人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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259話 日輪を描く太陽神

アラディア神話において、創造主ディアナは闇たる自分自身から光を分離させた。

 

そして生み出されたのが息子であり太陽神のルシファーだとするのが魔女達の神話である。

 

光を掲げる者になったルシファーは地上に堕ち、それでもディアナは彼の元へとやってくる。

 

彼女はルシファーが愛する猫に擬態することによって求愛を勝ち取ることになるだろう。

 

猫に扮したディアナから生まれたのがアラディアだとするのが魔女達の創世神話のようだ。

 

地上に人間が増えるとしだいに富者と貧者の二つに分かれていき、富者は貧者を支配する。

 

支配に苦しむ貧者は山野に逃れ、中には社会悪に身を落とす者もいたという。

 

ディアナは魔女達を抑圧者から救うためにアラディアを遣わし、彼女に地上を救うよう命ずる。

 

ペイガンである異教徒達の元に降臨して最初の魔女となった存在こそがアラディア神なのだ。

 

アラディアは被抑圧者達に魔術を伝えて対抗することを教えたのが虚構の神話内容である。

 

闇の女神ディアナは陰を司り、光の男神ルシファーは陽を司る神となり陰陽概念となっていく。

 

魔女達の原始信仰におけるルシファーは輝ける者、太陽として残されていくことになるだろう。

 

その太陽神を排除しようとしたのがキリスト教であり、魔女狩りだと魔女は考えるのであった。

 

……………。

 

<そうだ…そうこなくてはな!!それでこそ狩り甲斐がある悪魔共だぁ!!>

 

ついにアラディアの宙域にまで迫った悪魔ほむらと人修羅に対して大魔法行使をやめてしまう。

 

迎え撃つ女神は左手の魔法の杖を変化させ、獰猛な狩人としての戦いに移行するのだ。

 

<我の()()よ…真の姿を表せ。月の女神である母上の如く…夜の月と化すがいい!!>

 

二つの菱形宝石が散りばめられた魔法の杖が三日月の如く曲がっていき、大弓と化す。

 

三日月の形になる弓は弓月ともいわれるものであり、秦氏の象徴としても使われてきた。

 

ディアナであるアルテミスの娘と自称するアラディアもまた月の武器を用いる狩人だったのだ。

 

<狩猟の女神の娘として、我が狩りをみせてやろうぞ!!>

 

前方宙域から二つの光が見えた瞬間、アラディアは光の速度になりながら上昇する。

 

下の宙域に飛んできたのは悪魔ほむらの極大の一射とマグマ・アクシスの一撃。

 

極大の一撃を避けたアラディアの背中の翼から一気に光が伸び、光翼を羽ばたかせていく。

 

淡いピンクの光を放出しながら飛んでいく存在を追う者達こそ傷だらけの悪魔達なのだ。

 

<奴の宙域に辿り着くまで時間がかかり過ぎた…俺にはもう後がない>

 

<どういう事なの…?>

 

<俺のマロガレはお前との戦いで傷ついてな…傷を癒しきれていないんだ>

 

<全開戦闘を行える時間は限られていたというのね…?ごめんなさい、私のせいよ…>

 

<気にするな。今はアラディアとの戦いだけに集中するんだ>

 

光の粒子を撒き散らして光速移動していくアラディアに向けて二体の悪魔が仕掛けていく。

 

<狩猟とは狩る者と狩られる者との騙し合い。目に見えるものに意識を奪われていればいい>

 

上空の宙域に目掛けて飛んでいく人修羅に代わり悪魔ほむらが弓を構える。

 

菱形魔法陣に目掛けて矢を放てば極大にまで巨大化したカラスの矢の雨が生み出されていく。

 

魔力切れの時とは比べ物にならない一撃が後方から迫る中、無数のフレアがばら撒かれる。

 

翼の羽がメギドラオンとして後方にばら撒かれた事で小惑星すら破壊する攻撃が消滅していく。

 

光速移動しながらアラディアはマカカジャをかけ続けた事で魔法威力は最大となっていたのだ。

 

急速上昇していく円環のコトワリ神であったが、動きを読んでいた人修羅が大火力を発揮する。

 

<これならどうだぁ!!>

 

大きな光玉を生み出した彼の体勢が一回転しながら踵蹴りを放ち、光玉を打ち付ける。

 

破裂した光玉が飛散して無数の光弾とする鬼神楽の一撃が降り注ぎ、アラディアを貫く。

 

光弾に貫かれたはずのアラディアであるが口元には笑みが浮かんでいる。

 

<なにっ!?>

 

倒したと思われたアラディアが消失していき、人修羅の背後の宙域に極大の魔力が出現する。

 

<狼の足跡だけを頼りに追い続けているから後ろをとられるのだ>

 

悪魔達が追っていたアラディアはデコイにすり替えられており、本物は瞬間移動している。

 

引き絞られた弓の先端に咲く花が極大の光を放出していき、放つ一撃とは至高の魔弾。

 

人修羅のように一直線に放つタイプではなく魔法陣に触れることで無数のレーザーに変化する。

 

全体万能属性攻撃が迫る中、彼を援護する一撃が迫りくるのだ。

 

<そうはさせない!!>

 

悪魔ほむらの援護攻撃であるカラスの矢が次々と至高の魔弾に目掛けて体当たりを仕掛ける。

 

全ての魔弾を撃ち落とした光の中を突っ切った人修羅の左手に握られていたのは将門の剣。

 

<全開の俺の力を振るわせてもらう!!耐えきってみせろ!!>

 

人修羅の意思に呼応するようにして鍔がスライドし、いつでも抜けと刀の魂が叫ぶ。

 

刃を抜くと同時に鞘を消失させた左手が光剣を放ち、光剣を前に向けながら回転していく。

 

ディープ・スティンガーの一撃によって魔法陣が貫かれ、螺旋を描くノコギリが迫りくる。

 

回転する破壊槌を咄嗟に避けたアラディアが速度を上げながら光となり、宇宙を駆けていく。

 

後方から追ってくる悪魔ほむらが放つ矢の雨と人修羅が放つ次元斬が次々と繰り出される。

 

アラディアは巧みな空中戦闘機動を行いながら斬撃の網とカラスの矢を潜り抜けるのだ。

 

<我の耐性をも貫く人修羅の力と我の一撃を相殺する悪魔ほむらの力…侮れんな>

 

広大なフィールドで姿を晒したまま戦うのは得策ではないと考えたアラディアが一計を用いる。

 

太陽系に向かって光速移動していたアラディアが大弓を構えながら複数の矢を放つ。

 

光の矢が飛んでいった方角にあったのは巨大な星であり、矢の数々が星を貫いていく。

 

星の中心核を貫通したことで星が大地震を起こしながら崩壊しようとする中を突っ切るのだ。

 

<崩壊しかけた星の洞窟内部に誘い込もうとしているようね…>

 

<ここで奴を見失えば不味い。俺達も続くぞ!>

 

背中の翼から放出する魔力を高めた2人がアラディアを追うようにして星の内部に飛んでいく。

 

狡猾な狩人との戦いは崩壊する星の内部へとバトルステージを移していくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

縦に引き裂かれた岩盤大地を赤黒く照らす星の中心核へと悪魔達は飛行していく。

 

光速からスピードを落としているが目まぐるしく迫る岩盤大地を高速で避けながら飛行する。

 

<無数の魔力が奥に配置されている…アラディアは円環の魔女共を解き放ったのね>

 

<俺達の注意を引き付けるための囮として使われる哀れな魔女共だな>

 

<容赦するつもりはないわ。私達の道を塞ぐなら…排除するだけよ!>

 

突起した岩盤大地の足場の空間には無数の魔女達が屹立している。

 

それぞれが動かないまま上空に目掛けて魔法攻撃を放ち続ける固定砲台の役割を担うようだ。

 

並みの魔女程度の攻撃ではフルパワーとなった悪魔達の耐性を貫く効果にはならない。

 

攻撃を意に介さず突っ込みながら砲撃の雨を超えた人修羅が外側の翼を閉じながら一気に開く。

 

後方に向けてゼロス・ビートの光弾が無数に放たれた事で配置されていた魔女を殲滅していく。

 

前方に配置された魔女達はほむらの矢がホーミングレーザーの如く放たれて殲滅されるのだ。

 

<アラディアは何処に消えた……?>

 

円環のコトワリ神の姿を見失っていた時、側面大地を貫いて現れた存在に振り向く。

 

<自由という名の愚か者がぁぁぁぁーーーーッッ!!!>

 

星の中心に向かうフリをしながら側面外殻を魔法で削り取って移動してきたのはアラディア。

 

反撃を行う暇もなく人修羅の顔面を掴んだ彼女が背中の翼の出力を最大にして壁に向かう。

 

岩盤大地に人修羅を叩きつけるがなおも押し込み、星を圧搾しながら彼を潰さんとする。

 

<くっ……うぅ!!!>

 

マサカドゥス化したマロガレの物理無効耐性によって岩盤に押し付けられながらも耐え抜く。

 

星の内部が一気に掘り進められていく中、刀を消失させた人修羅が女神の腕を両手で掴む。

 

掴まれた顔の隙間から見える人修羅の右目には既に膨大な魔力が練り上げられている。

 

それに気が付いた時には遅過ぎたようだ。

 

<ぐはっ!!?>

 

螺旋の蛇の一撃を右肩に浴びたアラディアの右腕が千切れ、怯んだ相手の動きが止まる。

 

<アラディアァァァーーーーッッ!!!>

 

千切れた右腕を投げ捨てた人修羅の左手が将門の刀を生み出し、接近戦を仕掛けようとする。

 

憤怒の表情を浮かべるアラディアは左手に持つ魔法の弓を杖に変化させて迎え討つ。

 

<<オォォォォォォォーーーーッッ!!!>>

 

魔法の杖となった先端の花から光剣の如き魔力が噴き上がり、人修羅と切り結び合う。

 

互いが上下左右と空間そのものを最大限に利用した高速剣戟が繰り返されていくのだ。

 

剣戟がぶつかるごとに岩盤大地が砕かれていき、星の内部から外殻を砕く激戦となる。

 

アラディアの翼から放たれる光の矢の雨を蹴り足から放つジャベリンレインで撃ち落とす。

 

魔法の杖を振るうアラディアは周囲を飛び交う岩盤大地の破片を操り、石つぶて攻撃を放つ。

 

納刀した状態から繰り出す高速斬撃で石つぶてを切り払うのだが突然体が金縛りに合うのだ。

 

<超能力魔法攻撃だと!?石つぶては目くらましを狙ってやがったか!!>

 

<悪魔には避けられやすい小手先程度の魔法だが…使い方次第で通用するのだ!!>

 

杖を振るいながら高速回転していくアラディアに操られた人修羅の体も回転していく。

 

ジャイアントスイングされて飛ばされる人修羅を受け止めてくれたのは悪魔ほむらであった。

 

<大丈夫!?>

 

<俺は大丈夫だ!!それよりも…前に気をつけろ!!>

 

ほむらが視線を奥に向ければ回復魔法で右腕を復元させたアラディアが弓を引き絞る姿が映る。

 

<化け物め……どれだけ傷つけてもアラディアの魔力は削れないというの…?>

 

不敵な笑みを浮かべたアラディアが円環の魔法陣に向けて至高の魔弾を放つ。

 

コンセントレイトによって火力が高まった一撃が無数に飛来する中、ほむらが魔力を高める。

 

カラスの翼から侵食する黒き翼が広がっていき、人修羅と自分を覆うように折り畳む。

 

翼の盾にぶつかった一撃が侵食領域を削り取り、悪魔達を消し炭にせんとする。

 

<そうはいくかよ!!>

 

人修羅の左手から出現させたのはデカジャの石であり、それを握り込んで砕く。

 

敵全体のカジャ系効果を消去する効果によってアラディアの一撃の力が弱まるのだ。

 

それでもコンセントレイトで強化された分は健在であり、ついに翼の盾が砕かれる。

 

<キャァァァァーーーーッッ!!!>

 

盾を生み出し続けた悪魔ほむらは高速で弾き飛ばされていき、人修羅は後ろに振り向く。

 

<ほむらーーーーッッ!!?>

 

<他人の心配をしている場合かぁ!!>

 

背中の翼から放出する魔力を最大にしたアラディアが光の速度で迫りくる。

 

<グハァァァァーーーッッ!!!>

 

最大威力の飛び蹴りを背中に浴びた人修羅もまた後方に向けて一気に持って行かれてしまう。

 

星の中心核へと落ちていった悪魔ほむらが叩きつけられた岩盤にぶつかりながら圧搾する。

 

勢いは衰えず、星さえも貫通する程の光の流星蹴りとなった一撃はなおも悪魔を運ぶだろう。

 

超光速移動を行う2人の背後では悪魔ほむらを飲み込んだ星がついに大爆発するのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<くそ……なんて奴だ…。神霊カグツチと並ぶか……それ以上の強さだ……>

 

飛び蹴りを受けたまま太陽系にまで超光速で運ばれていった人修羅の体は宙域で浮かんでいる。

 

浮かんでいる宙域の奥には海王星が見えることから太陽系の端に辿り着いたと分かるだろう。

 

蹴りを放った状態から足先でメギドラオンを放ち続けられたために彼の四枚翼は消滅している。

 

物理的な蹴りによって上半身の骨も砕け散り、臓器も殆ど破裂している危機的状況なのだ。

 

<かつてのボルテクス界を超え、さらに力を増した姿になろうとも、我には勝てんのだ>

 

円環のコトワリ神が漂っている人修羅の元へと下りてきて大弓を構えてくる。

 

死にかけた獲物に最後のトドメを放とうとする中、人修羅はアラディアに問いかけていく。

 

<それ程の力を持ちながら…お前は唯一神に従うのか?お前の力なら…歯向かえるはずだ>

 

LAWの神になる道を選んだコトワリ神に対して自由は欲しくないのかと悪魔は質問してくる。

 

<…全ての自由を認める我を相手に、我もまた()()()()使()()()()()()()()()()を問うのか?>

 

<そうだ…。お前は魔法少女を救う神…唯一神は魔法少女を宇宙のために殺す者なんだぞ?>

 

自由を背負う覚悟はあるかを問われたアラディアが構えを解き、大弓を下ろしてくれる。

 

試されるアラディアの顔に迷いはなく、魔法少女の救済神としての覚悟を告げてくれるのだ。

 

<その通り…このまま唯一神に隷属していては魔法少女達は救われん。だからこそ必要なのだ>

 

<鹿目まどかか……>

 

<あの者こそ我の知恵となりし存在。鹿目まどかを手に入れた時、我はナホビノに戻れる>

 

<ナホビノだと…?ボルテクス界でも聞いた事がない概念だな……?>

 

<ナホビノとは合一神。我々神の本来は完全な存在であったが唯一神の手により引き裂かれた>

 

【ナホビノ】

 

神道における直毘神(なほびのかみ)表す存在であり、唯一神にとっては禁忌の存在。

 

神の本来在るべき姿であり、真の神の姿だとする。

 

古き時代の神は皆がナホビノであったが唯一神が至高天の玉座を手に入れた事で変わり果てる。

 

ナホビノの中から知恵となる存在を引き裂き、それにより神々は悪魔に貶められたのであった。

 

<悪魔に貶められた我ら神に完全な創世は出来ない…だからこそナホビノに戻らねばならない>

 

<まどかと融合したお前でも完全な創世は出来なかった…本当に彼女はお前の知恵なのか?>

 

<そう信じている。あの者はコトワリを啓くだけでなく我の失った知恵の温もりを感じるのだ>

 

<コトワリを啓ける者ならナホビノになれるわけじゃないのか…勇と千晶は違ったようだな…>

 

<もしあの者達の中に失われた知恵が宿っていたのなら…貴様はムスビとヨスガに負けていた>

 

<ナホビノ…それ程の存在だというのか…。お前はナホビノになって…唯一神と戦うのか?>

 

円環のコトワリ神に選択を迫る人修羅であったが、彼女が気が付いていない気配を感じている。

 

(なんだ…?この気配は覚えがある…あれはボルテクス界のミフナシロで……)

 

人修羅が気が付いている三体の気配に気が付いていないアラディアは高らかに宣言するのだ。

 

<我もまた鹿目まどかと共に自由を行使しよう。ナホビノとなり…至高天の玉座を奪う>

 

その言葉はまさに唯一神への反逆を意味する言葉。

 

アラディアが高らかに宇宙意思への反逆の意思を示した瞬間、三体の気配が消え去っていく。

 

彼女も気配に気が付いたのか後ろの宙域に振り向くのだが、突然苦しみだす。

 

<ぐっ!!?な……なんだ?急に力が入らなくなっていく……!?>

 

人修羅を打ちのめした分の魔力回復が行われずに初めての魔力消耗を女神は感じている。

 

動揺に打ちのめされるアラディアの横では隠れていた三体の正体を思い出す人修羅がいるのだ。

 

(間違いない…あいつらは四大天使共だ。バアルの化身に操られていたが…蘇ったのか?)

 

円環のコトワリの領域に隠れ潜んでいたのはガブリエル・ラファエル・ウリエルの三体の天使。

 

かつての人修羅がボルテクス界で戦った天使であり、唯一神の側近達。

 

そんな存在が隠れ潜んでいた場所で唯一神に反逆の意思を叫ぶLAWの神がいる。

 

この事態を重く受け止めないガブリエル達ではなかったのだ。

 

<<アラディアよ。私達が貴女の監視を任されていたことは正しかった>>

 

<<私は最初から貴様を認めていない。魔女の神は聖なる炎で焼かれるべきだったのだ>>

 

<<残念です…ナホビノとしての貴女は危険な存在。手元におけないのなら…処分します>>

 

ガブリエル達の念話が聞こえた事で謀反の意思を唯一神に感づかれたとアラディアは理解する。

 

<繋がりが消えていく…我の光の加護が…唯一神から与えられた神霊の力が…消えていく!?>

 

大きくパワーダウンした事でアラディアが狼狽えている時、外宇宙から飛来する者が迫りくる。

 

<アラディアァァァーーーーッッ!!!>

 

飛来してきたのはフルパワー出力で迫ってきている悪魔ほむらの姿であり、飛び蹴りを放つ。

 

<グワァァァァァーーーーッッ!!!>

 

腹部に直撃したことでアラディアは盛大に吐血しながら大きく蹴り飛ばされていく。

 

翼を羽ばたかせて停止した彼女は疲れ切っており、魔力を大幅に消耗したと分かるだろう。

 

<この宙域まで全力で飛んでくるために無理をさせ過ぎたようだな…すまない…>

 

<間に合って良かったわ…もう少しで貴方が殺されるところだった>

 

<チャンスだ…奴の力は弱まっている…今なら倒せる。俺が回復するまで時間を稼いでくれ…>

 

<分かったわ…ここが踏ん張りどころよ。私の全てを懸けてでも奴を倒してみせる>

 

翼を広げながら魔力を噴射して光の翼を生み出した悪魔ほむらが戦いの場へと向かっていく。

 

人修羅も気力を振り絞りながら左手に回復道具の宝玉を生み出し、口に運ぼうとする。

 

円環のコトワリ神との戦いは最終ラウンドへと進み、最後の戦場となったのが太陽系であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

<暁美ほむらぁぁぁーーーーッッ!!!>

 

怒れる女神の猛追が迫り、飛びながら逃げるほむらの背中に目掛けて次々と矢を放つ。

 

後方から迫る魔法の矢の数々をきりもみ回転しながら避け、振り向きざまに弓を構える。

 

引き絞られた弦に複数の魔法の矢が生み出された瞬間に彼女は放つ。

 

放射状に広がった矢がホーミングしながらアラディアに迫るが彼女も弓矢を扇撃ちする。

 

互いに放った矢がぶつかり合い対消滅していく眩い光が起こる中を彼女達は飛び続ける。

 

既に戦場は土星辺りに移っており、彼女達は死闘を繰り広げていくのだ。

 

<貴様も月の狩人を気取る気か!!我を相手に弓勝負を挑むなど愚かの極みだ!!>

 

<やってみなければ分からないでしょ!!>

 

鹿目まどかを守り抜く王子様もまた弓を用いる狩人となるのだろう。

 

舞台劇である白鳥の湖においても王子様は湖の白鳥を狩るために出かける者として登場する。

 

そこで出会った白鳥の王女様に恋するキッカケとなったものこそ狩猟だったのだ。

 

<チッ!!>

 

<くっ!!>

 

互いの矢が肩を貫き怯んだ瞬間、アラディアは背中に現れた人修羅の姿に振り向こうとする。

 

<き、貴様!!?>

 

<逃がさねーよ>

 

背後から組み付かれて首を締めあげられるアラディアは光の翼から魔力を放出させていく。

 

高速度で上昇した彼女であるが人修羅は掴んだ体勢を崩そうとはしない。

 

回復した四枚翼からも魔力が噴き上がりながら光の翼となり、互いがきりもみ回転していく。

 

<俺ごと狙え!!>

 

追従してくる悪魔ほむらに念話を送るのだが彼女は躊躇いを見せてしまう。

 

それでも彼の必死の叫びから生まれる覚悟を無駄にしないために弓を構えてくれるのだ。

 

高速で追従しながら放たれる矢の数々がアラディアと後ろの人修羅を射抜いていく。

 

<<くぅ!!!>>

 

大魔王から与えられた貫通スキルによって女神と悪魔の耐性を貫通する一撃がなおも放たれる。

 

互いが血反吐を吐きながら向かう先とは太陽系で二番目に大きい星である土星。

 

神話においては()()()()()()()()()でもあり、恒常的に()()()()()()()()()()でもある。

 

アラディアと人修羅が激突したのは土星リングにおける小衛星の一つだったのだ。

 

<くっ……うぅ……>

 

ベルト状の小天体の衛星で立ち上がったアラディアと人修羅は睨み合う。

 

<負けられない…負けてたまるものか!!我はアラディア…世界の救済を行うものだぁ!!>

 

<救世主気取りかよ?その割には逆らう者には容赦しない独裁者のようにも見えるぜ>

 

<我の道に立ち塞がる者は全て蹂躙する!!我は狩猟の女神の娘…アルテミスの娘なのだ!!>

 

<アルテミスの娘だと……?>

 

<ハハ…そうだ!我はディアナであるアルテミスの娘!娘と認められるなら何でもしてやる!>

 

狂った笑い声を上げながらアラディアは語っていく。

 

彼女はバアル崇拝を魔女達にばら撒いた張本人であり、子供達を大量に生贄にした元凶。

 

悪魔崇拝をばら撒き多くの魔女を悪魔崇拝者に変えた存在であり、魔女狩りの原因を生んだ者。

 

それを聞かされた人修羅の顔つきが憤怒に染まり、義憤の炎が爆発するのだ。

 

<貴様も啓明結社の連中と変わらない…私欲のために子供達を生贄にする!!許さねぇ!!>

 

アラディアの背後に着地した悪魔ほむらも加わり、最後の戦いを始めようとする。

 

怒りの拳が握り込まれていき、月の武器を握り締める者達も強く握り込んでいく。

 

<ここで終わらせる…まどかの人生を守る者として、円環のコトワリ神を倒してみせる!!>

 

<来るがいい…悪魔共!!我はナホビノになってみせる…貴様らの次は唯一神を倒す!!>

 

互いが地面を蹴り込み、大地が爆ぜる程の勢いで飛び込んでいく。

 

()()()()()()()()()()()()の上で女神と悪魔達の死闘が繰り広げられるのだ。

 

右腕を振り上げた人修羅のアイアンクロウを高速移動で避け、回転しながら大弓を引き絞る。

 

アラディアが放った扇撃ちに対して拳法の構えをとった人修羅が高速で矢を弾いていく。

 

トラッピングレンジに入る矢を肘や膝や裏拳で弾き終えたが女神はさらに弓を引き絞る。

 

しかしそれを許さない悪魔ほむらの怒りがこもった一撃が右側頭部を襲うのだ。

 

<ぐはっ!!!>

 

弓を振りかぶった彼女が放つ一撃によって弾き飛ばされたアラディアに目掛けて人修羅が動く。

 

<ハァァァァァァーーーーッッ!!!>

 

人修羅が放つのは連続して13回蹴りを放つキック13であり、影も残らぬ蹴り技が放たれる。

 

<グアァァァァーーーッッ!!!>

 

耐性を貫通する蹴りを喰らったアラディアが後ろに後ずさるがスカートの裾を踏まれてしまう。

 

<お互いに裾が長過ぎるドレスを纏っていると苦労するわよね?>

 

ドレスを踏まれて地面に縫い付けられたも同然の女神に対してさらに弓で殴りつける。

 

ほむらが女神を殴って弾けば人修羅が殴り、人修羅が女神を弾けばほむらが殴る。

 

互いの連携がなせる攻撃の数々に翻弄されるアラディアの顔もドレスも血塗れとなるのだ。

 

それでも強固なタフネスを有しているアラディアの体は砕けず、狂気の叫びが木霊する。

 

<貴様らァァァーーーーッッ!!!!>

 

我を忘れたアラディアの体から魔力の衝撃波が発せられ、人修羅とほむらが弾かれる。

 

地面に足をついて踏み止まった2人に見えたのは極大の魔力を練り上げた一射が放たれる光景。

 

弓矢は上空に目掛けて狙われており、自分を含めた全てを標的にした矢の雨を降らせるのだ。

 

<死んでしまえェェェェーーーーッッ!!!!>

 

上空に描かれた円環の魔法陣に矢を放つために弓の弦が引き絞られる。

 

しかし弦を引き絞る右手を掴んでくる者が現れるのだ。

 

<これで決めてやれ>

 

右手を掴んだままアラディアの腹部にミドルキックを放ち、体勢が崩れる隙に右関節を決める。

 

鈍い音が響くことも出来ない真空空間で円環のコトワリ神が目にした者とは悪魔ほむらの姿。

 

<避けてみなさい>

 

彼女が右手に握り締めながら構えていたのはひび割れた魔法盾から取り出した切り札の銃。

 

クロノスから託されたのは()()()C()H()A()O()S()()()()()()()()()であるピースメーカーだったのだ。

 

<私は()()()()()()()()()()よ>

 

引き金が引かれて撃鉄が落ちた瞬間、シリンダーが回転しながら極大の一撃が放たれる。

 

<ガッ………?>

 

悪魔ほむらの魔力が最大にまで充填された一撃が左目に直撃して頭部の四分の一を消し飛ばす。

 

連射が効かない旧式のリボルバー銃であるがテクニック次第で連射は可能。

 

肘を曲げながら銃を構えるほむらが左手を撃鉄に触れさせた瞬間、二発の弾が発射される。

 

撃鉄をファニングさせる事で速射した一撃が左半身を貫きながら消し飛ばしてしまうのだ。

 

<ア………アァ………>

 

ふらつきながら両膝を崩すアラディアの頭部と上半身は見るも無残に削り取られている。

 

脳みそや臓器が飛び出すのかと思われたが、もっとおぞましい存在が飛び出す時がきたのだ。

 

<<なっ!!?>>

 

上半身の半分近くが消し飛んだアラディアの内部から飛び出してきたのは世界を絶望させる色。

 

失った左腕の代わりとして天に向かって伸び出ていく存在を見た事がある2人は気づくだろう。

 

<あの時の……絶望の魔女!?>

 

<鹿目まどかが生み出した……宇宙を砕ける最強の魔女か>

 

アラディアごと取り込んで実体化していくその巨体は地球よりも大きい土星規模となっていく。

 

土星の横に顕現したのは全ての魔法少女を救済したがために生み出された絶望の魔女。

 

全ての魔法少女の絶望から生まれた空気人形であり、その性質は強訴。

 

宇宙を書き換える希望が生まれると同時に絶望の泥より生まれた黒い太陽の如き存在。

 

果てしなき悲鳴をその身に詰めて膨らみ続ける因果の塊こそが魔法少女の絶望なのだ。

 

<<アァァァァァァァーーーーッッ!!!!>>

 

顔が半分存在しない絶望の魔女が悲鳴を上げながら叫び続ける。

 

際限なく魔法少女の絶望を吸い上げる空気人形が肥大化していき巨大な腕を生やしていく。

 

土星すらも掴んで粉砕出来る規模の魔女はアラディアの宇宙を破壊するつもりなのだろう。

 

アマラ宇宙を乱すレコード宇宙を砕く時にアラディアが放つ最終兵器こそがこの魔女なのだ。

 

<<我こそ新たなアマラの秩序!!我は全てを手に入れる!母上を…家族を手に入れる!!>>

 

嘆きの叫びを上げ続ける絶望の魔女の中にはアラディアの絶望さえも内包されている。

 

<<貴様らに分かるか!生まれた時より孤独で…誰からも存在を認められない苦しさが!!>>

 

虚構の世界で生まれた偽神は本物の神になるためにアマラを彷徨った孤独な異神。

 

誰からも神だと認められず、誰にも話を聞いてもらえず、家族と信じた母神からも拒絶される。

 

浴びせられるのは揶揄と嘲笑ばかりであり、彼女には絶望だけしか与えられなかった。

 

<<我の言葉は誰にも届かない!!バカにされる!!だから我は…独りぼっちだった!!>>

 

自由を語った偽神もまたその名の為に病を担い痛みを負い、果てぬあざけりを受け続ける。

 

その名のために友の背きに打たれ、幾度も否まれ、暗い敗北に包まれるだろう。

 

かつての人修羅やこの世界の時女静香に語った言葉とは彼女が経験してきた苦しみだったのだ。

 

<アラディア……>

 

偽神が叫ぶ苦しみが痛いほど心に伝わってしまう悪魔ほむらが同情の眼差しを浮かべている。

 

彼女もまた両親だと信じた存在は偽物で、誰からも話を聞いてもらえない孤独を背負った者。

 

周りの魔法少女からも拒絶され続けた苦しみを知る者としてアラディアの絶望が分かるのだ。

 

<…奴と戦う運命を背負わされた俺達だからこそ、あいつの絶望に触れてやれるんだ>

 

人修羅も同じ眼差しを浮かべており、アラディアを滅ぼす気持ちとは別の感情が生まれていく。

 

<アラディアを止めるぞ…ほむら。俺はもう…あの魔女が叫ぶ絶望を聞いていたくない…>

 

<同じ気持ちよ…必ず止めましょうね。アラディアもまた…私達と同じ存在だったのよ>

 

絶望の叫びを上げながら超巨大な両腕を振りかぶり、土星ごと悪魔達を葬ろうとする。

 

<<家族が欲しいぃぃーーッッ!!誰か…誰か…我を受け止めてくれぇぇぇーーッッ!!>>

 

迫りくる絶望の魔女に対して先に動いたのは悪魔ほむら。

 

魔法盾にピースメーカーを仕舞った彼女は両手を横に広げながら全ての魔力を解放する。

 

カラスの翼から広がるのはかつての人修羅と戦った時に見せた最大規模の侵食する黒き翼。

 

小衛星から広がるその翼は絶望の魔女の腕に匹敵するものであり、形が変化していく。

 

翼の形がほむらの両手のようになっていき、迫りくる絶望の両手を掴み取る。

 

絶望の魔女を操るアラディアと最後の力を振り絞る悪魔ほむらとの力比べの光景なのだ。

 

<私が貴女を受け止めてあげる!!私にも両親はいない…信じてた家族は偽物だったの!!>

 

<<なん……だと……?>>

 

<私には貴女の絶望が分かるの!誰にも話を聞いてもらえずバカにされる苦しさも分かる!!>

 

ほむらの背中から生み出される翼の手から伝わってくるのは魔法少女が背負ってきた絶望の波。

 

全ての魔法少女の絶望を吸収する魔女であるからこそ、暁美ほむらの絶望も流れ込んでいく。

 

<<汝も…我と同じだったのか…。揶揄と嘲笑ばかりを浴びせられる…人生だったのか…>>

 

同じ苦しみを背負う者でしか同情を相手にぶつけることは許されないのが常である。

 

経験こそが人間を形作る要素であり、絶望を知らない者の優しさではアラディアは救われない。

 

<自由を語った異神よ…俺も自由を行使する。独裁者の暴走と戦うためにこそ自由があるんだ>

 

悪魔ほむらの心に触れた絶望の魔女が押し戻されていく中、アラディアは目にするだろう。

 

<<おぉ……おぉぉぉぉ……ッッ!!?あれは……あれはまさか……ッッ!!?>>

 

絶望の魔女の眼前に見える土星のリングが眩い光を放ち始める。

 

月の名をもつムーンレットの上で人修羅が描いていく構えこそ、()()()()()()()()()()()

 

赤黒く光る両手を広げながら頭上へと持ち上げていき、円を描きながら顔の前でクロスさせる。

 

両手をクロスさせた構えを見せる人修羅の全身に刻まれた大魔王の刻印が光を生み出していく。

 

<<土星とはサタンの星…そして人修羅が立つ場所は月の円環…まさか…あの御方はぁ!?>>

 

家族を追い求めた孤独なアラディアはついに目撃することになるだろう。

 

月より分かたれた太陽の光、輝ける者が生まれる瞬間を見届ける者になろうとしているのだ。

 

<自由もまた秩序と同じく人類に必要な概念だ。だからこそ俺は…()()()()()()()()()!!>

 

両手をクロスさせた状態から天に向けて両手を広げながら解放する。

 

人修羅の頭上に生み出されたものこそ黒き太陽の輝き。

 

<<やっと見つけた……あの御方こそが……我の……我の……>>

 

黒き太陽がはじけ飛び、赤黒い光がアラディアの宇宙に目掛けて膨大に広がっていく。

 

宇宙の次元がガラスのようにひび割れていき、砕けようとするのだ。

 

混沌王と呼ばれる人修羅が放った新たなる輝きこそ『()()()()』の一撃。

 

自由の光に触れた絶望の魔女から怒りと憎しみが消えていき、戦う意欲が消滅していく。

 

その体も消滅していき、アラディアの宇宙もまたガラスの如く砕け散るのだ。

 

<<アラディア……お前の心に光を与えられるなら……俺は()()()()()()()()()>>

 

世界が眩い白の世界に包まれていく中、絶望の魔女から解き放たれた女神は宙に浮いている。

 

自身の宇宙を砕かれたことで白いドレスはボロボロに破れているがその表情は穏やかだ。

 

<<あぁ……やっと出会えた。貴方様こそが……我の父上……>>

 

――暁に輝く者……本物のルシファー様。

 

残った片目から涙が零れ落ち、金色の目が瞼を閉じていく。

 

日輪を描く土星の温かい光に包まれながら円環のコトワリ神アラディアは消えていくのだ。

 

土星とは占星術においては最大の凶星とされるが、土星が世界を支配したとする説もある。

 

サターンは黄金時代の輝きを示し、神々のパラダイス・ロストの憂鬱さを反映するという。

 

ギリシャのクロノス、エジプトのアトゥム・ラー、シュメールの最高神アヌ等を表す星なのだ。

 

()()()()()()であり、彼らは王の星として残る木星の神々であるバアルやゼウスに権威を譲る。

 

神々の戦で権威を奪い取られて堕ちた神々の星こそが土星であり、サタン(ルシファー)の星。

 

土星とは太古の時代において、もう一つの太陽として語られてきた存在。

 

土星で生まれた新たなる太陽こそ、アラディア神話における太陽神ルシファーなのであった。

 




唯一神との繋がりが切れた神霊はパワーダウンするというネタは真女神転生2のザイン(サタン)からもらってます。
神霊サタンも唯一神に中指立てたらパワーダウンして大天使レベルにまで力が弱まったことですし。
うちの人修羅君はみんなのパパになっていく…(汗)
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