人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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240話 洞窟の世界

私達人間は、生まれた時からどこかの深く暗い洞窟の奥に住んでいる。

 

その体は手足と首が縛られており、洞窟の壁を向かされているのだ。

 

人間達の背後には塀があり、その奥にあるのは松明の明かり。

 

塀の上で動かされる人形の影は洞窟の壁に映し出されている。

 

人間達は自分が見ているものが影だとは誰も気が付かない。

 

本物だと信じ込み、その動きをあれこれ考えながら生きているだけ。

 

ある時、そのうちの1人が拘束を解かれることになる。

 

彼は後ろを振り向き、強い光と塀の上で動く人形を見ることになるだろう。

 

今まで見てきた影が現実だと思う男は動揺するのだが、洞窟の外に連れ出される。

 

そこで男は太陽の世界を見る事となり、今までの世界は偽物だったことに気が付く。

 

男はすぐさま洞窟の奥に戻り、みんなに真実を語ろうとするだろう。

 

しかし人間は見たいものしか見ないし、信じない偏見生物。

 

お前達が見ているものは影に過ぎないと叫ぶが、洞窟に繋がれた人達は誰も彼を信じない。

 

自分達の事を騙す悪魔だと男は罵られ、助けようとした人々に囲まれて殺害されるのであった。

 

……………。

 

「Grrrrrrr……ッッ!!!」

 

屹立する巨大な獣人悪魔の全長は40メートルにも上る巨体。

 

青い肌をもち、蛇のようにうねる黒い入れ墨をもち、肥え太った体には金の腕輪や足輪をもつ。

 

その頭部は巨大な象であり、逆立つように伸びた象牙と単眼の目が怪しく光り輝く。

 

右手に持たれた巨大なファルシオンをひとたび振るえば、大地を真っ二つに出来るだろう。

 

屹立する邪悪な悪魔こそ、キャロルJの成れの果てともいえる魔物であった。

 

【ギリメカラ】

 

スリランカの黒い巨象の魔物であり、魔王マーラの乗り物とされる悪魔。

 

スリランカは仏教系の国でありヒンズー教であるインド南部とは何度も衝突してきた。

 

そのためヒンズー教の神々は仏敵だとされ、ギリメカラも仏敵とされてしまう。

 

ギリメカラの真の姿はヒンズー教の聖なる象アイラーヴァタであると云われていた。

 

「クックックッ……力が溢れる……高まる!!俺様こそ最強だ……最強の存在だぁ!!」

 

キャロルJの強烈な承認欲求感情を取り込んでしまったギリメカラの精神が異常をきたす。

 

まるでキャロルJに取り憑かれているかの如く、彼の精神に支配された言葉を発するのだ。

 

「さーて、パワーアップした俺様の生贄になる最初の犠牲者はどいつだ?」

 

虫けらのように小さく見える者達に向けて邪悪な単眼を向けてくる。

 

見れば傷ついたやちよを連れて逃げる鶴乃とみふゆの姿と迎え撃つ姿をした者がいる。

 

「……あたしが相手になる。犠牲になるつもりはない」

 

凛々しく立つかなえが魔槍ルーンを振り、不退転の覚悟を示す。

 

ここを押し通られたら逃げる鶴乃達を追われることになるため譲れないのだ。

 

「ガッツだけは認めてやるが、相手が悪かったな。今の俺様は最強に調子がいい」

 

「だとしても、ここを通すわけにはいかない。通りたければ……あたしを倒すんだな」

 

「望み通りにしてやるさ。同じロックを愛する者同士……ロックンロールといこうや!!」

 

出っ張った腹を左手で叩き、いつでもかかってこいと挑発してくる。

 

やちよ達を守る者として譲れないかなえは最初から勝負に出る動きを行う。

 

タルカジャを全身にかけ続け、攻撃力が最大にまで高まった彼女が跳躍しながら仕掛ける。

 

「さぁ、打ってこい!!()()()()()()()()()()()ぜぇぇぇーーーッッ!!」

 

地面が爆ぜる程の跳躍を用いてギリメカラの頭部にまで迫り、槍を投げ放つ。

 

ギリメカラの単眼が串刺しにされそうになった瞬間、武器が反射されてしまう。

 

「グァァァァァーーッッ!!?」

 

反射された槍が腹部に突き刺さったかなえが地面に落ちていき、道路に激突する。

 

吐血しながら槍を引き抜くと腹部と背中から一気に出血し、重体となってしまうのだ。

 

「言っただろうがぁ!!死ぬ程いいことが起きるってなぁーーッッ!!」

 

巨体の片足を持ち上げたギリメカラが下に倒れ込んでいる者に目掛けて足を蹴り込む。

 

足の裏の影に飲み込まれる中、かなえは気力を振り絞りながら横っ飛びを行う。

 

地響きが起きる程の振動によって高速道路が砕け散り、かなえのバイクも壊れてしまう。

 

魔槍ルーンを杖代わりにしながら立ち上がる彼女の顔には動揺が浮かんでいたのだ。

 

「これはまさか……貴様の悪魔耐性はもしかして……」

 

「感づいたようだな?そうだ!今の俺様は()()()()耐性を持つ悪魔となったんだぁ!!」

 

悪魔の耐性の中でも最強の耐性と言われるのが反射耐性である。

 

中でも物理反射をもつ悪魔の守りは極まっており、たとえ全ての神々を貫く力でさえ通用しない。

 

該当する属性攻撃ならば文字通り全てを相手に反射してしまう恐ろしい悪魔の力の一つであった。

 

「常時テトラカーンがかかっているようなものか…。だとしたら、あたしの手札は限られている」

 

「さぁ、絶望しろ!!テメェも悪魔になったのなら、弱肉強食の戒律に従うんだな!!」

 

巨大なファルシオンを振り下ろしてくる攻撃を跳躍して回避する。

 

高速道路が激しく砕ける中、かなえは街灯の上に着地を行い魔力を槍に注ぎ込む。

 

炎を纏う槍に向けて自らを焼くように彼女は命じる。

 

「ぐぅ!!」

 

風穴が開いた傷口を炎の熱で焼き固めて応急処置した彼女は炎魔法を行使する。

 

投げられた槍が高速回転しながら炎の円環を描き、中央に立つギリメカラを業火で焼く。

 

「ぐぅ!!」

 

マハラギオンの炎熱地獄が放たれ続けるのだが、相手は巨大な悪魔。

 

足元が焼けていくが体の上側にまでは炎が届いていない。

 

「うざってーんだよぉーーッッ!!」

 

口を大きく開けたギリメカラが大きく息を吸い込み、長い象の鼻から鼻息を吹き出す。

 

地上に向けて毒々しい強風が吹き荒れ、かなえの炎魔法を吹き飛ばしてしまう。

 

暴風によって吹き飛ばされた彼女が高速道路に倒れ込み、立ち上がろうとするが異常に気が付く。

 

「くっ……毒か!!」

 

『毒ガスブレス』によって毒に侵されたかなえは体を動かそうとすれば容赦なく毒が襲い掛かる。

 

さらに追い打ちを仕掛けるようにしたギリメカラが禍々しい雄たけびを叫ぶ。

 

「俺様のデスヴォイスを喰らえ!!」

 

バインドボイス攻撃が周囲に放たれ、耳をつんざく程の鳴き声が鳴り響く。

 

緊縛効果によって身動きまで封じられてしまったかなえは絶体絶命のピンチに陥ってしまう。

 

巨体故に動きは緩慢だが、だからこそ相手の動きを止めた上でトドメを刺そうと刃を持ち上げる。

 

「チェックメイトだ!!せっかく転生して生き返れたようだが、またあの世に逝っちまいな!!」

 

振り下ろされる刃を見上げるかなえは絶望の表情を浮かべながら目を瞑る。

 

激しく砕かれた大地であるが、ギリメカラはトドメを刺せた手ごたえを感じていない。

 

「これはまさか……幻惑魔法!?何処に消えやがったぁ!!」

 

巨体を用いて激しく暴れ狂うギリメカラから離れた林の中には逃げ込んだ者達がいる。

 

「ごめん……みふゆ。かっこつけたのに……助けられちゃったね」

 

かなえを抱きかかえて高速道路の外にまで飛び出したのはみふゆであり、厳しい目を向けてくる。

 

「バカ!!こんなところでまた死んだら……やっちゃんがどれほど悲しむと思ってるんです!!」

 

目に涙を浮かべながら蛮勇を戒めてくれる仲間の姿を見つめるかなえも顔を俯けながら謝罪する。

 

「うん……あたしが馬鹿だったよ。奴は強い……どうすれば突破口を開けるんだろう……」

 

「幸いなことに私の幻惑魔法は通じるようです。ですが、物理攻撃を反射するんですよね…?」

 

「うん…だからあたしも火力を最大にした攻撃が出来ない。厄介だよ……物理反射悪魔はね」

 

緊縛状態で動けないかなえに代わり、みふゆが魔力で武器を生み出しながら後ろに振り向く。

 

「ここでじっとしてて下さい、あの巨大なゾウさんは私が相手をします」

 

「ダメだ!!みふゆは幻惑魔法以外の攻撃は物理的なものだ!奴の耐性を超えられない!!」

 

「大丈夫、私だって悪魔の魔法が使えるようになったんですよ?私を信じてください」

 

林の中から飛び出してきたみふゆがギリメカラに向けてスクンダを行使。

 

相手の命中率と回避率が低下し、緩慢な動きがさらに鈍化していく。

 

「何処を狙ってるんですか!私はこっちですよ!!」

 

飛び跳ねながら攻撃を避ける彼女の声を頼りに武器を振り下ろすが、避けられ続ける。

 

側方宙返りを行いながら着地した彼女が武器に雷を纏わせ、一回転しながら投げ放つ。

 

雷を纏う巨大チャクラムがギリメカラの足元を回転しながら放電現象を起こし、内側の敵を焼く。

 

「グォォォォォーーッッ!!?」

 

マハジオンガを喰らったギリメカラが感電するようにしながら痺れていく。

 

体全体に電撃が駆け上っていった一撃が効いたのか、ギリメカラが片膝をつく。

 

「チャンス!!」

 

戻ってきたチャクラムを掴み取り、駆けながらギリメカラの膝に飛び移る。

 

相手の頭部に目掛けて雷を纏わせた武器の一撃を投げようとした時、長い鼻が伸びてくる。

 

「きゃあぁぁぁぁーーッッ!!?」

 

ギリメカラの鼻に巻き付かれた彼女は禍々しい単眼の前にまで持ち上げられてしまう。

 

「残念だったなぁ……ようやく幻惑が解けたようだ。タイムリミットだぜ」

 

巻き付けた鼻に少し力を込めれば、まるでガラス細工のようにみふゆの体が砕けていく。

 

「あがぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

全身の骨を砕かれたみふゆが地面に落ちていく。

 

受け身すらとれないみふゆを受け止めたのは緊縛状態が解けたかなえである。

 

彼女を抱きかかえているため両手が塞がっている者に向けて立ち上がった悪魔がトドメを放つ。

 

「大事な仲間と一緒に逝けるんだ!!喜びながら死にやがれぇぇぇーーーッッ!!」

 

巨大な足を持ち上げ、今度こそ踏み潰そうと巨大な影が迫りくる。

 

死を覚悟しようとした時、かなえはギリメカラの頭上から迫りくる存在の魔力に気が付く。

 

異界の夜空から急降下してくるのは筋斗雲であり、乗っているのは勿論セイテンタイセイ。

 

かなえ達の元にまで駆け下りてきた仲魔が雲から飛び降り、如意棒を地面に突き立てる。

 

「伸びろ!!如意棒!!」

 

天を突かんとばかりに伸び続ける如意棒がギリメカラの足を受け止めながら伸び続ける。

 

「うぉぉぉぉーーーッッ!?」

 

跳ね除けられた勢いで倒れ込むギリメカラなど眼中にない者がかなえに顔を向けてきたようだ。

 

「水臭いじゃねーか、かなえ。俺様達をパーティに招待してくれないなんてよぉ?」

 

「えっ……あ、ごめん。だけど、どうしてここに駆けつける事が出来たの?」

 

「あいつのお陰だよ。置いてけぼりにされたって、膨れっ面になってたぞ」

 

視線を横に向ければ、破壊された高速道路の向こう側から車の光が見えてくる。

 

走行してきたのはクーフーリンが運転するフォードのエコノライン。

 

助手席に乗っているのはメルであり、フルサイズバンと並びながら走るのはケルベロス。

 

「かなえさーーん!!ボクを置いてけぼりにするなんて最低ですよー!!バカーーッッ!!」

 

身を乗り出しながらブーブー文句を言ってくれる仲魔達が絶体絶命の危機に駆けつけてくれる。

 

胸の中が感謝でいっぱいとなったかなえは、不器用ながらも笑顔を浮かべてくれるのだ。

 

「あたし……生き返れて本当に良かった。だって……あたしには大切な仲魔がいてくれる」

 

立ち上がってくるギリメカラの前に現れたのは、人修羅と共にボルテクス界を超えてきた者達。

 

彼らはギリメカラを倒してきた者達であり、目の前に屹立する存在とて恐れる者達ではない。

 

最強の援軍が駆けつけてくれた悪魔達が反撃の狼煙を上げる時がきたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

離れた位置で停車したバンの中から降りてきた者達が即座に動き出す。

 

「メル!ケルベロスに飛び乗れ!かなえが抱きかかえている者が死にかけている!」

 

「分かりました!みふゆさんを安全な場所に運んでからボクが治療します!!」

 

クーフーリンの指示に従い、ケルベロスに飛び乗ったメルが現場に向けて駆け抜ける。

 

「邪魔するんじゃねぇ!!お呼びじゃねーんだよぉーーッッ!!」

 

スクカジャを発動させたギリメカラがみふゆのスクンダ効果を打ち消し、剣を振り上げる。

 

全体に毒と物理ダメージを与えるベノンザッパーを狙おうとした時、クーフーリンが動く。

 

「グオォォォーーーッッ!!?」

 

魔槍ゲイボルグの矛でルーン文字を描いたことでアギダインの大火球が放たれ、敵に直撃。

 

怯んだ相手の足元を超えていったケルベロスがかなえの前で急停止。

 

メルの後ろ側にみふゆを乗せた後、ケルベロスが再び走り出し危険が及ばない場所へ向かう。

 

「これであたしも戦える。さぁ、やろうか!!」

 

「テメェと一緒に戦うのは初めてだが、お手並み拝見だ。俺様が援護してやるさ!」

 

魔槍ルーンを再び生み出し、長柄の武器を持つ者達がギリメカラを相手に戦いを仕掛ける。

 

再び全体攻撃のベノンザッパーを放とうとするが、セイテンタイセイがテトラカーンを行使。

 

全体に放たれた物理攻撃が反射されるが、ギリメカラの物理反射が自分の攻撃を無効化する。

 

「テメェも物理反射を行使出来るってのか!?」

 

「そういうこった。テメェの物理攻撃は俺様が全て跳ね返してやるよ!!」

 

物理攻撃が使えなくなった相手が放つのはマハムドオン。

 

全体にサンスクリット語の巨大魔法陣が描かれるが、相手の動きを止めなければ当て辛い。

 

大きく跳躍して即死魔法を回避した者達が一斉に魔法攻撃を仕掛けてくる。

 

「ヌゥゥゥゥゥーーーッッ!!!」

 

クーフーリンは『ザンダイン』を放ち、巨大な風を圧縮した一撃を放つ。

 

背中に直撃した風魔法で体勢が崩れた相手に目掛けて跳躍したかなえが仕掛ける。

 

「あたしは相手をぶっ壊すことしか能がない女だ!だからこそ、貫いてみせる!!」

 

蛇のように絡みつく業火を纏う魔槍ルーンを構えたかなえが槍を投擲。

 

渦を巻きながら燃え上がる槍の一撃は炎龍を纏う光景とも酷似して見えるだろう。

 

「ガハッ!!!」

 

ステータスの力依存で威力が上がる炎魔法である『火龍撃』の一撃が腹部に突き刺さる。

 

その光景は彼女が魔法少女時代に身に着けていた固有魔法である装甲無視の再現だろう。

 

「まだまだぁぁぁーーッッ!!」

 

筋斗雲で空を飛ぶセイテンタイセイが如意棒を振るい、かなえは如意棒を足場にして跳躍。

 

高速で迫りくるかなえが狙うのは肥え太った腹で燃え上がる魔槍ルーンの石突部分。

 

振り上げた左拳に業火を纏わせ、石突部分に目掛けて拳を打ち込む。

 

「消し飛べ、クズがああああーーーーッッ!!!」

 

彼女が放ったのは地獄の業火であり、魔槍ルーンの炎の一撃と合わせて追い打ちを放つ。

 

「グギャァァァァァァーーーーッッ!!!」

 

腹の内側で大爆発が起きたかのようにして吹っ飛んだ上半身が倒れ込む。

 

地面に着地したかなえは仲魔達に顔を向けながら微笑み、親指を上げるハンドサインを送る。

 

彼女が送ってくるサムズアップを見た者達が頷き、勝利を確信したようであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

千切れた下半身が砕け散り、MAGの光を撒き散らす。

 

残された上半身にもひび割れが起きていき、直に砕けて死ぬだろう。

 

最後のトドメが必要かと集まってきた者達が巨大な上半身に視線を向けてくる。

 

「ハ……ハハハ……結局俺様は……最強にはなれない……負け犬かよ……」

 

悪足掻きしてくる気配を見せないようなので武器を下ろしてくれる者達に向けてこう告げてくる。

 

「俺様を倒そうが……全てが無駄さ。もう始まってるんだよ……誰も世界を止められない」

 

「もしかして……それが神浜の地下に建造されているという都市と関係しているの?」

 

「ザイオンの秘密を知ろうが…無駄なんだ。いくらテメェらが強くても……そんな問題じゃない」

 

「死ぬ前に教えて…イルミナティって何なの?」

 

「啓明結社を知ったところで無駄なんだ…連中はシステム……世界の羅針盤に過ぎない導き手だ」

 

「世界の頭脳そのものだと言いたいの…?それじゃあ、国連などの世界組織は何なの?」

 

「連中の飼い主は同じさ…この世の全ては株式会社構造…世界中の政官財が代理人となるんだ…」

 

「そ、そんな……それじゃあ、あたし達がいくら足掻いたって……」

 

「そう……無駄なんだよ。テメェらは…連中の掌の上で生活するしか…生きられねぇ……」

 

ギリメカラの単眼に映る世界が暗くなっていき、キャロルJが死ぬ時が迫りくる。

 

「暗い……まるで()()()()()だ。へへ……テメェら()()()()()()()()()()()()()()だな…」

 

「あたし達が生きている世界が……洞窟の世界?」

 

「民衆は分かり易い情報を頼りにして…世界を認識してる。それは…洞窟の影を見ているだけさ」

 

「今までのあたし達は……洞窟の中の影を見ていただけ……?」

 

「松明の明かりと…分かり易い影となる連中こそ…国の政治家や専門家…そしてテレビとSNS…」

 

上半身の亀裂が限界となり、体が砕け始める。

 

「連中と戦うために…民衆に頼ろうとしても無駄だ…。民衆はテメェらの言葉なんて…信じない」

 

「分かってる……魔法少女の存在を語ったところで誰も信じないのと同じだってことは……」

 

「真実を叫んでも…人々は分かり易い影の世界しか見ない偏見生物。だからこそ……迫害される」

 

彼が語った言葉の内容は暁美ほむらや美国織莉子、氷室ラビや三浦旭なら理解出来るだろう。

 

彼女達もまた誰にも自分の言葉を届けられず、信じてもらえず、迫害されてきた者達なのだから。

 

狂った笑い声を上げながら最後を迎えるキャロルJが、かなえ達を試すように嘲笑う。

 

「ハハハハ……それでも足掻けるか?保身に走り……何も知らない馬鹿を演じてた方が楽だぜ?」

 

覚悟を試されるかなえの手が握り締められ、決断する言葉を語ってくれる。

 

その言葉には彼女が愛するロックとは何なのかが込められているのだ。

 

「それでも……戦う。あたしが愛するロックはね……金に飼われる犬になるためのものじゃない」

 

――この世の理不尽を憎み、()()()()()()()()()()()()()()()()()()こそが……ロックなんだ。

 

ロックンロールとは何なのかを語られたことで、純粋にロックを追いかけていた時期を思い出す。

 

最後にキャロルJは微笑み、かなえを称える言葉を送ってくれる。

 

「牧師に飼われる羊では終わらないか……かっこいいぜ。テメェの在り方こそ……ロックだ」

 

上半身が砕け散り、MAGの光を撒き散らす。

 

道は違えどロックを愛した者が空に向けて上っていく中、かなえは手向けの言葉を送ってくれる。

 

「権力者に飼われて生きながら恥を晒すより…弾き語りでもしながら生きてた方が似合ってたよ」

 

……………。

 

フルサイズバンに乗せてもらえた魔法少女達が帰路についていく。

 

車の隣を飛ぶのは筋斗雲の上であぐらをかくセイテンタイセイと、横を走るケルベロスもいる。

 

車内では重苦しい沈黙が続いていたようだが、擬態姿のクーフーリンが声をかけてくれたようだ。

 

「私達だけしか来れなくてすまない。尚紀は遺産相続が忙しくてな…今はアメリカに行ってる」

 

「家族が亡くなったとみかげさんから聞いてます…あの人も辛い立場なんです。責めはしません」

 

「尚紀からは忙しい自分に代わり、神浜の魔法少女達を支えてくれと言われている」

 

「尚紀には世話になりっぱなしだね…。今回だって助けてくれなかったら私達は死んでたよ…」

 

「クーフーリン…いいえ、槍一郎さんだったかしら?助けに来てくれて本当に感謝してるわ」

 

「どの呼ばれ方でも私は構わない。それより…お前達はこれからどうするんだ?」

 

それを問われた者達が押し黙ってしまう。

 

横の助手席に座るかなえは暗い表情を浮かべながら口を出してくる。

 

「あのダークサマナーが言った言葉が事実なら……あたし達が何をやっても無駄になる」

 

「ザイオンについてもこの一件で確証が持てましたが…周りに語っても信じないでしょうね…」

 

「私…お爺ちゃんの寝室だった部屋をもう一度調べてみる!動かぬ証拠があるかもしれない!」

 

「鶴乃…たとえ証拠を見つけ出したとしても、きっと信じてもらえないわ…」

 

「どうしてさ!?」

 

「私達は国の政治家でも、メディアに出演する専門家でもない……ただの女子学生だからよ」

 

「そんな……ことって……」

 

「陰謀論者のレッテルを張られて嘲笑われるだけです。だから魔法少女の秘密も語れなかった…」

 

「権威主義の恐ろしさは身をもって知っているわ…私だって権威である御上に逆らえないもの…」

 

「やっちゃん……」

 

「だけどね…()()()()()()()()()()()()()()()()()()。権力者に都合がいい状況しか生まれない」

 

「八方塞がりですね…。私達はこれから追われる者となる…それなのに何も出来ないなんて…」

 

「ごめんね……みんな。私……こんな事態になるなんて……想像も出来なかった……」

 

「憎まないと言ったはずよ、鶴乃。誰だって決断材料を全て用意する事なんて出来ないわ」

 

「自分を責めなくてもいいんです。やっちゃんはね…鶴乃さんが羨ましいって言ってました」

 

「私が……羨ましい?」

 

「周りに迷惑をかけてでも自分を貫ける。そんな在り方が自分にも出来たらって…言ってました」

 

「あたしもね、鶴乃の在り方はかっこいいと思うよ。迷惑をかけてでも自分を貫いていいんだ」

 

「だから鶴乃、胸を張りなさい。私やみふゆでさえ出来なかった勇気を示せたんだから」

 

みんなの優しさが嬉しいのか、鶴乃は泣き始めてしまう。

 

「グスッ…エッグ……有難う、みんな。悪魔みたいに迷惑かけたのに……憎まないでくれて……」

 

そんな彼女にみふゆがハンカチを渡し、涙を拭く鶴乃が落ち着くまで仲間達は待ってくれる。

 

重苦しい沈黙が車内を支配する中、クーフーリンは考え込んでいるようだ。

 

(ザイオン…ヘブライの都が街の地下に建造されているとはな。恐らくはハルマゲドンの用意か)

 

この世界に流れ着き、光と闇の最終戦争であるハルマゲドンが起きるなら武人の気概を見せる時。

 

元よりボルテクス時代の尚紀の背中に最後までついていったのは唯一神と戦うため。

 

だが今の彼には迷いが生まれている。

 

(ハルマゲドンが地上で起これば…大勢が死ぬ。ザイオンに入れる選民しか生き残れない…)

 

魔法少女も含めた人類が死に絶えようとしている横で意気揚々とLAWの天使達と殺し合う悪魔達。

 

そこには弱者救済を掲げる騎士道精神など入り込む余地などない、戦場の獣達の世界となる。

 

(私は何のために戦う者だ…?武人としてのプライドか?それとも、騎士道精神のためか…?)

 

この世界で人間に擬態しながら生活してきた彼もまた魔法少女達と触れ合えた者。

 

街を歩けば気さくに声をかけてくれる者達と過ごすうちに、彼女達を守りたい気持ちも生まれる。

 

(私の槍は誰のために振るえばいい?最終戦争のためか…?それとも…弱き人々を守るためか?)

 

迷いに迷っていた時、我慢が出来ない者が癇癪を起し始める。

 

「そろそろ言ってもいいですか?ボク達の後ろの空間……狭過ぎ問題ですよーーッッ!!」

 

クワッとした顔つきで激おこぷんぷん丸と化すのはメルである。

 

見れば彼女は詰め込まれた二台のバイクの奥でどうにか座れてる状態であり狭そうだ。

 

「しょうがないじゃない、私達のバイクは壊れちゃったけど放置して帰るわけにもいかないわ」

 

「うぇぇぇん!!狭いよーっ!狭いよーっ!もっとそっち側を詰めて下さいよーっ!!」

 

「これ以上は詰められないわよ!家に帰るまで我慢なさい!」

 

「ひょっとして、そっち側に荷物を詰める余裕が生まれないのは…太った人がいるからですか?」

 

魔法少女である前に花の乙女として、聞き捨てならない言葉であった。

 

「だ、誰がデブ女よ!?私は一流モデルよ!ふ、太ってなんていないんだから!!」

 

「七海先輩、声が裏返ってますよ?」

 

「そんなこと言ってますけど、最近のやっちゃんはドーナツの摂取量が多い気がしますけど?」

 

「そ、そういうみふゆだって!受験を乗り越えた解放感を楽しむようにドカ喰いしてたわよ!」

 

「あ、あれはドーピング薬の副作用のせいですよ!?わ、私…太ってなんていませんから!!」

 

「だとしたら原因は鶴乃さんですか?お父さんがいないからって、お菓子食べ放題ですか?」

 

「そ、そんなことないもん!!私は…その……ちゃんと運動もしてるからノーカンだよ!!」

 

「つまりはお菓子食べ放題してたってことですよね?」

 

「うぐっ!?バレてしまったからにはしょうがない!私の秘密は封印させてもらうよ!!」

 

「私の秘密にも触れようとしてくるメルにはキツイお仕置きが必要のようね?」

 

「ここで会ったが百年目です!私達の秘密については墓まで持って行ってもらいます!!」

 

「うわわーっ!?みんなが秘密結社連中と変わらない行動をしてくるーーっ!!」

 

後部座席がどんちゃん騒ぎとなっていく中、微笑むかなえに向けてクーフーリンが口を開く。

 

「壊れたバイクについては尚紀に伝えておこう。今のあの男の財力なら直ぐに直せるさ」

 

「何から何まで…尚紀に助けられてばかりだ。足を向けて眠れないね」

 

「そう言うな。あの男も苦しい立場だからこそ、支えてくれる者がいる。これからもよろしくな」

 

「うん……今後とも、よろしくね」

 

「フッ……()()()()()が言えるぐらい悪魔人生が板についたようだな」

 

気分を晴らすためにクーフーリンが車のラジオをつけてくれる。

 

ちょうど音楽番組が流れていたようであり、ロック系の音楽が車内に流れ始める。

 

ロックの在り方を叫んだかなえは窓に顔を向けながら自分の思いに浸っていく。

 

(あたしのロックは我慢を否定する気持ちを叫びたい。我慢を捨て、()()()()()()()()()()()()

 

暗闇の洞窟に繋がれた者達が自由(CHAOS)を知り、自由を求める戦いを始めようとする。

 

自由という概念は社会通念や社会ルールを破るものであり、悪魔の如く社会悪にされるだろう。

 

悪魔のように嫌われ者になってでも、彼女達は自分達の自由を追求する者になっていく。

 

社会通念が間違っているなら、社会ルールが間違っているなら、戦ってでも批判する者になる。

 

それこそが真に人が幸福に至れる道なのだと気が付いた彼女達はもう、権威主義には陥らない。

 

たとえ権威を相手にして自由の代償を支払うことになろうとも戦い続ける者へと成長していく。

 

その道こそが個の確立であり、反逆の堕天使ルシファーの在り方を説くサタニズム精神。

 

民主主義国家を成熟させるものであり、()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 




うおおお!!なぜ今年の冬にまどマギ映画のワルプルギスの廻天を放映予定にしてくれなかった!?
来年の冬に回されたことによって、原作まどマギ組を東京編の7章で使えるかどうか分からないぃぃぃ!!
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