人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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258話 魔女が集まる夜

ワルプルギスの名の通説はキリスト教やユダヤ教における唯一神の安息日である。

 

世界を創世した神が最後の日を休んだことを祝福し、休日は唯一神に祈りを捧げる日とされた。

 

しかしワルプルギスの名は魔女や悪魔崇拝者によって歪められていくことになるだろう。

 

魔女が集まる夜として残るワルプルギスの夜はディアナ崇拝である魔女の集会がルーツである。

 

夜の女王であるディアナを崇拝する集会のことをさす意味でサバトという言葉が生まれたのだ。

 

そんな彼女達を悪魔崇拝者だと決定づけた事件こそがフランスの魔女裁判の歴史である。

 

不思議な魔術を用いて人々の心を惑わす魔女達は夜の女王に仕える者達ではない。

 

闇の王であるサタン(聖書内のバアル)に仕える者達だと位置づけ直されたのだ。

 

キリスト教の安息日を穢す邪悪な女達という認識が広まり、闇のサバトだと人々は恐れていく。

 

闇のサバトは悪魔と魔女が乱交しながらセックスする儀式であり、子供達が儀式殺人される。

 

このように邪悪な儀式だと認識された集会の時期こそ五月祭やハロウィンの季節と重なるのだ。

 

法王グレゴリオ9世が残した大勅書には悪魔主義者達のサバトの内容が恐ろしく記されている。

 

サバトを厳しく弾圧しなければならなかったのは、子供達の命を魔女から守るためでもあった。

 

……………。

 

<<アハハハハハハハハッッ!!!>>

 

見滝原市商業区に隣接する博覧会跡地の空に現れたのは全長400メートルに達する大魔女。

 

かつてのワルプルギスの夜と見た目こそ同じであるが、巨大ゼンマイが下側に向いている。

 

背後の空には光り輝く巨大な魔法陣が浮かび、青と白で彩られたドレスを着て舞い続ける。

 

回転し続けることしか出来ない愚者を表す魔女こそ、悪魔を崇め続けた魔女を表すものだった。

 

「噓でしょ…?アラディア様はどうして…あんな恐ろしい大魔女を解き放ったのよ!?」

 

戦闘を中断したガンヒルトが驚愕した表情を浮かべながら空を見上げている。

 

「体の位置が頂上に辿り着いている…あれは完全体になったワルプルギスの夜なのよ!」

 

「アタシ達が生きた戦国時代には現れなかったけど…現れてたら日の本が終わってたね…」

 

同じく戦闘を中断している水名露と千鶴も顔を天に向けながら戦慄した表情を浮かべる。

 

円環のタルトとリズもそれは同じであり、援軍として寄越すには相応しくない存在を恐れる。

 

「女王の黄昏を超える程の力を感じます…あれがフルパワーになったワルプルギスなんですね」

 

「アラディアはどういうつもりなのよ…あんな存在がいたら私達だって無事じゃすまないわ…」

 

主神様の采配を疑問視する円環の魔法少女達は恐れおののきながら停戦状態になっていく。

 

それは見滝原の魔法少女達も同じであるのだが、人修羅の仲魔達は微動だにせず語り合う。

 

「力だけなら上位の悪魔領域に達している相手だな。だとすれば…この国を滅ぼし尽くせるぞ」

 

「オモシロイ…相手ニナッテヤル。コトワリ神トノ戦イヲ奪ワレテシマッテ退屈シテイタノダ」

 

「それよりよぉ…何なんだ?この不快な音は?あの巨大ゼンマイがギシギシいってんのか?」

 

セイテンタイセイ達が語り合っていた時、不快な音の正体が上空から降り注いでくる。

 

<<えっ?えっ!?キャァァァァーーーーッッ!!?>>

 

スーパーセルの雹の代わりとして降り注いできたのは子供サイズの人骨の雨。

 

巨大ゼンマイが下側に向いた事で内部で砕かれていくゴミが地上に降り注いできたようだ。

 

「こ…これは何なのよ!?ワルプルギスの夜の内部で…何が行われてるっていうのさ!?」

 

「あれは…あれは子供達が魔女の集会で生贄にされてきた光景だったんだよ…さやかちゃん…」

 

驚愕した表情を浮かべながら振り向くさやかは震え抜くまどかを見つけるだろう。

 

円環のコトワリとしての記憶を取り戻したため、ワルプルギスの夜の正体が分かるのだ。

 

「ワルプルギスの夜…父さんから聞かされた事がある。悪魔崇拝を行う闇のサバトだって…」

 

「牧師だった佐倉さんのお父さんは…ワルプルギスの夜について知っていたのね…?」

 

「牧師としての知識だけだがな。ワルプルギスの夜は恐ろしい魔女達の秘密集会だったんだ…」

 

「ハロウィンのような楽しいイメージで考えてきたのに…私達は何も知らなかったのね…」

 

悲鳴を上げていく円環の軍勢であったが、戦闘中のアラディアから念話が全員に送られてくる。

 

<<魔女達よ…崇めよ…我の麗しき母神を称えよ。月の女神であり狩猟の女神を崇め奉れ…>>

 

戦闘中であるアラディアの顔つきは常軌を逸脱しており、高揚しながら頬を染める。

 

神として形を得て初めての全開戦闘を行える興奮のせいで隠してきた欲望を撒き散らしていく。

 

<<同時にバアル神を称えよ!ゼウス様を崇めよ!牛神の系統を司る神々を崇め奉れぇ!!>>

 

アラディアの欲望が形となった存在こそ、彼女が解き放った新たなるワルプルギスの夜の正体。

 

青と白で彩られた美しいドレスを纏う麗しき大母神ディアナ(アルテミス)を称えろ。

 

ゼンマイの中で磨り潰す子供達の生贄を沢山用意しながらバアルとゼウスを崇めろ。

 

<<魔女共がもたらす悪魔崇拝によってゼウス様もお喜びになられる!我も報われよう!!>>

 

子供達に火を点けろ、廻るように踊り狂いながら歌い、狂乱の如く乱交し、子供達の肉を喰え。

 

新たなる大魔女ワルプルギスの夜とは、魔女達の秘密集会を表す概念存在。

 

その秘密集会で繰り返されてきたのはアラディアの欲望を満たすための悪魔崇拝儀式であった。

 

<<アハハハハハハハハッッ!!!>>

 

円環のクイーン・オブ・マッドネスの狂気を受け継いだ真ワルプルギスの夜がついに動き出す。

 

巨体の回転速度が徐々に上がっていき、大魔女の周囲には使い魔の代わりに無数の炎が浮かぶ。

 

炎の中で形になっていくのは炎のバフォメット像であり、燃える像が周囲の守りを固めていく。

 

魔女達のサバトを統括してきたバフォメットとバアルとは繋がりがある。

 

バアル崇拝は性的興奮を儀式に取り入れるものだと聖書の列王記に記されているのだ。

 

バフォメットの頭部は牛神を表し、蛇の男根や女性の乳房はバアルと妻のアシェラトに繋がる。

 

バアル崇拝を撒き散らす真ワルプルギスの夜を守護するのはバアルの儀式で使われた像だった。

 

<<さぁ、廻るがいい!!まだ足りぬ…もっと生贄を…もっと子供達の生贄を用意しろ!!>>

 

「不味いぞ…あの悪魔が最高速度に達すれば止められん!!」

 

「超巨大洗濯機に放り込まれる前にケリをつけてやらぁ!!」

 

「行クゾ!!我ラ悪魔ノチカラ…魔法少女共ニ見セテヤロウゾ!!」

 

筋斗雲に飛び乗ったセイテンタイセイに続きケルベロスに跨ったクーフーリンも続いていく。

 

廻り続ける真ワルプルギスの夜の力によって商業区のビルの数々が千切れながら宙に浮かぶ。

 

そのビルに飛び乗ったケルベロスに跨ったクーフーリンはセイテンタイセイと共に勝負に出る。

 

「どうやら…争い合っている場合ではなくなりましたね」

 

背後から隣のタルトの声が聞こえて驚いた円環のリズが振り向けば傷だらけの造魔達が立つ。

 

「ビックリさせられるわね…同じタルトが2人もいると、どっちがタルトか分からなくなるわ」

 

「どちらでもいいじゃないですか?私はあれを放置出来ませんし、隣のタルトも同じでは?」

 

「同じ気持ちです。どうやら…アラディア様はご乱心なされた様子。臣下として止めたいです」

 

「それでこそ忠臣よ。命を懸けて君主の暴走を諫めるのも臣下の務めなのよ」

 

「三国志時代の魔法少女も同じ事を言ってたわ。袁紹も劉備も臣下の言葉を聞くべきだったと」

 

「私達は…暴走した袁紹や劉備についていった兵隊と同じでした…。もう間違いません…」

 

自尊心を満たしたいために愚かな戦いをしていたのだと気が付いた円環のタルトは猛省する。

 

自己嫌悪によって再び暗い闇を抱えていた時に近寄ってきた者が手を持ち上げて握ってくれる。

 

「誰でも失敗するものです、恥ずかしいことではない。みんな同じなんです」

 

「ジャンヌ……」

 

「まどかさんも失敗するし貴女やアラディアも失敗する。お互い様なんだし元気出して下さい」

 

笑顔を向けてくる自分自身のコピーの言葉によって円環のタルトの心に光が戻っていく。

 

本物の心にも光を与えてくれる存在こそ、ペレネルが生み出した新たなるタルトの光なのだ。

 

「フフッ…コピーだけど、この子もまた本物よ。タルトと同じ温かい光を内に宿してるわ」

 

「勿論よ。私の自慢のタルトですもの」

 

「あら?言うじゃない、私?私のタルトだって自慢のタルトよ」

 

向かい合いながらバチバチと火花を飛ばし合うダブルリズに向けてタルト達が微笑んでくれる。

 

「さぁ、貴女達の力を解放して下さい。私の力とは貴女達の力をコピーしたものなのです」

 

「本物の光を見せて頂戴。もっとも、うちのタルトの光だって負けてないんだから」

 

円環のタルトとリズが顔を向け合いながら頷き、リズがタルトの左手に手を置いてくれる。

 

すると円環のリズの姿が消失していき、円環のタルトの体が眩い光となっていく。

 

光の中から現れた存在こそ、造魔のタルトが辿り着いた光の戦士のオリジナルなのだ。

 

「全力を出し続けていいわ。造魔であり悪魔の私はイレギュラー化した貴女達を救える者よ」

 

造魔のリズはタルト達の影の中に潜り込んでいき、どちらの影からでも出現出来る準備をする。

 

「行きましょう、タルト。私達は2人のリズに守られている…恐れる者などありません」

 

「私達ならやれますよ、ジャンヌ。フフッ…まるで鏡と一緒に戦ってるみたい♪」

 

「貴女の輝きに負けないぐらい私も輝いて見せます。さぁ、ジャンヌ・ダルクの出陣です!!」

 

動き出すジャンヌの背中を呆然と見つめることしか出来ないガンヒルトの元に姉がやってくる。

 

「もうこんな争いは終わりだよ!今はあの大魔女をどうにかしないと大変な事になる!!」

 

「ね…姉さん…アラディア様はどうしちゃったのよ…私達に正義を与えてくれた御方なのに…」

 

「そんなの分からない…だけど、分かることはある。あれを倒さないと…この国が滅びる!!」

 

「私…姉さんが選んだ道は未だに認められない。だけど…この状況だって認められないわ…」

 

「だったら…この状況を片付けよう!それから話し合おうよ…あたしは妹と戦いたくないの…」

 

「姉さん……うん、そうだね。今は…大魔女の相手をする方が先みたいだから」

 

オルガとガンヒルトの姿を見た水名露と千鶴も頷き合い、立ち上がる侍達に号令をかける。

 

「巻き上げられた建物の中には民衆がいると思うわ!私達は民衆のために戦うべきよ!」

 

「武士道が発達した江戸時代の侍は死ぬことと見つけたりなんだろ?だったら今が死に時だね」

 

「その通りよ。智を研き徳を修めて人間高尚の地位に昇ることが武士道…見失うところだった」

 

「そうだね…アタシ達に足りなかったのはきっと…()()()()()()()()()()()()だったんだよ…」

 

タルト達の背中に騎士魔法少女達も動き出し、侍やヴァイキング達も動いてくれる。

 

彼女達は曲がりなりにも正義を求めた魔法少女達。

 

突然現れた大魔女によって何の罪もない人々が虐殺される光景を許す者達ではなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さぁ、私達も行くわよ!!」

 

「たとえ円環のコトワリを裏切っても…あたしは人々のために戦う魔法少女だ!」

 

「あたしはそんなさやかを客観視してやるために傍にいてやらねーとなぁ」

 

「行こう、みんな!ほむらちゃんや嘉嶋さんも戦ってる…わたし達だって負けてられない!!」

 

天空を支配するバアル神の如く全てを飲み込む突風にさせまいと見滝原の魔法少女達も動く。

 

両手を合わせたマミが解き放ったのは膨大な数のリボンであり、次々と編まれていく。

 

リボンが編み上げたのはベタ踏み坂の如き道であり、巻き上げられたビルと繋がっていく。

 

同時に大魔女にもリボンが絡みついていき、マミから受け取ったリボンを掴む者達が引っ張る。

 

「フッ!!ハッ!!ホッ!!フッ!!ハッ!!ホッ!!」

 

マミから受け取ったリボンを掴んで引っ張るのはヴァイキング魔法少女達。

 

ヴァイキング・チャントを叫びながら団結し、剛力を用いて大魔女の回転を止めようとする。

 

巨大なヴァイキング船すらかついで山を駆け上れる彼女達であるが相手が悪過ぎるようだ。

 

護衛として浮かぶ無数のバフォメット達が火球を放ち、大魔女に絡まったリボンを燃やす。

 

拘束を解かれた大魔女の体はさらに回転を速めようとしているようだ。

 

「登れぇぇぇぇーーーッッ!!!」

 

水名露が刀を構えながら叫び、次々と侍魔法少女達がリボンの坂道を登っていく。

 

侍達と並ぶように登っていくのは騎士魔法少女達であり、放たれた火球を盾で防いでくれる。

 

騎士達の援護を受ける侍達が巻き上げられたビルに入っていき、民衆を救出していく。

 

リボンを捨てたヴァイキング達は魔法弓を生み出し、隊列を組んで救出部隊を掩護してくれる。

 

それぞれが己の役目を果たす中、ビルと共に浮く瓦礫を足場にした悪魔達も仕掛けていくのだ。

 

「回転を上げさせるわけにはいかん!!」

 

跳躍移動を繰り返すケルベロスに跨るクーフーリンは槍を構えながら魔法を放つ。

 

ランダマイザ効果によって攻撃・防御・命中率・回避率が下がるのだが大魔女も魔法を行使。

 

「奴め!!悪魔の魔法まで使えるというのか!?」

 

デクンダを行使してデバフ解除を行った真ワルプルギスの夜が反撃を放つ。

 

赤い口紅が塗られた巨大頭部から業火が吐き出され、薙ぎ払うようにしながら放ち続ける。

 

しかしケルベロスの耐性によって炎は反射されるが大魔女は炎を吸収したようだ。

 

「奴ニモ炎ハ通用センカ」

 

「だったら!物理的に殴り壊してやるさぁ!!」

 

クーフーリンの横を突っ切って飛んできたセイテンタイセイが如意棒を振り上げる。

 

気合を込めた一撃を放とうとバフォメット達の火球を超えながら真ワルプルギスの夜に迫る。

 

しかし相手はバアル崇拝を撒き散らすために生み出された新たなるワルプルギスの夜。

 

その力の中にはバアル神と同じ天空を司る魔法の力が宿っていたのだ。

 

「グワァァァァァーーーーッッ!!?」

 

真ワルプルギスの夜に迫るよりも先に天空から轟雷が落ち、セイテンタイセイは直撃する。

 

『真理の雷』の一撃によって筋斗雲から零れ落ちた彼の体は地上に向けて落下したようだ。

 

「くそっ!!なんて苛烈な攻撃だ!!近寄れん!!」

 

真理の雷の轟雷が大魔女の巨体の周囲に落ちていき、雷の壁とする。

 

クーフーリンやケルベロスの魔法攻撃の一撃や地上の魔法少女達の攻撃を撃ち落としていく。

 

高速で接近する飛翔体を自動迎撃していくその力はまさに夜の女王の盾といえる脅威であった。

 

「死中にこそ活がある!!覚悟を決めろ、ケルベロス!!」

 

「ミナマデイウナ!!我ハイツデモ覚悟ハデキテイル!!」

 

魔槍ゲイボルグを構えながら気合を溜め、ケルベロスと共に突っ込んでいく。

 

瓦礫に飛び乗りながら迫る相手に意識が向いた大魔女の体からショックウェーブが放たれる。

 

<<グァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

雷に焼かれながらもクーフーリンは魔槍を投げ放つ。

 

赤黒く光る光弾となったゲイボルグの一撃がバフォメット達を超え、心臓部位に突き刺さる。

 

しかしワルプルギスの夜は生物ではない舞台装置のため、心臓など存在していなかったようだ。

 

地上に落ちていくクーフーリンとケルベロスであったが口元には微笑みが浮かんでいる。

 

「奴の注意は逸らしたぞ……決めてみせろ……魔法少女達よ」

 

クーフーリンの一撃によって大魔女の高速回転の速度が弱まっていく。

 

真ワルプルギスの夜の体内は時計塔の内部の如くゼンマイだらけであり精密機械と同じ。

 

ゲイボルグという異物がゼンマイ装置の間に挟まり、機械全体の動きに支障をきたすのだ。

 

<<後ろががら空きだよ!!>>

 

さやかの叫びに気づいた真ワルプルギスの夜が後ろに振り向こうとするが遅過ぎる。

 

大魔女サイズとはいかなくとも100メートル近い人魚の魔女の剣が振り落とされていく。

 

人魚の魔女もまどかの回復魔法によって死にかけた体を元に戻していたようだ。

 

<<アァァァァーーーーッッ!!!>>

 

巨大な左腕が切断され、地上に落ちていく。

 

しかし大魔女の周囲は雷の盾で守られていることもあり、人魚の魔女は雷に打たれてしまう。

 

「くぅ!!!」

 

電気ウナギに触れた魚のようになった人魚の魔女の肩にはさやかと杏子が立つ。

 

彼女達は頷き合い、決死の覚悟で大魔女の下半身である巨大ゼンマイの上に飛び移るのだ。

 

「なぎさが寝てる間に大変になってたのです。だけど…さやかを傷つける奴は許さんのです!」

 

人魚の魔女と同じく空に浮遊してきたのは百江なぎさの魔女であるお菓子の魔女。

 

頭の上に乗っかるなぎさの後ろにはまどかと円環の魔法少女達が立つ。

 

今度は不覚をとらないと巨体を振り向けた大魔女がショックウェーブを放射しようとする。

 

<<そうはさせないわ!!受けてみなさい…特大のティロ・フィナーレを!!>>

 

地上から迫ってきた巨大砲弾の一撃がゼンマイに当たったために大魔女は体勢を崩す。

 

地上に目を向ければリボンで編まれたマスドライバー鉄骨に沿うように伸びた巨大砲身の影。

 

その巨大な砲はまるでナチスが開発したV3高圧ポンプ砲を彷彿とさせる大きさであった。

 

「決めちゃいなさい!夢と希望を守る魔法少女こそ、本来の私達の姿で在りたいわ!!」

 

巨大砲身の上で立つマミの言葉に頷いた円環の魔法少女達が最大の力を解放してくれる。

 

お菓子の魔女から飛び降りて宙に浮かぶ瓦礫に立った彼女達が放つのはマギア魔法の一撃。

 

「これはまことか幻か…答えはその身に聞くがいい!!」

 

「火宅の子供達よ!憎しみがその炎となるなら、私が消してみせる!!」

 

「にちりんのざんこうよ!われのもとにあつまり、いぶをしめせ!!」

 

「賽は投げられました!運命は決まっています…我らの勝利なのだと!!」

 

エボニー、ヘルカ、トヨ、アマリュリスのマギア魔法が次々と放たれていく。

 

迎え撃つ護衛のバフォメット達を霧が包み込み惑わす『ホルスの眼差し』の惑わし。

 

燃え上がる炎に無数の光がぶつかって消えた直後に拘束する『転輪羅刹のサーサナ』の慈悲。

 

複数のマガタマから放たれる火の塊が次々とバフォメットにぶつかる『日輪片の句珠』の炎。

 

トドメとして出現した巨大なサイコロの爆発によって葬る『ルビコンの決択』の光。

 

それぞれのマギア魔法の連携によって護衛のバフォメット像が消え去り、大魔女への道が開く。

 

「へっ…やるじゃねーか。せっかくだ、テメェらも行ってこい!!」

 

傷だらけのセイテンタイセイの意思を汲み取ったオルガや露達も動き出す。

 

振りかぶりながら伸ばした如意棒の柄に飛び移り、空に向けて豪快に放たれていく。

 

護衛を失った大魔女は魔力で浮かしていたビルの数々を彼女達に目掛けて落としてくるのだ。

 

「戦乙女の力が入ってくる…貫き通してみせる!あたし自身を!!」

 

「目の前に立ちふさがるものが何であろうと邪魔はさせない…全てを排除する!!」

 

「二度は見られない技よ!!」

 

「逃がしゃしねえ!!地獄への牢獄を編み出して、怒りの業火で焼き尽くしてやる!!」

 

翼が生えたオルガのランスが光を放ち、突進してビルを砕く『ワルキューレの閃騎槍』の流星。

 

半身に黒い入れ墨が浮かんだガンヒルトが狼の業火を放つ『マーナガルムの圧搾牙』の業火。

 

2人が消し飛ばした後方から迫ってくるビルを一刀両断にする『明鏡止水の幾太刀』の斬撃。

 

真っ二つになったビルに絡みつく鎖分銅が炎を纏い、炎の鎌で葬る『炎獄阿修羅』の炎獄。

 

それぞれのマギア魔法の連携によって巨大質量攻撃を超えていった者達も空を戦場とするのだ。

 

<<アハハハハハハハハッッ!!!>>

 

腕を切り落とされてなお健在な大魔女が再び高速回転に至ろうとしていく。

 

巨体からは禍々しいオーラが噴き上がり、自分が浮かぶ空域に目掛けて冥界破の衝撃波を放つ。

 

<<キャァァァァーーーーッッ!!!>>

 

円環の魔法少女達が立つ瓦礫ごと吹き飛ばし、回転が増すほどに周囲が暴風と化していく。

 

「うわわわわ!?もう直ぐ巨大な竜巻になっちゃいそうなのですーーッッ!!」

 

お菓子の魔女を操るなぎさは必死に魔女を掴みながら持ち堪えようと足掻く。

 

地上の円環の軍勢も風に巻き上げられそうになるが、起き上がった人魚の魔女が体を盾とする。

 

人魚の魔女の下に集まった魔法少女達は手を取り合って必死に耐えようとする。

 

そんな時、高速回転の勢いが弱まってきたために暴風が収まってくれたようだ。

 

「風が弱まってくれた……もしかして、さやかちゃんや杏子ちゃんのお陰なの!?」

 

なぎさと共に魔女の体に掴まっているまどかの予想は的中する。

 

大魔女内部の空間では暴れまわるさやかと杏子が次々とゼンマイ装置を壊していく。

 

「こなくそぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

 

舞台装置の中で暴れまわるさやかの下では転がっているゲイボルグを杏子が拾ってくれる。

 

「あたし達が来るまで頑張ってくれたようだな…ちゃんと槍一郎に返してやらねーと」

 

持ち主を選ぶ魔槍であるが、杏子に拾われても不思議と暴れようとはしない。

 

杏子もまた魔槍に選ばれる可能性を持つ者かもしれないが、今はそれを考えてる場合ではない。

 

「うおわぁぁぁーーーーッッ!!?」

 

調子こいて暴れまわってたせいで下の階にいた杏子の頭上には巨大ゼンマイが落ちてくる。

 

慌てて避けた杏子は怒りながらさやかに文句をブーブー言ってくるようだ。

 

「アハハハハ♪めんごめんご♪」

 

「まったく…さやかは本当に危なっかしいぜ。へへ…ずっと傍で見守ってやらねーとなぁ!!」

 

魔槍ゲイボルグを振り回した杏子もさやかに負けまいと次々とゼンマイ装置を壊してくれる。

 

胴体内部に納められた舞台装置を壊されたことで真ワルプルギスの夜の力が弱まっていく。

 

それでも廻り続けることしか出来ない愚者は周囲を飛んでいるお菓子の魔女に狙いをつける。

 

ショックウェーブを放とうとするのだが、頭部に生えた二本角の影から何者かが現れる。

 

影を操り真ワルプルギスの夜の頂上に現れたのはダブルタルトの姿なのだ。

 

「さぁ、貴女もこれを使って下さい!!」

 

円環のタルトが右手を持ち上げながら出現させたのは生前の彼女が使った旗槍。

 

ジャンヌ・ダルクを象徴する武器であり、円環の旗が美しくはためいていく。

 

「コピーに過ぎない私なんかが…本物のジャンヌ・ダルクの象徴に触れてもいいんですか?」

 

「何を言ってるんです?本物とか偽物とか気にする必要がありますか?」

 

「で、ですが……その……」

 

「貴女はペレネルが残してくれた最高の私です。胸を張って一緒に使って下さい♪」

 

本物の笑顔の光に触れた造魔も笑顔を浮かべながら頷き、左手で旗槍を握ってくれる。

 

そんな彼女達を見守るリズ達もまた彼女達と共に微笑み、この一撃を放つ力を貸してくれる。

 

「おい、さやか!!上の方から凄い魔力を感じるぞ!!」

 

「げぇ!?これは逃げ出すべき状況だけど…出口はどこだっけ?」

 

下の階を見てみれば、テンション上がったさやかのせいで出口がゼンマイで潰されている。

 

「トホホ……あたしって、やっぱりバカ……」

 

<2人とも、避けて下さい!!>

 

タルト達の念話が聞こえたさやかと杏子が大慌てで飛びのいてくれる。

 

2人の聖女が放つ一撃こそ、彼女達を象徴する一撃となるだろう。

 

「「これで終わりです!!ラ・リュミエール!!!」」

 

旗槍の石突部分が大魔女の頭部に突き刺さり、極大の光を放っていく。

 

<<アァァァァーーーーッッ!!?>>

 

光の本流が真ワルプルギスの夜の頭部から真下のゼンマイ装置までを貫通する程の一撃と化す。

 

地上に直撃した光の本流によって巨大な穴が開く程の一撃となったのだ。

 

「おい、さやか!上の連中のお陰で逃げ道が開いてくれたぞ!」

 

「これはラッキーだね!三十六計逃げるに如かず!!ってね♪」

 

「ほんと、さやかは脆いようでたくましいよな……」

 

タルト達が開けてくれた大穴を使ってさやか達は下の階へと降りながら逃げようとする。

 

彼女達の一撃によって体勢が崩れていく大魔女から脱出するため、タルト達も走っていく。

 

頭部から大きく跳躍しながらトドメの一撃を放とうと振り返った時、巨大な頭部が口を開ける。

 

「まだ攻撃する余力があるのですか!?」

 

報復の業火が口から放射され、タルト達を飲み込もうとする。

 

そんな時、円環のタルトは頼れる仲間の魔力を感じた方角に視線を向けるのだ。

 

「えっ!?」

 

造魔のタルトが驚きの声を上げれば、自分達の前方から迫る業火が消滅していく。

 

彼女達を守るように飛んできたのは両手持ちメイスの槌頭部分であり、炎を消滅させてくれる。

 

さらに飛んできたのは火竜のブレス放射ともいえる程の巨大な業火の一撃。

 

彼女達を守った槌頭部分が消失した後の炎を横から押し流してくれたようだ。

 

ゆっくりと空中落下していくタルト達が目にした方角には瓦礫の上に立つ魔法少女達がいる。

 

巨大な銃とフレイルのような武器を持つ者達こそペレネルの屋敷の絵画に描かれた者なのだ。

 

「にょわっほほほ!とんちき騒ぎが収まったから出てきたものの、おかしな光景が見えますわ」

 

「あわわ…タルトが2人!?タルトが2人もいるなら…片方は私が貰ってもいいですよね!?」

 

金髪をポニーテールにした赤い魔法少女が纏うのはドラゴン騎士団の紋章が刻まれたマント。

 

隣の青髪魔法少女は貴婦人ほどではないが整った身なりをしたメイドのようだ。

 

現れたのは英雄と共に戦争を超えたエリザ・ツェリスカとメリッサ・ド・ヴィニョルであった。

 

「あれがエリザさんとメリッサさんなんですね…マスターが残した絵でしか知りませんでした」

 

「私の最高の仲間達です…。エリザの忠告に従っていれば…私は正義に振り回されなかった…」

 

「彼女は神聖ローマ帝国の皇女様ですし…扇動手口に気が付かれてたのでしょうね」

 

タルト達の活躍によってバアル崇拝を撒き散らさんとした大魔女も終わりが近づいていく。

 

真ワルプルギスの夜を生み出したのは自分の半身であるため、まどかは決意を示すのだ。

 

「なぎさちゃん、タルトさんやさやかちゃん達を回収してあげて」

 

「まどかはどうするのです?」

 

「わたしは行ってくる。あの魔女はわたしの半身が生み出した存在…だからわたしの責任なの」

 

お菓子の魔女から飛び降りたまどかは浮かんでいたビルの上に着地する。

 

真横に浮かんだビルを足場とした彼女は円環のコトワリとして終わりを与えようとするのだ。

 

そんな時、体勢を崩しながら高度を下げていく大魔女の背後にアラディアの影が浮かんでいく。

 

<<何故だ!?何ゆえ我を拒むのだ!?鹿目まどか!!>>

 

<アラディア…こんな事はもうやめようよ。こんな事をしても…貴女のママはきっと喜ばない>

 

<<ま…まさか…我が動いていたことに汝は気が付いていたのか!?>>

 

<貴女はわたし…だから新しいワルプルギスの夜を生んだのもわたし…だからこそ終わらせる>

 

目を瞑った後、両目がカッと開く。

 

その目はアラディアと同じ金色の瞳となり、髪の毛も背中に向かって伸びていく。

 

円環のコトワリとの繋がりが強固になった事で彼女もまた女神としての力を行使するのだ。

 

「バアル崇拝で犠牲になった子供達の苦しみは…わたしが撒いたもの…本当に…ごめんね…」

 

魔法の弓が杖の形となり、まどかは地面になったビルに突き立てる。

 

木で作られた杖から地中に伸びるようにした根がビルを突き破り、地上に突き刺さる。

 

根を張っていく光景はまるでバリスタを発射するためのアンカーを打つように見えるだろう。

 

杖の形が大弓へと変化していき、弓の先端部分の花が咲きながら淡いピンクの光を放つ。

 

極大の一射となる一撃の中には円環のコトワリとして懺悔の気持ちが宿るのだ。

 

「わたしを超える強大なアラディアを止められなかった…だけど、今のわたしは独りじゃない」

 

アラディアの如く魔力を放出するまどかの前方に円環の魔法陣が浮かぶ。

 

引き絞られた弦から魔法の矢が生み出され、贖罪ともいえる一撃が放たれるのだ。

 

「わたしも背負う…そして戦っていく。大魔王ルシファーやバアル崇拝は人類の敵だから!!」

 

引き絞られた矢が放たれると同時に足場のビルと地上の大地が砕けてしまう。

 

それ程までの強大な一撃が魔法陣に触れれば光の粒子が飛散するようにして分裂していく。

 

無数の光が真ワルプルギスの夜の体に次々と命中するごとに体が消滅していくのだ。

 

砕けた足場から落下していくまどかはゆっくりと地上に落ちていく。

 

伸びた髪の部分が千切れて舞う中、金色の目が遠い世界に君臨する神の姿に気が付いてくれる。

 

「あ……貴女は……」

 

世界が黒く染まっていく意識世界の中でまどかは夜の女王を表す月の光を目にするだろう。

 

青い月に照らされた姿をした女神とは、青と白で彩られたワルプルギスの夜のドレスを纏う神。

 

倒したワルプルギスの夜と酷似するその御姿こそ、大母神ディアナであるアルテミスなのだ。

 

<<…私の娘と自称する愚か者が迷惑をかけたな。そなた達に謝罪しよう…>>

 

「貴女が……魔女達が最初に崇めた……魔女達を照らす夜の女神様……?」

 

魔女に至る魔法少女達にとっては原点ともいえる崇拝対象が微笑みを浮かべながら消えていく。

 

意識が戻った彼女の体を受け止めてくれたのはセイテンタイセイの筋斗雲。

 

「おおーーい!!まどかーーーっ!!」

 

初めて雲の上に座る感覚に驚いているまどかに手を振るのはお菓子の魔女の上に立つ仲間達。

 

まどかに笑顔を向けてくれるさやかやタルト達の姿を見たまどかの目に涙が浮かんでしまう。

 

円環に帰りたくない我儘を叫び、バアル崇拝を撒き散らす罪を犯した自分を受け入れてくれる。

 

そんな最高の仲間達のためにこそ、笑顔を浮かべた鹿目まどかは人間として生きてくれるのだ。

 

「へっ……俺様達の活躍を魔法少女達に奪われちまったな」

 

筋斗雲を操るセイテンタイセイの横では彼と同じように空を見上げる仲魔達がいる。

 

「アレコソガ…魔法少女ノ虐殺者トシテ生キタ人修羅ヲモ倒セルチカラナノダロウ」

 

「条理を覆す可能性を秘めた存在……それこそが魔法少女と呼ばれる者達なのだ」

 

「さーて、後は円環のコトワリ神を倒すだけだな。決めてみせろよ…尚紀、ほむら」

 

本来のディアナ崇拝は歪められ、悪魔崇拝に変えられた闇のサバトこそがワルプルギスの夜。

 

魔女が集まる夜においては悪魔と魔女が乱痴気騒ぎを起こしながら子供達を殺してしまう。

 

バアル崇拝に歪められてしまってもなお、月の女神は魔女達に夜の光を与えてくれるのだ。

 

魔女達の心の中に魔法少女と同じ輝きが残る限り、ディアナは魔女達を照らす女神となった。

 




本当は怖いまどか☆マギカなノリになっちゃいましたね。
ワルプルギスの夜は調べるほど恐ろしいネタが出てくるので扱っててメガテン脳がフル回転してしまいました(汗)
イメージとしては漫画ベルセルクの断罪の塔編におけるグリフィス崇拝の乱痴気騒ぎの光景がバアル崇拝なイメージです。
乱交したり子供の肉が入ったスープ飲まされようとしてたし。
モズグス様は正義のヒーロー!
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