人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
権威主義とはトップから命令を下に下げるトップダウン構造である。
民主主義とはその逆であり、下から上に要望を上げるボトムアップ構造なのだ。
決定権と責任は一体であり、権威主義の責任は権力者にあり民主主義の責任は民衆が背負う。
だが実態は決定権は権威主義なのに
権威主義だけがまかり通るなら、我々日本人が高過ぎる税金を払う必要などないのだ。
会社も権威主義だが決定権と責任は一致しているから社員が会社の損失を払う必要はない。
だが日本政府は偽りの民主主義で決定権を国民から奪っておきながら責任は税金で押し付ける。
こんな不条理を日本人は許すからこそ、日本人の生活はいつまでも豊かにならないのであった。
……………。
これは遺産相続のために尚紀が奔走していた時期の出来事である。
「今日も……売れなかったなぁ……」
大きなバックに自社の竹細工商品を入れて営業を続けていたのは天音月咲である。
フェミニズム騒動の時に会社の代表である父親が逮捕された事により会社は存続の危機なのだ。
弟子達も必死になって取引先を探しているが犯罪者の竹細工商品はいらないと断られてきた。
重い責任を感じている一人娘は父親が帰ってくるまで会社を守ろうとしているのだろう。
「魔法少女達のところに訪問販売に行っても…安い百均商品と比べられて買ってくれない…」
ハンドメイド製品である天音の竹細工商品はインテリアとしては貴重でもコストは高過ぎる。
庶民が欲しがる品ではないため、月咲の商品を快く買ってくれる魔法少女はいなかったのだ。
「商品は売れないのに税金だけは国に奪われていく…こんなんじゃウチら…生活出来ない…」
人気のないベンチに座って休憩していた月咲であるが、目には大粒の涙が浮かんでいく。
「全部ウチのせいだ…男達の努力なんて考えず…女の我儘を選んだから…ウチの家が滅びる…」
自責の念に耐えられず泣き出してしまう月咲に声をかけて商品を売ってくれと言う者はいない。
目の前を通り過ぎる人々も生活があり、少ない蓄えの中でやり繰りをする必要があるのだ。
「封建的な歴史の方が正しかった…伝統的な男女の在り方を選んでおけば…こんな事には…」
父親が押し付けてきた封建的な男女の在り方こそが正しかったと痛感してももう遅い。
彼女は姉との同性愛に都合がいいフェミニズムを掲げた末に男達の努力を忘れた自己中女。
父親とタケのような男達の献身を踏み躙った者の末路として竹細工工房は崩壊するのである。
「人間って…どうして間違えないと分からないの?間違う経験を積んでからじゃ遅いのに…」
歴史から学ばず、感情と狭い経験と都合の良さだけで生きた末に滅んでしまうと嘆くばかり。
そんな時、救いの手を差し伸ばしてくれた存在こそ彼女が虐げようとした男性の手であった。
「どうした、月咲?そんな重そうな鞄を用意して営業活動でもしているのか?」
泣きながら俯いていた顔を上げれば黒のトレンチコート姿の尚紀と鞄持ちのタルトがいる。
道路の路肩にはロールスロイスが停まっており、運転手のリズが待機しているようだ。
「あっ…ごめんなさい、尚紀さん。ウチ…ボーっとしてたみたいで…気づかなくて…」
「ボーっとしてたというよりは…泣いていたようにしか見えなかったんだがな」
「ウチは…大丈夫だよ。それより最近姿が見えなかったけど…何処に行ってたの?」
「莫大な遺産相続手続きのためにアメリカに行っててな…今帰ってきたところなんだよ」
莫大な遺産相続という単語に反応した月咲の目が大きく見開き、鞄の中から商品を取り出す。
「あ、あの…尚紀さん!これ…ウチの家が作ってる竹細工商品なんです。どうですか…?」
差し出してきた商品を手に取った尚紀はタルトと共にしげしげと商品を見つめてくれる。
「いい出来だな。細かな籠目編みも手作業でしている職人技だと思う」
「とても美しい竹細工のバックですね。出かける時の鞄として私も欲しいぐらいですよ」
「えへへ…お父ちゃんの自慢の弟子達が作ってくれた商品なんです。金額は…その……」
少々高めであっても尚紀は欲しいと言ったタルトのためにかごバックを購入してくれる。
気に入ったバックを受け取ったタルトの表情も笑顔となり喜んでくれたようだ。
しかし月咲が営業活動までしなければならない状況を看過出来ない尚紀が事情を質問する。
事情を聞かされた彼は重い表情のまま月咲の横に座った後、色々と相談に乗ってくれるのだ。
「本当に価値のある物には正当な値段をつけるべきだ。安売りなどしたら皆が貧乏になる」
「だけど…それ以外に物を売る方法が思いつかなくて…。みんなが高いって言うから…」
「価格競争は破滅の道だ。例として語るなら歯科技工士業界だろうな」
根切と不当廉売、仕事の取り合い潰し合いで薄利多売りを繰り返す業界はどうなるのか?
勿論人が壊れて離職率は桁外れとなり、崩壊寸前絶滅間近となるだろう。
これで消費者のことを第一に考えられる職人が生まれるのだろうか?
「お前の親父が残した弟子達が壊れて出て行った時、お前は本当の終わりを迎える事になる」
「そんなことって…物を売らないと利益が出ないのに…安く売ったら社員が消えるだなんて…」
「正当な価格が売れないのも無理はない…日本は令和の時点で貯金0世帯が急増してるんだ」
年収300万円以下や貯金0世帯が急増した令和の日本は今、
貯蓄の無い人は食を減らすか安いものを買って食べるしかない状況に陥っているのだ。
「このまま国が進めば
「ウチら貧乏人は…上級国民共に生殺しにされ続けるの…?日々の生活だけでもう限界だよ…」
「それすらも政策実現のために織り込み済みなんだろう。日本は
「こんな理不尽ないよ…上級国民共だけが生きればいいのなら…日本なんて滅びればいい…」
「俺も元ホームレスだ…怒りの気持ちは分かるよ。お前達を救うために税金があったのにな…」
税金とはインフレ防止と資本主義による富める者と貧しい者との暮らしを調整するものである。
累進課税によって差を少なくする目的であった筈なのに今の日本は真逆を行っている。
貧しい者に負担が大きくなる増税、富める者の負担が減る法人税減税の光景こそがそうだ。
「デフレで格差が拡大してる時に増税など狂気の沙汰だ。明らかに日本人を殺しにきてる」
「上級国民だけが儲かればそれでいい…それが腐った経団連と日本政府の本音だったんだね…」
「自分だけ儲かろうとする外資企業が増えれば景気は悪くなる。経営者は社会を考えるべきだ」
会社とは人間なのだと尚紀は月咲に語ってくれる。
外資に支配された経団連企業だけが儲けられたところで中小は赤字で賃上げどころではない。
外国資本の株主あっての会社ではない、
「利益は先ず社員に支給して還元するのが先だ。株主など後に回せばいいのに最優先にする…」
「株主利益が最優先にされて…社員の利益はカットされるから国全体が貧乏になるんだね…」
「
昭和の経営者は社会全体を考えてくれる者だったが、今ではもう絶滅危惧種になるだろう。
株式会社が株主のモノになってからは言いなりとなり、逆らえば首を挿げ替えられるのだ。
「欧米ユダヤ帝国から入ってきた金融システムは国を亡ぼす。大事なのは
我々は税金を納めて社会を支えているのではないと彼は語ってくれる。
モノやサービスを生産する事によって社会を支えているという事を国会議員は考えてくれない。
税金ではなく人間に支えられているというのを意識出来ないのが役立たずの官僚と国会議員だ。
こんな意識を持つ者達が国を動かし、AIやロボット技術を導入していけばどうなる?
生産部分を人間からAIやロボットに置き換えていき、人間の大部分は地球に必要なくなる。
アジェンダ計画の名のもとに地球人口は削減され、人類の数は五億人以下で十分となるのだ。
「こんなに貧しくなったのはウチら国民のせいじゃない…全部日本政府と官僚共のせいだよ!」
「日本はもう自国民を守ってはくれない…だからこそ、俺達ソーシャルワーカーが必要なんだ」
立ち上がった彼はリズの元へと歩いていき、窓を開けた彼女と色々相談してくれる。
帰ってきた彼が提案してくれた内容を聞いた月咲の表情が喜びに包まれていく。
「本当に…!?本当にウチの家と取引してくれる企業を用意してくれるの!?」
「ペレネルが残した貿易会社は外国製品を多数扱っている。その中に竹細工商品も入れてやる」
「外国人の私が見ても日本の魅力が詰まった品だと思います。欧米でなら喜んでくれますよ」
「忍者は日本で流行らないけど海外ではバカ受けと同じだろうな。これで生活出来るだろう」
「海外なら月咲さんのお父さんの悪評は届かないでしょう。安心してくださいね」
立ち上がった月咲が涙を浮かべながら尚紀に抱き着いてくれる。
「ありがとう…グスッ…本当にありがとう!男の人って…こんなにも頼りになる存在だった!」
「人間は多くの人に支えられているというのを意識しろ。男の俺達は女と共にいるんだからな」
「うん!ウチはもう絶対に男を憎まない…男を排除したいと叫ぶ魔法少女も許さないから!」
泣きじゃくる彼女の背中を片手で優しく抱きしめてくれる尚紀を見たタルトも微笑んでくれる。
「隠れてないで出てきて下さい。恥ずかしがることないじゃないですか?」
タルトが視線を向けた方向には電柱の後ろに隠れていた月夜がいる。
彼女も大きなバックを持って月咲を手伝っていたようだが同じように嬉し涙を零すのだ。
「グスッ…彼はわたくし達姉妹の救いの光です!ずっとお慕いしていきます…尚紀さんっ!!」
月夜まで駆けてきて尚紀に抱き着いてくる。
天音姉妹に抱き着かれながら心から慕われる彼ではあるが、その表情はとても暗い顔つきだ。
取引のために竹細工工房の代表と話をするため名刺を渡した後、彼は帰路につくのであった。
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「フェミニズム騒動の時は男を憎んだ子達だったのに…変わってくれるものね」
「優しさのバトンが託されたから変わったんです。他の人にもそれが渡されるのを願います」
運転しながら助手席のタルトと話していたリズであるが、ルームミラーに視線を向ける。
ラグジュアリーな後部座席に座る彼の表情は重く、腕を組みながら考え込む姿をしていた。
「尚紀…先ほど語ったベーシックインカムとは何ですか?私は政治に疎いので分かりません…」
「社会保障や年金の財源を全て無くして昭和戦時中の配給制度に日本を作り替えるものさ」
「そんな恐ろしい政策を日本政府は実行するために意図的な貧困を生み出すのですか…?」
「戦後の闇市から生まれた蒼海幇からベーシックインカムの恐ろしさを聞かされてきたんだ…」
金を配りますと言いながら闇市が無ければ成り立たない配給制度時代がかつて日本にあった。
七万円を配られても生活保護の半分以下の金額だし、それだって税金で回収されるだろう。
財源の年間100兆円も社会保障費や年金を全てカットされるから
資本を動かす者との差は極限にまで達し、日本はフランス革命前の地獄の時代となるのだ。
「大阪の代表的な政党のアドバイザーは年金などをカットすれば120兆円浮くというが罠だ」
「罠……?」
「我々に必要な社会保障費や年金を全てカットされて100兆円使われる。残りはどうなる?」
「あっ……」
「毎年20兆円は政府の懐に入った後、中央銀行に吸われてユダヤ財閥に回収されるのさ」
ベーシックインカムによって老人と障碍者を間引かれた日本人は少ない配給で生きていけない。
闇市が再び生まれたりAIやロボットに仕事を盗られた少女達は売春をしなければ生きられない。
みたまやみかげ、十七夜や月咲や令達のような生活困窮少女達の未来とは絶望そのものなのだ。
「社会保障費や年金を削除だなんて狂ってます…日本政府は悪魔に魂を売り渡したのですね…」
「これ程までの貧困地獄の国になったのに…日本行政は日本人を見捨ててきたのね…」
「このままでは働く人口は一割程度で十分…残りはいらないから死ねというようなものです…」
「その光景なら役場の窓口で見られる。生活保護を申請しにきた日本人を蹴り出す光景がな…」
日本人が窓口に行っても申請は受理されないのが今の日本の役場である。
受理して却下すると不服申し立てが出来るのでなんとか受理せず本人の都合で辞退に追い込む。
生活保護は二割のノルマがあり、残り八割はお断りするよう出来ている。
「違法な窓口規制が横行するのはな…役場そのものが在日共に乗っ取られてる部分もあるんだ」
「日本の地方行政機関が…移民に乗っ取られてるですって!?」
「在日は審査も甘く受理されるのに国民は蹴り出される。
尚紀は今の役場の生活保護申請の状況について例え話を語ってくれるのだ。
……………。
例えば在日公務員が窓口に立ち、生活保護を申請しにきた八雲一家に対してこう告げたとする。
「まだ働けるだろうが?子供や兄弟などの親族に援助を頼めばいい」
申請用紙すら渡さずに拒絶の言葉を送ってくる在日公務員に対してみたまの両親は激怒する。
「神浜テロのせいで未だにこの街の経済は苦しい状況だ!我々東住民に死ねというのか!?」
「私達にはまだ高校生の娘と中学生になる娘達がいるんです!どうか受理して下さい!」
「なら、その娘達に働かせればいいだろう?
その言葉を聞かされたみたまの両親は血の気が引く程の絶望と憎悪を感じるだろう。
大阪市の役場職員が生活保護申請しに来た女に対してソープで働けと言った言葉と同じ責め苦。
激怒したみたまの母親は涙ながらに憎悪の叫びを上げるのだ。
「うちの娘達に売春なんてさせません!!どうして行政は国民を救わないの!?」
「国の税金は国の借金を残さないために支払われるんだ。我々地方行政も税収が少ないんだぞ」
「嘘をつけ!!我々が来る前に申請に来ていた外国人は受理したくせに!!騙されないぞ!!」
「いい加減にしろ!お前達は自分が働きたくないから税金で生きたいだけの極潰しだろうが!」
「なんだとぉ!?我々の税金で在日共は生きられるのに…
「おい、警察を呼べ!役場で暴れようとしている犯罪者がいるぞ!」
犯罪者扱いされそうになったみたまの両親達は慌てた態度になりながら逃げていく。
後ろを振り向けばにやけた態度を見せながら嘲笑う在日公務員がいたのであった。
……………。
「みたまの一家はうちの炊き出しに来る程にまで生活が困窮している…遠くない未来だろうな」
例え話を聞かされたタルトとリズの表情は重く沈み、先を感じられない苦しみを浮かべていく。
「もしそうなったら俺がみたまに伝えておく。申請書を受理しないのは行政手続法違反だとな」
「国家賠償請求出来ればいいのだけど…日本人のための正義があるとは…もう思えないわね…」
「この国は愚かの極みです…自己責任論に持ち込めば何でも下の者達のせいに出来てしまう…」
「
「自己責任論なんて単なる責任回避の屁理屈よね…私もそう思うわ」
「上の連中が自己責任論を振りかざすなら、最低賃金で働かされる者だって責任はいらない」
最低賃金でこき使われるスーパーの店員なら、いらっしゃいませ!なんて言う必要はない。
サービスも最低でいいし、寝転んで酒飲みながら会計をやればいい。
最低賃金なら最低限の売買が出来ればそれでいいはずだと尚紀は語ってくれるのだ。
「
「御上に逆らうことを忘れた日本人の末路ね…日本人は民主主義なんかじゃなかったのよ…」
「御上には媚びへつらい…下の者を見つけては憂さ晴らしをする権威主義だったんですね…」
天音姉妹を救っても尚紀の顔は暗いままだった理由をタルト達は知るだろう。
彼女達が救われたところで社会問題の根本的な部分の解決には至らないのだ。
新たな家となったペレネルの屋敷が近づく中、尚紀は外の景色を見ながら不安を募らせる。
(このまま国の貧困が続けばどうなる…?今の状況は1920年代の世界恐慌と同じだぞ…)
経済が崩壊した時やしそうな時は
政体崩壊の訪れになれば1920年代後半の経済恐慌時と同じく武力衝突が繰り返される。
当時の日本は経済恐慌から武力衝突、政体再編による全体主義独裁国家の道を進んだのだ。
(徴兵制の維持は貧困と格差拡大…今の日本の職業ランキングは公務員が一位なんだぞ…)
人気職業ランキングでユーチューバーを超え、再び公務員が第一位に日本はなっている。
それは裏返せば徴兵制を敷かれて国防軍という公務員になる需要が誕生する事に繋がるのだ。
(為政者の役目とは戦争で軍事産業を儲けさせることじゃない、生活を支えるのが最優先だ)
為政者が有能かどうかは経済政策如何で判断出来る。
経済状態次第で国の存亡に関わるのは勿論だし、経済の安定で政体の維持もしやすくなる。
余計な武力行使に人と金をかけずに済むという大きな理由があるからだ。
(憲法が憲法改正草案通りに進めば自衛隊は国防軍化して戦争が出来る。俺はそれを止めたい)
若者の命を軍事産業とその株主共に喰らい尽くされるのを防ぐためにこそ自分がいる。
そのために尚紀は政治の道を進むのだと心に誓うのであった。
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遅くまで遺産相続の事務作業が続いていたのだが小休止するようにして尚紀はテラスに出る。
屋敷の二階にあるテラス席の椅子に座った後、置かれた灰皿の前に煙草の箱を置く。
箱から煙草を取り出した彼は指先で火を点した後に紫煙をくゆらせながら夜空を見上げる。
考え事をする時はこうやって外で煙草を吸うのが彼の癖になっているようだ。
「俺が生まれた国は何だったんだろうな…資本家やその犬共を儲けさせる牧場だったのか…?」
日銀が上場企業の五割で大株主。
金刷って上場企業にばら撒き、刷れば刷るほど日本円の価値はどんどん下がっていく。
日本が貧しくなる根本原因は日銀であり、紙幣を発行する時に貨借対照表の負債方に記載する。
人々の財布に入った紙幣とは国の負債であり財政赤字。
財政赤字を減らすと世の中に出回る紙幣も減り、
負の連鎖構造しか存在しない日本の現実を考える尚紀の心は黄昏に満ちているのだ。
「賭場と同じだ…儲ける仕組みを作り実行した奴だけが一人勝ちする構造だったんだ…」
支配とは仕組みを作ることだとユダヤの格言には残っている。
それを実行された国は仕組みを作った連中から国が滅亡するまで搾取されるしかない。
「魔法少女だって分からないながらも国に未来は無いと絶望してる…だから悪に堕ちるんだ…」
「政治と社会問題は魔法少女問題と直結してるのは…日本も欧米も変わらないのよ」
視線を向ければワインとグラスを手に持ったリズが近づいてくる。
座っていいか聞くのだが、彼は無言で頷いてくれたため彼女は椅子に座り込む。
屋敷に帰る時から元気がない彼の気を紛らわせるために酒の付き合いをしてくれるのだろう。
「タルトも呼びたかったけどあの子は下戸だから…代わりに私が酒の付き合いをしてあげる」
「リズ……」
彼女が淹れてくれたワインのグラスを手に持った彼は一口だけ飲んでくれる。
淹れた者も一口飲んだ後、現実問題に苦しむ主人の悩みを聞いてくれるのだ。
「かつての俺は結果論だけで魔法少女を悪にした…どうして悪に堕ちたのかを考えなかった…」
「彼女達だって労働者の子供として生まれた者よ…家の問題は子供の生活にものしかかるのよ」
「義妹の杏子と状況は同じだった…家庭問題や社会問題に苦しんだ末に壊れていったんだ…」
「普通の子供達だって同じ苦しみを抱えている…だからこそ将来の魔法少女になっていくのね」
「魔法少女になるのは最大の親不孝だと俺は言った…だが両親すら政治問題は解決出来ない…」
「奇跡に縋りつくしか道がない…そんな彼女達の善意や悪意が魔法少女を生み出し…破滅する」
「地獄への道は善意で舗装されている…第二次大戦時代の格言は魔法少女の末路を表せるな…」
「悲しみと憎しみしか生み出せない救いようのない世界…貴方は彼女達のために何が出来る?」
それを問われた時、尚紀はグラスに残っていたワインを一息で飲み干す。
灰皿に置かれた煙草が灰しか残らない状態になった頃、尚紀の真心がこもった言葉が出る。
「俺はな……生活が苦しい魔法少女達に子供らしい幸福を与えたい。学生生活を楽しませたい」
みたまや十七夜のような貧乏な子供も奨学金ローンの心配をかけない大学生活を送って欲しい。
生まれた経済力による教育格差を是正するためにこそ政治はあるのだと彼は語ってくれるのだ。
「学費が爆上がりした国立大学は今ではもう金持ちしか行けない。そんな政治を変えたいんだ」
給料は上がらず、消費税や社会保険料の負担増、所得の中央値も激減して年金さえ減額される。
昔の日本とは比べ物にならない地獄の国になろうとも、魔法少女達には幸福になる権利がある。
「絆を結べる者達と大学生活をエンジョイして欲しい。絆の数だけ…社会を大切にして欲しい」
人間として生まれ、魔法少女に成り果てようとも
子供こそが国の未来を築き上げるのだと信じて、嘉嶋尚紀は子供達の未来を耕す者となる。
「絶望して死にたい人じゃない、生きるのを諦めた人が死ぬ。ならそれを救うのが俺の政治だ」
みたまのように社会の理不尽に苦しめられた末に滅びを望む者は生み出さない。
命を懸ける価値のあるものなんて、
清聴してくれていたリズは心打たれたのか立ち上がり、彼の前に立って片膝をつく。
「ニコラスとペレネルが命を懸けて貴方に未来を託した気持ち……今ようやく理解出来た」
「お…おい、リズ…?」
「私の剣は貴方のためにこそ振るい続ける。この命…貴方の夢のために使って欲しい」
顔を上げたリズは嘉嶋尚紀こそが人々の上に立つべき者だと言ってくれる。
「貴方は国の頂点なんかよりもずっと上を行ける者よ。私はそう信じられると確信がもてたわ」
騎士として生きるクーフーリンと同じくリズ・ホークウッドもまた仕えるべき主人を見つける。
そのためにこそ自分の剣を受け取って欲しいと言うのだ。
誓いの覚悟を受け取るしかないと感じた尚紀が立ち上がり、左手に将門の刀を生み出す。
「分かった…リズ。お前もまたクーフーリンと同じく生涯に懸けて…俺に忠誠を誓うといい」
「師弟共々…私達は貴方の敵を打ち倒す剣となるわ」
刀を抜いた尚紀は平たい部分を用いてリズの肩を叩いてくれる。
騎士にとっては混沌王に忠誠を誓うアコレードの儀式光景なのだ。
忠誠の誓いを立てる者を見守るのは執務室の影で隠れている者達。
扉を開けたまま外に出ていたため尚紀達の言葉は聞こえていたようだ。
「尚紀……さん……」
嬉し涙を流し続けるのは尚紀を見かけたと月咲から連絡を受けたみたまである。
アメリカから帰っても屋敷で仕事が山積みだと聞いたことで手作りのお弁当を持ってきている。
彼女を執務室に案内したタルトも涙ぐみながら心の中でリズと共に片膝をつくのだ。
「マスター…私もリズと共に仕えるべき主人を見つけました。あの人のためなら私は死ねます」
「同じ気持ちよ…タルトさん。尚紀さんのためなら…私は命だって惜しくはないわ」
魔法少女と共に戦わなくても彼女達に出来ないことを自分がやると彼は誓っている。
そのためにこそ尚紀は暁美ほむらが諦めた支配の仕組みと戦う覚悟を背負うのだろう。
しかしいくら覚悟を背負おうとも一度作られた支配の仕組みを破れるものではない。
人修羅とて自分一人では何も出来ないものであり、多くの助けを必要とする。
しかし尚紀を助けようとしてくれるのは彼が救ってきた身近な者達しかきっと現れないはずだ。
彼が叫ぶ理屈など人々は求めてなどいない。
求めているのはパンとサーカスであり、それを提供してくれる限り売国政府に尻尾を振るのだ。
現実逃避を選んだ愚民は御上に迎合しながらマヌケを見つけてはいたぶる娯楽にふけっていく。
日銀と日本政府からどれだけ殴り殺されるほどの現実を与えられようとも見ないし聞かない。
現実を知らせようとする者を排除したい差別感情とは堕落の集団社会を守りたい基礎本能。
堕落の共同体は欲しいものを与えてくれる限り権威主義を掲げて民主主義を捨てるのであった。
これも6章の上の方に突っ込みたかった話でしたけど入れ込むの忘れてたのでサイドストーリーで入れ込んでおきますね。