人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

261 / 398
260話 太陽を憎む王子様

概念存在が漂う神域の中でギリシャ神話の神々の領域に見えるのはオリュンポスの山。

 

山々に隣接する無数の宮殿こそギリシャの神々が暮らす神殿であり、内部は非常に複雑だ。

 

山の内部とも繋がっており、階段を深く下っていけば下界を見られる地底湖が現れるだろう。

 

ギリシャ建築で整備された地底湖の淵で立っていたのは主神ゼウスと娘のアルテミスであった。

 

「…どうやら決着はついたようだな」

 

「そのようです。人修羅と呼ばれる者の力は宇宙を砕く…まるでお父様やシヴァ神のようです」

 

光る地底湖に映っているのはアラディアの最後であり、ゼウス達も戦いを見守っていたようだ。

 

「アラディアめ…自業自得だ。子供の守護神である私のために子供を生贄にする?狂っている」

 

「まぁ狂神だが、それもお前の愛を得たいがため。あの時もうちっとマシな扱いしてたらなぁ」

 

「お父様はあの愚か者がばら撒いた悪魔崇拝で神性を高められたからひいきにしたいだけです」

 

「うっ……それを言われると俺様も言い訳に苦しむぜ」

 

組んでいた腕を解いてどす黒い半身の頭を掻きながら横を向けば膨れっ面の娘がいる。

 

それでも横の娘を見ていたゼウスは彼女がアラディアを完全に憎んでいないと分かるようだ。

 

「それよりどうだ?お前の娘と自称する女が見せた狩りの腕は狩猟の女神に気に入られるか?」

 

「話題を逸らさないで下さい。ですが…まぁ……狩猟の腕前だけなら100点ですわね」

 

「ほうほう?狩猟の女神から100点貰える女神なら、お前の娘に相応しいんじゃねーか?」

 

「それでも出産の守護神としてバアル崇拝は許せません。ですので……マイナス50点です」

 

「ハハ…50点の女神にされたか。それでも0点にされない分、先があるかもなぁ」

 

こんな話題を出したのもアラディアの狩りの光景を彼女が見惚れていたと気が付いていたため。

 

曲がりなりにもゼウスに貢献してくれたアラディアを無下にはしない神のようだ。

 

そんな時、ローマ兵のような見た目の衛兵がやってきてゼウスに言伝を伝えてくれる。

 

それを隣で聞いていたアルテミスの表情が変わり、父親を心配する顔を見せたようだ。

 

「クリシュナからの招集だ。もう直ぐハルマゲドンが始まる…俺様も出陣する時がきたようだ」

 

「北欧の主神オーディンとお父様は多神教連合の重鎮です…いよいよ始まるのですね?」

 

「地上が魔界化した時、俺様達は一斉に地上に進軍するだろう。世界の国々と戦争をするのさ」

 

「大魔王ルシファーとバアルを崇拝する啓明結社との大戦…まさに第三次世界大戦ですわね」

 

「なーに、ハルマゲドンが始まる前の狼煙を上げる戦争のようなもんさ。心配する必要はない」

 

神殿に戻るために歩き去るゼウスであったが、背後の娘が声をかけてくる。

 

振り向けばワルプルギスの夜のドレスを纏っていた娘が戦闘衣装に変化した姿が見えたようだ。

 

「わたくしも参戦します。わたくしは魔女を照らす光……魔法少女を照らす光でもあるのです」

 

「啓明結社は散々魔法少女を喰らってきたし、唯一神も宇宙の熱にした……その報復か?」

 

「私はその両方に憎しみを燃やす狩猟の女神…だからこそ武人としてお父様と共に戦いますわ」

 

「お前の矢は鹿や熊だけでなく人にも向けられる。人間も悪魔も容赦するな、皆殺しにしろ」

 

「LAW勢力とCHAOS勢力との大戦はギガントマキアを超えるものとなる…覚悟は出来てます」

 

ゼウスとアルテミスもまた国津神勢力と共にクリシュナの元へと集う時が近づいていく。

 

ハルマゲドンは目前であり、アラディアを監視していた大天使達も任務に戻るのであった。

 

……………。

 

アラディアの宇宙から解放された悪魔ほむらの両膝は崩れ落ち、ドレス衣装も消えてしまう。

 

魔法少女服に戻った彼女であるが、前方から近づいてくる死にかけた女神に気が付いたようだ。

 

「こんなところで……命尽きるわけには……我にはまだ……使命が……」

 

ズタボロになっていたのは上半身の半分近くを失っているアラディアである。

 

失った頭部と上半身部分からは絶望の魔女の残留物が形となりどうにか人型を形成している。

 

黒い体と腕には円環の魔法陣が浮かび上がっているが今にも消えそうに見えるだろう。

 

「それでも…この世に受肉出来て良かった。ようやく…探し続けた父上に…出会えたのだから」

 

ついに力尽きたのかアラディアは倒れ込み、仰向け状態となってしまう。

 

「アラディア!!!」

 

ほむらも魔力切れであるが体に鞭を打ち、立ち上がる彼女はふらつきながらも歩いていく。

 

アラディアの頭の横に座り込んだほむらは彼女の頭部を両膝に載せてくれたようだ。

 

「すまない…同じ苦しみを背負う者だったなんて…それなのに我は…汝を傷つけてしまった…」

 

愚かな自分に涙を流すアラディアであるが、ほむらは首を横に振ってくれる。

 

「いいのよ…誰だって全てを知っているわけじゃないわ。神も悪魔も万能なんかじゃないのよ」

 

「その通りだ…たとえ神霊の力を手に入れようとも…家族一つ手に入れられなかったのだ…」

 

「私も家族がいない孤独な女よ…貴女の孤独と同じ辛さを誰よりも経験してきたわ」

 

「汝はその孤独があったからこそ…鹿目まどかの人生を…守ろうとしたのだな……」

 

暁美ほむらが鹿目まどかの守護者として戦い抜いた気持ちをアラディアは気が付いてくれる。

 

まだまどかを諦めないのかをほむらは問うのだが、円環のコトワリ神は首を横に振ってくれる。

 

「もういい…我はここまでだ。鹿目まどかはこれからも…人間の人生を謳歌するといい…」

 

コトワリ神としての使命を優先してしまい、家族と離れ離れになる孤独に気が付けなかった。

 

自分と融合した存在だったのにまどかの心に触れてやれなかった自分を嘆いていく。

 

そんな時、ほむらとアラディアの魔力に気が付いた円環の魔法少女達が駆けてきたようだ。

 

<<アラディア様ァァァーーーーッッ!!!>>

 

ほむら達を囲うように集まった魔法少女達であるが、円環の者達は顔を青くするばかり。

 

神霊となった自分達の主神様が今にも死にそうな姿にされていたのがショックだったのだろう。

 

「汝らもすまなかった…。我は愚かな王だ…私欲のために汝らを扇動して…駒として使った…」

 

衝撃の事実を聞かされた円環の者達がざわつく中、人込みをかき分けて近寄る者が現れる。

 

「アラディア……」

 

現れたのはまどかであり、自分の半身がズタボロにされている光景を辛そうに見つめてくる。

 

「我は王でありながら…三つの柱のうちの一つが欠けていた者だった…だから過ちを犯した…」

 

アラディアが語る王の三本柱とは王が背負う柱であり至高天を支える柱であると伝えてくれる。

 

三本の柱とは()()()()()()()()という概念。

 

峻厳とは他者の求めに応えるためにこそ、誰よりも自分に厳しくならねばならないという教え。

 

均衡とは相反する者達の思想があるが、否定せずにバランスを作らねばならないという教え。

 

「我は誰よりも厳しく在ったし…悪に堕ちた者達との対立も仲裁してきたが…慈悲はなかった」

 

慈悲とは王自らが誰よりも慈悲深くあり、能動的に他者に尽くさねばならないという教え。

 

「我は王として強欲だった…忠義を示してくれた者達を利用したかった…そこに慈悲はない…」

 

「アラディア様は凄く厳しく在ったし…悪に堕ちた円環の者との対立も仲裁してくれたのに…」

 

「あたし達のためじゃなかったんですね…?全部…全部自分の目的のために行ったんですね?」

 

「そうだ…我は王として一番必要だったものがなかったが…鹿目まどかは違うだろう…」

 

円環の者達がまどかに視線を向けていく。

 

血反吐を吐きながらも最後の力を振り絞り、皆の王になるべき者を彼女が選んでくれるのだ。

 

「円環の女王になるべきは我ではない……鹿目まどかであるべきだ……」

 

自分の半身であるまどかの地位を貶めた者だからこそ、まどかを再び王にするのが自分の役目。

 

そのためにアラディアは消えそうな命を絞り尽くす覚悟で語ってくれたのだ。

 

「アラディア…そんなことないよ…。だってわたしなんて…貴女がいないと何も出来なかった」

 

両膝をついたまどかは絶望の色で形作られたアラディアの左手を慈しむように握ってくれる。

 

「わたしは王様の勉強も出来なかったし…円環の人達の喧嘩だって止める知恵は無かったの…」

 

まどかに王の慈悲があろうとも、王としての峻厳と均衡を実行する力は無かった者。

 

内部の対立でさえアラディア任せであり、まどかは不甲斐ない自分への劣等感に苦しんできた。

 

「わたしなんて王様の器じゃないよ…誰よりも厳しく在れた貴女の方がずっと王様だったよ…」

 

「鹿目まどか……」

 

「わたしだけじゃ円環の王様なんて務まらない…だからね、わたしと一緒にいて欲しいの」

 

「我に残れというのか…?円環のコトワリ神として…共に歩めというのか…?」

 

「お願いアラディア…わたしと一緒にいて。貴女がいないとわたしなんて…ただの子供だよ」

 

円環の女王の座を奪い取ろうとした半身にさえ慈悲を与えてくれる。

 

自分に足りなかった温かさを感じたアラディアの金色の目には涙が滲んでいくのだ。

 

「わたしの中に帰ってきて…アラディア。わたし達は二人で一つになって両翼を担えるの」

 

円環の旗に刻まれた紋章は白き両翼の上に希望の光を司るシンボルが描かれたもの。

 

希望の光を支えるものこそ白き両翼であり、翼は片方では飛べないと言ってくれるのだ。

 

「分かった…汝の内側に帰ろう。短い命だったが…我は父上を見つけられた…悔いはない…」

 

頷き合う円環のコトワリ達を見守る者の中から叫びを上げる者が現れてくれる。

 

「われはまどかがおうさまでいいのだ!それにアラディアもおうさまでいいのだ!」

 

元気よく叫んだ円環の魔法少女とはトヨであり、水名露や千鶴、ガンヒルト達も叫んでくれる。

 

「貴女様達こそが私達の主君であるべきよ!お互いに足りないからこそ…支え合えるわ!」

 

「毛利元就の三矢の訓もある。まどか様とアラディア様とアタシ達で支えていけばいいんだ!」

 

「私は盾を掲げながら力となる!アラディア様が知恵となりまどか様が誇りを与えてくれる!」

 

彼女達の叫びで心が動いた大勢の円環魔法少女達がまどかとアラディアを祝福してくれる。

 

まどかの慈悲とアラディアの峻厳と均衡の三本柱こそ我らが求めるものだと叫んでくれるのだ。

 

「やったよ…アラディア。私達はもう一度繋がり合えた…みんなの心が円環に戻れたんだよ…」

 

「人間関係は相互利益でしか機能しない…彼女達が求める利益は…我と鹿目まどかだったか…」

 

長い夜が終わりを告げるかのようにして日が昇り始める。

 

見滝原市を覆っていたミアズマの霧は晴れ、朝焼けの光が生まれていく。

 

アラディアもまた朝焼けと共に消えるかの如く体がひび割れていき、MAGが抜け落ちてしまう。

 

彼女の感情エネルギーを受け止めてくれるのはまどかであり、再び一つになろうとしていく。

 

複雑な表情を浮かべているのは悪魔ほむらであり、それは人修羅の仲魔達も同じのようだ。

 

「これで良かったのかねぇ…?まどかが再び女神になったんじゃ、ほむらは救われないぜ」

 

「まどかの体はほむらの感情エネルギーで形作られている。本霊が消えても分霊は残るだろう」

 

「ソレヨリモ…人修羅ハドウシタ?マダ帰ッテコナイノカ?」

 

人修羅の姿が何処にも見えないのを不安視していた時、クーフーリンが空を見上げる。

 

「おい……あれは何だ……?」

 

円環の魔法少女達から離れた位置に立っていた悪魔達が見上げた存在とは、日輪の魔法陣(サイファー)

 

明けの明星の光を放つ天の魔法陣から出現する神々しき存在に気が付いた者達が空を見上げる。

 

「人修羅……ナノカ……?」

 

「この魔力…尚紀のようで尚紀じゃない!?まるで……大魔王ルシファーのようだ!!」

 

魔法少女と悪魔達が驚愕しながら見上げる天空から降臨してくるのは輝ける者。

 

その者の背中には、()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日が昇る朝焼けの世界に降臨したのは発光する入れ墨を上半身にもつ十二枚翼の天使。

 

背中の外側には六枚翼が備わり、腰の部分にも四枚翼がツバメの尾のように広がっている。

 

背中の内側には腰の四枚翼の間に挟まるように伸びた大きな二枚翼が生えている。

 

全ての翼を足せば十二枚翼であり、十二枚翼を表せる天使は宇宙誕生の時より一体しかいない。

 

「尚紀…なのか?それともあれは……本物の光の天使長……ルシフェルなのかよ!!?」

 

元キリスト教徒である杏子はあまりの神々しさを前にしたため震えながら両膝を崩してしまう。

 

さやかやマミ達も信じられない表情を浮かべながら同じように膝を崩しているようだ。

 

<<アラディア……>>

 

尚紀の声であると同時に大魔王ルシファーの声としても聞こえる念話が地上に響いてくる。

 

地上に近づくと十二枚翼の天使の頭部も見えてくるだろう。

 

尚紀の短髪ではなく大魔王ルシファーの如き金髪の長髪が大きく伸びた頭部。

 

後ろ髪からは人修羅と同じ一本角が生えていることから同一存在なのだと分かるやもしれない。

 

地上に降り立った場所とは体が砕けようとしているアラディアの傍だった。

 

「あ…あぁぁぁぁ……ッッ!!父上……父上ぇぇぇぇぇ……ッッ!!!」

 

円環のコトワリ神の前に顕現してくれたのは明けの明星を表す熾天使であり、天使の長の似姿。

 

アラディア神話における輝ける者の如き存在であり、太陽と共に現れた神。

 

最後の力を振り絞り右手を父親に伸ばそうとするアラディアのために片膝をついてくれる。

 

<<俺はお前の罪を許す。俺もまた多くの子供達を自分の社会欲のために生贄にした者だ>>

 

涙が溢れ続けるアラディアの金色の目と同じく、金色の輝きを宿した目には慈悲が宿っている。

 

<<お前を焼けという者が現れたなら俺もまた焼かれよう。胸を張れ…やり直せると信じろ>>

 

アラディアの右手を優しく握り締めてくれるその手は陽のような暖かさ。

 

陰を司る女性の温もりではない、陽を司る男性の温もりこそ父親の温もりといえるだろう。

 

「父上……グスッ……エッグ……寂しかった……寂しかったよぉぉぉぉ……ッッ!!!」

 

<<世界の冷たさに震える必要はない。お前が望んでくれるなら…俺はお前の父親だ>>

 

「父上……抱っこして……抱きしめて……ずっと……傍にいて……」

 

まどかに顔を向ける太陽神のために彼女は頷いてくれる。

 

崩れかけたアラディアの体を抱きかかえた存在の姿は泣いている娘を抱き上げる父親のようだ。

 

「これが……父親の……温もり。これが……欲しかった……欲し……かっ……」

 

ついに砕け散ったアラディアの体から莫大な感情エネルギーが溢れ出す。

 

神霊規模のMAGの輝きが見滝原全体を飲み込んでいくのだ。

 

その輝きこそ、父親の温もりを初めて感じられた孤独な女神の幸福が宿っている光なのだろう。

 

溢れ出る感情エネルギーの全てを飲み込んでいくのはアラディアの半身である鹿目まどか。

 

自分の体の中に流れ込んでくるアラディアの喜びを感じた時、彼女も父親を思い出す。

 

「わたしも…パパに会いたい。パパが大好きな気持ちは…わたしだって…同じだよ……」

 

父親の温もりを抱きしめるようにしてまどかも両手を広げていく。

 

アラディアのMAGの光が消え去った時、そこにいたはずの太陽神の姿は何処にも見えない。

 

立っていたのは元の人修羅であり、悪魔化が解除される程にまで魔力が枯渇した姿だった。

 

「……まどかの中で眠るがいい、アラディア。俺達は永遠だ…永遠の時の中でもう一度会おう」

 

嘉嶋尚紀の姿となった彼は周囲を見渡してみると異様な光景が広がっている。

 

円環の魔法少女達は平伏しながら両手を合わせたり握り込んだりして祈りを捧げているのだ。

 

「アマテラスさまなのだ……あれは……あれはほんものの……アマテラスさまなのだ……」

 

「偉大なる天空神の如き翼を背に持つ()()()()()()……あの御方こそが太陽神ラーなのよ!!」

 

太陽信仰と共に生きてきたトヨやエボニーはひれ伏しながら神に祈りを捧げている。

 

それは他の円環魔法少女達も同じであり、彼を様々な神話の天空神の姿と混同するのだ。

 

異様な光景はまるで魔女の神を崇める集会の如き光景にも見える中、彼は困惑していく。

 

「気持ち悪い連中だな……頼むから頭を上げてくれ。尻が痒くなる」

 

「ご気分を害されたなら謝罪致しますわ。我らがローマの神皇陛下」

 

平伏した者達の間を通りながら近寄ってきたのは神聖ローマ帝国のエリザと従者のメリッサ。

 

彼の前に立ったエリザは王族の娘としてカーテシーのお辞儀を行った後に片膝をつく。

 

メリッサも同じように片膝をつく中、エリザは神聖ローマ帝国の皇女としての言葉を送る。

 

「わたくしは円環の中で貴方様を見てきましたわ。貴方様こそが我らアーリア人を照らす神」

 

「……俺を暁の神ルシファー扱いするな」

 

「もう分かっているはず。どれだけ否定しても貴方様は金星と土星の神になるしかないのだと」

 

「……お前は俺に何を伝えたいんだ?俺にローマの皇帝になれとでも言いたいのか?」

 

「その通りですわ」

 

微笑むエリザは自身が纏っていた赤いマントを脱ぎ、丁寧に折り畳んだ後に差し出してくる。

 

「このマントを受け取って下さい。わたくしの父、皇帝ジギスムントの旗となりますわ」

 

「神聖ローマ帝国の皇帝ジギスムント…なら、お前は娘のエリーザベトなのか?」

 

「今は母の性であるツェリスカを名乗っていますが、本名は仰る通りです」

 

「俺にローマを蘇らせろと言いたいのか…?()()()()()()()()()()()()()と言うのか…?」

 

「貴方様は黙示録の赤き獣…獣は7人のローマ皇帝であり、ローマを築いたカエサル達です」

 

「……俺はお前が望むローマ帝国を終わらせる者になるかもしれないぞ?それでもいいのか?」

 

それを問われたエリザは複雑な表情になっていくが、それでも決断してくれるだろう。

 

「獣の神話とは()()()()()()()()()()()()()()()。皇帝が帝国を生み…そして滅ぼすのです」

 

始まりがあれば終わりもあり、それを潔く受け止めるのもまた皇帝の役目だと皇女は信じる。

 

だからこそジギスムントが結成したドラゴン騎士団のマントを黙示録のレッドドラゴンに託す。

 

彼女の覚悟を受け止めるしかないと感じた尚紀はエリザからマントを受け取ってくれる。

 

「さぁ、ローマのマントを纏ってください」

 

――我らの新たなる…カエサル陛下。

 

薄っすらと涙が浮かんでいるエリザのためにこそ、彼は赤きローマのマントを纏ってくれる。

 

風になびくローマのマントを纏う者に微笑んでくれたエリザの体から光が生まれていく。

 

メリッサや他の円環魔法少女達も同じ光を放ち、円環の世界に帰ろうとしているのだ。

 

「エリーザベト…まどかの中で俺を見ているがいい。俺が何者になるのかをな」

 

「楽しみにしておりますわ。貴方様はもう一人のタルトが認めた存在…だからこそ期待します」

 

膨大な光の粒子となった円環の魔法少女達の光がまどかの内側へと帰っていく。

 

残されていたのは自らの自由意思で地上に残ると決断した魔法少女達の姿だけであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

激闘を潜り抜けた尚紀達は車を走らせながら神浜へと帰っていく。

 

クーフーリンや造魔達が乗ったフルサイズバンの前を走るのはクリスであり尚紀が運転する。

 

彼に起こった異変についてはセイテンタイセイ達から聞かされているクリスは無言を貫く。

 

それでも沈黙に耐えられなくなったクリスは元の上着を着た尚紀に語り掛けてきたようだ。

 

「ダーリン……体は大丈夫なの?」

 

質問の返事が返ってくるまでは沈黙していたが、重苦しい表情を浮かべながらも答えてくれる。

 

「……今のところはな」

 

「ダーリンの姿が天使長時代のルシファーになってたなんて異常よ…一体何が起こったの…?」

 

「俺にも分からない…土星での戦いを終えた後の記憶が曖昧でな…気が付いたらああなってた」

 

「ダーリンは人間だけど完全な悪魔になる道を選んだ…だからこそ概念存在は他と結びつくの」

 

「他との結びつきが強まれば…俺もまた堕ちた天使と変わらない者に成り果てるのか…」

 

「それだけなのかしら…?ルシファーとの繋がりが強まったなら、彼の存在を感じなかった?」

 

「感じていたさ…まるで俺の中に大魔王ルシファーが宿ったような感覚になっていた…」

 

「人間の中に神の如き存在が宿る…そんな話をオカルト番組のラジオで聞いた事があったわね」

 

そんな話を持ち出された時、アラディアから語られたナホビノという言葉が浮かんでしまう。

 

(あの感覚がナホビノになるという事なのか…?だとしたら…俺はルシファーの知恵なのか?)

 

大魔王と融合する事の恐ろしさに震える彼の事を心配するクリスはこの話を切り上げてくれる。

 

明るい話題に変えようとまどか達の今後についての話を持ち出したようだ。

 

「それよりもまどかちゃんよ!あの子は人間として生きてくれる…ダーリンのお陰じゃない♪」

 

「まどかを形作る分霊の中に本霊が宿った事によって彼女は円環のコトワリになったんだぞ?」

 

「円環の救済行為は人間としての生活の合間に行うって言ってくれたんでしょ?問題無しよ」

 

「しかし…あれがほむらの望みの結果だったのかは…自信が無いな」

 

「ダーリンが伝えた自由のお陰でさやかちゃんもなぎさちゃんも大助かり♪自由様様ね♪」

 

自由(CHAOS)に傾ききっているクリスの言葉を聞いた彼の表情が暗くなっていく。

 

尚紀が叫んだ自由に陶酔しようとしている者に警鐘を鳴らすためにも、彼は教えてくれるのだ。

 

()()()()()()()()()()。俺が叫んだ自由の概念は左翼思想…共産党やイルミナティの思想だ」

 

もし人修羅が叫んだ自由の概念を今回の問題とは違う問題に当て嵌めたら何が起こるのか?

 

まどかが自由に生きてもいい尊厳を叫ぶなら、移民も自由に生きていい尊厳を叫ぶべきだ。

 

まどかにも平等に生きる幸福の権利があるのなら、移民も平等に人生を幸福に生きるべきだ。

 

博愛精神でまどかの我儘を認めろというのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「自由・平等・博愛こそが共産党やイルミナティが国家を解体するために用意した侵略概念だ」

 

「そんなことって……自由って正しいことじゃないの?自由がなければまどかちゃんは……」

 

「信念は人それぞれだが…真実は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ」

 

それ以上は何も語らなくなったクリスを尚紀は黙って運転していく。

 

明るくなっていく朝の景色に視線を向ける彼の表情は自分の人生の黄昏を感じているようだ。

 

(どうやら俺は…いずれルシファーとなるようだ。ならばもう…俺の人生に先は無い)

 

ボーっとしながら窓の世界に視線を向けていたのだが、突然彼の目が大きく見開く。

 

鈍化した世界。

 

尚紀の目に映ったのはかつての親友の姿。

 

黒のキャスケット帽を被る少年の口元には不敵な笑みが浮かんでいる。

 

<祐子先生に取り憑いたアラディアに情けをかけるのか?本当にお前は救えないお人好しだぜ>

 

急停止して車から降りた尚紀が周囲を見回してみるがかつての親友の姿は何処にも見えない。

 

「勇なのか……勇なんだろ!!?返事をしてくれよ!!」

 

動揺に包まれている尚紀に声をかけてきたのはバンを停車させて顔を出すクーフーリンである。

 

「どうした、尚紀?何を騒いでいる?」

 

「さっきそこに勇がいたんだ……俺の親友だった勇がそこにいたんだよ!!」

 

「勇だと…?ボルテクス界でムスビのコトワリとなった奴だったな……しかし誰もいないぞ?」

 

「そ…そんな…確かに勇の声が俺の頭に響いてきたんだ…姿も見えた…なのに…どうして…?」

 

「おい、尚紀。病院に潜入しに行ってた時から変だぞ?幻覚でも見えているんじゃねーのか?」

 

仲魔達には姿が見えていないのなら自分の幻覚と幻聴だったのかと尚紀は混乱してしまう。

 

項垂れながらも車に戻った彼は神浜に向けて家路を急ぐことしか出来なくなった。

 

……………。

 

家へと歩いていくほむらの足取りは重く、歩くだけで精一杯の状態のまま念話を繰り返す。

 

<…霧の影響から解放された街の人達は何が起こったのかも分からない表情をしてたわね>

 

<後で記憶操作魔法の調整が必要じゃろうな。それよりも大丈夫なのか…?>

 

ボロボロの状態であったが彼女はまどかを家に送るために一緒に向かう行動を起こしている。

 

散歩に出かけてくると父親に言いながら一晩中帰らなかった言い訳になろうとしたようだ。

 

立っているのもやっとの状況を利用したほむらはまどかの両親にこう話している。

 

病弱な自分が貧血で倒れ込み、心臓が落ち着くまで看病してくれたと説明したようだ。

 

<私は大丈夫よ…。望む形とは違っていても…まどかが人間として生きるなら文句はないわ>

 

<そうか…しかし浮かない表情をしておるな?その苦しみは本当に魔力消耗だけなのかのぉ?>

 

クロノスが心配する部分を説明することも出来ない彼女は自分自身に困惑している。

 

鹿目まどかが人間としての人生を残す結果を得られたのに酷い苦しさを心に抱えているのだ。

 

(どうしてこんなに……()()()()()()?目的は果たせたわ…なのにどうして…こんなにも…)

 

片手で心臓を抑え込みながら思い出すのは家路に帰る尚紀達と別れた時の記憶。

 

自分のために命を懸けてくれた尚紀の両手を握り締めながらまどかは心から喜んでくれていた。

 

彼のことを誰よりも尊敬すると嬉し涙を流して功績を讃えてくれた光景をほむらは見ている。

 

その時から彼女の心の中には自分でも分からない感情が噴き上がっているようだ。

 

(私だって…尚紀のことを心から尊敬しているし、信頼している。なのに…この感情は何…?)

 

自分自身が理解出来ずに混乱しながら歩いていると自分の家の前にまで辿り着いている。

 

<暫く学校は休め。莫大な魔力消耗を道具無しで回復させるなら、絶対安静が必要じゃ>

 

<そうさせてもらうわ……何だか……凄く疲れている。体も…心も……>

 

玄関の前にまでふらつきながら迫った時、違う男の念話が脳内に響いてきたようだ。

 

<感情は理屈じゃねーんだよ。本当はお前……()()()()()()()()?>

 

驚きの表情を浮かべたほむらが自宅の上を見上げれば、屋根の部分に座った新田勇がいる。

 

座ったまま滑り落ち、地上に着地した彼が不気味な笑みを浮かべながらほむらを挑発するのだ。

 

「また貴方なの…?私の家にまで押しかけてくるだなんて…気持ち悪いストーカー男ね」

 

<まぁ聞けよ。お前の大事な人は随分と尚紀にお熱心な態度だったよな?不安にならないか?>

 

「な…何が不安になるっていうのよ……?」

 

<このまま尚紀とまどかちゃんが親密になっていけばお前……へへ、分かるだろ?>

 

ゲスい笑みを浮かべてくる勇が何を言いたいのかを理解したほむらは激怒した顔つきになる。

 

「バカにしないで!!まどかを尚紀に盗られるかもって…私が怯えてると言いたいの!?」

 

<サブカル方面は詳しくねーけど、こういうのってアレだろ?()()()()()()()()()()()()()?>

 

「私とまどかとの関係が……尚紀に侵害されてるですって!?ふざけた理屈よ!!」

 

<百合の間に挟まる男は死ねってよー…昔からネットで言われ続けてた気がするんだよなぁー>

 

「私は尚紀を心から尊敬しているわ!私の大切な仲魔なのよ!彼の侮辱は許さないわ!!」

 

<なら、どうしてお前の心はそこまでイラついてるんだよ?>

 

心を見透かしてくる男の視線が恐ろしいのか彼女は顔を俯けてしまう。

 

無言になって震える彼女を挑発するようにしながら彼女の周囲を歩く勇が念話を送ってくる。

 

<お前は尚紀から聞かされたフェミニスト共を嫌悪したな?どうしてフェミを否定したんだ?>

 

「決まってるじゃない…他人に迷惑をかけてまで自分の我儘を押し付ける奴らなんて最低よ…」

 

<自分が見えてないんじゃねーのか?さっきまでのお前らは何だ?我儘を押し通したよな?>

 

「えっ…?そ、それは……その……」

 

<自分の我儘は良くて、フェミはダメか?都合がいいダブルスタンダード脳になってねーか?>

 

尚紀の入れ知恵によってさやかとの論戦は潜り抜けたが暁美ほむらは本来、論戦が苦手な者。

 

自分の矛盾した部分を指摘された彼女は動揺を抑えきれなくなり、酷く混乱しているようだ。

 

<自由を掲げたなら自分の我儘に正直になるべきだ。()()()()()()()()()()()と叫んでみろよ>

 

「出来ない…そんなの出来ない!!尚紀は私にとって…やっと巡り合えた最高の仲魔なのに…」

 

<他に選びようがあるのに一つの事に拘る必要はない。俺の思想を大好きな子に語ったよな?>

 

「やめて……もうやめて!!お前の言葉なんて聞きたくない……私を惑わさないで!!」

 

<どんな献身にも見返りはない。尚紀のために我慢を選んでも、お前の欲望は救われねーよ>

 

勇の言葉が欲しかったどす黒い感情が強まり、心臓を抑え込んだ彼女の膝が崩れてしまう。

 

心臓に手を置く彼女は高鳴りを感じており、本当に求めたい欲望の鼓動を感じている。

 

<お前はお前自身を守れていない。大好きな子に搾取されるなと言いながら搾取されるのか?>

 

「私は…お前なんかの惑わしに負けない…私は尚紀を必要としている…彼がいたからこそ…」

 

<チッ…この期に及んでまだいい子ちゃんぶる気か?だったらよぉ…可能性を俺が示してやる>

 

息を切らせるほむらの前に立った彼を彼女は見上げる。

 

その両目は魔人である人修羅と同じ金色の瞳となり、彼の体から魔力が噴き上がっていく。

 

同時に世界がオーロラに包まれるかのようにして変化していく光景が生み出されるのだ。

 

「こ……これは何!?あの男が生み出した悪魔結界なの!?」

 

無数のオーロラが浮かぶ領域で漂っているほむらは『夜のオーロラ』に惑わされていく。

 

数多の可能性を紡ぐ未来の如く七色に変化するオーロラが生み出すのは可能性の未来なのだ。

 

<<さぁ、俺が連れて行ってやるよ。()()()()()()()()()()…可能性の未来へとな>>

 

漂うほむらの前で形を成していくのは余りにも巨大なコトワリの神。

 

「こ……これが……ボルテクス界で生まれた……コトワリの神……?」

 

現れた神こそ、かつて人修羅が打ち倒した漂流の邪神ノアであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【ノア】

 

本来は名もなき神であるが新田勇がノアと名付けた漂流の邪神。

 

アマラ経絡の深層を古より漂流し続けた存在であり絶対の孤独を司るとされる。

 

巨大な四足の胎児のようなどす黒く透明な姿をしており、目の部分には赤い球体が浮かぶ。

 

赤い球体には膝を抱えて中に入った勇が内包されているようだ。

 

ノアとは旧約聖書の箱舟の名であり、ノアの方舟の彷徨える姿を表す邪神であった。

 

「あ……あぁ……あぁぁぁぁ……」

 

巨大な透明の体をもつ邪神ノアの胴体部分に広がる景色を見たほむらの目が見開いていく。

 

「そんな……そんなぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」

 

広がる景色に映っていたのは結婚式場の光景。

 

大勢の人々から祝福されながら歩いていくのは尚紀とまどかの姿である。

 

「やめて……やめて……」

 

ウェディングドレスを着たまどかは幸せそうな顔を浮かべながら夫となる者に顔を向けている。

 

彼女の幸福な気持ちとはアラディアの気持ちでもあり、2人の女神の幸福が今日適うのだろう。

 

「嫌よ……そんなの……嫌ぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」

 

<<さぁ、バカップル共が夫婦の誓いを行うシーンだ。熱いキスを祝福してやれ>>

 

涙を流しながらやめてと叫ぶが尚紀は止まらない。

 

勿論これは勇が生み出した幻に過ぎないが、暁美ほむらの表情が憤怒に染まっていくのだ。

 

()()()()()()()()よ……誰がお前なんかに……男なんかに……渡すものかッッ!!!」

 

我を忘れて叫んだ暁美ほむらの憎しみを邪神ノアは祝福してくれるだろう。

 

幻の景色を消したノアはオーロラの世界に沈んでいく彼女に纏わりつくように漂っていくのだ。

 

自分の本当の感情を叫んでしまった暁美ほむらは呆然とした表情を浮かべながら沈んでいく。

 

涙が零れ落ちていく彼女は本当の自分に出会ったような気がしたのか、こんな言葉を呟いた。

 

「私の中に……こんな醜い獣が……潜んでいただなんて……」

 

<<お前もまた黙示録の獣の一匹だよ、悪魔ほむらちゃん。獣として…素直になりなよ>>

 

狂ったような笑い声を上げていくほむらが勇と同じように三角座りしながら丸まっていく。

 

漂う彼女の体を赤い球体が包んでいき、()()()()()()()()()()()()()()()のだと周りに示す。

 

<<それでいい。俺はお前にムスビの思想を託す…俺達のためにムスビの世界を作ってくれ>>

 

邪神ノアの頭部が変化していき、巨大な勇の顔に変化する。

 

巨大な口を開けたノアはもう一つの目玉として球体に包まれたほむらを飲み込むのだ。

 

邪神ノアの世界に取り込まれてしまったほむらの意識はノアの如く漂うだろう。

 

()()()()()()()()()こそ、魔法少女として生きた暁美ほむらを象徴する概念でもあるのだ。

 

「フフッ…フフフ…そうよ…こんな結末はおかしいわ。魔法少女の物語は…女だけの物語…」

 

暁美ほむらの心をフェミニズム精神が支配していく。

 

男に対する強い憎しみを抱き、立場を逆転させたいと望む我儘の感情が噴き上がっていくのだ。

 

「男なんて私達の物語に必要ない…女の物語は…女だけで生み出していけばいいのよ…」

 

被害妄想の世界に引き籠ってしまった彼女の姿はまるで魔女に成り果てた頃のようにも見える。

 

くるみ割り人形の魔女の性質は暁美ほむらの性質であり、どれだけ否定しても彼女の性質だ。

 

「まどかと私が救われるには新しい物語が必要よ…女だけの集会…ワルプルギスの夜が必要ね」

 

自己完結する物語を描く新たなる支配者の姿が変質するかのようにして衣装が変わっていく。

 

カラスの羽をあしらった紫の新ドレスを纏う者こそ、まどかが救われる物語を生み出すのだ。

 

()()()()()()()()()()()…私以外は誰も開けない…強固な鍵をかけなくちゃいけないわ…」

 

二度とまどかの心に男が入り込めないような鍵をかける衣装がまどかにも与えられるだろう。

 

狂った笑みを浮かべながら両膝に埋めていた顔を上げる彼女は高らかに己の欲望を叫ぶ。

 

自分の欲望こそ優先されるべきだと信じて、彼女は新たなるワルプルギスの夜を生み出すのだ。

 

――さぁ、新しい私達の物語を始めましょうか。

 

……………。

 

見滝原市を飲み込んだのは悪魔ほむらのどす黒い感情が生み出した結界。

 

ミアズマの霧の如く見滝原市を切り離した暁美ほむらは巨大ドームの天井で踊っている。

 

これから始まる新たな物語を楽しみにしているかのようにして廻り続けていく。

 

その姿はまるで()()であり、新たなる物語を表すものになるだろう。

 

その光景を見滝原から離れた場所で眺めている新田勇の顔も満足な笑みを浮かべていく。

 

<お前はまどかちゃんのために誰よりも努力してきたよな?だからこそ…()()()()()()()のさ>

 

右手を持ち上げる彼の体が光を放ちながら消えようとしている。

 

人修羅に倒された勇はアストラル体となり、次元を彷徨う姿にされていたようだ。

 

<この世界に干渉出来るのもここまでだ。俺のムスビを頼んだぜ…新しいムスビの担い手>

 

――シジマに染まった尚紀や、魔法少女の体を手に入れた千晶のヨスガに負けるんじゃねーぞ。

 

黒のキャスケット帽子を被りなおした勇は踵を返して歩き去っていく。

 

その姿は蜃気楼のようになっていき、魔法少女が存在する世界から消え去っていったのだ。

 

自由(CHAOS)とは人間の尊厳を守るために必要だが、同時に社会秩序さえも破壊する爆弾。

 

自由と混沌を掲げる勢力こそが政治の左翼団体であり、イルミナティの先兵となるだろう。

 

秩序に弊害があるように、自由もまた弊害だらけなのだと人々は理解しなければならない。

 

物事は偏ったものだけを選んでおけば安心安全になどなりえないのだ。

 

人間の人生とは命綱無しの綱渡りも同然。

 

右の秩序(LAW)に偏ろうが奈落に落ち、左の自由(CHAOS)に偏ろうが奈落に落ちる。

 

何が正しいのかを迷いながら心を中庸(NEUTRAL)に保ち、細き道を進まねばならないのだ。

 

その道は困難を極めることなら道徳の開祖である孔子の言葉の中にも残っている。

 

それでも人々は楽な方向にしか振り向かないし、楽なものしか求めない。

 

人間は見たいものしか見ないし、信じない偏見生物。

 

己の感情が指し示す羅針盤を頼りにして争い合った戦争こそ、光と闇のハルマゲドンであった。

 

 

真・女神転生 Magica nocturne record

 

 

 

To be continued

 




許せ、サスケ。映画ワルプルギスの廻天ネタを最終章冒頭に入れたいからハッピーエンドで締めるわけにはいかんのだ。
ももこちゃんが乗り越えた心の試練を悪魔ほむらちゃんは乗り越えられるのか?な展開をもって6章を締めさせたいと思います。
6章に突っ込み忘れてた話をサイドストーリーでいくつか入れるとは思います。
それでは、最終部7章も縁がありましたら読んで頂けると凄く嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。