人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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26話 マジックペンタグラム

最近、東京の魔法少女の間で不穏な噂が飛び交う。

 

人の形をした動く巨大な死肉が現れるという噂内容だが、それは魔女でも使い魔でもない。

 

人間社会に突然現れては魔法少女を殺し、死体を持ち帰ると言われているようだ。

 

まるでリビングデッドが歩き周り、死体を冒涜するかの如き所業である。

 

「クソッタレな魔法少女がいくら死のうが構わないが…不可解な噂だな」

 

風一つ感じない夜、魔法少女の虐殺者としての尚紀はとある場所に向かっていく。

 

「嫌な夜だな…恐ろしく静かだ。こんな夜は……あの日を思い出さずにはいられない」

 

愛する人が無残に殺された呪わしい日が頭に過るのだが、気にせず歩いていく。

 

1300万人が暮らす大都市である東京には巨大な地下空間が存在する。

 

その数は63000にまで広がっているという。

 

高層ビルが次々と立ち並ぶのと同様にして、この街は地下へ地下へと拡大を続けているのだ。

 

現在、工事中の渋谷駅東口には尚紀が向かっている。

 

「この工事現場内に不穏な噂の出処があると聞く……」

 

作業員達も行方不明になり、原因が解明されるまで現場も封鎖されている。

 

真相を確かめるため黒衣を纏う彼が巨大な地下工事現場の入り口を下りていくのだろう。

 

雨水貯留槽等の地下整備工事現場内を進みながら辺りに視線を向けてみる。

 

「俺が歩いてる場所は貯留槽の天井部分みたいだな……」

 

この下には4000トンの雨水を溜め込むバカでかいアンダーグラウンドが広がっている。

 

下の天井部分には重機や資材が山積みとなり、頭上は工事現場を照らすライトが輝く。

 

頭上には巨大パイプも見え、地上と繋ぐ換気口となっているようだ。

 

「大きく広い空間だが…この中に噂のネタになっている存在が隠されているのか?」

 

そんな時、地下鉄を走る電車の音が響く。

 

「岩盤の向こう側は副都心線か…?地下世界は何とぶつかってもおかしくないよな……」

 

地下鉄に意識を奪われていたが不意に魔力を感じ取る。

 

「一匹…二匹……いや、もっといやがる」

 

資材を覆う黒いビニールシートが突然内側から破られ、無数に飛び出してきた存在が屹立する。

 

「……何だこいつらは?」

 

それは無数の肉が繋ぎ合わされた悪臭塗れの死肉達。

 

魔女の肉、使い魔の肉、魔法少女の肉、あらゆるものが継ぎ接ぎされている。

 

頭部は魔法少女か魔女の頭部が繋ぎ合わされ、人の形を無理やり形作る死肉人。

 

額にはemeth(真理)の文字が見え、赤く光を放つ。

 

「フレッシュゴーレムか…これが噂の出処ってわけかよ」

 

悪魔化した頭部のパーカーが一本角で後ろに跳ね除けられ、光剣を生み出して迎え討つ。

 

死肉の寄せ集め共が次々と悪魔に向かって走り出し、襲いかかっていくのだ。

 

巨体を誇るゴーレムだけに技よりも力で押し潰す方がいいだろうと尚紀は判断していく。

 

次々と移動しながらゴーレム達を切り裂き続ける。

 

「殴るか掴むかしか出来ないか…愚鈍な存在共だ」

 

ゴーレムに気を取られているせいで悪魔の足元に張られたワイヤーが絡む。

 

次の瞬間、側面に仕掛けられたクレイモア地雷が起爆していく。

 

「くっ!?」

 

無数の小さい鉄球が炸裂し、ズボンの膝下に直撃するが発光する入れ墨の足のダメージは軽微。

 

「これは…魔法なんかで生み出したもんじゃねぇ!本物のクレイモア地雷なのか!?」

 

ゴーレムが放つ殴りつけを避け、資材の上に飛び乗りながら辺りを確認する。

 

「光っているあのワイヤーは…ピアノ線か何かか?しかも辺り一面仕掛けられてやがる…」

 

走り回るゴーレムも次々とワイヤーに引っかかり、地雷の餌食となっていくが怯まない。

 

リビングデッド故に下半身を失おうが地面を這いつくばって迫ってくるおぞましさだ。

 

「開けた場所に移動して戦った方が良さそうだ」

 

鉄骨部分を飛び越えながらトラップ地帯を移動していく。

 

天井の開けたエリアでゴーレムを迎え討とうとした時、上から無数の魔力攻撃が飛来する。

 

「上か!?」

 

見上げると無数に降り注ぐのは魔力の光剣。

 

側転しながら降り注ぐ剣の雨を掻い潜る。

 

着地体勢から身体を大きく跳躍回転させ、側方宙返りを行いながら着地する。

 

追いついてきたゴーレム達は光剣の雨に串刺しにされていき、次々と倒れていく。

 

そんな時、悪魔が着地した頭上の鉄骨部分に小さく光るC4爆弾が次々とリモコン爆破。

 

「なっ!!」

 

上から無数の鉄骨瓦礫が降り注ぎ、悪魔は下敷きになりながら埋まってしまう。

 

「くそっ…こんな軍隊地味た攻撃を仕掛けてくる奴がいるのか…」

 

隙間から鉄骨の上に見える人影に目がいくと数人の人影が見えてしまう。

 

「馬鹿な……なぜ魔力に気が付かなかった?」

 

見上げれば、そこには5人の魔法少女が立っている。

 

ゴスパンク地味た魔法少女服を身に纏うのは美しい金髪ブロンドをしたソバカス少女。

 

手に嵌めたミリタリーグローブには起爆用リモコンが握られている。

 

Huh?(へぇ?)You're a tough guy...(タフな男だね)

 

噛んでいた風船ガムを吐き出し、恐ろしい眼差しで見下ろしてくる。

 

Intéressant.(興味深いわ)J'aimerais être votre cobaye.(モルモットに欲しいわね)

 

隣にいるのはパンク衣装の上から白衣を纏うマッドサイエンティスト地味た少女。

 

蛇杖で魔法陣を操り、ゴーレム共を操っていると思われる。

 

「……………」

 

右端にいるのは魔法少女なのかと見紛うような衣装を纏う高身長の少女。

 

中世ペスト医者が着ているようなカソックコートを身に纏い、襟元を口元までボタンでとめる。

 

頭には折り曲げられた三角帽子を被り、目元以外の顔は見えない。

 

銀細工の鞘に収められたロングソードを持ち、先程の光剣魔法を行使したと思われる。

 

その人物の横にいる存在こそ、悪魔が探し続けた怨敵達の姿なのだ。

 

「アノオトコ、タシカ……カザミノデ、ミタコトアル」

 

「貴様は……!?」

 

ベリーダンス衣装を思わせる豪奢なドレスを纏うのは褐色肌の少女。

 

その人物とは、かつて愛する人が殺害された現場に現れた存在である。

 

「お前がいるということは…隣の悪趣味な川劇役者は……まさか!?」

 

憎しみが噴き上がり、鉄骨瓦礫を力任せに弾き飛ばして立ち上がる。

 

「…オマエ、ワタシニシタガエ」

 

褐色肌の魔法少女は右手を持ち上げながら指差すと魔法と思われる念波が空間に広がっていく。

 

「これは……くっ!?」

 

右手からマガタマの『イヨマンテ』を出現させ、口に飲み込む。

 

念波を浴びた悪魔だったが特に変わった様子はない。

 

「アレ……?オマエ、ワタシノマホウ、レジストシタ?」

 

悪魔の魔法において最も恐れるべき魔法なのは精神を操るたぐいのもの。

 

イヨマンテは魔法耐性として精神操作を無効化する保護膜を生み出せるマガタマのようだ。

 

「精神操作の恐ろしさは経験してきたから分かる。洗脳魔法が使えるとはな…」

 

「……ドウシヨウ、チェンシー?」

 

「…私に任せろ」

 

中央に陣取る魔法少女が跳躍し、鉄骨から下りてくる。

 

「……今、チェンシーと聞こえたぞ?ならお前は……俺が探し求めた仇か!!?」

 

その姿はまるで中国四川省の川劇舞台役者。

 

変面衣装と呼ばれる豪華変面衣装を纏うその姿は、さながら漆黒の龍。

 

黒色生地に銀色の龍刺繡が施され、緑色の髭を加えて繊細さも醸し出す姿。

 

三匹の白龍が舞う漆黒のマントを背中に纏い、漆黒の川劇衣装用帽子を被るお面の魔法少女だ。

 

「ついに……ついに見つけたぞぉ!!!」

 

彼女はゆっくりと悪魔に近づいてくる。

 

それに対して我を忘れながらお面魔法少女に飛びかかる悪魔の姿。

 

宿敵との因果は巡り、因縁の二人はついに再会を迎えるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

悪魔は黒衣を脱ぎ捨て、お面の魔法少女に一撃を放つ。

 

相手は左手で攻撃を払う動作を見せた時だった。

 

「何だ!?」

 

捌く腕で顔が隠れた一瞬によって違うお面に変わっている。

 

「何のつもりだぁ!!」

 

怒り狂う悪魔は構わず猛攻を続ける。

 

ジャブ・ストレート・フック・裏拳・ボディブロー・肘打ち・膝蹴り・掴み、頭突き等々…。

 

五体で繰り出せる技の限りを尽くすが、全て捌き切られてしまう。

 

悪魔の打撃を捌く度、次々と禍々しいお面へと変わっていく。

 

「いつまで役者気取りでいる!!正体を現しやがれ!!!」

 

彼女の聴勁は尋常なものではなく、悪魔の攻撃の全てに反応されて捌かれ続けてしまう。

 

(なんて技量だ…!美雨どころの次元じゃない…俺を鍛えたセイテンタイセイに匹敵する!!)

 

徒手格闘戦において、彼はセイテンタイセイに勝った事は一度も無い。

 

柔よく剛を制す技の世界がここにある。

 

「うおおおおーーッッ!!!!」

 

渾身の力を込めた右フックの一撃を放つ。

 

鈍化する世界。

 

迫りくる悪魔の拳に対して腰を落としながら半歩踏み込む。

 

一気に直突きを水月(みぞおち)に向けて放つのだ。

 

「ガハァァッ!!!?」

 

中国拳法の形意拳の技で言う崩拳が炸裂し、槍の如き剛拳によって真後ろに飛んでいく。

 

工事現場の岩盤に叩きつけられ、大きなクレーターが生まれてしまう。

 

「……今の一撃が青幇(チンパン)の礼だ。受け取るがいい」

 

呼吸困難になりながら倒れ込むが、なおも怯まず睨みつけてくる。

 

「馬鹿な……これほどの力を、どうして魔法少女なんぞが持てる…?」

 

もはや仙域のクンフーであり、魔法少女を遥かに超えた魔力を持つ存在に対して動揺していく。

 

「私の力が不思議に思うか?」

 

「日本語が喋れるようだな…お前はなぜ…それ程までの力を得られた…?」

 

「それはな、私の因果の力が既に…歴史に名を残す()()()()()にまで達したからさ」

 

「魔法少女が英雄の次元に辿り着くと…これ程までの力を得られるのか…ぐっ!?ゴハァ!!」

 

大きなダメージによって吐瀉物を吐き出し、それでも立ち上がろうと藻掻いてくる。

 

「青幇への義理は済んだ。ここからの私は…ペンタグラムとしてお前に立ち塞がろう」

 

川劇衣装を掴み、天高く脱ぎ捨てる。

 

漆黒のチャイナコートに浮かぶのは金色のダブルドラゴン。

 

長い黒髪を三編みに纏め、側頭部には花飾りのソウルジェム。

 

ここに立つ魔法少女の姿こそ、彼が探し求めた憎き仇。

 

その姿を刮目した悪魔は怨念が籠もる程の叫び声を上げる。

 

「チェンシィィーーーーッッ!!!!」

 

「久しぶりだな、悪魔よ。私達は…お前の試練となるためにこの地に集った者達だ」

 

復讐者に対して不敵な笑みを浮かべながらペンタグラムのリーダーが挑戦状を送るのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

五芒星とはペンタグラムであり、世界の東西を問わず用いられてきた五光星を示す印。

 

古代シュメールではウブと呼び、古代エジプトでは子宮を表す女性的な意味合いをもつ。

 

ペルシャから中国に伝わり陰陽五行論として発展し、陰陽道の魔除けの呪符としても使われる。

 

印の意味は陰陽五行説と呼ばれ、木・火・土・金・水の五つの元素の働きの相克を表す。

 

密教では五大を意味し、神聖な紋様と考えられている。

 

古代バビロニア神話では木星・水星・火星・土星・金星の五つの惑星(神)を並べた図。

 

ユダヤ・キリスト教においても聖なる果物の芯の形に由来するといわれ、神の秘密の名を表す。

 

中世において五芒星はキリスト教以外の悪魔が用いる印だと考えられるようになっていく。

 

星や女性を象徴する五芒星は邪悪なる印として語られる反面、本来は邪悪から守る力。

 

まさにそれは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ともいえた。

 

「俺の試練だと!?」

 

「我らペンタグラムは魔法、魔術を司る五芒星として集った魔法少女達だ」

 

「ペンタグラム……貴様らは一体!?」

 

「これより我らはお前の命を奪いに現れる…あらゆる手段を用いてな」

 

「貴様ら…俺に挑戦状を叩きつけに現れたわけか!!」

 

「お前も我らも共に闇の住人。人々を守護する存在ではないはずだ」

 

「……何が言いたい?」

 

「神の御技である魔法を使えし者達が…なぜ人間というゴミクズを守らなければならない?」

 

「お前ら…まさか…」

 

「我ら魔法少女こそが人類の支配者となるべきだ。我らはその悲願を成就する」

 

――人類は我らの供物となり、魔女の餌として管理してやろう。

 

それを聞いた復讐者は歯を食い縛りながら怒りを露わにする

 

「貴様ら…俺から愛する者を奪うだけに飽き足らず…人類を魔女の餌だと言うかぁ!!」

 

「ならばどうする?闇の住人のくせに人類の守護者を気取る悪魔よ?」

 

「悪魔の如き魔法少女共は…全員俺が殺す……今この場でなぁ!!」

 

不屈の闘志によって、よろめきながらも立ち上がっていく。

 

俯いた頭部を仇に向けながら悪魔の魔眼を用いた魔法を行使する。

 

瞳孔が瞬膜となり、解き放たれた魔法とは『原色の舞踏』と呼ばれる幻惑魔法。

 

相手の五感を狂わせる魔法であり、魔眼に囚われた者達は混乱するという。

 

しかしその幻惑魔法に対して褐色の魔法少女が先に動いている。

 

念波の力場を発生させると同時に魔法が無力化されてしまうのだ。

 

「馬鹿な…?お前達は幻惑魔法さえ無効化出来るのか!?」

 

「オマエノマホウ、キケン。ワタシ、オマエノマホウ、レジストデキル」

 

「お前は何者だ!?お前達は固有魔法を一つしか持てないはずだ!!」

 

「オンナノ、ヒミツダヨ」

 

下の騒ぎを傍観していた一人が苛立ちながらリーダーに声をかけてくる。

 

Are you trying to monopolize the fun?(お楽しみを独占する気?)

 

「…そうだな。楽しみは皆のものだったな」

 

英語が理解出来るのか、チェンシーは仲間の意見を尊重して引き上げていく。

 

「我らのいずれかがお前を殺す。人間の守護者を気取る生き方を我らが後悔させてやる」

 

褐色魔法少女が空間転移魔法陣を生み出し、ペンタグラムメンバー達が消えていく。

 

「待て…チェンシー!!俺と戦えぇぇーッ!!!」

 

「今のお前では私に殺されるだけだぞ?魔法だけでは勝てない武の世界を…お前に見せてやる」

 

そう言い残した後、チェンシーも他のメンバーに続いて消えてしまう。

 

残された悪魔は膝を付き、座り込みながら悔しさで震える拳で地面を砕く。

 

何度も叩きつけて砕き続けながらも拳が止まり、敗北者の言葉を呟いてしまう。

 

「初めて……魔法少女に負けた……」

 

悪魔の魔力と魔法があっても人間が暮らす街では使いこなせないため、地の利が悪過ぎる。

 

そして格闘の技量さえ通じないでは人修羅であっても対処に困ってしまう。

 

そして愛する者を殺した仇に笑われてしまった屈辱が悔しくて堪らない悪魔は叫びを上げる。

 

「くそぉぉぉぉーーー……ッッ!!!!」

 

憤怒の雄叫びと共に周囲に噴き上がるのは全体攻撃魔法である地獄の業火。

 

残されたゴーレム達の肉片が悪魔の業火で焼き尽くされていく。

 

憎き仇との会合、そしてペンタグラムと呼ばれる魔法少女達との邂逅。

 

外は強い風が吹き始め、東京に暗雲が立ち込めていく。

 

かつて無い程の魔法少女と悪魔の戦いが今、始まろうとしているのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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