人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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270話 秘密を暴くのが探偵

「ウォォォーーッッ!?パワーが違い過ぎるッッ!!?」

 

「俺様と犬っころを押し込みやがるかーーッッ!!」

 

「グワーハッハッハッ!!剛直したワシの突撃を止められる者などおらんわーッッ!!」

 

魔王マーラが放つ神速の地獄突きの刃をゲイボルグと如意棒で受け止め続ける悪魔達。

 

人修羅でさえその力を押し返せなかった突撃力は健在であり、クーフーリン達は押し込まれる。

 

彼らの体は水名城から押し出されて異界の新西区方面にまで弾き出されていったようだ。

 

「チッ!!デタラメナパワーダナ!!オマケニ炎マデツウジニクイトハ…流石ハ魔王カ!!」

 

クーフーリン達の援護に向かうために駆けるケルベロスであるが、顔を後ろに向ける。

 

後ろの方角に見える水名区は人修羅とコウリュウの激戦の光景が広がっているようだ。

 

「ヤラレルナヨ…人修羅。汝ハ…ココデ倒サレル運命ニアル者デハナイ」

 

人修羅の援護を行いに行く余裕はないと判断したケルベロスが駆け抜けていく。

 

一方、水名城に残された人修羅は天空から放たれ続ける轟雷の雨を必死に掻い潜っている。

 

全体に特大威力の雷属性魔法を放つ『サンダーボルト』は大地を砕く程の威力があった。

 

「貴様も攻めてこい!!音に聞こえし人修羅の力を我に示してみせよ!!」

 

屋根瓦の上を走りながら跳躍を続ける人修羅は大きく飛び、上空で体を横倒しに回転させる。

 

「空の上で留まり続けるなら…地上にまで叩き落としてやる!!」

 

横倒しに回転しながら放つ飛び後ろ回し蹴りから放たれたのはジャベリンレインの一撃。

 

上空に目掛けて無数の光弾が放たれるのだが天空を支配する龍神の体は雷の盾そのもの。

 

全身から放つ『大放電』によって飛来してくる無数の光弾が自動迎撃されてしまうのだ。

 

着地した人修羅に目掛けて間髪入れずに雷魔法が次々と飛来してくる。

 

「流石は青龍達の長を務める龍神だな…そしてそれを操るライドウも流石といったところか」

 

究極の力であるマロガレの力を行使出来ない今の人修羅の魔法威力は大きく下がっている。

 

今の状態で放つ全体攻撃ではコウリュウの守りを突破出来ないと判断した彼が急停止する。

 

「逃げ続けるのも飽きてきた。さぁ、俺はここだぜ?気合を込めた一撃を用意しな」

 

空に目掛けてオーバーに両手を広げながら挑発してくる。

 

それを目にしたコウリュウの口元には不敵な笑みが浮かんだようだ。

 

「本気でいけ。疑われるわけにはいかん」

 

「人の子よ、分かっている。我とて…期待を裏切らない戦いを見せて欲しいからな!!」

 

龍雲海から伸び出たコウリュウの頭部が地上を見下ろし、人修羅に狙いをつける。

 

同時にマカカジャを最大まで用いたコウリュウの魔法攻撃力は極限の高まりを見せるのだ。

 

「土生をもたらす我が一撃!受けてみろッッ!!」

 

大きく開いた口から放たれたのは超巨大なショックウェーブの一撃である。

 

極限の雷で編まれた豪熱放射とも呼べる一撃の光が迫る中、人修羅はマガタマを飲み込む。

 

地上に激突した雷放射が大地をえぐり取り、岩盤が破壊されながら空に巻き上げられる。

 

「オオオォォォォォーーーーッッ!!!」

 

ショックウェーブを放ち続けるコウリュウの頭部が持ち上がりながら異界をえぐり取る。

 

放たれ続ける雷放射が頭部の動きと共に異界の街の南側にまで放たれていく。

 

クレバスが掘り進められながら水名区、栄区、南凪区、そして海まで一直線に削り取ったのだ。

 

<<土を掘り返す力は流石だな。それでこそ鉱物・金属を司るコウリュウだ!!>>

 

叫び声が聞こえたのは天に巻き上げられていく岩盤大地からである。

 

跳躍しながら天を目指す人修羅の姿は健在であり、極限の雷魔法を無効化しつつ飛び続ける。

 

飲み込んだマガタマとは『ナルカミ』であり、雷魔法を無効化する耐性をもたらすようだ。

 

「フフッ…天に昇る貴様の姿は我と同じく龍そのもの!それでこそ…黙示録の赤き竜だ!!」

 

蛇神を起源に持つ龍神同士、遠慮なく喰らい合おうとするコウリュウが雄たけびを上げる。

 

四つの爪に持たれた龍玉の一つである風の龍玉が光り、コウリュウの体を暴風が包み込む。

 

コウリュウは雷だけでなく四属性である炎・氷・雷・風を操る力を秘めた存在なのだ。

 

「四属性を支配する力を持つか…それでこそ四神の長だな!!」

 

龍風圧を纏うコウリュウに目掛けて左手を伸ばし、破邪の光弾を放つ。

 

龍風圧に穴が開いた隙間から一気に入り込んで天空を漂うコウリュウの背中に飛び移るのだ。

 

「フハハハハ!!龍の背中に乗り込む貴様はまるで騎龍観音菩薩だな!面白くなってきた!!」

 

異界の神浜の天空を支配するコウリュウが踊るようにしながら勢いよく天空を舞いだす。

 

揺れ動く背中の上で光剣を放出した人修羅が胴体を真っ二つにするために振り上げようとする。

 

しかしそれを許さないデビルサマナーが既に目前にまで迫ってきているのだ。

 

「タァァァーーーッッ!!」

 

コウリュウの背中を駆けてきたライドウが放つのは磁霊龍牙突の一撃である。

 

MAGを刀に纏わせて槍の如き射程の長さを形作った一撃に対して人修羅が動く。

 

左に回り込むようにして跳躍した人修羅が刺突を避けながら片手で相手の肩を突飛ばす。

 

「チッ!!」

 

高速で放った刺突の勢いが殺しきれず倒れそうになるが前転を用いて態勢を立て直す。

 

「お前の刺突と並ぶ程の刺突をアマラ深界で俺は受けてきた。その時の経験が役立ったな」

 

激しく揺れ動くコウリュウの背中の上に立つ者達が武器を構えていく。

 

「見物人共を納得させられるだけの戦いを俺に見せてみな。胸を貸してやるさ」

 

「いいだろう…葛葉一族の剣技の神髄を貴様に与えてやる」

 

光剣を放出した人修羅が斬り込む中、ライドウは霞の構えを行いながら迎え撃つ。

 

天空を支配するコウリュウが生み出す世界において彼らの戦いは眩しく彩られていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

異界の月が浮かぶ雲の世界から飛び出してくるのはコウリュウの頭部。

 

巨大な龍の体がうねりながら形作る景色こそ神話の美しさを表現するような龍雲海なのだ。

 

激しく波打つ龍神の背中に立つ者達が滑り落ちないようコウリュウが魔法を用いて支えている。

 

人修羅が得意とした雷魔法の応用を両者に与えることで彼らの足が背中にくっつくようだ。

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

互いが斬撃の応酬を繰り返し、背中の大地が天地を逆さまに変えながらも剣を交え続ける。

 

ループ飛行していく背中の上で戦うライドウが斬撃を切り上げながら弾き、刃を返す。

 

続く袈裟斬りを避けるため人修羅が跳躍して向こう側の大地といえる背中の上に飛び移る。

 

コウリュウの周囲は風魔法の暴風が吹き荒れており、龍の爪の如く体が切り裂かれていくのだ。

 

「くぅ!!」

 

カマイタチの中に飛び込む程の傷を全身に受けてしまうがどうにか向こう側の背中に着地する。

 

だが間髪入れずにライドウが放つ疾風弾が迫りくる中、人修羅は背中の上を駆け抜けるのだ。

 

「「ウォォォーーーーッッ!!!」」

 

背中の上を駆けながら向こう側の背中の上に立つライドウに目掛けて破邪の光弾を放ち続ける。

 

ライドウもまた走りながらコルトライトニングで狙いをつけながら疾風弾を放っていく。

 

射撃攻撃を駆け抜けながら避け続ける2人が勝負に出るかのようにして互いに跳躍。

 

天空を舞う龍神の頭部が向こう側から迫ってくる中、彼らは上空でぶつかり合う一撃を放つ。

 

「行くぞ…ライドウッッ!!」

 

引き絞られた光剣から放つ刺突の一撃とは人修羅のライバルであったダンテのスティンガー。

 

「我が魂よ!!猛り狂え!!」

 

陰陽葛葉の刀身から噴き上がるMAGによって放つのは戦斧と化した磁霊金剛壊の一撃。

 

コウリュウの目の前の上空でぶつかり合った互いの一撃が眩い光を放っていく。

 

振り落とされた戦斧の一撃が刺突を弾き落とし、互いの体も落ちていくがまだ終わりではない。

 

「まだだァァァーーーーッッ!!!」

 

弾かれた光剣をさらに引き絞りながら連続した突きを放つ技こそスティンガーの派生技。

 

『ミリオンスタッブ』の連続突きが上空のライドウに迫る中、彼は刃を納刀して構える。

 

「それでこそ…自分のライバルだ!!」

 

MAGが噴き上がる居合の構えから放たれた技とは、前方空間を無数に切り刻む磁霊虚空斬。

 

居合い状態から次々と放たれる斬撃が高速で放たれ続ける刺突を切り払っていく。

 

天空から落下してきた2人の姿を見つけたのはヤタガラスから派遣されたサマナー達である。

 

「おお……流石は音に聞こえし葛葉四天王最強の男だ!!」

 

トレンチコート姿のサマナー達や修験道の三伏姿をしたサマナー達が勝利を確信していく。

 

そんな者達など眼中にない人修羅とライドウは本気の勝負を挑み合い、決着の時を迎えるのだ。

 

「へへ……流石だったよ、ライドウ。それでこそ……俺の好敵手だ」

 

着地も忘れた状態で人修羅は水名城の天守閣へと叩きつけられてしまう。

 

次々と地面を砕きながら城の下層部にまで落下した人修羅の腹には陰陽葛葉の刃が突き立つ。

 

「がはっ!!!」

 

大きく吐血する人修羅の上には刀を突き立てたまま息を切らせるライドウが立っていたのだ。

 

「認めよう…人修羅。お前こそ…自分にとって、生涯最高の好敵手なのだと」

 

互いが持てる力を全て出し切った戦いの決着は葛葉ライドウの勝利で幕を下ろしたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

刃を抜いたライドウが人修羅の上から立ち退きながらマントの内ポケットから道具を取り出す。

 

腹部を突き刺したのもトドメを刺すためではなく彼の動きを鈍らせるために行った行為なのだ。

 

「そ……それは……?」

 

体を持ち上げようとする人修羅の目に入った物を見た瞬間、体から噴き上がる衝動に襲われる。

 

まるで自分の脳の一部がライドウの手に握られているような何とも言えない感覚に苦しみだす。

 

「やはり宝珠の影響を受けているようだな?黙示録の赤き竜も他の龍王と同じだったようだ」

 

如意宝珠に神通力を注ぎ込むと光を放ちだし、それを人修羅に掲げれば苦しみが増していく。

 

「大人しくお縄につくがいい」

 

「断る……ッッ!!」

 

抗えば抗うほど苦しみが増していき、耐え難い衝動に襲われてしまう。

 

龍と契約を交わすために与えられる宝珠は龍を支配する力もまた存在しているようだ。

 

「抗うか……ならば如意宝珠のもう一つの力を使ってでも貴様を拘束させてもらうぞ」

 

「もう一つの……力だと……?」

 

怪しく光り出した宝珠が輝きを放ち、周囲のMAGを急速に吸い上げていく。

 

「グアァァァァーーーッッ!!?」

 

人修羅の体からもマガツヒであるMAGが吸い上げられ、残された力を一気に奪い取っていく。

 

この力こそ己の敵を貧窮させる呪詛を悪魔に与えるエナジードレインであったのだ。

 

「アッ……アァ……」

 

ついに力尽きた人修羅が倒れ込み、意識を失ってしまう。

 

帽子を目深く被りなおしたライドウであるが、小声でこんな言葉を送ってくれる。

 

「すまない……尚紀」

 

破壊された天守閣の城から人修羅を担いで出てきたライドウの上空からはコウリュウが現れる。

 

「貴様達の力は見極めさせてもらった。人修羅も流石だが…貴様もまたあの頃の輝きを見せた」

 

「人修羅を捕らえられたのは如意宝珠のお陰だ。これがなければ…こうはならないだろう」

 

「我らが龍の宝珠を手に入れていたとはな…その力を使われれば我とて逆らうことは難しい」

 

「龍の主導権を与えられる契約の道具こそが宝珠というわけか…」

 

ライドウの元へと迫りくるもう一体の魔王にも視線を向ける。

 

やってきたのはマーラであり、巨大な玉袋から伸びた触手でクーフーリン達は縛られている。

 

「やれやれ…手こずらされたわ。ワシの体を傷つけた罰として市中引き回しの刑にしてやった」

 

ボロボロの姿にされているマーラの姿がクーフーリン達の力の強さを物語っている。

 

それでも今一歩及ばず市中引き回しの刑に処されてしまったようだ。

 

「「「グハァ!!!」」」

 

触手に持ち上げられながら地面に投げ捨てられたクーフーリン達の体はズタボロである。

 

「その者達は捨て置けばいい。目的の存在は捕縛出来た…これ以上の戦いは無意味だ」

 

召喚管を二本抜いたライドウがコウリュウとマーラを管の中へと戻していく。

 

視線を横に向ければヤタガラスの監視員達も集まってきたようだ。

 

「見事だ、それでこそ葛葉一族。ヤタガラスが誇る最強の退魔師一族というものだ」

 

「急ぎ移動するぞ。この街の魔法少女共も異界の周囲に集まってきている…ごまかしきれん」

 

「……分かった」

 

彼らの世辞の言葉など空しいだけでしかない。

 

ヤタガラスが誇る一族だとぬかしながらもゴミのように切り捨てるつもりなのは分かっている。

 

それでもライドウは彼らに促されながらゴウトと共にこの場を去っていくのだ。

 

水名区に張り巡らされた異界と周囲を惑わす霧が晴れると少女達が駆け寄ってくる。

 

「クーフーリン!セイテンタイセイ!ケルベロス!!」

 

走ってきたのは尚紀の護衛を務めるリズとタルト、そしてみたまやももこ達の姿も見える。

 

駆け寄ってきたリズが倒れたセイテンタイセイの胸倉を掴みながら持ち上げて激怒するのだ。

 

「このおバカ!!どうして私や回復魔法を得意とするタルトを連れて行かなかったの!?」

 

「リズ!!気持ちは分かりますけど落ち着いて!悟空達は重症を負ってるんです!」

 

「わ…悪い……俺様達だけで倒せると思ったが…そんな甘い相手じゃ…なかったぜ…」

 

「ライドウメ…アレホドノ悪魔ヲ使役デキル者ダッタトハ……ヌカッタワ……」

 

「すまん…師匠、ジャンヌ…尚紀を守れなかった…目の前で連れていかれるとは…無念だ…」

 

気が済まないのかセイテンタイセイを掴んで振り回すリズの横ではタルトが回復を行っていく。

 

隣では両足が崩れたみたまが存在しており、尚紀の安否に怯えているようだ。

 

「やっぱり…葛葉ライドウは危険な存在だった…。叔父様の旧友だからと油断してたわ…」

 

自分にとって希望の光である尚紀が心配で堪らないみたまであるが、肩に手を置く者がいる。

 

「…ライドウさんのクルースニクと融合したアタシだから分かる。彼はそんな男じゃないよ」

 

「どういうことなの…ももこ?」

 

「ライドウさんを信じてあげてくれ。あの人の中にも…尚紀さんと同じ魂が宿ってるんだ」

 

ももこに宿った悪魔の言葉を信じる気になったみたまが立ち上がり、他の皆にも声を掛ける。

 

尚紀が心配で堪らないのは静海このは姉妹や天音姉妹、レナやかえでも気持ちは同じなのだ。

 

「みんな…尚紀さんなら大丈夫。きっと帰ってくるから…信じて帰りを待ちましょうね」

 

一方、ヤタガラス総本山に向かう車列を追うのは葛葉キョウジが運転する車である。

 

備え付けのモニターには発信機から発せられるGPS情報が表示され続けているようだ。

 

「フッ…ついに飼い狐共から噛み付かれる日がきたか、ヤタガラスめ。面白くなってきたぞ」

 

「問題なのはライドウが記録媒体の扱いやPC操作が出来るかどうかよね…」

 

「そこら辺はゴウトがサポートしてくれるでしょ?あの猫は大正人間とは違って現代人よ」

 

「ところで…何で貴様らまで俺の車に乗り込んでいるんだ?」

 

「別にいいでしょ?ヤタガラスに借りがあるのはあんただけじゃないんだし」

 

「そうねぇ…私は私の力を貴方に売り込みにきたってところかしら?派手に暴れてあげるわ」

 

レイだけでも厄介なのにナオミまで揃えば葛葉キョウジであろうと振り回されてしまう。

 

これから先、ナオミまで葛葉探偵事務所に雇うことになると厄介極まりない。

 

そんなことを考えながらも忌々しい秘密結社に一泡吹かせる喜びにキョウジは浸るのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

後日の夕方頃、ライドウはヤタガラスの総本山にある謁見の間で正座している姿を見せる。

 

<<よくぞ人修羅封印任務をやり遂げてくれた。それでこそ誉れある葛葉ライドウだ>>

 

世辞を受け取るライドウは深々とお辞儀をした後、三宝台に置いた如意宝珠を差し出す。

 

「宝珠の力があってこその成果でした。これがあれば人修羅を封印し続けられるでしょう」

 

<<奴はこの神宮の地下にある封印の間で厳重管理していく。ご苦労であった>>

 

「では…自分の役目はこれで終わりでしょうか?」

 

<<此度の成果をもってアカラナ回廊の悪用は不問とする。胸を張って大正時代に帰還せよ>>

 

「有難きお言葉…恐悦至極に御座います。これからの自分は大正の者として生きていきます」

 

<<ささやかではあるが宴の席を用意している。今夜はゆるりと休み、大正の任務に励め>>

 

謁見の間から出てくるライドウは待っていた猫を連れながら神宮の奥の院から出てくる。

 

整備された庭の道を進むライドウを見上げるゴウトは小声でこう告げてきたようだ。

 

「ここまでは上手くやれた…後は隙を見つけ出して動くぞ」

 

「自分は宴の席に出席する必要があるが…長く席を空けると不審に思われる」

 

「だからこそ擬態を得意とする人修羅の仲魔を借りることが出来て助かったというわけだな」

 

ライドウが連れている猫は黒猫のゴウトだけでなく、ゴウトの隣を歩く白い猫までいる。

 

「重要な役割を引き受けちゃったわね…クーフーリン達を騙すことになったのが辛いわ…」

 

ライドウ達の元にいたのは人修羅の仲魔の一体であるネコマタだったようだ。

 

彼女は悪魔の力を取り戻したこともあり擬態を使うことが出来る存在だからこそ必要だった。

 

「尚紀達の車の中で上手く隠れながら合流してくれて助かった。頼りにしているぞ」

 

「貴方程の相手と戦うんですもの。尚紀以外は私の存在に意識を向ける余裕も無かったわ」

 

「宴の席でライドウが席を空けた時に入れ替わる段取りで動くぞ。今夜を逃せば後はない」

 

夕日が沈む頃にはライドウ達が宴に参加するために迎賓館に入っていく。

 

暫くはヤタガラスのサマナー達との交流会のような空気が続いていたがライドウが立ち上がる。

 

「お手洗いはどちらにある?」

 

「廊下に出て突き当りを右に行くと見えてくるぞ。案内は必要か?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

お手洗いにまで移動したライドウはトイレの個室の中に入っていく。

 

ネコマタはトイレの外で待機しており、ライドウが窓を開けてくれると中に飛び込んでくる。

 

入れ替わるようにライドウは窓から飛び出して夜の暗闇に溶けるようにしながら動いていく。

 

宴会場にはライドウに擬態したネコマタが戻ってきて何事もないような態度で過ごしてくれる。

 

見張りの者達を掻い潜ったライドウは予め決めておいた装備の保管場所に辿り着いたようだ。

 

「レイから聞かされたヤタガラス情報部は神宮の東にある。あの五重の塔がそうだ」

 

サマナー装備を纏ったライドウがマントを羽織りながら視線を五重の塔に向ける。

 

「自分はこの時代の機械操作は無理だ。任せて大丈夫なのか、ゴウト?」

 

「任せておけ。大正時代のうぬではPC操作もままならんからな」

 

「それにしても…今回の捜査と人質救出作戦にあのキョウジが参加するとは思わなかったな」

 

「あの男とてヤタガラスから厄介者扱いを受けてきた。仕返しをする機会だと思ったのだろう」

 

「葛葉キョウジと共闘か…大正時代の狂死(キョウジ)しか知らなかった頃の自分では想像出来なかったな」

 

「群れ社会を嫌ったキョウジの気持ち…今なら我も理解出来る。全体主義は恐ろしいものだ…」

 

暗闇を駆けていくライドウの片耳には無線に繋いだマイク付きイヤホンが差し込まれている。

 

イヤホンから聞こえるレイのナビゲートを頼りにしながら情報部に捜査のメスを入れるのだ。

 

(探偵は借りの姿であり、ヤタガラスのサマナーが本来の姿だったが……真逆になるとはな)

 

ライドウの脳裏に浮かんでいくのは鳴海探偵事務所で働いてきた日々の記憶。

 

浪費家ではあったが探偵としての正義感までは捨てなかった鳴海から聞かされた言葉がある。

 

(秘密を暴くのが探偵…それこそが全ての探偵の信念。だからこそ…自分もそれを貫こう)

 

自分は探偵なのだと強く意識した時、時女一族の村で出会った広江ちはるを思い出す。

 

彼女は悪の秘密を見たせいで皆が死んだのだと絶望しながら自殺しそうになった探偵の卵。

 

それでも彼女は正義の探偵に憧れた存在なのだと涙ながらに語ってくれた記憶が残っている。

 

(もう一度彼女と再会した時、胸を張って探偵だと言える男に……自分はなってみせるさ)

 

諦めない気持ちを貫き、圧倒的な絶望のリスクと戦ってでも悪の秘密を暴きだす。

 

それこそが広江ちはるが憧れた探偵の姿であり、ライドウはそれを体現する者となった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ぐっ……うぅ……」

 

鍾乳洞のような地下空間はかがり火の明かりが灯っており、牢屋の人修羅を照らしてくれる。

 

地底とは古来より妖怪や悪魔を封印する地であり、岩や石が悪魔達の自由を抑え込むもの。

 

イザナギ・イザナミ神話の千引岩やアマテラスの天岩戸等が代表例と言えるだろう。

 

<<目覚めたか?啓明結社を支配するカナン族共が求める啓蒙神よ>>

 

声が近寄ってくるが人修羅はそれを気にする余裕もない程にまで疲弊している。

 

何故なら俯けに倒れ込んだ人修羅の上には漬物石の如く巨大な封印石が置かれているからだ。

 

まるで西遊記のセイテンタイセイを封印した五行山の光景であり、師弟共々石に潰されるのだ。

 

「くそっ……この程度の岩如き……どうして抗えないんだ……?」

 

しめ縄が巻かれた巨大な岩の下には五行を用いた封印結界まで張られている。

 

力を出そうとすれば出そうとする程に力が抜け落ち、悪魔でさえも抗えない二重封印だった。

 

「貴様らが……ヤタガラスの親玉共か?噂に名高い裏天皇共だっていうのか…?」

 

長過ぎる髪の毛をお付きの巫女達に支えてもらいながらやってきたのは裏天皇の三羽鳥達。

 

<<自由が欲しいか?ならば我ら秦氏を導く新たなる太陽神になってもらおうか>>

 

「3人同時に喋るんじゃねーよ…気味が悪い。太陽神の一族なら天皇家がいるじゃねーか…?」

 

<<……あのような偽物に用はない>>

 

雑面布の奥で忌々しい顔を浮かべる三羽鳥の態度を見た人修羅であるが、ある一説を思い出す。

 

「ま…まさか……あの()()()()()は本当の話だったっていうのか…?」

 

<<色々と博識のようだな。その通り…日本という国が生まれた時、本物の太陽は死んだ>>

 

「俺に……新たな天皇になれって言いたいのか?それを操るのが裏の天皇である貴様らか?」

 

<<我が国の代表となってもらい、大魔王とバアル神を相手に交渉してもらいたい>>

 

「おおかた…ハルマゲドンから生き残るための交渉ってところか?自力で交渉しやがれ…」

 

<<それでは足りない。大きな譲歩を引き出すには大魔王と並ぶ程の悪魔の権威が必要だ>>

 

「俺はテメェらの操り人形になんてならない…さっさと解放しやがれ…」

 

<<聞き分けの無い男だな。我らヤタガラスが汝を天皇として祀り上げようというのだぞ>>

 

「くどい!!俺は貴様らのしもべになるつもりなんてねーよ!!」

 

<<強情な悪魔だ……ならば、これでどうだ?>>

 

三羽鳥の真ん中に立つ者の右手には如意宝珠が握られており神通力を注いでいく。

 

光り輝く宝珠の光を浴びせられた人修羅が叫び出しながら苦しみ悶えていくのだ。

 

<<宝珠とは龍王の脳から取り出すもの。同じドラゴンである汝の脳も支配してやろうぞ>>

 

「グォォアァァァァーーーーッッ!!!」

 

憤怒の形相を浮かべながら睨んでくる人修羅に対して三羽鳥は不快な顔を浮かべていく。

 

<<ヤタガラスに歯向かう汝の目…まるで平将門のようだ。奴も我らに逆らった武士だ>>

 

苦しみ悶える人修羅であるが神通力を放出し続ける三羽鳥の頭上に浮かぶ神の姿に気が付く。

 

「お……お前は……?」

 

<<我こそヤタガラスを築き上げ、千数百年間ものあいだ秦氏を導いてきた…月神だ>>

 

ヤタガラスという霊獣は三本の足をもつカラスであり、胴体は一つ。

 

三羽鳥と呼ばれる裏天皇達こそヤタガラスに生えた三本足を表す存在であったのだ。

 

<<カラスとはエジプトの太陽神信仰。エジプト人でもあったヘブライが崇めた鳥だ>>

 

神武天皇を導いたカラスの神話はエジプトの歴史の中でも見つけられる。

 

アレクサンドロス大王の東征記において大王はエジプトを支配してファラオになる決意をする。

 

太陽神から託宣を受けるため神殿を目指すのだが、大王達は砂嵐に巻き込まれて道を見失う。

 

そんな大王を太陽神の神殿にまで導いて託宣を与え、ファラオとしたのがカラスであったのだ。

 

<<()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。汝もまた日の本のファラオとなる>>

 

――新たなる日本国旗の赤き日の丸を形作る日輪となるがいい……黙示録の赤き竜よ。

 

「や……やめろぉぉぉぉーーーーッッ!!!」

 

太陽の化身であるカラスに導かれた者こそ王となる神話はエジプトやギリシャで存在している。

 

古事記神話と深く関わる秦氏というヘブライ民族が望むのは太陽神神話の再現。

 

神武天皇やアレクサンドロス大王の如くカラスがファラオを生み出し、地上の大王とする。

 

その目的のためなら時女一族を利用してゴミのように捨てようが些細な問題。

 

カラスにとって、地上で生きる人々など王に支配されるだけの奴隷でしかなかった。

 




マギレコもついに来月7月終わりでサービス終了になってしまいましたね(汗)
まぁ環いろはの物語は完結してるし、キャラゲーにしては頑張った方だと思ってました。
拙作はまぁ公式マギレコ終わっても亀更新で頑張っていきますね。
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