人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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236話 私は私のまま生きる

漆黒の世界で戦い合うのは大魔王の代理人を務められる程の魔王と冥界の神。

 

互いに放ちあう呪殺の魔法と破魔の光がぶつかり合い、漆黒の世界に戦いの色を浮かべていく。

 

だが冥界の神の力をもってしても大魔王の代理人を務める魔王の力を押し止められない。

 

「ぐわァァァァーーッッ!!」

 

物理属性の波動を生み出し敵全体に大ダメージを与える冥界波を浴びたアヌビスが倒れ込む。

 

宙に浮かび上がったまま微動だにしないメフィストは高笑いを上げながらおどけてみせる。

 

「どうしたのかね、ご老人?悪魔の力を手に入れても私に聖なる光を浴びせる事も出来ないか?」

 

アンクの杖を地面に突き立てながら立ち上がるアヌビス。

 

血反吐を吐きながらも彼の目には闘志が宿り続けているようだ。

 

「…鼻が麻痺する程の悪臭を撒き散らしてくる。ラテン語で悪臭を愛する者とも呼ばれるわけだ」

 

メフィストの体から放たれる『淀んだ空気』を浴びたアヌビスは幻惑状態となっている。

 

視界に映るメフィストの姿もぼやけており、その姿が複数に見えるため命中率が落ちているのだ。

 

立ち上がったアヌビスが杖を構え、アンクから破魔の雷火を発射する。

 

だが幻惑状態では的を捉えられないため、メフィストは両手をオーバーに持ち上げながら嘲笑う。

 

「クックックッ、悪魔となった以上は貴様も不死ではなくなった。無駄に命を散らす事になる」

 

メフィストは剣を抜くまでもないと判断したのか、片手を上げながら魔法を放ってくる。

 

放たれたのは敵単体に特大威力の火炎属性攻撃を与える『アギバリオン』の一撃。

 

アギダインを遥かに超える超巨大な大火球が迫る中、アンクの杖を掲げて魔法を行使する。

 

「ぬぅ!?」

 

魔法反射フィールドを張る魔法のマカラカーンを行使したためアギバリオンが跳ね返される。

 

宙に浮いたメフィストが回避行動をとるが、動いた目標に目掛けてアヌビスが仕掛けるのだ。

 

「喰らうがいい!!」

 

懐から取り出した四種類の宝石を指で挟み取った彼が投げ捨てる。

 

投げ放たれた宝石が光りを放ち、四属性の魔法が一気に解放されていきメフィストに襲い掛かる。

 

「宝石に魔法の力を込めていたか!!」

 

四属性全体攻撃魔法が放たれた事により、分身したメフィストの一体にダメージが通ったようだ。

 

「悪臭の臭いが払われたな。くさい悪臭は風で吹き飛ばすに限る」

 

四つの宝石のうち風魔法が解放された一撃を浴びたメフィストの悪臭が吹き飛ばされている。

 

忌々しい表情を浮かべながらも右手を掲げ、マハムドオンを仕掛けてくる。

 

迎え撃つアヌビスはアンクの杖を掲げ、マハンマオンを放つ。

 

呪殺の魔法陣の上に破魔の光が降り注ぎ、相殺する眩い光景が暗闇の世界に生み出されていく。

 

自分の嫌いな光を操る者に向けて紫の瞳をもつメフィストが呪い殺す程の視線を向けてくるのだ。

 

「…ニコラス・フラメル。ペレネルと出会い錬金術の道に進んだ者よ。貴様も光を求めたのか?」

 

「私が光を求めたのかだと…?」

 

「ペレネルは知恵の光を求めた者。ルシファー閣下を求めるグノーシス主義者と同じなのだよ」

 

「私はグノーシス主義に傾倒したつもりはない。私が求めたかったのは……」

 

「…愛する女の役に立ちたいという愛情かね?」

 

妻を心から愛する者として否定しきれない者を見たメフィストはグノーシス主義を語ってくれる。

 

「ペレネルは魔法少女として己の限界を呪った者。それは唯一神の支配を呪う行為だったのだ」

 

「宇宙意思である唯一神がもたらした光と熱のシステムの犠牲者こそが魔法少女だ…無理もない」

 

グノーシス主義は認識・知識を意味し、自己の本質と真の神についての認識に到達する思想。

 

物質と霊の二元論に特徴があるからこそ、相反する二つの規範が生み出される事となる。

 

「反宇宙的二元論とは否定的な秩序が存在するこの世界を受け入れない、認めないという思想だ」

 

「…全ての宇宙を創成した唯一神を否定する思想ともいえるな」

 

「我々が生きているこの世界こそ悪の宇宙である。魔法少女は悪の宇宙を延命させる生贄だった」

 

グノーシス主義は生の悲惨さの原因はこの宇宙が狂っており、狂った神のせいだと考える。

 

「現象的に率直に、迷妄や希望的観測を排して世界を眺めた時、ペレネルは宇宙意思を呪ったよ」

 

宇宙が本来的に悪の宇宙であって、諸宗教・思想の伝える神や神々が善であるというのは誤謬。

 

そう考えたペレネルが求めたのは、()()()()()()()()()()()()だった。

 

人間も魔法少女も幸福になれない運命を与えられたなら私は運命を支配する唯一神を呪ってやる。

 

私の幸福を満たしてくれるものがあるとしたら、それは()()()()()()()()()()()

 

人間の感情こそが真に人々を幸福に導ける存在であり、七つの大罪と呼ばれし悪魔こそが神。

 

「人も魔法少女も物質であり悪。ならば求めるのは精神であり霊の世界…()()()()()()だとした」

 

「人間至上主義…ヒューマニズムを掲げた末に…ペレネルは貴様を召喚する過ちを犯したのか…」

 

人間の感情を表す悪魔こそ、憤怒・傲慢・暴食・嫉妬・色欲・強欲・怠惰。

 

七つの大罪と表現される人間の感情こそが全てであり、唯一神という都合の悪い神など必要ない。

 

真に求めし神とは悪魔なのだと結論付けたペレネルは悪魔を召喚する事になるだろう。

 

そして彼女と同じ思想をもった者達こそが、ルシフェリアンと呼ばれる悪魔崇拝者であった。

 

「喜ぶがいい、ご老人!!君が愛した魔法少女はな…()()()()()()()()()()()()だったのだ!!」

 

両手を広げながら高笑いを行うメフィストの視線に映るのは、動揺を隠しきれない者の姿。

 

手に持つ真鍮杖が震えていき、心が掻き乱されていく。

 

「知りたいという欲望は…理不尽となる。妻よ…君もまた感情に支配されたために堕ちたのか…」

 

「人間の感情が悪魔を召喚するMAGやマガツヒを生み出す。己の感情こそが神だと望む……」

 

――()()()()()()()

 

ペレネルの夫として妻の罪と向かい合うのが辛過ぎるニコラスに目掛けて容赦なき一撃が迫る。

 

「ガハッ!!!」

 

動揺した男の元まで一気に詰め寄ったメフィストが腰のサーベルを抜刀して刺突を仕掛ける。

 

放たれたサーベルはアヌビスの腹部に深々と突き刺さり、刃が背中を貫通してしまう。

 

「愛するが故に人は死ねる。愛ゆえに人は死んでしまう愚かな生き物なのだよ」

 

突き刺した状態から一気に刃を滑らせ、脇腹を切り捨てる。

 

『ブレイブザッパー』の一撃によって腹部を半分切り裂かれたアヌビスが後ろに後退る。

 

「ぐっ……うぅ……ッッ!!!」

 

ミイラ作りの神としての力を発揮して包帯を内側に生み出しながら腹を巻き付ける。

 

内臓が飛び出さないようきつく縛り上げたが苦悶の表情を浮かべながら片膝をついてしまう。

 

そんな中、血がしたたるサーベルを構えたままのメフィストが迫ってくるのだ。

 

「貴様は私のプライドを傷つける発言をした。楽には死なさん…死ぬまで切り刻んでやろう!!」

 

容赦なき刃が次々と襲い掛かり、アヌビスの体を刻んでいく。

 

致命傷を狙わず、まるで子供が棒切れを振り回して雑草を叩くようにした撫で斬りを行うのだ。

 

「ウォォォォォーーーーッッ!!!」

 

斬撃を浴びて蹴り飛ばされれば、またメフィストがやってきて斬りつけながら蹴り飛ばす。

 

サンドバックにされながら殺されるしかない状態となってしまったアヌビス神。

 

彼は切り裂かれた箇所を包帯で縛り上げ続け、その姿はミイラのようになっていく。

 

「付け焼き刃で倒せる相手だと思ったか?悪魔になったばかりの者が魔王に勝てるものか」

 

迫りくる相手を見据えるのは俯けに倒れたまま顔を持ち上げる者。

 

鋭い牙で食いしばる表情を浮かべていたのだが、突然不敵な笑みを浮かべてくる。

 

殺されるだけの者が見せる態度ではないと判断したメフィストが立ち止まってしまう。

 

魔王が立つその立ち位置こそが勝利の方程式だった。

 

「我が父であるオシリスの妻…イシスよ。貴女の力であるシリウスの力を…私に貸してくれ!!」

 

蹴り飛ばされて倒れ込んだ場所に血文字で描かれていたのはエジプト聖刻文字。

 

ヒエログリフが光を放ち、メフィストを覆う光の五芒星が生み出されていく。

 

「この術式は……まさか!?シリウスの五芒星封印だとぉ!!?」

 

五芒星が生まれたルーツこそがエジプトであり、夜空に輝く恒星であるシリウスを象徴する。

 

シリウス星が神格化した女神こそがソプデット神であり、後にイシスと習合されたのであった。

 

「戯曲ファウストにおいて…貴様はファウストの書斎入口に描かれた五芒星で封印されていたな」

 

メフィストが光の牢獄を斬りつけていくが、光の五芒星は不可視の壁として悪魔を封印し続ける。

 

五芒星に閉じ込められた男にトドメを放つため、立ち上がったアヌビスが真鍮杖を宙に浮かす。

 

杖に備わったアンクが強い光を放ち、眩い光の中で新たなる形へと変化していく。

 

表れたのは天秤の杖であり、黄金に輝くラーの天秤を用いて罪人の罪を清算する一撃を放つのだ。

 

「我が父に代わり貴様の罪を裁定する!!ペレネルに味合わせた罪の数を数えながら死ね!!」

 

ラーの天秤にのっているのはメフィストの心臓を模した物と法と真実の象徴である羽毛。

 

羽毛と罪人の心臓が天秤にかけられた時、心臓がのった上皿てんびんが一気に下降していく。

 

ラーの天秤が巨大な光を放ち、光の五芒星の空高くに膨大な光を生み出しながら天罰を下す。

 

「ヌォォォォォォーーーーッッ!!?」

 

空から放たれた断罪の光とは『審判の光』であり、アヌビスの必殺技ともいえる一撃。

 

光の奔流が五芒星を覆い尽くし、中に閉じ込められた魔王の体を光の熱で焼き滅ぼしていく。

 

「くっ……まだだ……奴からペレネルのソウルジェムを取り戻さなければ……」

 

片膝をついてしまったアヌビスも体の限界であり、光の五芒星とラーの天秤が消えていく。

 

光の豪熱によって生み出された白い煙が辺りに充満する中、立ち上がった彼が歩き始める。

 

五芒星の中で倒れ込んだメフィストの元に近寄ろうとした時、恐ろしい魔物の声が響き渡るのだ。

 

<<貴様の魂も……私が貰ってやろう!!!>>

 

白煙の中から現れた存在こそ、全身を断罪の光で焼かれても耐え抜いたメフィストフェレスの姿。

 

高速で飛来してきた存在に反応出来なかったアヌビスの腹部に目掛けて両手を掲げてくる。

 

両手に収束していく邪悪な光は極大の呪殺エネルギーを凝縮した一撃となるだろう。

 

「ペレネル……」

 

放たれた魔法こそ、魔女が存在した世界において大魔女と呼ばれる程の存在の名と同じ一撃。

 

『ワルプルギスの夜』の一撃が直撃したニコラスの姿が闇の奔流の中へと消えていく。

 

奔流の中で体を削り取られる男の意識が薄れていく中、ペレネルと出会った時の記憶を思い出す。

 

「わたし……は……光……求め……た……。君という……光……を……」

 

若かりし頃、ペレネルと出会えた事で夢だった錬金術師の道を進む事が出来た。

 

20年以上もの長い時間をかけて勉強してきた年老いた彼を妻は浮気もせずに待ち続けてくれた。

 

2人の力でついに錬金術師としての奥義ともいえる賢者の石を生み出すことさえ出来た。

 

全てがペレネルのお陰であり、彼女のために世界のコトワリに抗ってでも救いたかった。

 

しかし、その道は遂に叶うことなく終わる事となってしまう。

 

数百年間生きた男ニコラス・フラメルの愛の物語は、憎き仇によって終わらされる事となった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

全身が焼け焦げたメフィストは回復魔法のディアラハンをかけながら歩いていく。

 

全身の傷が完全回復したメフィストが立ち止まり、下に転がっている肉片に目を向ける。

 

「フフフ…フーハハハハハハハッ!!まさに重畳、やはりこうでなくてはいけない」

 

転がっていたのは胸から下が全て消し飛ばされたニコラスの無残な姿。

 

本来なら即死であろうが悪魔であるがゆえにまだ息が残っている。

 

「まだ死んでくれるなよ?お前はペレネルの魂というワインを仕上げる最後のスパイスなのだ」

 

左手にペレネルのソウルジェムを生み出しながら近づいてくる足音の方角に視線を向ける。

 

暗闇の中から近づいてきていたのはペレネル達のようだ。

 

「あ……あぁ……あぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」

 

細目が開く程の衝撃を受けるペレネルの顔が悲痛なまでに歪んでいく。

 

目の前に転がっている獣人の姿を見た彼女は一目で愛する夫だと見抜いた事で叫び出す。

 

「イヤァァァァーーーッッ!!!ニコラスゥゥゥゥーーーーッッ!!!」

 

両膝が崩れた彼女が夫の名を叫び続けるが、ニコラスは答える力すら残っていない。

 

「そ…そんな……ニコラスさんが……」

 

「あのオオカミさんが…ニコラスおじいちゃんなの?悪魔になってでも戦ってくれたんだね…」

 

「貴様がマスターに憑りついていた影の正体ね?これ程までの所業…許すわけにはいかない!」

 

泣き叫びながら錯乱しているペレネルに代わり、タルトとリズとみかげが動く。

 

「タルト!貴女はニコラスを回復しなさい!私とみかげで仕掛けるわ!!」

 

「ミィ達が時間を稼ぐから!その間にニコラスおじいちゃんをお願いね!!」

 

「心得ました!」

 

攻め込んでくる中、メフィストは穢れに満ちるソウルジェムを満足そうに見つめている。

 

「今までで一番の穢れに満ちていく…実に美しい。希望と絶望の相転移こそが上等なMAGを生む」

 

飛来してきたサーベルを右手で受け取ったメフィストが邪悪な笑みを浮かべながら襲い掛かる。

 

「数百年間をかけて完成させたワインの試飲を邪魔する不届きな者共め……消え失せろ!!」

 

サーベルを振るって放つ邪悪な波動とは『ヘイトグロウ』と呼ばれる極大の一撃。

 

敵全体に特大威力の攻撃を行う万能属性魔法でありメフィストの奥義ともいえる一撃が迫りくる。

 

<<キャァァーーーーッッ!!!>>

 

攻撃を浴びた女達が弾き飛ばされ、次々と倒れ込んでいく姿を魔王は満足そうに見つめるようだ。

 

「これが……魔王の力なのですか……?つ、強過ぎる……」

 

「みかげ……今回復するから……じっとしてて……」

 

悪魔ではないみかげの体はタルト達以上のダメージを受けており、命の危機に晒されている。

 

ボロボロになっている者達など無視するようにしてペレネルの元までやってきたメフィスト。

 

彼は倒れ込んで死にかけている者の首を掴み上げ、持ち上げながら笑みを浮かべるのだ。

 

「神が生み出した世界を呪い、魔法少女であることを呪い、この私を召喚した者よ。見るがいい」

 

メフィストに促されたペレネルは顔をニコラスの方に向けていく。

 

無残な姿を晒す夫を見ているだけで彼女の心に沸き起こる絶望の色がさらに増していくのだ。

 

「お前もグノーシス主義の誘惑に負けた者。神を呪い、感情こそが全てだとしたために破滅する」

 

「全て……私のせいなのね……。ごめんなさい…ニコラス…私と出会ったばかりに……」

 

「神は世界のために魔法少女を生贄にするが、悪魔は快楽のために魔法少女を生贄にするのだよ」

 

「私も…自分の理想を求めたいという…快楽に酔ったわ。私は…悪魔と同じだったのね……」

 

「私を召喚するという選択をした時点で君には破滅の因果がもたらされる。()()()()()()()()()

 

「なら…これも呪いの因果をもたらす魔法少女である私の自業自得ね。好きにするといいわ……」

 

「さぁ、身を焼くような幸せの予感に震え、空虚な刹那を握り締め続けるがいい!」

 

八重歯が伸びた口元を開け、ひび割れていくソウルジェムを魔法少女の目の前で喰らおうとする。

 

だがそれを阻むために飛び込んできた存在が現れたのだ。

 

「やらせるもんかぁ!!」

 

両手に持つカタール短剣を握り込んだみかげがペレネルを掴んだ右腕に仕掛けてくる。

 

しかし反応したメフィストはカタールの刃で腕を切り落とされる前に回避行動を行う。

 

剣先で僅かに腕を傷つけられたメフィストが怒りの表情をみかげに向けてきたようだ。

 

「虫けらめ…倒れ込んだまま死んでいればいいものを。そこまで死に急ぎたいか?」

 

「死ぬのはミィじゃないよ!ミィの固有魔法の力を侮らないでよね!!」

 

「なんだと…?むぅ!?」

 

突然右腕に力が入らなくなり、掴んでいたペレネルを放してしまう。

 

「こ、これは……バカな!?私の腕が…溶けていくだとぉ!!?」

 

ドロドロに溶けながら破壊される自分の右腕を見たメフィストが戦慄した表情を浮かべてしまう。

 

八雲みかげは姉の願いを止めようとした者であり、神浜の破壊を望んだ者の根底を否定した者。

 

ゆえに彼女が手に入れた固有魔法とは肉体破壊であったのだ。

 

「そのままミィの魔法で体を破壊されちゃえーーーッッ!!」

 

後退るメフィストであったが、ひび割れたソウルジェムを消した左手にサーベルを持たせる。

 

忌々しい表情を浮かべながらも、彼は伸ばした右腕にめがけてサーベルを振り落とす覚悟を示す。

 

「グォォーーーッッ!!!」

 

ドロドロになった右腕を根元から切断したことによって破壊魔法の浸食から脱する事が出来た。

 

しかし失った右腕からは大量に血が吹き出し、激痛によって激しい憎悪を爆発させてくる。

 

「貴様ーーーッッ!!私にこれだけの事をしでかしたのだ…覚悟は出来ているのだろうなぁ!!」

 

体から癒しの光を放ち、ディアラハンを再びかけ直す。

 

失った右腕が衣服まで含めて復元回復する光景を見たみかげは驚きを隠せない。

 

「そ、そんな…こんな凄い回復魔法まで使える奴だなんて……」

 

「貴様のソウルジェムも私が貰ってやろう!絶望で味を良くするために…嬲り殺しにしてやる!」

 

「そうはさせない!!」

 

二本ダガーを両手に構えたリズが仕掛けてきたため、サーベルを操るメフィストが応戦していく。

 

メフィストの異界は光が存在しないため、影を生み出せない彼女は影魔法が使えない。

 

それでもリズはスカアハから手に入れた武術を用いて果敢にも戦いを繰り返す。

 

みかげも割り込んできたため、メフィストはリズとみかげを相手に剣舞を繰り返すのだ。

 

その頃、マスターの大切な夫であるニコラスを助けようとするタルトが回復魔法をかけていく。

 

彼女自身もボロボロなのだが、命に代えてもペレネルの愛する人を守ろうとしてくれる。

 

「私は……もうダメだ。頼む……私よりも…妻を……ペレネルを連れて……逃げてくれ……」

 

「喋ってはダメです!お願いだから気をしっかり持って……まだ死んではいけません!!」

 

「これもまた…私の業縁だ。世界のコトワリに逆らった者は…因果によって…滅びるのみ…」

 

「ニコラスさん…貴方は悪魔になってでもマスターを守ろうとしたのは何故ですか…?」

 

「フッ…造魔である君では分からないか。ならば…君の元となった存在の記憶を辿るがいい…」

 

「私の元となった…ジャンヌ・ダルクの記憶を辿る……?」

 

「記憶の世界にあったはずだ…。人間を辞めてでも…愛する人のために…戦った者の気持ちが…」

 

「あっ……」

 

タルトの瞳の世界に広がっていくのは、中世のジャンヌの記憶世界。

 

魔法少女として生きようと決意したジャネットがどんな気持ちを胸に抱いてきたのか?

 

彼女が生きてきた世界は、戦場の世界にしかなかったのか?

 

造魔である彼女に見えたのは、ジャネットが生きた幸福な世界。

 

彼女が戦ってでも求めたかった平和な日常の光景であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「えいっ!やぁ!とぉ!!」

 

ドンレミ村では今日もジャネットが木剣を振り回している。

 

力任せに木剣を振るうだけで足元はおぼつかない様子を見せていた時、リズが近寄ってくる。

 

「あなた、剣を使ったことがないの?」

 

呆れた顔を向けてくるリズに向けてジャネットは恥ずかしいのか照れた表情を浮かべてしまう。

 

「危なっかしいわね」

 

「えっ?うわ……わわ……」

 

手取り足取り剣術を指導してくれるリズの元へと近寄ってきたのは妹のカトリーヌである。

 

「リズお姉ちゃん!私にも教えて!」

 

「あなたに…剣の稽古を?」

 

「うんっ!」

 

姉の背中を追うようにしてカトリーヌも剣術を学んでいく日常が広がってくれる。

 

そこには戦乱に塗れた時代では貴重となってしまった平和な日々のように見えるだろう。

 

「可愛い子ね」

 

「はいっ!ちょっとおてんばだけど、凄く大事な妹です」

 

彼女達が剣術を習いだしたのは今の平和を守りたいがため。

 

いつ戦乱に飲まれるか分からない時代だからこそ、彼女達も力を手に入れようとする。

 

彼女達が戦おうとするのは誰のためなのだろうか?

 

「守ってあげなきゃならないわね、お姉ちゃんとして」

 

「ええ♪あの子や家族が幸福に生きられる未来のためにこそ、私も強くなりたいんです」

 

「それは自分のためなの?それともカトリーヌや家族、それに村の人達のためなの?」

 

質問してきたリズに向けて少々困った表情を浮かべてしまうが、ジャネットは笑顔でこう答える。

 

その答えには嘘偽りなどない、自分が自分であるがゆえに生み出された気持ちなのだ。

 

「この気持ちだけは私だけのもの…誰かに与えられたものじゃない。だからこそ私は望むんです」

 

――私は私の気持ちのためにこそ…戦いたいのだと。

 

愛する故郷や愛する家族、愛する友を守りたい気持ちこそがジャネットの原点。

 

そこにあるのは愛する存在を必要とする自分だからこそ、自分の気持ちを守ろうとする。

 

誰かのために戦おうと決意したジャンヌ・ダルクの原点とは、()()()()()()()()()()

 

フランスに光をもたらす決意をした者の答えとは、自分の気持ちに正直に生きたいだけだった。

 

……………。

 

「ぐっ……うぅ………」

 

「ダメだよ………強過ぎるよぉ………」

 

ボロボロになるまで打ちのめされたリズとみかげに迫るのはメフィストが放つトドメの一撃。

 

「天使に負けず劣らず嫌な輩共め…だが、それでも勝つのは私なのだぁ!!」

 

右手を掲げて放ったのはアギバリオンの一撃。

 

特大威力の大火球によって焼き尽くされようとする中、割って入ってきた存在が盾となる。

 

「むぅ?」

 

特大の大火球を防御魔法陣で受け止め続けるのはペレネルの姿。

 

「リズ………マスターとして最後の命令を与えるわ。みかげとタルトを連れて逃げなさい」

 

「で、でも…マスターはどうする気なの!?」

 

「私はここで滅びる。私も夫も世界のコトワリを踏み躙った者だけど…これ以上は逆らえないわ」

 

「だからって…悪魔に滅ぼされる必要はないわ!マスターも一緒に逃げましょう!!」

 

「お断りよ。私のソウルジェムはもう形を保てない…これが私にとって、最後の抵抗になる…」

 

「マスター……」

 

リズの脳裏にフラッシュバックしたのは、生前のリズが守れなかった魔法少女達。

 

彼女達を英雄にするために支えていこうと決意したのに守れなかったリズの無念。

 

それらが造魔の心の中にも溢れ出し、主を守れない苦しみによって熱い感情が溢れ出す。

 

「いやよ……いやぁ!!マスターを守れないなら…私の命になんて…価値は無いわ!!」

 

「もとより貴様ら造魔の命に価値はない。主人を満足させるためだけに生み出された玩具だ」

 

炎の一撃を止めたメフィストが邪悪な笑みを浮かべながら片膝をつくペレネルに視線を向ける。

 

その表情はまるで飽きた玩具をゴミ箱に捨てる子供のような冷酷さが宿っているのだ。

 

――時よ動き出せ、その身を時間に委ねるのだ。

 

メフィストが呪文めいた言葉を口に出した瞬間、ペレネルの体に強烈な異変が起こってしまう。

 

「アァァァァーーーーッッ!!!!」

 

19歳の若さを保てていたのはメフィストフェレスの魔法のお陰。

 

ならば不老不死の魔法が解かれたなら、数百年分の加齢の時間が再び動き出す事になるだろう。

 

ペレネルの若々しい肌はみるみる劣化していき、年老いた老婆のように成り果てていく。

 

倒れ込んでしまった者を嘲笑うようにして再びソウルジェムを生み出したメフィストは宣言する。

 

「ファウストの魂を喰らう時は神の邪魔が入ったが…今度は邪魔が入らない。私の勝利だぁ!!」

 

高笑いを行いながら砕けかけたソウルジェムをついに飲み込む時が訪れる。

 

「あっ………」

 

ソウルジェムを悪魔に飲み込まれたペレネルの意識が途絶え、ついに完全なる死を迎えてしまう。

 

「くーーー……ッッ!!なんという美味!!数百年分の旨味が凝縮している…極上だぁッッ!!」

 

体内で砕けたソウルジェムから溢れ出た感情エネルギーを吸収した男が高揚とした顔を浮かべる。

 

そして主人を守れなかったリズの顔には大粒の涙が浮かんでいく。

 

「ペレネル……ペレネルーーーーッッ!!!」

 

泣き喚くその心こそ、生前のリズの感情そのもの。

 

今の彼女の心の中には人間と同じ感情と魂が宿ってくれている。

 

それこそが造魔を生み出したペレネルの望みであり、彼女を人間にしたいと願った気持ち。

 

そしてその願いを託されている者はリズだけではない、造魔ジャンヌ・ダルクも同じなのだ。

 

「ぬぅ!?なんだ……この不快極まりない光はぁ!!?」

 

闇で覆われたメフィストの異界を照らしきる程の強烈な光が放たれていく。

 

その光を放つ者とは漆黒の甲冑を纏った造魔ジャンヌ・ダルクである。

 

そして彼女の足元で立つのは契約の天使であるインキュベーターであった。

 

「また……守れなかった……」

 

大粒の涙を流し続けるジャンヌの表情にも人間の感情の証が表れている。

 

眩い光を両腕で防ぎながらメフィストは契約の天使に目掛けて叫ぶ。

 

「遅かったな、天使!今更邪魔をしに来たようだが…ペレネルは美味しく頂かせてもらったぞ!」

 

「…メフィストフェレス、君は何か勘違いをしているようだね?」

 

「なんだと…?」

 

「僕がこの場に現れたのはペレネルを救う為じゃない、タルトとリズに用事があって現れたんだ」

 

「造魔共に用事だと…?契約の天使は魔法少女を生み出すのが唯一神から託された使命のはずだ」

 

「その通り。だからこそ、僕は造魔達の元に現れる必要があったんだよ」

 

キュウベぇが隣を見上げれば、眩い光を放つタルトが立っている。

 

無念の感情を抱くその胸元で輝く魂の形を見たメフィストが驚愕しながら叫ぶのだ。

 

「バカなぁ!?虚心である造魔が…魂を持たない玩具である造魔が……ソウルジェムだとぉ!?」

 

「契約は果たされた。造魔である事を捨ててでも手に入れたその力を解き放つといい」

 

光り輝く宝石に両手を近づけていく彼女は己に足りなかったものが何だったのかを語ってくれる。

 

「私はマスターの気持ちばかりを優先して…自分の気持ちを真剣に見つめなかった…」

 

彼女の体も発光していき、漆黒の鎧が白銀の輝きに染まっていく。

 

同時に彼女の後ろ髪も伸びていき、美しいロングヘアーへと変化していくのだ。

 

「私に足りなかったのは…私自身が何を望んでいるのかでした。だからこそ……私は願った」

 

――()()()()()()……本物のジャンヌ・ダルクとして生きていきたいと。

 

光が一気に放射されると同時に彼女の漆黒の鎧がアーマーパージされていく。

 

光の中から現れた存在こそ、かつてフランスに光をもたらした魔法少女の姿である。

 

「この存在が……またこの地に現れ出でることになるとはな」

 

メフィストもまた魔女が存在した宇宙において百年戦争をペレネルと共に見届けた者。

 

だからこそ、目の前の存在は彼にとって不俱戴天に値する程の存在なのだと感じていたのだ。

 

「女王の黄昏の次は私を相手にする気か…?ジャンヌ・ダルクゥゥゥーーーッッ!!!」

 

迫ってくる少女の姿は虚心に塗れた心の薄暗さを象徴する黒い鎧を纏う者ではない。

 

淡いピンク色で彩られた純白の鎧に身を包み、純白のマントを纏う者。

 

長い後ろ髪は三つ編みにして纏められ、右手には光で編まれた剣が握り締められている。

 

「メフィストフェレス。貴方は勘違いをしています」

 

「なに……?」

 

「今の私は貴方が見た事があるタルトではありません。目の前の私は今を生きるタルトなのです」

 

「つまりは奇跡の力を用いて()()()()()()を生み出したのか?複製品如きで私を倒すつもりか!」

 

「それは戦ってみれば分かります。私の力が複製品であるのかどうかは…貴方が見極めなさい」

 

光を嫌う者の前に現れたのはフランスの光ともいえる存在。

 

激しい怒りを顕わにしたメフィストが腰を落としながらサーベルを構えてくる。

 

タルトも腰を落としながら光剣を構え、迎え撃つ体勢を行うのだ。

 

そんな者達に向けて最後の力を振り絞りながら頭部を持ち上げるニコラスは微笑んでくれる。

 

「ペレネル……君の望みは叶うのだ。彼女はついに…君が失った大切な仲間の姿となってくれた」

 

睨み合う光と闇が同時に動き出す。

 

今こそ始めよう。

 

ドイツが生み出した闇の悪魔と、フランスが生み出した光の聖女の戦いが始まっていった。

 




はい、完全にかずみマギカのパクリ展開で御座います。
エクシードタルトさんの活躍を次は描いていきますね。
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