人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
建設が放棄され鉄骨が剥き出しの高層ビルを上る2人に対して猛攻が仕掛けられていく。
現れるのはクドラクの手下になった悪魔達であり、ももことクルースニクは応戦する。
「シャァァァァーーーーッッ!!!」
毒液を撒き散らしてくるのは冠のような鶏冠を持ったまだら模様のトカゲ悪魔であった。
【バジリスク】
蛇の王とされ、吐く毒は植物や水を枯らし、動物を殺し、岩をも砕くとされる。
その瞳には睨んだ相手を石化させる魔力を持つ恐ろしいトカゲ悪魔であった。
「くっ!!床にびっしりいるトカゲ悪魔は気色悪いなぁ……出来れば近寄りたくない」
角で隠れるももこ達に向けて毒液を吐きかけ続けるバジリスクの群れ。
迂闊に飛び出れば毒液を浴びて猛毒状態にされてしまうだろう。
「クドラクは野良悪魔共を従えているようだ。奴らの恐ろしさは毒だけじゃない、石化も脅威だ」
「石化の魔法まで使ってくるの!?迂闊に飛び出せないなぁ……どうしよう?」
「私に任せろ。奴らには弱点がある」
クルースニクの体から白い霧が吹きあがり、変化の魔法を行使する。
その姿を白い雄鳥に変えたクルースニクが大きな鳴き声を放つのだ。
<<グギャァァァァァーーーーッッ!!?>>
雄鳥の鳴き声で怯んだバジリスク達が毒液を吐くのをやめて恐慌状態になってしまう。
「今だ!!斬り込め!!」
「了解ッッ!!」
角から飛び出したももこが大剣に炎を纏わせながらマハラギを放つ。
業火で薙ぎ払われたバジリスク達が燃え上がり、MAGの光を撒き散らす最後を迎える。
「よしっ!!」
ガッツポーズを作るももこの後ろからクルースニクが近寄り、彼女は笑顔を向けてくる。
「動物に変化も出来るんだね?クルースニクさんは強いだけじゃなくて色々な能力もあるんだ?」
「クドラクと同じさ。奴もまた動物に擬態する能力をもつ。我々は鏡で分けられた者達なのだ」
「だから光と闇の宿命を持つ者なんだね?生まれた時から夜の魔物共と戦い続けてきたんだ……」
「戦いはあらゆる並行世界で起きてきた。我々が召喚されたならばこの世界でも同じ事が起きる」
上階に上ろうとするのだがクルースニクが立ち止まり、後ろを振り向く。
「どうしたの?」
「奴ら……どういうつもりだ?攻めてくる気配を見せない」
「後ろにも悪魔が隠れているの!?だったら倒さなきゃ!!」
「いや、戦意そのものを感じさせてこない。何を狙っているのだ…あの吸血鬼共は?」
不審に思いながらも2人は上階へと昇っていく。
物陰に隠れていたのは宝崎市でクドラクに襲われヴァンパイアにされた男達である。
「おい、本当に戦わなくてもいいのかよ、俺達?」
「構わねーよ。俺達はクドラクに襲われてアンデット悪魔にされたんだ。奴に従う義理はねぇな」
「けどな、クドラクの力は見極めねーとならねぇ。ついて行くべきかはそれから判断しようぜ」
「お手並み拝見というわけかよ?まぁいいさ、もう人間には戻れねーし……それでいこうや」
様子見を決め込むヴァンパイア悪魔達を尻目にももこ達は戦いを繰り返す。
クドラクが無差別に襲った屍鬼達が迫り、彼女達は応戦していく。
中でも屍鬼達に混ざって迫りくる悪魔は厄介な存在共が混じっていたようだ。
【ヨモツイクサ】
日本神話において黄泉に棲むとされる鬼であり、黄泉平坂を守る亡者兵士。
黄泉にまで行ったイザナギ神を襲った悪魔達でもあり、イザナギは桃の木の枝で撃退している。
江戸時代からの葬式風習に由来するらしい編み笠で顔を隠した屍悪魔であった。
「まったく!!吸血鬼の住処はアンデット塗れかよ!!」
「ヨモツイクサは私が相手をしよう!君は屍鬼共を倒すんだ!!」
「分かった!!」
炎と破魔の魔法を操る者達がアンデット軍団に飛び込み、次々と斬り伏せていく。
その頃、最上階で佇むクドラクとクバンダは下の階の様子について口を開き始める。
「フン、この様子じゃ直にここまで上ってきそうだ。流石はクルースニクといったところか」
「連れの魔法少女も悪魔の魔法が使えるようになってやがる。下の奴らじゃ分が悪いかもな」
「まぁいいさ、最初から下の連中なんぞ当てにしてない。奴らは儂らが仕留める」
「手筈通りにやれよ。こんな美味そうな和牛娘をテメェにくれてやるんだからな」
「勿論、そのつもりですぜ」
二体の悪魔達が後ろに振り向くと、そこに見えたのは鉄骨に括りつけられている那由他がいる。
眠るようにして微動だにしない彼女は人質にされたまま助けを待っているようだ。
「人質を盾にして2人で来るように言ったが、連中の仲間もいずれ気が付く。用意はどうだ?」
「ぬかりないですぜ、儂の墨縄トラップを踏んだ瞬間…奴らはお縄にされるって寸法よ」
「獲物を追い詰めて捕縛することに長けたテメェらしい手口だ。捕まえた奴らも好きにしな」
「そいつは嬉しい報酬だ。後ろの和牛娘ぐらい美味そうな娘が罠にかかることを願うぜ」
クドラクが異界の夜空を見上げれば血のように赤い月が見える。
指を舐めて掲げた彼が夜風の流れを感じているようだ。
「今夜は夜風も吹かない穏やかな夜だ。これなら仕掛けられるな」
「クックック……この下は儂のトラップ地獄。そこでアレを撒くんですかい?」
「そういうこった。さぁ、早く上ってきやがれ。オレの洗礼を喰らわせてやるぜ」
あと少しで屋上にまで上れる階にまで差し掛かった時、2人は立ち止まる。
薄暗い空間に見えるのは毒々しい濃霧であり、視界が殆ど効かないまでに先が見えない。
「ゲホッ!!ゲホッ!!酷い臭いだ……風魔法が使えるようになったかえでがいてくれたらなぁ」
「クドラクが操る毒の霧だ。私は毒に耐性があるから大丈夫だが…君はどうする?」
「この上に那由他ちゃんの魔力を感じるんだ……こんな場所で立ち止まるわけにはいかない!」
ももこは魔法少女衣装の一部を切り取り、長い布を口に巻き付けてスカーフ代わりとする。
顔を向けてきた彼女が頷く姿を見たクルースニクは覚悟を受け取ったようだ。
「狡い手口を好むクドラクのことだ……霧の中に何を潜ませているか分からない。油断するな」
「分かったよ。後ろをついて行くから先導して」
夜目が効くクルースニクの背中について行くようにももこは歩いていく。
「ゴホッ!!ゴホッ!!スカーフをしてても酷い臭いだ……めまいがしてくる……」
「止まれ!!」
「えっ!?うわっ!!」
霧で視界が効かなかったももこの足元にあった毒々しい光が発動する。
複数のリングで体を拘束されたももこは体勢を崩して倒れ込んでしまったようだ。
「この束縛魔法は…クバンダの墨縄か?どうやらクドラクの手下として潜伏しているようだ」
「ゴホッ!!ゲホッ!!こんな場所で拘束されたら……毒に巻かれて殺されるよ!!」
「待ってろ、今呪縛を断つ」
銀のロングソードで拘束リングを斬ってもらえたももこが立ち上がる。
安堵の表情を浮かべるのだが毒に巻かれているため息が苦しそうだ。
「クルースニクさんがいてくれて良かった…全員が罠にかかってたら…アタシは死んでたね」
「この先に上に登れる階段があるようだ。急ぐぞ」
急いで毒エリアから脱出した2人が入り込んだのは建設途中で放棄された階層。
鉄骨が剥き出しのまま開けたエリアで立っているのはクドラクとクバンダ。
「いよぉぉぉ……ようやくご到着といったところか」
「儂らの歓迎は気に入ってもらえたかい?」
邪悪な笑みを浮かべてくる悪魔達に対し、ももこは口のスカーフを脱ぎ捨てながら叫ぶ。
「那由他ちゃんを返してもらうぞ!!そして、お前との因縁は今日限りにさせてもらう!!」
「私は私の宿命を果たさせてもらう。決着をつけるぞ……クドラク!!」
武器を構える者達に向けてクドラクは両手でマントを払いながら飛び上がる。
「上等だぁ!!決着を望むのはオレも同じさ……夜を支配する夜魔の力に飲まれろぉ!!」
浮遊するクドラクが超能力魔法を行使。
周囲に散乱する瓦礫だけでなく、廃墟ビルの周囲にある看板や貯水タンクまで持ち上がっていく。
瓦礫の山を背後に浮かばせた者がマハサイオを放ち、次々と瓦礫が弾丸のように飛来する。
迎え撃つ者達は吸血鬼悪魔との因縁の決着を果たすために剣を振るうのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
迫りくる瓦礫攻撃に向けて放つのはクルースニクの必殺技ともいえる天扇弓。
光の弓から放たれた矢が分裂していき、無数の瓦礫を砕きながらクドラクに襲い掛かる。
「チッ!!」
飛翔しながら片手に冷気を纏わせ、クドラクは反撃としてマハブフーラを放つ。
横っ飛びで回避するクルースニクは空を飛ぶ者を射落とそうと狙い続けるのだ。
「「オォォォーーーーッッ!!」」
ももこはクバンダが振り上げる墨縄の刃と斬り結び合い、鍔迫り合いを繰り返す。
「人質を盾にしてこない戦い方は褒めてやる!だけど那由他ちゃんを誘拐したのは許さないぞ!」
「へっ!そう思うなら取り返しに行ったらどうなんだ?ただし、儂を倒せたらだがなぁ!!」
三メートルの巨体から放つ蹴りが決まったことでももこが壁に激突してしまう。
すかさずクバンダは武器を投げ、ももこの頭上をブーメランのように旋回した直後に緊縛となる。
「くそ!!またかよ!!」
惑いの墨縄で拘束されてしまった者に目掛けて疾風の如く迫りくるクバンダが武器を振り上げる。
「お前も肉付きがいい小娘だ!!さぞかし喰らい甲斐があるだろうなぁ!!」
邪悪な光を放つ刃から放つのは『夜叉の貪り』であり、ももこの精気を吸いつくそうとする。
しかし横から迫りくる業火がクバンダの側面に直撃し、炎に巻かれた悪魔が倒れて転げまわる。
「ももこ!!」
投げられた銀のロングソードが拘束リングを破壊しながら壁に突き刺さる。
脱出する事が出来たももこであるが、感謝の言葉ではなく彼の危機を叫んでくるのだ。
「クルースニクさん!!後ろ!!」
「なにっ!?くっ!!」
ももこを気にするあまり背中がガラ空きだった者に目掛けてクドラクが急降下蹴りを放つ。
大きく蹴り飛ばされたクルースニクは高層ビルから落ちそうになるが片手で地面を掴む。
「足手まといを気にしながらオレに殺されるんだ。最高に馬鹿な最後だよなぁ、クルースニク」
トドメを刺そうとするクドラクに向けてももこは炎魔法を放つのだが風魔法が側面から放たれる。
火球を放つ『アギラオ』を打ち消したのはザンマの一撃であり、クバンダが起き上がってくる。
「舐めた真似してくれるじゃねーかぁぁぁ!!ぶっ殺してやるぅぅぅーーーッッ!!」
体中に風を纏うクバンダが怒りを撒き散らしながらクルースニクを殺しに向かう。
それを阻止するためにももこが立ち塞がり、再び刃を交えていくのである。
追い詰められたクルースニクの前にまできたクドラクが片足を持ち上げながらこう吐き捨てる。
「地獄の底に突き落としてやる!!永遠にオレの前から消えろ!!」
「それはどうかな!!」
「何だとぉ?ぐおっ!?」
両手で地面を掴んだクルースニクが一気に体を持ち上げながら片足蹴りを放つ。
浴びせ蹴りを浴びたクドラクが体勢を崩し、勢いよく地面に着地したクルースニクが蹴りを放つ。
「ぐふっ!!」
踏み込み蹴りを腹部に受けたクドラクが蹴り飛ばされるが後ろ脚を伸ばしながらこらえきる。
奈落に落ちる側面で佇む者達が睨み合い、クルースニクは徒手空拳の構えを行う。
それを見たクドラクは不気味な笑みを浮かべながら彼の挑発に乗ってきたようだ。
「ステゴロかよ?いいぜ…オレもテメェも男同士。男の喧嘩の最後はステゴロが相応しい!!」
拳を固め合った者達が互いに踏み込み、徒手空拳同士の戦いを始めていく。
剛力を誇る吸血鬼を相手にしてもパワー負けしていないクルースニクは互角の戦いを繰り広げる。
パワーファイトを仕掛けるのはももこも同じの様子。
「ウォォォォーーーッッ!!」
クバンダと戦いながらもタルカジャを自身にかけ続け、攻撃力が最大にまで高まった一撃を放つ。
片手に持つ墨縄を弾き飛ばしたももこが跳躍し、放たれた『マハザンマ』の一撃を回避する。
馬頭を頭上に向ければ一回転する体勢を利用した踵蹴りが迫り、脳天を直撃。
「がはっ!!!」
一瞬意識が飛ぶ程の一撃を浴びたクバンダが倒れ込む中、クルースニクは彼女に向けて叫ぶ。
「ももこ!!人質を救出して先に逃げろ!!追い詰められた奴らの切り札に彼女をさせるな!!」
「分かった!!」
クルースニクがクドラクを抑え込んでくれている隙をつき、ももこは人質の元まで走っていく。
「しっかりして!!那由他ちゃん!!」
大剣で拘束を解いたももこが那由他の両肩を掴みながら声をかけ続ける。
「う……うん……?ももこ……さん……?」
「良かった…無事だったんだね!ここは危ない!アタシと一緒に逃げるんだ!!」
彼女の無事を確認したももこが一緒に脱出しようとする中、異変が起きる。
「私……一緒に逃げられないんですの」
「えっ……?」
制服のポケットから取り出されたのは小型のナイフ。
クドラクとクバンダが邪悪な笑みを浮かべてくる。
次の瞬間、ももこの背中に激痛が走ってしまう。
「あぐっ……!?」
逃げるために背中を向けていたももこの背中に深々と突き刺さった小型のナイフが血を滴らせる。
ナイフに塗られたバジリスクの猛毒が回っていき、刃を引き抜かれた彼女が倒れ込んでしまう。
「ぐっ……うぅ……ど…どうして……?」
顔を後ろに向ければ、そこには虚無の目をした那由他が魔法少女姿となっている。
「私は……クドラク様の下僕ですの」
ナイフを捨て芭蕉扇のような魔法武器を振るいながら豪風を放ち、ももこを弾き飛ばしてしまう。
「あぐっ!!」
屋上の中央にまで弾き飛ばされたももこを見たクルースニクが冷静さを失っていく。
「くそっ!!罠だったのか!!」
「見抜けなかったテメェがマヌケだったってことさぁ!!」
クドラクの回し蹴りが側頭部に決まったクルースニクもまた屋上の中央にまで蹴り飛ばされる。
ももこの横に倒れ込んだクルースニク達に迫るのは三体の敵。
「不覚……奴らが正々堂々と戦いを挑んでくるはずがなかったのだ……」
「ごめん……アタシのせいで……迷惑かけ続けて……」
「気にするな……私の判断ミスだ。こうなれば……せめて君だけでも……逃げるんだ」
「難しい注文…かな…。ナイフに毒が塗られてたみたい……体が動かないんだ……」
絶体絶命のピンチに陥ってしまったももことクルースニク。
彼らの命は風前の灯火となり、なぶり殺しにされるのを待つばかりとなってしまう。
血のように赤く輝く異界の月は、血の生贄を求めるかのようにして怪しく光るのみであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ももこと連絡が取れなくなった事に気が付いたみたま達は彼女の魔力を追って南に向かう。
廃墟地域に異界が張り巡らされていた事で悪魔の罠に落ちたのではないかと心配する。
焦りながら高層ビルに向かっていたため、彼女達は足元の罠に気が付いていない。
「「「キャァーーーーッッ!!?」」」
みたまとレナとかえではクバンダが張り巡らせた緊縛トラップに引っ掛かり地面に倒れ込む。
「な、なんなのよコレ!?一体誰がこんなトラップを仕掛けてたのよ!!」
「う、動けないよぉぉぉーーーッッ!!」
「しまった……焦り過ぎてたから気が付かなかった!!これは悪魔のトラップよ!!」
「やっぱりそれじゃあ……ももこは悪魔に誘き出されてたってこと!?」
「那由他さんをさらったのも悪魔の仕業だったんだよ!早く抜け出さないと……うぐぅぅぅ!!」
「くっ……ダメ!!力では緊縛を解けない!!」
藻掻き苦しみながらも大切な仲間の身を案じていた時、力強い男の気配を感じ取る。
「あ……あの人は……?」
まるで天狗の如き華麗な跳躍術を用いて建物の上を忍者の如く駆け抜けていく漆黒の書生。
ハイカラマントの肩には黒猫が掴まっており、書生と共に戦場に目を向ける。
横を飛ぶモー・ショボーは焦りを浮かべながら悪魔の居所を伝えてくれるようだ。
「ライドウ!あのビルジングの屋上からクルースニクの魔力を感じるよ!!」
「奴の魔力が弱り切っている……不味いぞ、ライドウ!」
「悠長に階段を上っている暇はない、一気に行くぞ!!」
ライドウ達が援軍として迫る中、屋上では処刑とも呼べる凄惨な光景が広がっている。
操られた魔法少女が芭蕉扇に魔力を込め、マギア魔法を放つ。
「風よ……世界を紡いで。一度触れたら逃げられない」
暴風が巻き付くように吹き荒れる芭蕉扇を振り抜き、ビルの屋上に暴風が巻き起こる。
<<うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!>>
屋上に大きな竜巻が生み出され、ももことクルースニクは竜巻に飲み込まれて巻き上げられる。
里見那由他のマギア魔法である『文化的躍進の気流』に飲まれた者達は受け身が出来ない体勢だ。
毒に侵されて身動き出来ないももこを掴んだクルースニクは身を挺して彼女を庇う。
地面に叩きつけられたクルースニクが呻き声を上げる中、虚無の魔法少女は吐き捨ててくる。
「この無限にたゆたう無の世界で……誰にも知られず……消えるしかないんですの……」
「その通り。お前ら魔法少女など、我々悪魔にとっては消費物に過ぎないんだ」
「魔法少女の魂を喰らい、オレ達は強くなる。だからこそ誰にも知られず消費されていくんだぜ」
「私は……疲れましたの。この世界に希望なんてない……だったら……クドラク様についていく」
「おーおー、可愛い娘だ。利用されていると知りながら、まだオレについてくるとよ?」
「これが絶望に飲まれた者の本音といったところですかね?魅了魔法の影響でポロリと出たのさ」
尚紀や太助から聞かされてきたこの世の隠された事実を知った彼女の心には絶望が渦巻いている。
魔法少女の力をもってしてもどうする事も出来ない仕組みに支配された世界で生きるしかない。
そんな絶望に支配されている彼女の本音は氷室ラビと同じく虚無を望む気持ちなのであろう。
しかし、現実が何であろうと自分の信念を貫く者が立ち上がっていく。
「まだだ……私はまだ……立てるぞ……」
気力を振り絞りながら立ち上がるクルースニクは自らを盾にしてでも倒れた者を守ろうとする。
そんな彼の優しさが辛いのか、ももこの目から涙が溢れ出す。
「ダメだ……ダメだ……ッッ!!逃げてよ……お願いだから……アタシを捨てて逃げてぇ!!」
「君を見捨てて逃げるぐらいなら……私は自分の正義と共に死のう」
「バカ……野郎……ッッ!!」
クルースニクは薙ぎ払うように右腕を振り、マハラギオンを用いて業火の壁を生み出す。
炎を壁にしながら自分の剣を取りに行くのだが、炎を無効化したクドラクが飛び込んでくる。
「苦し紛れの魔法攻撃でオレをどうにか出来ると思ってんのかぁ!!」
「がはぁ!!!」
爪から麻痺毒を分泌させて放つ『マヒひっかき』を背中に浴びたクルースニクが倒れ込む。
魔力属性である毒に耐性はあっても神経属性である麻痺を無効化する力は彼には備わっていない。
「オラァァァ―――ッッ!!儂の分も喰らっとけやぁ!!」
「ぐはぁ!!!」
大きく跳躍して炎の壁を越えてきたクバンダが倒れ込んだクルースニクの背中にのしかかる。
痩せた体だが三メートルもの巨体の体重を浴びたクルースニクは背骨を傷めたようだ。
尚も踏み付け蹴りを放ち続けるクバンダであるが、周囲に破魔の布陣が敷かれた事に気が付く。
「チッ!!」
跳躍してマハンマオンを避けたクバンダの隙をつき、ふらつきながら起き上がる者が歩いていく。
よろめきながら進み続け、もう少しで自分の剣に右手が届くその瞬間を狙う者がいる。
集中力を一気に高めたクドラクが右手を開きながらかざし、超能力魔法の上位魔法を行使。
「グアァァァァーーーーッッ!!!」
クドラクの右手が握り込まれた瞬間、クルースニクの右腕が一瞬で圧し潰される。
『サイダイン』の空間圧縮によって右腕を失ったクルースニクが血を撒き散らしながら後ずさる。
「儂の体を焼いてくれたお礼はこの程度じゃ終わらねぇぞーーッッ!!」
クバンダの蹴りが背中に決まった事で背骨が折れ、クルースニクがクドラクに向けて飛ばされる。
超能力魔法のサイを用いて敵の体を宙に浮かせるクドラクは勝利を確信した表情を浮かべるのだ。
「やめろ……やめてくれ……ッッ!!殺すならアタシだけにしろよぉぉぉ……ッッ!!」
「言われなくても、テメェは後でじっくりなぶり殺しにしてやる。先ずは目の前のコイツだ」
帯電させた右手を構えたクドラクが放つのは電撃を纏わせた貫手。
狙うのはクルースニクの急所となるだろう心臓であった。
「今度は邪魔は入らねぇ。そのために人質を用意した甲斐もあったってわけだ」
邪悪な笑みを浮かべたクドラクが迷いなく動く。
鈍化した世界。
叫ぶももこの眼前では、大きく血が飛び散る光景が広がっている。
「ゴフッ!!!!」
迷いなく心臓を貫いたクドラクの抜き手に纏わせた電撃がクルースニクの体を焼く。
「やだ……やだぁ……やだぁぁぁぁーーーーッッ!!!」
スローモーション世界の地面に倒れ込むクルースニク。
返り血塗れの抜き手を抜いたクドラクは完全勝利の余韻に浸っている顔つきを浮かべる。
ももこの叫びも那由他には届かず、主人から下される次の命令を待つばかり。
もはや希望は断たれた光景が広がっていた時、ビルの側面を跳躍してくる存在が飛び出す。
「貴様は!!?」
窓ガラスも備わっていない廃墟ビルの窓際を足場にしながら飛び続けてきたライドウが銃を抜く。
モー・ショボーから風の加護を受けた疾風弾が次々とクドラクに命中し、彼は体勢を崩す。
屋上の地面にゴウトと共に着地したライドウは周囲に目を向け、状況判断を下した彼が叫ぶ。
「モー・ショボー!!魅了された魔法少女を回復して、倒れ込んでいる魔法少女も回復しろ!!」
「了解だよ!!」
突然現れた悪魔少女が那由他に目掛けて突っ込んでいく。
「きゃあ!?」
飛びながら体当たりを仕掛けて押し倒した彼女が馬乗りになり、悪そうな笑みを浮かべてくる。
「ちょっとキツイのいっとこうかな?大事な仲魔を傷つけられたんだし!」
右手を持ち上げたモー・ショボーは、あろことか気付けの往復ビンタを始めていく。
「キャン!?あふっ!!痛い!!やめて!!ぐえーーーっ!!?」
やろうと思えば状態異常を全て回復する『パトラ』が使えるのだろうが、あえてやらない。
それぐらい今のモー・ショボーは怒っているのだ。
その怒りはライドウも同じであり、吹き上がるMAGを纏った陰陽葛葉を抜刀する。
霞の構えを行うライドウの背後に浮かぶのは、刀のMAGが放つ光によって構成された人影。
ヨシツネの影も霞の構えを行い、ライドウと一心同体の戦いを始めようとしてくれるのだ。
「クルースニクの無念……自分が晴らす。命が惜しくない者から、かかって来るがいい!!」
「しゃらくせぇ!!クルースニクの召喚者もまとめて……この世から消してやる!!」
クドラクとクバンダが一斉に飛び掛かる中、仲魔の無念を背負うデビルサマナーが刃をかざす。
――――――――――――――――――――――――――――――――
クドラクとクバンダを相手に死闘を繰り広げるライドウの横では倒れたももこが地面を這いずる。
向かう先とはトドメを刺されて倒れ込むクルースニクの元。
「しっかり……してよ……お願いだから……目を覚まして……ッッ!!」
ももこが顔の横にまでたどり着いた時、もう彼は助からない事に気が付くだろう。
全身にひび割れが起きていくクルースニクの体はもう直砕けてMAGの光となるしかない。
「ライドウが来てくれた……後は彼に任せられる。役目を果たせなかった私は……死ぬだけだ」
「諦めちゃダメだ!闇の吸血鬼と戦うのが光のヴァンパイアハンターだろ!?役目を果たせよ!」
「力及ばず……敗れ去る時もある。私に力が足りなかっただけのこと……」
「そんなことない!全部アタシのせいなんだ……アタシが足手まといになったせいで……」
「ももこ……」
不甲斐ない自分の姿に悔し涙が零れ続ける顔を見せてくるももこを見た彼がこう告げてくる。
その表情は若い少女の未来を守れたことだけは誇りだとでも言いたげに微笑んでくれるのだ。
「君は若い……これからも多くを学べる。だから生きてくれ……私の分まで……」
「クルースニク……」
最後の力を振り絞りながら砕けていく左手を持ち上げ、ももこは彼の左手を両手で掴む。
「最後を看取ってくれる者が……悪魔の私を恐れない者でいてくれて……良かった……」
その一言を聞いた瞬間、彼がどれだけ悪者にされながら生きてきたのかを感じ取る。
かつて自分がやったような出来事が何度も起きてきたのだろう。
悪魔だというだけで、男だというだけで、悪者にされてきた彼の姿があったのかもしれない。
そこには自分の偏見感情しか見ず、
嘉嶋尚紀に向けて悪者だと決めつけてきた十咎ももこと変わらない者達がいたのだろう。
「アタシ…馬鹿だった…。悪魔だというだけで…男だというだけで…他人を悪者にするなんて…」
後悔の感情で震えていた彼女が決断するかのようにして顔を上げていく。
その表情は全てを受け入れる覚悟をもった戦士の顔つきを浮かべてくれている。
「クルースニク……アタシが引き継ぐよ」
「えっ……?」
「アタシが光のヴァンパイアハンターの道を引き継ぐ。だから……アタシの体を使ってよ」
「何を言い出すんだ……?ま…まさか君は……」
「ヴィクトルさんから聞いた事がある。悪魔合体以外でも…人間は悪魔と融合出来るって」
概念存在である悪魔はあらゆる物質に転移する事が出来る。
物質である武器だけでなく、物質である人間に転移する事だって出来ると教えてくれたようだ。
「この世に受肉している器を失うなら…別の受肉している器で生きられる。アタシを器にして」
「バカな……私と融合する気なのか?そんなことをすれば……君の肉体まで悪魔に……」
「悪魔になったって構わない…。みたまや令ちゃん、かなえさんやメルも超えてきた道さ」
真っ直ぐな目を向けてくる彼女の覚悟を感じ取ったクルースニクは頷いてくれる。
「分かった…。受け継いでくれ……私の……私の……白き……意思……を……」
目を閉じたクルースニクの体が砕け散り、MAGの光を撒き散らす。
だが宇宙の熱になることを拒むかのようにして十咎ももこの周囲に集まっていく。
気力を振り絞って体を起こした彼女が両手を合わせるようにして祈りを捧げる姿を見せる。
「神様……きっとこれが最後の祈りになる。罰当たりなアタシだけど……どうかお願い」
契約の天使によって魂を抜かれた彼女の体の中に次々とMAGが入り込んでいく。
ももこの体が光を放ち始め、周囲を明るく照らしてくれる。
「な……なんだ!?」
「あれは……一体何だってんだぁ!!」
驚愕の表情を浮かべるクドラクとクバンダ。
戦いを止めたライドウもまた視線を彼女に向けたままこう呟いてくれる。
「クルースニク……それがお前の意思なのだな?ならば……何も言うまい」
眩い程にまで輝く彼女が立ち上がり、その姿を変化させていく。
まるで純白のシスターを彷彿とさせる程の新たな姿に進化していくのだ。
長手袋や編み上げサイハイブーツを纏い、白を基調としたカソックローブを身に着けた姿。
頭には透き通った純白のシスターベールを纏い、穢れなき百合の花飾りが生み出される。
目を瞑っていた彼女が目を開ければ、クルースニクと同じく深紅の瞳が輝く。
その穢れなき純白の姿は、まるで光のヴァンパイアハンターと瓜二つのように見えるだろう。
「……テメェの体から二つの魔力を感じる。魔法少女の魔力と…クルースニクの魔力が……」
「……それも直ぐ、一つになるさ」
左手に持たれているのは魔法少女として生きた証である十咎ももこのソウルジェム。
視線を向ける彼女は微笑み、後悔のない顔を浮かべながらこう言ってくれる。
「悪魔のように悪者にされながら生きていくのも……悪くはないさ」
意を決した彼女がソウルジェムを口に咥えた後、嚙み砕く。
キュウベぇによって引っ張り出された自分の魂を悪魔の肉体が吸収していき、魂を内に戻す。
「……うん、悪くない。やっぱり自分の魂が外側にあるだなんて…おかしかったからね」
「新しいクルースニクになったっていうのかよ……?魔法少女のテメェなんかが!!?」
「試してみたら分かるんじゃない?」
不敵な笑みを浮かべたももこが右手に光を放出させていく。
ももこの新たな武器として生み出されたのは片刃の大剣を巨大な十字架に変えたような形。
柄を持ちながら前に掲げた十字架が光を放ち、悪魔達を動揺させていく。
「アタシの夢は真っ白なベールに包まれた。生まれた赤子が
ライドウに視線を送るももこの意思を受け取った彼が頷いてくれる。
「共に戦おう。光のヴァンパイアハンターよ」
「フフッ♪後悔させないよ、ライドウさん!」
武器を構えた2人が退魔の力を全開にしながら悪魔達に斬り込んでいく。
迎え撃つクドラクは新たなクルースニクとなったももこに飛び掛かり、激しい戦いを繰り広げる。
戦いながらもクドラクは感じているはずだ。
目の前で戦う者の中に宿った忌々しい程にまで穢れなき
悪魔合体施設で悪魔化ばかりは芸がないので真女神転生5主人公を意識した悪魔変身を描いてみました(あっちは神ですが)
モー・ショボーに馬乗りされながら罵られ隊総勢一名参上!