人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
悪魔晩餐会ともいえる騒動が起きたのは人修羅とライドウが神浜で戦った後の頃の話である。
「ライドウよ…魔法少女達から随分と痛めつけられてしまったな。傷の方は大丈夫か?」
潜伏している水徳寺の部屋には布団が敷かれており、顔が腫れたライドウが休んでいる。
少し前に訪れた業魔殿で起きた騒動に巻き込まれてしまい、彼も何故かボコボコにされたのだ。
「大丈夫だ…一週間も寝込んだしこれ以上休むことは出来ない。今日から捜査活動を再開する」
「その意気や良し。全く…大正時代のノリを取り戻したヴィクトルのせいで災難塗れだな…」
「そう言うな。危険な頃に戻ってしまったが…ヴィクトルはあの姿の方が馴染みやすい」
「我にとっては過去のヴィクトルだが、うぬにとっては同じ時代を生きるヴィクトルの姿か…」
黒猫のゴウトが用意したシップを頬に張り付けた後、ライドウは支度していく。
サマナー装備を纏った後にハイカラマントを着て出かけようとするのだが誰かが走ってくる。
「単独捜査に行ったモコイが帰ってこないよーライドウ!」
やってきたのはモー・ショボーであり、彼女がライドウの看病をしていたようだ。
「やれやれ…あの者を単独で捜査に向かわせたのは不味かったな。見つけてやらねばならん」
「モコイは街の北側を調べると言って出て行ったな…北養区辺りで迷子になったのだろう」
「悪魔は気まぐれだから道草でも食ってるのだろう。それとライドウ、和尚から伝言もある」
水徳寺で世話係りを務めるヤタガラス構成員からの伝言とは夕飯と風呂の件であったようだ。
「そうか…給湯器とやらが壊れて修理出来るまでは銭湯に行くしかないのだな?」
「こればかりは仕方がない…風呂は銭湯を利用しろ。近場に水徳湯があるらしいぞ」
「そこに通おう。銭湯か…関東羽黒組の佐竹さんを思い出すな…元気にしているだろうか?」
「あの豪傑が病気で寝込むものか。それと和尚は外出するそうだから夕飯も外で済ませるぞ」
「了解した」
人修羅の潜伏先もまだ見つけていないライドウは捜査も兼ねてモコイの捜索に向かっていく。
神浜の北養区こそ人修羅として生きる尚紀の住まいがあり、普段生活を送る生活圏であった。
……………。
「ビバ!パトロール!なんだけど、ここはどの辺なのかな?迷ったみたいだね、ビバビバ」
北養区にあるウォールナッツから南に下った辺りをうろついているのはライドウの仲魔の一体。
モコイがのそのそ歩いているのだが道行く人々は彼に気が付いていない様子。
概念存在の悪魔を視認出来るのは同じ悪魔かデビルサマナー、そして魔法少女しかいないのだ。
「水徳寺ってどっちだっけ?密かにピンチだね、ロンリーだね、ボク」
どうしようか迷っていると魔法少女の魔力を複数人感じ取ったモコイが現場に向かう。
訪れたのは公園であり、参京院教育学園制服姿の少女の元へと歩み寄っていく。
「フン!ハッ!ヤァ!!」
公園で空手の型稽古をしていたのは志伸あきらであり、かこや美雨も付き合っているようだ。
「えっ?ええっ!?あきらさん!美雨さん!向こうから変な生き物が近寄ってきますよ!」
驚かす計画をしていたのにかこに気が付かれたため即座に頓挫したモコイが落ち込んでしまう。
「コケまくりだね、ボク。そこは見なかったフリをしてくれるところかな、チミ」
「お…お前は何者ネ…?」
「いや、どう見ても魔獣には見えないし…尚紀さんやケットシーのような悪魔だと思うよ…」
「野良悪魔さんなんですか?ええと…神浜には何か用事で訪れたんでしょうか?」
摩訶不思議な小人の元へとやってくる美少女達を見上げるモコイが上機嫌になってくれる。
「ウヒョー、やっぱ魔法少女は美人さんばかりでボクはメロメロだネ、いいっスね」
「質問に答えるヨ。お前は何者ネ?まさかナオミ姉さんが使役する悪魔とかじゃないのカ?」
「その人も美人サマナーさんなら嬉しいな。ボクを使役するサマナーくんはライドウだよ」
「業魔殿に現れた葛葉ライドウの仲魔なのカ…?不愛想な顔して面白い仲魔を持てる奴ネ」
「ここには何をしにきたんだい?ライドウさんは一緒じゃないの?」
「スポーティー空手ガールのお陰で状況を思い出したっス。ヤバいね、今すっごく…」
ショボーンとした態度を見せるモコイを見た常盤組の面々が向かい合い、ひそひそ話を行う。
「どう見ても迷子ですよね…この子?交番に連れて行こうにも悪魔の姿は見えないし…」
「丁度いいネ、私達でこいつを家に帰すヨ。謎のサマナーの潜伏先を突き止めるチャンスネ」
「ライドウさんかぁ…ヴィクトルさんの旧友みたいだし、尚紀さんと戦って欲しくないな…」
「彼にも何か事情があるんだと思いますけど…尚紀さん達との戦いを止められるかどうか…」
ひそひそ話を終えた彼女達がモコイに振り向けば盛大にお腹が鳴る音が響いてしまう。
目が点になっている少女達に顔を向けるモコイは全身をくねらせながらこう告げてくる。
「実はね、今は猛烈にお腹が空いてるんだよネ。ボクと一緒にナウイ喫茶店に行かないカナ?」
「コイツ…私達をナンパしに来ただけの奴なのカ…?」
「魔法少女ナンパいいよね、実は好きなんスよ、オンナ。考えただけでドキドキだね、コレ」
「なんだか…凄く変わった口調で喋る悪魔さんですよね…」
「マイペースというか何というか…警戒してるとボク達の方が疲れてくるだけだよね…」
「ドゥフフ、女の子と沢山お話がしたいネ。オシャレなレストランを知らないカナ?」
「レストランなら魔法少女仲間のまなかのウォールナッツがお勧めネ。連れてかないけど」
「ガックリ、ダメダメだね、ボク。魔法少女と一緒にプーアル茶を飲みたかったな」
膝を抱えながら蹲ってダークゾーンを作っているモコイの元に近寄る人物が現れる。
「こんなところで油を売っていたのか、モコイよ。ライドウの手間を取らせるでない」
現れたのは漆黒のハイカラマントで全身を覆い、学帽を目深く被る葛葉ライドウ。
尚紀を襲う存在についてはよく知らない彼女達は警戒するのだが彼は首を横に振ってくれる。
「すまんがライドウ、適当に説明してくれ。猫である我の言葉は魔法少女では通じない」
「分かっている。自分の仲魔が迷惑をかけようとしていたのならば謝ろう、すまなかった」
謝罪してくれる彼の態度で警戒が緩んだ常盤組の面々を尻目にライドウが去っていく。
後ろをついていくモコイは彼女達に振り返った後、元気よく手を振って別れを告げたようだ。
「とても誠実そうな人ですね…近くで見ると高校生ぐらいにしか見えないサマナーさんでした」
「美雨と同じ年齢ぐらいの人なんじゃないのかな?服だって学ランを纏ってたし」
「みたまから聞かされたけど、アイツは大正時代の男ネ。私よりもずと年上のお爺ちゃんヨ」
「デビルサマナーは時代を超える魔法まで使えるんですね…悪魔の力は次元が違い過ぎます…」
「だからこそ、ボク達もまた悪魔の力を手にするために業魔殿を必要としたわけさ」
「これからの戦いは魔獣だけでは済まない気がするネ…私達の社会情勢は大きく変革するヨ」
一方、ライドウと共に移動していくモコイは美雨から聞いた情報が気になる様子。
「サマナーくん、夕飯はウォールナッツというレストランがオススメだね」
「洋食か…鳴海さんは元気にしているだろうか?元気にとんかつライスを食べてるだろうか?」
「うぬは鳴海に連れられて洋食屋に通ってたものだったな。我も懐かしい気持ちにさせられる」
「夕飯は外食だったな…ウォールナッツとやらは何処にあるんだ?」
「少し待て、我がスマホ検索してやろう」
「すまほ……?」
猫の首輪に刺してある小型のスマホを器用に取り出し、地面の上で肉球操作していく。
摩訶不思議な道具を見るライドウは驚き、モコイは触らせてくれと駄々をこねるのであった。
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「やれやれ…給油機が故障するなんてな。中古物件の泣き所は家の修理だな」
今日の仕事は早めに終われた尚紀は仲魔達と共に車で移動している。
クーフーリンが運転するフルサイズバンで向かう先とはウォールナッツであるようだ。
「ニャー!久しぶりのウォールナッツだニャ!まなかの料理が楽しみだニャー♪」
「貴方が我儘言うから外食になったけど、大勢で押し寄せて大丈夫なのかしら?」
「俺様は美味い飯が食えるなら何処でも構わないぜ」
「ウォールナッツとはどんな食事を提供してくれるのだ?」
「洒落た洋食屋だが、営業は一人娘の胡桃まなかが担当している。あの子の料理は格別だぞ」
「そうか…尚紀がダメ出ししていた中華飯店万々歳よりは期待が持てそうなレストランだな」
「万々歳が50点の味なら、ウォールナッツは90点あげてもいい味だ。楽しみにしていろ」
「人修羅ヨ、擬態姿ノ我モ同行シテイイノカ?」
「構わないと思う。ネコマタやケットシーを連れて行ったらペット料理も研究してくれたし」
「ソウカ…期待シヨウ。ハチミツタップリノデザートヲ提供シテクレタラヒイキニシテヤル」
車を駐車場に停めた尚紀達が出て来て店の玄関へと向かっていく。
しかし彼らの足が立ち止まり、向かい合いながら店について何かを話し合っている。
「おい…店の中に複数の悪魔の魔力を感じるぞ。この魔力を俺様は覚えている」
「たしか…葛葉ライドウが使役していた悪魔達の魔力だな」
「ムゥ…我ノ愚弟ノオルトロスモイルヨウダ。何用デ奴ラハ訪レタノダ?」
「そりゃまぁ洋食屋なんだし…洋食を食べに来たとか?」
「店の中の魔力はサマナーを除くと5体いるようだニャ…オイラ達入れるのかニャ…?」
判断は任せるとばかりに視線が集まった尚紀の表情は迷いを孕んでいたが首を縦に振る。
「仕方ない…出たとこ勝負だ。これだけのメンツがいるんだし恐れる必要はないだろう」
食事に来た客として堂々と入ってもいいのだと判断した人修羅達が店に入っていく。
店内を見回してみれば奥の団体席の方から騒がしい声が響いてきたようだ。
「あーっ!!見て見てライドウ!人修羅達までカレーライスを食べに来たよ!」
「ウォー、ゴキゲンなゴチソウタイムナウ。人修羅くん達も一緒にご飯食べようよ」
口の周りをクリームでいっぱいにした仲魔達の声に反応した者が視線を入口に向ける。
ライドウとはまだ険悪な関係だった頃の尚紀も鋭い視線を送るのだがライドウは首を振る。
「お前達、彼らを相手するな。我々は食事に来ているだけだし、暴れれば店に迷惑がかかる」
召喚者が仲魔達に釘を刺そうとするのだがヨシツネの姿が席にいない。
「モダーンな夕餉を楽しんでたら招かれざる客共のご登場だ!ここで血祭にしてやらぁ!!」
いきなり仕掛けてきたヨシツネに対して悪魔化したセイテンタイセイが迎え撃つ。
「上等だ、サムライ悪魔!!如意棒を振り回す俺様に勝てると思うなよ!!」
店の中でバトルを始めてしまう悪魔達を羽交い絞めにして止めたのは他の仲魔達である。
「やめろアホ猿!!こんな場所で全開戦闘を行えば店が破壊されてしまうのだ!」
「放せよ犬っころ!!このサムライ悪魔とは因縁があるんだし好きに暴れさせろや!!」
「ヨシツネ様だ覚えとけ猿悪魔!!それと放しやがれクルースニク!猿と決着をつけさせろ!」
「いい加減にしろ!ただでさえ無理を言って5体も召喚してもらってるのだぞ!」
クルースニクの忠告で気が付いたヨシツネがライドウの方に顔を向ければ机に倒れている。
「ライドウ…やはり5体召喚は体に毒だぞ。仲魔が使う力の負担は術者に返るのだ」
「ぐっ…うぅ……未熟な自分が嫌になる。形にしてやるだけで精一杯だ…」
「仲魔の力を使わせなければどうにか5体までは召喚出来たのだ。それだけで大したものだ」
てんやわんやな店内になっていた時、コックであり魔法少女のまなかが怒声を浴びせてくる。
「コラーッ!!まなかの店で暴れるお客さんはフライパンでホームランしますからね!!」
プンスコしているまなかに声をかけてきた尚紀が謝罪してくれる。
「悪いな、まなか…どうやら俺達はお邪魔だったみたいだ。連中と出くわすとは思わなかった」
「そんなことないです!尚紀さんには迷惑かけちゃったし…まなかはお詫びしたかったんです」
「フェミニズム騒動の時のことか?別に気にしなくても……」
「いいえ、気にします!お詫びとしてまなかが腕によりをかけて料理を作りますからね♪」
「こんなに大所帯なのに独りで大丈夫そうか?」
「今日はお父さんが店にいる日なので大丈夫です。さぁさぁ、席に座って下さいな♪」
まなかが案内した席とはライドウ達の隣にある団体客用の席である。
ひょんなことからライドウ達と夕餉を共にすることになった尚紀は不安を募らせるのであった。
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「ライドウ~……向こうの連中滅茶苦茶ガツガツ食ってるよぉ?お金持ちなのかなぁ?」
ジュースをストローで飲んでいるショボーは呆れた様子で見物している。
見れば机いっぱいのメニューを食い散らかしているようだ。
「まったく…見ているこちらの胃がムカついてくる。我らはこのぐらいで……」
「いいや、俺達の食事はまだ終わっちゃいねぇ。追加の品を注文するぜ!」
「ソウダソウダ!兄者バカリガッツリ食ベテルノヲ見テタラ腹ヘッテキタゾ、サマナー!」
「お、おいお前達!?張り合うでない!!」
「まぁいいだろう…捜査費用はヤタガラスから前金でたんまり貰えている。少しの贅沢だ」
「ライドウ…コイツらに甘い顔をしてると店の冷蔵庫の中身を全部喰われてしまうぞ…?」
「それにだ…自分も男として負けられない意地というのは尊重したい。自分もおかわりだ」
「ライドウ!?」
燃える闘志を宿したライドウが視線を向けるのは人修羅の方角。
見れば食べた皿の量は人修羅の方が上であり、勝ち誇った顔を向けてきているのだ。
子供のようにムキになったライドウはおかわりとしてとんかつライスとコロッケを注文する。
尚紀達もおかわりを追加注文してくる厨房は戦場の如き忙しさを繰り広げているのだ。
「ヒィィィィーーーーッッ!!いったいどれだけ食べるんだ!?あいつら!!」
「まなかはまなかの料理を沢山食べてくれて嬉しいけど…こんな忙しさになるなんて…」
「食材が足りなくなってきてる!?悪いがまなか、食材買いに行ってきてくれ!」
「は、はい!お父さん!!」
猛ダッシュで食材を買いに行くまなかの隣では大食い大会の如き光景が広がっている。
「おう、ヨシツネ!!次は飲み比べで勝負だ!!」
「おうよ!!おい、店主!!酒を持ってこい酒を!!」
「樽ごと持ってこい!今から飲み比べ勝負の始まりだぁ!!」
「おい、いい加減にしろ馬鹿猿!!」
「お前もだぞヨシツネ!!これ以上は店の迷惑に……」
「「俺達の酒が飲めねーってのかーっ!!?」」
勝手に持ってきた酒をセイテンタイセイ達から強引に飲まされるクーフーリンとクルースニク。
飲み切ってしまった彼らの目が据わり、ヨシツネ達の席に座りながら叫んでくる。
「「酒が足りん!!酒は悪魔の命の水だぁ!!」」
「「よく言った!!誰が酔い潰れないか競い合いだぁ!!」」
酒飲み大会をおっぱじめる横ではモコイとケットシーが何かを始めているようだ。
「なんか楽しくなってきたネ。とっておきのゲームをしようか」
「ゲームは大好きだニャ!どんとこいだニャー!」
「ジャジャジャジャ~ン、リズムでポン!!このゲームは、ミミが勝負。いくよー」
「流れる音楽に合わせて、タイミング良くボタンを押すのかニャ?」
「マイコンを貸してあげるから頑張ってね。使うボタンは□・×・○・R1の4つだから」
「任せるニャ!なんだかお前とは友達になれそうな気がするニャ!」
「ゲーム好きだしボクと同じだね。なんか気があいそう、イイ感じ。こんごとも、ヨロシク」
一方、デザートが食い足りないケルベロスとオルトロスも何やら怪しい行動を起こしている。
「見ロ、兄者!!コノガラスケースノ向コウ側ニハ…沢山ノデザートガアルゾ!!」
「オオ!!ヨクゾ見ツケタナ、オルトロスヨ。甘未ハ獣悪魔ニナクテハナラナイゴチソウダ!」
<<アオォォォーーン!!オレサマ、デザート、マルカジリ!!>>
ショーケースを砕いた獣兄弟は並べられたケーキの数々を勝手に貪っていく暴挙に出ている。
飼い主はというと同じ席に座り合いながら並べられた料理を平らげる勝負を行っているのだ。
「フフフ…葛葉ライドウ、そろそろギブアップしたらどうなんだ?もうベルトを緩めてるぞ?」
「この程度で勝負を投げては…14代目葛葉ライドウの名折れ…人修羅に負けはしない!」
「言うじゃねーか…?なら俺もベルトを緩めるとするか…。まだまだここからの勝負だ!!」
「望むところだ…ウップ……店主!カレーライスを追加で頼む!!」
「こっちもだ!両方大盛にしてくれ!!」
既に2人の体はデブっとした体系になっており、見た目も随分と平べったくなってきている。
その光景はかつてのやちよとほむらを彷彿とさせる程のデブっぷりと平べったい姿なのだ。
「男は度胸ぉぉ!!悪魔は酔狂ぉぉ!!早く投げてこい!愛刀の薄緑の切れ味をご覧あれ!!」
「おう!行くぞヨシツネーー!!オラオラオラオラオラァ!!!」
食い終えた皿の山を掴みながら手裏剣の如くヨシツネに投げつけ、次々と切り裂いていく。
「これぞ京八流の華麗な剣舞だ!!酔っぱらった犬野郎と十字架野郎にマネ出来るか~~?」
ビキィ!とこめかみにシワが寄るクーフーリンとクルースニクが立ち上がり不敵に笑ってくる。
「ククク…自前の武器を使って皿割りしてるようでは青二才だ!この程度などこれで十分だ!」
クーフーリンは手に持った空き瓶を机で砕き、割れた部分だけを用いて挑んでくる。
「ウィ~~ヒック!私とてこの程度の児戯など…自分の武器を使うまでもないぞ!!」
酔っぱらったクルースニクは千鳥足で掃除用具入れに向かい、取り出したモップをへし折る。
「テメェらがそうくるなら俺だって目隠ししたまま皿をたたっ斬ってやるさぁ!ヒック!!」
「そのノリだテメェら!ウィ~~どんどん行くぞーッ!!オラオラオラオラオラァ!!」
皿を何枚砕けたかを競う皿割り大会まで始めてしまう悪魔達の光景はもはや暴徒の群れだろう。
そんな暴挙を呆れながら見物しているのはジュースをストローで啜っている女悪魔達なのだ。
「男って……何歳になっても子供だよね」
「私もそう思うわ…お互い苦労するわよね、モー・ショボーちゃん?」
「私は見た目が子供でも精神年齢はライドウ達よりも大人だもんね~!面倒見ちゃうから!」
「貴女……ダメな男を飼い殺しにするのが得意なタイプなのかもしれないわよ?」
「勿論♪こう見えて、私は虐めっ子タイプだから♪」
「コラ!関心してないでこやつらの暴挙を止めんかモー・ショボー!ネコマタ!!」
黒猫のゴウトは地獄のような大騒ぎの中で胃痛が込み上げている様子。
ライドウもまだまだ自制心が足りない青臭さが残っていると考えていた時、怒声が響く。
「あなた達……まなかのお店で何をやらかしてるんですかぁぁぁーーッッ!!?」
視線を向ければ店の入り口に立っていたのは魔法少女姿の胡桃まなか。
両目には怒りの炎が宿っており、頭にはどでかい怒りマークがついているのだ。
「ゲェ!?ま、まなか!?これはその、アレだ…悪魔の晩餐というか…地母の晩餐というか…」
まなかの声で我に返った尚紀は大慌てしながら言い訳を考えつつ、隣のライドウを肘でつつく。
「これはその……アレなのだ!悪魔の親睦会を催すつもりだったのだが…色々あってだな…」
ライドウもまた呂律が回らずしどろもどろになっているのだが、まなかは容赦してくれない。
「この乱痴気騒ぎの責任者は出てきなさーーい!!!」
<<こいつらです>>
悪魔達から指さされてしまうのは勿論、悪魔パーティーのリーダーである人修羅とライドウ。
不気味な笑みを浮かべたまなかは両手にマジカルフライパンを生み出し、突撃してくる。
「最後の晩餐として…まなかがとっておきの味付けを教えて差し上げましょう!!」
「「ヒィィィィーーーーッッ!!?」」
メタぼった平たい人修羅とライドウではまなかの激辛フルコースは逃れられない。
「「グフッ!!?」」
両手のフライパンで出っ張った腹を盛大に殴られた瞬間、衝撃波が体に浸透していく。
鈍化した世界。
腹の中身がフライパンで押し出された事によって青い顔をした2人が醜態を晒す時がくる。
<<オロロロロロロローーーーッッ!!!!>>
「キャァァァァーーーーッッ!!?」
口から盛大に虹を噴き出す者達の姿を笑い転げる仲魔達を見つめるゴウトは顔を俯けてしまう。
「ヤタガラスにどう言い訳したものやら…ライドウは葛葉の里で
こうしてめでたくウォールナッツから出禁処分を与えられた一行は晩餐会を後にしていく。
阿鼻叫喚となってしまった人修羅とライドウ達の悪魔晩餐会はこれにて終幕するのであった。
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「まったく…久しぶりにパトるかと思ったぜ。飲食代や修繕費も馬鹿にならない額だったな…」
水名区にある銭湯の水徳湯に浸かりに来ていたのは尚紀であり、他の仲魔はいない様子。
浴びる程にまで酒飲み大会をしていたセイテンタイセイ達は酔い潰れて家で寝ているのだろう。
ささっと体を洗い終えた彼が立ち上がり、湯気の中を歩いていく。
腹を殴られて中身を全部吐き出したことで鍛え抜かれた拳法家らしい体つきに戻れている。
湯気の中を歩くことで大事な股間部分は上手く隠せているようだ。
「フゥゥゥゥ……銭湯に浸かるなんて何年ぶりだろうな?こういうのも悪くない…」
湯船でゆったりと疲れを癒していると誰かが入浴室に入ってくる。
湯気が立ち込める中から現れた者が誰なのかに気が付いた尚紀は勢いよく立ち上がったようだ。
「葛葉ライドウ…!?こんな場所まで俺を追跡しに来たっていうのかよ!?」
やってきたのは人修羅に負けないぐらい立派に鍛え抜かれた体をもつ葛葉ライドウの姿。
美しく鍛えられたボディに視線が向くよりも先に気が付くのは頭部分のはずだ。
何故なら風呂場に
「人修羅か…!?偶然が続くとは不気味だが…ここであったが百年目!封印させてもらう!!」
「ヤタガラスに飼われた狐は場所を弁える躾もされてねーのか!?やるなら容赦しねーぞ!!」
「貴様のせいで高額な請求をされることになった礼もさせてもらうぞ!!」
「アレはお前だって悪かっただろうがぁ!?」
裸のまま同時にファイティングポーズを行う人修羅とライドウは裸ボクシングを挑もうとする。
鍛え抜かれた男達の体が湯船で激しくぶつかり合おうとしていた時、尚紀は何かに気が付く。
「あ……あれは……まさか……そんな……」
驚愕した顔を浮かべる尚紀の視線が向かう先とはライドウの股間部位。
(なんてデカい……イチモツなんだよぉ!!?)
風呂場の湯気で微妙に隠れているが、ご立派なイチモツの影は明らかに欧米サイズ。
ヤクザも逃げ出す程のマーラ様を股間に纏う者こそ
湯気で隠れた自分の股間にも視線を向けると日本人の平均的なイチモツよりは短めの情けなさ。
凶悪な敗北感に包まれた尚紀の両膝が崩れ落ち、地面で土下座を行ってしまう哀れな姿を晒す。
「ま…まいった……俺の負けだ!!男としてお前には勝てそうにない自分が情けねぇよ!!」
「何だか知らんが…潔い態度だな?ヤタガラスのサマナーとして貴様を拘束させてもらうぞ」
手に持っていた封魔管で人修羅を封印するために近寄ってきたのが運の尽き。
「ヌフゥ!!?」
足元に落ちていた石鹸を踏んでしまったライドウが勢いよく倒れ込んで頭を打ってしまう。
まなかに殴られたことで吐瀉物と共に運まで吐き出してしまったことによる
目を回しながら昏倒してしまったライドウのお陰で危機を乗り越えた尚紀が急いで風呂を出る。
<どうじゃった、ワシを使役するサマナーは?ヤクザも逃げ出す程のご立派様だったろう?>
ライドウの服が納められたロッカーの中から響いてくるのは聞き覚えのある魔王の声。
「その念話声はまさか…魔王マーラなのか!?お前…ライドウの仲魔になってたのかよ!?」
<如何にも。ご立派はご立派を呼ぶとはまさにこのこと。チン妙な縁というものよのぉ!>
封魔管の中でドヤ顔をしているビンビンマーラ様を想像する尚紀はガックリ項垂れてしまう。
「なんてこった…何処までも男の俺に敗北感を与える連中だぜ…先が思いやられるよ…」
急いで家着のカンフー着を纏った尚紀が駆け足で水徳湯から逃げようとする。
しかし腐っても14代目葛葉ライドウを襲名した男はタフであったようだ。
「あ、尚紀さんじゃないですか!最近は朝稽古に顔を見せなくて心配してましたよ」
銭湯の前で見かけた人物とは魔獣パトロールから戻って帰宅中の竜城明日香である。
「今は立ち話をしてる場合じゃない!急いで帰らないと不味い奴がうろついてるんだよ!」
「不味い奴ですか…?その人物とは一体……えっ!!?」
「逃がさんぞぉ!!人修羅!!」
銭湯から現れたのは頭を打って錯乱したままの葛葉ライドウの姿。
「ば…バカ!!お前……なんてかっこしたまま追いかけてきたんだよぉ!!?」
グルグル目のまま陰陽葛葉を抜刀してくるのであるが、尚紀の隣の人物に気が付いてしまう。
「むぅ……?」
視線を向けた先にいたのは顔が赤面したまま地面にへたり込む乙女の明日香なのだ。
「な…な……なぁぁぁぁぁぁ……」
視線を逸らそうと努力するがどうしても目がいってしまう。
今の葛葉ライドウは花の乙女の前で股間の刀も鞘から抜いた二刀流姿をしているのだ。
「なぁぁぁんて姿をしてるんですかぁぁーーッッ!!この破廉恥男めーーッッ!!」
「グハァァァァーーーッッ!!?」
魔法少女に変身した明日香の強烈な薙刀攻撃でかち上げられたライドウが夜空を舞っていく。
情けないサマナーのお目付け役をやらされているゴウトは電柱の隅でガックリ項垂れてしまう。
今日のライドウの運勢は仏滅であり、家で大人しくしていればこうはならなかったのであった。
葛葉ライドウといえばやはり、裸ボクシングイベントはかかせませんよね!
色々ハッチャケさせた日常回でしたがこれで6章は終わりです。
次回からの最終部は物語の風呂敷を閉じるためにシリアス続きになると思うので最後とばかりに日常話を描いておきました。