人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
東京に向かった捜査チームが捜査拠点としたのは尚紀達が東京で活動した旧事務所である。
この場所は神浜で仕事にありつけなかった保険としてまだ残している場所のようだ。
「懐かしいな…俺達の古巣にまた帰ってくる事になるなんてな」
「電気水道等は止めちまったが捜査拠点ぐらいとしては使えるさ。入ってくれ」
丈二が鍵を開けて扉に入り、内側からシャッターを開けてくれる。
ガレージ事務所内にナオミの車とライドウの車、そして尚紀の車や丈二の車も入り込んでくる。
クリスから降りてきたクーフーリン達は尚紀の古巣に視線を向けることなくライドウに振り向く。
「コイツを信じてもいいのか、尚紀?」
「お前の命をつけ狙う者だったはずだが…どういう心境の変化なんだ?」
「そう構えるな。ライドウの狙いは変わらないが…それ以上に優先する事があるだけだ」
「我ハ構ワヌ。不審ナ動キヲスルナラバ…我ガ弟モロトモ相手ヲシテヤルダケダ」
警戒感を示すクーフーリン達に視線を向けるライドウだが敵意は無いと示すために首を横に振る。
彼の代わりに答えてくれたのは足元のゴウトのようだ。
「今回ばかりは特別だ、協力してやろう。もっともライドウの仲魔には喧嘩っ早い者もいるがな」
「ヨシツネとかいう奴を出してくるなら俺様が相手してやってもいいんだぜ?借りがあるしな」
「よせ、悟空。私怨を向けるならば啓明結社の連中だけにしておくことだ」
「フン、犬っころに言われなくても分かってるよ。連中の方が憎さ億倍だからな」
「クルースニクから聞いている。うぬ達も奴らに囚われて煮え湯を飲まされたようだな?」
「そういう事さ。クルースニクを仲魔にしてるなら、獲物はお互いに同じって事になるな」
「フッ、オルトロスト共二戦ウノハ、イツブリダロウカ…オモシロクナッテキタ」
ライドウ達を受け入れる仲魔達に安堵の表情を浮かべる尚紀に近づくのはナオミのようだ。
「彼が伝説のデビルサマナーね…彼と組めるなんて光栄だわ。もっとも私は貴方の護衛だけど」
「ナオミ、お前の人生の目的は果たし終えたと言ってたな?これからは当てにしてもいいのか?」
「ええ、勿論よ。私の復讐の旅は終わったわ…私もまた貴方と同じく間違いを犯すところだった」
「それに気が付かせてくれる仲魔と出会えていたという事さ。美雨とレイと共に幸福に生きろよ」
「有難うナオキ、そうするわ。貴方も人生をやり直している…私もこれからをやり直していくわ」
ガレージ二階の事務所に入った一行は残されている椅子に座り込んでいく。
ホワイトボードの前に立った丈二が捜査会議の進行役を務めてくれるようだ。
尚紀達はそれぞれの案を語っていき、丈二がそれをホワイトボードに書き記していく。
「神浜テロの時、怪しいトラック車両が現れたそうだ。恐らくは武器を運搬した車両だと思う」
「この東京で革命戦争を起こせる規模の武器弾薬を隠しておける場所なんてそうないと思うわ」
「革命とは民衆が武力蜂起するもの。軍隊のような専用の敷地内に武器を隠しておける筈がない」
「民衆側が利用出来る施設において、大規模な積荷を纏めて隠せる場所はそう多くないな」
「東京の物流を担う倉庫周りに探りを入れてみるしかなさそうだな。リストを纏めていこう」
物流は何も地上だけでなく海上や航空に至るまで多岐にわたってくる。
そしてそれらを運搬して隠している企業もまた革命テロリストの隠れ蓑だと話し合っていく。
航空会社の倉庫、東京港の港湾倉庫、トラック運送会社の倉庫など膨大な数が並んでしまう。
「分かっていたが膨大な捜査になりそうだ…いくら何でもこの人員だけでは対処出来んぞ?」
「それでもやってくれ。この捜査は長くなっても構わない…その為に多額の手付金を払ったんだ」
「尚紀が依頼人になってでも成し遂げたい案件だからな…仕方ない、全員気合入れていくぞ」
捜査会議を終えた一行がそれぞれの持ち場を決めて行動を開始する。
丈二とナオミは航空会社の倉庫を担当し、尚紀の仲魔達はトラック運送会社の倉庫を担当する。
尚紀とライドウは東京港の港湾倉庫を担当していく事になるのだ。
しかし彼らの捜査方針は全てが的外れ。
米軍やディープステートが動く程の規模になるなら米軍基地や自衛隊基地も候補に入れるべきだ。
そのため捜査の進展も得られず無駄な日数だけが過ぎていく。
東京の守護者として生きてきた尚紀の表情には焦りが浮かんでいくのであった。
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東京港の湾岸倉庫街の夜空を飛んでいるのはモー・ショボーである。
彼女は上空から偵察を行っており、不審な存在が活動していないかを警戒中のようだ。
コンテナ埠頭を見下ろせるビル屋上にはライドウが立っており、双眼鏡を用いて偵察中であった。
「夜食だ、早いとこ食って今夜は休んでくれ。後は俺が偵察しておく」
双眼鏡を降ろして後ろを向けばコンビニで夜食を買ってきた尚紀が近寄ってきている。
レジ袋を受け取ったライドウは好物の匂いを感じたのか袋の中から大学芋を取り出したようだ。
「ライドウの好物を用意するとは気が利く男だな。我の分の夜食はどれだ?」
「牛肉のホルモン焼きでいいだろ?火は通しているから猫でも食べられるはずだ」
「有難い、我の好物だ。ペリーの来航以後、日本では牛肉が沢山消費されるようになったのだ」
「大正時代は景気がよくなって牛肉を輸入する程にまでなったとか歴史の本で読んだ事があるよ」
「その通りだ。カレーライス、コロッケ、とんかつライスは学生のライドウも食していたな」
「……鳴海さんの行きつけの洋食店でよく食べたものだ。まぁ、勘定は払わない人だったが…」
「ツケの常習犯だったのかよ…鳴海って男は?お前の所長は相当のごく潰しだったようだな…」
「否定は出来ない。酒や煙草、遊女遊びに麻雀、服装も常に最先端を買うような浪費家だった…」
「お前に支払う給料も期待出来そうにない男のようだな……同業者として同情するよ」
「それでも鳴海さんは正義感に熱い人物だった。人間は一面だけでは判断出来ないということだ」
「そうでなきゃついていく理由もなさそうだ。偏見の恐ろしさは身に染みてるから気をつけるよ」
座り込んだライドウがゴウト用のホルモン焼きの袋を開けて紙皿に入れてくれる。
美味しそうに食べるゴウトの横で大学芋を頬張るライドウであるが尚紀に顔を向けてきたようだ。
「尚紀、お前は何日も寝ずの捜査を続けている。お前こそ休んだらどうなんだ?」
「俺は悪魔人間だから問題ない。不眠不休で何日も活動を続けていても耐えられる体をしている」
「やせ我慢はやめておけ、人修羅。悪魔は人間と同じく欲望の生き物…欲望は体に表れてしまう」
「猫に心配されちまうほど落ちぶれてはいないさ。俺に付き合うと明日の捜査に響いてくるぞ?」
「構わない。自分も捜査を続けよう」
ビジネスホテルに帰らないライドウ達の気持ちを断るわけにもいかないと尚紀は双眼鏡を預かる。
ライドウ達が夜食を食べている間は自分が監視を行う中、彼に向けて尚紀が礼を述べたようだ。
「令の事は聞いた…あいつの命を救ってくれて感謝している。観鳥令は俺の仲魔も同然の娘だ」
「……自分はメイド喫茶の女性から頼まれて救いに行っただけだ」
「いくみんとか名乗る娘だったな。彼女は観鳥令の事を心から心配してくれる女性だったのだ」
「お前は人々を護るデビルサマナーだ。魔法少女だって守ってくれるよな……俺とは大違いだ」
聞いて欲しいのか、双眼鏡を構えたままの尚紀が昔話を語ってくれる。
同じ東京を護る者だからこそ、東京の守護者としてどんな生き方をしてきたのかを語るのだ。
それを聞かされたライドウとゴウトは重い表情を浮かべてしまう。
「悪魔のうぬが秩序の守護者として、人間社会主義という政治を掲げた末の凶行であったのか…」
「俺の甘さによって…罪の無い子供が殺されてしまった。だから誰も信じない秩序を強いたんだ」
「尚紀……己を責めるな。自分とて同じ過ちを起こしていれば……同じ気持ちになったさ」
「難しいな…罪人を信じるのは。信じれば先に備えられないし…疑えば加害者にしかなりえない」
「ライドウ…人修羅の悲惨な過去こそが我が危険視した部分だ。レイを信じても良かったのか?」
「その判断については…分からない。それでも信じてみたくなったんだ…今の尚紀のようにな」
「疑いが極まれば俺のような独裁者にしかなれない。悪い見本を見てこれからに活かすといいさ」
「結果論の弊害を知ったからこそ次に活かせる。犯罪を犯す者の因果関係を意識していこう」
「犯罪者が犯罪を犯す原因を解決するからこそ犯罪を防げる。そのために政治家になるのだな?」
「…それが俺の出した結論だ。だが、どうも変なんだ…東京の魔法少女達に異変が起きている」
双眼鏡を下ろした尚紀がライドウ達に振り向き、東京に帰って感じた違和感を語ってくれる。
「東京の魔法少女達の魔力を感じないだと…?魔獣と戦って犠牲となり円環に導かれたのか?」
「それにしては数が多過ぎる…しばらく東京に帰れてなかった間に何が起こったっていうんだ?」
「分からんが…それを捜査する余裕はないだろう。我々は別の大きな案件の対処中なのだ」
「そうだな…それでも最悪の事態を想定しないとならないかもしれない」
「それは…東京の魔法少女社会そのものが…何者かに全滅させられたという事態か?」
「そうなるだろう…。そうなれば魔獣に対処出来る者がいなくなる…魔獣被害が乱造されるぞ」
「これは切迫した問題になるだろうな…我々もヤタガラスに対処の進言をした方がいいだろう」
「そうだな。我々が人修羅討伐のため東京に赴いた時に気が付いたと進言してみよう」
「東京を見捨てた連中が動くとも思えないが…俺達も人手が足りない。背に腹は代えられないな」
ライドウとゴウトが夜食を食べ終えたので立ち上がり、双眼鏡を受け取ってくれる。
手摺にもたれかかるようにして座り込んだ尚紀は袋の中からアンパンを取り出して齧りつく。
暫く無言状態であったが、ライドウの方に顔を向けた尚紀はこんな話を持ち出すのだ。
「大正時代の帝都の守護者、14代目葛葉ライドウ。お前はどんな人生を生きてきたんだ?」
双眼鏡を構えたままだが口元が微笑んだ彼が質問にこう返してくる。
「大正時代の自分がどんな人生を生きてきたのかを聞いて…どうする?」
「知ってみたくなっただけさ。俺と同じ東京の守護者がどんな人生を生きたのかをな」
「フッ、それを語り出すと長くなるが…構わないか?」
「ああ、構わない。今夜も捜査の進展が無ければ身動きがとれない…だから聞きたいんだ」
葛葉ライドウが生きてきた東京の守護者としての人生を聞かされた尚紀。
彼の心の中にはライドウもまた東京で生きる人々の笑顔のために戦っていたのだと知るだろう。
命を懸けて人々を護りたい気持ちとは自分と同じく気高い社会主義精神から生まれている。
そう感じられた尚紀の心の中には自分の命を狙うライドウに対する警戒心が薄れていく。
今の尚紀は葛葉ライドウの事を同じ気持ちを持った同士のように感じているはずだ。
必要な事以外は喋らない不愛想な2人であるが、互いに友情を感じあえている。
今この時だけの協力関係に過ぎなくとも、憎しみに支配された殺し合いはしたくない。
そう思えるようになれた2人の関係は尚紀にとって仲魔と同じように感じられているだろう。
この光景こそ違う宇宙、違う未来に生まれるだろうボルテクス界での光景と同じ。
人修羅と葛葉ライドウが共に仲魔となり旅をする光景そのものに思えるのであった。
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東京捜査で動きが見えたのは次の夜である。
運送会社の倉庫は膨大であり、尚紀の仲魔だけでは足りないとライドウの仲魔も駆り出される。
ケルベロスと共に東京の運送会社の倉庫を監視する人員となったのはオルトロスであった。
「兄者、感ジルカ?オレサマノ嗅覚ハビンビン二感ジテイルゾ」
「アア、我モ感ジル。アノタンクローリー……膨大ナMAGガ収メラレテイルヨウダナ」
ケルベロスとオルトロスが視線を向けるのは運送会社の倉庫ではなく前の道路を走る車。
偶然見つけられたのは業魔殿にも訪れた事があったMAGディーラーのタンクローリーである。
ビルの屋上から跳躍する二匹の獣悪魔達はMAGディーラーの車を追跡していく。
「見ロ、施設内二車ガ入ッテイク」
「アノバカデカイ施設…大量ノMAGヲ用意シテ何ヲ企ンデル?怪シイ臭イガプンプンスルゾ」
二匹が見下ろすのは外資系製薬会社の研究所である。
MAGを収めたタンクローリーは製薬会社の研究所に設けられている倉庫に向かったようだ。
二匹の獣達がビルの屋上から飛び降りて敷地内に着地する。
急いでタンクローリーを追っていく二匹であるが周囲の異変に気が付く反応を見せたようだ。
「異界カ…ヤハリコノ施設ハ悪魔ト関リガアル施設デ間違イナサソウダナ」
「アノ黒服ノ男ガ異界ヲ構築シテイルノカ?オレサマト兄者二挑ムトハ、愚カナヤツメ!」
ケルベロスとオルトロスの前に立ちはだかったのはMAGディーラーを務める男。
黒のチェスターコートとつば広ハットを纏う怪しい男の手に持たれているのは召喚管。
彼がダークサマナーなのだと証明する道具ともいえるだろう。
「悪魔がこの場所を嗅ぎつけてくるとは…目的はこの施設か?それともMAGを収めたタンクか?」
「MAGヲ喰イタイ気持チモアルガ、オレサマ達ノ目的ハ違ウ。ダガ…MAGモ喰イタイナ…」
「弟ヨ、悪魔モ選ブ自由ガアル。アノ中身ハ魔法少女ヲ生贄二シタMAGト言エバ気ガ変ワルカ?」
生体エナジー協会で活動していた経験もあり、ケルベロスは怪しい男の正体に気が付いている。
このタンクローリーも生体エナジー協会の物資搬入エリアで見かけた事がある車であったのだ。
「魔法少女ヲ生贄ニシタMAGダト!?カワイコチャン達ヲ生贄ニスルナンテ……許サン!!」
可愛い美少女に目がないオルトロスは唸り声を上げながら怒りを顕わにする。
仕掛けてくると判断したMAGディーラーの手に持たれた召喚管の蓋が開いていく。
「やはり目的はこの研究所だったようだな。何処の手の者なのか…力ずくで吐かせてやろう!!」
召喚管を振り抜いたダークサマナーの周囲に悪魔を召喚するMAGが渦巻き、形を成す。
現れたのはケルベロスとオルトロスにとっては因縁深い悪魔であった。
【キマイラ】
邪神エキドナが産んだ怪物の一体であり、ケルベロスとオルトロスとは血族ともいえる獣悪魔。
獅子の頭に山羊の胴体、蛇の尻尾を持った合成獣である。
キメラとも呼ばれ、医学分野でも異種族の組織を人工的に繋げた場合キメラと呼ばれるようだ。
神話ではリュキュアにて人々を苦しめたが英雄ベレロフォンによって退治されたようであった。
「グゥゥ…ケルベロストオルトロスカ、久シブリダナ!同ジ血族デアッテモ容赦ハシナイ!」
ケルベロスとオルトロスよりも二回りは巨大な合成獣が雄たけびを上げながら威嚇してくる。
しかしケルベロスとオルトロスは怯むことなく、こんな話を持ち出してきたようだ。
「キマイラカ…丁度イイ、貴様二向ケテ積年ノ疑問ガアルノダガ…質問シテモイイカ?」
「オレサマモ質問ガアル!多分兄者ト同ジ疑問ダト思ウゾ」
「ムゥ……ナンダ!」
怪訝な顔を向けてくる頭部の獅子顔と背中から伸びる山羊の頭部。
ケルベロスが質問してきた内容とは同じ血族としての疑問であった。
「我ハ奈落ノ番犬、オルトロスハ牧場ノ番犬。ダガ、血族ノ中デ貴様ダケガ何処ノ番犬デモナイ」
「オレサマモ同ジコトヲ考エテイタ!ドウナノダ、キマイラ?」
突然の悪魔会話の光景であったが、迷いのない顔つきを浮かべながらキマイラが答えてくれる。
「答エハ簡単ダ……ワレハ犬デハナイ。微妙ニナ」
それを聞かされた二匹の血族達の両目が見開き、驚きの声を上げてしまう。
「アォォーーン!!ソウイウコトカ!積年ノ謎ハ解ケタ!コレデ気兼ネナク戦エルトイウモノダ」
「ソウイエバ、ワレモ疑問ヲ感ジテイタ。質問シテモイイカ、ケルベロス?」
「オレサマモ兄者二向ケタ疑問ガアッタ!多分、キマイラト同ジ内容ダト思ウゾ」
「……分カッタ。言ッテミロ」
マイペースな悪魔達に向けて檄を飛ばすサマナーであるが、無視して会話を続けていく。
「ケルベロスノ頭ノ数ハ一ツ、オルトロスハ二ツ、ダガ…本来ハケルベロスノ方ガ多イゾ?」
「ソウダゾ!兄者ノ方ガ多イハズナノニ…ドウイウコトダ、兄者?」
「ムゥ……ソレハナ……」
重苦しい顔つきを浮かべてくるケルベロスに視線を向ける者達が緊張した顔つきを浮かべる。
ついに積年の疑問が晴れる答えが聞けるのかと期待を込めているようだ。
クワっとした表情を浮かべながら疑問を抱く血族に向けて己の謎を盛大に言い放つ時がきた。
「……オマエ達ハ疲レテイルダケダ。気ニスルナ」
期待していた答えではなかったため、オルトロスとキマイラが文句を言ってくる。
「……兄者、ゴマカスナ!!」
「ソウダゾ!ワレハ答エタノダ!チャント質問二答エロ!!」
「頭ノ数二拘ルナ!!悪魔ニトッテ重要ナノハ……ハートダ!!」
「「ハートダト……?」」
「我ハ頭ノ数ハ少ナイガ…ハートハ大キイ!頭ノ数二拘ル貴様ラノハートハ小サイゾ!」
「「ア…アォォーーン……ソウイウモノナノカ???」」
「貴様ラハ…ハートヲ磨ケ。我モ応援スルカラ頑張ルノダゾ」
納得のいかない表情を浮かべる血族達を見回しつつ、冷や汗を流すケルベロスが心で呟く。
(……ヨシ、上手クゴマカセタヨウダ)
獣悪魔達の茶番劇を見物する事しか出来なかったサマナーも流石にご立腹となってしまう。
「何をしておるかーーっ!!さっさと侵入者共を始末せんかーーっ!!」
「ムゥ!?久シブリノ血族トノ再会デ忘レテイタ!今ハ敵同士デアッタ!」
「ソノママ忘レテイレバイイモノヲ。思イ出シタカラニハ…覚悟シテモラウゾ」
「ナンカ兄者二誤魔化サレタ気ガスルガ…今ハ気ニシテモシカタナイ!イクゾ、キマイラ!!」
先程までとは打って変わって獰猛な獣の顔つきとなったキマイラが雄たけびを上げてくる。
獅子と山羊の口が開き、業火が噴き上がりながら放出させるのだ。
ひとたび殺し合いが始まれば血の繋がりをもった兄弟であろうと存分に殺し合える。
生まれながらの獰猛な獣悪魔こそが邪神エキドナの子供達なのであった。
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二回りも巨大なキマイラの注意を引き付けるために二匹の獣悪魔達が左右に分かれて駆け抜ける。
ケルベロスとオルトロスは炎魔法に対して強力な耐性があるためキマイラは別の魔法を行使。
背中の山羊の目が光り、体全体で放電を放ってくる。
「チッ!!」
跳躍しながら放電を避ける二匹の獣悪魔達であるが雷攻撃が邪魔して近寄る事が出来ない。
キマイラも優れた炎耐性をもつ血族である事を知っている者達であるゆえに攻め手に困るのだ。
「兄者!キマイラヲ仕留メルニハ接近戦シカナイゾ!シカシ、オレサマ、ビリビリハ嫌ダナ…」
「情ケナイ弟メ。我ガ隙ヲ作ル…我二気ヲ取ラレテイル内二、山羊ヲ仕留メルノダ!」
覚悟を決めたケルベロスがキマイラを相手に正面突破を仕掛けてくる。
迎え撃つキマイラが放電攻撃を放ち、ケルベロスの全身が雷によって焼かれていく。
「ヌォォォォーーーッッ!!!」
全身を焼かれながらも迫ってくる相手に目掛けて前足を振り上げ、アイアンクロウを放つ。
しかし猛突進を仕掛けてくるケルベロスの突進力はすさまじく爪の一撃を超えてくるのだ。
「グッ!!!」
獅子の頭部に目掛けて頭突きをお見舞いした一撃によってキマイラの体勢が崩れてしまう。
同時に放電現象も収まったチャンスを見逃すオルトロスではなかった。
「モラッターーーーッッ!!!」
跳躍したオルトロスが前足を振り上げ、獰猛な爪を剥き出しにしたまま山羊に突っ込む。
「グアァァァーーーーッッ!!?」
雄渾撃の一撃が山羊の頭部を破壊したため雷魔法を放つことが出来なくなってしまう。
手負いとなったキマイラがオルトロスを追うために後方に振り向くのだが、何かに引っ張られる。
「ヌゥゥゥ!!?」
キマイラの動きを抑え込んでいるのは蛇の尾に喰らいついたケルベロスである。
足の爪を地面に深く突き刺し、大きなキマイラの動きを封じる程の力を発揮するのだ。
<ヤレ、オルトロス!!>
ケルベロスからの念話を受け取ったオルトロスが旋回しながら攻撃を仕掛けようとする。
全身に気合を溜め込み、高速で駆け抜けながら跳躍。
「ウォォーーッッ!!?」
獅子の口から業火を吐き出すが炎を無効化出来るオルトロスには通じない。
「オレサマト兄者ヲ同時二相手シタノダ!!ソノ迂闊サガ命取リダッタトイウコトダナ!!」
飛びかかってきたオルトロスが再び雄渾撃を放ち、獅子の頭部が引き裂かれる。
「グアァァァーーーーッッ!!!」
巨体が倒れ込みMAGの光となったのを見届けたオルトロスが勝利の咆哮を上げる。
それと同時に異界も解け、周囲は元の研究所敷地内に戻っていくのだ。
「ヤッタナ…オルトロスヨ」
雷魔法で体を焼かれたケルベロスがふらつきながらも近寄ってくる。
「コノ勝利ハ兄者ノオカゲダナ。ソレニメンジテ、サッキノ答エハ保留ニシテヤロウ」
「ソレヨリ、サマナーノ姿ガ見エナイナ?施設内二逃ゲ込ンダヨウダ」
「ナラ、オレサマ達モイッタン引クトシヨウ。恐ラク警備ヲ固メテクルダロウカラナ」
「同ジ意見ダ。連中ガ逃ゲ出ス前二仕掛ケルゾ」
ケルベロスとオルトロスが敷地内から飛び出して去っていく。
その光景を見下ろす人物が研究所ビルの屋上に潜んでいたようだ。
「……感じるぞ。混沌王様の大いなる魔力を」
月明かりに照らされた異形の馬に乗る人物の姿を東京の守護者は忘れていないだろう。
鎖で出来た手綱を打つと異形の馬が研究所ビルの屋上から飛び出していく。
空中を駆け抜けていくその姿はまるで黙示録の四騎士達が跨った天馬のようであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「尚紀とライドウ達はまだ到着していないのか?」
「ソノヨウダ。オルトロス二向カワセタノダガ…我々ノ方ガ先二到着シタヨウダ」
「道に迷ったなんてオチはなさそうだし、何かあったと考えるべきか?」
研究所のビルが見えるエリアで佇んでいるのは尚紀の仲魔達の姿。
彼らはケルベロスからの報告を受けてこの場に集まった者達である。
彼らは研究所に潜入する事を目的にしているのだが尚紀達の到着が遅れているようだ。
「尚紀達が遅れているとなると…後はナオミの援護を待つか?」
「ナオミの方は丈二を抑え込んでもらうそうだ。民間施設に襲撃を仕掛けるのを許す男ではない」
「世間体ヲ気ニシテ巨悪ヲ野放シニスルカ…愚カナ。大事ノ前ノ小事デアロウ?」
「融通が利かない男なのだろう。この世界でのあの男は元警察官だそうだからな…」
「どうするよ?尚紀達の到着をチンタラ待ってたら敵が逃げ出しちまうかもしれねーだろ?」
人修羅として生きる尚紀の仲魔の中で彼に次ぐ判断力を持っているのはクーフーリンだ。
彼は現場に現れない尚紀に代わって判断を下してくれる。
「…仕方ない、我々だけで潜入を行う。目的は敵施設内で暴力革命に関する情報を集めることだ」
「犬っころに仕切られるのは釈然としねーが…賛成だ。敵を前にしてお預けなんてごめんだしな」
「異論ハナイ、我々ダケデ速ヤカニ終ワラセテヤロウデハナイカ」
決断を下したクーフーリン達が動き出す。
警備を固めたと思われる製薬会社研究所の敷地内へと飛び入り激戦を潜り抜ける事になるだろう。
その頃、尚紀とライドウ達は現場に向かう事が出来ない状態が続いている。
彼らは異界に飲み込まれており夜空から現れた天馬に乗る謎の存在に行く手を阻まれていたのだ。
「ば……バカな……なぜ生きている……?」
青ざめた表情を浮かべながら空を見上げる尚紀。
東京の守護者として生きてきた男は驚愕を隠せない表情を浮かべている。
「……お久しぶりです。そして、初めまして……我らが混沌王様」
ペスト医者が着ているようなカソックコートを身に纏い、襟元を口元までボタンでとめる謎の女。
頭には折り曲げられた三角帽子を被り、目元以外の顔は見えない。
その姿こそ、かつての東京に大破壊をもたらしたペンタグラムに属した魔法少女の姿だった。
「どうした…?あの女を知っているのか?」
「ああ…知っている。かつて東京に現れた魔法少女チームの1人であり…大虐殺を実行した女だ」
歴史に名を残す程の大虐殺を実行した存在だと分かったライドウの目に怒りの炎が宿る。
彼の横にいるオルトロスも空に向けて唸り声を上げていくのだ。
白銀の馬鎧を纏い、
異形の悪魔から下りてきた長身の女性が彼らの元に歩み寄ってくる。
その手には銀細工の鞘に収められたロングソードを持っているが剣の形状が違うようだ。
「……随分と日本語が上達したようだな?……ルイーザ!!」
現れた存在こそ、ペンタグラムに与しながら工作員でもあった存在。
自分の身を犠牲にしてでも人修羅を鍛えるためにその身を捧げた魔法少女。
しかし今のルイーザは魔法少女と呼べる存在などではない。
折り曲げられた三角帽子の下側に見える両目は悪魔を表す真紅の瞳をしていたのであった。
人修羅とライドウの友情シーンを描くのは楽しいですね!
メガテンネタを扱う小説だから神話を絡めた悪魔会話も突っ込んでいきたいです。