人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
見滝原市の夜空を飛び交うのは巨大な鳥悪魔と魔力の翼をもつ悪魔少女の影。
互いが音速を超えた速度で飛び交いドッグファイトを繰り返す。
音速を超えた速度の強風地獄であるが、フェニックスの上で片膝をつくアリナは無事な様子。
フェニックスの魔法の応用によって極寒の空を激しく飛んでも絶命しない加護を得ているようだ。
左手で軍帽のような帽子を押さえるアリナが後ろの空に振り向く。
「ドッグファイトはお尻の取り合いなんでしょ?アリナのお尻に喰らいつけるか見物なワケ」
燃え上る両翼からは後方に向けて業火が噴き出し、アフターバーナーのような加速を生む。
音速戦闘を仕掛ける暁美ほむらもまた黒き翼から魔力の粒子を後方に向けて噴射する加速を生む。
速度は互角であり振り切れないため、アリナは後ろをとられたままでは不味いのだ。
後方から銃撃が飛んでくるが右ループ、左ループとフェニックスは回避行動を行い続ける。
「チッ!!分隊支援火器の発射速度では音速飛行を行う悪魔には届かないわね…」
銃を盾に仕舞ったほむらは左腕を前に掲げる。
魔法盾が光りを放ち、彼女の周りに収納している兵器の数々を出現させていく。
「これならどう!!」
飛翔するほむらの周囲に複数の光が生み出され、中から飛び出したのは飛行兵器。
空対空ミサイルであるサイドワインダーが6発撃ち出され、フェニックス目掛けて飛翔する。
「アハッ!!それがアナタの魔法ってワケ?とことん火薬臭い女なんですケド!!」
後方から迫りくるミサイルに気が付いたアリナは余裕の表情を浮かべてくる。
フェニックスは後方から迫る飛翔物体を避けるため右に最大旋回を打つ。
6発のサイドワインダーも熱源を発するフェニックスに追いつくため列をなして襲い掛かる。
旋回を繰り返すフェニックスの上に立つアリナの足元は羽毛が絡みつき、彼女の体を背中に固定。
羽毛にしがみつくアリナであるが、命の危険を楽しむかのような表情を浮かべていた。
「サイッッッコーーーッッ!!こんなバトル魔法少女じゃ一生楽しめなかったんですケド!」
フェニックスが上昇を行い、ミサイルも敵を撃墜せんと真上に向けて上昇を行っていく。
下から迫るミサイルの群れに対し、フェニックスが魔法を行使。
長い尾羽が燃え上り、後方に向けて無数の火球フレアを射出。
放たれた魔法とはマハラギオンであり、後方で次々と爆発を起こしてミサイルを誘爆させていく。
ループ飛行のまま体勢を回転させて飛翔していくアリナを追うのは後方から迫るほむらである。
「今度はアリナがアナタのお尻に噛みついてあげる!!」
アリナの意思に呼応するかのようにしてフェニックスが両翼を羽ばたかせて体を減速させていく。
木の葉が舞うようにループを最短で行う戦闘機動を行い、高速で迫りくるほむらの後ろをとる。
「クルビットですって!?」
背中をとられたほむらは黒き翼から放出する魔力出力を上げながら旋回を繰り返す。
しかしフェニックスを振り払う事は出来ず、上に乗るアリナの魔法攻撃が迫りくる。
「さぁ、派手に踊ればいいんですケド!!」
放たれたマギア魔法の光弾が流線を描くようにして迫りくるため回避行動を行う。
「チッ!!」
無数に迫りくる光弾の嵐を曲技飛行を用いて避け続けるが、獲物に命中するまで追い続けてくる。
ほむらは一気に急降下を行い、夜空の雲を超えていく。
無数の光弾も雲の中に入り込むのだが、既にそこは浸食する黒き翼が張り巡らされた領域。
アリナのマギア魔法は後方に向けて放ったほむらの魔法に飲み込まれて消滅するのだ。
後を追ってくるフェニックスが迫るのを確認したほむらは魔法盾を掲げる。
「仕掛けるわよ、クロノス」
<<ここは空の上じゃ。悪魔の力を解放しても問題あるまい、あの女に喰らわせてやれ>>
魔法盾に描かれた単眼の瞳の如き陰陽カバーが開き、内臓された砂時計が左右に回る。
時間停止が行われた夜空の上で翼を羽ばたかせて急停止したほむらが後ろに振り向く。
遠くから迫るアリナ達も停止しており、動かないカカシも同然の姿を晒す者に容赦など必要ない。
左手に魔法の弓を生み出し光の弦を引き絞る。
膨大な魔力が籠る矢の前方空間に生み出されたのは菱形が幾重にも重なり合う魔法陣。
「喰らいなさい!!」
前方に描いた魔法陣に向けて光の矢を放つ。
魔法陣を貫いた瞬間、菱形魔法陣からも無数の光の矢が生み出された。
無数の矢がカラスの姿に変化した瞬間、時間停止の影響を受けて停止していく。
時間が動き出せばアリナの前方空間から突然光の矢の雨が降り注ぐというわけだ。
ほむらは魔法盾の砂時計を縦に向けて回転させて時間を動かす。
「ノーウェイ!!?」
突然前方空間から現れ出たカラスの矢の群れに驚愕する表情を浮かべるアリナ。
しかし彼女が顔を変化させるよりも先に反応したのはフェニックス。
体を一回転させながら無数の矢の雨に突っ込み、矢の雨の隙間を縫うように掻い潜るのだ。
「あれを避けきったですって!?」
180度回転して腹を上に向けながら背面飛行を行う鳥悪魔がほむらの上を通過していく。
鈍化した世界。
見上げたほむらの上には下の彼女を見るように顔を上げるアリナの姿。
不敵な笑みを浮かべた彼女は右手に嵌めた黒の革手袋をほむらに見せるようにして掲げていく。
手袋の掌に描かれているのはルシファー・シジルであり有神論的サタニズムの象徴。
掌を向けながら指を曲げコルナサインを見せた瞬間、彼女の姿は高速で通り過ぎていった。
「あの女も…私に刻印されたルシファー・シジルを掲げるのね…」
<<あの女も個の確立を望むか……案外似た者同士かもしれんのぉ、お前さん達は?>>
「やめて、クロノス。あんな女と一緒にしないで」
後ろを振り向き再び時間停止を行使しようとするが、複数の巨大竜巻がほむらを襲う。
「これは!!?」
竜巻が中心のほむらにぶつかるようにして重なっていき、彼女の体を引き千切ろうとする。
「くぅ!!」
全身に張り巡らす魔力の防御力を上げて竜巻に耐える中、視線を下の上空に向けていく。
四枚翼を羽ばたかせながら昇ってくるのはアリナの仲魔の一体であるパズスであった。
「あのデキソコナイは人修羅に倒されるだろう。我はアリナの援護を行う」
雄叫びを上げたパズスが湿った風を撒き散らす。
病魔の強風が吹き荒れる中、病魔を無効化するほむらは時間停止を用いて竜巻の動きを止める。
魔力の矢を放ち竜巻に穴を開けながら脱出した彼女が再び時間停止を解除する動きを行った。
「アレ、ジカントメルマホウ!!スゲェ!!モイライシマイミタイナヤツ!!デモ、コロス!!」
「タイムストップ魔法とかチートなんですケド。何とかあの魔法に対抗する手段はないワケ?」
「アノオンナ、ツカマエル!!ソレカ、コウゲキ、ハネカエス!!」
「オーケー、空の上だから捕まえられないし、リフレクションの方でヨロシク」
「パズスキテクレタ!!アイツ、ハンシャマホウツカエルヤツ!!ベンリ、ベンリ!!」
旋回してきたフェニックスが再びほむらを襲うために攻撃態勢を行う。
念話を送ってきたアリナの命令に従い、パズスは反射魔法のマカラカーンを行使する。
パズスとフェニックスとアリナに魔法反射フィールドが生み出され、魔法の矢に備えるのだ。
「ふふ、いい感じに込み上げてきたよねー!今度こそエンドにしてあげるカラ!!」
アリナは右手を羽毛に触れさせコネクト魔法を行使する光を放つ。
攻撃力が上がったフェニックスが巨大なクチバシを開けて豪熱放射攻撃を発射。
上昇しながらファイアブレスを避けたほむらに目掛けて二体の悪魔とアリナが迫りくる。
「あれがダークサマナーとなった魔法少女の力なのね…だけど、私だって負けないわ!!」
魔法反射の恐ろしさは魔人戦の時に経験しているほむらは魔法の弓を消して魔法盾を掲げる。
再び彼女の周囲に複数の光が生み出され中から空対空ミサイルが撃ち出されていくのだ。
激しいドッグファイトを繰り返す夜空の下では同じように死闘を繰り返す悪魔達が駆け巡る。
見滝原の街は再び悪魔達の戦場となってしまうのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「アァァァァーーーッッ!!離レロォォォーーーッッ!!!」
深夜の高速道路を蛇行しながら走り抜けるのはマスターテリオンになろうとする悪魔。
背中の上では人修羅が刀に掴まりながら振り落とされないよう耐えるが、前方には歩道橋が迫る。
「くそっ!!」
人修羅の視界に映ったのは歩道橋を歩きながら帰り道を急ぐ通行人達。
「なんだ…人が浮いてるぞ!?」
「マジかよオイ!!」
ただの人間の男達にマスターテリオンの姿は見えず、概念存在としては不完全の者しか映らない。
人修羅は突き刺した刀を抜いて一気に跳躍。
先に歩道橋の上に着地した彼が刀を消し去り男達の胸倉を両手で掴みながら持ち上げる。
男達を掴んだまま跳躍した直後、歩道橋が大きく砕け散る。
「オイオイオイ!?」
「死ぬわ俺達!!」
上空を跳躍する人修羅の右側道路に見えたのは対向車線から走行してくる大型トレーラーだ。
彼は対向車線に向けて飛び降りトレーラーのコンテナの上に着地して2人を下ろしてくれる。
「何も見なかった事にしてくれ。それと、どうにかして下ろしてもらえるといいな」
「ちょっと待てよオイ!?」
「こんなところに俺達を置いていくなよーーっ!?」
喚き散らす男達のことはトレーラー運転手に任せた人修羅がコンテナの上から飛び降りる。
この判断は後ろから迫りくる仲魔の魔力に気が付いているからであった。
「乗レ!!人修羅!!」
コンテナの下を駆け抜けているのは獣悪魔のケルベロス。
彼は背中に飛び移り両足を用いてケルベロスの胴を挟み込む。
「とばせケルベロス!!街の被害を増やすわけにはいかない!!」
「シッカリ掴マッテイロ!!」
マスターテリオンを追って騎乗した人修羅が風魔法の応用を用いて駆け抜けてくる。
風の加護を得たケルベロスは風の抵抗を受けなくなった状態を利用して一気に加速していく。
斜め後ろから迫ってくる獣悪魔に気が付いたマスターテリオンが魔法を行使。
周囲に冷気を発して巨大な氷の槍を生み出し、斜め後方に向けて次々と射出。
槍の雨を掻い潜るようにして走り抜けるケルベロスが跳躍して隣の道路にまで飛び出てくる。
マスターテリオンの背中を追いかけるケルベロスは追跡の手を決して緩めない。
「犬畜生如キガァァァァ…コノマスターテリオンニ逆ラウカァァァァーーッッ!!」
傷の痛みで怒り狂うマスターテリオンが夜道を走行している車の数々と接触。
悪魔の姿を見る事が出来ない者はその姿に気が付くこともなく踏み潰されるしかないのだ。
怒りの表情を浮かべた人修羅が右手に光剣を放出しながら迫りくる。
「奴は炎を無効化する耐性をもっている!俺が奴をたたっ斬ってやる!!」
「奴ノ横二並ンダ時ガチャンスダ!!」
ほむらと同じく飛び道具を封印する人修羅は接近戦を仕掛けるために右腕を振り上げる。
「ヌゥ!!?」
横にまで並んだケルベロスの上から放つ人修羅の横薙ぎを跳躍回避。
隣の対向車線に飛び出たマスターテリオンは並走しながら怒り狂った顔を向けてくる。
「私コソガ…ワタシコソガ……マスターテリオンダァァァァーーーッッ!!!」
アレイスターのフリを続けていた悪魔の様子が醜悪なまでの変化を遂げる。
完全に怒りに飲まれた狂気の獣は仕えるべき第一のマスターテリオンであろうと容赦しない。
もはやマスターテリオンという概念存在になれるなら上下関係など関係ないまでに狂いきった。
「貴様が何を求めていようが関係ない!!俺がこの場で…貴様の醜悪な魂を斬り捨てる!!」
「AAAAAARRRRRRTTTTTHHHHH!!!!」
尻尾で握り込んだ杖に魔力を大きく注ぎ込み、燃え上る杖を用いた乱撃を隣の道路に放ち続ける。
人修羅は伸ばした光剣を使って迫りくる巨大な鈍器を打ち払い続けていく。
並走しながら武器を打ち合う光景はまるで黙示録の騎士同士の一騎打ちのようにも思えてしまう。
唐竹割りの角度から打ち込んでくる巨大な杖が地面を激しく砕く。
だがケルベロスの姿は隣の道路に目掛けて大きく跳躍を行いながら一撃を避けている。
「OWOOOOOOOOOO!!!?」
跳躍移動の瞬間、左手から放出した光剣の一撃によって狂気の獣の尻尾は切断されている。
後方の道路に目掛けて転がり落ちた巨大な尻尾が砕け散りMAGの光と化す。
「RRRRRAAAAARRRRRLLLLL!!!!」
マスターテリオンの上空に次々と火球が生み出され、後方に目掛けて発射し続ける。
しかしケルベロスは炎魔法を反射する耐性を所有する悪魔であり次々と火球を反射。
マスターテリオンもまた炎を無効化していき攻め切る事が出来ない様子。
火球よりも熱い怒りを顔に浮かべた人修羅は爆発が起こり続ける夜空にも視線を送る。
「ほむらも戦ってくれている…俺達も負けてはいられねーぞ!!」
「仕掛ケルゾ、人修羅!!」
ケルベロスの背中の上に立った人修羅が大きく跳躍。
迎え撃つ狂気の獣が次々と氷の槍を生み出しながら射出を続けていく。
上空で捻り込みを行いながら氷の槍を掻い潜る人修羅に意識を向けていたのが運の尽き。
猛加速してきたケルベロスが大きく跳躍。
「オオオォォォーーーッッ!!!」
振り上げる剛爪から放つ一撃とはアイアンクロウであった。
「AIEEEEEEEE!!!?」
背中から脇腹までを引き裂かれたマスターテリオンの腹部から大量の血と臓腑が漏れ出す。
動きが止まった狂気の獣の前方には左手に刀をもつ人修羅が最後の一撃を放つ構えを行っている。
「死に時だ!!貴様が犠牲にしてきた子供達の苦しみ…万倍にして返してみせる!!!」
腰を落とし居合の構えを行う人修羅の体から深碧の魔力が噴き上がり強大な波動を全身から放つ。
波動に飲み込まれた領域に立っている者こそ、子供達をバアル崇拝の生贄にしてきた狂気の獣。
背後に現れて見えたのは悪魔化したバージルの幻影。
憤怒を宿す程の恐ろしい形相を浮かべた悪魔の幻影もまた居合の構えを人修羅と共に行うのだ。
「絶対なる我が力を…受けてみろ!!」
刹那、それは起きる。
世界は静止しており、見えたのは空間に張り巡らせるように伸びた無数の斬撃線の網。
刀を振り抜いた状態で向こう側に立っていた人修羅が血払いを行い、回転納刀を行う。
唾が鳴る音と共に時が動き出し、狂気の女王を演じた男の魂が具現化した悪魔が細切れと化す。
「ワタ……シ……コソ……ガ……マス……ター……テリ……オ……」
細切れとなった体が砕け散り、MAGを撒き散らす最後を遂げるのであった。
「ヤッタナ、人修羅」
隣から近寄ってくるケルベロスであったが、人修羅の顔に異変が浮かんでいる事に気が付く。
彼の両目は悪魔を表す真紅の目を浮かべていたのだが、深呼吸を行うと金色の目に戻ってくれる。
「…ヤハリアノ時ト同ジダナ。ソノ剣技ハ汝二トッテ……諸刃ノ剣トナルヤモシレン」
「……そうかもな」
その頃、破壊された偽装倉庫から出てきたのは悪魔の群れを撃退した人修羅の仲魔達である。
マスターテリオンの禍々しい魔力の気配が消えた事により、勝利を確信出来たようだ。
「後は空で戦っているほむらだけだな」
「あいつなら勝てるさ。さて、騒ぎが大きくなる前に車を回してズラかるとするか」
地上での戦いが終わり、残すところは夜空で繰り返される激闘のみ。
負けたくないアリナは苛烈な攻撃を繰り返すが、地上から感じていた魔力の消失に気が付く。
(あの変態ジジィ…死んだんだ?大嫌いなヤツだったけど…なんか妙に馬が合うヤツだったワケ)
アリナを闇の底まで引きずり込んだ憎い男であったが、同じ望みと感情をもっていた男。
教え子として生きた者の中に悲しみはないのだが、それでもアリナは背負ってくれるだろう。
アレイスター・クロウリーの望みであった第二のテリオンとなる道こそがアリナの道となる。
地獄の道となるだろうが、その道を果敢に進んであげることこそが手向けの花となると信じた。
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フェニックスとパズスに攻め抜かれるほむらは空中戦闘機動を行いながら回避を繰り返す。
しかしパズスが張り巡らせた暴風が邪魔して思うような回避行動を行えずに体は傷ついていた。
「あの獅子の頭部をした悪魔にも記憶操作魔法は通じなかった…悪魔の耐性は厄介なものね」
魔法盾の中に収納していた空対空ミサイルも撃ち尽くし、攻め手に欠ける状態となる。
後方から迫りくるアリナはパズスと連携を行いながら同時魔法攻撃を仕掛ける構えを行うのだ。
「一瞬の隙でいい…それを手にする武器となりえるのは…」
ほむらは魔法盾を構える。
彼女の周囲に光が生み出され、中から飛び出たのは複数のスタングレネード。
空中から落下する前に時間停止現象が起こり、反転したほむらが分隊支援火器を構える。
銃弾が次々とスタングレネードの手前で制止する中、ほむらは時間を動かす。
「ワッツ!!?」
「ヌゥ!!?」
前方空間から大きな光が放たれたためにフェニックスとパズスはほむらの姿を見失ってしまう。
その一瞬の隙をほむらは見逃さなかった。
「死になさい!!」
目を開けたアリナが見た光景とは前方から高速で迫りくるほむらの姿。
「ぐふっ!!?」
ほむらの飛び蹴りを受けたアリナはフェニックスの背中から転落していく。
トドメを刺すために降下しながら銃を構えるのだが、アリナは果敢にも魔法攻撃を放ってくる。
「チッ!!」
魔法盾を起動させようとするのだが、陰陽カバーが開いた時にキューブの一部が命中する。
<<ぐぅ!!いかん!!>>
機械仕掛けの魔人であるクロノスは時計のような精密機械であるため異物に弱い。
複雑なゼンマイ装置の中に挟まった欠片のせいで時間停止を行う事が出来なくなったようだ。
「アハハハハ!!どうしたワケー?タイムストップを使わないのは出来なくなったカラー?」
強風で帽子が飛ばされながら地上に落ちていくアリナであるが余裕の表情を浮かべてくる。
高速で降下してくるフェニックスの姿に気が付いているためであったようだ。
先に飛び出たフェニックスがアリナを背中に乗せて回収しようとするが、この時を待っていた。
ほむらは左手に魔法の弓を出現させて構える。
鷹の目の如きほむらの視線の彼方にある地上には人間はいないため悪魔の力を放つのだ。
「鳥猟をするのは初めてだけど…射抜いてみせるわ!!」
ほむらは弓から生み出された弦を引き絞り魔法の矢を放つ。
アリナを拾う為に両翼を広げたフェニックスの頭上から迫る一撃がクリーンヒット。
「アガァァァァーーーーッッ!!?」
右翼の手羽元を射抜かれたフェニックスの片翼が千切れ落ちていく。
「ヴァァァァーーーーッッ!!?」
愛する悪魔の片腕が千切れ飛ぶ瞬間を見せられたアリナは発狂する程の叫びを上げてしまう。
体勢を崩して地上に落下する前にパズスが急降下しながらフェニックスの体を抱き上げる。
アリナを乗せたフェニックスを抱えたパズスは高層ビル屋上のヘリポートに着地したようだ。
「よくも…よくもアリナのキュートキッドを傷つけやがったな!!アナタの腕も捥いでやる!!」
怒りの叫びを向ける空からは黒き翼を羽ばたかせたほむらが降りてくる。
着地した彼女に目掛けて怒りのマギア魔法を放とうとするが後方から叫び声が聞こえてしまう。
「イタイ!!イタイ!!ママ、タスケテ!!イタイ!!!」
パズスの腕の中で暴れ回るフェニックスの悲痛な叫びを聞かされるアリナが踏み留まってくれる。
「どうする気?挑んでくるなら容赦はしないわよ」
憤怒の顔を浮かべたまま震えるアリナであったが、怒りよりも優先したい親心があった。
「……パズス、戻るワケ」
フェニックスを下ろしたパズスが召喚用キューブの中に戻り、別の悪魔が召喚される。
「全国の皆様こんにち…」
「うるさい!!早くアリナのキュートキッドを回復させる!!」
「ヒィ!?何だか分かりませんが、速攻で回復致しますーっ!!」
召喚されたのは狂神アティスであるが、ボケた態度は許さない叫びを上げた者の意思を優先する。
回復魔法の最上位の一つであるディアラハンの光に包まれたフェニックスの翼が復元していく。
「ナオッタ!ナオッタ!アリガトウ、ママ!!」
「回復したのは私なんですけ……フゴッ!!?」
足元で何かを踏んだのだが気にしないフェニックスがアリナに近寄り顔を寄り添わせてくる。
無事な姿を見せてくれたフェニックスにアリナは微笑み、右手で顔を撫でてくれたようだ。
しかしすぐ様厳しい顔つきを浮かべたアリナが目の前のほむらを睨んでくる。
「…アナタのデビルパワー、色々と拝見させてもらったんですケド」
「それでも立ち向かってくるのなら…私は手加減をするつもりはないわ」
互いの睨み合いが続くのだが、アリナは聞いてみたい話を持ち出してくる。
「ねぇ…デビルになった時の気分って、どうだった?」
「…それは答えなければならない話なの?」
「自慢する気にもなれない気分?まぁいいんですケド、アリナで確かめたらいいだけだし」
「貴女も悪魔になろうとするのね…。魔法少女は悪魔になれる…神浜でも何人か生まれているわ」
それを聞かされたアリナは確信出来た。
悪魔合体を用いれば魔法少女は悪魔の領域に辿り着く事が出来るのだと。
「いい情報が聞けたんですケド。お返しにアリナもいい情報をアナタに与えてあげる」
「いい情報ですって…?」
不気味な笑みを浮かべたアリナが語るのは、秘密主義団体の者としては裏切り行為である。
それでも彼女は保身に走らず周りに流されない覚悟を示すためにこそ語ってくれるのだ。
「アリナ達はね、東京でビックイベントを行う予定なワケ」
「イルミナティは東京で何かを行うというの…?目的は何だというの?」
「デビルにとって悪い話じゃないワケ。だってさ…魔界こそデビルのホームグラウンドだヨネ?」
それを言われた暁美ほむらが驚愕した表情を浮かべながらかつての光景を思い出す。
アマラ深界という魔界に堕ちた時、彼女の誕生を祝うかのようにして大勢の悪魔が潜んでいた。
悪魔が暮らす魔界を世界に出現させようとしているのだとしたら、まどかも無事では済まない。
「イルミナティは…この世界を魔界に作り替えようとしているわけ!?」
「イグザクトリー。その儀式を行う場所こそが東京…直に計画はスタートするから楽しみだヨネ」
踏み潰されてペシャンコなアティスを召喚キューブに仕舞ったアリナが跳躍する。
フェニックスの背に飛び乗った彼女は最後に挑戦状を叩きつけるのだ。
「アリナはまだ負けを認めていないカラ。次に会う時は…アナタにエンドを与えてみせる」
「どうしてそんな秘密計画を私に話す気になったの?イルミナティを裏切る発言だと思うわよ」
「アリナはね、イルミナティを利用してるだけ。アリナはアリナが認めた存在にしか跪かない」
アリナはもう一度右掌をほむらに向けてくる。
「アリナはルシファー・シジルを掲げる者。個人主義と自由思想を掲げる女なんだカラ」
「自己を高める追及…
「アナタもサタニズムを理解してるのなら、アナタにも責任が与えられる事を忘れないでヨネ」
フェニックスが飛び立ち、アリナの姿が夜空に消えていく。
同じシジルを背負う者に追撃を放つ気にもなれないほむらは顔を俯け、忌々しいと吐き捨てる。
「どうしてそっとしておいてくれないのよ…私はまどかと静かに暮らせたらそれでいいのに…」
語った言葉は彼女の心を支配している本音の感情から生まれた言葉である。
それは東京の人々の命を心配してくれる気持ちなどではない。
私は鹿目まどかと幸福に生きたいだけだと願う我儘な気持ちであり、自由を望む欲望。
気高い公共心を生み出す博愛精神とは程遠く、利己主義に腐る者達が好むどす黒い欲望そのもの。
徹底して自分の都合の良さしか求めない
「世界が魔界に変わってしまったら…私の庭が壊される。そんな事は…絶対に許さないわ」
暁美ほむらは決意する。
円環のコトワリ神であるアラディアとの決着がついたのなら、次はイルミナティを倒す。
まどかと幸せに暮らす箱庭世界の支配者こそが自分であり、邪魔者は絶対に許さない。
彼女が戦う理由とは今も昔も変わらない。
鹿目まどかを守る。
それこそが暁美ほむらの原点。
しかし彼女の心の中には未だに未練が残っている。
暁美ほむらの原点とは、まどかをキュウベぇから救う事だけが原点だったのか?
まどかと共に人間達を救う為に魔法少女として共に生きていくことではなかったのか?
そのために鹿目まどかとの出会いをやり直したいと望んだのではなかったのか?
その頃の気持ちが未だに残る現象こそが、悪魔の力を自ら封印している光景なのだろう。
「クロノス、貴方にも腹を括ってもらうわ。ルシファー側の者として詳しく聞かせてもらうわよ」
<<それは構わんのだが…いい加減、ワシの内部に挟まってる異物を取り出してくれんか?>>
「……家に帰ったらピンセットで取り出してあげるから我慢なさい」
マスターテリオンの魔力を感じないため、人修羅が決着をつけたのだと判断して合流を急ぐ。
これから先、暁美ほむらと嘉嶋尚紀の道が繋がり合う事はないのかもしれない。
彼女と彼の生き方は似ているようで全く違う。
個人の欲望を望む気持ちと全体の幸福を望む気持ちとでは全く相容れない別々の概念。
だからこそ2人の仲魔関係はそう長くは続かないだろう。
いずれは思想を分かち、互いが争い合う日が訪れるまでは尚紀と共に生きるほむらなのであった。
突然始まるエースコンバット的な戦闘シーン(ゲーム脳)
アリナにフェニックス与えたのはこういうバトルシーンやりたいなーという願望も含まれていたというわけですねー。