人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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225話 サタニズムの道

体の石化に歯止めがかからない悪魔少女達は既に藻掻く事すら出来なくなっている。

 

このまま完全に石化させられたら十七夜の魔の手から逃れる術はないだろう。

 

「安心しろ、今は殺さない。しかし…我々の行動の邪魔立てをするならば保障出来んな」

 

「くそっ…ここまでなのか…」

 

「言っただろう?恐れを知らぬ者は無策のまま敵陣に飛び込んで死ぬしかないのだ」

 

「確かに…恐れを知る事も大切だよ。だけど…無策のまま飛び込むバカな真似はしない」

 

「何だと…?」

 

「…アナタが言った言葉をそのまま返す。見える者にしか意識を向けられないのが悪い癖だ」

 

かなえの言葉を聞いた十七夜が辺りに視線を向けるが遅過ぎる。

 

<<マジカルかりん、ここにとうじょーっ!>>

 

上を見上げれば飛び降りてきた人物が武器を振り下ろそうとしている。

 

「くっ!?」

 

奇襲を仕掛けてきた相手に目掛けて十七夜が旗槍を振るい、大鎌を弾く。

 

体ごと弾き飛ばされたが体勢を一回転させながら着地を行い武器を構え直す。

 

「画伯……君まで来ていたのか。邪魔立ては許さんぞ!」

 

「我は正義の怪盗マジカルかりん!そして我は独りで戦う者ではない!」

 

「なに…?ん…?あっ!?」

 

左手を見ればメルから奪った筈のトートの書が紛失している。

 

「ケケケ!黒きカマイタチと呼ばれた俺サマにスリをやらせりゃこんなもんよ!」

 

声が聞こえた方に視線を向ければトートの書を持ちながらはしゃぐ姿をしたリパーがいる。

 

「これでも喰らえホー!!」

 

続けて空から現れたランタンが大きな火球を放ってくる。

 

しかし炎無効の耐性をもつ十七夜が旗槍を振るい、火球の一撃を粉々に吹き飛ばしてしまう。

 

「今のうちですぜメルの姉御!姐さん達が姉御のなぎたんさんを抑え込んでいるうちに回復を!」

 

「見ての通り体が石化中なんです…ボクの代わりにペトラディが載ってるページを開けて下さい」

 

「えーーっ!?俺サマがページを開かなきゃならないわけーっ!?」

 

「ボクが触れてたら魔力でページを開けるんですけど…こればかりは仕方ありませんね」

 

魔導書のページを開き続けるリパーの横ではかりん達が果敢にも十七夜達に戦いを挑んでいく。

 

「あっちは俺の炎が無効化されちまうからコッチを相手してやるホ!」

 

「チビノ分際デ挑ンデクルカ!!ココハ狭イ!ツイテコイ!!」

 

「望むところだホー!!」

 

空中に浮かび上がったコカトライスを相手に同じく空を飛び交うランタンが激しく戦い続ける。

 

大きなバルコニーでは大鎌を振り回すかりんが十七夜を攻め続けて回復させる時間を稼ぐ。

 

「悪の心に流されたらダメなの!なぎたんは正義のメイドさんとして生きた者なの!!」

 

両手持ちの大鎌を果敢に振り回して攻撃を仕掛けるが十七夜は武器を使うまでもない動きを行う。

 

魔獣を相手に戦っていただけのかりんの対人戦能力は成長してなかったため避けるのは造作ない。

 

「悪だと…?自分は正義を捨てたつもりはない!世界の自由と平等こそが弱者達の正義だ!!」

 

「なぎたんは騙されてるだけなの!イルミナティは悪い連中なの!!」

 

「君まで弱者の自由と平等を踏み躙ろうというのか!!ならば悪と呼ばれるべきは君の方だ!!」

 

大鎌を打ち払った一撃によってかりんの体が大きく弾き飛ばされる。

 

バルコニーの端まで飛ばされた彼女が倒れ込むが、それでも戦う意思を曲げない顔を向けるのだ。

 

「自由や平等についてはよく分からないの…だけど!イルミナティが悪なのは分かる!!」

 

左手でポケットから取り出したのは沢山の飴玉。

 

しかし彼女が魔力を込めればただの飴玉だろうが桁外れの威力となるだろう。

 

「行くぞ…これが我が全魔力の結晶なり!袋の中より飛び出せ!我が魔法の菓子達よ!」

 

放つ一撃とはマギア魔法のキャンディーデススコールであり、飴玉が光弾となって発射される。

 

迎え撃つ十七夜は旗槍を大きく後ろに振りかぶりながら武器に魔力を注ぎ込み、一気に振り抜く。

 

「その程度の一撃で自分の道を止めることなど出来ん!!」

 

槍の薙ぎ払いと共に放たれた衝撃波の一撃とは物理系悪魔達が得意とするヒートウェイブ。

 

広域放射された衝撃波とぶつかり合った光弾が砕け散り、止まらぬ衝撃波の波がさらに迫りくる。

 

「キャァァーーーーッッ!!?」

 

衝撃波の直撃を浴びたかりんの体がバルコニーの手摺を砕いて地上へと落下。

 

彼女は咄嗟にバルコニーの端の部分を掴んで落下を逃れるのだが、相手は容赦してくれない。

 

「画伯…メイドの仕事で悩んでいた時に助けてくれた事には感謝してる。だが…自分は止まらん」

 

「目を覚ますの…なぎたん!なぎたんは正義の魔法少女…そして皆のなぎたんなのーッッ!!」

 

「なぎたんか…今となっては全てが懐かしい。それでも自分は行く…それが弔いの道だからだ!」

 

蹴り落とすために片足を上げた時、背後から迫りくる風切り音に気が付く。

 

飛んできていたのはかなえの魔槍ルーンであり、咄嗟に旗槍を振り抜いて弾くが罠だ。

 

「十七夜ィィィィーーーッッ!!!」

 

バルコニーを踏み砕く程の跳躍力で後続から迫ってきた存在が左腕を振り上げる。

 

「ぐふっ!!!」

 

左のストレートパンチを顔面に浴びた十七夜の方が大きく弾き飛ばされながら地上に激突。

 

かりんに手を差し伸べてくれたのは石化魔法を解除してもらえた雪野かなえだったようだ。

 

彼女の手に掴まりながらバルコニーに持ち上げてもらえたかりんであったが、悲鳴を上げる。

 

「ランタン君!!?」

 

バルコニーに落下してきたのは氷の塊に変えられたランタンであり、命の危機に晒されている。

 

上空を見れば巨大な翼を羽ばたかせながらコカトライスが迫ってきていた。

 

「…あたしは十七夜とケリをつけてくる。あのニワトリは任せた」

 

回転しながら戻ってきた魔槍を左手で受け取ったかなえが地上に向けて跳躍していく。

 

石化が解けたメル達の元にまで走ってきたかりんが上空を飛び続ける悪魔に目掛けて叫ぶのだ。

 

「よくもランタン君を傷つけたな!我が同胞の仇…このハロウィンの魔法少女がとってみせる!」

 

<ヒホ…勝手に殺すなホ…。早く回復するホ…体が…冷た過ぎて…マジで死ぬ…ホ……>

 

「モウ怒ッタゾーッッ!!オマエラ全員、氷漬ケニシテヤルーーッッ!!」

 

クチバシを大きく開けながら冷気を収束させていく。

 

極大の氷結魔法を放ってくると判断したメル達が慌てて城内に逃げ込む判断を行う。

 

放たれたのは絶対零度の一撃であり、極太の冷気ビームが地上を襲う光景が広がってしまうのだ。

 

<<ウワァァァァーーーーーッッ!!>>

 

氷漬けのランタンを抱えた一同が城の中に逃げ込むのだが、邪龍は城にも攻撃を仕掛けてくる。

 

十七夜の城が次々と破壊されていく中、コカトライスとの戦いは激戦を強いられていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「くっ……効いたな…。流石は雪野君の一撃だ…」

 

城から大きく殴り飛ばされた十七夜の体は墓地を激しく砕きながら叩きつけられている。

 

殴られた顔面の鉄仮面には大きく亀裂が入っており砕けてしまう。

 

素顔を晒した十七夜の鼻からは血が流れ落ち、鼻骨が砕かれた事を周りに示す。

 

しかし吸血鬼の再生力があれば時期に治るのだろうが、相手はそれまで待ってくれない。

 

「この異界の光景は…アナタの心象風景なのか…?」

 

破壊された墓地を歩いてくるのは魔槍ルーンを左肩に担いだ雪野かなえ。

 

たとえ魔封状態であろうとも彼女の物理的な力は侮れないものだと十七夜は痛感する。

 

「…そうかもしれん。自分が構築した異界の光景こそ…自分が犠牲にした人々の墓場なのだろう」

 

「自責の念の証か…十七夜…アナタは長の頃からそうだった。常に自分独りで背負おうとする…」

 

左腕で鼻血を拭いた十七夜が右手に持つ旗槍を杖替わりにして立ち上がってくる。

 

頭からも血を流す彼女であるが、晒した素顔の瞳には未だに揺るぎない闘志が宿っていた。

 

「十七夜…どうしても進むのか?」

 

「何度も同じ事を言わせるな。自分は世界に平等をもたらす道を行く…誰にも止められん」

 

「平等を求めたいのなら…神浜で暮らす尚紀と共に歩めばいい。彼と会って話をするんだ」

 

「その必要は無い…あの御方なら時期にイルミナティを導く神となられる。それが運命だ」

 

「どういう事だ…?どうして尚紀がイルミナティを導く存在になるだなんて言える…?」

 

「悪魔達の中には未来が視える者達がいる。ユダさんはその者達からそう聞かされたそうだ」

 

「尚紀がイルミナティを導く神になる未来が待っているだなんて……あたしは信じない!」

 

「これは安名の受け売りだが…誰にも運命を止められる術はない。未来とは決まっているのだ」

 

「たとえそうだとしても…人は未来を変えられる。十七夜…それが間違いの修正なんだよ」

 

かなえがいくら語り掛けようとも、十七夜は自分の間違いを認めようとしない。

 

意固地になった者が旗槍を振るい、再び暗黒の霧を槍から噴き上がらせていく。

 

「自由や平等が間違っている筈がない…自由と平等こそが!弱者達の抵抗権なのだぁ!!」

 

「十七夜!!あたしは不器用なんだ…ここから先は荒っぽくなるぞ!!」

 

「それでいい…かかってくるがいい!!自分は不退転の覚悟を決めている…押し通れ!!」

 

魔槍ルーンを両手持ちで構えたかなえが魔法を発動する。

 

彼女が行使した補助魔法とはタルカジャであり攻撃力が増加していく。

 

「魔封は破られていたか…きっと安名の魔法の力だな。彼女は危険だ…いの一番に倒すべきか」

 

「それはあたしを倒せてから考えればいい……行くぞーーーッッ!!」

 

かなえが放つ雄叫びに怯んだ十七夜の力が抜けてしまう。

 

攻撃力が大幅に下がった相手に目掛けて力任せの槍の一撃が振るわれていく。

 

「チッ!!」

 

大振りの一撃を旗槍で弾いた十七夜が槍を両手で回転させながら跳躍。

 

回転を加えた槍の一撃を払い飛ばすがさらに体勢を回転させて放つ旋風脚が迫りくる。

 

顎を引いて蹴り足を避けるが続く後ろ回し蹴りの一撃がかなえの左側頭部を捉えてしまう。

 

「ぐっ!!」

 

蹴り飛ばされたかなえに目掛けて跳躍からの突きを放つが地面を転がりながら回避を行う。

 

立ち上がった彼女に目掛けて追い打ちを仕掛ける連続突きが繰り出される。

 

力任せに打ち払い続けるが洗練された技量ではないため体を次々と切り裂かれていく。

 

「十七夜!!お前は自由と平等に憑りつかれた亡者だ!!自分の思想を周りに押し付けるな!!」

 

「押し付けているのは資本主義者の方だ!!奴らがもたらした市場原理主義が何をもたらした!」

 

「あたしは政治に詳しくはない!エリート共が敷いた世界でもあたし達は強く生きるしかない!」

 

「それが権威に屈服した悪しき日本人の奴隷根性なのだ!思考停止しているのは君達の方だ!!」

 

槍で弾かれて後ずさるかなえだが、横にあった墓石に蹴りを放ち石つぶて攻撃を仕掛ける。

 

墓石を破壊された十七夜は顔を憤怒で歪めながら飛んでくる墓石を旗槍の刃で切り裂いていく。

 

「死者の墓を足蹴りするのか!?死者には敬意を……」

 

最後の石つぶてを切り裂いたのはいいが、踏み込んできたかなえが右手で旗槍の柄を掴み取る。

 

「悪い……あたしは不愛想な上に行儀が悪いんだ」

 

魔槍ルーンを握り込んだ拳を振り上げながら左ストレートパンチを放つ。

 

「がはっ!!?」

 

右頬を打ち抜かれた十七夜の手から旗槍が奪われたまま弾き飛ばされていく。

 

奪った旗槍を捨て、かなえは魔槍ルーンを消失させながら両手をポキポキと鳴らしてくる。

 

「オマケにあたしは口下手でね…昔から言葉が通じない相手には…拳で分からせてきた」

 

魔法少女でなくなった十七夜は痛覚麻痺が無いため激痛で顔を歪めながらも立ち上がってくる。

 

迫ってくるかなえの望みを汲み取ってくれたのか黒革の手袋を嵌めた両拳を握り締めるのだ。

 

「そうだったな…君はそういう女だった。いいだろう…君の流儀で負けたなら文句はないな?」

 

「いい根性だ…お互いに魔法少女でなくなった以上は…痛みの我慢を強いられる喧嘩になるぞ?」

 

「フフッ…おかしなものだな。分からず屋が相手なのに…不思議と気分が高揚してくる!!」

 

互いに踏み込み、拳を固め合った者達が拳打を用いた戦いを始めていく。

 

互いに殴り、互いに蹴り、掴んで投げ飛ばす乱戦が繰り返される光景はまさに不良同士の喧嘩だ。

 

「滅びの先に平等がある!!腐り切った資本主義社会を滅ぼす事こそが!真の平等社会なんだ!」

 

「そのために何をするつもりだ!!アナタ達は世界の滅びを実行に移す計画でもあるのか!?」

 

「フッ…その通りだとも!もうじき自分達の革命が始まる…腐り切った国を解体するためのな!」

 

「ふざけるな!!暴力革命を行ってまで平等を掴み取りたいだなんて暴力主義者の考え方だ!!」

 

「拳を振るう事しか能がない君に言われたくなどない!!」

 

互いの拳がクロスカウンターとなり、互いの顔面を同時に打つ。

 

「「グフッ!!!」」

 

ふらつきながら後ずさる彼女達の顔は腫れあがり、美しい顔を台無しにしてでも意地を通す。

 

「…暴力革命なんてやめてくれ。殺戮を重ねてしまえば…尚紀と同じ末路が待っている…」

 

「自分は既に殺戮者だ。今でも眠る時に思い出す…自分が一線を超えてしまったあの夜の事を…」

 

「十七夜……」

 

「いとも容易く倒れる奴らを前に感じた…あの吹っ切れた感覚をな。もう遅過ぎるのだ」

 

「そんな事はない…尚紀はアナタを超える程の殺戮を行ってきた。それでもやり直してるんだ」

 

「尚紀と名乗りながら生きているのだったな…人修羅様は。いずれあの御方も気が付くだろう」

 

――血塗られた定めからは…誰も逃れられないのだとな!!

 

十七夜は強く握り締めた右拳を赤黒く帯電させていく。

 

応えるかのようにしてかなえは左拳を強く握り締める。

 

「「オオオォォォォォーーーーーッッ!!!」」

 

互いが地面を爆ぜらせる。

 

飛び込んできた者同士の拳がぶつかり合い、衝撃波が周囲の墓石を砕いていく。

 

互いの拳が潰れる程の威力であるが、十七夜が纏った雷魔法の一撃がかなえの体を焼いていく。

 

「ぐっ!!まだ…倒れないだと…?どれだけのタフネスを有しているのだ…君は!?」

 

「何のとりえもない不器用なあたしだけどさ…理不尽に抵抗する感情だけは誰よりも強いんだ…」

 

「理不尽に抗う抵抗力を…どうして資本主義の理不尽にぶつけてこなかった!?実に惜しいぞ!」

 

「あたしは周りの理不尽な理屈を跳ね除けてきたけど…あたし自身が理不尽を敷いた事はない…」

 

「なぜ自分達は分かり合えない!?こんなにも理不尽に抗える君なのになぜ分かってくれない!」

 

「あたしはね…死者に憑りつかれた十七夜を止めたい。もうやちよと同じにさせたくないんだ!」

 

ぶつかり合った拳が離れた瞬間、互いが右回し蹴りを放つ。

 

互いの頭部に決まった蹴り足の一撃によって、ついに彼女達の体が地面に倒れ込んでしまう。

 

「ハァ…ハァ……自分が…死者に憑りつかれている?七海と同じにしたくないとは…何なんだ?」

 

「ハァ…ハァ……やちよはね、あたしとメルの死を嘆き過ぎたために…暴走していったんだ」

 

「暴走していっただと?東社会から追放された自分を受け入れてくれた…あの優しい七海が?」

 

息を切らせたかなえは語ってくれる。

 

客観性を失ったままの西の長が何をしてきたのかを。

 

「魔法少女社会の長としての責任ばかりを優先して…守るべき人間達の姿が見えなくなった…?」

 

「やちよは誰も失いたくないと皆を環にする思想を掲げた…だから最初の目標が見えなくなった」

 

「七海…君も自分と同じく…魔法少女社会の長としての責任に潰されていったのか…」

 

「やちよは尚紀から得た客観性によって過ちに気がつけた…だからこそ、あたしは叫ぶんだ…」

 

「自分の過ちを止めるためにか…?」

 

「やちよもね…今の十七夜と同じように分からず屋になった。愛する感情がエゴを強化したんだ」

 

「愛する故の…エゴ……?」

 

「十七夜だって皆を愛している筈だ…だからこそ、その人達を優先したいと囚われてしまう」

 

「自分は……守ってやれなかった東の魔法少女達に……囚われているのか……?」

 

かなえが与えてくれた客観性によって、初めて十七夜の瞳に迷いの色が浮かんでいく。

 

自分は誰のために戦っているのかを問われた十七夜はこう答えるのだ。

 

「自分が愛しているのは…魔法少女だけではない。東の街で生きる人々も愛している……」

 

「だからこそ、その人達の元に帰るんだ…十七夜。家族や友達を泣かせてまで…何がしたい?」

 

「自分が人々のために滅びを望む気持ちこそ平等だ…それは全ての国々で暮らす人達も同じだ」

 

ふらつきながらも立ち上がる十七夜は自分の正直な気持ちをかなえに送ってくれる。

 

その表情は皆の為の人柱として生贄になる者達と同じような悲しみと覚悟が宿っていた。

 

「自分が家に帰ったところで国や世界は変わらない。誰かがやらねばならん…ならば自分がやる」

 

「だからこそ尚紀と共に生きろ…十七夜!彼だって政治の世界で戦おうとしてくれてるんだ!!」

 

「いずれ人修羅様もこの国に主権なんてないと気が付く……いや、もう気付いているはずさ」

 

言葉を切った十七夜が異界の空を見上げていく。

 

仰向けに倒れ込んだままのかなえにもそれは見えたようだ。

 

「あの巨大な鳥は…あの時の!?」

 

2人が見上げた異界の空を高速で飛んでいく悪魔こそアリナの自慢の仲魔であるフェニックス。

 

死と再生の悪魔が向かった先とは未だに激戦が続く十七夜の城であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ゼ―…ハー…ゼ―…ハー…何処二隠レターッッ!!出テキヤガレーッッ!!」

 

後先考えずに極太冷気ビームを吐き過ぎたせいかコカトライスの息は切れている。

 

城は既に半壊しており、瓦礫塗れの中を踏みしめながら悪魔少女達を探して行く。

 

<全く…なんて後先考えないおバカなニワトリさんなんですか…>

 

<言っちゃダメなの…体は大きいけど頭の中身は小さいの、きっと>

 

<どうでもいいけどよぉ…さっさとランタンの氷を溶かしてやらねーとマジで死ぬぞ?>

 

瓦礫の物陰に隠れた者達が反撃のチャンスを伺うようにして潜んでいる。

 

後ろに隠した氷の塊の中にいるジャック・ランタンは念話を飛ばし合う元気もないようだ。

 

<とにかく、令さんが隙を作るって動いてるけど大丈夫なんですか?>

 

<信じるしかないの!観鳥先輩の悪魔パワーに期待するの!>

 

地響きを立てながら歩いていると物陰から現れた人物に気が付き巨体を動かす。

 

現れたのは乗馬鞭を構えながら果敢に挑んでくる令であったようだ。

 

「観念シテ出テキタカ!連レ帰ルノハモウメンドクセェ!踏ミ潰シテヤル!!」

 

「荒々しいニワトリさんだねぇ?観鳥報に載せたくなるけど、やっぱり猫の方がいいかな?」

 

「ダカラ!!オレサマ、ニワトリジャネェ!!ワザト言ッテルナラ許サネーゾ!!」

 

「ホラホラ、ニワトリさん♪観鳥さんはこっちだよ♪ついておいで!」

 

瓦礫の中を跳躍していく令に目掛けて巨体をぶつけようと駆け巡る姿はまるで軍鶏。

 

しかし獲物が小さ過ぎて体をぶつける事が中々できない。

 

冷気ビームで削り取られた半壊の塔まで跳躍した令が後ろを振り向き挑発してくる。

 

「おにさんコチラ♪手の鳴る方へ♪ニワトリみたいに鳴いてみなよ♪」

 

乗馬鞭で手を叩きながら招き寄せてくる相手に目掛けて激おこになった邪龍が仕掛けてくる。

 

「コンチクショーッッ!!ニワトリニワトリ言ウ奴ガニワトリナンダーッッ!!コケーッッ!!」

 

涙目で突進していくのだが、乗馬鞭を構えて先端から光を放つ相手に警戒したのか急停止。

 

「ホラホラホラホラ!!」

 

「ナンダ!!?」

 

乗馬鞭をグルグルと回しながら光る鞭の先端が円を描いていく。

 

コカトライスは釣られて首をグルグル動かしながら光を目で追ってしまう。

 

回転の動きがどんどん早くなり、ついにはコカトライスの目がグルグル目と化してしまう。

 

令が放ったのは敵全体に混乱と中ダメージを与える『テンタラフー』のようだ。

 

「オボボボボ!!ギボチワルイ…オレサマ、メガ、オホシサマ…グールグル……」

 

吐瀉物を撒き散らしながらふらついて進んで行き、巨大なクチバシを令に晒してしまう。

 

乗馬鞭を振りかぶった令はいい笑顔を向けながらこう叫ぶのだ。

 

「そのシャッターチャンス、もらったぁっ!!」

 

渾身の力を込めた鞭の一撃がクチバシを襲う。

 

「ゴハァーーーッッ!!?」

 

巨体がグラついて倒れ込む程の一撃を浴びたコカトライスが地面に倒れ込む。

 

これを好機とばかりにメルとかりんとジャック・リパーが駆けてくる。

 

「総攻撃チャンス!!ぶちかましてやりましょう!!」

 

「ちょっと可哀相な気もするけど…これも正義のためなの!!」

 

「何だか知らねーが、俺サマもやっちゃうぞーーっ!!」

 

気合が籠ったカットインが表示される程の勢いで悪魔少女達が倒れ込んだ邪龍をボコっていく。

 

<<グワーッ!!混乱シテル時二総攻撃ダト―ッッ!!?慈悲ハネーノカーーッッ!!>>

 

巨大な土煙やら魔法の光やらが吹き荒れていくが、暫くして煙が収まっていく。

 

煙が晴れればボコボコにされたまま倒れ込むコカトライスがいたようであった。

 

「フハハハハ!!これぞハロウィンが生んだ正義の怪盗の力なのだ!思い知ったか!!」

 

「あんまりハロウィン感を感じないバトルでしたけどね…」

 

「ちょっと可哀相な目に合わせちゃったけど、命は取らなくても良さそうな悪魔に思えるな」

 

「姉御の観鳥さんも慈悲深くて俺サマ感動した!今度俺サマが入浴中の警備をしに行きたい!」

 

「そんな真似をしたら鞭打ち百回浴びせちゃうけどいいのかな?」

 

「それだけは…勘弁……」

 

受かれている悪魔達であったが、魔法少女のかりんは強大な魔力が迫っているのに気が付く。

 

同時に懐かしい人物の魔力まで感じ取ってしまうのだ。

 

「この魔力…まさか!?」

 

彼女の声に反応したメルが異界の夜空を見上げる。

 

「あれは……あの時のフェニックス!?」

 

高速で飛来してきた存在がホバーリングするかのように翼を羽ばたかせる。

 

その上には左手に召喚用キューブを生み出したアリナが立っているのだ。

 

「まったく…放し飼いしてると好き放題するんだカラ。デビルは世話がかかるヨネ」

 

召喚用キューブの欠片が地上に飛んでいきコカトライスを回収する光を放つ。

 

「あの魔法は間違いないの!?アリナせんぱーーーいっ!!!」

 

地上から飛んできたキューブの欠片を受け取ったアリナではあるが忌々しい表情を浮かべてくる。

 

かりんの叫びは彼女にも聞こえているようだが、舌打ちする程にまでイラついていたようだ。

 

「アリナ先輩!!イルミナティに協力してるのは分かってるの!悪いことはやめるの!!」

 

無言を貫こうとしたが、それでも彼女は後輩の事を気にしている。

 

アティスが自由行動の日になると彼を神浜に送ってかりんの生き様を確認させていたようだ。

 

「…アリナが語った言葉は守ってるようだヨネ。それでこそなんですケド」

 

「アリナ先輩…あの時の事は謝るの!!アリナ先輩の気持ちに気が付いてあげられなくて!!」

 

「謝る必要はないワケ。アリナは何も悪いことなんてしてるつもりはないカラ」

 

それを聞かされたかりんの顔に酷く混乱が浮かんでしまう。

 

赤子を殺した事に一切の罪悪感を感じていないと切り捨ててきたからだ。

 

「どうしてなの…?赤ちゃん殺しは悪いことなの!どうしてそんな酷いことが言えるの!?」

 

「他人にとっては悪いことでも、アリナにとっては悪いことじゃないワケ」

 

「勝手なの!!生まれた子供達の帰りを待つ両親の気持ちを考えたことはないの!?」

 

「ないんですケド。アリナはね、ベビーだけでなくそれ以外の子供もジェノサイドしたカラ」

 

衝撃の言葉を浴びせられ続けるかりんの体が震えあがり、今にも膝が崩れそうだ。

 

だが気丈にも耐える彼女が大好きな先輩の凶行を止めるためにこそ叫んでくれる。

 

「アリナ先輩がどんな価値観であってもいいの…だけど!それを周りに押し付けたら悪なの!」

 

「アリナは周りの正しさに振り回される人生なんてお断り。アリナはアリナでいればいい」

 

「目を覚ますの!!アリナ先輩はイルミナティに洗脳されてる事なら分かってるの!!」

 

何でもイルミナティのせいにしようという都合の良さばかりを求める後輩に苛立ちが募る。

 

ならば本当のアリナはどんな存在なのかを突き付ける必要があると彼女は決心したようだ。

 

「フン…オーケー、そこまで勘違いしてるっていうなら証明してあげないといけないワケ」

 

「証明…?」

 

邪悪な笑みを浮かべたアリナはトップシークレットともいえる機密情報を話してしまう。

 

彼女が先程言ったように、たとえ自分が所属する啓明結社が相手でも彼女の自由は侵せないのだ。

 

「今年のゴールデンウィーク期間はね、東京に遊びに行くといい」

 

「東京に遊びに行く…?アリナ先輩は東京で何をする気なの…?」

 

「ジャパンの歴史の中でも最悪の()()()()()()が起こるカラ、楽しみにしててヨネ」

 

「もしかして…イルミナティの計画なの!?やめて欲しいの!アリナ先輩は優しい人なの!」

 

「そこでその勘違いを正してあげる。本当のアリナがどんな存在なのか…見てればいい」

 

「ダメなのアリナ先輩!!お願いだから帰ってきて!!アリナ先輩の居場所は……」

 

「シャラップ!!!」

 

右手に生み出した攻撃用のキューブが分解されていき光弾となって地上に降り注ぐ。

 

<<アァァァァーーーッッ!!!>>

 

地上が爆撃される程の爆発被害が生まれてしまう中、アリナはこう吐き捨ててくる。

 

「アリナの居場所をアナタが決めるな!!アリナの居場所はアリナが決める!!」

 

爆炎が広がる地上に向けて叫ぶアリナであるが、かりん達が生きている事なら魔力で分かる。

 

最後に彼女は自分の信念を後輩に伝えるためにこそ、有神論的サタニズムを語ってくれたようだ。

 

「サタニズムはね、個の確立を目指す自由主義思想。アリナはサタニズムを掲げて生きていく」

 

「サタ…ニズム……?」

 

「他者にコントロールされたり抑圧されたり群衆に従わされたりするのを否定する…アリナの道」

 

「アリナ先輩の…道……?」

 

「アリナはアリナの覚悟を示すマイウェイを進んで行く。アナタもマイウェイを進めばいいカラ」

 

「アリナ……せんぱ……い……」

 

「偽りの自分を演じて好かれるよりも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だカラ」

 

それだけを言い残してアリナを乗せたフェニックスは飛び去っていく。

 

飛翔してくるフェニックスを確認した十七夜も旗槍を拾い上げてかなえに向き直ってくる。

 

「自分は自分の道を行く。君達は君達の道を行けばいい」

 

「十七夜…ダメなのか…?あたし達はもう…昔には戻れないのか…?」

 

「君達にへりくだる道では世直しなど出来ない。甘い堕落の人生に埋没する生き方などごめんだ」

 

夜風が墓地を吹き抜けた時、留め具が外れて旗槍の赤い布がめくれていく。

 

広がったのは()()()()()()()()()()()()()でありフランス革命の象徴の旗。

 

弱者を守るために生み出されたものでありながらナチスにもソ連にも化ける恐ろしい旗の色。

 

核爆弾を遥かに超える程のおぞましい思想の旗を十七夜は掲げて生きていくのだと示してくれる。

 

「人修羅様は黙示録の赤き獣となられた。あの御方の頭にこそ()()()()()()()()()が必要なのだ」

 

十七夜の赤旗には寝かせた三日月の上に王冠のシンボルが描かれている。

 

赤き旗を象徴する獣こそが人修羅であり、彼の頭にこそ赤き王冠が必要だと叫ぶ信念を表す。

 

「自分を悪だと呪うがいい。君達にへりくだる道が善だというなら…自分は悪で構わない」

 

「十七夜…目を覚ませ!!アナタは騙されているだけなんだぁ!!」

 

「自分はサタニズムを掲げる者。自分をコントロールしたり抑圧しようとするなら…容赦しない」

 

上空で留まってくれているフェニックスに目掛けて体が弾けた十七夜の蝙蝠達が飛んでいく。

 

フェニックスの背の上で実体化した彼女を乗せたアリナは悪魔の異界から消え去ってしまう。

 

それと同時に十七夜が構築した異界は消失していき元の遊園地の景色に戻ったようだ。

 

ズタボロな姿をしたまま倒れ込んだ少女達はサタニズムを何処かで聞いた事があると感じている。

 

彼女達はそれを誰が語っていたのかを思い出す事になるだろう。

 

サタニズム精神である個の確立を誰よりも語った者こそ、サタンとなった人修羅であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「そうか……十七夜とアリナはもう…戻る気はないんだな?」

 

和泉十七夜捜索の依頼を託した依頼人の元に訪れているのは学生服姿の雪野かなえと安名メル。

 

喫茶店の個室で向かい合っている者は黒のトレンチコート姿の尚紀であった。

 

「うん…そう言われたよ。それと…あの辺りをもう一度調べたけど彼女達は見つからなかった」

 

「もしかしたら…ボク達を警戒して拠点を移動させた可能性がありますね…」

 

「……かりんはどうしてる?」

 

それを問われた彼女達は辛い表情を浮かべてしまう。

 

大好きな先輩を信じようとしていた彼女が裏切られた事を伝えるのは辛いようだ。

 

「かりんは…塞ぎ込んでしまったよ。ショックが大き過ぎたみたい…」

 

「アリナさんをそれだけ信じてたんですね…。ボクだって十七夜さんを見てショックでした…」

 

「捜索対象が探されるのを拒絶する場合は…捜索は極めて困難となる。これ以上の捜索は無理だ」

 

「ごめん…尚紀。せっかく依頼を任されたのに…役目を果たせなくて…」

 

「気にするな、料金は満額支払わせてもらう。2人を連れ帰れなかったが…それでも価値はある」

 

喫茶店から出てきた3人がそれぞれの帰路へと歩いていく。

 

道を歩く尚紀が考えていたのはアリナが語った言葉であった。

 

「イルミナティが東京を狙っている…決行日は今年のゴールデンウィーク期間か…」

 

アリナが語った言葉から推測するに、日本の歴史上類を見ない程の大虐殺が起こる。

 

そう判断した尚紀の顔には怒りの表情が浮かんでしまう。

 

東京の守護者として見過ごす事など出来ない情報であったからだ。

 

「決行日まで待つ必要は無い…俺が出て行って潰してやる。その為に東京を捜査する必要がある」

 

大きな捜査となるため自費を使って自分の職場を動かす算段をしていく中、彼は思う。

 

「アリナ…東京の破壊を望むのはお前の意思か?それとも…千晶の意思なのか…?」

 

黒のトレンチコートの裾をまくれば涼子から託された数珠が巻かれている。

 

己の怒りと憎しみを律する数珠を武を司る右腕に巻き付ける者だが、心は揺れていた。

 

「俺達は殺し合うしかないのか…?アリナ…千晶…俺はお前達とは戦いたくないんだ…」

 

彼女達が東京の人々を虐殺するというのならば、殺してでも止めるのが東京の守護者だ。

 

それでも彼の脳裏には千晶と殺し合ったボルテクス界の記憶が焼き付いている。

 

かつての世界と同じように殺し合う未来しか築けないのであれば自分に価値など無い。

 

そう考えられる程にまで成長出来た要因こそが中庸を目指す精神だった。

 

NEUTRALを掲げる者になろうとするが、その道は命綱無しの綱渡りも同然。

 

人修羅が秩序に傾こうが、アリナ達が自由に傾こうが、向かう先は奈落の底となるだろう。

 

それでも人修羅として生きる尚紀は真っ直ぐに視線を向けながら細き道を進んで行く。

 

迷い抜く今の彼にはNEUTRALの道が見えてはいないかもしれない。

 

LAWでもCHAOSでも無い道を歩く者は、まるで幻の道を歩いている感覚に襲われるのであった。

 




やっぱり喧嘩議論はガンダムと同じく華があっていいですよね!シスターももこちゃんともやらせたい!
描いててなぎたんは本当に動かしやすいヴィランキャラだと思いましたね。
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