人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「ハーーハッハッハ!!見たか!!これが憤怒の炎だぁ!!」
燃え上がる封印の地で狂った高笑いを続けるヒノカグツチの下では敗北者達が倒れ込む。
オオヤマツミが大楯となったせいで彼の体は焼き尽くされ、もはや死に体と化している。
静香の周囲を囲むようにして盾となってくれたミシャグジさまも同じ様子。
そして蛇神の内側で倒れ込んだ魔法少女の死体は原型を残すだけで精一杯の様子だった。
皆の命の灯火が消えようとした時、周囲に膨大な光の渦が噴き上がっていく。
「こ……この光は!?」
驚愕したヒノカグツチの前に広がっていく光とは不動明王が行使した最上級の回復魔法の光。
死んだ者達を完全回復させて蘇生させるサマリカームの光なのだ。
「貴様もいたのか……我の首を跳ね落とした刀剣の神!!」
オオヤマツミ達の頭上で宙に浮かぶ光こそ、円環のコトワリ神から静香を救った女神。
白く美しい長髪の側頭部から生えるのは枝葉のような角。
顔を覆うのは丸鏡の仮面であり、無限を表す8を司る八角形の星が飾られている。
天女の羽衣を纏い、右手には光輝く光剣を握り締める女神こそヒノカグツチを殺した存在だった。
【アメノオハバリ】
イザナギの剣である
彼女がヒノカグツチを斬り殺した返り血からも神々が生まれた事から国生みの神でもあるようだ。
タケミカズチはアメノオハバリの刃から滴ったヒノカグツチの血から生まれている。
神殺しであると同時に神産みの神聖も持ち合わせた複雑な神なのであった。
「まったく……回復役も用意しないで死地に赴くだなんて、男神は不器用な連中ばかりね」
蘇生させてもらえた上で完全回復させてもらえた者達が立ち上がり、彼女も地上に降り立つ。
「お前さんまで来てくれたのか?すまんのぉ……お陰様で助かったわい」
「貴女様を連れていかなかったのは…再びイザナギの子を殺す苦しみを与えたくなかったのです」
「私を思いやるその気持ちは嬉しいわ。だけど私は刀剣の神…刀剣は振るうためにあるものよ」
静香にも顔を向けると彼女は不思議顔を浮かべながら何かを考え込むように腕を組む。
「貴女……大国村のどこかで見かけたことがあるような気がするわ?」
「人間に擬態している時は図書館で働いてるの。貴女は修行ばかりで来てくれなかったわね」
「あ…っ!!そういえばいたわね!ちゃるが図書館に行ってる姿を遠目で見た時に見かけたわ!」
「あの子達は知恵を求めた者達。知恵を選び、感情を律し、貴女とは違う道を求めた者達よ」
「そ……それは……」
「だけどね……私は静香と同じ気持ちよ。新たなる国や世界を築くには……破壊が必要なのよ」
「創造と破壊は……表裏一体?」
「そうよ。私は神を殺す者であると同時に神を産む者。創造と破壊を司る私だからこそ分かるの」
静香に微笑みながらも、彼女は左手を横に向けていく。
ヒノカグツチが放つファイアブレスを防ぐ『紅蓮の結界』を張り、炎を吸収してくれたのだ。
「貴様ァァァーーーーッッ!!再び我の前に現れるとはいい度胸だぁ!!必ず滅ぼしてやる!!」
「カグツチ……私は貴方を再び殺めなければならない。あの時と同じく、一瞬で殺してあげる」
「何故だ!!天津神である貴様がなぜ国津神共と行動を共にしている!?イザナギの意思か!?」
「その通り。私の所有者であるイザナギ神は望んでおられるわ……
「日の本を滅ぼし…新たなる国を建国する事が狙いか!?ヤタガラスと天皇家を滅ぼす気か!?」
「日本という国名は滅びる。そして新たな国が生まれるわ。その主となるのがオオクニヌシよ」
イザナギ神が望むのは権威という権力の奴隷と成り果てた天津神族とその血族を終わらせること。
権力を得た者は権力を手放すことが出来ずに腐敗し、国と民を壊死させる。
だからこそ滅ぼし、新たなる国を創造せよと遣わされたのがアメノオハバリなのだ。
「我らは大儀の刃となる。全てはこの土地を開拓した国津神と国民のための未来を築くために」
光り輝くアメノオハバリの体が弾けて粒子となり、別の依り代に宿っていく。
「こ……これは……?」
刀剣の神が依り代として選んだ武器こそ静香の母の形見である刀。
アメノオハバリの力を得た練気刀が光り輝き、その形を変化させていく。
大和古剣である両刃の直刀へと変化していき、
<<夜明け前が一番暗い。だからこそ明けの明星が必要よ。新たなる光を求めなさい、静香>>
「分かったわ……私がこの国を覆う闇を斬り払ってみせる。古き日輪を断ち切って見せるわ!!」
<<土地とは土着民のもの、土を耕した
「勿論よ!!私は新たなる国を耕していく者となる……だからこそ、私は国生みの焔となる!!」
自分の首を跳ね落とした忌まわしい刀剣を見たヒノカグツチが発狂しながら暴れ狂う。
「イザナギィィィィーーッッ!!再び我を殺して国生みに利用するかァァァーーーーッッ!!」
怒り狂ったヒノカグツチがついに楔の一つを抜き落とし、解放された右腕を振り上げていく。
「殺されてたまるかァァァーーーーッッ!!!」
燃え上がる業火を纏う怒りの鉄拳が迫る中、静香はアメノオハバリの力を発動させる。
炎が消えた拳ならば力と力のぶつかり合いであり、その勝負をオオヤマツミが引き受けてくれる。
「ウォォォォーーーーッッ!!!」
巨大な拳を受け止めて掴み取り、ヒノカグツチを抑え込む彼の意思を託された者達が動き出す。
跳躍した静香は炎が消えた右腕を道として駆け上り、ミシャグジさまは雷撃を放つ。
静香を吹き飛ばさんとする地獄の業火をマハジオンガで相殺しつつ静香を援護してくれる。
「来るなァァァーーーーッッ!!その刀剣を我に近づけるなァァァーーーーッッ!!!」
ヒノカグツチの脳裏に浮かぶのは涙を流しながら近寄ってくるイザナギの姿。
その手には剣が握られており、生まれたばかりの自分を呪いながら殺そうとしてくる。
恐怖に怯えた感情が蘇り、ヒノカグツチは発狂しながら喚き散らす哀れな姿を晒すのだ。
「ヒノカグツチ様…一瞬で終わらせる。怖がらなくていい…貴方様の血潮も私達に必要だから!」
右肩に飛び乗った静香が放つ一撃こそ、かつてのイザナギ神の一撃を再現するものとなるだろう。
狙うは真一文字に切り裂かれた傷跡であり、アメノオハバリの力で炎を無効化させながら跳躍。
「ガッ……ハッ……ッッ!!!!」
巨大な頭部が跳ね落ちる瞬間を国津神は見届けてくれる。
トドメを刺された巨体が後ろに向けて倒れていき、マグマの中で膨大なMAGを撒き散らす。
跳ね落とされた生首は地上に落ち、飛び降りてきた静香が着地する。
ヒノカグツチの首に顔を向けた静香は気を付け姿勢となり、深々と頭を下げながら手を合わせる。
「本当にごめんなさい……ヒノカグツチ様。それでも、私はこの罪を背負いながら戦っていくわ」
ヒノカグツチ。
その名はかつてのボルテクス界を構成した神霊であるカグツチでもある。
カグツチとは自らの血をもって神々を生み出した神話である。
ボルテクス界の者達に生命の活力を与え、創世の要を成す存在に対してその名が当てはめられた。
従うにしろ逆らうにしろ、自分を育む存在について優しさを向けるのは無駄であろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「やはり我は……屠られる定めか……。抗い続けたが……運命には……逆らえぬ……」
近づいてくる者に視線を向けるヒノカグツチの頭部の炎は消え去り、ひび割れていく。
直に死ぬのだろうが最後に自分を屠った者に質問をしてきたのである。
「女よ……何ゆえに戦う?我を屠って得た力を用いて……何と戦う……?」
静香に視線を向ける国津神達は彼女の言葉をヒノカグツチと共に清聴してくれる。
彼女が語る言葉こそ自分の信念であり、魔法少女として生きてきた誇りの言葉なのだ。
「私は神子柴に騙されて魔法少女にされた者。護国守護も一族とヤタガラスに押し付けられたわ」
「そんなものなど……捨てれば良かったものを……何ゆえ……貫き通せたのだ……?」
「私はね…酷い世間知らずなの。多くの人達から支えられないと……生きていけなかった者なの」
目を瞑り左手を胸に当てれば、高鳴る心臓の鼓動が聞こえてくる。
この鼓動と共に触れてきたのは時女静香と共に生きてくれた魔法少女や生まれ故郷の人々。
そして初めて村の外に出て触れ合えた人々もまた彼女の鼓動と共に生きてくれた者達だ。
多くの人々と出会う事で多くの経験を得て、多くの救いもあれば破滅さえも与えられた。
「人々と触れ合うのは嬉しくもあり、恐ろしくもある。それでも私はね……人々と触れ合いたい」
「うつけめ……他人は貴様を傷つけるだけだ……国賊となるならば……猶更傷つけられるだけだ」
「人間もまた善悪がある。創造と破壊がある。だけど私はね……傷つけられても守りたいのよ」
「多大な責め苦を浴びせられ……何も得られなくても……それでも守るのか?」
「守るといっても全てを守るだなんて己惚れるつもりはない。私のこの手はこんなにも小さいの」
「その小さき手で掬い取れる者達だけは…救いたいというのか?我を殺し…多くを殺してでも?」
「それがきっと生きる力なんだと思う…。自然と共に生きてきた私だからこそ強く感じられるわ」
「生きる事は……奪うこと……喰らうこと……それによって……人々は……生きていける……」
「だからヒノカグツチ様の死も決して無駄にはしない。炎もまた国を育てるのに必要なものよ」
静香が思い出すのは作物を栽培した後に農地を焼き払って地力を回復させる農法の光景。
炎で焼き払われた農地は地力を回復させ、また新たな作物を育てられる土壌となってくれる。
炎とは命を燃やすと同時に命を生む。
その在り方こそカグツチ神話なのだ。
静香の心の景色が見えたことでヒノカグツチのひび割れる口元にも微笑みが浮かんでいく。
「フッ……小娘に悟らされるか。火の神である我の役目とは……何なのかを……」
頭部の亀裂も限界に近づき、その命も残すところあと僅か。
だからこそヒノカグツチは決断を下してくれるのだ。
「女よ……我が
「ヒノカグツチ様……?」
「我が炎を纏い……国を焼き……人々を焼き……新たなる国と生命を……生み出すがいい……」
砕け散った頭部からMAGの光が溢れ出し、火の神の光が静香の中へと注ぎ込まれていく。
「ぐっ!!うぅ……あ、熱いッッ!!体が……燃えるよう……ッッ!!!」
静香の中に宿っていく国生みの炎の力に耐え切れず、静香は片膝をついてしまう。
「背負うのじゃ、静香!!」
「我の父神殿の思いとその覚悟を継承せよ、静香!!」
<<貴女の道は暗き道となるわ…だからこそ、その道を照らす炎を受け継ぎなさい、静香!!>>
国津神達の応援の言葉を受け取った静香が気力を振り絞り、火の神の力を受け継いでくれる。
<<アァァァァーーーーッッ!!!>>
静香の体が燃え上がっていくが、それは静香の体から発する炎であり新たな衣服を形成していく。
巫女服のような上着からは燃える炎を表すような腰布が伸び、袴のような紅いスカートを纏う。
お腹の帯に飾られるのは
ツインテールの髪は桃割れポニーテールとなり、彼女の瞳は炎のように赤く染まった目。
異質なのは彼女が身に纏う真一文字に切り分けられた飾りだろう。
帯にぶら下げたものと桃割れポニーテールの飾りにしているものとは
「……恐れないわ。たとえ悪魔のように悪者にされても……私はこの国の闇を斬り裂いてみせる」
左手に持たれているものとは時女静香が魔法少女として生きた証であるソウルジェム。
宿ったヒノカグツチに促されるようにして彼女はソウルジェムを歯に咥え、噛み砕く。
火の神であり悪魔となった静香の体が己の魂を吸収していき、完全なる悪魔転生を果たすのだ。
<<私も共に行きましょう、静香。イザナギの刃である私の力を使いこなしてみせなさい>>
「ありがとう、アメノオハバリ様。イザナギ様の力もまた使いこなしてみせるわ」
「やれやれ、何という底知れぬ力を手にしたんじゃ、この娘っ子は?」
「全くだ。これでは稽古をつけてやったらこちらが返り討ちにされてしまいそうだな」
「そ、そんなに謙遜しないの!これからも頼りにしているわ、オオヤマツミ様、ミシャグジさま」
こうして新たな悪魔が誕生した事で時女静香の戦いの日々が切って落とされるのだろう。
黄泉平坂を後にしていく一行であるが、そんな彼女達を見送る存在が出現する。
立ち止まった一行ではあるが、決して後ろを振り向こうとはしない。
酷過ぎる死臭を撒き散らす女神の姿を見た者はイザナギ神と同じ末路を遂げるからである。
「いいか……皆の衆。絶対に後ろに振り向いてはならんぞ」
「ヒノカグツチとの戦いを峡谷の上から見ておられたようだな……」
「この恐ろしい気配を放つ存在が……日の本の高祖神様なの……?」
腐り果てた体は衣服すら纏っておらず、腹が破けて垂れ下がる腐敗した臓物。
眼球は腐り落ち、空洞となってしまった恐ろしい眼を向けたまま立ち止まっている。
<……時女静香、汝もまた探さなければいけません>
念話だけを送ってくれる女神の御言葉を聞いた静香は恐る恐る念話を返してくれる。
<……私が探す?一体何を探すというの……?>
<オオクニヌシや火の神である貴女の力だけでは足りないのです。
<新たな天空神……?アマテラスに代わる程の天空神を探さないとならないの……?>
<国を耕す者達だけでは国は成り立ちません。日の光もまた土と生命を育てるのに必要なのです>
<それ程までの天空神を探し出せだなんて……何処にいるのやら……>
<貴女はもうその者と出会っていますよ、時女静香。近い将来、その者と貴女の道は繋がり合う>
<私が出会ったことがある人が……私の求める天空神なの?>
<貴女が求めるべきなのは
見送ってくれる女神の視界から静香達は消えていく。
彼女を見送った神こそイザナミ神であり、彼女を警護するヨモツイクサ兵達が整然と並んでいる。
もし静香が後ろを振り返ったならば兵士達は容赦なく槍の雨を降らせただろう。
(
黄泉平坂に降りた時、イザナギ神は妻の変わり果てた姿を見て恐怖しながら逃げ出した。
激怒したイザナミ神は追手を差し向け、アメノオハバリを振るいながら逃げる夫に向けて叫んだ。
――愛しい夫よ、あなたがこんなことをするのなら、あなたの国の人を一日千人殺しましょう。
千引岩で黄泉平坂の入口を封印したイザナギ神は岩の向こうから呪ってくる妻に向けて叫ぶのだ。
――愛しい妻よ、あなたが千人殺すなら、私は一日に千五百の産屋を建てよう。
黄泉津大神となったイザナミの呪いによって日本は戦乱の世となり、大勢の人々が死に絶える。
だが高天原に帰ったイザナギはそれ以上の人々を生み出し、再生を生んできた。
イザナギとイザナミは
罪なき人々の無残な死は決して無駄にはならない。
残酷であろうが、それこそが自然神達が従ってきた世界の在り様を示す循環なのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ここはかつて超力兵団事件の際に使われた造船島。
ヤタガラスに管理されていた場所であるが人手不足のためか現在は放棄された場所である。
島には森が広がっており、その地下にはかつて陸軍地下造船所が存在していたようだ。
この地において葛葉ライドウと戦うことになった最強の脅威といえる軍艦が製造されている。
しかし現在は誰も立ち寄らない無人の島であるのだが、巨躯の大男が森の中に入っていく。
歩いていくのは人間に擬態した姿のオオクニヌシであり、紺色のスーツを纏っているようだ。
長い黒髪を真ん中分けにして歩く彼が辿り着いた場所とは森の中にある古い公衆電話。
オオクニヌシが公衆電話に入ると電話ボックスごと地下へと下っていく。
どうやら大正時代の陸軍地下造船所を秘密裏に稼働させている者達がいたようである。
地下造船所に降り立ったオオクニヌシが外に出れば広大な造船所が姿を表す。
鉄骨で出来た通路を歩きながら目的の船を確認しにいく彼は思い出していく。
「……葛葉ライドウ」
国津神の長が思い出すのは大正時代においての葛葉ライドウとの戦い。
あれは超力兵団事件を解決した後の次の大きな事件であったアバドン王事件が起きていた頃。
この場所において葛葉ライドウは別件依頼を果たすため訪れており、オオクニヌシと戦っている。
「我ら国津神の悲願である天津神族を滅ぼす計画を二度に渡って邪魔した存在め…」
あの時、ライドウと対峙したオオクニヌシは怒りの感情を爆発させながらライドウと戦ったのだ。
……………。
「我らは我らの国を取り戻すのだ!!邪魔をするな小僧!!」
「罪なき民を犠牲にしてまで国を取り戻す道などに!!価値はない!!」
激しい剣戟を繰り返すライドウに向けて怒りを爆発させるオオクニヌシがまくし立ててくる。
美しい彼の顔は憤怒に歪み、その目はまるで蛇のように獰猛な瞬膜と化していたようだ。
「貴様には分かるまい!この国は我ら国津神が作り上げた世界!それを天津の神々が奪った!」
「だから奪い返すのか!?帝都に生きる罪なき民を犠牲にしてでも取り戻そうというのか!!」
「ヘブライ神族の後ろ盾がある天津に適うはずもなく……我ら国津の神は恭順の意を示した!」
「天津神族の後ろ盾……?ヘブライ神族だと……?」
「我が盟友スクナヒコナだけは怨みを忘れず、常世でこの現世を見てきたのだ!」
スクナヒコナとは超力兵団事件の黒幕的な国津神であり、人間の体に寄生した小さき神。
彼が寄生した人間は陸軍の者であり、超力兵団計画を実行しようと企んでいた男であった。
「スクナヒコナと目指した真の理想郷をこの手で作り上げる!!」
「死者だけの国がそうだというのか!!」
「死は生あるものに等しく、平等に与えられるもの!それを回避出来る神すら皆無なのだ!」
壊れたオオクニヌシが目指す理想郷とは全てが死んだ常世の世界。
権力者も民衆も等しく死に絶えた世界こそ理想だという呪いを撒き散らす神にまで堕落している。
今の彼は天津神族への怒りと憎しみに支配された呪わしい悪魔そのもの。
オオクニヌシは蛇神としても語られた神であり、オオナムチとも呼ばれている。
龍蛇神としての獰猛さも宿した神であり、目的の為なら手段を選ばない冷酷さも宿す存在だ。
だからこそライドウはオオクニヌシを倒す必要があり、彼は死力を尽くして彼を打ち倒すだろう。
彼の刃に倒されたオオクニヌシは最後にこんな言葉を残してくれる。
「この程度で……我ら国津神の怨み……消せると……思うな……よ……」
記憶はそこで途切れており、次に形を成して世界を見た光景こそがボルテクス界だった。
人修羅が生きたボルテクス界を見たオオクニヌシはこの世界こそが常世なのだと実感するだろう。
だが、そこにあったのは神と悪魔の殺し合いのみ。
自分が理想とした死の世界にすら平等は存在せず、力ある者が力なき者達を喰らうだけの世界。
これでは現世と何も変わらず、権力者が無力な民衆を食い物にするだけの光景と変わらない。
ならば自分が望んでいた理想とは何だったのかと分からなくなったままボルテクス界を超えた者。
そして彼が三度形を成した世界こそが魔法少女と呼ばれる存在が生きる世界。
この世界で形を成したオオクニヌシは考えを改めてくれるだろう。
自分の原点とは何だったのかを思い出した彼であるが、それでも彼は天津神族を呪う神。
そしてそれ以上に呪う一族こそがヘブライ一族であり、ヘブライの神でもあった。
……………。
「葛葉ライドウ…それでも我らは戦わねばならぬ。この国を奪い取ったヘブライを滅ぼすために」
オオクニヌシがやってきたのは地下造船所の最奥にある造船施設。
そこに見えたのは
造船している艦艇の後ろ側には神を祭るような祭壇エリアも存在しており、彼はそこに立つ。
見上げる軍艦に思いを馳せていた時、笛の音色が響いてくる。
「……お前も来ていたのか」
近寄ってくる男はインド人のような褐色の美青年。
孔雀の羽をあしらったつば広帽子を被り、同じ色の燕尾服の上着を纏う姿。
ブラウンのショートパンツにブーツを合わせたカジュアルなスタイルをした人物が近寄ってくる。
彼が吹いている横笛は黄金の笛であり、美しい音色を奏でながら近づいてくる男が立ち止まる。
「……やぁ、オオクニヌシ。
パーマがかかったセミロングヘア―の美青年が笑顔を向けてくるようだが、彼は顔を背ける。
再び巨大軍艦に目を向けるオオクニヌシの横に立った人物が軍艦を同じように見上げたようだ。
「超力戦艦を再び建造することが出来たのも烈士達のお陰だ。私は多くの者に支えられている」
「君が取り戻した愛の賜物というものだね。今の君は国作りを象徴する神の頃に戻れているよ」
「かつての私は憎しみに支配されるあまり自分の原点を忘れていた……それを思い出せたのだ」
「しかし、愛は痛みに耐えなければならない。君は再び自分を殺す痛みに耐える必要がある」
「分かっている……私は再び悪魔となろう。日の本の民から呪われる蛇神にならねばならない」
「愛ゆえに人と神は自己犠牲を示せる者。君の戦いによって大勢が死ぬことになるんだよ」
「私の戦いはこの国を取り戻すだけでは終わらない。この国を支配するヘブライは海の向こうだ」
「司令塔がいる限りいくらでも増援が送り込まれる。それどころか海上封鎖までされるだろうね」
「そうなれば貿易に依存する力無きこの国は耐えられない。太平洋戦争の末路と同じとなる」
「だからこそ、君たち国津神はボク達の力を必要としたわけだ?」
不気味な笑い声を上げていく青年に顔を向ける。
オオクニヌシの表情は信頼出来る仲魔に向ける表情ではない。
恐ろしい存在に向けて送る畏怖が宿った顔つきであったのだ。
「そうだ……
オオクニヌシが語った名こそヒンズー教の叙事詩マハーバーラタで活躍した神。
ヒンズー教においては秩序を司る最高神の化身姿であり、第八の姿であった。
【クリシュナ】
インド神話の神々の中で最も民衆に親しまれている神格の一柱。
怪力と武勇に優れた英雄であり、奥深い知識を持つ宗教指導者でもある。
あらゆる女性を惹きつける魅力的な牧童であり、その正体は
「天津神族にはヘブライの後ろ盾がある以上、我ら国津神もまた後ろ盾が必要だったのだ」
「我らは共通の敵を抱えた者達。ボクを崇めるインドとてユダヤ共の支配を受けてきたんだ」
「だからこそ、我々はユダヤ財閥を滅ぼさなければならない。そして欧州の黒の貴族共もだ」
「欧州を開拓したヘブライの中にいるカナン族こそ諸悪の根源。バアルを崇める悪魔崇拝者共さ」
「今の天津神族の後ろ盾はヘブライの神ではない……ルシファーとバアルが率いる堕天使共だ」
「ルシフェリアン共にこの星の牧師を任せるつもりなどはない。彼らは愛を憎む者達なんだ」
「あの金融マフィア共に力を与えた宗教こそが
「勿論だとも。いずれ世界はサードインパクトが巻き起こる。魔界からオーディン達も現れるよ」
「多神教連合を構成する全ての神々がそろった時、我々は世界に向けて大攻勢を仕掛ける」
「始まるんだよ。ボク達が行う世界の救済がね」
踵を返したクリシュナが去っていき、オオクニヌシの前から消え去ってしまう。
無言のまま超力戦艦に目を向けていたオオクニヌシは巨大な船に向けて語り掛ける。
その表情は心を許せる盟友に向けた優しさを感じさせる顔つきであった。
「己の体を捨て、新たな
友の言葉を聞いた巨大な船から汽笛の音が鳴り、造船所に響き渡る。
盟友の言葉の代わりとなる汽笛を聞いたオオクニヌシは頷き、後ろに振り返りながら去っていく。
歩き去りながら口を開く彼が語るのはクリシュナが見えていない未来の光景であった。
「クリシュナよ…我ら多神教連合の力であっても足りないのだ。我らには新たな戦力が必要だ」
オオクニヌシが望むのは全ての神々の力であり、多神教連合に与さない神々の力も必要とする。
その中にはクリシュナにとっては怨敵であるアスラ神族さえも含まれているのだ。
そして人なるアスラである人修羅の力もまた彼は迎え入れたいと望む者。
しかしそれをクリシュナに語ってしまえば彼を激怒させてしまうだろう。
アスラ神族と敵対してきたデーヴァ神族の神として戦争を巻き起こす危険性さえもある。
世界と戦う覚悟を示す神々であったが、それ以上に確執が深い因縁もまた抱えていたのであった。
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その後の静香は飛ぶ鳥を落とす勢いで行動を開始する。
ホウオウに乗った彼女が向かった先とは時女一族の分家集落である。
分家の魔法少女達に向けて時女一族に巻き起こった災厄と国の危機を伝えていく。
売国政府と米帝共から国を取り戻す必要があると叫ぶ静香であるが魔法少女達は消極的だ。
国と戦争をすると言い出されて、国を憂う気持ちだけで戦えでは不安過ぎる。
この反応が返ってくることを見越していた静香はヒノカグツチとしての力を示す。
強大な神の力を手に入れた一族の長にならついて行ってもいいと言ってくれる者達が現れだす。
その数は分家の魔法少女達の過半数を超える勢いとなってくれたのだ。
彼女達は家族に向けて別れを告げ、魔法少女達の家族もまた娘を戦地に送る覚悟を示してくれる。
静香の祖父からヤタガラスの裏切りは聞かされており、分家は国に敵対する覚悟を決めたようだ。
大国村に集まった時女の魔法少女達は村のサマナー達から悪魔召喚技術や戦闘技術を学んでいく。
彼女達を鍛えるのに半年ほどかかった頃、静香はオオクニヌシから呼び出しを受ける。
村長の屋敷の奥を登っていき、オオクニヌシが住まう奥の院で彼女達は向かい合うのだ。
「よくぞここまで練り上げた。既に国中が病魔よってパニックとなっている。いよいよ動く時だ」
「ここまでついてきてくれた時女の魔法少女達こそ私の誇りです、オオクニヌシ様」
「彼女達を招集するのだ。新たなる魔法少女サマナーとなった者達に決起を促す必要がある」
蝋燭で照らされた薄暗い屋内を歩いてくるのはアビヒコであり、木製の丸盆が持たれている。
正座した静香の前で同じように正座したアビヒコが丸盆を静香に差し出す。
「これは……?」
丸盆の上に置かれていたのは
狐半面を受け取った静香の前で立ち上がり去っていくアビヒコの後ろに座る者が静香に告げる。
「その仮面を纏い、心を凍らせろ。今よりお前は大虐殺者の道に進むのだ」
「この狐面を纏って……心を凍らせる……」
「狐とは
「蛇を崇拝する悪魔共と戦うためにこそ…蛇を喰らう動物になれと言いたいのね?」
「他の者達には既に渡している。彼女達に号令をかけた後、日の本の革命戦争を開始する」
正座した静香が深々と平伏する礼儀を見せた後、受け取った狐半面を纏いながら去っていく。
彼女の後姿を見送るオオクニヌシは顔を俯けていき、これから始まる殺戮に赴く覚悟を決める。
「蛇神でもある私が蛇を喰らう女狐達を解き放つか……因果なものだな」
村の体育館に呼び出された時女の魔法少女達は整然と列を作りながら並んでいる。
顔にはカラス面や単眼雑面布の代わりとなる新たな仮面として狐半面が纏われているのだ。
体育館ステージの上に立つのは火の神の姿となった静香であり、横には仲間達も立つ。
皆を見渡したあと頷き、声を大にしながら静香は時女の矜持を叫ぶのだ。
「私は国と戦わなければならない!!日の本を乗っ取った米帝や傀儡政府を相手に戦うのよ!!」
皆の意思を確認する静香の顔は鬼気迫るものであり、霧峰村崩壊の日の彼女を彷彿とさせる程だ。
「私達は日の本を守ると掲げてきたわ!だけど、私達が守りたいのは国じゃない!民なの!!」
民の安寧なくして国は無しと叫ぶ静香の覚悟に皆が賛同してくれる。
清聴してくれている者達の内心にあるのは静香から語られた売国政府への憎しみのみ。
飢えた女狐達は狂暴となり、国を相手にしてでも恐れない覚悟を示してくれるはずだ。
「この国の民を家畜として搾取する邪悪な敵を討ち滅ぼす!相手は悪鬼じゃない、人間よ!!」
人間が相手であろうと時女の魔法少女達は許さない。
日本人に擬態した在日共の支配を許さない、人間の皮を被った拝金主義者という悪魔を許さない。
慈悲なき刃を携えた彼女達は容赦なく拝金主義者の血を浴び続ける者になれるだろう。
「私達の道はナチスとなる!!選民主義を掲げ、歴史と伝統を掲げ、移民を排除していくわ!!」
新たなる歴史と伝統を作り、真に国民が主権を手にした地域に変えていく。
それこそが新たな時女一族が掲げる矜持であり、血塗られた誇りとなるだろう。
そして歴史でいうホロコーストの如く在日を大量処刑する大虐殺が行われるのだ。
「私達は戦争のために生まれたわけじゃない!!だけど戦わなければ守れないものもあるの!!」
相手を信じれば信じるほど守れないものもある。
詐欺師を信じれば敵に都合のいい状況にしかなりえない、また騙されるわけにはいかないのだ。
「国が相手でも恐れないで!!私達だけじゃない、全ての神々が私達の先頭に立って戦うわ!!」
<<新たなる国を!!新たなる世界を!!私達の手で作り上げる!!未来を勝ち取る!!>>
静香の愛国心に鼓舞された女狐達が熱き血潮をたぎらせ、民族主義を掲げながら吠えていく。
時女静香の背中についていき、売国奴という蛇共を喰らいつくす事が誇りなのだと叫ぶのだ。
真理を得た気分に浸る者達であるが、静香もまた矛盾極まったものを抱え込んでいる。
それを見抜いているのが体育館の入口付近で静香の演説を清聴している涼子とちはるなのだ。
「…これが戦争という矛盾極まった光景なんだ。静香達もまた悪魔になっちまうのさ……」
「国を売る人達だって人間だよ…非道を尽くされたなら私達も非道を尽くしていいだなんて……」
「自分は良くて、お前はダメ。正義の中身はいつだって卑劣極まりない
「ミイラ取りがミイラになる道…それが戦争であり、正義を掲げた戦い。こんなの間違ってる…」
「間違っていたとしても社会を変えられると信じているんだ。静香もまた猛毒の蛇となるのさ…」
「蛇を崇拝する悪魔崇拝者を喰らう蛇……
「
演説を終えた静香が己の覚悟を示すため、横に立つすなおに顔を向ける。
頷いた狐半面姿の彼女が持ち出したのは木製の
静香の前に置かれた三宝台の上に立て掛けられているのは天皇家の家紋である菊家紋。
菊の御紋を形作る古瓦が置かれた三宝台の前に立った静香は右手に
その剣は日の本の高祖神であるイザナギの剣であり、神産みの剣であり神殺しの剣。
我が子であるヒノカグツチの首を跳ねられるなら、三貴子である神々とて殺せる剣なのだろう。
「私は……古き日輪を断つ。この国は生まれ変わり、新たなる神々が統治する神国となるのよ」
静香の両目がカッと開いた瞬間、腰を落としながら彼女は剣を振りぬく。
右切り上げによって真っ二つとなった菊の御紋が滑り落ちていく。
彼女が放った一撃こそ、日本という国名となった太陽神話を終わらせるための一撃。
高天原から地球に目を向けていたイザナギ神が菊の花を握り潰した光景と重なって見えるだろう。
奇しくもその光景は違う可能性宇宙の時女一族が初日の出を祝う儀式と重なる光景に見える。
だが、この宇宙の静香が行ったのは古き太陽を切り裂き、新たなる天空神を掲げる一撃となった。
「民を守らない太陽など必要ない。私達が望む天皇とは民のために独裁者と戦ってくれる皇帝よ」
かつての将門公のように、民を守らない朝廷政府に反旗を翻して戦ってくれる新皇が欲しい。
日輪を断つ飾りを身に纏う者でありながら剣には明けの明星の如く輝く太陽が備わっている。
それこそが今の静香の気持ちであり、666を象徴する三つ巴紋をお腹の帯に纏う覚悟。
今の彼女はアマラ深界の666階層にいたイザナギ神とイザナミ神達と同じ望みを抱えている。
将門公の魂を受け継いだ666を象徴する悪魔の存在を必要としているのだ。
新たな御姿となった静香の姿は神を奉る巫女のようにも見えるかもしれない。
彼女は新たな天空神となってくれる人修羅を欲し、崇め奉る者になっていくのであった。
これで六章のマギレコキャラのドラマ回収は終わったと思うので円環のコトワリ神バトルに移ります。
ですがまだプロット段階なので投稿は暫くお待ちくださいね。