人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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22話 悪魔の宝石

風見野から戻った尚紀は家族達を一刻も早く救わなければならないと動き出す。

 

東京に戻り次第、時間を作ってジュエリーRAGに向かう事となる。

 

「おや、ナオキ君?いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件ですかな?」

 

「あんたは宝石の鑑定や売却方法を知っているか?」

 

「勿論だ。私は宝石を鑑定することも出来るが…今日は宝石を売りに来たのかな?」

 

頷いた後、尚紀はニコラスに左手を見せる。

 

「悪魔の手品を見せてやる。これが売りたい宝石だ」

 

「私も初めて見る光景だ。魔導書の中で知ったが悪魔の能力の一つと聞く…便利なものだね」

 

尚紀の左手には大きな宝石が出現している。

 

ファイアー・ローズ・クッションにカットされた珍しいピンク色のダイヤモンド。

 

サマエルという邪神に姿を変えた仲魔から譲り受けた悪魔の宝石である。

 

「これを売りたいんだが…」

 

その宝石を見た途端、ニコラスが大声を上げてしまう。

 

「馬鹿な!?こ…これはピンクダイヤモンド!?しかもなんて大きさだ!!」

 

ただでさえ珍しいピンクダイヤモンドだが尚紀が手にしたピンクダイヤモンドは桁外れの規模。

 

その大きさはなんと550カラットである。

 

タイ王室が所有している世界一大きいホワイトダイヤと同じ大きさだと尚紀は知らないでいる。

 

宝石用手袋を嵌めて鑑定していき、これは間違いなくピンクダイヤモンドだと認めてくれる。

 

「ピンクダイヤモンドってのは…そんなにも希少価値が高い宝石なのか?」

 

「ピンクダイヤモンドはね、産出量がとても少ないダイヤモンドなのだ」

 

世界全体のピンクダイヤモンド生産量の約90%を占めるのはオーストラリアである。

 

その国のアーガイル鉱山が閉鎖するという話が希少価値をさらに高くしているようだ。

 

ホワイトダイヤより産出量が少なく、流通量も少ないので宝石の中でも希少性が高い。

 

その希少性から身につけた人に幸せをもたらすとさえ言われる宝石であった。

 

「石の純度はどんなものだった?」

 

「明るさも色も申し分ないほどのファンシーピンクの最高位ファンシーヴィヴィッドだ」

 

それに透き通る程の透明度を見つめるニコラスでさえ、もはや言葉も出ない程の美しさ。

 

ピンクダイヤは透明度の高さにカラットが加わって買取価格が決まる。

 

世界一の大きさを誇るダイヤモンドと同じ大きさなら、その取引額は天文学的数字となろう。

 

「で、これは売れるのか?」

 

「…残念だが、これは普通の宝石を買い取ってくれるような店で売れるような宝石ではない」

 

「どういうことだ?」

 

「この宝石は…地球に存在している事そのものが奇跡だ。値がつけられる宝石ではない…」

 

この宝石が世界に知られたら地球の宝石の歴史を塗り替える宝石となるのは間違いないだろう。

 

「どうにかして売ることは出来ないのか?」

 

「この宝石に値をつけるとしたら…もはやオークションに出品するより他にない」

 

世界の頂点に君臨する大富豪達ならば歴史に残る宝石に値を付けてくれるという。

 

「俺はオークションの世界には疎い…悪いが協力してはもらえないか?お礼はする」

 

「金には困っていないが…君に恩を売っておくのも面白い。いいだろう、私が手配しよう」

 

悪魔が持ち込んだ宝石はこの世界でその価値が試される事となるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

宝石は時に魔性の石とも呼ばれる事がある。

 

堕天使の長であり、魔界において王の中の王と呼ばれる大魔王ルシファーとも縁が深い。

 

彼を象徴する宝石が存在しており、それがエメラルドの宝石。

 

ルシファーは地獄に落とされる前は唯一神の右側に座することが出来た最高位の天使。

 

最高位天使から最高位堕天使となったルシファーが被っていた王冠こそがエメラルドの王冠。

 

叡智を象徴する石とも呼ばれ、宇宙の叡智にアクセスする力を与えるという話もある。

 

夢や願いを実現する為の勇気や、行動力をもたらして守る力を持つと信じられてきた宝石だ。

 

宝石とは人間の心を深く魅了し、惑わしてしまう()()()宿()()()であった。

 

 

スイスのオークション会場は異常な熱気に包まれている。

 

地球に存在している事が奇跡と呼ばれる宝石がオークションにかけられようとしていたからだ。

 

司会進行人の上にあるモニターにはオークションにかけられる悪魔の宝石が映し出される。

 

会場内がどよめきと歓声が埋め尽くし、悪魔の如く美しい宝石に魅了されていく。

 

スタート価格は驚愕の10億ドルからの開始となる。

 

1ドル100円で計算すれば1000億円であり、会場はどよめきながら静寂に包まれる。

 

目の前に1000億円以上の売り物が並んでいたら静まり返りもしよう。

 

アメリカのB2ステルス爆撃機でさえ1機20億ドルの世界なのだ。

 

それでも世界の頂点を目指す事が出来る大富豪達は怯まず、買値を釣り上げていく。

 

12億ドル、15億ドル、20億ドル、25億ドル、30億ドル…。

 

悪魔の魔性に取り憑かれてしまったかのようにして金銭感覚が麻痺していく。

 

ついには50億ドルの値がついてしまうようだ。

 

それでも世界のエネルギー資源を独占している中東の王族達は怯まない。

 

60億ドル、70億ドル、75億ドル…。

 

もはや正気を失いかねない世界の金がオークション会場で渦巻いている。

 

ついには100億ドルに達し、日本円にして一兆円を超える価格が提示されてしまう。

 

この価格を提示したのはサウジアラビアの国王となる人物。

 

総資産一兆6000億ドルを持つと言われている人物だ。

 

100億ドルが示されてからは会場は静まりかえっている。

 

もはや落札は決まったかのようであったが、一人の男が手を上げて買値を言う。

 

1000億ドルと言った言葉によって会場がどよめき、静寂に包まれていく。

 

それは日本円にして10兆円を超える金であるのだから無理もない。

 

その人物は世界の富の半分を持っていると言われる巨大金融財閥組織の当主である。

 

米ドルを製造する権利を持つFRBユダヤ系金融機関を傘下に持つ一族の当主として名高い男だ。

 

その一族の持つ総資産は日本円にして()()()()()()()()()()()()とも言われている。

 

巨大金融財閥組織の当主は一族の末永い繁栄を願う気持ちをこの宝石に込め、価格を提示した。

 

これにより落札額は決まり、悪魔の宝石の価値は1000億ドルの値がついて閉幕していく。

 

この1000億ドルの宝石ニュースは世界中に流れていく事になるだろう。

 

世界中の人々から()()()()()と呼ばれる程の価値を世界に示したのであった。

 

 

現在の尚紀はオークションが行われたスイスに来ている。

 

スイスの小規模銀行に訪れ、プライベートバンカーと預金に関する会談を行うようだ。

 

額が額なだけにその取扱いには最新の注意が必要だと横に座るニコラスから促されている。

 

スイス銀行のプライベートバンクに売れた宝石の金を預金する事になるのだ。

 

スイスプライベートバンクとはナンバーズアカウントを開設出来るという意味でのスイス銀行。

 

口座名義は契約者の任意の番号で管理され、名義人が表示されない匿名口座は守秘性が高い。

 

スイスのプライベートバンクは無限責任をもつ個人銀行家がパートナーとして経営している。

 

世界の富豪に愛用される長い伝統と実績は高い守秘義務の規定がある信頼性であろう。

 

口座の顧客身元を知っているのは担当者とごく一部と上層部だけ。

 

口座番号が漏れても、そこから身元を割り出す事は出来ない。

 

これなら10兆円を超える額の金を預けても大丈夫だろう。

 

日本の銀行の守秘性に関しては些か疑うべきところもあったようだ。

 

プライベートバンクで口座を開設するのには1週間~3カ月ぐらいはかかると説明される。

 

このプライベートバンクはニコラスも使っている銀行でもあり、信頼性が高い。

 

銀行の頭取は子供の頃からニコラスは知っており、ニコラスに関する守秘性も守ってくれる者。

 

ニコラスの紹介であればと僅か三日で尚紀は口座を開設する事が出来たようだ。

 

尚紀とニコラスは全ての手続きを済ませ、タクシーに乗り込んでいる。

 

二人を乗せたタクシーは空港へと向かう中、慣れない手続きで苦労した尚紀が喋り始める。

 

「プライベートバンクってのは…預金通帳とキャッシュカードってのはないんだな?」

 

「通常の銀行とは違う。守秘性を高めるため個人資産情報はプライベートバンカーが管理する」

 

尚紀はプライベートバンクに頼んで月次報告書を送ってもらうことにする。

 

インターネットでも確認は出来るが、セキュリティを破られた場合の心配もあるのだろう。

 

そのためアナログな方法を彼は選んだようだ。

 

「何で普通の銀行に預けるんじゃ駄目だったんだ?」

 

「私は大戦以降の新興銀行を信用していないからさ」

 

ビジネス利益を追求するがあまり利用者の守秘性を大事にしてくれないと説明される。

 

「やはり無限責任に属する銀行が信頼出来る」

 

「守秘性が高いのなら悪党でも利用出来るのか?」

 

「その通り。プライベートバンクはね…()()()()()()()()()()()()()()()とも言われるんだ」

 

顧客情報の厳格な秘匿、守秘性は非合法活動や犯罪を含む不正な報酬の受け取りを容易にする。

 

そのため蓄財や脱税にも最適なのだろう。

 

「なるほどね…悪魔の金を預けるのにうってつけの連中ってわけだな」

 

「私の長寿の秘密と付き合ってくれる大切なパートナーだ。やはり銀行は老舗が一番だね」

 

「そんなもんかねぇ…?人間の頃は庶民でしかなかった俺には想像し辛い世界だよ」

 

「大事な金を預けるのならば、その銀行の歴史も信用するに値するかどうかのモノサシさ」

 

「10兆円を超えた額を預けたのはいいが…参照通貨は何を見たらいいんだ?」

 

「ユーロ建ても増えてきているが、やはり世界の主流ファンド等はドル建てになるだろう」

 

「それにしても…何でスイスにまで来て銀行口座を開設しなきゃならなかったんだ?」

 

「スイスは永世中立国…政治も安定しているから世界に余程の事がない限り安心して預けれる」

 

「金の付き合いが長い錬金術師が言うんだから間違いないんだろうな」

 

「これならば日本が破綻しようが大事な金を守る事が出来るというわけさ」

 

「銀行か…世界の中心として必要とされるわけだ」

 

「これから君にもプライベートバンカーの担当者がつく。金の相談は彼と行うといい」

 

「俺は日本語しか喋れないぞ」

 

「スイスの銀行家は世界中の語学に精通している。なにせ取引相手が世界中なのだから」

 

「銀行の窓口が日本にないってのはどうもなぁ」

 

「銀行の営業時間に本人の認証確認をとれば問題はない」

 

スイスからどの国の銀行、どの口座にも電話一本で振り込んでくれるから大丈夫と聞かされる。

 

「探偵事務所の給料振込先とは違う口座も色々作っておくか…1000億ドルの大金だしな」

 

「資産運用の相談はプライベートバンカーが付き合ってくれる。投資も色々考えてみるといい」

 

「投資…か」

 

タクシーの窓から空港が見えてくる中、大金の投資先を決めていく。

 

この大金は大事な家族の新しい道を支援するために使うべき投資だと彼は決めるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「尚紀君が…私の新しい新興宗教のスポンサーになるというのか!?」

 

「お前の新興宗教が宗教法人になれるまでのスポンサーになる。無担保、無利息、無返金でな」

 

帰国して手続き等を終わらせた後、尚紀は再び風見野市の佐倉牧師の教会に訪れている。

 

子供は学校に行っており、妻もパートで仕事中なので現在は尚紀と佐倉牧師の二人だけだ。

 

「一体…その金は何処から出てくるというのだ!?君はただの探偵見習いなのだろう?」

 

疑問はもっともであり、スマホを用いてニュース記事を佐倉牧師に見せてくる。

 

悪魔の宝石のニュース内容が記載されているようだ。

 

「これは風華の人生を守るために使う予定だった俺の宝石だ。あんた達の為に売ってきた」

 

「1……1000億ドル!?」

 

「日本円にして10兆円は超えているな」

 

それを聞かされた佐倉牧師の顔が青くなってしまう。

 

あまりにも現実離れした金の世界に目眩を起こしたようだ。

 

「しかし…それは君と風華ちゃんの未来を作るための金。私達が使っていいものでは…」

 

「…もう風華はいない。生きているのはお前達だけだ」

 

「尚紀君…だが私は……」

 

「あんたは何も言わず俺を受け入れてくれた。今度は…あんたが何も言わずに受け取ってくれ」

 

佐倉牧師は腕を組みながら悩み抜いた後、一つの答えを出す。

 

「尚紀君…もう少しだけ時間をもらえないか?私は自分の可能性をもう少しだけ試してみたい」

 

「だが…それに付き合う家族達の事も考えてみろ」

 

「分かっている。愛する娘や妻が餓死する状態になるなら私の責任だ…そんな末路は望まない」

 

その一言を聞いて安心したのか、握手を求めるように手を差し伸べてくる。

 

「交渉成立だな、佐倉牧師」

 

佐倉牧師は目頭が熱くなり、目を潤ませながら彼の手を両手で握り締めてくれる。

 

「有難う…尚紀君!君のお陰で私達家族の未来は救われた!!家族を代表して礼を言う!!」

 

「以前に俺が渡した名刺はまだ持っているか?」

 

促された佐倉牧師は棚に入れていた名刺を持ってくる。

 

尚紀はトレンチコートに入れてあったセロハンテープを使い、100円硬貨を貼り付ける。

 

「これがあんた達の命綱だ。森を超えてある電話ボックスを使って、いつでも連絡をしてくれ」

 

「これは大金の話だ…妻や娘達にも今は秘密にしておこう。人の口に戸は建てられないからな」

 

「賢い判断だ。あんた達は嫌われ者だが金の匂いがしだしたらどんな奴が現れるか分からない」

 

「この国の悪い風習だな。秘密を守ることの大切さを痛感したよ」

 

二人はお互いに時が来るまで金の話は秘密にしておく事で合意する。

 

他の家族が帰ってこないうちに尚紀は東京に帰る事になるのであった。

 

 

あれから季節は過ぎていき、杏子が中学1年生を迎えた春の頃。

 

尚紀のスマホに一本の電話がくる。

 

「気が変わって直ぐにでも大金の投資が必要になったのか?」

 

スマホの着信ボタンをスライドさせ、電話相手に返事を返したら佐倉牧師だったようだ。

 

「やったぞ尚紀君!ついに私の言葉を聞いてくれる人達が現れた!数えられないぐらいに!!」

 

聞かされた話とは突然過ぎる新興宗教の大成功報告である。

 

(……嫌な予感がするな)

 

あまりにも唐突過ぎるこんな現象を彼はよく知っている。

 

それは魔法少女の願いと呼ばれる()()()()()とあまりにも酷似しているのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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