人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「ヌゥゥゥゥゥーーーーッッ!!!」
魔力を全開にしていくメフィストの波動によって異界が激しく振動していく。
さっきまでは全力ではなかったのかと感じたリズとみかげの顔が恐怖で引きつってしまう。
全身から噴き上がる暗黒の魔力によって、彼の体に新たなる耐性防御が生まれていく。
今のメフィストは刃物や銃弾で体を傷つける事も出来ない物理無効耐性を纏う状態となったのだ。
相手はフランスの聖女を完璧に複製した存在であり、大魔女である女王の黄昏を倒せる者。
そう仮定したメフィストは最初から全開の力を発揮して一気に勝負をつけようと判断する。
「まだまだぁ!!」
彼は補助魔法である『ラスタキャンディ』を行使する。
赤青緑の光が足元に広がっていき、一定時間全能力を強化されることになるだろう。
「最初から全力でいかせてもらおうか。この一撃を受け止められるなら認めてやろう」
迎え撃つタルトもまた全身から光の魔力を放出していく。
「ならば攻めてきなさい」
タルトは左手を持ち上げながらメフィストに向けてくる。
彼女の左腕だけは純白のガントレットではなく、かつての漆黒のガントレットのままのようだ。
これは彼女が魔法少女になろうとも体は悪魔人間のままだという証でもあった。
「ぬぅ!?」
タルトが放った魔法とは敵全体の魔法効果を解除するデカジャである。
ラスタキャンディの効果を打ち消されたメフィストは驚愕した表情を向けてくるのだ。
「魔法少女でありながら…悪魔の魔法まで行使出来るのか!?」
「魔法少女になれたとしても、私の体は悪魔人間のままです」
「魔法少女と悪魔のハイブリットというわけか…確かに、かつてのジャンヌと貴様は違うようだ」
「私は私のままタルトになろうと決めました。かつてのタルトでなくとも…心は負けません!!」
「よかろう!ならばかつてのジャンヌと遜色ない力があるかどうか…この一撃で見極める!!」
地面を踏み砕く程の跳躍力を示し、神速の勢いで袈裟斬りを放つ。
迎え撃つタルトは光剣を構えながらメフィストが放つブレイブザッパーの一撃を受け止める。
「くっ!」
受け止めた衝撃で地面が爆ぜる程の衝撃を全身で浴びる事になろうとも彼女は健在だ。
「オォォォォォーーーッッ!!!」
なおも力任せに刃を押し切ろうとするメフィストの一撃を負けじと押し返そうとする。
互いの力と力が拮抗していき、2人が立つ漆黒の大地がさらに抉れながら砕けていく。
「ハァァーーーッッ!!」
鍔迫り合いから踏み込んだタルトが体当たりを仕掛けてメフィストの体を押し出してくる。
後ろに下がった相手に目掛けて光剣を振り上げる者に対してメフィストも受けて立つ動きを行う。
互いが剣戟を放ち合い、強大な魔力を纏った武器がぶつかり合う衝撃波が周囲を砕いていく。
「うわ…わわわ!!こんな場所にいたら…ミィ達まで巻き込まれちゃうよぉ!!」
「みかげ……ニコラスを連れて出来る限り離れて頂戴」
「リズ姉ちゃは……あっ……」
みかげが横を見れば、数百年分の時間経過で白骨化したペレネルの遺体を抱きかかえている。
「私は……ペレネルの遺体を壊されないように守り抜くわ」
「うん……分かった。ミィに任せて!」
メフィストと激しくぶつかり合いながらもタルトはリズとみかげの方にも意識を向けている。
(リズ、みかげ…ありがとう。これで思う存分力を発揮出来ます)
魔王と戦いながらも隣を気にしている者が不快なのか、メフィストが苛立ちの態度を向けてくる。
「この造魔め…私を相手に取るに足らない者共に意識を向けるとは、不遜な態度だ!!」
「確かに私は未だ造魔ですが…心は人間です!だからこそ愛する人達を気にするのは当然です!」
「所詮貴様は人工的な命である人造人間!貴様がやっていることなど、ただの猿真似だ!!」
「真似も極めれば本物になれるとペレネルは言ってました!その言葉を…私が証明します!!」
人の心を持った人造人間を生み出したいと願ったペレネルの気持ちを背負う者が剣を振り落とす。
光のエネルギーが刃となって放出されるが、メフィストは宙に浮かびながら高速で動き続ける。
「何処までも気に食わない玩具め!!死ね……やはり造魔は死ねぇ!!」
宙に浮かびながら放つのはアギバリオンであり、特大威力の大火球を放ってくる。
「ジャンヌ・ダルクの複製品だとしても、貴様に相応しいのは炎で焼き尽くされる末路だ!!」
まるで燃え上る隕石のようにして降り注ぐ大火球を前にしたタルトが左手を掲げていく。
放つ魔法とは『ペンタウォール』と呼ばれる反射魔法であり、ペンタグラム魔法陣を生み出す。
光の五芒星によって魔法が反射された一撃がメフィストに目掛けて跳ね返っていくのだ。
「くっ!!」
さらに大火球を放ち、反射された一撃を対消滅させるのだが爆発から飛び出す一撃が迫りくる。
投げ放たれた光剣が分裂していき、光の槍と化した一撃が迫るのだがメフィストは冥界波を放つ。
光の槍が衝撃波の一撃で消滅するのだが、飛び上がったタルトはさらに追い打ちを仕掛けてくる。
光の曲刀を二刀流にして構えた彼女の一撃を邪悪な光を纏わせたサーベルで弾き返す。
弾き返された反動を利用して体勢を一回転させた彼女が放つのは光の大鎌の一撃だ。
「ぐふっ!!」
光の刃が胴体を切り裂き、怯んだメフィストが大きく後退。
地面に着地したタルトが光の大剣を生み出し、両手持ちの構えをしながら再び跳躍していく。
トドメを刺さんと地上から迫りくる聖女に向けて、メフィストは再び奥義の一撃を放つのだ。
「アァァァァーーーーッッ!!!」
ヘイトグロウの魔法攻撃は防げないタルトが邪悪な波動を浴びながら地上に叩きつけられる。
地上を見下ろすメフィストは切り裂かれた傷に片手を当てながら怒りを爆発させてくるのだ。
「
ヒトと呼ばれる物質を生み出すだけならそう難しくはない。
しかしヒトを人間にするには魂を生み出す必要がある。
人間の魂は神々の力をもってしても生み出すのは容易ではないのだが、ペレネルには出来た。
偉大なる錬金術師ペレネル・フラメルが残した最後の研究成果とは、人間の魂の錬成であった。
「私の心は…魂は…マスターだけの力で形作られたものではありません…」
傷だらけになりながらも立ち上がるタルトが上空のメフィストに目掛けてこう告げてくる。
「私はマスターやリズだけでなく、この神浜においても多くの人達と触れ合う事が出来ました」
人修羅として生きる尚紀や神浜の魔法少女達、それに尚紀の仲魔達とも触れ合う事が出来た。
その中で造魔でありながらも人間と同じように接してくれる者達の思いやりの積み重ねがあった。
それらが彼女の虚心の暗闇に小さな光を生み出し、積み重なった事で人間の輝きが生まれたのだ。
「私の中に人間の心と魂が生まれたのは…私を大切にしてくれた全ての人達のお陰なのです!」
光剣を再び生み出したタルトが吼える。
「私は守りたい!私を大切にしてくれた人々を守りたいこの気持ちだけは絶対に譲りません!!」
大切な人々を守る理由とは、大切な人々を必要とする自分の気持ちを貫くため。
かつてのタルトの原点にまで辿り着けた現代のタルトは、もはや造魔という人造人間ではない。
人間として生きていた頃のタルトの魂と同じ輝きを胸に宿す存在にまで進化してくれたのだ。
「クックックッ……フハハハハハ……ハーーハハハハハハハハッッ!!!」
狂ったように笑いだすメフィストが邪悪な笑みを浮かべながらこう返してくる。
「貴様の魂は理解不能だ…摩訶不思議過ぎる。だが、そんな珍味を味わった経験は私にもない…」
タルトの魂の輝きに深い興味を抱いたメフィストは舌舐めずりしながら宣言する。
「フッフッフッ、その魂……私が頂く!!」
神速で飛来するメフィストの刃を光剣で受け止め、互いが魔力を全開にしながらぶつかり合う。
「ペレネルの最後の遺産ともいえる貴様の魂を連れていってやろう!彼女と同じ場所にな!!」
「私は負けません!マスターの呪われた人生は無駄ではないのだと…私達で証明してみせる!!」
「出来るのか?魔法少女となった以上、魔力は有限なのだろう?」
メフィストが指摘した部分は事実である。
魔法少女としては完璧なるイレギュラーであるため、ソウルジェムの魔力消費が激し過ぎる。
このまま戦えば魔力消費に耐え切れず、先に力尽きるのはタルトの方なのだ。
だが彼女は独りぼっちではない。
<<だったら、私がタルトを支えながら生きていく>>
「なにっ?グハッッ!!?」
タルトが放つ光によって、メフィストの背後に影が生み出されている。
その中から飛び出してきたのはリズであり、放つ旋風脚がメフィストの側頭部にクリーンヒット。
物理無効耐性をもつメフィストであるがリズの一撃によって耐性を貫かれ、蹴り飛ばされていく。
絶対防御という物理無効に匹敵する固有魔法を所有していた魔法少女を貫く程の存在なのだ。
「リズ!!」
笑顔を向けながら駆け寄ってくるタルトのソウルジェムに向けてリズは片手を近づけていく。
「こ、これは……私の穢れが吸い出されていく?」
かつてイレギュラーな存在となったタルトはグリーフシードを受け付けない程の存在となった。
それ故に彼女は穢れを取り除く手段を失い、いずれ女王の黄昏を超える魔女になるしかなかった。
だがグリーフシードを超える程のイレギュラーな存在なら、この世界に存在してくれている。
それこそが悪魔であり、人間が生み出す呪いや穢れの感情こそが悪魔の力の源なのであった。
「かつてのタルトは救えなかったけど…悪魔の私なら、これからの貴女を支えていけそうね?」
「リズ……」
「かつてのリズには出来なかった事を今の私なら出来る。こんな嬉しいことってないじゃない?」
優しい笑顔を向けてくれる造魔もまた、人間の心と魂を宿す程にまで進化してくれている。
ならば今の彼女に契約の天使など必要もなく、これからも胸を張って悪魔を続けられるだろう。
そう信じるリズは異界の外で契約を持ち寄ってきたインキュベーターを退けてくれたのだ。
「2人でアイツを倒すわよ、タルト。みかげなら大丈夫、異界の外に避難させているから」
「ええ♪…なんだかとっても嬉しいです。この光景こそ…かつてのタルトの供養となりますね」
「そうね……きっとリズの供養にもなってくれるはずよ」
顔を同時に向ければ、立ち上がってくる者が視界に映る。
怒りを爆発させるようにしながら魔力を噴き上がらせるメフィストの目が赤く輝きだす。
燃え上る闘志を体に纏う『貫く闘気』によって、メフィストの攻撃は耐性を貫通してくるだろう。
「グゥゥゥゥ……ッッ!!許さん…許さんぞ……じわじわと嬲り殺しにしてくれる!!」
タルトから受けた傷の回復すら忘れる程の激情に身を委ねたメフィストが飛びかかってくる。
武器を構え合うタルトとリズの光景こそ、百年戦争を駆け抜けた魔法少女達の姿の再現だろう。
数百年後の21世紀において、ついにタルトとリズは再び仲間として支え合える存在となれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光剣と影の剣を用いて同時に斬撃を仕掛けてくる存在の攻撃をサーベルを用いて巧みに弾く。
リズの回し蹴りを潜り抜けたメフィストが体勢を回転させる勢いのままタルトの刃を弾き返す。
しかし後ろからは影で編まれたポールアックスの唐竹割りが迫るが、反転しながら刃を回避。
「ぐっ!!」
回避と同時に回し蹴りを放ち、蹴り飛ばされたリズの援護を行うタルトの一撃が迫りくる。
互いが斬撃の応酬を放つが、タルトは刃を回し込みながら相手のサーベルを払い込む。
メフィストは反撃として右肘打ちを狙ってくるが、左手を用いて肘打ちを払いのける。
剣戟を続ける後ろからは影の弓を生み出したリズが援護射撃を行い、影の矢が魔王の肩を穿つ。
「チッ!!」
怯む相手に目掛けて唐竹割りを狙うタルトだが回転を利用して回避を行うと同時に肘打ちを放つ。
後頭部に肘打ちが決まったタルトは前のめりになりながら倒れ込んでしまう。
「あぐっ!!」
激痛に耐えながらも立ち上がり、互いが一歩も譲らぬ戦いの攻防を続けていく。
勝負を決めるには補助魔法が重要になってくるだろう。
リズは補助魔法のスクカジャを用いて自分達の命中率と回避率を高めていく。
スピードが増す相手の魔法を封じるためにメフィストが放つのはマカジャマオンである。
「くっ!!魔封魔法まで使える奴だなんて!!」
魔法を封じられたリズに目掛けて仕掛けてくるメフィストであるが、タルトもまた魔法を行使。
常世の祈りによってダメージと魔封を癒してもらえたリズが刃を潜り抜ける反撃の一撃を放つ。
「がはっ!!?」
カウンターとしてみぞおちに決まったのは、ダガーを逆手に持ちながら放つ右拳の一撃。
風を拳に纏わせた『風龍撃』の一撃によって吐瀉物を撒き散らす敵の顎を左拳で打ち上げる。
「ごふっ!!!」
天空に昇る龍の如き一撃によって大きく打ち上げられたメフィストが地面に倒れ込んでしまう。
「がっ……あぁ……」
ダメージを負ったメフィストが弱った体を持ち上げていくチャンスをリズは見逃さない。
風の如く踏み込むリズが放つのは霞駆けであり、メフィストの首を二刀流で跳ね落とそうと狙う。
しかしメフィストの口元には不気味な笑みが浮かんでいる事に彼女は気が付いていない。
「フッ……なんてね」
「なにっ!?」
弱っていた態度は演技であり、一気に動いたメフィストが霞駆けの一撃を潜り抜けてくるのだ。
避けながら右腕を掴み、背中に回し込みながら関節を決め、背後に回った敵が喉元に刃を向ける。
「リズ!!!」
人質のようにして盾にされたリズの喉元に迫る刃が冷たい感触を首に与えていく。
リズの美しい首筋から血が流れ落ちていく光景を見せられるタルトは悲痛な叫びを上げてしまう。
「どうした、ジャンヌ・ダルク?私の動きが止まっているこのチャンスを逃すのか?」
「卑怯者!!だまし討ちを仕掛けてリズを盾にするだなんて!!」
「何とでも言うがいい。先ずはこの造魔の魂から頂戴するとしよう」
首を斬り落とそうとするのだが、リズの長髪がざわめくように揺れ動く。
「…ごめんなさい、タルト。
リズからそう言われた瞬間、彼女が何を解き放つのか理解したタルトが叫び出す。
「ダメです!!あの力は下手をすればリズの人格さえ消滅させかねない恐ろしい力だったはず!」
「大丈夫……上手く制御してみせるわ」
拘束した者の体から尋常ならざる魔力の奔流を感じたメフィストが彼女の異変に気が付く。
「こ、これは……!?」
彼女の長い黒髪が白髪に染まっていく。
タルトが生み出す光によって形成された影がリズの体を這い上りながら纏わりつく。
真紅の瞳を輝かせ、体に溶けた女神スカアハの原点ともいえる死の女神の力を解放するのだ。
「グァァァァーーーッッ!!?」
メフィストの脇腹や背中などを突き刺しているのは影の槍。
激痛によってリズを解放したメフィストが影の槍を魔力放出で砕きながら後退っていく。
白髪を靡かせるリズに視線を向けた時、魔王ですら恐怖を感じる程の女神が宙に浮かんでいる。
「…わらわの体を傷つけた代償は高くつくぞ、メフィスト?」
宙に浮かんだまま後ろに振り返る存在を見たメフィストは変化したリズの正体に気が付く。
「造魔の中に溶けたのがスカアハだとしたら……その力の源は
漆黒のマントの下側には影の体が構築された白髪の女神が首元の血を指で掬い取る。
まるで口紅でも塗るかのように自分の口を紅化粧していく存在が邪悪な笑みを浮かべてきたのだ。
【スカディ】
ケルトのチュートン族に信仰された死の女神であり、北欧神話の冬の女神スカジと同一の存在。
その名は古代ノルド語では危害、死を意味しておりゴート語では影を意味する。
冬の雪山の闇と死の恐ろしさを内包する恐るべき存在であり、亡骸を飲み込む大地の人格化だ。
彼女はやがて冥界の女王とみなされるようになり、女神スカアハの概念形成に影響を与えた。
「この造魔はいささか窮屈だったが、解放してくれたのは僥倖だ。先ずは盛大な血祭といこう」
メフィストに負けず劣らず残忍な女神が手負いの邪魔者に目掛けて大地の力を解放しようとする。
しかしそれに待ったをかけるようにして飛びかかってきた者が背後から抱きついてくるのだ。
「もういいです、リズ!!これ以上その力を解放する必要はありません!!」
「放せ小娘!!わらわは女は好かん!ボルテクス界から後、久方ぶりの自由の邪魔は許さんぞ!」
「貴女は殺戮の女神じゃない!!貴女はリズ・ホークウッド!!私の大切な親友なんです!!!」
スカディの顔を両手で掴み、必死の形相を向けてくるタルト。
そんな彼女の顔が真紅の瞳の中に映り込んだスカディが突然苦しみだす。
「ぐっ……がっ!!おのれ造魔め……またわらわを拘束してくるかぁ!!」
倒れ込み藻掻き苦しむスカディの中でリズが必死に暴走を止めようとしてくれている。
スカディを解放したままでは、たとえメフィストを倒しても神浜に殺戮がもたらされるからだ。
「負けないで…リズ。貴女ならスカディを乗り越えられる……後は私がやります」
視線をスカディから外せば、極大の魔力を練り上げながら宙に浮かぶメフィストが映る。
最大威力を用いて放とうとしてくるのはメフィストの奥義ともいえる極大の呪殺魔法。
「私が欲しているのは永遠に遊び続けられる玩具……だが!私に逆らう玩具などいらん!!」
迎え撃つ体勢を見せるタルトもまた最大の一撃をもってメフィストフェレスに応えるだろう。
「この世界を闇の中へ落とそうとする者よ……これで終わらせます!!」
右手に生み出されたのはクロヴィスの剣であり、極大の光を放ち始める。
胸元に剣を持ち上げた時、その剣は形を変えながら螺旋を描く槍のようになっていく。
先に放たれたのは両手を回しながら極大の呪殺エネルギーを構築したメフィストの方だ。
「その魂……私が頂く!!!」
背後に大魔法陣を描きながら放つ一撃こそ、アヌビスを葬ったワルプルギスの夜の一撃。
そしてタルトもまた大地を踏み砕く程の勢いで跳躍し、迫りくる呪殺魔法に突っ込んでいく。
「ハァァァァァーーーーッッ!!!」
流れ星のように流線を描きながら光の槍を放つ。
ワルプルギスの夜の一撃を突き抜けたタルトがメフィストの元まで迫りくる。
同時にメフィストの頭上には百合の紋章が描かれた天の門が生み出され、扉が次々と開いていく。
天の門の中から放射されていくのは光の拘束剣であり、メフィストの体を貫く一撃となる。
「グォァァァァァーーーーーーッッ!!!」
地面に縫い付けられてしまった者に目掛けて上空から迫る者が最後のトドメを放つ時がくる。
「光あれ!!ラ・ポルトゥ・ドゥ・パラディ!!!」
螺旋を描く光の槍がメフィストを貫くと同時に極大の光の爆発現象が生み出されていく。
膨大にまで膨れ上がる爆発現象はメギドラオンに匹敵する程の規模となり、敵を滅ぼすのだ。
<<バカなぁぁぁぁーーーーーーッッ!!!!>>
光の中で消滅していくメフィストフェレス。
それと同時に天の門の扉が次々と閉まっていき、その姿を消してしまう。
魔王が構築していた異界も消えていき、ペレネルの屋敷の前にまで戻ってくる。
視線を隣に向ければ、倒れ込んでいるスカディの姿がリズに戻っている事に安心したようだ。
「やったわね……タルト」
親指を上げながらサムズアップしてくるリズを見たタルトが微笑んでくれる。
「…ありがとう、リズ」
よそ見をしていたら走ってきたみかげがタルトに抱きついてくる。
「やったねタルト姉ちゃ!!タルト姉ちゃなら絶対に悪魔をやっつけられるって信じてたよ!!」
涙を浮かべながら頬擦りしてくる彼女の頭をタルトは優しく撫でてくれる。
勝利の余韻に浸っていた時、おぞましい者の最後の念話が響いてくるのだ。
<<フランスの……光よ……。私を倒したとしても……既に世界は……常闇の中だ……>>
<<私は……地獄に堕ちる者共に仕え……その魂を……受け取る……者だ……>>
<<欲深き……ペレネルの魂は……私と共に……地獄に堕ちる……だろう……>>
<<人間共の……感情が……
――世界の闇とは……人間の感情が生み出す……自業自得な……結果でしか……な……い。
――――――――――――――――――――――――――――――――
メフィストの最後の忠告を聞き終えた時、屋敷の門が突き破られる音が響き渡る。
屋敷の中庭にまで走行してきたのはクリスであり、扉を開けた尚紀が車から飛び出してくる。
「おやじぃぃぃーーーッッ!!おふくろぉぉぉーーーーッッ!!」
駆け寄ってくる尚紀が現場の状況を確認した途端、両膝が崩れ落ちてしまう。
「あっ………あぁぁぁぁぁ…………」
尚紀の視界に映ったのは肉片となった義父の姿と地面に寝かせられた白骨死体と化した義母の姿。
悪魔化も解けてしまい、残った肉片部分も亀裂が無数に入りながら砕けようとしている。
「ナオキ……君……すま……ない……。私は妻を……守れなかった……」
まだ息がある義父の元にまで駆け寄ってきた彼がニコラスの頭部を持ち上げてくれる。
「しっかりしろぉ!!まだ回復出来る……頼むから……頼むから死なないでくれぇ!!」
悲痛な表情を浮かべている息子のために彼は残っている片腕を伸ばし始める。
ニコラスの手を握り締めた息子に微笑み、最後の言葉を送ってくれるのだ。
「私はもう……助からなくていい……。妻と共に……地獄に……堕ちたいんだ……」
「何をバカなことを言いやがる!!ジャンヌ……頼むから俺のおやじを救ってくれぇ!!」
今にも泣きそうな表情をタルトに向けるが、彼女は顔を俯けていく。
彼女の姿が変化しているようだが、それを今気にしている暇などない彼は哀願してしまう。
「いいんだ……ジャンヌ君。私と妻はね……こうなる未来を承知して……この場に訪れたんだ」
「未来予知を使って…この末路を視ていながら…どうして俺を引き留めてくれなかったぁ!?」
「君には君の使命がある…そして、そのための力になりたいから…私と妻は君を息子にしたんだ」
「俺を息子として受け入れてくれたのは……俺の使命を助けるため……?」
「そのために私達は莫大な財産を君に相続させる。弁護士団も用意している…彼らに任せなさい」
今にも砕け散りそうな弱々しい手を強く握り締める尚紀は首を横に振ってしまう。
「ダメだ…俺だけの力じゃ何も出来ない!!頼むよニコラス…俺を支えるために生きてくれ!!」
大粒の涙を零し始める息子に向けて、最後の願いを頼み始める。
「ペレネルを……妻の遺体を……私の傍に……連れてきてくれ……」
彼の最後の願いを分かっていたのか、リズはペレネルの亡骸を抱きかかえたまま片膝をつく。
夫の横に寝かせてくれたペレネルの白骨死体を見た彼が涙を零し、そして息子に顔を向ける。
「君は独りじゃない…多くの者が君を必要としている。君はその者達を必要として…
「世界と……戦う……?」
「世界を支配する国際金融資本家達が築き上げた啓明結社を倒すには……
「そのために俺に見せてくれたのか?この世のものとも思えない程の…あの隠し財産を?」
「世界は……金融は……
ついに体を維持出来なくなったニコラスの体が砕けていく。
「世界は…銀行という名の悪魔を支配する…魔王共の手によって……常闇の世界にされた……」
――だからこそ……世界には……
震えながら泣き続ける尚紀の顔を見たニコラス・フラメルは安心した表情を浮かべていく。
彼の最後の表情はまるで人修羅に自分の魂を託した将門公の表情と重なって見えてくる。
「君こそが…我らの……光。世界のために……
最後に笑顔を浮かべた後、ニコラス・フラメルは砕け散りMAGの光となってしまう。
宇宙を温めるためにニコラスの熱まで奪い取る宇宙の熱システムの光景を茫然と見つめる者達。
だが尚紀の心は砕け散る程の悲しみに支配されながらボルテクス界の記憶を思い出していく。
「また……守れなかった……」
友達を守れず、恩師を守れず、生き残った人達を守れず、自分が生きた世界すら守れない。
そして別の世界に流れ着こうとも結果は同じ。
「何が人修羅だ……何が混沌王だ……俺は誰も守れない!!!」
大切な人達を守れず、悲痛な叫びを上げる彼の気持ちならタルトとリズも経験してきている。
尚紀の心の痛みがコネクトしてしまうタルトとリズも大粒の涙を零しながら共に泣いてくれる。
みかげまで貰い泣きしてしまい、全員の膝が崩れてしまう。
そんな者達にかけられる言葉もないクリスも黙り込んだまま、主の慟哭を見守ってくれるのみ。
「俺は……俺は……ただの負け犬だぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!!!」
自分の無力さに怒り狂い、喚き散らす男の姿を見守ってくれるのは契約の天使である者。
屋敷の屋根の上から下の光景を見下ろすキュウベぇには何の感情も湧いてこないだろう。
それに彼には別の目的があり、そのために動かなければならない時期にまできている。
「感じる……もう直ぐ熾天使様達がこの宇宙に降臨される。いよいよなんだね……」
契約の天使はきたるべきハルマゲドンに備えるためにその場から消えていく。
残されたのは悲しみに塗れた者達だけが繰り返す慟哭の光景のみであった。
……………。
その後の尚紀はニコラスとペレネル夫妻の遺産相続を行うために多忙な毎日を送る事になる。
それに共同代表であったニコラスを失った事で嘉嶋会に関する手続きも残っているようだ。
そのため東京捜査を行う余裕もなく、季節は過ぎ去っていくのみ。
その間に両親の葬儀を粛々と済ませた後、南凪区の外国人墓地に彼らを埋葬する事になるだろう。
時間が少し出来た尚紀達はニコラスとペレネルの墓の前に立っている。
黒のトレンチコートが風で揺れる中、後ろ側に控えている者達が口を開きだす。
「……家族の事は残念だったわ。でも、こんな時に聞くべきかは分からないけれど……」
「…言いたいことなら分かるよ、ナオミ。お前の雇い主は死んだ…もう依頼を続ける必要はない」
「ナオキ……それでいいの?貴方が望んでくれるなら、私はボディガードを続けても構わないわ」
「……必要ない。お前には新しい人生が出来たんだろ?そっちの方を優先するんだな」
それ以上は何も言わなくなった彼の気持ちを尊重するためにナオミはその場から去っていく。
後ろに残っているのはペレネルに代わり新しい主人となった尚紀に仕える従者達だ。
「尚紀……私とリズは何処までも貴方に仕えます。貴方の役に立ちたいんです」
「ジャンヌ…気持ちは嬉しいが、無理に付き合う必要はないんだぞ。餞別ならいくらでもやるさ」
「タルトと呼んでください。ニコラスさん達は尚紀を命懸けで支えました…私もそうしたいです」
「タルトと同じ気持ちよ。私の命は貴方のためにあるわ、尚紀。どんな命令でも遂行してみせる」
「……好きにしろよ」
新しい両親になってくれた人達の元に近寄った尚紀が墓の前で片膝をつく。
夕日に照らされたままの彼の表情は空虚な感情で支配されている。
同時にこれから先の人生の事を考えれば考えるほど、戸惑いしか出てこないのだ。
「…いよいよ探偵を続けるのも難しくなったな。ペレネルが残したものはあまりにも大きかった」
「尚紀、今後の貴方はペレネルに代わり、彼女が纏めた企業グループの意思決定をしていくのよ」
「ニコラスの残した遺産もある…弁護士団から聞かされた俺の相続額は…現実感を感じなかった」
「1300兆円を超えているそうですね…。それに尚紀の財産だって残っているはずです」
「錬金術師夫婦揃えば1400年分の蓄えなのよ。恐ろしい程の遺産相続ね……」
「…日本の借金を払いきれた上で釣りが貰えるな。だが仕組みある限り中央銀行に搾取される」
「それにニコラスとペレネルが秘匿してきた隠し財産もあるんでしょ?ほんと天文学的よね…」
遺産の使い道など今は見当もつかない彼が立ち上がり、停めてある車の元へと歩いていく。
今の彼の中に残っているのは東京で人間の守護者として生きてきたプライドのみ。
それを守るために動く自由さえ今は用意出来ない自分自身にますます苛立ちが募ってしまう。
そんな時、トレンチコートのポケットからスマホの着信音が鳴り響く。
スマホの通話ボタンをスライドさせた彼が通話をしていくようだ。
「……そうか、ついに現れやがったのか。分かった……俺達も直ぐ見滝原市に向かう」
通話を終えた彼がタルトとリズに振り返り、こう告げてくる。
「……ついにこの宇宙の壁が打ち破られた。もうじき…
それを聞かされたタルトとリズの表情が強張り、緊張感を隠せない表情を浮かべてしまう。
「俺はほむらと約束した…共にまどかを守り抜くと。守ってやりたい……だが、今の俺は……」
自分に自信がなくなっている彼のためにタルトとリズは顔を向け合い、頷き合う。
「尚紀、私達も戦います」
「貴方に命を預けると私は言ったわ。その言葉を証明させて頂戴」
「…いいのか?かなえ達から聞かされたが、円環のコトワリ内にはお前達のオリジナルもいるぞ」
「分かっています…。本物のタルトと戦う事になろうとも…今の私は貴方の味方ですよ」
「本物のリズが相手だろうと…私は躊躇わない。尚紀を脅かす存在は全て倒してみせるわ」
彼女達の意思は固いと判断した尚紀が頷き、駐車場に停めてあるロールスロイスを発進させる。
運転手を務めるリズに向けて彼は自分の最強戦力について聞いてみる。
「残念だけど…ペレネルは間に合わなかったわ。それでも傷の殆どを回復させる事は出来たの」
「なら後は自力で傷を癒させていけばいい。…マロガレの力はどれだけ行使出来る?」
「ペレネルの計算では全開戦闘に耐えられるのは
「11分少々か……仕方がない。マロガレの力はここぞという時に使う事になるだろう」
深い悲しみを拭いきる暇もなく、尚紀の前に最大の壁が立ちはだかる時が訪れる。
気の迷いは許されない。
相手はかつて戦ったコトワリ神達を上回る程のコトワリ神。
神霊の領域に至った存在の力強さならかつて見た事がある尚紀の心には恐怖心さえ芽生えてくる。
それでも彼には暁美ほむらから言われた言葉があり、彼もその言葉に縋りつこうとするのだ。
失敗は終わりなんかじゃない。
守ろうとする事をやめたら終わりなのであった。
これでたると☆マギカをクロスさせた理由の消化作業が終了しました。
人修羅君の出番は暫くお休みとなり、残っているキャラドラマ回収を終えた後に円環のコトワリバトルを描きたいなーとか考えております。