人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
2018年の夏となり、今年も去年と同じく炎天下となった東京。
ヒートアイランドに晒された池袋チャイナタウンでは熱気から逃れる人々が屋内施設で群がる。
池袋駅北口近くにあるビルの地下に店舗を構えるのは飲茶酒楼。
そこには現在、便利屋として赴いている尚紀の姿があった。
「今回の仕事は…東京から出張する事になりそうだな」
依頼人からの電話内容を頭の中で整理する。
「新興都市である神浜市に古くから根ざす互助組織…
互助組織と言われるとマフィアとして聞こえてくるだろう。
話す内容も他人に聞かれると不味い案件だと言われたので密談出来る場所を指定してくる。
「電話で依頼内容を言えばいいのに口頭で伝えると言われたな…俺を試したいのか?」
組織名からして中国の黒社会の看板みたいだと彼は感じている。
大陸の黒社会と通じる華僑組織なのかと考えていた時、一人の少女が店に来店してくる。
(東京では見た事がない学生服だな…)
髪のサイドにお団子ヘアを作り、後ろ髪は三つあみおさげにした青髪少女は店内を見回す。
歩きながら奥に座る彼の前に歩いてきて突然座り込んできたようだ。
「……お前が、カシマ・ナオキカ?」
「そうだ。お前が蒼海幇の使者か?」
「日本語発音難しいネ、ナオキで構わないカ?」
「好きに呼べ」
依頼人も訪れたようだが仕事内容を話すのかと思いきや、メニュー表を開き始める。
「…なんでメニュー表を見てるんだ?」
「私、この糞熱い東京まで来たから喉乾いたヨ。お前、
「…なぜ、俺がお前に茶をおごらないといけないんだ?」
「女の子にお金を出させる気カ?男として甲斐性無しもいいとこネ」
「……どういう理屈だ、それ?」
「それに会話の席に飲茶は必要なものヨ。オマエは社交という世界すら知らない男カ?」
「ハァ……好きなの頼めよ」
「すいません、
少しして店員が茶器と茶葉、それに沸かしたポットを茶盤に乗せて持ってくる。
「あ、大丈夫ヨ。私が自分で淹れるネ」
透明なお茶用ポットに沸かしたお湯を注ぎながら温めていく。
ポットが温まったら茶海にお湯を注ぎ温め、白い茶杯もそれを使って温める。
「…随分と手間暇かけた飲み方をするんだな」
「中国のお茶の歴史長いヨ。お茶は文化人だけでなく、庶民も楽しめる社交の華ネ」
「その茶文化も台湾や香港ぐらいでしか本場の味を楽しめない。歌舞伎町の医者から聞いたよ」
「文化大革命のせいヨ。お前そこそこモノが分かる男のようネ」
手間暇かけて淹れたお茶を彼女は飲み始める。
「うん…やはり涼性の茶葉は夏に合うヨ。甘く優しい香り……香港思い出すネ」
「香港で暮らしていたのか?どうりで茶文化に精通してるわけだな」
「私は日本生まれ。でも、父の都合で香港で暮らしてきたヨ。3年前に日本に帰郷したネ」
茶も飲み終え、身体の火照りもとれた少女は改めて向かい合う。
「私は蒼海幇の
「先ずは蒼海幇について聞かせろ。お前らはチャイニーズマフィアか?」
その一言を聞いた美雨は押し黙ってくる。
「俺は金には困っていない。大陸からの武器密輸や覚醒剤の横流しに付き合うつもりはねーよ」
「…お前、私達をヤクザだと思てたカ?随分失礼な奴ネ…」
誤解を解くため蒼海幇について便利屋に説明する事になるようだ。
蒼海幇とは中国生まれの日本人によって創立され、戦後の闇市から発展した組織。
第1世代、第2世代、第3世代のメンバーで構成されているという。
蒼海幇は長年日陰で活動を続け神浜の土地に根付き、地元の裏事情に通じる。
お陰で勢力も大きくなり、時には団結して街の危機を救う武闘派組織になったと聞かされた。
「……ただのマフィアじゃねーか」
「お前、最後まで話聞くヨ…。オマエの耳は面倒臭くなると餃子みたいに蓋が閉まるのカ?」
蒼海幇は地元の互助組織としての役割を果たしてると説明されたが、彼もこんな話を持ち出す。
「シチリア発祥のマフィアも最初はそうだったんだよ。だがな…集団は腐敗していくもんさ」
コロコロ支配者が代わる政権から自分達を守るためにマフィアが生まれたのが源流である。
しかし結局は暴力の陶酔感に溺れて腐り果てた歴史を尚紀は丈二から聞かされた男のようだ。
「…私達はそうはならないヨ。私達は…土地と地元住民を愛してるネ」
「地元を愛する価値観が余所者への排他主義に流れていったのが今のイタリアマフィアだ」
蒼海幇がそうならないとは限らないと言われた事に対して美雨も思うところがあるようだ。
「
神浜は新興都市なだけに数多くの新しい流入者が流れてくる。
中には黒い連中もいるのだと美雨は尚紀に伝えてくれる。
「暴力で叩き出そうとは思わないのか?黒い連中は善人の皮被りだから見分けがつかないだろ」
「出来る限り情報を集めてコトに当たているけど、見分けがつかないというのは本当ヨ…」
時既に遅しという事案もあり、今日はその件で訪れたという。
「ようやく話が見えてきたな。俺の依頼は、その黒い連中に関する事なんだろ?」
美雨は頷き、現在の神浜市に押し寄せてくる巨大な黒い影についての説明を始める。
「マフィアについて詳しいのなら、
「元は上海を支配していたマフィアだな」
今はもう散り散りになって壊滅したと彼は思っていたのだが、生きていたと聞かされていく。
「南凪区は海沿いに面した地。船の行き来が盛んな港が隣接してる…そこに問題が起きてるネ」
「青幇の影が南凪区の港にチラついているというわけか」
「狙いは恐らく、神浜に拠点を置くことネ。大規模な日本進出計画と考えて間違いないヨ」
「新興都市なだけに、日本の暴力団も手つかずの地か…」
暴力で絞め落とした鶏共が金の卵を生んでくれる都市、それが今の神浜市の状況なのだ。
「日本のヤクザだろうが、中国の黒社会だろうが、神浜を好きにさせるつもりは無いネ」
「青幇をぶちのめして来いってわけか?なぜお前達は動こうとしない?他力本願じゃねーか?」
「私だてぶちのめしてやりたいネ…でも黒社会の組織なだけに…全面抗争になりかねないヨ」
「血の海になると考えるのは妥当だろうな。それで東京の便利屋を生贄にしようってか?」
「この依頼を頼む前に…ちょと、お前に大事な話があるネ。お勘定を頼めるカ?」
含みがある言葉を気にしながらも、二人分払った尚紀は彼女と共に店を後にするのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
彼女の後ろをついていく彼だが、地面に落ちている小石を一つ摘み上げる。
「人に見られると不味いネ。この路地裏内で話したいから、先に行くヨ」
路地裏へと促され、先に入って歩みを進める。
人通りから離れた時、彼の背中に対して硬い物が押し付けられる。
「銃口を俺に向けて…何のつもりだ?」
「お前が相手する連中は…こういう獲物を使てくるヨ。死ぬかもしれないネ…」
「随分案じてくれてるようだな?だったら…魔法少女のお前が連中を倒しに行けよ」
それを告げた時、背中に銃口が強く突きつけられる。
「お前……私が魔法少女だと、なぜ気がついたネ?」
「俺は便利屋であると同時に探偵だ。裏の世界を見てきた俺は…お前らとも出会った事がある」
「私は魔法を使て武力介入するつもりは無いヨ。表の世界が相手なら、自分の拳を振るうネ」
「蒼海幇の実力者のお前が俺に対して直々に力を試してくれるというわけか?」
「さぁ、どうするネ?青幇に嬲り殺しにされるぐらいなら、ここで引導渡してやてもいいヨ?」
張り詰めた空気の中、両手を上げて降参ポーズをとっていく彼の右手が動く。
「痛っ!!?」
握った小石を親指で強く弾き、彼女の目の下に当てる。
怯んだ隙を突いて前に振り向き、反撃を開始。
左手で相手の銃を掴み、右手首を相手の持ち手に当てる。
銃を持った左手を捻じりあげ、手から離れた銃を奪い取り、彼女に向けて構える。
「…見事ネ。動きは完全にプロだたヨ」
「なんだこりゃ…?ガキの玩具の銃じゃないか?」
小学生でも買えるようなプラスチックの銃を握っている事に気がつく。
呆れた彼は路地裏に置いてあったゴミ箱に放り込んでしまう。
「お前の力…面白いヨ。こんな歯ごたえのある奴を見るのは、久しぶりネ……」
武術家としての血が騒いだのか、不敵な笑みを美雨は見せてくる。
左手を垂直に開き前に伸ばして構え、右手は胸の前に開いた状態で構えていく。
足を半歩引き、腰を落としながら拳法の構えを行う。
「詠春拳と似た構え方だな…?香港で暮らしていた時期に身に着けたか?」
「ルーツは同じでも、私の拳法はそれだけじゃないヨ。さぁ、お前も構えるネ!」
「俺のファイトスタイルは常在戦場。日常生活の姿そのものが…俺の構え方だ」
「ますます面白い男ネ!さぁ…行くヨ!!」
二人は互いに踏み込み、打撃の応酬を行う。
突きを躱し、手刀を肘で受け止め、肘打ちを肘打ちで返し、ローキックを蹴り足で止める。
ジャブを手首を用いて連続で捌き、肘の応酬を肘打ちで止めていく。
インファイトスタイルで互いが打撃を繰り返す。
(これ程の鉄壁…蹴り技は使えないな。狙うなら当身を入れて怯ませてだ)
(こいつ…ここまで私の技についてこれるカ!)
相手の突きを素早く掴み、小手返しを狙う。
美雨は素早く跳躍して一回転し、拗じられる手首を守りながら着地する。
突き・捌き・肘打ち・蹴り・掴み・払い…互いの激しい攻撃と防御の連鎖が続く。
打撃を払い、互いが半歩引き下がりながら睨み合う。
「お前…何者ネ!?拳法使える魔法少女相手にここまで戦える人間なんて…いるわけないヨ!」
「カンフー娘に絡まれてるただの便利屋件探偵だ。覚えとけ」
夏の暑さも容赦なく二人に襲いかかるが、暑さで疲弊する姿は美雨のみ。
顔は汗だらけとなり、額の汗が流れ落ちて片目を瞑る。
片目が塞がった側に素早い右フックが迫り、左腕の防御が間一髪間に合う。
「いい
固めた拳を開き、手首を回転させ美雨の手首に当てる。
半歩開いた右足も彼女の足元に踏み込む。
「お前ッ!?私相手に…
推手とは相対した二人がお互いの腕を触れ合わせ、決められた動作を繰り返す戦い方。
「俺と踊ってくれるか?」
「ナオキ……最高に気に入たネ!望むところヨ!!」
重ね合わせた互いの構えの中、空気が歪むほどの圧迫感を放ち、互いが一気に動きだす。
突き・肘・手刀打ち・裏拳、互いの腕が密着するワンインチ距離の攻防が繰り返される。
相手の打撃を互いに掌・手首・肘を使って受け流し、密着状態から離れず打撃の応酬。
右直突きを放つ尚紀の攻撃に対し、払い落としながら彼の体勢を崩す。
「もらたネ!!」
開いた頭部側面の軌道にトドメのハイキックが迫るが、彼の体勢が一気に下る。
「あら……?」
蹴りの回転運動の途中で突然視界が地面に向かって下がっていく。
フェイントだったと気がついた頃には片足を掴む相手に転がされていたようだ。
転がる彼女の背中に対して背骨を踏み砕く程の踵蹴りが迫るが、寸前で止められる。
「……見事ネ。私の…負けヨ…」
「技が体に染み込んでる証拠だ。隙があればトドメを狙うのはいいがフェイントに引っかかる」
「やられたよナオキ…お前の力、見届けたネ。青幇なんてメじゃないヨ」
「それと…最初から俺と戦うつもりなら…ミニスカートはやめとけ。俺も男だ…」
「あっ…!?み、見たのカ…スケベ!!」
顔を赤らめながら膨れている彼女に手を伸ばす。
差し出された彼の手を掴みながら美雨も起き上がっていく。
「お前、それ程の力…何処で身につけたネ?」
「説明が難しいな…中国拳法の世界じゃ神様と言われる猿に教わったんだよ」
「ふざけてるのカ?」
彼の脳裏にはかつての世界で鍛えてくれた師であり仲魔、セイテンタイセイの姿が浮かぶ。
「決めたネ。怒られるけど、私もついていくネ。お前の戦いから学びたいこと出来たヨ」
「なら連絡先ぐらいは聞いてもいいのか?それとも男に個人情報を教えるのは嫌か?」
「LINEを教えるのは嫌だけど、メールならいいヨ」
「あのチャットアプリはセキュリティ面を俺は信用してない。メールを教えてくれ」
「分かたネ。変態ストーカーみたいなメール送てきたら、メアド変えるヨ?」
「誰がするかよ…」
メアドを教えてもらった後、二人は路地裏を後にする。
「用事が済んだなら早く神浜に帰った方がいい。東京の魔法少女は…余所者に容赦しないぞ」
「それだけのリスクを犯しても、ここまで来た甲斐があたネ」
美雨を駅まで送った後、連絡先メールがちゃんと届くのか確認する。
メールの返事を確認し、神浜市で落ち合う日も決まったのであった。
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神浜市南凪区の夜の駅構内を歩くのは尚紀の姿であり、外を目指す。
「神浜市か…初めて訪れる地域だな」
パーカージャケットとデニムパンツ、黒い帽子を被り目立たない私服姿を今日はしている。
「ナオキ、ついたカ」
駅から出てくる彼に対して手を振る少女は美雨である。
パーカージャケットに長い後ろ髪を入れ、ジーンズを履いた姿だったようだ。
「今日は動き易く目立たない服装だな?」
「これは蒼海幇の仕事で荒事の時に着る仕事着ネ」
指抜きの黒革手袋をギュッとはめ込み、ドヤ顔を見せてくるが彼はスルーしてくる。
「神浜市には初めて来たから土地勘がないんだ。南凪区の港まで案内してくれるか?」
「仕事じゃなければ観光案内してやれたけど、今日は無理ネ。ついてくるヨ」
二人はバスに乗り込み、港を目指す。
「神浜港か…その港がチャイニーズマフィアの根城にされているのか?」
「神浜湾海運会社の社長や取締役員達の子供が誘拐されたヨ」
子供達を人質にされ、港を完全に掌握されていると聞かされていく。
「国交省の港湾法改正で民間主体の物流を取り扱えるようになったが…裏目に出たな」
「神浜湾海運会社は、この街の海運を管理している企業ネ。だからこそ狙われたヨ」
「海運会社か…国際物流はコストも安く大量に物を運べる海運が大半だが、問題もある」
「そうヨ…物流を管理しているのなら、その企業を掌握すれば…何を運んでも隠せるネ」
「被害にあった連中は警察に真実を話す事など出来ないだろうな…」
「子供の失踪届けしか出せなかたネ…警察も宛もなく捜査範囲を広げるばかりで無駄足ヨ」
「家出はよくある案件だしな…まともに対応してくれないだろう」
「海運会社を掌握した連中の目的は…おそらく麻薬ビジネスネ」
香港から海運される阿片でビジネスを行うつもりであり、神浜港を拠点にして活動するという。
「この街にも新華僑は大勢来ているはず…密売人共がこの街を麻薬で染めていくぞ」
「そうはさせないネ!急ぐヨ!!」
二人は急ぎ足で港地区に入る。
港はコンテナ街となっており、現在はチャイニーズマフィアの縄張りとして機能している。
「この港を我が物顔で占領して遊んでやがるな…コンテナも酷い落書き塗れだ」
「それに遠くで聞こえるのは…バイクの音カ?チンピラ共に目に物見せてやるネ」
「迂闊に動くのは不味い。見つかったら人質に危害を加えられるかもしれないからな」
「見回り共がよく見える場所…あそこの巨大クレーンからなら見えそうネ」
「行ってみるか」
闇夜に紛れながらガントリークレーン上部に移動する。
上まで登りきった二人は見回りの配置を観察していく。
「我が物顔で港を荒らす連中がウジャウジャいる…全員ぶちのめしてやるヨ」
美雨は黒革手袋をギュッと嵌め込み直す中、尚紀は革手袋を愛用する理由が分かるようだ。
「それを身に着けてるって事は、悪党共なら容赦なく顔面を殴るタイプだな?」
「裸拳だと殴た時に歯が砕けて拳に突き刺さるネ。指を抜いてるのは服を掴み易くするためヨ」
「愛用品ってわけか」
「お前は裸拳で大丈夫カ?」
「俺の拳はドラゴンの鱗よりも硬い」
「強がて怪我してもしらないヨ」
クレーンに二人がいる事にも気づかず、見回りの男達が下を通過していく。
話し声や笑い声も聞こえてくるが、中国語なので尚紀には分からない。
「お前を連れてきて正解だった。俺は連中の言葉は分からないし、香港育ちが役に立ちそうだ」
「聞こえてきた言葉は広東語ネ。私の故郷の言葉ヨ」
「とりあえず、手近な奴を尋問してみるか。お前らのボスは何処にいるって伝えてくれ」
「任せるヨ」
二人はスカーフを口に巻き、美雨はパーカーを頭に被る。
素性を隠した二人が静かに行動を開始していくのだ。
♦
積み上げられたコンテナ通り。
ズボンの後ろに銃を押し込んだチンピラの一人が歩いてくる。
コンテナ通りを右に曲がろうとした時、奇襲攻撃を浴びせられる。
「ハァッ!!」
「
手の甲を鞭打として打ち込み、怯んだ相手に
コンテナの上から飛び降りた尚紀が背後に回り込み、膝関節に蹴りを入れて倒し込む。
首を両腕で締め上げて拘束し、美雨に尋問を任せる。
「
「
美雨に唾を吐きかけるチンピラの首をさらに締め上げる。
絞め落とされかけたチンピラは観念し、ボスの居場所を喋った後は容赦なく絞め落とされる。
「…行くぞ」
二人はコンテナの影に潜みながら移動し、見回りのチンピラ達を影に引きずり込む。
マフィアメンバー達を無力化させていき、ボスがいる倉庫に向かって進んでいく。
「あそこがそうみたいだな…。火を焚いたドラム缶の周りで馬鹿騒ぎしてやがる」
ボスがいる倉庫前ではオフロードバイクで遊ぶ複数のチンピラ達の姿が見える。
「正面からは不味いネ。上から侵入するヨ」
倉庫の上に登るためにコンテナの上に二人は上り、そこから屋根の天窓まで跳躍する。
「本当に何者ネ?この距離ジャンプ出来る人間なんて…お前、映画のアクションスターカ?」
「……かもな」
持ち込んだ粘着テープを天窓に貼り付け、音が目立たないように割る。
破片をテープで取り除き、内側をこじ開けて中に入っていく。
天井の鉄骨部分に着地して下の様子を伺うと10人のマフィア連中が見える。
「行儀悪く酒瓶やタバコの吸い殻塗れにしてるヨ…あの汚いソファーに座るのがボスカ?」
「丁度いい。連中が尻尾を表す状況証拠を録音しよう」
「録音道具あるのカ?」
「俺は探偵もやってる。職業柄ボイスレコーダーはいつも所持してるんだよ」
懐から取り出したボイスレコーダーのスイッチを入れ、様子を伺う。
「
「
「
「……と言てるヨ、あいつら」
「証拠は抑えたぞ。これは立派な刑事事件だ…後は警察が青幇の首を締め上げてくれる」
二人が天窓から逃げようとしたが問題が起きてしまう。
「あっ!?」
海風で錆びついた鉄骨部分を踏みつけた美雨が破片を落としてしまったようだ。
「
「チッ!仕方ないネ。10人程度なら増援呼ばれる前に仕留めれるヨ!」
美雨は下に飛び降り、拳法の構えを行う。
「ったく……スムーズに事が運ばないもんだな」
尚紀も下に飛び降りて美雨の後ろに着地。
互いが半歩足を引き、腰を落としながら周りの敵に備える。
「懐かしいな。誰かに背中を任せられる感覚を感じるのは久しぶりだ」
「私の背中、お前に預けたヨ…ナオキ!」
「
「よくもこの街を荒らしてくれたネ…容赦しないヨ!!」
蹴りを膝で止め、殴りかかる外側に美雨は潜り込みながら低い体勢で右肘を顎に打ち込む。
「熱くなるな、集中しろ」
バットを振り上げ襲ってくる相手の横を歩くように尚紀は潜り、右手刀を喉に打つ。
「言われなくても分かてるネ!」
刃物で斬りかかる相手の懐に背を低くして潜り、腰で浮かし投げ飛ばした後に顔を踏みつける。
「だったらいい。手早く片付けるぞ」
銃を抜いて構える銃身を尚紀は左手で払い、右手で相手の手首を捻りながら金的を蹴り込む。
「
次々に倒されていく仲間に恐れをなしたのか、ボスは外の連中に声をかけて中に呼び込む。
倉庫の中に次々と入っていくのはバイクに跨るマフィアメンバー達。
囲むようにバイクを走らせ、鉄パイプを地面で擦らせながら威圧してくるが二人は冷静である。
「ヘッ、面白い事になってきやがるな」
「お祭りは騒がしい方が丁度いいネ。お前もノリが分かる奴で嬉しいヨ」
背中を互いに預け合う尚紀と美雨はチンピラ達に対して拳法の構えを行う。
「何人倒せたか競うか?」
鉄パイプを振りかざして迫るバイクに対して左手首で止め、右手で喉を掴み地面に叩きつける。
「面白いネ!私が勝たら、杏仁豆腐おごるヨ!」
上半身を下げ、片手を地面に付きながらハイキックを相手の顔面に浴びせて倒し込む。
「「ハァァッ!!」」
背を合わせた二人が同時に低い体勢で後ろ回し蹴りを放ち、迫る二人を蹴り落とす。
「
手に負えない連中だと悟り、転がったバイクに跨りながら倉庫からボスは逃げ出す。
「あっ!待つネ!!」
全員を片付け終えた美雨はボスを追いかけようとするが尚紀が声をかけてくる。
「任せろ」
美雨の後ろではバイクのマフラー音が吹き上がる。
「バイクにも乗れたのか?」
「乗ったことはないが、何とか乗りこなしてみせるさ」
アクセルを回しながらバイクを走らせ、ボスを追いかけていく尚紀の姿を美雨は見送る。
「頼んだヨ……アクションスター」
♦
コンテナ通りを猛スピードで逃げ続ける中、ボスは酷く怯えてしまう。
「
後ろからバイクの走行音が聞こえてくる。
バックミラーを見ると後ろにバイクの影は見えない。
音の方角に首を向ければコンテナの上を猛スピードで追いかけてくるバイクが見えるのだ。
「
「観念するんだな!」
コンテナ通りを走り抜ける二台のバイク。
片足で蹴り込み、コンテナとコンテナの間を飛び越えながらボスのバイクを猛追する。
コンテナから跳躍し、ボスの横に降り立ちながら尚紀のバイクが並走してくる。
「
左腕の裏拳に対してバイクを操作して回避する。
尚紀も蹴り倒そうと近づくが、一気に減速して右のコンテナ通りに逃げ込まれる。
「諦めの悪い奴だ!」
片足を地面につきながらドリフトさせて反転し、ボスを追いかける。
「
方向感覚を失い、闇雲に逃げ続けたが振り切れない。
「
最初にいた倉庫にまで逃げてしまい、並走した尚紀の蹴りをバイクに浴びてしまう。
横転しながらボスは地面を滑り、火が焚かれたドラム缶を倒し込んで火の粉を浴びる。
「
服に火が点いたことで転げ回るボス。
上半身に酷い火傷を負ったため動かなくなったようだ。
「サイレンの音が聞こえてくる…誰かが通報したのか?」
「お見事ネ、ナオキ。お前本当に面白い男ヨ♪」
スカーフを下げ、フードを外しながら美雨が近づいてくる。
その表情は彼の働きにとても満足したような顔つきであろう。
「決めたネ。お前、今日から私のライバルヨ」
「…どういう展開なんだ、それ?」
「目標があた方が鍛錬に身が入るネ。蒼海幇は受けた恩を忘れない…また神浜に遊びに来るネ」
「そうだな…報酬の受け取りついでに美味い中国茶でも飲ませてもらうか」
彼もスカーフを下げた後、美雨に微笑んでくれる。
警察に見つかる前に二人は港から出て行ったようだ。
「
地面を這いずるボスの前に現れたのは少女の姿。
「
「
暫くして、パトカーが何台も港のコンテナ街に入り込む。
警察官達が踏み込むが凄惨な現場を目撃したため全員が顔を青くしていく。
「何だよこれ…?どうやったら…こんな事になるんだ!?」
現場は既に血の海となっていたようだ。
「人間が粉々の肉片になってる…どうやったらこんな破壊が出来るんだ…!?」
警官達の現場検証から遠く離れた場所を歩くのは魔法少女の姿である。
「
こうして青幇の日本進出のビズの証拠は抑えたものの当事者達が口封じされる結果となる。
事件の真相は闇に包まれてしまうのであった。
読んで頂き、有難うございます。