人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
【マスターテリオン】
新約聖書の黙示録には人類の敵の一つとしてサタンの力と権威を得たテリオンが二体登場する。
アレイスター・クロウリーは称号またはペンネームとしてこの獣の王の名を名乗ったようだ。
マスターテリオンが現れると人間達の右手と額に666の獣の数字を刻印として与えるという。
これは第一の獣を崇拝するように仕向けさせる狙いがあるとされた。
恐ろしいのは、獣の刻印が無ければ人間は
二種類のマスターテリオン以外にも一体加える事で三体の
「Grrrrrrrr!!!!」
獰猛な眼を向ける巨大な獣の頭頂高は30m近くもある。
歯を剥き出しにして怒りを表すデキソコナイの獣が嫉妬の雄叫びを上げるのだ。
「認メナイーッッ!!暁ノ女神ハ私ヨ!!私コソガ…
口を開けて業火を収束させながら一気に放つ。
炎属性の大ダメージを与えるアギダインが迫る中、ほむら達は横に飛んで回避行動をとる。
「貴様はイシュタルになどなれん!!貴様のような汚物はこの場で焼却してくれる!!」
魔槍ゲイボルグの矛を用いてルーン文字を描き、お返しのアギダインを放つ。
しかし大火球の直撃を受けても炎を無効化する耐性をした悪魔のようだ。
「無駄無駄ァァーーーッッ!!コノマスターテリオンヲ相手二炎ナド無駄ァァーーーッッ!!」
「だったらコイツでどうだぁーーーッッ!!」
大きく跳躍したセイテンタイセイが頭部に目掛けて伸ばした如意棒を振り上げる。
ヤマオロシの一撃が迫るがカモシカのようにしなやかな獣の足の俊敏性を発揮してきた。
「チッ!!」
跳躍して後退したマスターテリオンに向けてほむらは銃のレールマウントに備わった火器を使う。
グレネードランチャーから放たれたのは破片榴弾であるが、弧を描く軌道故に速度が遅い。
獣の俊敏性をもつマスターテリオンには通用する筈がなく避けられるが、銃口は敵を追う。
「グッ!!?」
銃撃がヒットしたマスターテリオンの顔に僅かだが苦悶の表情が浮かぶ。
「あの悪魔は銃撃に弱い耐性のようだな」
「いいぞ、ほむら!鉛弾をしこたま撃ち込んでやりな!!」
「言われなくても!!」
銃撃を続けるが獣の俊敏性を生かして避けていく。
ドラムマガジンを備え付けてはいない為かマガジンリロードするために彼女は叫ぶ。
「カバー!!」
「「応っ!!」」
タクティカルベストのポケットからマガジンを取り出す隙を作る為に仲魔達が果敢に攻め抜く。
クーフーリンは魔法攻撃を行い、セイテンタイセイは補助魔法を用いて命中率と回避率を上げる。
「ヌゥゥゥーーーッッ!!小賢シイ虫ケラ共メ!!コレナラドウダーーーッッ!!」
雄叫びを上げたマスターテリオンが魔法を行使。
呪縛となる光がクーフーリンとセイテンタイセイを襲う光景が生み出されるのだ。
「この魔法は……いかん!!」
敵が用いた魔法とは全体の魔法を封印する『マカジャマオン』であり、2人は魔封状態となる。
「チッ!!魔封まで使ってきやがるか!だったら物理だけで殴り殺してやるさ!!」
セイテンタイセイは如意棒を振るい果敢に攻めるが、マスターテリオンは尻尾の杖で打ち払う。
クーフーリンもゲイボルグを用いて果敢に攻める中、ほむらは物陰からチャンスを狙う。
「私の悪魔耐性は魔封を無効化出来るようね…。だけど、私の魔法の一撃は強力過ぎるわ…」
もし彼女が魔法の弓を生み出して悪魔の魔力を込めた一撃を放ったとする。
それでも上手く誘導して当てなければ天上を貫通して見滝原の街に甚大な被害を生み出すだろう。
――らしくもない事をしてるじゃねーか?
勇の幻影から言われた言葉が脳裏を過るが、彼女は首を振って否定する言葉を言ってくれる。
「たとえ足枷になろうとも…罪の無い人間は殺さない!助けられたなら私だって救いたかった!」
訓練用の悪魔を運搬するコンテナの隅から飛び出した彼女は己を縛る戒めの武器の引き金を引く。
仲魔達の果敢な攻撃で跳躍移動を繰り返す獣であるが、着地の隙をほむらは見逃さない。
「ヌゥ!!?」
銃弾を浴びて怯んだマスターテリオンの隙を狙い、セイテンタイセイが一気に攻め込む。
「喰らいやがれーーーッッ!!!」
大きく伸ばした如意棒を振るい、下顎を打ち上げる一撃を放つ。
「ガハッ!!?」
大きく打ち上げられたマスターテリオンがひっくり返る程の一撃に続くのはクーフーリンだ。
「貴様の心臓…貰い受ける!!」
跳躍して槍を投擲する構えを行うクーフーリンに向けて倒れ込んだ獣は全身から冷気を放つ。
「ぐっ!!」
マハブフダインの氷結魔法を浴びたクーフーリンの全身が凍り付き、地面に倒れ込んでしまう。
起き上がるマスターテリオンに向けて追撃の一撃をセイテンタイセイが放つが跳躍で避けられた。
「オノレェェェ!!私ハ勝ツタメナラ何デモ利用スルワ!出テキナサイ悪魔共!!」
鍛錬用の悪魔が内臓されたゲートが次々と開いていく。
中から現れた存在とは大きな雪男と人面の頭部をしたキマイラの群れであった。
【ウェンディゴ】
カナダのイヌイットや北方ネイティブ・アメリカンの伝承に伝えられる雪男のような精霊。
吹雪の晩に襲ってきては道行く者を冷気で凍え死なせたり、さらっていき喰らう悪魔である。
【マンティコア】
エチオピアやアラビア、インド等幅広く言い伝えられている人食い獣である。
年老いた顔と毒を持った尻尾を持つ獅子の姿で描かれることが多い。
口からは疫病を撒き散らし、鼻からは恐怖を撒き散らすとされた。
「興奮ヲ押サエ切レヌ!アオオーン!!オレサマ、オマエラ、マルカジリ!!」
「いい男悪魔共じゃないか。アタシらが骨の髄までしゃぶりながら食い殺してあげるよ!!」
白い毛並みとヘラジカのような角を持つ5m近い雪男の群れが次々と迫ってくる。
おかっぱ頭の醜女の頭部を持つ10m近い巨体をしたキマイラの群れも現れて囲まれてしまう。
「チッ!!魔法を封じられてるからなぁ…殲滅力に欠けるし乱戦になっていくぞ」
「回復魔法を得意としているジャンヌか、回復道具係りの尚紀がいてくれればな…」
「泣き言なんて聞きたくもないぜ。足手纏いになるんじゃねーぞ、犬っころ!!」
「ぬかせ!!この程度の傷如きで私は膝を屈する者ではない!!」
「こいつらを抑え込んでて!私があの獣悪魔を仕留めてくるわ!」
ほむらを向かわせるため背中合わせとなった仲魔達が果敢にも増援部隊を押し留めてくれる。
マスターテリオンは憎い存在をおびき寄せるかのようにして奥へと駆け抜けていく。
向かう先とは修験場に悪魔を搬送するために用意されている巨大シャッターの向こう側。
体当たりを行いシャッターを破壊したマスターテリオンを追うほむらも追撃の手を緩めない。
「ククク…追ッテクルガイイ!!憎イ貴様ダケハ…必ズ私ノ手デ殺シテヤル!!」
巨大な搬入路を超えていく彼女の表情はイラつきを隠せない様子をしている。
「お前を見ていると…デキソコナイと呼ばれた頃の私を思い出すのよ!今直ぐ排除するわ!」
マスターテリオンに至ると期待される者と、マスターテリオンになろうとするデキソコナイ。
苛烈な戦いを繰り返す両者の死闘は次のステージへと移っていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
搬入時に悪魔が逃走した場合の防衛設備の攻撃を掻い潜ってきたほむらが立ち止まる。
辿り着いた場所は巨大な資材倉庫であり、奥には資材搬入用の巨大なエレベーターがあるようだ。
「ココデナラ邪魔ハ入ラナイワネェェェ……ナブリ殺シニシテヤルワッッ!!」
全身から燃え上るような魔力を発したマスターテリオンが前足で前掻きしながら突進体勢を行う。
迎え撃つほむらであるが、道中の戦いによって弾薬が心もとない事なら彼女は気が付いている。
(銃が弱点であっても火力不足で決め手に欠ける…。限定的にでも悪魔の力を使うしかないわね)
迫りくるマスターテリオンの巨体に向けて銃を向けた時、それは起こる。
「えっ!!?」
「コレハ一体!!?」
ほむらと獣悪魔を包み込むようにして資材倉庫空間が暴風の嵐に飲み込まれてしまう。
「グゥゥゥゥーーーッッ!!!」
マスターテリオンは足の爪を地面に突き立て暴風に巻き上げられないように踏ん張り続ける。
「キャァァーーーーッッ!!?」
ほむらは暴風に耐える術もなく多くの資材と共に空に巻き上げられ地面に叩きつけられてしまう。
上から落ちてくる巨大な棚や資材から身を守る為に地面を転がりながら回避行動を行ったようだ。
<<ソイツはアリナの獲物なんですケド>>
教え子の声が荒れ果てた資材倉庫空間に響いた事により、聞こえた方に視線を向ける。
「アリナ……イクラ貴女デモ、邪魔ハ許サナイワヨ」
資材倉庫の隅に隠れていたのはアリナであり、後ろには召喚された熱病の邪神が屹立している。
「そのキモい声、もしかしてアレイスターなワケ?随分と見た目が変わったんですケド」
「ソノ男ハ悪魔合体二耐エ切レズニ自我ガ崩壊シタワ。私ハ魔界カラ召喚サレタ悪魔ナノヨ」
「…姿が見えないと思ってたら邪教のアトリエに行ってたワケ?ズルいんですケド」
「貴女モ悪魔合体シタイト我儘ヲ言ッテタケレド、コレガ現実ヨ。貴女モ自我ヲ失イタイ?」
「アリナはそうはならない…必ずデーモン・マージングをモノにして見せるカラ」
アリナと獣悪魔がやり取りをしているとほむらが立ち上がったようなので視線を向ける。
お互いに獲物は同じであり、暁美ほむらに向ける感情も2人は同じのようだ。
「早い者勝ちにしてあげる。どっちが先に暁美ほむらを倒せるか…勝負なワケ」
「…イイデショウ。アレイスターノ記憶ヲ持ツ私ハ知ッテイル…貴女モ嫉妬シテルンデショ?」
「…お喋りが過ぎるなら、アナタでも容赦しないんですケド」
アリナは右手に攻撃用のキューブを生み出す。
マスターテリオンとパズスもほむらを取り囲むような布陣を行ってくる。
三体一となってしまったほむらは力を解放するしかないと思っていた時、援軍が現れてくれた。
「ヌゥ!!?」
大きく跳躍して唐竹割りを狙う相手に気が付いたパズスは横に跳躍して光剣の一撃を避ける。
「久しぶりじゃねーか、パズス?ボルテクス界のオベリスク以来か?」
帽子とスカーフで顔を隠す者であるが、全身から発する彼の魔力は覚えている。
「人修羅か…汝の言う通り、オベリスク以来となるな」
パズスを知っているため、視界を覆う道具を纏っていては邪魔になると判断した彼が頭部を晒す。
そこに立つ者こそ、ボルテクス界を超えてきた偉大なる悪魔として君臨する人修羅なのだ。
「遅かったじゃない」
「子供達を警察に預けるのは不安だったからな…全員の電話番号を聞いて親の迎えを呼んでいた」
「国の警察すら当てに出来ないなんてね…。私達は本当に嫌な国に住んでいると思うわ…」
巨大なパズスから視線を逸らして地上に目を向ける。
「アリナ……やはりイルミナティ側につくか」
人修羅が目を向けた存在こそ、彼にもう一度やり直す心の力を与えてくれた恩人のような存在。
それと同時に、人修羅として生きる尚紀にとっては忘れられない人物の魂を宿す者でもあった。
「……
「えっ……?」
アリナの顔を見れば、別人のような雰囲気を思わせる顔を向けてくる。
「貴方はいつだって弱い連中の味方をするお人好し。ボルテクスのマネカタ共も守ろうとしたわ」
「アリナなのか…?いや、違う!?アリナがボルテクス界の事を知っている筈がない!!」
圧倒的なプレッシャーを与えてくる今のアリナの雰囲気ならば人修羅は覚えている。
弱者などゴミの如く蹂躙して覇道を進める者と成り果てたかつての親友がいた。
その者は力のコトワリを掲げて選民主義の名の元に天使の軍勢を従えたヨスガの主だった少女。
アリナと対峙している筈なのに記憶に浮かぶのはかつての凄惨な光景。
マネカタという人々を大虐殺した返り血塗れの魔人の姿がアリナの姿と重なってしまう。
「千晶……なのか……?」
それを問われたアリナであるが、顔を俯けていく。
「……邪魔しないで。これはアリナの戦いであって、アナタの戦いじゃないカラ」
顔を上げてくれたアリナの雰囲気は元に戻っている。
それでもアリナの脳裏には外側の肉体に宿った別の魂の声が響いてくる。
<<…まぁいいわ、好きにやりなさい。それと勘違いしないで、この肉体はもう私のものよ>>
「アリナのボディはアリナのモノなワケ!!」
<<所詮アナタは魔法少女。石ころという無様な姿でいたくないなら…私に力を示しなさい>>
「……言われるまでもないんですケド」
アリナに宿った者はそれだけを言い残し、自らの肉体をアリナのソウルジェムに託す。
彼女は今まで通り魔力で外側の肉体を操るのだが、恐怖を抱え込んでいる。
もし自分の外側の体に宿った者を満足させられないのなら、どうなる?
弱さを許さない者ならばこうするだろう。
奪われた肉体を用いて外に引っ張り出された本体であるソウルジェムを砕かれるのだ。
「アリナに弱さは許されないワケ!!さぁ、相手をしてあげるカラ!!」
鬼気迫る表情を浮かべたアリナは左手に召喚用のキューブを生み出し、もう一体の悪魔を召喚。
「ホッホッホッ、焦りは禁物じゃよ、さまなぁさんや。敵に付け入る隙を与えるからのぉ」
フルフル、パズス、マスターテリオン、そしてダークサマナーとなったアリナ。
包囲してくる四体の敵を相手にした人修羅とほむらは背中合わせとなり敵と向かい合う。
「集中しなさい。あの女と尚紀との間に何の関係があるのかは知らないけど…今は敵よ」
「敵か…。今はまだ、それだけの関係しか許されないのか……俺達には?」
ほむらも帽子と眼鏡を捨て、ガンベルトのホルスターからスコーピオンサブマシンガンを抜く。
人修羅は右手から光剣を放出して両サイドから迫るパズスとマスターテリオンと対峙する。
ルシファーから認められる者となれる存在は誰になるのか?
それを勝ち取るためにこそ敵となったアリナは襲い掛かってくるだろう。
彼女に弱さは許されない。
奪い取り、勝ち上がれる者になれなければ命さえ奪われる。
家と家族と友達を失い、命さえ脅かされたままのアリナは四面楚歌の苦しみを背負う者であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「混沌王様ガ来ラレルトハネ!丁度イイ!混沌王様ヲ倒セタナラ私コソガマスターテリオンヨ!」
前足の爪を地面に突き立て勢いよく旋回を行い、尻尾で握り込んだ杖を用いて殴打を狙う。
人修羅は後方にバク宙して一撃を避けるが、横からはパズスが着地の隙を狙う。
業火を燃え上らせる拳を放つ瞬間に大きく跳躍して一撃を避け、同時に振り向き回転斬りを狙う。
しかしパズスは暴風を自在に操り、跳躍したために踏ん張りがきかない人修羅は吹き飛ばされる。
「チッ!!」
散乱した資材コンテナに掴まった彼なのだが未だに両足が地につかない程の強風に晒されるのだ。
「パズス!!お前程の邪神が何故アリナに従う!?お前の実力なら余裕で喰い殺せるだろ!!」
「何とでも言え。我はアリナの魂の輝きを見た…アリナこそ、閣下が失った第三の目の魂をもつ」
「ルシファーの第三の目だとぉ!?」
「第三の目とは魂を意味する宗教用語だ。エメラルドの如き魂の輝きを持つ彼女に期待している」
「アリナの魂は…ルシファーになれる程の逸材だと言いたいのかよ!?」
「彼女こそが三重冠と、王権を示す紋章杖を握るに相応しい人物であり…マスターテリオンだ」
それを聞いたデキソコナイのマスターテリオンが激怒して体当たりを仕掛けてくる。
「貴様ァァーーッッ!!私デハナク…アリナヲマスターテリオンダトヌカスカァァーーッッ!!」
巨大な獣悪魔の体当たり攻撃に対し、相手の角を握り込んだパズスの巨体が地面を踏みしめる。
壁際まで押し込まれたが獣悪魔の一撃を制止させる程の力を示す。
しかし目の前の相手に意識を集中するあまり暴風が収まってしまったようだ。
「無論だ。第二のマスターテリオンとなる者は貴様ではない、アリナこそが相応しい」
「本物ノマスターテリオントナルノハ…教エ子ノアリナジャナイ!!コノ私ナノヨーーッッ!!」
仲魔割れを始めた悪魔達の隙をつき、人修羅はマガタマを右手に生み出して飲み込む。
飲み込んだマガタマとは風魔法を吸収する耐性をもつ『グンダリ』である。
物陰から飛び出した人修羅が争い合う二体の巨大な悪魔に向かって苛烈な戦いを仕掛けていく。
激しい死闘を繰り返すのは人修羅だけではない。
「アナタばかりが特別扱いされるのがね…アリナはムカついてたんだカラ!!」
攻撃用キューブに魔力を注ぎ込んだアリナはキューブを分解して光弾のように発射する。
「私の事を特別視していようとも、私はイルミナティが崇める女神になんてなってやらない!!」
横っ飛びで複数の光弾を避けたほむらは右手に持つサブマシンガンで反撃の射撃を行う。
アリナも側方中返りを連続で行い銃弾の雨を避けていく。
避けた弾の一部が大型エレベーターの操作パネルに当たった事で彼女達が立つ地面が揺れる。
巨大なエレベーターが斜め上に向かいながら昇っていく中、アリナが仕掛ける。
「アリナだって超えてみせる!!魔法少女を超えてスターワールドに行くんだカラ!!」
駆け抜けてくるアリナに目掛けて引き金を引こうとした時、頭上から雷が落ちてくる。
「ワシの事を忘れてもらっちゃ困りますのぉ」
フルフルのマハジオンガを横っ飛びで避けるが、既にアリナは懐にまで入り込んでいる。
内回し蹴りで銃を蹴り飛ばし、踊るような動きで回転を加えた肘打ちを放つ。
「グッ!!?」
みぞおちに肘を受け後ずさった相手に目掛けて跳躍回転蹴りを放ち、左側頭部にクリーンヒット。
「アァァァァーーーッッ!!」
エスカーラジペをまともに喰らったほむらはエレベーターの端まで蹴り飛ばされたようだ。
「魔法少女みたいな服装してるけどアナタもデビルなんでしょ?デビルパワーは使わないワケ?」
魔法少女に過ぎない者の力が悪魔ほむらに通用するのは、それだけ彼女が弱っている証拠。
今の彼女は円環のコトワリ神を銀の庭宇宙に入り込ませないようにするため魔力を消費している。
そのためフルパワーの人修羅と戦った時ほどの防御力は発揮出来ないのだ。
「そんなに悪魔の力を見たいなら…見せてあげるわ…」
立ち上がっていく彼女が両手を持ち上げて叩く。
「あれ…?アリナ…なんでこんなところに…?」
アリナの記憶が改ざんされ、どうして戦っているのかも思い出せないのだが仲魔が助けてくれる。
「精神操作魔法が使えるようじゃのぉ。ワシがおって助かったというわけじゃ、さまなぁさんや」
フルフルは回復魔法の『メパトラ』の光を放ち混乱状態のアリナのバッドステータスを回復する。
その光景を見たほむらは驚愕の表情を浮かべ、自分が知らない悪魔の魔法の力に戦慄したようだ。
「私の記憶操作魔法をこうも簡単に打ち破ってくるだなんて…悪魔の魔法の力は侮れないわね…」
「ワシに向けて記憶操作魔法とやらを使っても無駄じゃ。ワシは精神耐性持ちの悪魔だからのぉ」
「くっ!!」
右太腿のホルスターからデザートイーグルを抜き鹿悪魔に銃口を向ける。
引き金を引くよりも先に決まったのは一回転を刻みながら跳躍する回転蹴り。
「アァァッッ!!」
アリナが放つパラフーゾキックが右側頭部に決まったほむらがキリモミしながら蹴り飛ばされる。
地面にうつ伏せに倒れ込んだほむらの元に迫るのは怒りの表情を浮かべた者。
「舐めた魔法を使ってくるんですケド。アリナの怒りをデリートする事なんて出来ないカラ!!」
迫りくる敵に向けてうつ伏せ状態のままデザートイーグルを撃ち続けていく。
放たれた銃弾であるが、アリナの周囲には分解されたルービックキューブの光が舞っている。
キューブの断片が回転を始めていき迫りくる銃弾に触れた瞬間、銃弾が消失してしまう。
「弾を弾かれた!?」
「ノー、バレットはアリナのアトリエ空間にストレージされただけ」
「固有魔法を防御に転用してきたのね…」
「アナタはストレージしてやらない。アリナはね、アナタに消えて欲しいカラ!!」
走りながら跳躍するアリナが放つ縦回転の浴びせ蹴りを転がって避けたほむらが立ち上がる。
銃が通用しない相手の得意分野で挑むのは心許ないが、彼女にはもうこれしか武器が無い。
「オーケー、それでこそなんですケド」
タクティカルベストの腰部分に備え付けてあったアーミーナイフを抜き、逆手に持って構える。
「刃物を使うのは久しぶりね…ヤクザの事務所から盗んだ刃物を振り回してた時期を思い出すわ」
右掌にルービックキューブを集めて消失させ、フルフルに視線を向ける。
「手を出す必要はないカラ」
「それは有難い。老人は茶でも啜りながら見物させてもらおうかのぉ」
地上に向けて昇り続けるエレベーター内で両者は睨み合う。
互いに詰め寄り、接近戦の間合いへと進んで行く。
「私を比べる相手にしているようだけど…迷惑なのよ」
「アリナの勝手なんですケド。デビルはフリーダムを望んで実行するフリーダム戦士だカラ」
「そうね…だけど自由には責任も伴うわ。その代償を支払える者なのか…私が見極めてあげる!」
「上等なんですケド!!」
互いが踏み込み、接近戦の攻防を繰り返す。
ほむらの斬撃を体を振りながら刃を避けるステップを繰り出しながら体勢を回転。
「くっ!?」
片手を地につける程の低空から放つメイア・ルーア・プレザが迫るが間一髪で避けきる。
反撃の回し蹴りを放つがアリナは地面を舞うような動きを繰り返しながら蹴り足を放つ。
片手倒立状態から放つパウメイラキックを頭部に受けるが意に介さず斬撃を放つ。
「アウチッ!?」
魔法少女衣装のガーターベルトストッキングが切り裂かれ血が飛び散るが引きが早く浅い一撃。
続く連続斬りを狙いたいが地面を舞う動きを行うアリナを狙うのは容易ではない。
「ちょこまかと地面を動き回って!!立ち上がってきなさいよ!!」
「これがアリナの戦い方だカラ!!」
逆手に持つナイフで上から突き刺そうとするが蹴り足によって手首を制止させてくる。
左手でアリナの右足を掴むが掴んだ手に支えられながらの蹴りがほむらの腹部を襲う。
「ぐふっ!!」
たまらず手を離して後退るほむらに目掛けて立ち上がったアリナが駆けてくる。
側転を用いた浴びせ蹴りであるフォーリャを放つが両腕を十字に構えて蹴り足を受け止める。
しかし片手を地につけた状態のまま軸足を上げて蹴りを放ち、さらに腹部を強打。
弾き飛ばされたほむらはエレベーターの手摺にまで蹴り飛ばされ背中を打ち付けてしまう。
「ハァ…ハァ……やっぱり…慣れない接近戦では分が悪いわね」
攻め手に欠けるほむらはクロノスの盾があればと後悔するのだが、彼は来てくれなかった。
悪魔の力を自ら封印する彼女は身体能力と現代火器の技術だけの戦いを強いられてしまう。
「クソマスタートレーニングもムダじゃなかったワケ。これならフィネガンにも喧嘩売れるヨネ」
勝負に出るアリナが再び右掌に緑に輝くキューブを生み出す。
魔力を収束させてくる姿を見てマギア魔法を行使してくると判断する。
「こんなもんじゃないでしょ、暁の子のパワーは?出す気がないなら…出させてあげる!!」
フルパワーの一撃となるNine Phases(9つの段階)が放たれようとしている。
「こうなったら…仕方ないわ!!」
ほむらも悪魔の魔力を限定的にだが解放して浸食する黒き翼を解放しようとする。
次々と撃ち出されていく極大の魔力が籠ったルービックキューブの光弾が迫りくる。
ほむらも魔力を解放しようとした時、時間に干渉しようとする気配を感じたようだ。
「この魔力は!?」
刹那、時間停止。
ほむらとアリナの動きは制止しており、放たれたマギア魔法も空中で制止している。
全てが静止した世界に舞い降りたのは白き翼をもつ長身の老人。
時間が動き出した時、アリナは戦慄する。
「ワッツ!!?」
ほむらの目の前には高速で回転し続ける死神の鎌が盾となってくれている。
「クロノス!?」
アダマスの鎌を用いてアリナのマギア魔法を全て打ち払った存在こそ暁美ほむらの仲魔の姿だ。
「派手にやっておるようじゃのぉ?」
以前より小型化させて持てるサイズになったアダマスの鎌を肩に担いだ時の翁が顔を向けてくる。
「どうして…来てくれたの?貴方はルシファー側の存在なんでしょ…?」
「悪魔とは自由(CHAOS)を望む者。ワシも自由を行使してみたくなったのじゃよ」
そう言われたほむらの表情が嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。
「フフッ♪それでこそ悪魔よ。CHAOSを望む気持ちこそが、理不尽な秩序に抗える方法だもの」
「ルシファー閣下が敷く秩序に逆らった以上ワシも首が跳ね落とされるやもしれんが…まぁええ」
ほむらは纏っているタクティカルベストとガンベルトを外して脱ぎ捨てる。
左腕を掲げた彼女はこう叫ぶのだ。
「私の腕に宿りなさい…私の盾よ!!」
彼女の叫びに応えるようにして時の翁であるクロノスが光りを放つ。
アリナが両腕を顔の前に掲げて光を遮る中、迫ってくる者の姿が見えてくる。
現れた存在こそ、鹿目まどかを守り抜いた最強の盾と呼ぶに相応しい存在。
時間を操る魔法盾を纏った暁美ほむらの姿なのだ。
<<ここに来る前にお前さん好みの兵器も持ち込んでおいた。好きに使うがいい>>
「そうさせてもらうわ」
ほむらは魔法盾の内側に手を伸ばし、クロノスの領域から武器を手に取って取り出す。
手に持たれていたのは分隊支援火器であるM249軽機関銃である。
「暁美ほむらの仲魔が…マジックウェポンになったってワケ…?」
「いかん…いかんぞさまなぁさんや!あの悪魔は時の翁と呼ばれる魔人じゃ!!」
「魔人って…もしかして、デスをもたらす事に特化してるっていう…あの魔人?」
「うっ!?持病の腰痛が再発してきたわい…ワシは安静にしたいから帰らせてもらうぞ」
「ちょっとフルフル!?」
アリナの制止も無視してフルフルは勝手にアリナの召喚用キューブの中へと消えてしまう。
「お互いに気まぐれな年寄りを抱えているようね?」
挑発ともとれる言葉を言ってくるほむらに向けてアリナは眉間にシワを寄せた顔を向けて睨む。
悪魔として高位の存在だという格の違いを語られ続け、仲魔の格の違いまで見せつけてくる。
そんな暁美ほむらに向けて嫉妬の感情が爆発しているのだ。
「アリナは…アナタを超えてみせる!そのためにアリナは全てを捨ててきたんだカラ!!」
左手の召喚用キューブの一つから悪魔を召喚。
「ママ、イジメルヤツ!!ワルイヤツ!!コロス!!コッローース!!」
アリナの背後で羽ばたく巨大な鳥悪魔とは、オウムのように片言の言葉を喋るフェニックスだ。
どうやらアリナはフェニックスに言葉を仕込んだようである。
跳躍したアリナがフェニックスの背中に乗り、フェニックスは航空攻撃を仕掛けようとする。
「いくわよ、クロノス!!」
悪魔の力の一部を解放したほむらの背中から浸食する黒き翼が生み出され飛翔していく。
「アハハハハ!!ドッグファイトと洒落込むんですケド!!」
後方から銃弾が飛んでくる中、前を飛ぶフェニックスが口から業火の熱線を吐き出す。
搬入用エレベーターを隠す地上の偽装倉庫が熱線で破壊され、そこから悪魔達が飛び出してくる。
「あの鳥悪魔の力も侮れないわね……さぁ、大空を翔る戦いを始めましょうか!!」
天に昇っていく悪魔達ではあるが、地上においても悪魔達の戦場が生み出されようとしている。
「グァァァーーーッッ!!!」
地上に昇る坂道を駆け上ってくるのはデキソコナイのマスターテリオン。
獣悪魔の背中には飛び乗った人修羅が怨霊剣を突き立て、振り落とされまいとしている。
パズスもまた四枚翼を羽ばたかせながら地上を目指す。
偽装倉庫にまで昇ってきたマスターテリオンが倉庫を破壊しながら街に向かって駆けていく。
「くそ!!ここは異界じゃない…街に大きな被害を出すわけにはいかない!!」
何とか被害を広げまいと何度も刀を背中に突き立てていく。
痛みによって暴れ狂うマスターテリオンが方角を変え、高速道路に向けて走って行くのだ。
空と地上の両方で死闘が繰り返される夜の見滝原市。
戦い合うのはマスターテリオンに至る悪魔達。
この一戦こそサタンの力と権威をかけた戦いとなるだろう。
第一のテリオンとなった者が人修羅ならば、第二のテリオンに至る者は誰となるのか?
アリナは求めるだろう。
選ばれし者となるに相応しい魂をもつ存在だと示すためにこそ、彼女は命を懸けるのであった。
悪魔になってもやっぱり暁美ほむらちゃんは魔法盾を装備しながら現代火器で戦う姿が似合いますよね(確信)
描いてみたかったんですよねー、クーほむVSアリナの戦い。