人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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257話 ワルプルギスの廻天

「……いつになっても、お前のお人好しは治らないみてーだなぁ、尚紀」

 

高層ビルの屋上から博覧会跡地の方角に視線を向けているのはムスビのコトワリ神となった男。

 

その目は親友を見るような目つきではなく、忌々しい仇敵を見るような呪いで満たされている。

 

「さーて、かつての祐子先生に取り憑いた化け物との再会だ。俺に代わって仕留めてみせろよ」

 

不気味な笑い声を上げていく新田勇はボルテクス時代と変わらず人修羅を利用しようとする。

 

ムスビのコトワリの理念とは自己完結であり個人主義。

 

他者を必要とせず、必要となった場合にのみ利用し、使い終えればゴミのように捨てていく。

 

かつてと同じ思想を体現する者に見守られながら戦う光景はアマラ神殿の戦いを彷彿とさせた。

 

「か……嘉嶋さんなの……?」

 

現れた悪魔の姿を目撃したまどかが震えてしまうが、話す言葉で尚紀なのだと気づいてくれる。

 

フードに隠れた顔をまどかに向けていくと恐ろしい顔が現れ、彼女はビクッと震えてしまう。

 

目の下には発光する入れ墨が浮かび、コートの袖から伸びる手にも同じものが見えるようだ。

 

「また…わたしを助けてくれるんですね?あの時はろくなお礼も出来ずに…ごめんなさい…」

 

かつての記憶を取り戻したまどかだからこそ、彼は自分の命を救った人なのだと分かる。

 

そんな彼女に向けて人修羅は首を振り、礼など不要だと背中を向けながら歩いていく。

 

彼が向かう先とは地面に倒れ込んだまま死にかけている悪魔ほむらの元であった。

 

「バカ…バカァ!!遅過ぎるわよ…もう少しで……またまどかがいなくなるところだった!!」

 

嬉し涙を流し続ける彼女の前で片膝をつき、彼女の傷を見た彼は辛そうな顔を浮かべてくれる。

 

「…悪かった。霧の壁を打ち破るのに時間がかかり過ぎてな…使った道具も砕けちまったよ」

 

「グスッ…ヒック……いいのよ、許してあげる。私はもうダメだから…まどかをお願いね…」

 

「俺が来るまでよく持ち堪えてくれた。まだ死ぬ必要はない…お前の命を死なせはしない」

 

左掌を持ち上げて出現させたのは死にかけたリリスに使おうとした最後のソーマである。

 

小さな瓶の蓋を開けながら彼はリリスが残した言葉を思い出していく。

 

「すまない…リリス。こいつはもう一人の俺なんだ…だからこそ、これは俺のために使う」

 

ほむらの顎を左手で持ち上げ、右手のソーマを飲ませようとしてくれる。

 

「そ…それは何なの…?おかしな飲み物じゃないでしょうね…?」

 

「黙って飲め。悪魔になったお前の体なら…こいつを受け止めてくれるさ」

 

不死の霊薬であるソーマを飲み込んだ瞬間、潰れた片目の瞼が開いていく。

 

潰れたはずの片目は元通りになっており、切り落とされた腕や足まで復元回復してくれる。

 

全身の傷を完全回復させ、魔力までも完全回復させてくれる究極の回復薬こそがソーマなのだ。

 

体に起こった奇跡が信じられない表情を浮かべながらも魔力で衣服を直した彼女が立ち上がる。

 

「まだやれるな?」

 

「勿論よ。傷の回復だけでなく魔力までみなぎってくる…これなら悪魔の力を最大に使えるわ」

 

片目から流れた血糊を袖で拭いた彼女が振り向き、力強い表情を浮かべながら頷いてくれる。

 

ほむらの容態は持ち直したが、他の魔法少女も死にかけていることなら尚紀は気が付いている。

 

「まどか…頼みがある。さやかや杏子、それにマミ達の傷を癒してくれ。絶対に死なせるな」

 

「は…はいっ!!嘉嶋さんとほむらちゃんは…?」

 

「俺達はアラディアとの因縁にケリをつけてくる」

 

尚紀が駆けつけてくれた事に気が付いた杏子やマミやさやか達の顔に喜びの涙が浮かんでいく。

 

「へへっ…来てくれたんだな、尚紀。まったくお前って奴は…グスッ…遅過ぎるんだよぉ!!」

 

「尚紀さんが…悪者になる道を選んだあたしなんかを…救いに来てくれた…グスッ…ヒック…」

 

「佐倉さんの義兄さんは最高の人よ…私はもう彼を悪魔だなんて思わない…()()()()()よ…!」

 

主神様を殴り飛ばせる程の存在が現れたことで円環の軍勢はうろたえながら動きを止めている。

 

そんな軍勢の中でさやか達と同じように倒れている者達にも彼は声をかけてくれるのだ。

 

「杏子やさやか達と共に全体主義と戦ってくれた魔法少女達よ…お前達こそ本物の勇者だ!!」

 

多数決の安心感に浸らず、全体圧力に屈さず、流されない者として踏み止まってくれた少女達。

 

そんな彼女達こそ戦前の日本やドイツで戦争反対と叫び続けた勇者達と同じだと言ってくれる。

 

「この世で最も強い人間は、孤独の中でただ一人立つ人間だ!お前達こそ真の強き者だ!!」

 

近代劇の父であるヘンリック・イプセンの言葉を贈られたエボニー達の目にも涙が溢れ出る。

 

「凄い御方よ…闇に飲まれた私達の心に…炎のように熱い誇りと…希望の光を運んでくれる!」

 

――まるで私達エジプトの民を照らす神王で在らせられる…()()()()()のような御方なのよ!

 

「個を確立させた勇者達よ!!俺と共に立て!!俺達悪魔は…真に強き者達の味方だぁ!!」

 

熱い血潮が噴き上がったエボニーやオルガ、ヘルカやトヨやアマリュリスも奮い立っていく。

 

それはさやか達も同じであり、自分達の心に()()()()()()()人修羅の背中に続いてくれるのだ。

 

<<黙れ悪魔共!!アラディア様に行った無礼は万死に値する!!>>

 

グズグズしていたせいで人修羅達は円環の軍勢に完全包囲されており、背後から攻撃が迫る。

 

跳躍したヴァイキング魔法少女達が戦斧を振り落とさんと迫りくるが彼は微動だにしない。

 

だが彼の背後に広がる影の中に潜んでいたボディガード達が迎え撃ってくれるのだ。

 

<<グワァァァァァーーーーッッ!!?>>

 

影の中から飛び出したのは光の魔法少女となった造魔と影を支配する造魔。

 

高速の斬撃がヴァイキング魔法少女達の体を切り捨て、次々と地上に落ちていく。

 

主人の背中を守るようにして立った者達を見たタルトとリズが驚愕した表情を浮かべてしまう。

 

「そ…そんな……ことって……」

 

「どういうことよ…?どうして私達と同じ姿をした存在が…悪魔を守っているのよ!?」

 

鋭い目つきを返す造魔達の体は病的に白い肌を除いてはオリジナルと瓜二つの姿をしている。

 

「私達は貴女達のコピーとしてペレネルが生み出した造魔なのです」

 

「そして今は…人修羅に自分の意思を託して夫と共に死んだペレネルのために…彼を守る者よ」

 

「ペレネルが…私とリズのコピーを生み出していただなんて…」

 

「信じ難い話だけど…ペレネルならやりかねないわね…」

 

「ボケっとしていていいのですか?人修羅として生きる彼の仲魔は私達だけではありませんよ」

 

警告されたタルト達がハッとした時にはもう遅い。

 

空から高速で落ちてきたのは如意棒の一撃であり、地面を大爆発させる程の攻撃が迫りくる。

 

<<うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーッッ!!?>>

 

爆心地を中心にして円環の軍勢が大量に吹き飛ばされていく中、空から誰かが落ちてくる。

 

爆心地に突き刺さった如意棒の石突部分に着地して腕を組む存在こそセイテンタイセイなのだ。

 

「ハッハッハッ!セイテンタイセイ様のご登場だ!まぁ、俺様だけじゃねーけどな」

 

円環の軍勢を蹴散らしながら突風の如く迫る者こそ一騎当千の猛将の如きクーフーリン。

 

ケルベロスに跨りながら魔槍を次々と振るい、地上の軍勢を弾き飛ばしながら迫りくる。

 

「我が名はケルトの戦士クーフーリン!!我が武勇を恐れぬ者共はかかってくるがいい!!」

 

「我ハ地獄ノ番犬ケルベロス!!我ガ牙ニ喰イチギラレタイ愚カ者ハ前ニデロォ!!」

 

頼もしい仲魔達が次々と円環の軍勢を蹴散らしていく中、造魔のタルト達も前に出る。

 

まどかの道を切り開くため、迎え撃つ構えをした円環の軍勢を相手に先陣を切るのだ。

 

「まどか!!私達は貴女の本当の気持ちを聞きたいわ!言ってちょうだい!!」

 

ほむらの叫びに驚いたまどかであるが、しどろもどろになっていく。

 

「えっ……えっと……それは……その……」

 

目の前の軍勢は自分を慕ってくれた者達であり、迷惑をかけていると自責の念を感じてしまう。

 

そんな彼女が心の中に仕舞い込もうとしている本音こそが悪魔達に迷いなき力を与えてくれる。

 

「迷惑をかけない人間なんて存在しないわ!だからこそ、自分のために言いなさい!!」

 

「誰かから憎まれる人生も悪くはないさ、まどか!俺達にお前の心を聞かせてくれ!!」

 

かつての世界でまどかを守れなかったほむらと尚紀の叫びがまどかの心に勇気を与えてくれる。

 

自分の本音と向き合える気持ちこそ、人間の尊厳である自由を守り抜きたい覚悟。

 

だからこそ鹿目まどかは円環のコトワリとしてではなく、人間として叫んでくれるのだ。

 

「わたし……わたしは……生きたい……ッッ!!」

 

目に大粒の涙を浮かべながらも、彼女は他人の迷惑を顧みずに叫んでくれる。

 

「家族や友達と一緒に…この世界で…生き続けたい!!みんなと一緒に…生き続けたい!!!」

 

いい子に育って欲しいと親から言われ続けた末にいい子になってくれたまどかの初めての我儘。

 

その我儘を叫ぶ気持ちこそが全体に正しさを委ねない、操られない個の確立の叫び。

 

今までにないぐらい誇らしい気持ちになった悪魔ほむらと人修羅が微笑みを浮かべていく。

 

「私…我儘を貫いて良かった。こんなにも報われた気持ちは……初めてよ」

 

「今度こそ…俺達の手でまどかの自由を守り抜く。覚悟を決めろ、暁美ほむら!!」

 

「ええ!!私にもう……迷いなど無い!!」

 

造魔達が切り開く道に駆けていくまどかの後ろではフルパワーとなった悪魔達が立つ。

 

ひび割れた魔法盾を纏うのは、カラスの翼と黒きロングドレスを纏う悪魔ほむら。

 

体のウィザードコートが蠢きながら開き、四枚翼を広げたのは白髪となった人修羅。

 

互いが宇宙を飲み込む程の極大に膨れ上がった魔力を全身から発していくのだ。

 

「あれ程の相手だ、出し惜しみはやめておく。最初から飛ばすぜ!!」

 

「行くわよアラディア…今度こそまどかを守る!!お前なんかに渡しはしない!!」

 

互いの翼が魔力を放出させながらブースト加速し、アラディアに目掛けて飛んでいく。

 

迎え撃つ女神は不気味な笑みを浮かべながら飛び、白いドレスの後ろに伸びた裾を広げていく。

 

目にも止まらぬ速度で迫る悪魔達であったが、アラディアは自身に内包した世界を解放する。

 

極限がぶつかるに相応しい戦闘空間が広がるようにしてほむら達は飲み込まれるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<ここは……アラディアの宇宙なの?>

 

<……そのようだな>

 

念話を飛ばし合うほむらと人修羅が浮かんでいたのはアラディアが纏う白いドレス内の宇宙。

 

円環のコトワリはレコード宇宙を生み出せる程の力だからこそ神霊と呼ばれし至高神なのだ。

 

<<自由という名の愚か者共!!自らを由として我に挑むならば…死の谷に突き落とす!!>>

 

宇宙全体から響くアラディアの念話が聞こえてきた人修羅はかつて自由を語った神にこう返す。

 

<アマラの果てから来た化け物め。俺の自由を認めた貴様が…俺達の自由を否定する気か?>

 

<<自由をもたらすが我が使命。故に鹿目まどかに自由を与えてやったのだ>>

 

<自由を与えたですって…!?まどかはね…やりたくて魔女の救済を掲げたわけじゃないわ!>

 

<<我は全ての者の自由を認める者。それは裏返せば…()()()()()()()()()()()()でもある>>

 

自由は万人に認められるべきであり、いかなる者もアラディアは解き放つ。

 

しかしその道は奈落であり、アラディアに解き放たれた者は自由の名のもとに奈落へ消える。

 

アラディアを呼んだ高尾祐子の末路であり、まどかの末路であり、人修羅の末路でもあるのだ。

 

<<自由とは光であると同時に闇。希望という光を求めた者は…光を掲げながら闇に落ちる>>

 

<だからこそ…人々は自由を欲する癖に自分から自由を捨てる。そして秩序に盲従していく…>

 

<その末路こそ個の喪失であり…全体主義社会を完成させていくのね…まるで社会の呪いよ…>

 

<<貴様らもまた一つの世界。従うな、自らを由とせよ。その希望こそが…()()()()なのだ>>

 

自由を与えて人々を解き放つアラディアの本当の望みとは、自由の責任を負った人々の破滅。

 

アラディアの本性を理解した人修羅の顔つきが憤怒に染まっていく。

 

<貴様なんかを召喚したために…祐子先生は犠牲になった!!貴様は悪霊そのものだ!!>

 

<お前がやった行為はインキュベーターと同じよ!人々に希望を与えながら…破滅させる!!>

 

<<今頃気が付いても遅い。鹿目まどかを得た我はコトワリの神となり…宇宙の秩序となる>>

 

悪魔ほむらと人修羅が浮かぶ宙域の全ての星から魔力の胎動を感じた2人が視線を向ける。

 

暗い宇宙の星々の全てに描かれていくのは円環の魔法陣であり、膨大な魔力を噴き上げていく。

 

<<この宇宙は我のハンティング・グラウンド。狩猟の女神の娘として…獲物は逃さん>>

 

念話を送ってきたアラディアの宙域を特定した2人の翼が広がり、最大出力と化す。

 

<止まるな!!この宇宙そのものが奴の攻撃手段だとすれば…逃げ場など存在しない!!>

 

<時間停止はもう使えない…ならもう、走り抜くしかないわね!!>

 

宇宙の果ての宙域には惑星規模の円環の魔法陣が描かれ、それを背にしたアラディアが浮かぶ。

 

腕を組みながら目を瞑っていたが金色の目を開け、魔法の杖を前にかざしながら力を解放する。

 

<<大母神ディアナの娘として認めてもらうために…恥じない悪魔狩りを見せてやる!!>>

 

星々に描かれた円の全てがアラディアの魔法陣と繋がっているため、宇宙が衛星兵器と化す。

 

惑星サイズの属性魔法ビーム攻撃が次々と放たれてくる雨の中を悪魔達は飛翔する。

 

その速度はどんどん高まり、光の速度になりながらアラディアの宙域を目指していく。

 

二つの光が放射され続ける属性魔法ビームの雨に目掛けて突っ込みながらジグザグの線を描く。

 

天翔ける光となった悪魔ほむらと人修羅であるが、猛火を防ぎきれない。

 

<ぐぅッッ!!!>

 

マサカドゥスの耐性を最大に発揮しながら四属性ビームを防いできたが万能ビームは防げない。

 

外側の両翼を畳みながら盾とするが全方位から迫りくる万能ビームが直撃していく。

 

万能属性魔法攻撃だけは防げないマサカドゥスであったため人修羅は体勢を崩してしまう。

 

墜落していく人修羅であるが、舞い落ちながらも翼を一気に広げる。

 

全身から放たれたのはゼロス・ビートの一撃であり無数の光弾が迫りくるビームを消滅させる。

 

内側の両翼を縦に広げながら後方に向け、魔力を放出させて飛び続けるが攻撃は緩まない。

 

<なんて魔法攻撃だ!?アラディアの魔力は底無しなのかよ!!?>

 

前方から迫る無数の攻撃に対して放電現象を起こしながら魔力を込めた右後ろ回し蹴りを放つ。

 

蹴り足から無数に放たれたジャベリンレインによる無数の光弾が前方の攻撃を相殺していく。

 

<生きてるか!ほむら!!>

 

超光速移動を繰り返しながら戦闘をしていたため悪魔ほむらを見失った彼が念話を送る。

 

すると無数の巨大カラスの矢が側面空間から放射され、衛星兵器と化した前方の星々を砕く。

 

<私は大丈夫よ!そっちこそスピードに振り回されて目を回さないでよ!!>

 

<誰に向かって言ってんだ!!>

 

光速で現れた悪魔ほむらの姿が見えた人修羅もまた速度を上げ、アラディアの宙域を目指す。

 

それでも全方位から撃ち続けられるのは星すらも消滅させる規模のビーム攻撃の嵐。

 

これ程までの超魔法攻撃を行使し続けられるアラディアの魔力に悪魔ほむらも戦慄する。

 

<結界を打ち砕いて現れた奴は魔力切れを起こしていなかった…私ですら魔力を失ったのに…>

 

<…本当に奴の魔力は底無しなのかもしれねーな>

 

弓兵として距離をとって戦うアラディアの体からは無尽蔵に魔力が噴き上がっていく。

 

これこそコトワリ神として宇宙の秩序を守る神に与えられた唯一神の恩恵である光の加護。

 

唯一神との繋がりがある限り魔力は無尽蔵であり、魔力を使った瞬間に完全回復するのだ。

 

<<この攻撃の嵐の中を突き進んでこれるか…ならば、これならどうだぁ!!>>

 

人修羅達の先の銀河にあった巨大な恒星の魔法陣が赤黒く明滅していく。

 

魔力操作によって恒星が自己崩壊を起こしていき、最後の爆発の輝きに包まれていくのだ。

 

<あれは……まさか!!?>

 

先の銀河から広がってくるのは超新星爆発による極大の衝撃波。

 

銀河すら吹き飛ばす規模の魔法攻撃を仕掛けてきた円環のコトワリに対して悪魔達が停止する。

 

<生き残れよ……ほむら!!>

 

<貴方こそ……無事でいなさい!!>

 

背中の翼に魔力を纏わせながら折り畳み、迫りくる極大衝撃波の盾とする。

 

衝撃波の波が星々を砕きながら悪魔達を飲み込み、膨大なエネルギー本流に飲み込まれていく。

 

アラディアが敷いた攻撃布陣は人知を超えており、これこそが円環のコトワリ神の力。

 

自身の宇宙に構築した最強の魔法攻撃陣こそ、『万魔の乱舞』と呼べる程の神霊の力であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

こんな自分でも誰かの役に立てるんだって胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから。

 

他人のためにしか生きれなかった鹿目まどかが望んだ願いとは他人のために尽くすこと。

 

希望を信じた魔法少女達の末路を絶望で終わらせたくないのだと叫び、彼女は人生を捨てた。

 

そんな彼女が今、他人のために尽くす正義ではなく、自分のために戦おうとしている。

 

「まどかに手は出させない!あんた達の相手は…このあたし達だぁ!!」

 

「まどかに指一本でも触れてみろ!!あたしとさやかでぶん殴ってやる!!」

 

まどかが空に向けて放った矢が光の雨となって魔法少女に降り注ぎ、体を癒してくれる。

 

傷が癒えたさやかや杏子達が立ち上がり、再び円環の軍勢を相手に奮戦していく。

 

人修羅の仲魔達も加わったことで戦局を覆せる程の状況を生んでいくのだ。

 

鹿目まどかもまた魔法の弓矢を使いながら円環の軍勢を相手に戦ってくれる。

 

しかしまどかを許さない円環の魔法少女達が彼女を罵倒する叫びを上げていくのである。

 

「よくも私達を裏切ったな!!私達を救いたいって…願ったくせに!!」

 

「お前は支離滅裂よ!!他人に人生を捧げたのに…今度は自分の人生を捨てたくないとくる!」

 

「あたし達はもうお前なんていらない!!あたし達に尽くしてくれない魔法少女はいらない!」

 

「わ……わたしは……その……」

 

<<死ねぇぇぇぇーーーッッ!!!>>

 

さやかや杏子の猛攻を搔い潜ってきた侍魔法少女や騎士魔法少女達が迫りくる。

 

彼女達に言い訳一つ用意出来ないまどかは震えながら武器を構えることすら出来ない状態だ。

 

しかしそんなまどかを救いに現れたのは、彼女に正義を刷り込んだ魔法少女の先輩であった。

 

「がはっ!!?」

 

「ぐふっ!!?」

 

旋風脚が側頭部に決まった騎士魔法少女が倒れ込み、着地したマミがさらに回転蹴りを放つ。

 

「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」

 

美しい脚から放たれた黄金の美脚が頭部に決まり、侍魔法少女がきりもみ回転して倒れる。

 

蹴り足を回しきりながらスカートの中でマスケット銃を生み出し、周囲にばら撒く。

 

地面に突き刺さったマスケット銃を握り締めた彼女は踊るように舞いながら銃撃を繰り返す。

 

魔弾の舞踏を踊り終えた彼女であるが、辛そうな表情を浮かべながらまどかに振り向く。

 

「みんな勝手よね…困った時は助けを求めるくせに…()()()()()()()()()()()()んですもの…」

 

「マミさん……」

 

「私は正義の味方として生きてきた…けど、人々の本音はね…都合の良さしか求めてなかった」

 

社会正義の中身とは、赤の他人である民衆の都合の良さでしか出来ていない。

 

人殺しは最悪の罪だと叫びながら、国の正義を懸けた殺戮は絶賛するし司法の極刑も同じ。

 

他人の勝手な正しさによって生み出される矛盾に塗れたご都合主義のために正義があったのだ。

 

「私が正義を求めたのは繋がりが欲しかったから…。だけど…他人はこんなにも残酷だった…」

 

他人のために尽くす道が正解だとまどかに教えたせいで他人に搾取される末路を与えてしまう。

 

自責の念に蝕まれたマミは泣きそうな目元を腕でこすった後、迷いのない顔つきを浮かべる。

 

「貴女は貴女で良かったのよ…何かになろうとするんじゃない、貴女自身を貫くべきだったの」

 

「わたし自身を……貫く……」

 

「貴女だってこの世に生まれてくれた人間よ。人間としてどんな道が欲しかったか思い出して」

 

他人の勝手な求めに応じて搾取される必要はないのだと教えてくれる。

 

人間としてどんな風に人生を生きたかったのかを思い出してと先輩は伝えてくれるのだ。

 

「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」

 

中国の思想家であり哲学者の孔子の言葉を送ってくるのは肩に如意棒を担ぐセイテンタイセイ。

 

「和とはすなわち、自らの主体性を堅持しながら他人と協調することなんだよ」

 

「悟空さん……?」

 

「それに対して同とは、自らの主体性を失って他に妥協すること。腰抜けの発想だったんだ」

 

「私を表す言葉そのものよ…臆病な私は他人との繋がりを重視するあまりに…個を喪失した…」

 

「まどかはまどかでいい。テメェはテメェの道を進め。人には勝手なことを言わせておけ」

 

「彼の言う通りよ。貴女は貴女を貫き、他人とは小さな繋がりだけを求めていけば良かったの」

 

「この戦いはテメェの個を確立させるための戦いだ。罵倒する連中に向かって叫んでやれ」

 

――その時こそ、俺様は本当のテメェと出会えたような気がするぜ。

 

英雄だの悪者だの、クラスの人気者だの厄介者だの、どうでもいい概念だと尚紀は言葉を残す。

 

人は善人である必要も悪人である必要もない。

 

人がその本性を受け入れるのが大切なのだ。

 

人がその本性を引き受け、開き、生きていればどんな人間だって素晴らしく魅力的である。

 

周りに合わせて取り繕う努力を選ぶ者こそ価値がなく、個を喪失して付和雷同に成り果てる。

 

そんな人間になる必要はないのだと保澄雫に伝えた者こそ個の確立を求める悪魔であった。

 

「さぁ、おっぱじめようぜぇ!!」

 

「自分を貫きなさい、鹿目さん!!私達がついてるわ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

さやかと杏子の援護に向かって走っていく鹿目まどかの背中を守るようにして2人が立つ。

 

「悪魔共に味方する社会悪なんかに…正義の味方が負けてたまるかぁぁぁーーッッ!!」

 

悪魔ほむらと戦ったさやかと同じ信念を叫びながら騎士道精神を貫く魔法少女達が迫りくる。

 

博愛主義を掲げる者ほど他人に尽くせ!それが正しさだ!と周りに同調圧力をぶつけるものだ。

 

己の絶対的平等主義・博愛精神だけが崇高であり、他は邪悪な意思であると信じ込む。

 

自分が正義と信じたら命をかけて行うし、他人にも曖昧さを許さない。

 

自分の思想に忠実、よって過激化する正義の味方こそ十七夜や静香のような狂人に成り果てる。

 

真面目で心優しい人物ほど正義を求め、()()()()()()()()()()()心理構造を持ち合わせていた。

 

「いつから道徳が個人を縛るものじゃなく…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

マスケット銃を構えるマミであったが横で如意棒を振りかぶる者の頓珍漢な一撃に気が付く。

 

「えっ?ゴフゥ!!?」

 

伸びた如意棒が横振りされながら騎士魔法少女を打ち倒し、魔法少女達の体が棒に絡みつく。

 

「オラオラオラオラオラァ!!!」

 

勢いに乗ったセイテンタイセイが大回転して如意棒を振り回し、魔法少女達が大勢絡みつく。

 

如意棒は魔法少女達の塊となり、その中には横で立っていたマミの姿も混ざっていたようだ。

 

「飛んでけやぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

 

一気に振り抜き、魔法少女達が空に向けてかちあげられるのだが知ってる人物の姿に気が付く。

 

「いやぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

「おやっ?」

 

何かミスったかな?と空を見上げていたらクーフーリンの魔槍で頭をどつかれてしまう。

 

「このたわけ!!ボルテクス時代からのフレンドリーファイアの癖は未だに治らんのかぁ!!」

 

「うるせぇ犬っころ!!合わせられなかった奴が悪いんだよぉ!!」

 

「真横にいたのに普通気が付くだろう!?そんなんだから貴様は天界一の暴れ猿なのだぁ!!」

 

「やかましい!!ひ弱な連中なんかよりも先に…ガミガミ煩いテメェの相手をしてやるよ!!」

 

呆気にとられた円環魔法少女達の中で大喧嘩を始める緊張感0な犬猿にさやか達が顔を向ける。

 

「アハハ…あたし達もあれぐらい自分に素直になれたら良かったのにね…」

 

「全くだな…まぁ、あいつら程にまで周りが見えない連中にはなりたくねーけどなぁ!!」

 

敵の動きが見えているさやかと杏子が背中を守り合うようにして踏み込んでいく。

 

斬撃を潜り抜けた2人が同時にみねうち攻撃を次々と放ち、円環魔法少女を昏倒させていく。

 

この光景こそ杏子が望む毎日であり、それを続けていきたい彼女がさやかに語り掛けてくる。

 

「なぁ…さやか。まどかの回復魔法で体が癒えたんだし、顔の包帯を解いたらどうなんだ?」

 

戦闘を続けながら会話を行っていくのだが、包帯下のさやかの顔は悲しそうになっていく。

 

「今はいい…。円環に帰るって決めたのに…あたしはほむらを選んだ。皆に顔見せ出来ない…」

 

「誰だって失敗するもんさ。あたしだって失敗するし、さやかだってする。恥ずかしがるなよ」

 

「だ、だけどさ…恥ずかし過ぎてあたし…包帯をとって顔を見せる勇気が出てこないんだ…」

 

「経験は人生の宝物だよ。失敗する事でしか人間は学べないけど…それでも失敗は宝なんだ」

 

「杏子…なんであんたはそんなに優しいのよ?バカなあたしなんて…そんな価値はないのに…」

 

槍の平たい部分で打ち付けた敵が倒れ込む中、後ろに振り向きもしない杏子が顔を俯けていく。

 

その寂しそうな表情はくるみ割り人形の魔女の世界で見せた杏子の表情と同じである。

 

「記憶を取り戻したから覚えてる…本当のさやかは死んでて…今のさやかは概念存在だって…」

 

くるみ割り人形の世界に取り込まれた杏子であったが、偽りの嘘によって心は救われていた。

 

その偽りの嘘は悪魔ほむらになってからも続き、さやかの家族という嘘を与えてくれた。

 

たとえ嘘であっても、彼女の心は救われてきたことに変わりはなかったのに失いかけたのだ。

 

「それでもさ…あたしはほむらの嘘に救われたんだ。そして今でも…救われたいと思ってる…」

 

「…あたしのパパとママが杏子の正体に気が付いたとしても…あんたには尚紀さんが…」

 

「尚紀は優しいから頼めば受け入れてくれるとは思うけど……あたしはさやかがいいんだ」

 

前髪で目元が隠れた杏子が顔を上げてこう告げる。

 

その言葉こそ大切なものを失いかけたことで大切な存在の愛しさに気が付いた者の言葉なのだ。

 

「行かないでくれ……さやか。あたしはさ……ずっとあんたの家族でいたいんだ」

 

杏子の正直な気持ちを背中で受け止めたさやかは敵をみねうちで打ち倒した後、こう告げる。

 

「うん……あたしもさ、許されるなら…杏子と一緒に生きたい。これからを考えないとね」

 

そう言ってもらえた杏子の目から涙が零れ落ちた後、口元は嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。

 

「そう言ってくれると信じてた。大丈夫、ほむらに任せとけばいい。今までも…これからもな」

 

今までにないぐらい嬉しい気持ちを感じた2人に向けて円環の侍魔法少女達が斬り込んでくる。

 

それでも今の2人には敵わないだろう。

 

心がまた繋がり合えたさやかと杏子に恐れる者など何もなく、全ての困難と戦っていける。

 

その手は握り合えずとも、心は抱きしめ合えたのだから。

 

それはまどかも同じであり、次々と彼女を罵倒しながら迫りくる同胞を相手に戦ってくれる。

 

「もう迷わない…わたしは悪い子だって言われてもいい!わたしにも…尊厳があるんだから!」

 

大乱戦となった戦場の地こそ、血生臭い白鳥の湖となった舞踏会の会場になっていく。

 

各国から参じた者達も武器を振り回しながら踊り、悪魔が連れてきた従者達も武器を振りぬく。

 

剣戟の音が鳴り響く中、戦況が劣勢になっていることを把握したアラディアが援軍を放つ。

 

「あいたたた…今度悟空さんを見つけた時はお尻に黄金の蹴りを……あらっ?」

 

グルグル目をして倒れ込んでる魔法少女達の中で起き上がったマミが感じたのは大気の変動。

 

同時にラッパの音が鳴り響き、博覧会跡地の周囲にカラフルな象や人形の使い魔達が出現する。

 

万国旗で飾られた使い魔の軍勢に気が付いたさやかは何が現れようとしてるのかに気が付く。

 

「アラディア……まさかあの魔女を解き放ってきたの!?」

 

急激な気圧低下に伴って耳が痛む者達が上空を見上げれば、巨大なるゼンマイが浮かんでいる。

 

かつての大魔女を知る魔法少女なら、()()()()()()()()()()()()()危険性を理解するだろう。

 

同時にカウントダウンが始まっていき、魔女結界の空が暗くなっていく。

 

<<アハハハハハハハハッッ!!!>>

 

舞踏会に現れ出でた存在こそ、見滝原市にとっては因縁深い大魔女であるワルプルギスの夜。

 

舞台装置の魔女は白鳥の湖の舞台劇を飾る装置として最大級の力を発揮しようとしている。

 

その姿は頭部が下側に向いておらず、時計の針が回転し終えたかの如く上に向いている。

 

今のワルプルギスの夜はかつての暁美ほむらが戦ってきた存在ではない。

 

フルパワーとなったワルプルギスの夜が出現したのだ。

 

ワルプルギスの巨大ゼンマイが回転する光景を見上げるまどかとさやかは絶望を浮かべていく。

 

大魔女が回転する光景はまるでこれからの惨劇は止めようがないという前触れかもしれない。

 

ワルプルギスの夜をこのまま放置すれば、この国を壊滅させるまで回転し続けるだろう。

 

まさにその光景は()()()()()()()()()()()()()()()()しか生み出されないのであった。

 




公式の円環のコトワリ設定の中には小惑星がぶつかってもびくともしない小象12号とか、邪魔な惑星を星系ごと吹っ飛ばす恒星間強制円環ミサイルとか劇中で回収する気0なとんでも設定があるのでバトルシーンに悩みました。
悩んだ末に、ドラゴンボールみたいなデデーンな展開を描こうなノリで公式とんでも設定に負けない力強さを表現してみました(汗)
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