えても…まだまだ知らない事ばかりね」

 

「尚紀さんの身が心配ですね…。葛葉ライドウがサマナーだとしたら…ここにも訪れる筈です」

 

「ここで見かけたら止めてみるわ。だけど…それがダメなら、実力で止めるしかなさそうよ」

 

「相手が腕利きのデビルサマナーだとしたら…猶更私達には悪魔の力が必要となりますね…」

 

決断した常盤ななかも列に並び始める。

 

この調子でいけば、神浜魔法少女達は全員が御霊合体に依存して調整屋を必要としなくなる。

 

そんな事を考えてしまう八雲みたまの心の中には複雑な感情が芽生えているようだった。

 

<<これより御霊合体サービスを始めるでございます!列を乱さないようにするであります!>>

 

ダタラナースの声が館内放送から流れてくる。

 

集まった者達に向け、ヴィクトルは一つだけ注意事項を説明したようだ。

 

「いいかね諸君。吾輩は悪魔研究者であると同時にビジネスマンである。なので対価を要求する」

 

<<お金をとる気なの!?>>

 

動揺の声を漏らし始める者達を見回し、ヴィクトルは言葉を続けたようだ。

 

「合体はサービスとなるが御霊悪魔はタダではない。なのでこうしよう…宝石を持ってきてくれ」

 

これから先、悪魔と戦うことになるのなら宝石を手に入れられる機会が増えると説明してくれる。

 

倒した悪魔から手に入れられた宝石を対価としてこれからの合体サービスは行ってくれるという。

 

「支払いは悪魔が落とす宝石が手に入ってからでいい。それまでは出血大量大サービスとする」

 

それを聞けた魔法少女達が喜びの声を上げていく。

 

業魔殿の奥に入れる扉が開き、ヴィクトル達は御霊合体を行うために進んで行ったようだ。

 

見送ったみたまは合体作業を手伝わず椅子に座り込んでしまう。

 

調整屋としての今後を考えれば考えるほど暗い気分となり、落ち込んでいる姿を晒す。

 

「調整屋としての価値が無くなったら…私には…何が残るの?」

 

悩み抜く彼女は立ち上がり、今日は家に帰ろうとする。

 

それでも悩みの中で一つだけ光明を見出せるものがあるのに気が付き、業魔殿の奥に振り向いた。

 

「御霊合体であろうとも…魔法少女は悪魔と合体することが出来た。なら…()()()()とだって…」

 

自分が考えている発想は余りにも恐ろしい内容となるだろう。

 

それでも彼女はそれ以外に自分の価値を新たに生み出す方法が思いつかない。

 

「ももこは私のために…命をかけて悪魔合体に挑んでくれた。なら…私だって……」

 

大東区に帰る道を歩いていた時、同じ帰り道を歩くメルを見かけてしまう。

 

「あっ!みたまさんだー♪」

 

みたまを見つけたメルが笑顔を浮かべながら駆け寄ってくれる。

 

疲れた笑顔を浮かべたみたまはメルに聞いてみたくなったようだ。

 

「ねぇ……メルちゃん。魔法少女から悪魔になるって……どんな気分?」

 

「えっ…?突然何を言い出すんですか…?」

 

「……ごめんなさい。やっぱり…忘れてちょうだい」

 

逃げるようにして去っていく彼女の後ろ姿をメルは心配そうに見送ってくれる。

 

走り去っていく心の中には、恐ろしい事態になった時に責任がとれない事に苦しむ感情があった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

みたまが帰った業魔殿では騒動が起きている。

 

<<元に戻しなさいよーーーーッッ!!!>>

 

業魔殿内ではヴィクトルを追い回す魔法少女達が走り回っている。

 

彼は改造された電動車椅子で走り回りながら逃げているようだ。

 

「私の顔がヘンテコになるなんて聞いてないわよーーっ!!」

 

「こんな顔じゃ学校に行けないわよーーっ!!」

 

御霊合体に訪れた魔法少女達は四種類の御霊の中から一つを選んで悪魔合体を行った。

 

様々な感情が顔として浮かんでいる御霊と合体したことにより、全員が変顔となってしまう。

 

「こんな顔じゃ困るネ!!常に怒てる顔じゃ外を出歩くことも出来ないヨ!!」

 

アラミタマと合体した美雨は、激おこぷんぷん丸な顔となっている。

 

「なんでこんなにも怪しい笑みを浮かべる顔になっちゃうですかーっ!?店で働けませんよ!!」

 

クシミタマと合体したかこは、詐欺師がニタついているような顔となっている。

 

「アハ…ハハハ…ボクはポーカーフェイスな顔になったけど…これはコレで怖いよね…」

 

サキミタマと合体したあきらは、すました顔のまま固まってしまっている。

 

「笑顔が崩せない顔になりましたけど…これはこれで相手に感情を悟らせない顔つきですよね?」

 

ニギミタマと合体したななかは、常に笑顔が崩せない顔となっている。

 

全員が同じような変顔となってしまったため、責任者を縛り上げて吊るしてやろうというわけだ。

 

「偉大なる研究には犠牲もつきものである!運命を受け入れたまえ!!」

 

焦った顔を浮かべながら言い訳を叫んでいるようだが魔法少女達は勘弁してくれない。

 

電動車椅子で爆走しながら業魔殿を逃げ惑うヴィクトルの元へと来客が訪れたようだ。

 

「な…何なのだ…?この騒ぎは……?」

 

現れたのはマッドサイエンティスト再誕のキッカケとなった葛葉ライドウとゴウトの姿。

 

見かけたライドウ達の元へとヴィクトルは突っ走ってきたようだ。

 

「丁度いいところに来たな葛葉!!この娘達をどうにかしてくれ!!」

 

「ヴィクトルよ…見た目が大正時代の頃に戻っているぞ?まさか…うぬは何かをやらかして…?」

 

視線を向ければ、魔法少女姿になった変顔少女達が武器を向けてくる。

 

突然の事態に冷や汗を流すライドウの後ろに隠れたヴィクトルが彼を前衛として押し出す始末。

 

実験的合体の犠牲者に捧げられたのは()()()()()()()()()()()()な14代目葛葉ライドウだった。

 

「ま…待て!!自分は関係ない!!」

 

<<成敗ッッ!!!>>

 

<<うわぁぁぁぁーーーーッッ!!?>>

 

総攻撃によってボコボコにされるマッドサイエンティストと巻き込まれただけの哀れな探偵。

 

白煙の中で暴れ回る者達を見つめるゴウトは項垂れ、これから先を考えると不安になってくる。

 

「この時代の業魔殿は魔法少女達も利用する場であったか…。隠密に行動したかったのだがな…」

 

こうして神浜の魔法少女社会は新たなる力を手にすることになっていく。

 

これからの魔法少女達を強化していくのは大正時代の若さを手に入れたヴィクトルとなるだろう。

 

葛葉ライドウの存在も魔法少女達に知られてしまい、これから先の捜査にも支障をきたすのだ。

 

新たに変わっていく魔法少女社会の変革についていけず取り残された調整屋もいる。

 

良くも悪くも新しい流れを生み出す場所となったNEW業魔殿の光景であった。

 




デビルサマナー作品には色々なヴィクトルさんが出演しますが、僕が一番好きなヴィクトルさんはライドウ作品内のヴィクトルさんですね。
拙作の魔法少女はペルソナ風味なドッペルの力は使えませんが、悪魔合体で力を得られるバランスにしたかったというわけです。
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