人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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233話 造魔工場

「なんやとぉ!?襲撃を仕掛けてきた悪魔は何処の手の者なんや!?」

 

地下研究所のモニタールームで驚きの声を上げるのはドクタースリルである。

 

彼に向けて報告を行っているのはモニターに映ったダークサマナーのようだ。

 

<<奴らの力はあまりにも強力です!増援として造魔を送ってもらえませんか!>>

 

「…よし、増援を送ったる。それ程の実力がある悪魔なら捕えて造魔の元にしたるわ!」

 

通信を終えたスリルはモニタールームの強化ガラスの外に見える工場に視線を向ける。

 

そこにはオーダー18用の造魔工場が見えるのだが中身は全てカラである。

 

造魔部隊の製造を終えたスリルは荷物を搬出し終えており、計画の準備を整えていたのだ。

 

「まさか…ここを嗅ぎつけてきた連中の目的はオーダー18用の造魔部隊なんか?」

 

敵の目的を考え込んでいたが、くだらないのか考えるのをやめてしまう。

 

「まぁええ、わしにとってはどうでもええわ。わしは金さえ出してくれたらそれでええんや」

 

モニタールームから出てきたスリルが向かう場所とは特別な造魔を製造する施設。

 

彼はここでオーダー18用に作られた戦闘造魔を遥かに超える造魔研究を行ってきた。

 

「わしが算出した造魔製造費用はのぉ…0を一つ多めにしたんや。お陰で研究費用はウハウハや」

 

ユダヤ財閥や門倉の財団を出し抜いて得た莫大な研究費用を懐に収めたスリルは暗躍する。

 

彼の目的とは究極の造魔を生み出す事であり、イルミナティの理想など関係ない。

 

そう考える者だからこそ好き勝手に造魔研究を続けられてこれたのだ。

 

「さぁ、わしの研究所に土足で乗り込んでくるアホ共をいてまうで!お前ら!!」

 

機械に繋がれた巨大な試験管の扉が開き、中から四体の造魔が下りてくる。

 

二体は坂東宮攻略戦にも参加した事があるガルガンチュアQとガルガンチュアXのようだ。

 

「トホホホゥ。まーた同じ姿で製造されたようである。このスーツの見た目、何とかならん?」

 

「やかましいわ!わしのスーツは完璧なんや!文句あるならそのスーツ脱いで戦えや!!」

 

「それは困る!お肌がデリケートな造魔は外気に当たると全身が痛むのである!」

 

「困るのはこっちの方だ…またコイツと組まされる事になるとはな…」

 

やる気のない異形甲冑騎士ではあるが、前部と後部が繋がった体の頭部を同時に横に向けてみる。

 

奥の試験管から出てきたガルガンチュアシリーズの姿も異質さを全身で表現する存在のようだ。

 

「クゥーホー…クゥーホー……スリル様、ワタクシハ何ヲスレバイイノデスカ?」

 

少女の声を出す造魔であるが、その姿はQやXを凌ぐ程の異形をした悪魔少女である。

 

色白の肌を豪華なゴスロリ風ドレスで覆う姿だが、肩から胸部は突起した機械を身に着けている。

 

頭部は試験管ガラスで覆われており、金髪をした少女造魔の顔は髑髏そのもの。

 

試験管に備わった呼吸装置のようなもので息をしながら会話をする異形の造魔。

 

彼女の名称はガルガンチュア・ゼロと呼ばれたようだ。

 

「ゼロは侵入者から管理コンピューター室を守るんや。目的は恐らく研究所のデータが狙いや」

 

「フゥゥ……承知シマシタ。ワタクシニ、オマカセクダサイ」

 

礼儀を示すためにスカートの裾を両手で摘まみながらお辞儀のカーテシーを行ってくる。

 

見れば頭部の試験管の上から纏うボンネット風ヘッドドレスが緩んでおりズレてしまう。

 

それを後ろ側から直してくれる存在こそ、スリルの造魔研究の集大成ともいえる造魔だった。

 

「クゥーホー……アリガトウ。優シイノネ、ガルガンチュア8」

 

ガルガンチュア・ゼロが後ろを振り向けば、そこに立っていたのは長身の格闘家を思わせる造魔。

 

黒いカンフー着を纏い、逆立てた黒髪の下にはハチマキが巻かれており能面のような顔を見せる。

 

外気に弱い肌をもつ造魔でありながら素足と両腕を晒す筋骨隆々の姿は弱点を克服した証だろう。

 

傍から見れば悪魔人間と変わらない完成度を誇る存在こそ、ガルガンチュア8なのだ。

 

「フホホホゥ。普段は無口なくせに紳士な態度がいけ好かないのが8である」

 

「お前のようなお調子者に調整された造魔よりはマシだ。スリル様、我々は如何様に?」

 

「おう、お前らは研究所に入り込んだ連中が辿り着くだろう休憩広場で迎え撃てばええで」

 

「ホホホホゥ!この無敵のランパート・スーツで侵入者をぶちのめす!見た目はアレだが…」

 

研究所の部屋から出て行く造魔達を見送るスリルは腕を組みながら先を計算していく。

 

自慢の造魔達の実力を疑いはしないが、それでも万が一の可能性もあるだろう。

 

逃げ出して雲隠れする算段をしていた時、入り口の方から叫び声が聞こえてくる。

 

「ヌォォォォーーッッ!?この入り口は狭過ぎるのであるーーッッ!!」

 

見ればガルガンチュアQが入り口に引っかかっており、外側ではXが引っ張り出そうとしている。

 

ランパート・スーツのせいで着膨れしてしまい、入り口に体を突っ込んだまま出れないようだ。

 

「クゥーホー……Qノヨウナ調整ヲサレナクテ本当二ヨカッタ。アラ、8……?」

 

つっかえて出れないQの前に立つ8が右手を伸ばしながら拳法の構えを行う。

 

「……フンッ!!」

 

揃えて伸ばした右手が握り込まれた瞬間、ガルガンチュアQの巨体が前に突き飛ばされる。

 

ガルガンチュア8が放った技とは人修羅が得意とする寸勁であるワンインチ・パンチだった。

 

「「ヌフゥ!!!?」」

 

入り口を壊して飛び出せたQではあるが、引っ張り出そうとしていたXごと壁にめり込んでいた。

 

「……オレより強い奴に会いに行く」

 

倒れ込んでいるQとXを無視しながら歩き去っていく8とゼロを見送るスリル。

 

ガルガンチュア8の調整は十分だとその力を確信しているかのような笑みを浮かべるのだ。

 

「流石はわしの最高傑作や。肉体そのものが武器になる格闘専用造魔の力なら安心やな」

 

「トホホホゥ……わたくし達も行ってきますぞ」

 

「くそっ……どうして私は貧乏くじばかり引かされるのだ?」

 

ふらつきながら歩いていくQとXを見ていると先程の自信が不安になってくるようだ。

 

「……やっぱ逃げ出す算段だけはしといた方が良さそうや」

 

地下研究所の番人を務める造魔達が動き出し、クーフーリン達を待ち構える布陣が敷かれる。

 

性格に難有りなスリルの造魔達ではあるが、実力だけなら魔法少女を上回る性能を持つだろう。

 

ここはマッドサイエンティストが支配する霊長知能総研と呼ばれる研究所。

 

人類の進化を悪魔を用いて人為的に行う狂気を実行する施設なのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

製薬会社の研究所に乗り込んだクーフーリン達は警備会社の者達を相手に奮戦していく。

 

警備会社の現場責任者に暗示の魔法をかけたクーフーリンは地下研究所の存在を突き止める。

 

警備責任者を操りながら地下研究所に下りれるエレベーターに入り込み地下を目指す。

 

エレベーターが開いた時、地下研究所の警備を行う者達が銃を構えてくる。

 

「撃てェェェェーーッッ!!!」

 

銃弾がばら撒かれていき前に立っていた地上警備の責任者が蜂の巣にされていく。

 

咄嗟の判断を下したケルベロスが撃たれていく責任者の背中に体当たりを行う。

 

<<ぐわっ!?>>

 

突き飛ばされた男を壁として利用した事によって銃を構えた男達に覆い被さりながら倒れ込む。

 

打って出るクーフーリンとセイテンタイセイによって倒れ込んだ者達は昏倒させられたようだ。

 

「感じるか?大きな魔力を秘めた悪魔が四体潜んでいるぞ」

 

「中々の連中のようだが、その中でも飛びぬけて魔力が強い奴がいる。俺様が相手をしてやるよ」

 

「我ラノ役目ヲ忘レルナ。我ラノ目的ハ、コノ研究所ノ調査ダ」

 

「ケルベロスの言う通りだ。この施設の情報を抜き取るなら管理コンピューター室がいいだろう」

 

「チッ、分かってるよ…そっちは犬っころ共に任せておく。俺様は露払いといこうじゃねーか」

 

人修羅の仲魔達は彼の望みを果たすために警備部隊を相手に果敢にも戦い、突き進んでいく。

 

東京の守護者として生きてきた尚紀の事情ならば聞かされてきた彼らであるが思想は違う。

 

社会悪となった魔法少女と戦う事には協力しないが、啓明結社が絡むならば別なのだろう。

 

悪魔とは望むままを行う自由主義者であり、人修羅といえども彼らの自由を束縛出来ない。

 

この協力もまたイルミナティ勢力への報復を兼ねているからこその協力関係に過ぎなかった。

 

逃走防止用の鉄格子付きの通路を超えながら彼らは地下研究所の奥へと進んでいく。

 

実験室や薬品室などを超えていくと研究員用の休憩広場にまで辿り着けたようだ。

 

<<ホホホホゥ!!そこまでである!!>>

 

吹き抜け構造の休憩広場を見上げれば二階部分から見下ろしてくる造魔達がいる。

 

一体はガルガンチュアQであり、もう一体はコンビをやらされるガルガンチュアXのようだ。

 

「あいつら…ただの悪魔じゃねーな。悪魔と悪魔を繋ぎ合わせた造魔なのかも知れねーぞ」

 

「ジャンヌとリズとは兄妹のような存在か…。人型以外にも造魔は様々な個体がいるようだ」

 

「造魔ガ現レルナラバ、コノ施設ハ造魔ト関係ガ深イ施設ナノダト判断スルコトガ出来ルナ」

 

二階部分から飛び降りてきたガルガンチュア達が戦闘態勢を見せてくる。

 

迎え撃とうとするクーフーリンとセイテンタイセイに向けてケルベロスがこう告げる。

 

「ココハ任セロ。オマエ達ハ目的ヲ果タストイイ」

 

「犬っころこそ引っ込んでろよ。美味しい思いをしたいのは俺様だって同じなんだ」

 

「大キナ魔力ハ四体分感ジタ。ナラバ、コイツラダケガ相手デハナイ」

 

「…分かった、ここは任せる。我々は奥に向かわせてもらおう」

 

「しゃーねーな。この奥にはコイツらよりも歯ごたえがありそうな奴が出てきて欲しいもんだ」

 

クーフーリンとセイテンタイセイが奥に向かおうとするのだがXが立ちはだかってくる。

 

「ここは通さん!我が剣の錆びにしてくれるわ!!」

 

「貴様ラノ相手ハ我ダァ―ッッ!!」

 

突撃してきたケルベロスに弾き飛ばされたXを援護するためにQも剛腕を振り上げてくる。

 

激しい戦いを繰り広げる者達を超えながら二体の悪魔達は研究所の奥を目指す。

 

だがセイテンタイセイが立ち止まり、横の扉に視線を向ける。

 

「どうした?」

 

「…犬っころは先に行け。テメェだって感じてるんだろ?」

 

「…ああ、この奥からとてつもない魔力を感じる。このまま奥に行けば挟撃されるやもしれん」

 

「そういうことだ。癪に障るがテメェの背後を守ってやる。行ってこい」

 

「…分かった。やられるなよ」

 

「誰に言ってんだ?俺様は天下に名立たる孫悟空様だぜ!」

 

この場を任せたクーフーリンは研究所の奥に向かうために階段を下りていく。

 

彼が向かう先に見えたのは電算室と並ぶようにして設けられた管理コンピューター室のようだ。

 

「ここだな…」

 

中に入れば職員達は逃げ出したのか誰もいない。

 

管理コンピューター室からは電算室の光景が見えており、ガラスの向こう側は冷気が漂っている。

 

クーフーリンは白銀鎧の懐からデータを抜き取るためのフラッシュメモリを取り出す。

 

管理端末のUSBにメモリを刺して機械操作しようとした時、目の前のガラスが砕け散る。

 

「くっ!?」

 

咄嗟の判断で横っ飛びを行い、飛来してきた魔法攻撃を回避する。

 

壁に突き刺さったのは複数の氷の槍であり、危うく串刺しにされるところであった。

 

立ち上がって砕けたガラスの向こう側を見れば冷気の中から禍々しい造魔の姿が現れたようだ。

 

「クゥーホー……ココハ、ガルガンゼロノ場所。美シイ男悪魔ネ…アナタハダレ?侵入者ナノ?」

 

「面妖な造魔め…この冷気は貴様が発するものか?邪魔立てするならば…容赦はしない!!」

 

「寒イ所ハ、ワタクシノ場所…。スリル様ノ命令…ココヲ守ルノガ…ワタクシノ使命…」

 

跳躍したクーフーリンがガラスを突き破って電算室の中へと入り込み、魔槍を構える。

 

迎え撃つゼロは両胸に備わった突起型のファンを高速回転させながら冷気をばら撒く。

 

「クゥーホー……ワタクシノ邪魔ヲスルナラ…許サナクテヨ…フゥゥ……」

 

「どんな存在であろうとも我が槍は迷いなく心臓を貫く!臆する事ないならば…くるがいい!!」

 

電算用の機械が並ぶ極寒の世界で戦いが繰り広げられていく。

 

その光景は他も同じであり、人修羅の仲魔達はスリルの造魔を相手に死闘を繰り返すのだ。

 

それでも人修羅とライドウ達は援軍としてこの場に現れることはない。

 

戦いながらも彼らは感じているはずだ。

 

人修羅とライドウの元にも刺客が差し向けられていると考えるのが自然なのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

サンプル室に入り込んだセイテンタイセイは機械に繋がれた試験管の列を超えていく。

 

緑色に輝く培養液の中には肉塊となった悪魔や魔法少女達の成れの果てが浮かんでいる。

 

バラバラにされたこれらサンプルは標本にされたかのようにして陳列されているのだ。

 

「魔法少女と造魔を掛け合わせようとして失敗した作品群といったところか?くだらねーな」

 

興味無さそうにサンプル列を超えていくと長身の格闘家が立っている姿を見つけだす。

 

立ち姿だけで只者ではないと見抜いたセイテンタイセイの口元には不敵な笑みが浮かぶのだ。

 

「へぇ…造魔の中には武術家をやれる個体もいるようだな?」

 

黒い道着を纏う造魔もまた感情が希薄な態度をしているようだが、鋭い目を向けてくる。

 

「……キサマはオレよりも強い者か?」

 

それを問われるセイテンタイセイは左手に持つ如意棒を消し去り、両手を鳴らしていく。

 

「試してみるか?俺様と戦えるチャンスなんてそうそうないぜ…なにせ、俺様は武神だからな」

 

武神という言葉を聞いた瞬間、目の前の造魔の表情が変わっていく。

 

その顔つきは猛き武道家のようになり、武道家として武神を相手に敬意を示す言葉を発する。

 

「よくぞオレの元まで来てくれた…それも独りでな。ならば武道家として礼儀を示そう」

 

組んでいた腕を解き、両拳を握り込んでいく。

 

いつでもかかってこいと言わんばかりの造魔であるが、不意に構内放送が聞こえてくる。

 

<<ケケケケ!飛んで火にいる夏の虫共が!何処のアホやろうと、わしの造魔が捻り潰すで!>>

 

「うるせぇ!!武道家同士の一騎打ちに横やり入れるんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!!」

 

<<な、なんやこの猿悪魔!?武道なんぞ関係ないで!どんな手段を使ってでも勝つんや!>>

 

「……いや、オレは拳法以外を使うつもりはない。悪いな、ドクタースリル」

 

<<このドアホ!?生みの親のわしに逆らう気か!?お前の思考回路にバグが出てるんか!?>>

 

「誰もオレの戦いの道を止められない……オレは強い奴と戦いたい!正々堂々とな!!」

 

燃え上る闘志を発する造魔の姿はもはや人間と変わらない。

 

これ程までの完成度を誇る造魔ならば、ペレネルが生み出したタルトとリズにも匹敵するだろう。

 

武道家として感情に目覚めつつあるガルガンチュア8の覚悟を受け取った者が両手を上げていく。

 

何をするのか理解している8もまた両手を上げていく。

 

彼らが行うのは武道家としての礼儀である抱拳礼(ボウチェンリィ)である。

 

「勝っても負けても怨みっこなしだ。さぁ、テメェの実力を見せろ…斉天大聖を相手にな!!」

 

「斉天大聖孫悟空と戦えるとは…光栄の極み!!武道家として…全力を出させてもらう!!」

 

互いが握った拳を包み込むようにして両手を合わせる。

 

彼らが行った抱拳礼の形とは武を司る右手で文化を司る左手を包み込む形。

 

武道家同士が死合うために行われる礼であり、命を懸けた闘争を行おうという挑戦状だ。

 

「行くぜェェェーーッッ!!オラオラオラァ!!!」

 

「来いやァァァーーーッッ!!!」

 

互いの拳と拳がぶつかり合い、拳法家同士の真剣勝負が始まっていく。

 

激戦を繰り返すのは他の仲魔達も同じのようだ。

 

二体の造魔を相手にするケルベロスは物理を防ぐQと攻めを担当するXの猛攻に晒されていく。

 

剣と盾となった造魔コンビの連携攻撃に苦戦するのだが、勝機を見出す時が来る。

 

「アチチチチッッ!!!」

 

ケルベロスを掴んで首をへし折ろうとしたガルガンチュアQの体が燃え上っていく。

 

ランパート・スーツは物理を無効化するが魔法を無効化する力は備わってはいない。

 

地獄の業火を周囲に放って拘束から抜け出したケルベロスに目掛けて異形の騎士が魔法を放つ。

 

「地獄の番犬め!!魔法を得意とするのは貴様だけではないと知れ!!」

 

背中合わせに繋がり合った黒騎士を思わせるガルガンチュアXがマハブフーラを放ってくる。

 

しかしケルベロスは邪教の館で氷結無効スキルを手に入れており氷結魔法を無効化するのだ。

 

猛突進を仕掛けてくるケルベロスに向けて体を高速回転させながら武器を振り回す。

 

ランスとロングソードが振り回される中、ケルベロスの側面から一撃が迫りくる。

 

「なんだとぉ!!?」

 

急停止したケルベロスは獰猛な口を大きく開けてランスの一撃に齧りつき、動きを止めてくる。

 

鍔迫り合いのような形となったケルベロスに目掛けて後方から燃え上る敵が一撃を狙う。

 

「そこを動くなぁぁーーッッ!!」

 

巨体の拳を振り下ろして叩き潰そうとするが、ケルベロスは齧りつくランスを強く引っ張る。

 

「「グアァァァーーーーッッ!!?」」

 

武器ごと持ち上げられたXが後方から迫るQの巨体にぶつけられ、弾き飛ばされる。

 

壁にぶつかった造魔達に向けて口に咥えたランスを真上に向けて投げ飛ばし、尻尾で掴み取る。

 

尻尾から魔力を注ぎ込まれたXのランスが業火を纏い、ケルベロスは体を旋回させていく。

 

遠心力を纏わせたランスが尻尾から放たれ、バリスタ砲の一撃の如く射出。

 

「「グフッ!!?」」

 

魔法の力を帯びたランスの一撃がガルガンチュアQとXの体を一本刺しの如く貫いている。

 

炎のランスによって燃え上る造魔達を見つめるケルベロスは最後にこんな言葉を残す。

 

「作ラレタ造魔故二自由ヲ失ウカ…貴様達ニハナカッタノカ?勝ッテデモ手二入レタイモノガ?」

 

「手に……入れたい……ものだ…と……?」

 

「ソレヲ見出セナイ者二、力ハ得ラレナイ。欲深キエゴモマタ…人間ヤ悪魔ヲ強クスルノダ」

 

「わたくしに…足りなかった…欲…。それを与えてはくれなかった…だから…負けたのですか…」

 

「フッ……ならば仕方ない。次に生まれるなら…まともな騎士として……生きたいもの…だ……」

 

「わたくしも…次に生まれるなら……美しい姿で……人々に愛される……悪魔に……」

 

燃え上る造魔達の体が砕け散り、MAGの光となる最後を残す。

 

燃え残った炎の中では造魔の元であるドリー・カドモンが残っているが炎で焼き尽くされていく。

 

「歪ンダ生命ノママデアッテモ…欲望二焦ガレルカ。貴様ラモマタ、悪魔ラシサヲ秘メテイタナ」

 

勝敗は決したため、ケルベロスはクーフーリンの援護に向かう後ろ姿を残す。

 

勝敗が決したのはクーフーリンの方も同じだったようだ。

 

極寒の電算室で戦いを繰り広げるクーフーリンはガルガンチュア・ゼロの猛攻を浴び続けている。

 

彼女が放つ魔法とは雹の雨を相手に叩きつける『アイオンの雨』である。

 

「クゥーホー……フフッ、ソノママ氷漬ケニナルトイイデスワ」

 

暴風の勢いのまま雹を全身に叩きつけられるクーフーリンは逃げ場もなく耐え続けている。

 

体中に雹が付着して凍り付き、このままでは身動きがとれないまま冷凍保存されるのみだ。

 

しかしクランの猛犬の名を持つ彼の両目には些かの恐怖心も浮かんでいない。

 

「氷結魔法を得意としているようだが…これならどうだ!!」

 

手足の末端が凍傷によって黒ずみながらも片手を持ち上げてルーン文字を描く。

 

「キャァァーーーーッッ!!?」

 

電算室が燃え上り、炎に耐性のないガルガンチュア・ゼロの衣服に炎が燃え移る。

 

クーフーリンが放ったのは全体炎魔法のマハラギオンであり、彼女の弱点を突く。

 

アイオンの雨が止んだのを見計らい、凍り付いた体を無理やり動かしていく。

 

「熱ィィィィーーーッッ!!助ケテ…スリル様…!!熱ィィィィーーーッッ!!!」

 

地面を転げ回ってどうにか燃え移った炎を鎮火させたようだがドレスはボロボロだ。

 

酸素マスクが無ければ息もまともに出来ないゼロは過呼吸となってしまい錯乱状態が続いている。

 

無防備な姿を晒す敵に情けをかけるクランの猛犬ではなかった。

 

「ガフッ……ッッ!!?」

 

ガルガンチュア・ゼロの胸を貫いたのは魔槍ゲイボルグの矛である。

 

頭部を覆う試験管の中で吐血したため試験管の内側は血塗れとなってしまう。

 

「哀れな造魔娘よ…眠るがいい。今度生まれてくる時は…美しい姿で生まれ変われるといいな」

 

造魔の自分の姿に憐みを向けてくる者の気持ちを受け取ったゼロは困惑する。

 

意識が途切れていく中、最後にこんな言葉を残してくれる。

 

「ワタクシ二……次ガ…アルナラ……鏡ヲ見テモ……辛クナラナイ……顔ガ…欲シ……」

 

体が弾けてMAGの光を残す最後を迎えるガルガンチュア・ゼロ。

 

感情が希薄な造魔であっても彼女は女性であり、顔は女の命そのもの。

 

女の顔を髑髏にされてしまった彼女の心の辛さは想像を絶するものがあったのだろう。

 

「生まれた命を私利私欲のために玩具にするか…貴様だけは絶対に許さんぞ!狂気の科学者!!」

 

構内放送から聞こえてきたスリルに向けて怒りの叫びを上げるが体は満身創痍である。

 

何とか体を動かそうとするが凍傷ダメージが酷く、電算室から出てきた時に倒れ込んでしまう。

 

「くそっ…私は回復魔法に秀でる者ではない…。こんな時…ピクシーかティターニアがいれば…」

 

かつての仲魔に頼ろうとする己の未熟さを呪いながらも地面を這いつくばりながら進んでいく。

 

ここで機密情報を会得しなければ東京にもたらされる災厄を止める方法はないだろう。

 

侵入者に敗れ去る造魔をモニターで見ているスリルも慌てふためき、逃げる準備を始めてしまう。

 

そんな時、地下研究所に響き渡るのは機密保持コードが承認された警告音声である。

 

<<<緊急事態コードを承認。研究区画を放棄せよ。職員はただちに避難区画に逃げて下さい>>

 

「な、なんやとぉ!?わしはまだ緊急事態コードを承認しとらんで!?」

 

モニタールームで驚きの叫び声を上げるスリルに対して、並んでいるモニターに門倉が映る。

 

<<緊急事態コードは遠隔操作させてもらったよ。造魔工場は機密保持のために放棄する>>

 

「門倉!!わしがまだ研究所にいるというのに…どういう了見やねん!?」

 

<<君も研究所と共に消えてもらう。我々が開発費の横領に気が付いてないとでも思うのか?>>

 

「気が付いてないフリをしながら…わしを消す算段をしとったのか!?後生や…助けてくれ!!」

 

<<断る。我々のような秘密主義団体は外部の者など信じない。利用だけはさせてもらうがね>>

 

モニターごしに嘲笑う門倉の顔に拳を叩きこんで砕くスリルであるが、もはや時間がない。

 

彼はあらかじめ逃げ出す準備だけは終えていたため研究成果を纏めた鞄を背負って脱出していく。

 

造魔工場が次々と爆発していき、証拠隠滅と共に地下研究所の崩壊が始まってしまう。

 

人修羅の仲魔達は地下研究所の崩壊に飲み込まれてしまう危機が迫っていたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ハァ…ハァ……やるじゃねーか?造魔なんぞにしておくのは勿体ないぐらいだぜ」

 

サンプル室で死闘を繰り返す武術家達。

 

武神に挑んだガルガンチュア8の体はボロボロであるが、セイテンタイセイの体にも痣が見える。

 

武術の神である彼の息を切らせる程の性能を与えられていた造魔であるが、それだけではない。

 

ガルガンチュア8の心の中には武道家としての魂が宿っており、心技体が完成している。

 

それら三つが合わさることにより与えられた性能以上の力を発揮してきたのだ。

 

「フッ…ドクタースリルに感謝しよう。武神と戦えた事は…短い命の中で最高の思い出となった」

 

達人同士の戦いによってサンプル室の試験管は砕け散り、中身を撒き散らす空間で互いが動く。

 

「「ハァァーーーッッ!!!」」

 

8の両腕から放つ突きを左右の肘で弾き、セイテンタイセイの後ろ回し蹴りを顎を引いて避ける。

 

反撃の後ろ回し蹴りを避ける相手の両足を刈るために後掃腿を放つ。

 

だが相手に読まれており、跳躍して体を横倒しに回転させながら蹴り足を避けきる。

 

着地したセイテンタイセイが前蹴りを放つが右手で弾き、跳躍して旋風脚を狙う。

 

蹴り足が迫る中、猿のように身軽なアクロバット回避を行いながら後方に移動していく。

 

連続旋風脚から着地した8が手刀打ちを狙うが、左腕で受け止められた直後に顎が打たれる。

 

「ガハッ!!」

 

アッパーカットで打ち上げられて怯んだ相手に目掛けて左腕を引き絞り、崩拳突きを狙う。

 

しかし怯んだ筈の8が左に踏み込み、崩拳を避けると同時にカンフータックルを狙う。

 

「ぐはっ!!」

 

鉄山靠が直撃したセイテンタイセイが試験管を砕きながら部屋の端まで弾き飛ばされる。

 

倒れ込んだ相手に目掛けて飛び蹴りを狙うが、立ち上がった瞬間に跳躍回転。

 

飛び後ろ回し蹴りが8の頭上を越えるが、反対の足で奇襲蹴りを放つガイバーキックがヒット。

 

側頭部を蹴られて怯む相手に向け、一気に仕掛ける。

 

「オラァァァァーーッッ!!!」

 

「来いやぁぁぁぁーーーッッ!!!」

 

迎え撃つガルガンチュア8も雄叫びを上げながら最後の攻防を放つ。

 

互いの突き、蹴り、膝蹴り、肘打ち、払い動作が連続して繰り返されていく。

 

「ぐふっ!!」

 

猛虎硬爬山の連携攻撃を浴びたセイテンタイセイが後退ったチャンスを相手は逃さない。

 

踏み込んで伸ばした指が一気に握り込まれ、ワンインチ・パンチがクリーンヒット。

 

「なんだとぉ!!?」

 

攻撃を決めたはずの8が驚きの声を上げてしまう。

 

決まったはずの一撃の感触はまるで木の葉のようであり、相手は後方に飛びながら着地する。

 

「…まさか俺様に化勁を使わせるとはな。ボルテクス時代の尚紀でも引き出せなかったぜ」

 

「ベクトルコントロールを行って()()()()()()()()出来る程の達人だったか…流石は武神だ」

 

「テメェは最後まで魔法を使わない武術家だった。俺様も敬意を表すぜ」

 

互いに拳法の構えを行い、最後の一撃を放つ構えを行う。

 

「勝負だ!!斉天大聖孫悟空!!」

 

「来な!!本物の武術家を貫いたテメェと戦えた事が…最高の感激だったぜ!!」

 

構えたガルガンチュア8の拳が握り込まれ、大きく跳躍しながら冲捶突きを放つ。

 

迎え撃つセイテンタイセイの体が揺れ、冲捶突きを放つ一撃を避けながら肘打ちを胸に決める。

 

「がふっ!!」

 

胸骨が砕けて吐血する相手の右手を掴み、肩に乗せながら肘関節を砕く。

 

腕を掴んだまま踏み込み、心臓に目掛けて掌底打ちが放たれる。

 

発頸の一種である浸透頸によって心臓が破壊されたガルガンチュア8がついに倒れ込んでいく。

 

「見事…だ……。オレより…強い奴と…戦えて……幸福……だっ…た……」

 

体が砕け散り、MAGの光を撒き散らす最後を見届けたセイテンタイセイは寂しそうにこう告げる。

 

「うちのバカ弟子に見習わせたいぐらいの男だ。テメェこそ()()()()()と呼ぶべき武道家だった」

 

勝利の余韻を感じている暇もなく、研究所の地下から巨大な振動が襲い掛かってくる。

 

サンプル室から飛び出すとクーフーリンを背中に背負ったケルベロスと出くわしたようだ。

 

「コノ研究所ハ爆発スルゾ!!急イデ逃ゲネバナラン!!」

 

「分かってるよ!それよりも情報は抜き出せたのか!」

 

「クーフーリンヲ見レバ分カルダロウ!無念ダガ、今回ハ諦メルノダ!!」

 

「チッ!!油断なんてするからこうなるんだ!このバカ犬が!!」

 

急いで地上エレベーターを目指して駆けていく人修羅の仲魔達。

 

研究所の崩壊はもはや止められず、次々と爆発が起きていき地上の建物まで崩れていく。

 

地下研究所の最下層にあった脱出用の地下水路の前ではドクタースリルが倒れ込んでいる。

 

天上が崩落して瓦礫に埋まってしまった彼は最後にこんな言葉を残すのだ。

 

「こんなの嘘や…!!この天才科学者ドクタースリル様がこんな場所で死ぬやなんて…嘘や!!」

 

天上の崩落は止まらず、上半身にも瓦礫が落ちてきた事によりドクタースリルは死ぬ事となる。

 

私利私欲の為に造魔を生み出し、悪魔を召喚する為に魔法少女を生贄にした男の最後であった。

 

……………。

 

「まったく……骨折り損のくたびれ儲けだったな」

 

崩れ去った製薬会社のビルから離れた路地裏では脱出出来たセイテンタイセイ達が立っている。

 

周囲は土煙が漂っており、騒動が広がる前に撤収しなければならないようだ。

 

「すまん……不覚を取った。あの研究所で情報を得られなかったのは不味いな…」

 

「済んだことだ、気にすんな。それよりも…尚紀やライドウ達はどうして来なかったんだ?」

 

「感ジルダロウ…コノ恐ロシイ魔力ヲ。ドウヤラ刺客ヲ差シ向ケラレテイタヨウダ」

 

「なるほどな…どうりで来れなかったわけだ。俺様達も援護に向かうぞ」

 

「我ハ手負イトナッタ背中ノ男ヲ探偵事務所ニマデ運ブ。後カラ応援二向カオウ」

 

この一戦においてオーダー18の情報を得られなかった事は後々にまで響いてくるだろう。

 

革命部隊の正体を突き止める証拠を用意出来ないのであれば、彼らの正体は思うがままだ。

 

テロリストに仕立て上げられた造魔部隊は目的達成のために大きく貢献することになっていく。

 

それによって門倉の目的は達成されることになるのだ。

 

地獄の門を表す男は人々を地獄へと誘うだろう。

 

民衆は門倉を希望だと讃えながら地獄門の中へと導かれていく未来が待っているのであった。

 




陰鬱極まりないボクの駄作の中で貴重なギャグキャラでしたが、スリル連中には退場してもらいます。
キャラが多過ぎて扱いきれなくなった大人の事情があるので(汗)
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