人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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253話 白鳥の侍女達の戦い

何も知らない白鳥にされた鹿目まどかと瓜二つの顔を持つ、黒き心をもつ女神がついに現れた。

 

彼女はお供を務める円環の軍勢を解き放ち、まどかを守ろうとする悪魔少女を滅ぼしにかかる。

 

その光景はまるで白鳥のお供であった白鳥の侍女達に襲われているような光景に見えるだろう。

 

侍女達は白鳥の王女に仕えていた者達であるが悪魔の魔法によって本来の姿を歪められた者達。

 

彼女達も悪魔の呪縛で惑わされたため、悪魔に対して強い憤りを宿していたのだ。

 

「逃がさないよ!!」

 

商業区ビルの屋上を飛び越えながら逃げるほむらに対して円環の魔法少女達は追撃を行っている。

 

青白く光る楽譜の道を伸ばしながらサーフィンのような高速移動をさやか達は行っていく。

 

「ついて来なさい!!」

 

逃げ続けるほむらは人間社会に危害が及ばない場所まで誘導しながら戦おうとしているようだ。

 

「逃げ足の速い奴なのです!!やっぱり時間を操れる力は侮れねーのです!!」

 

アラディア達に包囲されたまま襲われそうになった時、一回目の時間停止を彼女は行使している。

 

時間が停止した世界でまどかを連れながら包囲網を突破して逃げているというのだろう。

 

(アラディアからまどかを遠ざけるために私の家まで運んだけど…時間稼ぎにもならない…)

 

孤軍奮闘するしかないほむらの相手は円環の軍勢が行い、アラディアは悠々とまどかを奪える。

 

絶体絶命の状況であるのだがアラディアの魔力は公園の場所から動いていないと分かっている。

 

(まどかはいつでも奪い取れると高みの見物を行うつもりね…だったら、大人しくしてなさい!)

 

人修羅達が到着するまで時間稼ぎを行うため、彼女はひび割れた魔法盾に手を伸ばす。

 

取り出した武器とは小銃型支援火器であり、射撃精度の高い小型の分隊支援火器で応戦を行う。

 

高層ビルから跳躍と同時に後ろに振り向き、ドラムマガジンを装備した銃の猛火が噴き上がる。

 

「悪魔の力を使ってきなさいよ!!この程度であたし達は止められないわよ!!」

 

ビルの下側から迫りくる猛火に対してさやかは楽譜の道を滑りながら急降下攻撃を仕掛ける。

 

剣で次々と弾丸を切り払いながらほむらを追ってくるのは他の円環魔法少女達も同じのようだ。

 

(使いたくても使えないのよ……)

 

悪魔ほむらの力はあまりにも強大であり、下手に街中で使えば甚大な被害をもたらしてしまう。

 

それに今まで宇宙を覆う結界構築を続けていたため膨大な魔力を消費している。

 

休めば魔力が自然回復する悪魔の体であっても毎日の負担によって魔力も残り僅かであった。

 

「手加減して勝てる相手ではない……それでも尚紀達が到着するまで持ちこたえてみせるわ!!」

 

地上に向けて落下しながら射撃を繰り返すほむらに対して楽譜の道が一気に伸びていく。

 

両側にまで伸びた楽譜の道を滑りながら武器を構えるのは北欧の歴史に名を残す魔法少女達。

 

「行くわよ!姉さん!!」

 

「合わせるわ!ガンヒルト!!」

 

金髪の長髪をもつ北欧のヴァルキリーを思わせる姿をした円環の魔法少女が跳躍する。

 

狼の毛皮のようなマントを纏う二本角の黒髪少女も同時に跳躍。

 

彼女達がもつ巨大なランスと二刀流の斧の攻撃が両サイドから迫る中、ほむらが動く。

 

残り少ない魔力を解放して侵食する黒き翼を解放しながら一気に飛翔を行う。

 

戦闘機の空中戦闘機動のように攻撃を回避された北欧の魔法少女達は楽譜の道に着地する。

 

「「逃がさない!!」」

 

「勿論だよ!行こうオルガさん!ガンヒルトさん!!」

 

円環の力を取り戻したさやかが強大な魔力を操り楽譜の道のスピードを一気に加速させる。

 

高層ビルが立ち並ぶ商業区の空をまるでドッグファイトを繰り返すようにして互いが飛び交う。

 

結界世界ではないため人間達に目視される危険も考えられるが道行く者達は気が付いていない。

 

ミアズマの幻惑魔法によって惑わされた者達は彼女達の姿を認識出来ないようだ。

 

「振り切れない…!!あれが円環の力を取り戻した美樹さやかの実力だったのね…」

 

後方から高速で迫りくる楽譜の道で武器を構える魔法少女達に向けてほむらは魔法盾を掲げる。

 

侵食する黒き翼を後方にばら撒けば街に甚大な被害をもたらしてしまう。

 

だからこそ威力を抑えた兵器を用いた反撃を行うしかないようだ。

 

「くらいなさい!!」

 

ほむらの周囲に複数の光が浮かび、中から飛び出したのは空対空ミサイル。

 

殺すつもりで攻撃を仕掛けなければこちらがやられると判断したほむらの攻撃が迫りくる。

 

「なぎさに任せるのですーーっ!!」

 

8発の69式空対空誘導弾が迫る中、側面から伸びる楽譜の道にはなぎさの姿が立つ。

 

その顔は死神を彷彿とさせるピエロのように白い肌であり、彼女は魔女の力を纏っているのだ。

 

空対空ミサイルとすれ違うようにして楽譜の道が通り超えると8発のミサイルが消えている。

 

通り超えたなぎさの手には丸盆が持たれており、ケースの中には小さくなったミサイルが並ぶ。

 

なぎさは一瞬を用いて魔女の力の一つである敵を小型化させて拘束する力を発揮したのだ。

 

「こんな物騒なもんを街中でぶっ放すんじゃねーのです!!」

 

ピエロ顔に隠されていた鋭いギザギザの歯を開きながら彼女は丸盆の上のミサイルを喰らう。

 

常軌を逸脱した行為であるが百江なぎさから生まれた魔女はあらゆるものを喰らえる存在。

 

しかし内部からの攻撃には弱いという弱点を抱えていたのをすっかり忘れていたようだ。

 

「ぐっ!?べっ!?ぼっ!?ぶっ!?ばっ!?アバババババババーーーーッッ!!?」

 

口の中で次々と爆発したミサイルのケミカルな刺激に耐えられずになぎさは口を開けてしまう。

 

グルグル目のまま黒煙を吐き出す口の中の歯は爆発に耐えられずにひび割れていたようであった。

 

「ゲフッ……なぎさはまたやらかしてしまったのです。グヌヌ!!もう怒ったのですよ!!」

 

なぎさが立つ楽譜の道が急旋回を行いながらほむらを追撃。

 

激おこぷんぷん丸と化したなぎさが大きく口を開き、内部から巨大な魔女が伸び出てくる。

 

まるで恵方巻きを彷彿とさせる巨大な人面蛇がギザギザの歯を剥き出しにしながら迫りくる。

 

「チッ!!」

 

後方から迫りくる巨大な魔女の噛み付き攻撃を右に左にと旋回を繰り返して回避していく。

 

なぎさの魔女を倒したほむらは弱点を知っているため再び魔法の盾を掲げようとする。

 

だがほむらの左腕に絡みついたのは側面から投げられた鎖分銅の一撃だった。

 

「これが泰党の合わせ技だ!!」

 

楽譜の道にはマミの前に現れた千鶴が立っており、魔力を全開にしながら鎖分銅を振りぬく。

 

高速で飛んでいるほむらの体勢が崩れ、側面の高層ビルにまで誘導されながら叩きつけられる。

 

「アァァァァーーーーッッ!!!」

 

中で働く人々を犠牲にしないためにほむらは翼を消失させたため勢いを止めることは出来ない。

 

高層ビルの窓ガラスを砕いた彼女の体はオフィス空間を通り抜け、隣の窓ガラスを突き破る。

 

空中に放り出されたほむらに追撃を行うのは上空から迫りくる水名露の一撃。

 

「私と千鶴は二振りの刃!!明鏡止水の幾太刀……受けてみなさい!!」

 

左手の鞘から刀を抜刀しながら放つのはマギア魔法ともいえる居合剣技。

 

落下状態で無防備な姿を晒すほむらに目掛けて戦国の魔法少女が放つ必殺の一撃が迫りくる。

 

「そうはさせない!!」

 

危機的状況を打開するためにほむらは魔法盾を掲げながら二回目になる時間停止を行使する。

 

時間が静止した世界で魔法盾から取り出して投げ放ったのは複数の閃光手榴弾。

 

続けて素早く抜いたのは小銃型支援火器のM27IARであり狙いを手榴弾に向け引き金を引く。

 

露の目の前に投げられた閃光手榴弾を銃弾が貫いた瞬間に時間が動き出し眩い閃光が起こるのだ。

 

「くっ!!?」

 

マギア魔法の一撃を止めたほむらは体勢を一回転させながら隣の高層ビルの屋上に着地する。

 

しかし彼女を包囲するかの如く青白く光る楽譜が屋上を囲むようにして伸びてきたようだ。

 

「軍隊の指揮官というよりは…オーケストラの指揮者に見えてくるわね、美樹さやか」

 

ほむらが立つ屋上の上空には楽譜の道の上で剣を指揮者のように振っているさやかの姿。

 

彼女は戦闘機のように高速で飛ぶほむらの動きを把握しながら楽譜の道を魔力で操っている。

 

さやかの援護があってこその魔法少女達の連携攻撃であり、指揮者の如き働きぶりなのだ。

 

剣を振るのをやめた彼女は鋭い目つきのままほむらに向けて剣の先端を振りかざす。

 

「あんたはやっぱり悪魔だった…!あたし達を惑わし、宇宙の秩序を壊そうとした!!」

 

さやかの怒りに呼応するようにして4人の魔法少女達がほむらが立つ屋上に飛び降りてくる。

 

魔法武器をほむらに向けてくるのはオルガ、ガンヒルト、水名露、千鶴。

 

ほむらは取り囲む魔法少女達に視線を向けた後、見下ろしてくるさやかとなぎさを睨み返す。

 

自由を行使する者には責任が伴うもの。

 

自由の体現者であるほむらは悪魔として、その代償を支払う時がきたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

睨み合う悪魔と魔法少女達。

 

張り詰めた空気が支配する中、さやかは騙されてきた者としての怒りを叩きつけようとする。

 

「あんたは円環のコトワリの一部をもぎ取っていった…魔法少女の希望だった救済の力を!!」

 

「私が奪ったのはほんの断片でしかない。その証拠に円環の救済行為は続けてこれたはずよ」

 

「そんな問題じゃない!救済を望んだまどかの気持ちを…あんたは踏みにじったんだ!」

 

「なら聞かせてくれる?まどかは数多の魔法少女を救えたけど…あの子自身はどうなのよ?」

 

「まどか自身……?」

 

「あの子は円環のコトワリという概念存在になれはした……だけど人間としての人生を失った」

 

正義の味方として全体に奉仕することこそが人間の幸せなのかとほむらはさやかに問いかける。

 

負の潔癖主義者であるさやかもまたまどかと同じく道徳主義者であるからこそこう返すのだ。

 

「あたし達は正義を求めた魔法少女だよ!大勢の人達を助けるために生きてきたんだよ!!」

 

「正義の味方として大勢を助けられたって…貴女は貴女を救えたの?」

 

数多の世界を見てきたほむらの言葉は数多の世界の記憶を取り戻したさやかには伝わるはずだ。

 

「そ……それは……」

 

大好きな上条恭介の腕を治すためだけに美樹さやかは奇跡を願い、魔法少女になった。

 

先輩である巴マミの生き方こそ魔法少女の正しさだと信じ、正義の味方になろうとした。

 

なのに魔法少女の真実と理不尽な運命だけを与えられた美樹さやかは絶望の末路を遂げるのだ。

 

「正義の味方として全体に奉仕する…この危険性を尚紀は私に伝えてくれたことがあるの」

 

「尚紀さんが…正義の味方の危険性を語ったことがあるの…?」

 

「貴女だって神浜に行った時に語られたはずよ。尚紀がどんな事をしようとしたのか思い出して」

 

魔法少女の虐殺者として生きた尚紀の末路がどのようになったのかなら聞かされている。

 

それでもその時のさやかは尚紀が行ったことを間違いであったとは認められない者だった。

 

「尚紀さんは正しいって…あたしは今でも言える!魔法少女は全体を守るためにあるべきだよ!」

 

「正義を求めた尚紀が行ったのは全体主義独裁社会を築き上げること。それは戦前回帰なのよ」

 

「戦前回帰…?」

 

「貴女も歴史の授業で習ったはずでしょ?大日本帝国時代の日本がどんな地獄か思い出せない?」

 

全体主義というファシズムを振りかざした時代の日本に個人の幸福など存在しなかった。

 

ファシズム国家のもとではイデオロギーが強調され、国という全体に絶対服従させられた。

 

国家利益が優先されて国民の人権や自由は奪われ、逆らう者は政治犯として連行されていった。

 

その末路は御国のために死にに行けと若者達を大勢死なせ、国まで焼き尽くす末路である。

 

「全体を優先した結果…日本人は大勢死に、残された者すら飢えに飢えた。重ならないかしら?」

 

「何に重なるっていうのよ…?」

 

「全体のために死にに行かされたまどかの姿は…戦前の日本人と重ならないのかと聞いてるの!」

 

「それは……その……」

 

「尚紀は魔法少女を()()()()()()()()()()()()!ファシズムを実行した時代の日本と同じく!!」

 

ようやく尚紀がどんな恐ろしい事をしようとしたのか理解出来た者の顔が真っ青になっていく。

 

さやかとて歴史の授業で大日本帝国時代の恐ろしさは勉強しており、うろ覚えだが知っている。

 

正義という全体利益、全体主義の恐ろしさを勉強してきたはずなのに気が付けなかった。

 

「いい加減気が付きなさいよ!正義という概念は娯楽で描かれる痛快なモノじゃないって!!」

 

「そ……そんなこと……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ!こんな呪われた正義の味方をしたいの!?」

 

ほむらの言葉はまどかやさやか達だけでなく、歴史の中で戦ってきた魔法少女達にも言えること。

 

彼女の言葉によって皆が動揺を浮かべてしまう。

 

彼女達もまた全体利益という正義のために命を散らすことが正しいと洗脳されてきた者達。

 

だからこそ、その人生は戦前の愚かな日本人達と同じでしかないのだ。

 

「戦前の子供を失った親達の苦しさを…まどかの家族に背負わせたくない!貴女はどうなの!?」

 

「パパ……ママ……」

 

「貴女だって家族がいるでしょ!その人達の苦しみを考えてあげて!過ちを繰り返してはダメ!」

 

人助けは尊いもの。

 

それがいつの間にか御国の救済だの魔法少女民族の救済だのとファシズムにすり替わってしまう。

 

だからこそ暁美ほむらは全体を優先するばかりの正義の味方とやらに言葉を送ってくれた。

 

全てを救えなくても身近な人ぐらいは助けられる。

 

それぐらいちっぽけな道徳でいいのだと。

 

「さ…さやか……?」

 

難しくて分からない表情を浮かべる百江なぎさがさやかの楽譜の上に飛び乗り顔を覗き込む。

 

俯いたまま震えぬくさやかは信じてきた正義が音を立てて崩れていく苦しみを感じている。

 

数多の世界で生きた美樹さやかの集合体である円環のさやかだからこそ、生前の自分に縛られる。

 

正義のために魔女と戦い、正義を信じて親友を救って命を終わらせた末路に悔いはない。

 

そんな風に自分の過ちを正当化してしまうのは彼女が必死になって努力した証でもあった。

 

「……認めない。認めてなんて……やるもんかぁ!!!」

 

顔を上げたさやかの表情は怒りの感情で満ちている。

 

「あたしはもう…個人の感情を優先しない!法の正義こそが正しいんだと決めたんだ!!」

 

「目を覚ましなさいよ!!法だの正義だの…どうして貴女は全体ばかりを求めてしまうの!?」

 

「それが全体を救う唯一の正義だからだよ!個人の感情を優先したからあたしは…あたしは…!」

 

さやかの脳裏に巡るのは浅慮過ぎる正義を振りかざし無実の男を殺す幻惑を経験させられた記憶。

 

「個人の自由こそが間違いだよ!!だからこそ…それを縛る宇宙の法が絶対的に正しいの!!」

 

「法は皆の同意で成り立つものよ!貴女はまどかを犠牲にする事に同意するって言いたいの!?」

 

「黙れ!!悪魔の惑わしなんかにもう付き合わない!あたしは宇宙の法を守る守護者となる!!」

 

大日本帝国時代の法に従って御国のために死にに行った愚民もまた法(LAW)に盲従した者達。

 

法とは誰のためにあるものなのか?

 

神のため?皇帝のため?祖国のため?民族のため?独裁者のため?理想的なイデオロギーのため?

 

そんなものではないと暁美ほむらは知っているだろう。

 

だからこそ法(LAW)に盲従する愚か者を止めるため、自由(CHAOS)の使者になるのだ。

 

「法に盲従する道を選ぶのね…だったら私は…法に盲従する連中を批判する自由を行使するわ!」

 

努力すればするほど悪循環に陥り、人間は意固地になる生き物。

 

人修羅や七海やちよ達も経験した立場固定という心理バイアスに蝕まれた者を止めるために戦う。

 

その気持ちは魔法少女の虐殺者だった尚紀を止めるために命を懸けた悪魔と同じ気持ちのはずだ。

 

そして今、ほむらと同じ気持ちを宿してくれている者達が近くにいてくれる。

 

「私……間違っていた。私は…正義の味方という概念に盲従していただけだった…」

 

ほむら達が立つ屋上が見える横のビルの屋上で立っていたのはマミと杏子。

 

ほむらの切実な気持ちがこもった叫びはここまで届いており、巴マミの心に深く響いている。

 

「家族を失ったから誰かの救いになりたい。その気持ちはな…誰かに必要とされたい気持ちだよ」

 

「私は…美樹さんに必要とされたかったから…彼女に正義の味方という概念を刷り込んだのね…」

 

「あたしの家族も同じ…大勢を救いたいって気持ちはな…大勢から必要とされたい気持ちなのさ」

 

「私のせいで…美樹さんを自己犠牲させてしまったわ。私は…罪人でしかなかったのよ…」

 

「自分と向かい合って過ちを認められるならやり直せるさ。失敗は終わりなんかじゃねーよ」

 

「本当に難しいわね…自分と向き合うのって。だからこそ、私は暁美さんの味方がしたいわ」

 

「あたしも同じ気持ちだよ。ほむらと一緒に戦うのは…黙示録の騎士と戦った時以来か」

 

杏子とマミの記憶操作は既に解けている。

 

さやかとなぎさという大切な親友を失うショックが原因となり悪魔の呪縛から解脱していたのだ。

 

「これからはもう…正義の味方とは名乗らない。私は私であればいい…皆と一緒に生きたいわ」

 

「へっ♪マミもやっと利己主義の大切さを理解してくれたか。ようやく分かり合えた気がするよ」

 

「フフッ♪この気持ちにもっと早く気が付いていたら…私達は魔法少女コンビのままだったわね」

 

「今からでもやり直せるさ。そのためにこそ、あたし達はもう一度ほむらと組むんだ!!」

 

自分達が信じてきた正義の味方という概念に盲従する者達が自分の正義を懸けて挑んでくる。

 

その光景は女性の解放を信じて正義を振りかざしたフェミニスト魔法少女と同じ心理だろう。

 

だからこそ正義に盲従する者達を批判して止めるためにこそ戦う少数者達がいてくれる。

 

エンタメのように分かり易い正義になびかない者達は敵視され、悪魔の如く悪者にされるだろう。

 

それでも正義という全体思想に気持ちよく騙され続けたい者達を止めなければならないのだ。

 

愚者は失敗という経験を積まなければ学べないとドイツ初代宰相ビスマルクは言葉を残す。

 

失敗してからでは遅過ぎるからこそ、歴史から学んだ者達は戦ってくれるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さやかもまどかも間違ってはいない!!私達魔法少女は戦って死ぬために生きてきたわ!!」

 

迷いを孕んだオルガに代わり二刀流の大斧を構えたままガンヒルトが迫ってくる。

 

彼女は魔法少女として生きた時代において姉のオルガの夢を叶えるために命を投げ捨てた者。

 

北欧神話が大好きな姉のためにヴァイキング達を率いて勢力拡大を続けてきた。

 

その果てにあったのはヴァイキング魔法少女の名に恥じない凄惨な死。

 

それは本当に姉のオルガの望みであったのだろうか?

 

「私は姉さんの望みを果たすために戦い抜いた!それは姉さんに名誉をもたらしたいため!!」

 

迎え撃つほむらが銃を構えようとするが上空から迫る飛来物がガンヒルトの前に落ちてくる。

 

「なにっ!?」

 

「こ……これは杏子の槍?」

 

横一列に並んで刺さった槍から赤い鎖が伸びて編み込み結界を構築しながら障壁となる。

 

<<名誉なんてもんはな、自分の過ちに目を向けられない臆病者の言い訳なのさ>>

 

上空から飛来してきたのは魔法少女姿の佐倉杏子。

 

驚きの表情を浮かべるほむらに振り向き、右手に持ったスティック菓子に噛り付く。

 

「今まであたし達を騙していた件については後で話す。今はこいつらを止めるのが先だ」

 

槍を回転させながら刃をガンヒルトに向け、ここから先は通さないとほむらを守ってくれる。

 

行く手を遮られた円環の魔法少女に代わり水名露が抜刀しながらほむらに攻撃を行いに来る。

 

「私は戦国武将の娘として生きてきた!御家という全体を優先する在り方こそ侍の生き様よ!」

 

しかし彼女に襲い掛かるのは上空から撃ち込まれた銃弾の雨。

 

露の周囲に放たれた銃弾から魔法のリボンが生み出され、拘束攻撃を行うのだ。

 

<<私達日本人は侍という民族アイデンティティから抜け出せないから過ちを繰り返すのね…>>

 

上空から一回転しながら着地したのは魔法少女姿の巴マミ。

 

着地と同時にマスケット銃を二丁生み出し露と千鶴に狙いをつける。

 

「話は後にしましょう。今は美樹さんやなぎさちゃん達を止めることが先決なのだから」

 

「杏子…巴マミ…どうやら貴女達にかけた記憶操作魔法は消えてしまったようね…」

 

「騙していたとしても貴女は私と佐倉さんの仲間なのよ。3人で魔獣と戦ってきた仲じゃない?」

 

「そういうこった。自分独りで背負い込まずに少しは仲間達を信用しろってことさ」

 

ほむらに顔を向ける杏子とマミの表情には慈悲深い微笑みが浮かんでくれている。

 

たとえ自分達を騙し続けた詐欺師であっても暁美ほむらは大切な仲間なのだと示してくれる。

 

その気持ちが嬉しかったのかほむらの表情にも喜びが浮かんでいるようだ。

 

「杏子!マミさん!騙されちゃダメだよ!!そいつは悪魔なの!!宇宙の法を犯す悪者なの!!」

 

楽譜の上で叫んでくるさやかに振り向いたマミは首を横に振り、自分の決断を伝えてくれる。

 

「ごめんなさい…美樹さん。私はもう正義を求めたくない…正義は自分を不幸にするものだった」

 

「そんな…あたしに正義を教えてくれたのはマミさんなんですよ!?なのに…どうして!?」

 

「私はね…感情と狭い経験の中でしか世の中を測れない愚者だった。貴女を騙してごめんなさい」

 

自分の師匠でもあったマミの裏切りともいえる決断に対して美樹さやかは動揺を隠せない。

 

考えれば考える程に自分の正しさを疑ってしまうさやかに代わり、子供のなぎさが叫んでくれる。

 

「なぎさは悪魔を許してやらないのです!まどかを連れ去った悪者をやっつけてやるのです!」

 

物事を深く考えない単純な子供の言葉が円環の魔法少女達の迷いを解いてくれる。

 

「あたしがコイツらを相手してやる!かかってこいよ!ヴァイキングみたいな魔法少女共!!」

 

「言ったわね…?だったらヴァイキングとして戦い抜いた戦士の戦を見せてあげるわ!!」

 

「ガンヒルト…あ、あたし達は…本当に正しいことをしているのかな…?」

 

「姉さんは黙ってて!生前の頃のように私の指示に従っていればいいのよ!!」

 

杏子と対峙するためガンヒルトは二刀流の斧を構えてくる。

 

「アタシは泰党の棟梁を務めた親父の娘として全体に尽くしてきた!それが間違いなわけない!」

 

鎖分銅の鎌を投げつけリボン拘束されている露を解放したのは千鶴である。

 

彼女もまた戦国時代を生きた魔法少女として御家という全体に尽くす矜持を持ってきた人物。

 

侍として生きる露と同じく全体主義に洗脳されてきた者として譲れない戦いを仕掛けてくる。

 

「貴女達の相手は私がしてあげるわ。引かないというなら…今度こそ命を落とすわよ?」

 

「言ってくれるじゃないか?アタシと露が揃えば…オメエなんかに遅れはとらねぇ!!」

 

「武家の者として御家を守る矜持を貫いてきたわ!それが間違いだったなんて私は認めない!!」

 

ほむらの背中を守るようにしてかつての仲間達が駆けつけてくれた。

 

懐かしい気分と感謝で心がいっぱいになったほむらだからこそ、魔法少女だった自分を思い出す。

 

「私…貴女達とは分かり合えないと思ったけど…仲間を信じることも大切なんだと理解出来たわ」

 

「さやか達にやられるなよ、ほむら!」

 

「後ろは私達に任せなさい、暁美さん!」

 

「ええ!貴女達に任せるわ!!」

 

見滝原を守ったかつての3人組に戻れたことで悪魔ほむらの心に諦めない気持ちが宿ってくれる。

 

マミと杏子はほむらを取り囲む者達を引き付けるようにしてビルの屋上から飛び降りていく。

 

下界には既に他の円環の軍勢が到着しており包囲して殲滅しようという狙いがあるのだろう。

 

残されたほむらは決意が宿った表情を浮かべながらさやかとなぎさに対してこう叫ぶのだ。

 

「私は何度だって繰り返した…まどかを守る道こそが私の道。だからこそ悪魔になっても貫く!」

 

「円環のコトワリからまどかを剥ぎ取り!まどかの意思を歪めた悪者が偉そうに言うなぁ!!」

 

「なぎさは難しいことはワカラヌですけど!悪魔が悪者だってことぐらいは分かるのです!」

 

「来なさい…円環の使者共!!まどかは渡さない…そして貴女達の人生も私が救ってみせる!」

 

楽譜の道を蹴り込み地上に向けて一気に急降下突撃を行うさやかの剣が悪魔ほむらに迫りくる。

 

迎え撃つ悪魔は断罪の刃を振りかざす円環の使者を相手に譲らない決意を示し続けるだろう。

 

さやかもまた円環の使者としての覚悟を示せる者かどうかをアラディアから試されている者。

 

背後の上空から感じさせてくる恐ろしい女神の視線に怯えながらも譲れない戦いを繰り返す。

 

悪魔と決着をつけるために戦い続けるさやかであるが、心の中には葛藤が宿っている。

 

今の自分は何を守るために戦っているのだろうか?

 

宇宙の法を守るためなのか?

 

親友の鹿目まどかの意思を守るためなのか?

 

もう1人のまどかといえるアラディアの意思を守るためなのか?

 

どれにせよ、そこにはさやか個人を救うことなど含まれてはいない。

 

全体を優先するあまり個が消滅してしまった美樹さやかの剣はまさしく秩序の剣となっていく。

 

だからこそCHAOSの道を行く悪魔ほむらはLAWの道を行く者に敗れるわけにはいかないのだ。

 

行き過ぎた秩序を振りかざす者達を止めるための自由を求める者として戦い続ける。

 

たとえ秩序を乱す悪者扱いされようとも悪魔ほむらは秩序を振りかざす者と戦ってくれるのだ。

 

秩序を司る天使と自由を司る悪魔の戦いとは、殺し合いであると同時に()()()()()でもあった。

 




僕のまどマギ推しキャラ達は円環に導かれなかった生存組なんですよね。
だから悪魔ほむらちゃんだろうとマミさんと杏子ちゃんを組ませたくなっちゃうんですよね。
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