人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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243話 夜を狩る者

クバンダの拘束によって倒れ込んでいた者達であるが、みたまの魔法武器の力で拘束を解く。

 

変身した者達が異界の道を急ぐ中、空から降りてくる人影を見つけたようだ。

 

「あっ!あの子ってもしかして……ライドウさんの仲魔のモー・ショボーちゃんじゃないの?」

 

「おまけに……あの子が抱えている魔法少女は那由他ちゃんだと思うんだけど……」

 

「な……なんかあの子、顔中腫れ上がってない?」

 

空からやってきたモー・ショボーが彼女達の元に降りてくる。

 

地面に下ろされた那由他であるが、両頬が腫れ上がり苦しそうである。

 

「魅了魔法で操られてたから張り倒してやったんだけど……やり過ぎちゃった。めんごめんご♪」

 

「ま……前が見えないですの……」

 

グロッキー状態の那由他に駆け寄ってきたレナとかえでが彼女を抱き上げてくれる。

 

「ショボーちゃん、ももこを見かけなかった?彼女は大丈夫なの?」

 

心配そうな顔を向けてくるみたまに向けてモー・ショボーは顔を俯けながら教えてくれる。

 

「彼女はね…貴女と同じ道を進んだよ。私達の仲魔と融合して……悪魔となったんだ」

 

「な……なんですって!?ももこまで悪魔になったっていうの!?」

 

「彼女はクルースニクの魂を受け継いでくれた。だからこそ、彼の使命を果たしてくれる」

 

その言葉が意味するのはクルースニクの死であり、ももこが新たなクルースニクとなったこと。

 

動揺の表情を浮かべる者達であるが、みたまは覚悟を決めながらこう言ってくれる。

 

「レナちゃん、かえでちゃん。那由他ちゃんを何処かに避難させて回復してあげて」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?みたまさん独りで向かうつもりなの!?」

 

「危険過ぎるよぉ!!私達だってももこちゃんが心配でたまらない!ついて行かせて!!」

 

「彼女の言うことを聞いた方がいいよ。私だって危ないから避難してきたんだしね」

 

「ここからは悪魔の戦場よ。同じ悪魔となった者として…私がももこの援軍に向かうわ」

 

「心配しないで、ライドウもついてるから。それに今のももこさんはとっても強いんだよ」

 

みたまの強い意思に押し切られたのか、レナとかえでは渋々頷いてくれる。

 

走っていく彼女を見送った4人は夜魔の住処となった高層ビルを見上げていく。

 

そこに見えたのは荒れ狂う雷と風が吹き荒れる光景であったようだ。

 

高層ビルの屋上では激戦が繰り広げられている。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!」

 

クドラクが放つマハジオンガの雨を潜り抜けたももこが跳躍し、武器を振り上げる。

 

柄から上はY字を描くように曲がった十字架であり、金の百合をあしらった半円の刃も備わる。

 

斬るよりも叩きつけるタイプの武器であり、巨大な戦斧のようにも見えてくるだろう。

 

「くっ!!」

 

真剣白刃取りの如く両手で十字架を挟み取るクドラクであるが想像以上に重い一撃となる。

 

「ぬぉぉぉぉーーーーッッ!!」

 

地面が次々と砕けていき、下層に向けて一気に落とし込まれていく。

 

十字架を受け止めながらもクドラクの体が燃え上がるのだが、炎を無効化しながら耐え抜く。

 

彼女の新たな武器は殴りつけると相手が燃え上がる属性武器なのであろう。

 

高層ビルの中層辺りにまで落ちていった者達の上ではクバンダが風魔法を放ち続ける。

 

対するライドウは風の切れ目を縫うようにしながら華麗な跳躍移動を繰り返す。

 

八艘飛びを用いるライドウの動きはヨシツネの幼名であった牛若丸そのものに見えてくる。

 

ライドウの斬撃を避けるクバンダが俊足で移動するが、ライドウもまた横移動で追いつく。

 

「逃さん」

 

「韋駄天とも呼ばれたこの儂の動きに追いついてくるとは!?貴様は何者だぁ!!」

 

「14代目葛葉ライドウ」

 

「14代目の葛葉ライドウ!?馬鹿な!!21世紀の葛葉四天王は崩壊しているはずだ!!」

 

「これから死ぬ者が気にするな」

 

墨縄の刃と陰陽葛葉の刃がぶつかり合い、激しい剣戟を繰り返す。

 

一方、中層にまで落とし込まれたクドラクは両足で踏ん張ったまま十字架を持ち上げていく。

 

「オレを相手にここまで押し込むか!どうやらテメェはマジでクルースニクになったようだ!!」

 

「言っただろ!試してみたら分かるって!」

 

「小娘が!!奴の力を手に入れたところで、付け焼き刃ではどうにもならねぇのを教えてやる!」

 

クドラクは霧化を用いて脱出し、毒の霧を用いてももこの体にまとわりつく。

 

このまま毒で殺そうとするのだがクルースニクの耐性を手に入れた彼女には通じない。

 

「いいのかい?アタシの周囲にまとわりついてたら、そのまま天に召されちまうよ!」

 

前に向けて十字架を掲げれば武器が光を放ち、マハンマオンを周囲に放つ。

 

「くっ!!」

 

拘束を解いて実体化し直した相手に目掛けて大きくフルスイングされた十字架が迫りくる。

 

だが蝙蝠化を用いて避けたクドラクは距離をとるためにビルを飛び出す。

 

上空で実体化しながら後ろに振り向き、片手を掲げてジオンガを放とうとした彼が驚く。

 

「なんだとぉ!?」

 

大きく跳躍してきた彼女が左拳を振り上げ、気合を込めたパンチを顔面に浴びせる。

 

「ぐふっ!!!」

 

殴りつけられた相手は向こう側のビルの窓ガラスを突き破り、壁に激突してしまう。

 

地面に倒れて片膝をつくクドラクの前に迫るのは闇の吸血鬼を滅ぼす者。

 

「免罪は期待するなよ。シスターだって怒るんだ」

 

振り上げた十字架を再び打ち込もうとするが、一気に飛び込んだクドラクがタックルを狙う。

 

「くっ!?」

 

威力はでかいが鈍重で大柄な武器を振り回す相手ならば接近戦に持ち込めばいい。

 

そう判断したクドラクにテイクダウンを取られたももこは馬乗り状態となってしまう。

 

「シャァァァーーーーッッ!!!」

 

凶悪な牙を広げたクドラクがももこの首に牙を突き立てんと噛み付き攻撃を狙ってくる。

 

ももこはクドラクの顔を抑え込みながら噛み付き行為を防ぎ、反撃の左肘打ちを放つ。

 

側頭部に肘打ちが決まったクドラクが横に転げ落ち、両者が立ち上がりながら睨み合う。

 

「そんな御大層な武器を振り回してるから組み付かれるんだよ。やはり接近戦に弱いようだ」

 

「確かに、こんなどでかい武器の懐に入られたら対処は難しいよね」

 

武器を消し去ったももこが腰を落とし、足を開きながら両手を構えていく。

 

クルースニクと融合することで力と経験によるパワーファイト以外の戦い方も身に着けたようだ。

 

「来なよ、吸血鬼。か弱いシスター相手に臆病風に吹かれるなら、離れて戦ってもいいよ」

 

不敵な笑みを浮かべてくるももこの挑発に激高したクドラクが拳を固めてくる。

 

「図に乗るなよ……クソアマ」

 

クドラクがゆっくりと横に向けて歩いていく。

 

構えを解いたももこもゆっくりとした動きでついていく。

 

2人が飛び込んだオフィス跡地を歩く中、先に仕掛けたのはクドラクだ。

 

蹴り込んだオフィス机がももこに向かってスライドしていき、彼女は走りながら飛び込む。

 

机の上に片手をつきながら跳躍、きりもみ着地すると同時に左蹴りを放つ。 

 

横に避けたクドラクに向けて内回し蹴りを放つが回し蹴りで彼女の蹴り足が弾かれる。

 

クドラクが反撃のハイキックを放つがカウンターとして片手をつく程の低空後ろ回し蹴りを放つ。

 

「ゴフッ!!」

 

側頭部を蹴り込まれてきりもみしながら倒れ込むクドラクが立ち上がり、叫びながら走り込む。

 

「オォォォーーッッ!!」

 

両手を用いてひっかき攻撃を狙う敵の腕を両手で払い続け、地を這う程の前掃腿を側転で避ける。

 

着地した彼女に目掛けてミドルキックを狙うが両腕で抱え込む形で受け止められたようだ。

 

「まだまだぁ!!」

 

彼女の腕に支えられながら片足蹴りを放ち、蹴り込む反動を利用して大きく後方宙返りを行う。

 

大きく離れたクドラクが右手を前に向け、超能力魔法で周囲のオフィス用品を宙に浮かせていく。

 

「喰らいやがれ!!」

 

弾丸のように射出されたオフィス用品を見た彼女は後ろにある机に両手をつけ大きく側転。

 

着地と同時に机を蹴り上げ、机を壁にするようにして入り込む。

 

次々とぶつかってくるオフィス用品を防いだ彼女が机を飛び越え、互いに走り込む。

 

振り上げた相手のひっかき攻撃を潜り抜け、デスカウンターの如き一撃が体に叩きこまれる。

 

「ごはぁ!!!」

 

みぞおち打ちを喰らい吐瀉物を撒き散らすが、怯まず攻め込んでくる。

 

互いに乱打を打ち合い、振り上げたひっかき攻撃の腕を掴みながら回しこみ、関節を決める。

 

「ぐっ!!」

 

関節を決められたまま体に蹴りを浴び、怯んだ相手に向けてももこはアッパーカットを放つ。

 

顎を打ち上げられた相手に目掛けて一気に跳躍。

 

「まだだよ!!」

 

きりもみ回転を加えた飛び蹴りが決まった事でクドラクがビルの端にまで蹴り飛ばされるのだ。

 

「バカな……こんなことがあってたまるか。オレが……夜を支配するオレが小娘如きに……」

 

動揺を浮かべながら立ち上がっていく吸血鬼が迫ってくる吸血鬼狩人に視線を向けていく。

 

「クルースニクが味わった無念はこんなもんじゃない。ここをお前の墓標にしてやる」

 

死ぬまで殴り続けても構わないとばかりに両指を鳴らしながらももこは迫ってくる。

 

立ち上がったクドラクの後ろは砕けた窓辺であり、迫りくる死に彼は気が付いていない。

 

「このクドラク様が……獲物に過ぎない魔法少女だった小娘如きに!!負けてたまるかぁ!!」

 

<<魔法少女を侮るからこそ、報いを受けるのよ>>

 

響き渡ったのは死神の声であり、反応したクドラクが後ろに視線を向けようとするが無駄だ。

 

「がっ……?」

 

回転して飛来した死神の刃がクドラクの首を切断し、首と共に倒れ込んだ体が外に落ちていく。

 

「うわっと!?」

 

回転を続けながら迫ってきた大鎌を避けたももこがオフィスの入口方面に視線を向ける。

 

大鎌を右手で受け取ったのは常闇の淑女として生きる悪魔少女、八雲みたまであったようだ。

 

「おいおい……せっかくの見せ場だったのに、いいところをみたまに盗られちゃったよ」

 

「フフッ♪派手に暴れてくれてたから私に気が付かなかったみたい。……それが新しい姿なのね」

 

「うん……アタシは悪魔になったんだ。アタシのために死んでくれたクルースニクのためにね」

 

「ももこも悪魔に生かされた者なのね。なら、私と同じ運命の下に生まれた女の子よ♪」

 

「そうだな…みたまと同じ人生を生きる事になる。レナとかえでに…なんて言い訳しよう?」

 

「あの2人なら受け入れてくれるわよ。悪魔になった私を受け入れてくれた女の子ですもの」

 

微笑みを浮かべていた時、膨大な魔力が噴き上がる気配を感じた2人が窓に視線を向ける。

 

窓の外には大量の蝙蝠が上空に向けて飛び立っていき、クドラクはまだ生きている事に気が付く。

 

「上に登ろう!!奴はまだ死んでいない!!」

 

「しつこい悪魔ね……吸血鬼退治はニンニク料理を食べさせるしかないのかしら?」

 

「みたまのニンニク料理なら確実に倒せそうだけど…今はそんな話をしてる場合じゃないって!」

 

無駄口を叩きながら階段を登り、屋上に飛び出した彼女達が異界の夜空に視線を向ける。

 

「あ……あれは……」

 

「蝙蝠の大群が……巨大な顔になっていく……」

 

異界の夜空に浮かび上がる恐ろしい存在。

 

それは憤怒の形相を浮かべるクドラクの頭部を形作る蝙蝠の大群であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

激戦を繰り返すライドウとクバンダであるが、クバンダは勝負をかけるために補助魔法を行使。

 

戦いながらもスクカジャを自身にかけ続け、ライドウの高速斬撃を避けれるまでに回避力が増す。

 

「儂の俊足は完成した!これより貴様に巻き起こるのは、一方的な袋叩きだぁ!!」

 

「それがどうした?」

 

「余裕ぶってんじゃねぇ!!もうテメェの斬撃は儂の体には当たってねーぞぉ!!」

 

「自分は独りで戦う者ではない」

 

ライドウはモー・ショボー以外の仲魔も既に召喚している。

 

仲魔に向けてのMAG供給が断たれた瞬間、ビルを登りながらも仲魔を救えなかった事を悟る。

 

二体の悪魔召喚が出来るライドウはクルースニクに代わる次の悪魔を召喚していたのだ。

 

「ドゥフフフフ、そろそろボクの出番っすね、サマナー君」

 

物陰からひょっこり顔を出すのはモコイである。

 

小さな彼が片手を伸ばして放つのはデカジャであり、クバンダのスクカジャ効果を解除してくる。

 

「伏兵を潜ませていたのか!?」

 

スピードが元に戻ってしまい隙が生まれた勝機をライドウは逃さない。

 

燃え上がるように輝くMAGを放つ陰陽葛葉を構えたライドウの背後にヨシツネの影が浮かぶ。

 

「受けてみろ……これがヨシツネから受け継いだ、京八流の奥義だぁ!!」

 

八艘飛びを用いた高速移動から放ち続けるのは、目にも止まらぬ八連撃。

 

「グァァァァァーーーーッッ!!バカなァァァァーーーーッッ!!?」

 

体を次々と切り捨てられていくクバンダが絶命していき、MAGの光を撒き散らす最後を迎える。

 

顔を横に向ければ近寄ってきたモコイが顔を上げてきたようだ。

 

「いい連携だったな」

 

「イケてるね、ボク。クルースニクは残念だったね」

 

「……そうだな」

 

モコイを召喚管に仕舞い、勝利の余韻に浸るライドウに向けて黒猫のゴウトは叫んでくる。

 

「ライドウ!まだ終わってはおらぬぞ!!」

 

ゴウトの叫びによって異界の空に広がっていく巨影に気が付いた彼が上空を見上げる。

 

「あれは……」

 

異界の空に構築されたのは巨大なクドラクの頭部に見せかけた蝙蝠の集合体。

 

憤怒に歪んだ存在が地上の虫けらに向けて叫んでくる。

 

<<クソガキ共がぁぁぁーーッッ!!調子こいてんじゃねーぞぉぉぉぉーーーッッ!!>>

 

異界の街に大きな振動が生み出されていく。

 

ももこ達が地上に目を向ければ、次々とビルが持ち上がっていく。

 

空に巻き上げられるようにして浮遊していくビルの光景はまるで大魔女ワルプルギスの夜の力だ。

 

超能力魔法の最上位であるマハサイダインが行使される光景を見たライドウは召喚管を抜く。

 

「召喚、粉砕せよ」

 

片手で印を結びながら管を振り抜き、膨大なMAGが吹き荒れる。

 

建設途中のビルの横に並び立つ程の巨大な悪魔が召喚されるのだ。

 

「我を呼んだか、ライドウ!!」

 

全高50mをした巨神こそ、巨人だいだらぼっち伝承の原型であるオオミツヌ。

 

見上げる程の巨大な援軍を召喚してくれた事でももこ達も奮い立ち、覚悟を決めてくれる。

 

「アタシ達もライドウさんに負けてられないな!」

 

「勿論よ!マカーブルとなった私の力を見せてあげるわ!」

 

地上で佇む者達を潰そうと宙に浮かぶビルの数々が次々と発射されていく。

 

迎え撃つオオミツヌの腕部が回転していき極大の雷を帯電させながら右腕を振り上げる。

 

「我、溌剌反正(はつらつはんせい)を求むる者なり!!」

 

巨大な拳が振るわれると迫りくるビルの一つが一気に砕け散る。

 

右腕だけでなく左腕からも拳を放ち、落ちてくるビルの数々を文字通り粉砕していくのだ。

 

「謝らなくていいよ。だってもう、遅いからね!!」

 

黄金の十字架を再び生み出した彼女が柄を握り込む。

 

十字架武器の柄の下側がさらに伸び、抱え込むようにしながら柄の下側を上空に向ける。

 

魔力が大きく注ぎ込まれた武器が青白く光り、柄の下側部分がエネルギー兵器のように光り輝く。

 

「浄化の光を……くらえーーーっ!!!」

 

青白い光の本流が放たれる光景こそ、クルースニクの必殺技ともいえた天扇弓の一撃。

 

それを彼女なりにアレンジした必殺技こそ『オープン・エクソシズムバスター』なのだ。

 

放射された光が無数の光弾のようになっていき迫りくるビルに直撃。

 

跡形もない瓦礫となってしまうが空からはまだまだビルが降ってくる。

 

「私だって……戦えるようになったんだから!!」

 

右手を振りかぶると宙に浮かぶ大鎌もまた振りかぶられる。

 

闇の魔力を大鎌にまとわせた一撃とは魔人ペイルライダーが得意とした戦技。

 

魔人と同じく死を司る悪魔少女が右手を振り抜き、同時に大鎌もまた刃を振りぬく。

 

大鎌の刃から衝撃波が広域放射される一撃とはベノンザッパーである。

 

上空から迫るビルを衝撃波で圧し潰すようにしながら破壊してみせたようだ。

 

<<まだだァァァァーーーーッッ!!!>>

 

自分達が根城にしていた建設途中ビルが超能力の力で岩盤ごと持ち上がっていく。

 

屋上から跳躍してオオミツヌの肩に着地したライドウがももこに向けて吠える。

 

「十咎ももこ!!決めてこい!!」

 

ライドウが投げ放った武器を彼女は右手で掴み取る。

 

託されたのは死んでも形が残っていてくれたクルースニクの形見である銀の剣。

 

「うん!!分かった!!」

 

みたまに顔を向けるももこの意思を理解したのか、彼女は大鎌を操る。

 

大鎌の柄の上に飛び乗った彼女を勢いよく空中に向けて投げ放つ。

 

<<勝負だぁぁぁーーーーッッ!!クソアマァァァァーーーーッッ!!!>>

 

大きく回転させた巨大ビルを地上に向けて投げ放つ。

 

一気に飛翔していくももこに目掛けてビルが迫りくる中、意を決した彼女が突っ込んでいく。

 

「ウォォォォーーーーッッ!!!」

 

ビルの中に入り込んだ彼女が洗濯機の中のように回転するビルの内部を駆けていく。

 

行き止まりの壁が迫った時には銀の剣を用いて壁を断ち切りながら飛び出し、彼女は跳躍。

 

迫りくるビルを足場として利用した彼女が空に目掛けて突っ込み、蝙蝠の集合体の中に入り込む。

 

無数の蝙蝠共がももこに喰らいつこうとする中、彼女はクルースニクの剣技を放つ。

 

「どいたどいたどいたぁーーーーッッ!!!」

 

周囲を高速で切り裂く剣技とは刹那五月雨斬りであり、無数の蝙蝠達を切り捨てながら突き進む。

 

「見えた!!」

 

蝙蝠の集合体の中心部で浮かんでいたのは斬り落とされたクドラクの生首。

 

「裁きだ!!これで終わり!!」

 

引き絞った一撃がクドラクの頭部を貫く。

 

「ガッ……ッッ!!!!」

 

銀の刃がクドラクの頭部を貫いた瞬間、蝙蝠の集合体が一気に燃え広がる。

 

異界の夜空が炎のように燃え上がる中、ももこは地上に向けて落ちていく。

 

そんな彼女に着地の足場を作ってくれたのは右手を差し出したオオミツヌ。

 

彼の掌に着地したももこは右肩の上に立つライドウに向けて親指を持ち上げる。

 

ライドウは頷き、彼女を新たなヴァンパイアハンターとして認めるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ももこをみたまが立つビルの屋上に下ろせるようオオミツヌが手を向けていく。

 

飛びのいた彼女は後ろを振り向きながらお礼を言い、近寄ってくるみたまに顔を向ける。

 

「やったわね!ももこ!!」

 

「勝利のブイサイン!を浮かべたいところなんだけど……」

 

右肩に担いだ剣を持ち上げてみれば、まだクドラクの頭部が残っている。

 

体を構築していた蝙蝠は全て燃え上がりMAGの光となったようだが怨念めいて形を残す。

 

「ハ……ハハハ……これで勝ったと……思うなよ……小娘悪魔共……」

 

「往生際が悪い悪魔だな!さっさと消えてしまえ!!」

 

「オレが消えようとも……オレの遺伝子は残り続ける。新たなクドラクとなる者がいるのさ……」

 

「……十七夜のことね?」

 

「あの女は最高の吸血鬼として成長してくれた……。あの女なら……テメェを倒せる……」

 

刃に刺さったクドラクの顔の亀裂が限界にまで達したことで形が崩れていく。

 

「それにオレは……多くの血をばら撒いた……。他の吸血鬼共も……テメェを襲いに来る……」

 

「吸血鬼は知恵ある悪魔だ…。もしかしたら……アタシ以外も襲うかも……」

 

「恐怖しろ……絶望しろ……。テメェは……()()()()()()()()に……入り込ん……だ……ぜ……」

 

クドラクの頭部が砕け散り、MAGの光となる。

 

それを合図とするようにして、彼が言った言葉を体現する存在達が屋上に現れていくのだ。

 

<<ヒャーーハハハハハ!!ざまぁねぇぜ!!クドラクの野郎は!!>>

 

空から現れたり蝙蝠や霧の状態から具現化する存在達がももこ達を取り囲む。

 

現れたのは様子見を決め込んでいたヴァンパイア達のようだ。

 

「礼でも言っとくか?俺達を支配しようとした偉そうな吸血鬼を始末してくれてよぉ?」

 

「まぁ、俺達なりの礼儀は尽くした方がいいんじゃねーの?相手はヴァンパイアハンターだ」

 

「いずれ俺達の脅威となるなら、生かしておくわけにもいかねーしな」

 

「クドラクが言った言葉通り、お前のこれからの人生は……明けない夜となるのさ!!」

 

嘲笑うかのようにして高笑いを始めていく夜の魔物共に向けて十咎ももこは誓いの言葉を放つ。

 

銀の剣を吸血鬼達に向ける者こそ、次代のクルースニクなのだ。

 

「そうか。なら他の連中にも言っとけ!アタシは呪われし存在となったお前達を許さない!」

 

魔力で銀の鞘を生み出した彼女が縦に向けて構え、剣を合わせる形として十字架を生み出す。

 

「今よりアタシの人生は……()()()()()として生きていく!!」

 

ヴァンパイアハンターから挑戦状を叩きつけられた吸血鬼達が無数の蝙蝠となり去っていく。

 

それと同時に異界も解けていき、元の夜空の景色に戻ってくれたようだ。

 

見送ることしか今は出来ないももこの肩を掴むみたまは微笑んでくれる。

 

「大丈夫、私もついてる。明けない常闇の人生を進むなら…貴女の横を私も歩くわ、ももこ」

 

「頼りにしてるよ、みたま。これからも…よろしくね」

 

武器を仕舞ったももこが笑顔を浮かべていた時、屋上にまで上ってきたライドウ達が現れる。

 

「辛い選択をしたようだな、十咎ももこ。そんな時こそ仲魔の存在がうぬを支えてくれるだろう」

 

「ええと…ゴウトちゃんだっけ?喋ってる内容が分かるなら、アタシも悪魔だということだね」

 

「魔法少女が悪魔に転生を果たすか…。噂に聞いていた通り、魔法少女は条理を覆す存在だな」

 

「その…クルースニクのこと……本当にごめんね。大切な仲魔だったんでしょ?」

 

「言うな。奴が決めたことであり、ライドウも認めている。うぬこそが新たなクルースニクだ」

 

踵を返したライドウとゴウトが去っていき、モー・ショボーも手を振った後ついていく。

 

そんな時、顔を俯けていたみたまがライドウに声をかけてきたようだ。

 

「ライドウさん……。まだ……尚紀さんの命を狙い続けるの?」

 

それを問われたライドウの足が止まってしまう。

 

暫く無言を続けていたようだが、振り返らずに彼は去っていく。

 

彼女の質問の答えは未だに出せていない者であり、まだヤタガラスの命令に縛られている。

 

それでもライドウの心には深い迷いが生まれており、それを晴らせぬ己に憤るようだ。

 

何よりも自分に向けて怒りを燻ぶらせるのは、仲魔を守れない己の不甲斐なさであった。

 

「これで自分は……三体の仲魔を失ったことになる。力が足りない……力が必要なんだ」

 

オボログルマを召喚して乗り込んだライドウは家路に向かうことなく業魔殿へと向かっていく。

 

彼は手持ちのマッカを全て使い果たしてでも新たな力を求めるのだ。

 

悪魔合体施設の主であるヴィクトルは残してくれている。

 

大正時代から悪魔召喚師として生きてきた己の全てが記された証である悪魔全書を求めにいった。

 

……………。

 

那由他を家にまで送り届けた一行は帰路についていく。

 

少し思うところがあるのか、ももこは海岸通りの道を歩きたいと言い出してくる。

 

合流したレナとかえでも一緒についてくるのだが、その表情は不安が滲んでいたようだ。

 

「ねぇ……ももこ。悪魔になったこれからの人生は……どう生きていくの?」

 

「悪魔になった事を怒ってるわけじゃないの。ただ…これからも一緒にいてくれるのかなって…」

 

不安そうなレナとかえでの言葉を背中に浴びたももこは立ち止まり、視線を海に向けていく。

 

ポニーテールの髪が夜風で揺られる中、自分の思いを仲間達に伝えてくれようとしている。

 

「アタシのこれからは…ヴァンパイアハンターとして生きていく。だけど魔法少女の矜持もある」

 

「それじゃあ、これからもレナ達と一緒に戦ってくれるの…?」

 

「レナ達が望んでくれるなら一緒に戦いたい。だけど……だけどね……アタシは……」

 

恐怖心が芽生えてきたのかももこの顔が俯いていき、体も震えてしまう。

 

言葉に出すのが辛い彼女の代わりに親友のみたまが伝えてくれるのだ。

 

「ももこはね…ヴァンパイアハンターとして生きていく。だからこそ…弊害も背負うことになる」

 

クルースニクは夜の魔物共と戦うことで人間らしい生活を奪われながら生きた者。

 

吸血鬼に襲われて血を吸われた大切な人々は吸血鬼となり、殺す事でしか救えなかった。

 

吸血鬼を狩る者が背負わなければならない悲しみの業は何度でも繰り返されてしまう。

 

それが彼の背負った運命であり、クルースニクを継ぐ者もまた背負わなければならなかった。

 

「アタシは怖いんだ…。寝込みを襲われるのが怖い…家族や友達を狙われるのが怖い…」

 

「相手は人間のように知恵ある悪党よ。目的のためならあらゆる手段を行使してくる……」

 

「もし…アタシのせいでレナやかえで、それに他の魔法少女やその家族が報復されたら……」

 

震えるももこが想像してしまうのは、自分の前に並べられた家族や友達の死体の数々。

 

吸血鬼を狩る者に与える報復として死んだ者達が起き上がり、彼女を襲いに来る。

 

その光景はまるでお前のせいで私達は報復されて殺されたのだと怨嗟を撒き散らす亡者だろう。

 

「レナやかえで達に迷惑はかけられない…家族にも迷惑をかけたくない……だからアタシは……」

 

「バカなこと言わないで!!」

 

顔を真っ赤にしながら怒ってくれるレナが切実な気持ちを語ってくれる。

 

「迷惑をかけてくれてもいい!!レナ達はチームメイトでしょ!支え合うのが仲間じゃない!!」

 

「レナちゃんの言う通りだよ!訪れるかもしれない未来を怖がって…私達を遠ざけないで!!」

 

「尚紀さんから言われた言葉を思い出しなさいよ!あの時の彼はなんてももこに言ったのよ!」

 

レナに言われた言葉によって尚紀から伝えられた言葉の数々を思い出す。

 

日本人は人に迷惑をかけるなと教わるが、これは人に迷惑をかける事が前提となる。

 

迷惑をかけちゃいけないが迷惑をかけるのが人間として当たり前だと伝えてくれた過去があった。

 

「ももこが周りに迷惑をかけたってレナは許容してあげる!そして、足りない部分を支えるわ!」

 

「ももこちゃんがどんなに強くても…独りぼっちじゃ戦えないよ!だからこそ仲間が必要なの!」

 

「許して…くれるの……?アタシのせいでみんなに迷惑がかかっても……?」

 

「この子達だけじゃないわ、ももこの家族だって許してくれると思う。可愛い一人娘ですものね」

 

「みたま…レナ…かえで……グスッ……アタシ……エッグ……アタシィィィィ……ッッ!!」

 

涙が溢れ出したももこが駆け寄り、レナとかえでが彼女を受け止めてくれる。

 

悪魔と魔法少女が抱きしめ合い、支え合う光景を見守るみたまは心からこの光景を喜ぶのだ。

 

(この光景こそ私が望んだ理想よ。私達は支え合える…そう信じて生きていきましょう、ももこ)

 

先代のクルースニクに足りなかったものを次代のクルースニクはもっている。

 

それこそが魔法少女達の絆であり、その固さは現実の理不尽でさえ打ち砕くことは出来ない。

 

ももこの中に溶けたクルースニクの魂はそれを理解し、微笑みながらその意識を魔界に返す。

 

これからも十咎ももこは魔法少女達と共に戦い続けるだろう。

 

光のヴァンパイアハンターであり、魔法少女としても生きた矜持を貫く人生が始まっていった。

 




シスターももこというよりは、ベルモンド一族のももこにしてしまった(悪魔城ドラキュラ脳)
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