人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
IT大臣を務める門倉は世界最大規模の慈善団体を設立しており日本にもその支部がある。
団体の目的とはアジアやアフリカなどの途上国が抱える貧困の撲滅のようだ。
特にマラリアやポリオなど感染症対策のために医療団体を大きく支援しているようであった。
「オーダー18の為の兵士製造はこれで終了。後は戦闘プログラムをインストールするだけやな」
東京某所の秘密研究所の巨大施設内には機械に繋がれた巨大試験管が大量に並んでいる。
中には人型の造魔が浮かんでおり、白い肌を除いてはほぼ人間と同じ姿に見えるだろう。
モニタールーム内で巨大施設を見下ろすのはIT大臣の門倉とドクタースリルである。
「戦闘プログラムをインストールされた造魔はどの程度の戦力になるのかね?」
「魔法少女と変わらん身体能力を手に入れた特殊部隊兵士だと語れば伝わるか?」
「なるほど、理解した。この犬共にはPMC兵士の装備を施してオーダー18に投入されるだろう」
「フン、わしは気分悪いで。わしの造魔を使い捨ての道具として利用するなんてな」
「彼らの任務は革命テロリストとなってもらうこと。東京を混乱させるためのかく乱部隊なのだ」
「まぁええ、ロスチャイルドからの資金援助と門倉はんの財団からの資金援助分の働きはするで」
「表向きは東京に現れたテロリストによって日本の首都の主要施設は攻撃される予定となる」
「そんで米軍と自衛隊が東京を包囲して造魔部隊を殲滅するマッチポンプやろ?
「戒厳令が敷かれた東京は軍隊により隔離される。テロリストを逃がさないためと言いながらな」
サングラスを指で押し上げた門倉が不気味な笑みを浮かべてくる。
隔離された東京の人々は何処にも逃げ場が生まれずどうなってしまうのか?
「肝心な要素は造魔部隊やない、
「東京オリンピックももう直ぐ終わる。それが終わり次第この国は非常事態宣言を出す予定だよ」
「全国の主要都市で感染を封じ込めるロックダウンが始まるか…いよいよなんやな?」
「そうだ。中国武漢から端を発した未知の病魔を抑え込むワクチンを注射した者達こそが肝心だ」
「造魔達を反ワクチン派のテロリストに仕立て上げ、バイオテロを画策した
「
造魔部隊の視察を終えた門倉が踵を返して帰ろうとしていく。
エレベーターの前で立ち止まった門倉を不審に思ったスリルが後ろを振り向いてくれる。
「どうしたんや?」
見れば門倉は額の傷を抑え込みながら呻き声を上げているようだ。
「……何でもない。仕事疲れのせいか…最近は頭痛が酷くてね」
「今は大事な時期やからな。無理してでも事を進めて行くしかないんやで」
「分かっている…もう直ぐオーダー18が迫っているのだ…私も休んでなどいられん」
エレベーターに乗り込んで去っていく門倉を見送ったスリルは再び造魔工場に視線を向ける。
「あいつ…クールー病にでもなったんか?これだから悪魔崇拝カニバリスト共はおっかないんや」
モニターに照らされた眼鏡を指で押し上げたスリルは溜息をつき、恐ろしい言葉を語っていく。
「ワクチンの中身も医者に聞かずに投与する…民衆は何処までも権威主義に洗脳された愚民やな」
――ワクチンの安全が保障された事なんて、
――民衆はインドのポリオワクチン接種被害やアフリカの接種被害から何も学ばなかったんや。
「門倉…お前の財団は悪魔財団そのものや。お前こそが
門を表す名を持つ男の事をスリルは地獄の門だと表現する。
イタリアの詩人ダンテが残した叙事詩の中にある地獄の門はこのように表されるのだ。
我を過ぐれば
義は尊きわが造り主を動かし、聖なる威力、比類なき智慧、第一の愛、我を造れり。
永遠の物のほか物として我よりさきに造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ。
汝等、ここに入るもの
「門倉が生み出すワクチンこそが地獄の門を開く鍵となる…この世界は魔界と一つになるんや」
不気味な笑い声を上げるスリルの目の前に広がる造魔工場の光景こそがスリルの望み。
造魔の元になるのは悪魔であり、世界が魔界化すれば造魔の元が大量に手に入る。
目の前の造魔達とて悪魔を生み出すMAGを絞るために大量の魔法少女達を生贄にして製造した。
陽気な関西人を演じる男だが、中身は科学万能主義に陥ったマッドサイエンティスト。
知識を求めるのも大事だが、徳が無い知識人は倫理観を無視するのだと尚紀は語った事がある。
スリルが悪魔崇拝者達に協力するのは自身の知的好奇心を満たしたいだけの強欲者なのであった。
……………。
夜の東京の某所において異常な光景が生み出されている。
路地裏を逃げ回るのは東京で活動しているギャング魔法少女達だった。
「来るな……来るなァァァァーーッッ!!!」
逃げ惑う魔法少女達は我を忘れながら助けを乞い、無我夢中で走り逃げる。
角を曲がるごとに一緒に逃げていた魔法少女の姿が消え、また角を曲がっては消えていく。
最後には独りだけになったギャング魔法少女が行き止まりに阻まれ逃げ場を失ってしまう。
<<ググ……ギギ……足りない……足りないィィィィーーー……>>
近づいて来る男の姿に震え上がるギャング魔法少女が魔法武器の釘バットを生み出して構える。
現れたのは上半身を俯けた状態のまま近づいて来る門倉の姿。
着ている白スーツは体の内側が蠢くかのようにして膨れ上がり、体を突き破ろうとしてくる。
両腕をだらしなく垂れ下げ、よだれを撒き散らしながら迫ってくる門倉が頭部を持ち上げていく。
「ヒィィィーーッッ!!?」
門倉の顔の血管は血走っており、サングラスをかけた両目は真紅の光を放っている。
縦に伸びた額の傷からは禍々しい一本角が生えているその姿はまるで悪魔だ。
口の周りは血が纏わりつき、白いスーツを返り血で汚す恐ろしい男が近寄ってくる。
「ソウル……ソウルジェム……喰いたい……喰いたいィィィィーーーッッ!!!」
獣の如き雄叫びを上げた門倉が魔法少女を遥かに超えた身体能力で飛びかかってくる。
「アァァァァーーーッッ!!!」
魔法少女の喉元に喰らいついた門倉は首を嚙みちぎり、おびただしい流血が噴き上がってしまう。
恐怖で戦意を喪失した者であろうが力任せに腕を掴み、腕力で腕そのものを引き千切っていく。
倒れ込んだギャング魔法少女のソウルジェムが絶望で砕け散る前に手に取り、口の中に放り込む。
「アァァ……イイ……ソウル……穢れたソウルのMAGが体中に染みわたるゥゥゥ……」
飲み込んだソウルジェムだけでは満足しないのか、円環に導かれなかった死体に喰らいつく。
おぞましいカニバル行為を行う門倉の体中が蠢き、内側を突き破ろうと暴れ続ける。
明らかに門倉は悪魔に憑りつかれており、彼を支配する存在に導かれて凶行を行っているのだ。
「……これで33人目か。東京の魔法少女社会はあの悪魔に全員が喰い尽くされた事になったね」
ビルの屋上で凶行現場を見下ろすのは契約の天使を務めるインキュベーター。
東京で魔法少女契約を進めていた者だが東京に見切りをつけようかと考えているようだ。
契約した魔法少女が次々と喰われてしまっては魔獣を倒す者がいなくなってしまう。
そうなればグリーフキューブ回収が得られず、微量ながらも宇宙の熱回収が出来なくなる。
彼にとっては宇宙の熱回収が優先であり、魔獣に襲われる人間は優先する必要がなかったのだ。
しかし彼は微量な熱回収で満足する者ではない。
「悪魔の体は感情エネルギーで構成されている。殺された時、宇宙を温める膨大な熱が生まれる」
契約の天使が新たに着目した宇宙の熱源とは悪魔である。
魔獣を倒すよりも悪魔を倒させた方が宇宙の熱エネルギー回収として効率がいい。
そう考えるインキュベーターは悪魔を有効利用出来ないものかと試行錯誤を繰り返す。
「悪魔の体を構成する感情エネルギーが不足しては薪として物足りない。
彼が考えている新たなる宇宙の熱回収システムの構造とはキャンプファイヤーと同じだ。
薪だけでは炎はよく燃えない為、天然の着火剤として松ぼっくりを使用する事があるだろう。
松ぼっくりとは宗教的には魂を表し、ソウルジェムの形とも似ている。
これだけ語れば答えは出るだろう。
「悪魔が魔法少女を喰らい、魔法少女が仇を討ち悪魔を滅ぼす。それによって熱回収力は増す」
――
目の前の惨劇こそがこれからの世界の理想的な形となるのだと契約の天使は語っていく。
少女が悪魔に体を引き裂かれ、肉も魂も喰われ尽くす光景こそが理想だというのだ。
この世界の悪魔達はかつての魔女と同じ役目を与えられていく事になるだろう。
新たな食物連鎖関係こそが、悪魔と魔法少女が生み出す世界の救済なのだと語ってくれた。
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大規模テロ等は発生を未然に防ぐことこそが肝心だ。
その事なら元警察官である丈二ならば誰よりも知っている。
尚紀からの依頼を受けた丈二は彼と共に東京捜査に乗り出す事になっていく。
「警視庁ではテロを未然に防ぐためにこんな取り組みを行ってきたんだ」
「俺達もそれに続く捜査方針となっていくだろうな」
情報収集・分析、水際対策、警戒警備、違法行為の取締りと事態対処、官民連携等がテロ捜査だ。
しかし尚紀達は民間の探偵業者に過ぎず官民連携を行う捜査権限すらもたない問題を抱えていた。
「先ずは情報収集と分析になってくるんだが…如何せん敵の狙いが見えてこないな」
「俺のツテからの情報では東京で暴力革命が起こると言ってきた。革命ならば狙いが見えてくる」
「もし革命を起こそうと考えているなら狙うのは首都の主要施設になってくる。政変が狙いだな」
暴力革命とは体制転覆であり、そのために狙う施設は歴史が証明している。
迅速に国家の首都に部隊を展開して占拠し、権力の中枢に関与する指導的施設を制圧するのだ。
「国会、内閣府、各省庁、裁判所、メディア、インターネット業者等々、政治と報道を牛耳るか」
「今回の大規模テロにも神浜テロの裏で武器を横流しした連中が関与するなら…大規模になるな」
捜査会議を続けているようだが丈二は沈んだ顔を浮かべてしまう。
この捜査で万が一何かを掴んだとしても、それに対処出来るのは国家だけだと考えているのだ。
「尚紀、俺はお前の頼みだからこそ捜査に協力してやるが…問題があまりにも大き過ぎるんだ」
「分かってる…俺達の力だけでは水際対策、警戒警備すら行える筈がない。権限が無さ過ぎる」
「俺達の目的は情報収集に留める。情報を掴んだなら即座に警察のテロ対策室に連絡するんだ」
「……それが正しい探偵の在り方だからな」
今の自分はしがない探偵に過ぎない現実を突き付けられる尚紀の心は暗闇に包まれてしまう。
当てにするべき国家そのものがディープステートに乗っ取られている。
たとえ一民間人として通報したところで揉み消されるのが関の山。
だからこそ彼が手に入れようとするのは情報だけであり、後は自分達の手で戦う腹積もりなのだ。
「今回の捜査は大規模になる。俺の同居人達も協力してくれるし、ナオミも手伝うと言ってきた」
「東京の主要施設周辺を捜査するだけでも大規模になる。捜査人員はまだ足りないぐらいだな…」
「他に頼りになる捜査人員ともなれば…いないこともないが……いや、アイツは……」
「どうした?心当たりでもあるのか?」
「……いや、忘れてくれ。今回の捜査はさっき語った人員だけでやっていこうと思う」
「そうか……出来れば他にも当てがあれば助かったんだが…贅沢も言えないか」
明日には東京に向かうため、捜査会議を終えた尚紀達は準備に追われていく。
深夜まで続いた仕事を終えた彼はクリスを運転しながら家路に向かうのだが何かを気にしている。
「クリス、後ろのロンドンタクシーには気が付いているんだろ?」
「ええ、あの旧車モデルのブラックキャブでしょ?1998年頃まで使われてた渋いモデルね」
「あの車は俺が東京に行く時にはいつも尾行してきていた。恐らくは…葛葉ライドウの車だな」
「どうするの、ダーリン?しつこくつけ回す同業者にいっぱつかましてやるの?」
迷いの表情を浮かべながらも尚紀は車を運転していく。
帰り道には向かわず神浜の西側に向けて走り続けていくようだ。
新西区内にある信号に差し掛かり二台の車が停車。
信号が青になるのを待つ中、ついに尚紀が決断する覚悟を決めてくれる。
「…クリス、葛葉ライドウに仕掛けるぞ。あいつが何のために戦うのかを…今夜見極めてやる」
「その言葉が聞きたかったのよ♪さぁ、派手に逃げてあげるから奴らを喰らいつかせなさい!」
青信号になると同時にクリスは急発進していく。
「尾行に気が付かれたか!」
「巻かれるわけにもいくまい」
「任せろォォォーーッッ!!うぉれは世界最高の!ロンドンタクシーマンだァァーーーッッ!!」
ドライバーを務めるマッドマンがアクセルを一気に踏み込み、素早くギア操作を行いながら加速。
深夜の道を加速しながら目の前の車を避け、クリスに巻かれまいと追跡を続けていく。
「それにしてもよォォォ……ずっとあの車悪魔の尻を追いかけてきたけどよォォォ……」
マッドマンはクリスの後部を見据えたまま無言運転を繰り返す。
「どうした、オボログルマよ?突然静かになって?」
後部座席から怪訝な顔を浮かべてくるライドウとゴウトが運転手に問いかけてみる。
バックミラーに視線を向ければドライバーの目にハートが浮かんでいる事に気が付いてしまう。
「ウォォーーッッ!!なんていい尻した女悪魔なんだァァーーッッ!!惚れたぞーーッッ!!」
「な、なんだと!?オボログルマ…うぬは一体何を言い出して…!?」
「うぉれのハートがキュンキュンするーッ!!あの車悪魔とお近づきになりたいィィーッッ!!」
神浜市を超えていったクリスが山道に向かうために車を走らせて行く。
二台の車が山道に入った時、ついにオボログルマが正体を表す時がくる。
「うぉれは決めたぞォォォーッッ!!今日からうぉれは恋する車悪魔になるゥゥゥーッッ!!」
車体から黒い霧が噴き上がりながら車体を覆い尽くす光景を尚紀はサイドミラーで確認する。
「やはりあのブラックキャブもお前と同じ車悪魔だったようだな」
「それにしてもさぁ…ダーリン。なんだかさぁ、いやらしい視線を感じる気がするのよ」
「なんだ突然?それも女の勘か何かなのか?」
「うん、女の勘。あのロンドンタクシーに近寄られたくないわ…もっと飛ばして!!」
加速していくクリスを猛追していくロンドンタクシー。
ハイビームを眩しく光らせる男悪魔が熱烈な勢いでクリスのお尻を追いかけていくのであった。
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恋するキャノンボールと化したブラックキャブが黒い霧の中から飛び出してくる。
飛び出したのは良いのだが全身ベコベコであり、窓ガラスまで割れている無残な姿を晒す。
しかしこの姿こそが妖車としてのオボログルマ本来の姿なのであった。
「ウォォーーッッ!!待ってくれーーッッ!!可愛い子チャンンンンッッ!!!」
ドライバーの顔は髑髏顔となっているが妖怪としてはこっちの方がしっくりくるやもしれない。
恋する妖怪のノリについていけないゴウトは両腕を組んだ状態のライドウに視線を向けてみる。
「こやつのこの調子は些か心配な気もするが…どうするのだ、ライドウ?」
「……やる気十分ならばそれでいい。巻かれるなよ」
「世界を救う時がキタァァァァーーーッッ!!」
カーブをドリフトしながら引き離そうとするがオボログルマも華麗なドリフト走行を行う。
山道が直線になったのを見計らって横に並んだオボログルマがクリスに悪魔会話を仕掛けてくる。
「ヘイ、彼女!うぉれと一緒に栗栖坂に向けてドライブと洒落こまねーかァァーーーッッ!!」
「な、何よコイツ!?いきなりナンパされちゃったわよ!?アタシにはダーリンがいるのよ!」
「こいつもライドウの仲魔か…?随分と気に入られちまったみたいだな、クリス?」
「やめてよダーリン!?アタシはダーリン一筋なんだからーーッッ!!」
「貴様がクリスチャンの思い人!?貴様の事なんぞ…うぉれが忘れさせてやるゥゥゥーッッ!!」
「強引な男は嫌いなのよ!アタシに近寄らないでったらーっ!!」
どんちゃん騒ぎをしている車悪魔達には付き合わないライドウが仕掛けてくる。
「チッ!!」
後部座席から銃を向けて放つ弾丸がクリスの窓ガラスを撃ち抜く。
尚紀は間一髪で避けたが窓ガラスは砕け散りフロントガラスはひび割れてホワイトアウトする。
「ライドウテメェ!?うぉれの可愛い子チャンに傷をつけるんじゃねェェェェーーッッ!!」
「目的を忘れるな、オボログルマ。我々は人修羅を追跡しているだけだ」
フロントガラスに肘打ちを放ち砕いた奥に見えたのは悪魔化した尚紀の姿。
口元には不敵な笑みが浮かんでおり、腕の立つ強敵を相手に血が騒いでいる姿を隠しきれない。
「そうこなくっちゃな。さぁ、悪魔のカーチェイスバトルといこうじゃねーか、ライドウ!!」
ギアを素早く操作して前に進み出る尚紀を追うライドウは封魔管の一つを取り出して構える。
「疾風の如く駆け抜けろ…オルトロス!!」
並走するかのようにして召喚されたのは獣悪魔のオルトロスである。
「機械悪魔ヲカワイコチャンダトヌカス奴ト組マサレルトハナ。オレサマ、趣味ガ合ワナイ!」
「うるせェェーッッ!!獣悪魔なんぞにクリスチャンの良さが分かってたまるかァァーッッ!!」
「分カリタクモナイ!!」
猛加速していく車に追いつける程の速度でオルトロスも走り続けてくる。
バックミラーで確認した人修羅はお返しとばかりにクリスをけしかけてくるようだ。
「相手はデビルサマナーだ。遠慮をする必要はない、存分に相手をしてやれ」
「オッケーダーリン!あの気持ち悪い車男と獣臭い悪魔をギャフンと言わせてやる!!」
走行するタイヤが放電現象を生み出し、後方に向けてマハジオンガを放つ。
「クッ!!」
猛追してくるオルトロスは頭上から迫る雷の一撃を避け続けるために減速してしまう。
しかしオボログルマは雷魔法を吸収しながら速度を緩めず追跡してくる。
「クリスチャンの激しい愛撫がうぉれの体を興奮させてくれるゥゥゥーーッッ!!」
猛追してくるオボログルマを確認したクリスは雷魔法は効果的ではないと判断したようだ。
「あの車悪魔…アタシの雷魔法を吸収してきたわよ!?なんて厄介な男なのよ!」
「相手はデビルサマナーだと言った筈だ。サマナーなら悪魔の耐性を熟知して使役してくるぞ」
「これじゃあ、アタシの雷魔法は役に立ちそうにないわね。どうするの、ダーリン?」
「なら車ごとぶつけてみるか?」
「やめて!!アイツの体になんて触れたくないわ!アタシの体が汚されちゃうーーッッ!!」
「まったく…我儘な女だな」
カーブを曲がったクリスであるが、側面の木々の中から跳躍して現れる悪魔が襲い掛かってくる。
「モラッタゾ!!」
飛びかかってきたのはオルトロス。
彼は曲がりくねった山道を無視して木々の間を潜り抜けながら最短距離で現れたようだ。
振り上げた前足の爪から放つのは『雄渾撃』の一撃。
しかし人修羅は迫りくる魔力に気が付いており、素早くハンドル操作を行う。
後輪が滑りながらドリフトしてオルトロスの一撃を間一髪で避け切ったのだ。
「逃ガサンゾ!!」
双頭の口から業火が噴き上がり、ファイアブレスを放ってくる。
サイドミラーで確認した尚紀がハンドル操作で隣の車線に移動しながら避けきる動きを行う。
オボログルマもオルトロスと共に迫り、窓から身を乗り出したライドウが銃を構える。
「合わせろ、オルトロス」
「サマナーノ射撃デ奴ラヲマル焼キニシテヤレ!」
オルトロスが放つのは合体魔法の一種である『火炎弾』である。
炎属性を得た銃弾が次々と放たれ、クリスのリアガラスを撃ち抜きながら砕いていく。
中にまで炎が燃え広がらないようにマガタマのゲヘナを飲み込み、彼が身を挺して炎を吸収する。
「遠慮のない男だな。フッ、ライドウと追いかけっこをしていると…ダンテを思い出すよ」
追撃をかわし続けるクリスに向けてオボログルマが迫るのだが、車内ではひと悶着が起きている。
「コラ!!うぬも攻撃に参加せぬか!!」
「イヤだァァーーッッ!!うぉれはクリスチャンの体を傷つけたくねェェェーッッ!!」
「それでも男か!!うぬの猛き思いをぶちかますぐらいの気概がなければ女は振り向かぬぞ!」
「ぶ…ぶちかます!?うぉれの思いを…クリスチャンのお尻にぶちかますのか!?」
ゴウトの言葉を聞いた事で天啓を得たのか、燃える闘魂と化したオボログルマが高速で迫りくる。
「みなぎってきたァァーッッ!!熱せられたうぉれのマスラオを受け止めてくれェェーッッ!!」
オボログルマが放つのは愛を込めた突進の一撃。
「キャァァーーーーッッ!!?」
リアバンパーを突き上げられたクリスは前輪が浮き上がる程の衝撃を浴びる。
ハンドル操作が効かなくなった人修羅は前輪の着地と同時にハンドルを操り体勢を立て直す。
「うぅ…グスッ。アタシのお尻が変態車悪魔に汚されちゃった…初めてはダーリンだったのに…」
「訳の分からない事を言ってないで集中しろ!!また仕掛けてくるぞ!!」
銃に弾を詰め直したライドウが見据える先にはトンネルが迫っている。
「仕掛けるぞ、あの車悪魔と並ぶように並走してくれ」
「任せろォォォーーッッ!!」
後部座席の扉を開けたライドウがオボログルマの屋根に乗り移る。
それと同時に二台の車がトンネル内部に侵入する中、人修羅は不敵な笑みを浮かべてくるのだ。
「クリス、運転を任せる」
「ダーリンはどうする気よ…?」
「ライドウを迎え撃つ」
ライドウの狙いを分かっているかのようにして彼も扉を開けて屋根の上に乗り移る。
トンネル内を加速する二台の車の上で睨み合う両雄。
強い風で揺れる黒のトレンチコートと漆黒のハイカラマントを纏う男達が手に持つのは刀である。
「……来い、ライドウ!!」
「行くぞ……人修羅!!」
ライドウは腰のホルスターから銃を抜いて撃ち続けてくる。
迫りくる銃弾を迎え撃つのは抜刀した怨霊剣を指を用いて高速回転させる刃の盾。
刃の高速回転によって次々と銃弾を弾かれたライドウは銃を仕舞って陰陽葛葉を抜刀する。
高速で迫るオボログルマと後続から走ってくるオルトロスを迎え撃つために人修羅は刀を振るう。
「ナンダァ!!?」
抜刀した状態から放つ次元斬がトンネル天井に向けて放たれ、排煙用ジェットファンを切り裂く。
上から落下してきたジェットファンが頭に直撃したオルトロスは怯んで止まってしまったようだ。
だがライドウはその間にクリスの横に並ぶ程の距離まで詰めてきている。
「「ハァァーーーッッ!!」」
互いの斬撃が次々とぶつかり合い、薄暗いトンネル内部に向けて火花を飛ばしていく。
ライドウの斬撃を全て防ぎきらなければ陰陽葛葉の一撃によってクリスは両断されているだろう。
互いが車輪の悪魔を引き連れ、その上で戦う姿はまるでコロセウムのチャリオット対決の光景だ。
「ライドウ!!お前の刃は何のために振るわれる!!」
ライドウの一撃を刀で打ち上げた人修羅が回し蹴りを放つがライドウは跳躍して蹴りを避ける。
クリスのトランクルームの上に着地した彼が屋根の上に立つ人修羅に目掛けて斬撃を放つ。
「我が刃は個を捨て、人々を護らんとする強い意志の表れ!只一振り研ぎ澄まされた刃となる!」
「個を捨ててまで人々を守るのは何のためだ!!その人々の姿は誰を表す!!」
人修羅の逆袈裟斬りを受け流し、両足を刈るための横薙ぎが放たれる。
咄嗟の跳躍移動で避けた人修羅はオボログルマの屋根に飛び移り、互いが足場を利用する。
「自分は14代目葛葉ライドウ!帝都の人々を護る者であり、民を護る守護者だ!!」
「民を護ると言ったな!ならばお前の戦う理由とは、ヤタガラスのためではない!!」
「ヤタガラスを侮辱するな!自分に護国守護の役目を与えてくれた存在こそが国の守護者だ!!」
オボログルマの屋根の上で切り結び合う両者が互いに袈裟斬りを放ち鍔迫り合う。
ヤタガラスを信じるライドウの信念は揺るぎないようだが東京の守護者として言える言葉がある。
「ヤタガラス連中はな…
「何だと…?」
「ヤタガラスが魔法少女を取り締まらなかったから俺が代わりを務めた!連中は似非守護者だ!」
「ヤタガラスが…帝都である東京を…捨てただと……?」
「奴らが東京を守ってくれていたなら…俺は魔法少女の虐殺者になる必要なんてなかったんだ!」
人修羅に向けるライドウの怒りとは魔法少女の虐殺者として帝都の子供達を虐殺した事だ。
しかし彼から伝えられた言葉が事実ならば、子供達が虐殺された原因はヤタガラスの怠慢にある。
あまりにも強過ぎる迷いに飲み込まれてしまったライドウの闘気が薄れていく。
「いい加減、アタシの横に纏わりつかないでよ!!このスケベ男!!」
オボログルマに並走されるのが嫌だったクリスが車体をぶつけてくる。
大きく揺れたため人修羅は片膝をついて衝撃を堪えるが、両足に力が入らない者が落ちていく。
ライドウはトンネル内の道路に倒れ込み転がっていく姿を残す最後となったようだ。
運転席の扉を開けてくれたクリスに飛び移った人修羅がトンネル出口を超えていく。
葛葉ライドウとの二戦目になるチェイスバトルは人修羅が逃げ切る結末となったのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ライドウ…傷は大丈夫か?」
急停止したオボログルマから出てきたゴウトはライドウの体を心配してくれる。
180キロ近い速度で直線を走っていた車から転げ落ちたライドウの全身は傷だらけのようだ。
「ああ……自分は大丈夫だ。だが…人修羅を逃がしてしまったようだな」
「いや、そうでもないようだぞ」
後から合流してきたオルトロスを召喚管に仕舞ったライドウはモー・ショボーを召喚する。
彼女に回復魔法をかけてもらえたライドウはゴウトの後を追うようにして歩いていく。
トンネル出口を出てみれば路肩にクリスを停車させたままの尚紀が待ってくれていたようだ。
「人修羅…さっき語った話は……本当なのか?」
「本当だ。去年頃にヤタガラスから勧誘を任された連中が来たが、そいつにも文句を言ったさ」
「ヤタガラスからの勧誘だと…?どういう事だ…自分はそんな話を聞かされてなどいない」
足元のゴウトにも顔を向けてみるが、彼も伝え聞いていないのか首を横に振ってしまう。
「情報に食い違いがみられる…ヤタガラスは我々に何かを隠しているということなのか?」
「分からんが…調べてみる必要がある。間違った情報に振り回されては探偵失格だ」
「同業者として同じ意見だ、ライドウ。それと、探偵としてのお前に依頼を頼んでみたい」
「自分に依頼だと…?」
尚紀はライドウに向けて要点だけを纏めた依頼内容を説明してくれる。
それを聞かされたライドウとゴウトは驚愕した表情を浮かべてしまうのだ。
「帝都である東京で暴力革命が計画されているだと…?その情報は確かなのか?」
「ああ、確かだろう。暴力革命を企んでいるイルミナティ内部の者から語られた情報なんだ」
「啓明結社か…フランス革命など、世界中の暴力革命の裏で糸を引いていた者達だと聞いている」
「イルミナティについては後でゴウト達から聞いておこう。それで、依頼とは捜査の協力か?」
「うちの探偵事務所は貧乏所帯でな…人員不足なんだ。捜査はいつの時代も足でやるもんだろ?」
「気持ちは分かる。自分が働いている鳴海探偵事務所とて貧乏所帯だったからな」
「まぁ、鳴海に関しては浪費癖さえなければ事務員を雇う余裕ぐらいは生まれただろうがな…」
「お前の所長はごく潰しのようだな?まぁ、うちの所長も影で何やってるか読めない男だがな」
同業者同士の愚痴に脱線した事を苦笑した2人が向かい合い、尚紀が大事なことを聞いてくる。
「もう一度聞く。お前が戦う理由とは政府やヤタガラスという得体の知れない連中のためか?」
尚紀の問いを受け止めたライドウがこう答えてくる。
彼が語った言葉だけは迷いがなかったようだ。
「自分が戦う理由とは、人々を護るためだ。国という地域で暮らす人々を護るための刃なんだ」
「その気持ちがあるなら俺の依頼を任せても大丈夫そうだな。この依頼…受けるか?」
「勿論だ。14代目葛葉ライドウとして、帝都の守護者として…この依頼を受けさせてもらう」
「お前の意思はヤタガラスから与えられたものじゃない、
ライドウは帝都の守護者として嘉嶋尚紀から与えられた依頼を承知してくれる。
お目付け役のゴウトも東京に暴力革命をもたらされる事など許す事は出来ないと答えてくれた。
「この件に関してはヤタガラスに伏せておこう。うぬについて行くのは我々の任務のためとする」
「噓も方便か、いいだろう。帝都の守護者としての働きに期待する」
連絡手段として黒のトレンチコートから名刺入れを取り出し、ライドウに一枚渡してくる。
ボロボロのクリスに乗り込んだ尚紀は明日からの東京捜査のために家路に帰っていったようだ。
残されたライドウは受け取った名刺を見つめながら微笑みを浮かべてくれている。
「左読みで読み辛いが…聖探偵事務所の探偵、嘉嶋尚紀と書かれてる。それが彼の名前なんだな」
「悪魔は何故かしら名刺を渡してくるな?業魔殿で悪魔合体した悪魔共も名刺を渡してきたぞ?」
「フッ…悪魔から受け取る名刺を預かるのもデビルサマナーの役目だ」
「令和の悪魔探偵と大正のサマナー探偵の共同捜査か。あの男とは違う形で出会いたかったな」
「……そうだな。人修羅として生きる尚紀と共に…大正時代で探偵をやってみたかった」
元のブラックキャブ姿になった仲魔に乗り込んだライドウ達も家路に向かうため発進していく。
夜空を見つめる葛葉ライドウの心にはヤタガラスへの不信感が募っていく。
大正時代の頃はヤタガラスのために働く事こそが護国守護だと感じられたが今は感じられない。
尚紀やキョウジから言われた言葉を思い出す彼は心の中でこう呟いてしまう。
(個を捨てて戦う事が護国守護だと信じてきた……だが、個を捨てては守れないものもあるか)
偽りの自分を演じて好かれるよりも、ありのままの自分でいて憎まれた方が遥かにマシ。
ヤタガラスに向けて従順な態度でいるよりも、護りたい人達を護りに行って憎まれた方がいい。
そう思えるようになれたライドウは個の確立の大切さを改めて実感しているだろう。
LAW勢力のヤタガラスに盲従してきた彼の心には
自由とは何なのかを混沌王から問われたライドウは、自由を考える者になっていくのであった。
ライドウさんも別作品主人公として成長を描いていかんとですよね。
ライドウと人修羅のダブル探偵コンビだなんて、メガテニストには浪漫溢れる光景だと思います!