人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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244話 大国村

ここは島根県安来市の山奥にある秘境の村。

 

この地域は大国主神話やスサノオ神話と縁深い場所でありイザナギとイザナミ神話とも関連する。

 

何故ならこの一帯は日本神話における根の国と呼ばれる異界があると言われる地域だからだ。

 

根の国とは古事記において黄泉の国として記されており、黄泉平坂とも呼ばれている。

 

死者が辿り着くあの世に向かった神こそイザナギ神であり、スサノオとオオクニヌシも続くのだ。

 

出雲は日本神話にとって重要な地域であり、その地域を隠れ蓑にしている者こそ国津神であった。

 

……………。

 

「ヌエくーん、ポータブルバッテリーの充電終わったー?」

 

国津神達の隠れ里にある民家の中を覗き込むのは広江ちはるである。

 

中ではガタイの大きい太っちょ悪魔が充電ケーブルを噛みながらちはるに顔を向けてきたようだ。

 

【ヌエ】

 

平家物語で語られる平安時代末期の京を騒がせた怪物。

 

頭は猿で尾は蛇、身体は狸で手足は虎と合成獣のような見た目をしている悪魔のようだ。

 

トラツグミの声で鳴きながら黒雲に身を潜め、夜な夜な京の夜空を駆け巡ったという。

 

「マダダ!オレサマ雷ビリビリ出ス!ダガ疲レル!腹減ッテキタゾ!」

 

太った狸のように見えるが頭部は猿のように白い剛毛が生え、手足は虎の毛並みで顔は黒い。

 

その顔は真ん丸な目をしており、ギザギザの歯をした悪魔の顔は愛嬌さえ感じるだろう。

 

「ごめんね、後で私のソウルジェムの穢れを吸ってもいいよ」

 

「オウ!アトデ吸ワセテモラウゾ!コッチノバッテリーハ終ワッテルカラ持ッテイケ」

 

大型のポータブルバッテリーを両手に抱えたちはるが民家から出てきて辺りを見回す。

 

見えた景色は山々に囲まれたのどかな村の光景であり、霧峰村よりも大きい規模を誇る。

 

畑の方に目を向ければ二月の季節であるためか土作りをしている男達の姿も見えたようだ。

 

「この村を見ていると霧峰村を思い出す…。まるで平和だった頃の景色に見えちゃうよ」

 

暗い表情を浮かべる彼女は充電したバッテリーを持ち帰るために村を歩いていく。

 

村にあるお寺に目を向ければ寺子屋としても解放されており子供達が勉強している。

 

その中には南津涼子も混じっており、ここで村の子供達と勉強をしているようだ。

 

さらに歩いていくと自分が住まいとさせてもらえている民家に戻るのだが彼女は立ち止まる。

 

横に生えてる木の枝で寝転んでいる人物を見かけたため声をかけてしまう。

 

「ねぇ、ナガスネヒコさん。お兄さんと一緒にオオクニヌシ様の警護をしなくていいの?」

 

片目が隠れる程の青い長髪をした青年は柿をかじっていたようだが眠そうな顔を下に向ける。

 

「いいんだよ、兄者がいれば問題ねーし。それにオレは頭脳労働は専門外なんだよ」

 

「なら今は何をしてるの?」

 

「見れば分かるだろ?警備任務。不審な輩が村に潜んでないか見張ってんだよ」

 

「柿をかじりながら?」

 

さぼっているのを見透かすようにジト目を向けられるのが辛いのか、柿を口に入れて下に降りる。

 

地面に着地した彼は口の中の柿をマルカジリし終えた後、めんどくさそうな顔を向けてくる。

 

「兄者にはチクるなよ?兄者の説教は長くなるからなぁ……」

 

「じゃあ、お仕事しないとだね」

 

国津神を相手に物怖じしない態度を向けてくる彼女が苦手なのか、渋々村を見物しにいく。

 

「あ、ちょっと待って!私も見張りについて行きたい!」

 

「なんでついてくるんだよ!」

 

「ちゃんと見張りの仕事をしてるか見張らないとね」

 

「見張りを見張る仕事とか聞いた事ねーぞ…おい」

 

家に荷物を置いてきた彼女がナガスネヒコの後ろをついていく。

 

散歩感覚で村を歩く人間姿の彼の後ろをついていきながらも村の景色に視線を向ける。

 

見れば村を囲む山の方には風力発電用の風車群が見えるようだ。

 

「村のエネルギーは再生可能電力が主流なんだよね?川の方にも発電施設があるんでしょ?」

 

「ああ、水力発電設備がある。村で採れた材料を使って村人の日用品を作る工場を動かすためさ」

 

「霧峰村とは大違いだね…。この村は文明を築く努力の痕跡を至る所で見つけるよ」

 

「全ては国作りを象徴されるオオクニヌシ様の手腕だな。この村はあの御方達が作ったんだよ」

 

「たしかオオクニヌシ様とオオクニヌシ様を使役していたサマナーさんが創設者なんだよね?」

 

「そうだ。オオクニヌシ様を使役していた人物は大正時代を生きた者であり、軍人だったんだ」

 

オオクニヌシのサマナーだった人物は大正時代の陸軍サマナー部隊に所属していた人物だ。

 

ライドウと同じ時代を生き、帝都で巻き起こった様々な脅威とも戦った存在なのだろう。

 

その中にはコドクノマレビト事件もあり、彼はオオクニヌシを召喚して陰陽師結社とも戦った。

 

そんな彼は太平洋戦争にも参加するのだが生き残り、戦後の日本を見つめた者。

 

占領軍である在日米軍の傀儡になることしか出来ない日本の姿を見た彼は絶望したのである。

 

「オオクニヌシ様の召喚者は戦後の日本に絶望し、自分達で独立国家を作ろうとされたんだ」

 

「その第一歩がこの隔絶された村だったんだね…。小さいけど、とても文明的な村だよ」

 

「彼の意思に賛同するサマナー達も大勢現れ、戦後の米軍支配に気が付いた人々も流れてきた」

 

「だからこの村の人達は悪魔の姿を見ても驚かないんだね。理想的な共生関係だよぉ」

 

「村で暮らしてきてどうだった?食べ物も飲み物もユダヤ企業の遺伝子組み換え食品じゃねーよ」

 

「うん、凄く美味しいよ。私達は知らない間に……アメリカから化学物質攻撃をされてたんだね」

 

「人間は食い物だろうが情報だろうが何も調べねぇ。鵜吞みするように体に入れちまうもんさ」

 

「だけど、それに気が付いた人達もいる。そんな人達が流れてきて、この村を育てたんだね…」

 

「オレ達の暮らす地域の主権はオレ達の手で守る。日本政府だろうが米軍だろうが相手になるさ」

 

ナガスネヒコの姿を見かけた男達が気をつけの姿勢となり、敬礼してくる。

 

平時は農民であるが有事の際には村の兵士となり、村の主権を脅かす外敵と戦う者達なのだろう。

 

そんな彼らもまた擬態姿の悪魔であり、地域主権を守るために戦う武士であったのだ。

 

【モムノフ】

 

古代日本の主神であるアラハバキ配下の者であり、アラハバキ信仰がある東北の侍である。

 

武勇で知られた武士や人物をもののふと呼ぶようになった由来ともなったようだ。

 

「お勤めごくろうさん。アラハバキの野郎は何処行ったんだ?」

 

「え、ええとですね……我らの隊長であるアラハバキ様はその……また地底探検に……」

 

「えっ?地底探検?」

 

不思議顔を向けてくるちはるにどう説明したらいいのかと困り顔を浮かべるナガスネヒコ。

 

どうやらちはるはまだアラハバキと出会ったことがなかったようである。

 

「まぁいい、穴倉探索に飽きたら帰ってくるだろうさ。国境沿いの様子はどうだ?」

 

「問題ありません。ヤタガラスのカラス共の姿も見えませんし、売国政府のスパイもいません」

 

「警戒は続けろよ。村の地域主権を守るってことは、米軍と自衛隊と戦争するってことだからな」

 

「はっ!そのための訓練は日夜欠かさず続けていきます!安全保障なくして地域の発展はなし!」

 

「そういうこった。励めよ」

 

村を一通り回っていき、村の入口となる大きな門の前にも立ち寄ってみる。

 

堅牢な門は守衛のモムノフ達に守られているようだが、門が開きだす。

 

外からやってきたのは大きな荷物を背中に背負った青葉ちかと三浦旭であったようだ。

 

「おかえり!ちかちゃん!旭ちゃん!」

 

「ただいまであります」

 

「ふぅ……獣道を使いながら重い荷物を抱えて山を登るのは魔法少女でも辛いですね」

 

「しょうがねーだろ、この村は隠された地域だ。道路もないから物流は歩荷と鳥悪魔頼りだ」

 

「その辺は霧峰村と同じでありますね。外からの買い物を任された時を思い出すであります」

 

ちはるが2人の背中に背負っている大荷物に目を向ける。

 

背負っていたのは静香の母の秘密基地に置いてあった銃の数々と銃弾の山。

 

つまり彼女達は崩壊した霧峰村にまで戻っていたというわけだ。

 

「霧峰村があった関東まで大タラスクさんに乗って移動して、また帰ってくる往復も大変だね…」

 

「これで二度であります。一度の往復では静香殿の母殿が残した銃等を運びきれないであります」

 

「二回目になれば慣れてもきますが…滅んだ霧峰村を見るのは……慣れそうにありませんね」

 

うっかり口にしてしまったため顔を俯けていくちはるに気づいた2人が慰めてくれる。

 

「本当にごめんね…ちかちゃん。旭ちゃんの付き添いは…村を滅ぼした私が行くべきなのに」

 

「いいんです、私の方が山を歩くのに慣れてますし。気にしてないから元気を出して」

 

「う……うん……」

 

「銃があっても銃弾は底をつく。足りなくなったら鳥悪魔共に言え。米軍基地に向かわせてやる」

 

「盗むのでありますか?」

 

「当たり前だ。独立地域で外貨も稼げないんじゃ物を買えないし、それ以前に売ってくれねーよ」

 

「この村は霧峰村と同じく地産地消。外界との貿易をやれる程、開けた地域ではないですしね…」

 

「それが独立地域ってもんさ。まぁ外貨を手に入れる方法はあるんだが…お前らは気にするな」

 

ちかと旭を見送ったちはる達は再び村の巡回という名の散歩を楽しむ。

 

村人達の衣服や下着の素材となる綿畑を超えていくと村の病院が見えてきたようだ。

 

病院の敷地内に入ってみると医薬品の素材となる薬草を育てている土岐すなおが声をかけてくる。

 

「あら?ナガスネヒコさんと一緒に村の巡回をしているの?」

 

「うん、そうだよ。すなおちゃんはここでの生活には慣れてきた?」

 

「ええ、とても住み心地がいい集落ね。娯楽は少ないけど、みんな生きる力に満ちていると思う」

 

「テレビやネットやパチンコなんぞ人間をバカにする道具だ。村では禁止されたものだからな」

 

「それでも人々は自分達で生きていくんだって気持ちに溢れてるし、とても活気があると思うわ」

 

「日本の政治の裏側に気が付いた技術者達も流れてきて、この村は自立出来るようになったのさ」

 

「この病院の院長先生も同じね。医師会と霞が関と国会の癒着に絶望したから流れてきたのよ」

 

「娯楽は少なくても、人間が生きていくための一次産業は充実させてきた。外国輸入に頼らずな」

 

「この集落を見ていると独立国家や地域主権の大切さを実感する。日の本にはこれが必要なのよ」

 

「それに気が付けるとは聡明なお嬢ちゃんだ。ここの住み込みなら、将来は立派な医者だな」

 

べた褒めされた事で照れてしまったのか、すなおの顔が真っ赤になってしまう。

 

この村に来て家族を失った悲しみが癒えてきた仲間を見守るちはるも自然と笑顔になってくれる。

 

すなおと別れたナガスネヒコ達であるが、彼は何かを思い出したのかちはるに振り向く。

 

「そういや、妖精連中がまだ帰ってこないな。何か連絡は届いてないか?」

 

「えっとね、オベロンさん達は全国に散った妖精達をこの村に集結させようとしているの」

 

「そいつは助かる。村の防衛力が増えることはいつだって歓迎だからなぁ」

 

「オベロンさんもこの村を気に入ったみたい。集落から離れた森の中に妖精郷を再建するんだよ」

 

「その辺はオレの兄者を通してオオクニヌシ様と相談すればいい。兄者が窓口になってくれるさ」

 

「それとティターニアさんはアラハバキさんの捜索も頼まれたみたい。知り合いみたいだよ」

 

「うちのアラハバキはボルテクス界を超えてきた記憶をもつ悪魔だ。その筋の知り合いかもなぁ」

 

村を一周してきたナガスネヒコはちはるの家の前で立ち止まり、彼女は別れを告げる。

 

「ありがとう、村を色々見て回れて楽しかったよ。静香ちゃんにもよろしく言っておいてね」

 

「ああ、伝えておいてやるよ。あの娘は村長の屋敷である兄者とオレの元に住み込んでるしな」

 

ナガスネヒコと別れたちはるはもう一度集落に目を向けてみる。

 

かつての霧峰村の光景が記憶に焼き付いている彼女はこの村も同じ事にならないか心配のようだ。

 

「大国村だけは絶対に守らないと。ヤタガラスや日本政府から守ってくれる場所はここだけだよ」

 

この村の名は村の守り神として崇拝されているオオクニヌシの名からきている。

 

だいこく様と慕われる彼は村長の屋敷の裏手側から続く山道の階段の上にある奥の院で暮らす神。

 

玄関口となる村長の屋敷はこの村の立法・行政・司法という政治を司る場所。

 

政治という権力の上にある存在こそが神の権威であり、その形が現れた村こそ大国村であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

村長の屋敷である武家屋敷の大広間には私服姿の静香と村長のアビヒコが向かい合っている。

 

人間に擬態した彼から聞かされる話とは戦後のヤタガラスや日本の真実についてのようだ。

 

「それが原因だったのね。戦後のヤタガラスはもうユダヤ帝国である米帝の言いなりだなんて…」

 

「国家主義団体であったヤタガラスは変わり果てたのだ。今はもう見る影もない売国結社だな」

 

「それだけじゃなく、日の本の保守を気取る論客や政治家でさえ金で雇われた誘導員だなんて…」

 

「日本は米帝によって戦後からずっと植民地にされてきた。右翼も左翼政党も見せかけの擬態だ」

 

「この国に主権なんてない…自分で何かを決める権利もなく、国民は搾取されるだけだなんて…」

 

「日本と米国は対等と刷り込まれ、米軍のトモダチ作戦のようなコマーシャルに騙されてきた」

 

「日米合同委員会と在日米軍を糾弾しない政党なんて偽物よ…与野党グルの売国政党なのよ!」

 

怒りの感情を押し殺すことが出来なくなった静香の目には強い憎しみが宿っている。

 

霧峰村や家族を殺された憎しみだけでなく、日の本をこれでもかと蹂躙した存在に憤っていく。

 

「中国や北朝鮮と同じく、()()()()()()()()。高級官僚と米軍が全てを決められる植民地なのだ」

 

「国会なんて官僚が作った法律を審議もせず通すだけでいいから…アホ議員でも務まったのね…」

 

「日米合同委員会が突き出す年次改革要望書に沿って日本は支配されるしかない。どうする?」

 

日の本を守る矜持を掲げてきた時女一族を試すようにした言葉をアビヒコは投げかけてくる。

 

静香の顔は憤怒に歪み、義憤の感情によって体が震えていく彼女であったが決断を下す。

 

「これ程までの国難を放置しては…もう日の本を守る一族だなんて呼べない。私達は戦うわ!」

 

「では、提案がある。時女一族と我ら国津神……同盟を結ぶことは出来ないか?」

 

「勿論よ!国を憂う私達は同じ憂国の烈士!共に轡を並べて戦い合える同士になれるわ!!」

 

即決してくれた彼女の心意気を嬉しく思うアビヒコの表情にも笑顔が浮かんでいく。

 

「それを聞いて安心した。我らの村のサマナー達も高齢でな…もう戦う力もなくなっていたのだ」

 

「時女の分家筋の魔法少女達をここに集結させるわ!彼女達がサマナーの代わりをしてくれる!」

 

「それは心強い。彼女達には我々が召喚技術も提供出来る。老いてもサマナー達には経験がある」

 

立ち上がった2人が固い握手を交わし合う。

 

しかし握り込まれた手の力が強まり、恐怖を感じた静香はアビヒコの目を見つめていく。

 

彼の目の奥には修羅の炎が宿っており、目的のためなら手段を選ばない冷酷さが宿っているのだ。

 

「我々は憂国の烈士。その手を売国奴の血で染め上げてでも……国を取り戻す覚悟はあるか?」

 

「そ……それは……」

 

「国賊、人殺し、テロリストと政府や民衆共から罵られても…殺戮者となれる覚悟はあるのか?」

 

「わ……私は……」

 

「我々に立ち向かってくるのは何も知らない罪なき公務員。それでも障害になるなら斬れるか?」

 

「う……うぅ……」

 

「その者達にも家族はいるだろう。親をお前に殺された妻は泣き叫び、子供と共に絶望するのだ」

 

握手の力が緩んでしまった静香の手を放すと、青い表情を浮かべた彼女は後ずさっていく。

 

アビヒコは正義の魔法少女として生きてきた者を試そうとしている。

 

彼女達が戦ってきたのはゴキブリの如く人々に害を成すだけの魔獣であり、絶望を撒き散らす悪。

 

悪をやっつけて人々を守ったという満足感にのみ浸ってきた者達だからこそ問いたい。

 

今度の戦いは魔獣ではなく守ってきた人間であり、彼らは家族のために働くだけの罪なき者達。

 

その者達は職務を果たすために静香達に襲い掛かり、彼女はその者達を殺すだろう。

 

人々を守ってきた正義の味方が人々を殺し、絶望を撒き散らすミイラに成り果てる。

 

今までとは真逆の業を背負い、倒してきた悪の如き()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「……皆と話し合うといい。あまり時間は残されていないが、皆の賛成が必要な程の戦争なのだ」

 

震えながらも一礼した静香が走り去っていく。

 

廊下に飛び出した静香を見送るナガスネヒコが大広間に入り、兄神に向けてこう語りだす。

 

「…まだ煮え切らないようだな、魔法少女連中は?」

 

「無理もない、今までが今までだったのだ。気持ち良く騙されながら生きてきたのだろう」

 

「オレ達は戦えば戦う程に失っていくんだ。人間の道徳や博愛といった人道精神をな」

 

()()()()()()()()()()()()()()()。売国政治家とて金を得れば得る程、人間の徳を失うのだ」

 

「それは唯一神だって同じさ。この世は唯一神でさえ逆らえないコトワリによって動いている」

 

「戦ってでも得ようとする者は呪われる。新しい世界を築く唯一神が人々から呪われたように」

 

アビヒコの前にまで歩いてきたナガスネヒコが視線を奥に向け、兄もそれに続いていく。

 

大広間の奥に立て掛けられるようにして飾られている額入り写真とは村の創設者の写真のようだ。

 

「…思い出すな、弟よ。超力兵団や陰陽師結社に加わり、日本の革命を果たそうとした時期を」

 

「あの時代から欧米支配を日本は受け続けてきた。だからこそ、日本を解放しようとしたんだ」

 

「だが、結果は葛葉ライドウに敗れ去って終わった。我々は悪として糾弾されながら倒された」

 

「オレ達がやった結果だけを切り取り、悪にしてきやがった。その結果…日本は支配され続けた」

 

「平和を望む事によって失うものもある。事なかれ主義こそが日本の欧米支配を盤石にしたのだ」

 

「オレ達も戦えば失ってきたし、ライドウだって同じ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「我慢を選べば選ぶ程、国を裏側から支配するユダヤ金融マフィアの勝ちとなる。それが真実だ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人類だろうが神や悪魔だろうが逆らえねぇな」

 

「だからこそ、我々は決断しなければならない」

 

――その強さがあるのかどうか……試させてもらおうか、時女一族。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

答えが出せないまま月日だけは過ぎていく。

 

その間も時女の魔法少女達は大国村に根を下ろし、それぞれの生活を営んでいる。

 

広江ちはるは手先が器用なこともあり、縫製工場の仕事を手伝ってくれているようだ。

 

それ以外にも村にある温泉の掃除や様々な雑用といった雑務を手伝い、自分の罪と向かい合う。

 

土岐すなおは村の病院で働き、村の老人達の看護を手伝うその姿は看護師のように見えてくる。

 

南津涼子は村の寺に住み込み勉強しながらも子供達に仏教の教えを伝えてくれているようだ。

 

青葉ちかは村の林業を手伝い、三浦旭は狩猟を手伝い村の食肉確保を行う生活を送っていく。

 

そんな中、静香は重過ぎる決断の答えを出せないまま修行の毎日を送っている。

 

彼女は山に籠り、老人に擬態しているミシャグジさまから過酷な特訓を受けているようだ。

 

今日も彼女は強い怒りの感情に支配されながら修行を行っていたのであった。

 

「ダメじゃダメじゃ、心が乱れておる。だから付け入る隙が生まれてそうなるんじゃよ」

 

地面に倒れ込んでいる静香に向けてダメ出しを送るのは大きな岩の上に座るミシャグジさま。

 

忍者のような服を纏うその老人の両腕は存在していないが、今の静香では彼の相手にもならない。

 

そんな彼女の修行相手を務めてくれているのは村の警備隊を統括する総大将を務める軍神の男。

 

作業着を纏う林業従事者のように見える屈強な男もまた悪魔が擬態している姿であった。

 

「小娘、怒りと迷いを溜め込む事に耐えられず、修行で憂さ晴らしでは話にならんぞ」

 

「ぐっ…うぅ……まだよ……まだ私は立ち上がれるわ……オオヤマツミ様……」

 

川の横で倒れ込んでいる傷だらけの静香が語った名こそ、偉大な山の神霊を意味する。

 

彼もまた国津神であり、オオクニヌシを支える戦神であったようだ。

 

【オオヤマツミ】

 

イザナギ、イザナミの子にして全国の山神の始祖と言える存在である山神の総元締。

 

古代の日本では人の魂は異界たる山から訪れ、死ぬとまた山に還っていくという思想がある。

 

大いなる山々は祖霊の眠る地として神聖化・人格化された国津神こそがオオヤマツミなのだ。

 

彼は海神や軍神としても知られており、大日本帝国海軍や海上自衛隊なども彼を崇拝している。

 

農業、漁業、工業、商工業の神でもありヤマタノオロチ退治の酒を生んだ酒造りの神でもあった。

 

「怒りを鎮めるのだ。怒りに飲まれれば自分だけでなく仲間さえも滅ぼす。百害しかもたらさん」

 

「分かってる……分かってるわよ!だけど……だけど私は……」

 

不甲斐ない自分への怒り、日の本への怒り、欧米ユダヤ帝国への怒り、国際金融資本家への怒り。

 

あらゆる怒りの感情が彼女の心を業火で燃やし続け、冷静な戦いも判断も出来なくなっている。

 

「今の汝はまるで()()()()()()だ。己の全てを燃やし、周りの者達まで燃やそうとしている」

 

「私が……ヒノカグツチ……?」

 

「ヒノカグツチとはオオヤマツミ殿にとっては父神であり、生まれた時に死に別れた神なのだ」

 

ヒノカグツチとはイザナギとイザナミが生んだ子であり、母神であるイザナミを殺した神。

 

生まれた時から全身が業火の塊であったためイザナミは陰部を焼き尽くされた事で絶命する。

 

怒り狂った夫のイザナギは十束剣(とつかのつるぎ)を用いてヒノカグツチの首を跳ね落として我が子を殺す。

 

殺されたヒノカグツチの体から十六体の神々が生み出され、その中にオオヤマツミがいたのだ。

 

「もう一度言う、怒りを鎮めよ。怒りの炎は自分だけでなく周りの者達まで不幸にするだけだ」

 

「これが怒らずにいられるものですか!!」

 

激高したようにして立ち上がった彼女の心の中に義憤の感情が燃え上がり、周囲をまくし立てる。

 

その姿は義憤の感情を爆発させ、魔法少女の虐殺者となった頃の嘉嶋尚紀の姿と重なってしまう。

 

「日の本の政治家は()()()()()()()()()()!地方の公務員まで()()()()()!なんて国なのよ!!」

 

「静香……」

 

「おまけに企業は外資に支配され!公共事業まで外資に乗っ取られる!最悪の国にされたのよ!」

 

「汝の愛国心は嬉しく思う。だがな、愛国心は業火となる。ナチスの如き大虐殺さえ望むだろう」

 

「構わない!!どうせ私の手はもう汚れている……霧峰村を襲ったバケツ兵共を殺した時にね!」

 

「お前さんは良くても、他の魔法少女はいいのか?」

 

ミシャグジさまから指摘されたことで静香は黙り込んでしまう。

 

自分と同じく怒りの感情を爆発させてくれる者もいれば、人殺しになりたくない者もいるだろう。

 

大事な親友を自分と同じ殺戮者にしてもいいのかと問われたら、どうしても答えを迷う。

 

仲間達を心から愛しているからこそ、答えを出しきれないようだ。

 

「確かに…全員を巻き込むことは出来ないわ。時女一族を去りたいと言うなら……私は止めない」

 

踵を返した彼女が走り去っていく。

 

見送るミシャグジさまとオオヤマツミであるが、彼女の心に暗い業火が燃え上がるのを憂慮する。

 

あのままでは殺戮を果たすための力を渇望するだけの者に成り果て、自分を不幸にしてしまう。

 

心の同士であろうと若者である少女達の未来を心配する神々は静香を見守る事しか出来なかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その頃、野暮用としてアラハバキ捜索を任されたティターニアは空を飛びながら現地に向かう。

 

やってきたのは岡山県の日咩坂金乳穴(ひめさかかなちあな)であり、洞窟に入っていく。

 

「アラハバキーーッッ!!いい加減地底探検はやめて大国村に帰りなさーーいッッ!!」

 

最奥にある地底湖を目指していると、素っ頓狂な叫び声が響いてくる。

 

<<ムォォォォーーッッ!!穴!!穴ーッッ!!スリリングな穴生活に帰りたいーーッッ!!>>

 

洞窟の奥に広がっていた地底湖を見れば渦を巻きながら荒れ狂っている。

 

どうやら地底湖の底に穴を掘りながら自分好みの洞窟を掘り進めているバカ神がいるのだろう。

 

<このおバカ!!ボルテクス時代からアンタは穴の中に飛び込むことしか頭に浮かばないの!!>

 

<ん?その念話声はティターニアか?>

 

彼女に気が付いたのか穴掘り作業をやめて地底湖の中から飛び出す。

 

姿は縄文時代の遮光器土偶であり、三メートルを超える体を持ち上げながら浮いてきたようだ。

 

【アラハバキ】

 

古き日本の東北の神であり、縄文時代から崇拝された存在。

 

日本東部の蝦夷(えみし)と呼ばれた人々に信仰され、朝廷への反抗の象徴とされたようだ。

 

現在では各地の神社を旅して回る神であり、客人(まろうど)神として西部地方でも慕われている。

 

客人神と呼ばれるせいか放浪癖がある個体であり、冒険を愛する者。

 

このアラハバキは人修羅と共にボルテクス界を旅した者でもあったようだ。

 

「おお!久しぶりだなティターニア!息災であったか?」

 

「まったく、アンタの話を大国村で聞かされてピンときたわよ。私達の仲魔だった奴だって」

 

「思い出すなー…我と人修羅がアマラ深界の冒険をした日々を。あの輝かしい頃に帰りたい!」

 

「アンタは人修羅の坊やと一緒にアマラ深界の底に向かう穴の中に飛び込んでただけでしょ?」

 

「うむっ!癖になるボーナスステージだった!お陰で我と人修羅の財布の中身はウハウハだ!」

 

「その後はぼったくりBARで2人揃ってマッカを巻き上げられてたくせに、粋がらないの」

 

「うぐっ!まぁ我と人修羅は同じ友。穴を愛する穴兄弟!!だからこそ再び穴を掘るのだ!!」

 

「変な勘違いをされる言い方はやめなさいって!!それと、何でまた穴を掘る気になったの?」

 

「決まっておろう?この世界の神浜で暮らす人修羅達ともう一度穴の世界に旅立つためだ」

 

しれっと爆弾発言を聞いてしまったティターニアが豆鉄砲を喰らった鳩のような顔となる。

 

「人修羅の坊やまでこの世界に流れ着いてたの!?なんで教えてくれなかったのよ!?」

 

「何を言っている?我とお主は今日再会したばかりではないか?」

 

「あぁ…ライドウの坊やだけでなく、人修羅の坊やまでいてくれる!希望が見えてきたわ!」

 

「全国を放浪しながら神浜に立ち寄った時、奴を見つけてな。他の仲魔も三体ほどいたな」

 

「それで、何で顔を見せに行かずにこんな場所で穴掘ってるのよ?」

 

「穴兄弟をビックリさせてやろうと思ってな。見ろ、こんな素敵な穴があったぞ!と驚かせたい」

 

「だから!!そのスケベな言い方やめなさいって!!人修羅の坊やに殴られるわよ!」

 

「むぅ、それは困る。物理無効耐性の我だが人修羅は()()スキル持ちだからな…だから()()()だ」

 

マイペースなアホ仲魔を相手するのに疲れていた時、不穏な気配だが慣れ親しんだ者達が現れる。

 

地底湖に入れる洞穴に視線を向ければ現れたのは怨霊悪魔達だったようだ。

 

<<ウォォォーーーイ!!ジョウオウ様ァァァァーーーーッッ!!>>

 

「誰かと思えばウィルオウィスプ達じゃない?あなた達も霧峰村を脱出出来たようね?」

 

<<ウォウ!うぉれ達モドウニカ脱出スルコトガデキタ!ソシテ、旭ヲ探シテルーーッ!!>>

 

「旭ちゃんなら私達と一緒に行動しているわ。案内してあげるけど…随分と団体になったわね?」

 

呆れた表情を浮かべるティターニアが周りに目を向ければ、沢山の怨霊悪魔の鬼火ばかり。

 

どうやら村から脱出した後、全国を放浪しながら仲魔の怨霊を集めていたのだろう。

 

<<旭ッテノハドイツダァァァ!?ソンナニプリティーナノカァァァーーーッッ!?>>

 

赤い鬼火を纏った怨霊達は興奮している。

 

どうやらウィルオウィスプからよからぬ話を吹き込まれたのやもしれなかった。

 

【モウリョウ】

 

日本におけるモウリョウは諸外国で言われるゴーストの存在に近い。

 

その存在は人間以外の霊である自然的な動植物の魂であることが多いようであった。

 

「こいつらに何を吹き込んだのよ…アンタ達?」

 

<<うぉれ達ハ旭チャンノオッカケファンダァァァーッッ!!うぉれ達ノアイドルヲ守ル!!>>

 

「ハァ…あの子はどうして怨霊悪魔から好かれるのかしら?やっぱりそういう臭いをしてるの?」

 

「ムッハハハハ!賑やかになってきたではないか!大国村の戦力にしてやろうぞ!」

 

「こんな怨霊悪魔を引き連れて帰っても大丈夫かしら?」

 

「村で悪さしなければ何も言われまい。なにせ、大国村は人間と悪魔で守ってきた村なのだ」

 

<<大国村ガァァァ!!うぉれ達ノ新シイ家トナルゥゥゥーーーッッ!!>>

 

<<マッテロヨ旭チャン!うぉれ達ノプリティーアイドルゥゥゥーーーーッッ!!>>

 

こうして大国村は悪魔達が守護する村となり、外敵となった日本政府と戦う者となってくれる。

 

彼らがいてくれるお陰で米国植民地に過ぎない日本からの独立を勝ち取ってきたのだろう。

 

だが大国村は違法に独立をして日本の土地を奪い取っている過激派テロリスト集団に過ぎない。

 

日本政府と米軍から大国村を守り抜くにはまだまだ多くの戦力を必要としていたのであった。

 




時女静香のキャラドラマ回収を終えたら一通りのキャラドラマ回収を終えたと思うので、円環のコトワリバトルに移ろうと思います。
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