人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
ロシアのフョードル・ドストエフスキーの著書の中には罪と罰と呼ばれる小説が存在している。
美国織莉子の愛読書であり、嘉嶋尚紀も夏目書房で買って読んだ小説の内容は次の通りだ。
貧しいラスコーリニコフが世のため人のためなら悪行も許されるという独自犯罪理論を構築する。
独自の正義理論を実践するために強欲な金貸しを殺し、奪った金を社会主義に利用しようとした。
しかし殺害現場に偶然居合わせた無関係の人物まで殺害してしまう事態になるのだ。
ラスコーリニコフは罪の意識が増長し、苦悩する人生を歩む事となる。
しかし彼よりも悲惨な境遇を生きる娼婦の娘と出会い、彼女の家族献身を見て心を打たれるのだ。
ラスコーリニコフは娼婦の娘が示した自己犠牲である愛に打たれ、最後には自首する事になる。
……………。
「償いの道に進んだ尚紀さんはこう言ったわ…。責任をとらない正義なんて不正義だと」
償いの道を模索する八雲みたまは地域ボランティアに参加して被災者のために働いている。
地域ボランティアは他県からやってくるボランティアよりも地域にコミットした支援が出来る。
こうした地域ボランティアの存在は日本でも重視されており、積極的に雇用されていたようだ。
みたまは被災した高齢者達のために時間が許す限り買い出し等の高齢者サポートを行ってくれる。
贖罪とは行動で示すものだと尚紀が実践してくれたのをテレビで見た彼女もそれに続くのだ。
「積極的に活動しているけど…君は高校生なんだろ?学校は大丈夫なのかい?」
「はい、私は進級出来るギリギリの登校数で進級出来てますんで大丈夫です」
「そうか…。積極的なのは関心するが、あまり無理はしないようにね」
ボランティア団体の長からそう言われたみたまは今日のボランティア活動を終えて帰路につく。
夕暮れに染まる参京区の道を大東区に向けて帰っていく彼女だが、顔は沈んだまま。
いくらボランティア活動に積極的に参加しようが、彼女が東の者だと分かれば現場は混乱した。
東の者からボランティアなんて受けたくないと拒否してくる高齢者もいたようであった。
「…いくら市の行政が人権の街作りを進めても…現実はそれに追いついてないのね」
全ては自分の願いがキッカケとなり、多くの災禍をこの街に引き起こしたのだと自分を責める。
自責の念は今でも彼女の心を痛めつけ、前向きに生きる気力すら奪おうとしていく。
実はそれ以外にも彼女の心に暗い影を生み出している新たなる社会問題もあったようだ。
「人権宣言の効力は表面的には成立してても…問題なのは東の人々の態度が西側を怒らせるのよ」
神浜テロによって西側を焼いた東の人々は罪人も同然の扱いを受けるだろう。
そのためアパルトヘイト条例のような隔離政策まで生み出されかけたが尚紀の力で止められた。
しかしそれをいいことに、東の人々は増長しているとみたまは語ってくれるのだ。
「東の人はテロの罪と向き合おうとしなくなった…それどころか自分達は被害者だと言い出すわ」
この光景は魔法少女裁判をした時の革命魔法少女達の態度であり、刑務所内でも見られる現象。
自分は犠牲者だのと被害者を気取る者は自分の罪には決して意識を向けない。
他責の安心感に浸りたいだけの愚か者であり、自分に意識を向けられない無責任主義者なのだ。
表面的には仲良くするフリをせざるを得ない西側の人々は、そんな東の者達に不満を募らせる。
「自分の罪と向かい合うのは本当に不快だし…苦しいわ。それでも…逃げるわけにはいかないの」
みたまのように東の者としてテロと向き合い、ボランティアに参加してくれる者は極めて少ない。
人は分かり易い悪を求める偏見生物であるため、西の人々は東の無責任主義者しか見えていない。
だからこそ今の神浜市は新たなる火種がいつ燃え上るか分からない状況のようであった。
「罪には罰が必要…だけどその罰を回避する事が出来た罪人達は…こうも軽薄になっていくのね」
東住人として恥ずかしい気持ちでいっぱいな彼女は大きく溜息をついてしまう。
そんな時、顔を俯けていたら前の道から小さな猫達が歩いて来るのが見えたようだ。
「あら?貴方達はもしかして…ネコマタちゃんとケットシーちゃん?」
みたまの前にやってきたのは尚紀の飼い猫であり仲魔を務める悪魔達であったようだ。
ニャ―(あら、みたまじゃない?こんなところで出会うなんて奇遇ね)
ニャー(こっち来るニャ。みたまは魔法少女だし、オイラ達の声は悪魔化しないと分からんニャ)
「ついて来いって言ってるの?分かったわ」
みたまはネコマタ達の後ろをついていく。
彼女達が訪れたのは誰もいない参京区の公園であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「そう……尚紀さん達は東京に出張中なのね。留守番を任されて大丈夫なの?」
「大丈夫だニャ。オイラ達は悪魔化出来なかった頃だって、二匹だけで過ごしてたし」
「冷蔵庫の中身は一週間分用意してくれてるから問題ないわ」
ブランコに座るみたまに向けて左右のブランコに座る猫悪魔達が語り掛けてくる。
みたまの事が気になった二匹の悪魔達は何をしていたのかを聞いてみる。
少し顔を俯けながらも彼女は語ってくれる。
「そう…尚紀と同じく罪の償いのための活動を送っているのね。みたまは人間が出来ているわ」
「立派だと思うニャ。だけど…背負い込み過ぎると尚紀みたいに追い詰められていくニャ」
「尚紀さんは…東の魔法少女達を殺戮したわ。その償いをしてくれたからこそ今があるの」
「尚紀の背中に続きたいというわけね…。尚紀もね…罪の償い方を悩み抜いてきたわ…」
ネコマタは尚紀がどのようにして罪と向かい合い、償いをしようと考えたのかを教えてくれる。
「彼はね…罪には罰を与えるでは問題の解決にならないと考えたのよ」
「どういう事なの…?どうして罪人に罰を与えても被害者の心は救われないと考えたの?」
「法が罰を与えたとしても公平に裁いただけ。
「断罪者として間違いを犯した尚紀さんだからこそ…その部分に気がつけたのね…」
尚紀の考えこそが今の東社会の状況である。
皆が他責の安心感に浸るため償いも生まれないし、自分達の意識改革すら起こらない。
そんな東住人達に不満を高めていくのが今の西側住民達なのだ。
「処分を受ける事は償いのチャンスを貰っただけ。だからこそ自分の罪と向き合う必要があるわ」
罪を償うためにはやった事をしっかりと反省しなければならない。
反省とは考える事であり、後悔する事ではない。
罪を犯した時の己と向き合い、自問自答しながら改善方法を見つける事が肝心だと語ってくれる。
「反省をするという事は二度と同じ過ちをしない事よ。だけど完璧な人間になろうとはしないで」
「そうニャ!みたまも人間なんだし、過ちを繰り返す時もあるニャ。大切なのは忘れない事ニャ」
「大事な事ね…私もね…再び憎しみに囚われた時がある。それを止めてくれたのが令ちゃんなの」
「彼女の気持ちを大切にしなさい。令のようにして同じ過ちを繰り返そうとする人を止めるのよ」
「ええ……誓うわ」
重い空気となってしまったみたまに声を掛け辛いのか、ネコマタとケットシーも黙ってしまう。
暫く沈黙が続いていたが、悩みを打ち明けたいのかみたまがこんな話を語ってくる。
「私はね…償いの道を模索しながらだけど…誰に向けて償いをしたいのかを考えてしまうの」
良心があれば自分が傷つけてしまった人や悪事を働いた事に反省して償いたいと考えるものだ。
自戒のために一生その行為を行わないと誓っても、誰に向けた誓いなのかを迷ってしまう。
「私が傷つけた人達の為の償いだけじゃない…
「みたま…まさかとは思うけど、これからの命は贖罪のために不幸になるべきだと考えてるの?」
「ダメニャ!みたまだって心ある人間だニャ!不幸のまま終わる贖罪だなんて…自己満だニャ!」
「ケットシーの言う通りよ。悲劇のヒロインを気取らないで…自分への償いなんて愚かな事よ」
「…私はどうすればいいの?誰のために償えばいいの…?私のこれからの命は…何のために…」
自責の念によって今にも泣きそうな彼女のために言える言葉がある。
指で眼鏡を押し上げたネコマタは彼女のために尚紀が考え出した贖罪の結論を語ってくれるのだ。
「報復という極端な正義を実行したとしても……誰かのために全うに生きなさい」
「ネコマタちゃん……?」
「自責に縛られるあまり不幸になりたいなんて考えないで。心を軽くしたいだけの自傷行為よ」
「尚紀は…自分で自分を不幸にしたら自分が不幸になった原因を周りに擦り付けると言ったニャ」
「贖罪のために不幸になりたいだなんて言い訳よ。被害者が加害者に求めるべき願いとはね……」
――今度こそ
「だからこそ尚紀はそれを実践したニャ。魔法少女と出会っても胸を張れる男になりたいって」
「今の尚紀は貴女にとってどう見える?自分は悪人だから関わるなと根暗に成り果てた男なの?」
それを問われたみたまは頬を染めてしまう。
神浜人権宣言を叫んでくれた時の彼の姿を思い出した彼女だからこそ自分の気持ちを言えるのだ。
「いいえ、違うわ。尚紀さんは悪人なんかじゃない…魔法少女に光を運んでくれる人になったわ」
――そんな尚紀さんだからこそ…心の底から愛する事が出来る男の人だって…私は感じられたの。
……………。
目が点になってしまった猫悪魔達に気が付いた彼女は自分が何を言ったのかを思い出す。
「あの……その……今言った言葉は……ええと……」
顔から火が噴き上がる程にまで真っ赤になった彼女がモジモジした態度を見せてくる。
慌てて立ち上がった彼女がそそくさと歩き去っていく後ろ姿を茫然と眺める猫悪魔達であった。
そんな中、みたまの姿をビルの屋上から眺めていた死の悪魔が水名区方面に顔を向ける。
「この魔力は…かつての同僚の一体までこの街に現れたか。不味いな…あの女は危険な悪魔だ」
マスクで表情は伺えないながらも危険な存在に向けて危機感を募らせていく。
多くの死者を出したこの街は魔獣だけでなく悪魔さえも引き寄せる魔都となっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
今日もみたまは社会福祉協議会が開設した災害ボランティアセンターの窓口へと向かって行く。
社会福祉協議会の建物内にあるボランティアセンターに行くと知っている人物を見かけたようだ。
「あれ?みたまさんも災害ボランティアに参加してたんだ?」
「あら?貴方は壮月君じゃない?バタバタと忙しい毎日だから最近は出会えなかったわねぇ」
みたまが見かけた人物とは十七夜の弟である和泉壮月。
小さな頃から八雲姉妹とも遊んでくれた人物であり、もう直ぐ高校一年生の少年のようだ。
「貴方もボランティアに参加してくれるの?その…東の者だと分かる学生服まで着て…?」
それを問われた彼は顔を俯けてしまうが、それでも言いたい気持ちがあるのか語ってくれる。
「俺さ…人権宣言のお陰で差別が消えてくれたのは嬉しいけど、今の東の状況が嫌いなんだ」
「壮月君……」
「どいつもこいつもテロをやらかした罪を忘れて過ごしてる。だから西の人達が怒るんだ」
彼がわざと東の者だと分かる姿で西側の災害復興に協力してくれるのは東の罪を清算するため。
自分達がやった事を忘れない姿こそが償いであり、責任から逃げない姿こそが清算だと言うのだ。
「流石は十七夜の弟君ね…立派だわ。ちょっと前までは小さかったのにこんなに大きくなって♪」
嬉しいのかみたまは壮月の背中をバンバンと叩いて喜びの表情を浮かべてくれる。
しかし彼の表情は照れた表情を浮かべずにこんな話を持ち出してくるのだ。
「…俺がこうしてボランティアをやる時間を作れるのも…姉さんのお陰さ」
彼は高校進学を諦めて家族の生活費のために就職しようかと考えていた時期がある。
しかし多額の生活費を誰かから送られるようになったため、彼は高校進学が出来るようになった。
「うちは多額の金を振り込んでくれる親戚なんていない。だからあの金は姉さんのお陰だと思う」
「十七夜……」
「姉さんは縁切りの手紙を送ってきてまで何処かで働いてくれてる。俺達はそう考えてるんだ…」
大事な姉が帰ってこない現実を寂しそうに語ってくれるが、それでも彼は十七夜の弟。
姉の生き方に恥じない姿を見せたいからこそボランティアに参加する決意を固めてくれたのだ。
「姉さんだって家族の為に身を粉にした献身を与えてくれる…だから俺も誰かへの献身がしたい」
「壮月君…貴方の中にも十七夜の血が流れている証拠よ。今の壮月君を見れば十七夜も喜ぶわ」
「姉さんが安心して帰って来られる街にしたい…そのためなら俺は周りから嫌われてでも戦える」
――偽りの自分を演じて好かれるよりも、
それだけを言い残した壮月が歩き去っていく。
そんな彼の背中に目を向ける彼女は目を見開いたまま固まってしまっている。
「偽りの自分を演じて好かれるよりも…ありのままの自分でいて憎まれた方が…遥かにマシ…」
彼から言われた言葉を噛み締めながらも今日のボランティア活動に専念していく。
帰る時間になった頃、彼女は遠回りの帰り道を選びながら今までの自分を振り返るようだ。
「私は周りから傷つけられるのが怖くて…偽りの自分を演じて周りから好かれようとしてきた…」
調整屋の八雲みたまは、魔法少女弄りが大好きなのほほん屋さん。
可愛い女の子をからかったり、色々なイベントを企画しては面白おかしく周りを引っ張り回す。
困ったお姉さんだけど皆を楽しませてくれる明るい人物なのだと自分を偽ってきた日々。
「偽りの自分を演じて周りから好かれたって…神浜への憎しみが消えた事なんてなかった…」
ありのままの自分は抑圧され続け、膨らまし続けた風船のようになっていく。
最後には憎しみの風船が爆発した光景こそが神浜テロの惨劇だった。
「どうして本当の自分と向き合えなかったの…?周りから嫌われるのが怖かったの…?」
壮月のように周りに合わさず自分と向き合い、戦っていく覚悟があったならと後悔していく。
しかし反省とは後悔をする事などではない。
過去ではなく未来を見ていく人生こそが償いなのだ。
「自分と向き合い…自分を犠牲にしてでも戦っていける。私も…壮月君のようになりたいわ…」
街や家族の為に自己犠牲を支払ってでも働く男の愛に心を打たれた八雲みたまは決意する。
二度と悲劇を起こさない人生を選び、悲劇が起こる原因と向かい合いながら戦っていく。
それこそが自分の贖罪であり、償いの道。
「私も壮月君のように自己犠牲を支払うわ。たとえ見返りも無くても……私は戦う力が欲しい」
力の無い調整屋だから何もせず、周りに合わせて生きていく自堕落な自分を彼女は捨て去る。
力の有無ではない、自分がどんな事を望んでいるのかと向き合い、それを実行する者となりたい。
そう決断出来たみたまの姿は弱い調整屋としての偽りの衣を脱ぎ捨てたかのように見えた。
「
<<それが償いの答えのようだな?>>
路地裏から出てきた男に視線を向ける。
現れたのは彼女に疑問を投げかけてきた悪魔であり、その表情を周りに悟らせない者だ。
彼に向き直ってくれたみたまは力強い眼差しを浮かべながら償いの答えを彼に伝えてくれる。
「私の出した償いの答えはね……誰かのために生きたい、誰かのために尽くしたいよ」
――誰かのために生きてこそ…私は罪人としての自分に価値を見出せる事が出来る。
――
それを聞けた死の悪魔は頷いてくれる。
「よくぞ自分だけの答えを見出せた。その答えは誰のものでもない、君だけの答えなのだ」
「不思議な悪魔ね…こんな私なんかを気にしてくれるだなんて。だけど…お陰で迷いは解けたわ」
「しかし、私は言葉だけを信じる者ではない。言葉に出した以上は実践しなければならない」
彼が顔を横に向ければ、遠くに見えたのは悪魔の異界が広がっている光景である。
「私に見せてみろ。誰かのために生き、誰かのために尽くすという…愛の力というものをな」
「……分かったわ」
覚悟を決めたみたまは死の悪魔と共に現場に駆けていく。
たとえ魔法少女としては弱くとも、償いの答えを出せた今の自分の覚悟は誰よりも強い。
そう信じるみたまは命を懸けた戦いに赴くのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ヒィィィーーッッ!!怖い…怖い!!化け物が襲ってくるよーーッッ!!」
「お願いです…この子だけは…この子だけはお助け下さいッッ!!!」
異界の廃ビルの中で逃げ惑っていた子供と母親は悪魔に追い詰められてしまう。
蹲って助けを懇願しているのは神浜テロの追悼施設に現れた親子のようだ。
「もう逃げないの?面白くないわねー…母親の方を引き裂いたらもっと楽しめるかしら?」
宙に浮かぶ異形の女悪魔こそ、死の悪魔と共にデビルサマナーに仕えていた夜魔の女王。
サマナーが死んだ事によって自由となれたようだがMAG不足に陥っている。
だからこそ人間や魔法少女を襲い、感情エネルギーを蓄えながら生きてきたようだ。
【クイーンメイヴ】
ケルト伝承におけるコノート王アリルの妃でありメイヴの女王。
その権威は時として夫である王を超える女傑であり、英雄クーフーリンと長く争った者だ。
しかしアルスター遠征に失敗した時の退却途上で命を落とす事になる。
後に夢を支配する妖精の女王マブと同一視され、時に悪夢を見せる夢魔の女王とも考えられた。
「私は女に興味は無いから無残に引き裂いてあげる。男の子の方は悪夢の世界で絞ってあげるわ」
ピンク色のふさふさした毛が頭部だけでなく首や腕にもある異形の女悪魔の姿。
黄緑色を基調として青色の模様が入った仮面とタイツを纏い、仮面の下で愉悦の笑みを浮かべる。
仮面の目に当たる箇所は赤い棒のようになっている等、奇抜な風貌をした邪悪な悪魔であった。
「さぁ、死にたくなければその女から離れることね、坊や」
右手を掲げて放とうとするのは風魔法であり、カマイタチの刃で母親を切り刻もうとする。
だが子供は母親を守ろうとしがみつき離れようとしない。
「一緒に死にたいらしいわね?ならいいわ…小さ過ぎる男の子だと絞り甲斐もないからね!」
カマイタチが放たれようとした時、迫ってくる魔力に気が付き後ろに振り向く。
「やめなさい!!」
現れたのは魔法少女姿になった八雲みたま。
手には魔法武器であるシルクに似た布が握られているが悪魔相手では役に立たないやもしれない。
「魔法少女が現れてくれるとはねぇ。人間よりもMAGを絞れるソウルジェムを食べたかったのよ」
狙いをみたまに変えたため後ろの親子達は命を取り留める事が出来たようだ。
「貴女は…あの時の子なの!?」
「あの時のお姉ちゃん…?どうして僕達を助けてくれるの…?お父さんを殺した東の人なのに…」
「確かに私は…テロを引き起こした東住人よ。だからこそ私は…東の者として貴女達を救いたい」
「そんなの勝手だよ!お父さんを殺した連中の仲間のくせに…どうしていい人ぶるのさ!?」
「それが私の贖罪だからよ。東西差別を憎んだ私だからこそ同じ過ちを繰り返したくはないわ!」
「随分と嫌われ者のようね?まぁいいわ…貴女のソウルジェムを食べた後で後ろの連中を頂くわ」
「それは出来るかしら?後ろを見て見たらどうなの?」
「何ですって…?」
後ろに視線を向ければ親子の姿は消えている。
「貴様…伏兵を潜ませていたのね!?よくも私の獲物をかすめ取る真似をしてくれたな!」
「さぁ…かかってきなさいよ!戦う力も無い調整屋を相手に臆病風に吹かれないならね!」
「私を挑発するとは…いい度胸ね!!お望み通りバラバラにしてあげるわ!!」
激昂したクイーンメイヴが非力な魔法少女を相手に襲い掛かっていく。
その頃、親子を両腕で抱えた死の悪魔は異界から脱出するために走り続けている。
「あの娘はクイーンメイヴに殺されるだろう…。彼女の犠牲を無駄にせず生きる事だな」
「私達のために…命を懸けてまで助けてくれるだなんて…」
「僕…分からないよ。テロを引き起こしてお父さんを殺した人が…どうして僕達を助けるの?」
「それはな…坊や。あの娘の自己犠牲を示すための道でもあるからさ」
「お姉ちゃんが僕達に示してくれる…自己犠牲…?」
「
死の悪魔が異界を脱出した頃、余りにも一方的な戦いによってみたまはズタボロな姿を晒す。
魔力を送り込んでソウルジェムを破壊する力を秘めたシルクに似た布は魔法少女殺しの道具。
魔法少女ではない悪魔に通じるはずがなかったようだ。
「ぐっ…うぅ……まだよ…まだ私は……戦えるわ……」
血みどろに成り果てようとも両足に力を込めて立ち上がろうとしていく。
彼女の揺るぎない闘志が気になったのか、クイーンメイヴは質問してくる。
「話にもならない力なのに…どうして私に戦いを挑んできたわけ?自殺志願者にしか思えないわ」
「傍から見れば……そうなんでしょうね。だけどね…私はもう…自分を隠す生き方はしないわ…」
逃げない意思を示すかのようにして立ち上がる彼女だが満身創痍であり戦う余力はないだろう。
「私は償いを見出せたわ…。私の償いの道こそが…誰かのために命を尽くす……愛なのよ!!」
「やはり自殺志願者だったようね。いいでしょう…そこまで死にたいというなら死になさい!!」
片手に冷気を生み出したクイーンメイヴが仮面の隙間から息を吹きかける。
吹きかけられた息によって冷気が形になりながら射出され、氷の槍と化す。
次の瞬間、みたまの体は壁に縫い付けられており
「ガハッ……ッッ!!!」
心臓に突き刺さった氷の槍の一撃は命に届いており、意識が朦朧としていく。
ソウルジェムも急激な濁りを生んでいき命の終わりが近い事を周りに示す。
「円環のコトワリに導かれる末路にはならないわ。だって貴女のジェムは私のおやつだから♪」
憎しみの感情によって死をばら撒いた女が死に追いつかれ、命を刈り取られる日が訪れる。
(自業自得よ…ね…。でも…悔いは無い…私は…誰かを憎まず…誰かに…尽くせた…か…ら……)
償いの為に自己犠牲である愛を掲げた女が死ぬ時がきた。
しかしそれに待ったをかけた存在こそ、同じ死なのであった。
「これは!?」
みたまが貼り付けにされた廃ビルの壁が死神の刃によって切り裂かれていく。
四角く切り取られた壁が外に向けて倒れ込み、バラバラになっていくのだ。
縫い付けられた状態から解放されたみたまを受け止めた存在こそ、擬人化された死の悪魔。
「お前はまさか……どうしてこの街にいるのよ!?」
擬態姿の悪魔であるが元同僚ともいえる悪魔の正体についてはクイーンメイヴなら分かる。
そして彼の強さも同じサマナーに使役された者として知っている者だった。
「私と戦うか?クイーンメイヴ」
みたまを抱きかかえた悪魔の体から強大な魔力が噴き上がる。
魔人の如く死を与える事に秀でた悪霊と戦うのは得策ではないと考えた彼女は姿を消していった。
「君の覚悟…見届けさせてもらった。まだ死に追いつかれる必要はない…君の道はこれからだ」
みたまの遺体を抱きかかえたまま死の悪魔は去っていく。
ソウルジェムは今にも砕けそうだが、穢れのMAGを体全体で吸いながら延命処置を施し続ける。
死の悪魔が向かう先とは魔法少女を悪魔に変える施術が行われる危険な場所。
八雲みたまが悪魔達と関わる事が出来た業魔殿であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちょこまかと飛んで逃げるんじゃないわよ!この鳥女共がーーッッ!!」
深夜の水名神社の境内で女悪魔達と戦うのはレナとかえでとももこである。
彼女達は人間を誘導して悪夢に引き摺り込んで感情を貪る悪魔達を見つけたために戦闘となる。
空を自由自在に飛び交いながら主となったクイーンメイヴを守護する鳥悪魔は厄介であった。
【コカクチョウ】
中国において少女を攫い自分の娘とする鳥の悪魔であり、攫われた少女は次世代の姑獲鳥となる。
羽毛を脱ぎ着することにより人間に変身することも可能な悪魔であった。
「邪魔をするな魔法少女共!アタシ達は親を失った哀れな少女の保護者になりたいだけよ!」
「悪いようには扱わないわよ!なにせ、その少女達は未来の私達になるために育つんだから!」
「ふざけるな!親を失った悲しみにつけこんで人攫いしようとする女がまともな親になれるか!」
大剣に炎を纏わせたももこが夜空に向けてマハラギを放ち、無数の火球が飛んでいく。
しかし夜空を飛び交う半人半鳥の鳥悪魔は素早く、そして炎にも丈夫な体をもつため効果は薄い。
「今度はこっちの番よ!」
「地面に転んで寝ているアタシ達の子供に当てるんじゃないわよ!」
「分かってるわよ!私はアンタみたいなノーコンじゃないわ!」
紫の翼を両腕にもつ鳥悪魔も同じく翼を羽ばたかせながらマハラギを放ってくる。
地面に倒れ込んでいる人間達を守りながらの戦いになるももこ達は防戦を強いられていく。
「ダメだよももこちゃん!この子達を避難させないとまともに戦えないよぉ!」
「アタシが隙を作る!レナとかえではどうにかして倒れ込んでいる子供達を避難させてくれ!」
「それだとアンタが囲まれてボコられるじゃない!レナはももこだって見捨てないわよ!」
空から放たれる炎魔法に武器を叩きつけながら攻撃を捌く魔法少女達だが相手は鳥だけではない。
「あ…あれ…?」
突然眠気が酷くなり、レナは片膝をついてしまう。
それはももこ達も同じであり眠気でダウンしないよう歯を食いしばりながら耐えようとする。
「私達の邪魔をしようだなんて、夕方頃に現れた魔法少女と同じく悪い子達ね」
夢魔の女王であるクイーンメイヴが水名神社の屋根の上から下りてきて迫ってくる。
ももこ達は全体に睡眠を与える魔法のドルミナーにかけられているようだ。
「夕方頃に現れた…魔法少女だと……?」
眠気に耐えるためにももこは左手を刃に押し当て、手を切り裂きながら耐えようとしている。
そんな彼女の元にまでやってきたクイーンメイヴが彼女の首を掴み持ち上げてしまう。
「そうよ。銀髪の長髪をした青い燕尾服を纏う娘だったけど…私が殺しておいたわ」
そう言われたももこの心に眠気も吹き飛ぶ程の衝撃が迸っていく。
「ま…まさか…お前が殺した魔法少女は……みたまなのかぁ!!?」
「名前までは聞いてないけど非力な女だったわ。戦う力すらないのに挑んできた愚かな娘ね」
「間違いない…調整屋だ…。貴様……よくも……よくもみたまを殺したなぁ!!!」
「もしかして貴女の友達だった?なら安心しなさい、貴女もあの世に導いてあげるから」
怒り狂ったももこが大剣を振り上げようとするが、さらにドルミナーをかけられる。
抗い難い睡魔に襲われ続ける彼女だが、目に涙を浮かべながらも必死に抗おうと戦ってくれる。
上空のコカクチョウ達も実力が違う悪魔に挑んできた馬鹿者共を嘲笑う光景が広がっているのだ。
そんな現場に向けて歩いて来る者がいる。
「仇さえ討てない苦しみを忘れさせてあげるわ。私の夢の世界で永遠にその子と戯れていなさい」
クイーンメイヴの仮面の目が邪悪な光を放ち、『永眠の誘い』を放とうとしてくる。
睡眠状態の者達を即死させる魔法であるが、クイーンメイヴの顔が上空に向けられていく。
「あれはまさか!?逃げなさい貴女達!!」
クイーンメイヴの叫びによって自分達の上空に何が構築されているのかにようやく気が付く。
コカクチョウ達の上にはサンスクリット語で描かれた呪殺の魔法陣が描かれていたのだ。
<<アァァァァーーーッッ!!?>>
マハムドオンの全体即死魔法によって呪殺耐性が無いコカクチョウ達が即死して消え去る。
それと同時にクイーンメイヴの側面から飛んでくる飛来物が迫っていたのだ。
「ギャァァァーーーッッ!!?」
ももこを掴んでいた右腕を切り落とされたクイーンメイヴが悲鳴を上げながら後ずさっていく。
<<勝手に私を殺さないでくれるかしら?>>
親友の声をもう一度聞けたももこが後ろの鳥居に顔を向ける。
鳥居の向こう側にある石段を登ってくる者を見たももこは驚きの表情を浮かべるのだ。
「調整屋……?お前……その姿は何だよ……?」
漆黒のロングドレスを纏う者だが所々が破けており、スカートを広げる金具が剥き出しの姿。
頭部には淑女が纏う喪服のトーク帽のようなものを被り、顔を黒いベールで隠す。
ロングドレスの下に着ている衣服の左胸部分は破けており、胸を隠すようにして
左手には夜闇を照らすランタンの灯りが持たれており、明かりの無い境内を照らしてくれる。
彼女の異質さを表すのは両腕や胸に纏う鳥籠を模した矛の飾りだろう。
まるでその姿は死に憑りつかれたまま永遠に繋がれる矛の檻の少女を表す姿であった。
「貴様…生きていたのか!?それにこの魔力はまさか…
「その通りよ。私の死は擬人化された死によって救われ、新しい命を与えてくれたというわけよ」
【マカーブル】
ダンス・マカブル、ダンス・オブ・デス等と表現される踊る骸骨姿に擬人化された死の悪魔。
欧州で流行した死の寓話や絵画・彫刻群で表され、戦乱やペスト等の伝染病の恐怖を象徴する。
死の恐怖と生への執着に取り憑かれた人々が集団ヒステリーに陥り踊り狂う姿を表す存在だ。
マカーブルは人間を一瞬にして死に導く強力な呪力を持っており死神とも同一視される。
白い骸骨が描かれた黒い道化服を着て、長柄の大鎌を振り回す。
彼の鎌は人間の霊魂を刈るためにあったようだ。
「おかしなものよね?私の死を死の悪魔が救ってくれるだなんて最高のジョークだと思わない?」
右側から飛んできた死神の大鎌を右手で受け止め、大鎌の石突きを地面に突き立てる。
帽子の黒いベールの奥には悪魔を表す真紅の瞳が光っており、敵をからかう態度を向けてくる。
その姿は自分を偽っていた頃のみたまのようであり人をからかう役目を背負う道化師にも思えた。
「調整屋……大丈夫なのか?」
「ええ、私は大丈夫よ。それよりも地面に倒れ込んでいる子供達を連れて逃げなさい」
「だけど!調整屋だけを戦わせるわけにも……」
「私を信じて、ももこ。
「みたま……分かった!調整屋の事を信じるよ!」
ドルミナーが解かれた魔法少女達が両肩に少女達を背負いながらも水名神社から逃げて行く。
向かい合う悪魔達は最後の会話を交わした後、殺し合う事になるだろう。
「魔法少女が悪魔と一体化するなんてね。マカーブルの力の全てを発揮する前に殺してみせる!」
「私はね、貴女と同じく罪人なの。もしもやり直すつもりがあるなら…私は貴女を殺さないわ」
「やり直す?馬鹿を言わないで!弱者を喰らうのが強者の権利!それこそが自然の法則よ!!」
「悪魔らしい意見だわ。なら、私も悪魔となった者として…自然の掟に従わせてもらうわ」
右手に持つ死神の大鎌に向けてコカクチョウ達の魂が吸い込まれていく。
魂を刈り取った武器が邪悪な光を放ち、右手から離れて浮遊しながら高速回転していく。
「さぁ……死と踊りましょう。苦しみなんて一瞬よ」
死の大鎌が境内を高速で回転しながら飛び、死の舞踏を踊るためのリングを生み出す。
死の悪霊となったみたまの体が黒い霧を生み出しながら消えてしまう。
「私を殺せると思ってるわけ!?その思い上がりに報いを与えてあげるわ!!」
残った左手を天に掲げ、全体に轟雷を放つマハジオダインを放とうとしてくる。
しかしクイーンメイヴの周囲には刈り取ったコカクチョウ達の魂が生み出され取り囲んでくる。
<<大丈夫、直ぐに終わるわ>>
背後から現れたみたまが左手に持つランタンをクイーンメイヴの頭上に放り投げる。
燃え上る程の灯りを生み出すランタンに目掛けて死者達の魂が集結していき、極大の爆発を生む。
「バカなァァァァーーッッ!!?」
クイーンメイヴの体が魂の爆発によって崩壊しながらMAGの光と化していく。
魂を爆発させるその光景はまるでソウルジェムに魔力を送り込んで殺す光景とも酷似している。
これこそが魂を扱ってきた八雲みたまが放つ死の舞踏、『
異界が解け、周囲は元の水名神社に戻ってくれる。
子供達を安全な場所まで避難させられたももこ達が駆け付けてくれたようだ。
「馬鹿野郎!なんで独りで悪魔と戦ったりするんだよ!?力が無い調整屋のくせに!」
涙を流しながら怒ってくるももこであるが、その顔には心底安堵した顔つきを浮かべてくれる。
「でも良かった…生きててくれて…本当に良かったよぉぉぉ……」
泣きながらみたまに抱きつく彼女を支えるようにして両腕をももこの背中に回してくれる。
「ごめんなさい…ももこ。こればかりは私だけの思い…だからこそ貫きたかったの」
「本当に…みたまさんなのよね?本当に悪魔になっちゃったの…?」
「ふゆぅ…かなえさんにメルちゃん、それに十七夜さんに令さんにみたまさんまで悪魔なんだね」
「まったくどうかしてるわよ。こんなに景気よく悪魔になれるなんて…まるでバーゲンセールよ」
「フフッ♪悪魔のバーゲンセールを企画したらヴィクトル叔父様も喜んでくれるかしらぁ~?」
「ええっ!?あの変態吸血鬼にそんな企画を提案したら…レナ達全員悪魔合体のモルモットよ!」
「ふみゃみゃ!!わ…私は悪魔になるのは勘弁だからね!御霊合体でさえ怖かったのに!!」
泣きじゃくるももこの後ろでは慌てふためくレナとかえでがいてくれる。
悪魔となっても変わらぬ態度で接してくれる仲間達を見つめるみたまは心の底から喜んでくれた。
(悪魔になった私を恐れない皆がいる…。十七夜…悪魔に成り果てても帰れる場所ならあるわ…)
夜空を見上げる彼女の脳裏に向けて自分と融合してくれた悪魔の念話が響いてくる。
<悪魔合体を選んだ私の意識は時期に魔界に帰るだろう。魔界で見守っているぞ…
<有難う…マカーブル。貴方が与えてくれたこの命…絶対に無駄にはしないわ>
夜空を見上げる八雲みたまは祈る事が許されなくなった神に向けてではなく、悪魔として願う。
いつか必ず皆が帰ってきてくれて楽しかった頃に戻れるのだと信じて生きていくのであった。
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その後の八雲みたまは依然と変わらない態度で魔法少女達と接してくれる姿を見せてくれる。
相変わらず少女達をからかう態度を向けてくるが、今ではこの姿に偽りを感じる事は無い。
周りの人々が喜んでくれるのを嬉しく思うからこそ道化師のように愛嬌を振りまくのだ。
しかし道化師とはヨーロッパにおいては
タロットカードの死神として道化師の姿が描かれており、道化師のようなピエロは恐怖の象徴だ。
神浜の差別を憎み、死をばら撒いた女は死の悪魔に憑りつかれ命を繋がれる者となった。
今の彼女は死を司る魔人の如き存在であり、彼女の歩く道には死が吹き荒れる事になるだろう。
それでも彼女はいたずらに死をばら撒く女になる事を拒絶する者。
誰かの命を奪うのは、そうしてまで誰かを救いたいと思ってしまう気持ちから生まれるものだ。
善行になるのなら犯罪行為も許されるという独自犯罪理論を唱えた者こそ小説の罪と罰の主人公。
彼女もまたラスコーリニコフと同じく世のため人の為と称して悪魔を殺していくのだろう。
それでも彼女は悪魔でさえも愛し、慈しむ心を捨てるつもりはない。
悪魔と関わる事で救われた者であり、悪魔と同じく呪われる存在だからこそ相手を考えてくれる。
その気持ちがあるならば、ラスコーリニコフのようにやり直す道だって探していけるだろう。
「私は悪魔であっても信じてあげたい…。憎まれるべき罪人の私を信じてくれた人達のために…」
ホテル業魔殿の屋上で夜の神浜市を見下ろす悪魔少女が立っている。
憂いを帯びた表情を浮かべながらも、刺し貫かれた左胸に咲いてくれた赤い花を手で掴む。
咲いた赤い花とは薔薇である。
「私の命は三度悪魔に救われた…フロスト君や…人権宣言を叫んだ尚紀さんがいなかったら…」
繋がれた命は何のために赤く咲いたのかなら、高鳴りをしていく心臓の鼓動が教えてくれる。
「私に足りなかったのは…自分の憎しみを克服する自己犠牲…誰かを愛する愛情だったのよ」
八雲みたまは憎しみを捨て、愛を胸に宿す人生を選ぶ事になるだろう。
テロを起こした東の者だと罵倒する者達にだって献身的な愛情を注げる存在になっていくのだ。
十七夜の弟がそうしたように、罪人だからこそ自分の罪と向き合い償いを行う姿を見せる。
そんな者達の償いの道は長くなるだろうが、それでも人間は怒りに飲まれた人生など選べない。
いつか必ず彼女の献身的な愛情を認めて赦してくれる西側の人達が現れてくれるだろう。
「今の私がいるのは悪魔達のお陰。悪魔の尚紀さんと出会えなかったら…私は憎しみを選んだわ」
東の人々や西側の穏健派の人々に光を運んでくれた男を思えば思う程、左胸が苦しくなる。
みたまや十七夜、それに東西の人々の心に光をもたらした男に尽くして生きたいと彼女は願う。
「私は…一生をかけて尚紀さんに尽くしたい。私の心から憎しみを消してくれたあの人のために」
尚紀に続きたい気持ちとは贖罪を示す者に続きたい気持ちであり、彼を愛する気持ちでもある。
愛情を象徴する赤い花を左胸に宿した者の償いの道は長く険しいものとなるだろう。
そんな常闇の道を歩き続ける人生を選んだ
常闇を照らすランタンの光は、光と同時に炎でもある明るさを闇の世界にもたらすのだ。
それこそがラテン語でルシファーを表す悪魔概念であり、ルシファーと呼ばれた人修羅であった。
マギレコのハロウィンイベントに参加したメインキャラはことごとく悪魔化する運命なのが僕の駄作です(汗)
だってハロウィンはドルイド教の楽しい悪魔崇拝イベントであり、悪魔と楽しく触れ合うのがメガテンですからね(汗)