人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
「随分と大きな五重の塔だな…縦に小屋が並んでいる規模ではないぞ」
神宮の東エリアに辿り着いたライドウ達は情報部の施設に潜入を試みている。
ヤタガラス情報部は地域課の建物と五重の塔の内部にある連絡課に分かれているという。
<<機密情報を纏めているのは連絡課の建物よ。五重の塔の最上階の機密室に向かって>>
レイからの通信が聞こえてきたライドウはイヤホンマイクに備わったボタンを押して声を出す。
「自分の声は聞こえているか?」
<<感度は良好よ、段取りを伝えるわ。あんた達が機密情報を手に入れ次第あたし達も動く>>
「自分は捜査だけでなく尚紀の救出にも向かわねばならない。囮を任せても大丈夫か?」
<<任せなさい、こっちはキョウジだけでなくナオミまでいる。恐れる者なんていないわ>>
「機密情報を手に入れ次第そちらに連絡する。尚紀が囚われた場所を後で教えてくれ」
<<尚紀は渡しておいたGPSシールを上着の裏に張り付けてるからバッチリ反応してるわ>>
「よし……それでは捜査を開始する」
通信を終えたライドウが周囲の見張りの位置を把握するために封魔管の一つを抜く。
「召喚……ポルターガイスト」
ライドウのハイカラマントが蠢いていき、マントの中からひょっこり顔を出す悪魔達。
「わーい、たんていごっこだーっ!!」
「やっぱボクらじゃなきゃね!いくぞーっ!」
「21せいきのせかいにエントリーだーっ!」
小さな妖精のような姿をした三兄弟こそ心霊現象が具現化した悪魔であった。
【ポルターガイスト】
ドイツ語で騒がしい霊を意味する悪霊であり、または怪奇現象そのものを表す存在。
家中で誰も動いていないのに家具調度が勝手に動いたり飛んだりするのは彼らの仕業だという。
多くは子供の悪戯にされてしまうが中には霊的存在の介在でしか説明出来ないケースもあった。
「ライドウ…ヴィクトルに頼んで新たな仲魔を補充してもらったのに…こいつらでいいのか?」
怪訝な顔つきを向けてくるゴウトに対して丸っこい体をした三兄弟がプンスコしてくる。
「あーっ!ボクたちバカにされてるよ兄ちゃん!」
「バカにするなーっ!ボクたちはスゴイいんだぞーっ!」
「そうだそうだーっ!」
「彼らも大正時代で世話になってきた仲魔達だ。力の強さだけが悪魔の価値ではない」
「そうだぞーっ!ボクたちはつよ……あれ?ちからはよわいっていわれてる?」
「まぁいい、隠れて悪さをするのに長けたうぬ達ならば偵察任務に向いているのは確かだ」
「行ってこい。この辺りを警備している者達の位置を念話で送ってくれ」
「「「りょうかーいっ!!」」」
空に向かって飛んでいった悪霊三兄弟達が偵察ドローンの役割を果たしてくれる。
送られてくる念話の情報を頼りにしたライドウはゴウトと共に暗闇の中を進む影となる。
警備員達が巡回を続ける中、背後に跳躍して現れたライドウは音もなく侵入していく。
その姿こそまさに
「レイの情報通りだな。ヤタガラス総本山といえど全ての職員がサマナーというわけではない」
「ヤタガラス直属のサマナー達は迎賓館に集まっている。泥酔する勢いで宴を楽しんでいた」
「悪魔に気が付かれる心配はないし、厄介なサマナー共もおねんねしてくれれば儲けものだな」
屋根瓦が敷かれた塀の道を走っていく中、ゴウトは懐かしそうな笑みを浮かべてくる。
「懐かしいな…大正時代を思い出す。我とうぬはこうやって帝都の街を駆け抜けたものだった」
そう言われたライドウもまた口元に微笑みが生まれてこう告げるのだ。
「自分にとっては昨日の出来事だ。お目付け役のお前と共に在ったのが…自分の姿だった」
「我は嬉しく思うぞ。大正時代から生き続け数多のライドウと出会っても…うぬが最高だった」
悪を追い詰めようとするライドウとゴウトの姿こそ大正時代を影から支えた者達の光景だろう。
21世紀になってもその光景は変わらず、真っ直ぐ先を見据えながら駆け抜けていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ヤタガラスの総本山を見下ろせる場所で無理やり車を停車させているのはキョウジ達である。
街灯もなく道もない山の斜面を走行出来たのは軽装甲車のような車の走破性能であろう。
助手席でライドウをナビゲートするレイの横ではキョウジが屋根に武装を施している。
ハッチ付きのリングマウントを屋根に搭載しておりハンヴィーと同じ重火器が搭載出来るのだ。
キョウジが備え付けていたのはMk19自動擲弾銃というグレネードマシンガンであった。
「荒々しい悪魔の使い方をするようね、ミスターキョウジ?悪魔を榴弾にしてしまうなんて」
木の枝に座りながら暗視スコープ双眼鏡を覗き込んでいたナオミが下の者に声を掛けてくる。
キョウジは無視をするかのようにして黙々と作業を続けているようだ。
「こいつの家系は大正時代からこういう家系なのよ。悪魔は道具、それ以上ではないってね」
キョウジと長い付き合いをしてきたレイの話を聞かされたナオミは昔を思い出していく。
「かつての私だって…仲魔達を使い魔と呼んで復讐の道具にしてきた。彼を悪くは言えないわ」
「だけど…そんな悪魔に人生を救われちゃったものね。やっぱり悪魔は道具なんかじゃないわ」
「そうね…不動明王のお陰で私達は生き残れている。これからの私は使役悪魔を仲魔と呼ぶわ」
「ふん……お前達がそうしたいなら勝手にしろ。それより葛葉ライドウの動きはどうだ?」
「戦闘もなく上手く侵入出来ているわ。もう直ぐ機密室に辿り着くそうよ」
「俺と互角の戦いが出来た男ならば当然だ。上手く情報を盗み出して葛葉の里に届ければいい」
「尚紀を救出でき次第、彼は神宮を抜け出して里に戻るそうよ。尚紀は私達が回収しましょう」
「おいっ!?なんで俺が人修羅とやらを連れて帰らなければならない!?」
「この車は4人乗りなんだしいいでしょ?それに聞いた話だと、彼はとんでもない資本家よ」
「助けたなら当然謝礼金を期待出来るのではなくて?ビジネスマンなミスターキョウジ♪」
にこやかな笑顔を向けてくる女サマナー達に終始手玉に取られている気分となってしまう。
先を思うと憂鬱になるキョウジは燃え上がる神宮の愉快な光景を想像しながら作業に戻った。
……………。
「猫のくせに器用なものだな……こんな機械を操作出来るとは」
機密室に辿り着いたライドウは複数のモニターが並んだPCの前に立っている。
机の上では黒猫のゴウトが器用に前足を使いながらキーボードやマウスを操作しているようだ。
「ライドウの名を継いだが死んだ前任者はPC知識が豊富でな。我も色々と勉強させてもらった」
「自分以外のライドウ達のお目付け役も務めてきたゴウトだ…色々な経験をしてきたのだな」
一方、侵入者に襲われて昏倒させられた職員の上ではポルターガイスト達が暇そうにしている。
「ヒマだねー兄ちゃん。サツリクもなかったしタイクツだよー」
「う~……なんかオモシロイのない?」
「まて!?おまえたち……アレをみろ!!」
悪霊三兄弟が見つけたのは宴会に参加しているサマナー達が持ってきた差し入れの品。
悪魔達がヨダレを出しそうな品とは悪魔の舌も唸らす酒、『秘蔵濁酒まさむね』であった。
「うぉぉぉ~~……なんというほうじゅんなにおい!からだがひきよせられる~!」
「これはちょうさがひつようだね……兄ちゃん!」
PC操作を行い機密情報を盗み出したゴウトに促されたライドウは記録媒体を引き抜く。
学ランのポケットに仕舞った時、背後の騒ぎに気が付いてしまう。
「お、おい!?うぬ達は何をやっているのだぁ!?」
驚愕するゴウトと呆気に取られたライドウが見た光景とは機密室がひっくり返る騒ぎである。
膨大な書類や管理する棚や機材が宙に浮かび、その中を酔い潰れながら浮く三兄弟がいたのだ。
「うい~~ヒック!これがおとなのあじなんだね~~兄ちゃん!」
「これはクセになるあじだ!もうちっとのんでいいよね?」
「ごぞうろっぷにしみわたる!これでボクたちも~おとなのなかまいりだ!」
浮かれながら宴会気分に浸っていたのだが、宙を漂う機材の一つが壁にぶつかってしまう。
運が悪いことにぶつかった場所は非常警戒装置でありけたたましいサイレンが神宮に鳴り響く。
「どうやら警報装置を作動させてしまったようだな…」
「これだからコイツらを使役するのは心配だったのだ…」
情報を盗み出したライドウはすぐさまイヤホンマイクでレイに連絡をとる。
<<不味ったようね…仕方ない、あたし達が囮になるからその隙に尚紀を救出して>>
尚紀のGPS情報を受け取ったライドウはポルターガイスト達を管に仕舞いながら駆け抜ける。
ゴウトを肩に乗せた彼が窓を破り、上空を飛びながら新たな仲魔を召喚するのだ。
「ヤンチャ坊主な悪魔なんかより、大人なレディの私を頼りにしてよね!」
召喚されたのはモー・ショボーであり風の魔法を用いてライドウの体を運んでくれる。
地面に着地した彼が見た光景とは神宮の西側が次々と爆発する光景であったようだ。
「チッ!!詰めが甘い男だったようだ!」
リングマウントに搭載した重火器を発射していくのはキョウジの姿。
グレネードマシンガンに備わった弾倉の榴弾は悪魔を内包した特攻武器。
放たれ続ける五芒星榴弾の中身は全て餓鬼であり、悲鳴を上げながら自爆させられるのだ。
目的のためなら非戦闘員すら纏めて吹き飛ばすキョウジの戦いを見せられた者が顔をしかめる。
「今は気にしてもしょうがないよ、ライドウ。人修羅を助けに行くのが先決なんでしょ?」
「分かっているが…やはりあの男も初代キョウジと変わらん。上手くやっていけそうにないな」
「今回限りの協力関係だ。この件のカタがつけば…再びライドウの命を狙ってくるぞ」
やり切れない気持ちを抱えつつもライドウは人修羅が封印された洞窟の入口を目指していく。
燃え上がっていく神宮の光景こそ、裏切られし葛葉一族の報復の光景にも映るのであった。
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蜂の巣を叩いたような騒ぎとなる神宮内では警備員達が避難誘導を行っている。
逃げ惑う職員達を掻き分けて走るのはヤタガラス直属のサマナー部隊の者達。
しかし彼らは宴の席で飲み過ぎてしまったせいか足元もおぼつかない体たらくである。
「西側の山の斜面から砲撃しているぞ!!ウップ!?は…早く迎撃に向かわねば…!」
「ま、待て!急に走ったせいで酷く酔いが回ってきた…盛大に吐きそうだ…」
「バカ者!!ヤタガラスの本拠地が襲撃されているのだぞ!我らが意地を…ヒック!!」
サマナー部隊の指揮官まで酔っぱらっており、彼らの士気も体調も最悪のコンディション。
そんな酔っ払い共など神宮に侵入してきた女性サマナー達の敵ではないのだ。
「あらあら?ここまで酒臭さが匂ってくるわね~?いったいどれだけ飲んでたのよ?」
「吐きそうなら手を貸してあげるわよ?体の中身を全部出すほどの一撃を与えてあげる」
神宮の入口方面から歩いてきたのはレイとナオミの姿である。
不敵な笑みを浮かべてくるレイを見たサマナー達が吐きそうな体に鞭を打って叫んでくる。
「貴様は…裏切り者のレイ・レイホゥ!?神浜から逃げ延びた末に報復に来たのか!」
「隣に立っている黒髪の女はまさか…凄腕のフリーサマナーだと聞かされたナオミなのか!?」
「裏切り者だけど後悔してないよ。だって…先にあたしを裏切ったのはあんた達ヤタガラスよ」
「レイを工作員として利用し…私の家族を殺させて家宝を奪わせたその罪……万死に値するわ」
召喚管を取り出す女性サマナー達の気迫にたじろぐ者達であるが指揮官が声を張り上げてくる。
「怯むな!我らには人修羅を討伐した誉れある葛葉ライドウがいる!その力を見せてくれ!!」
酔っ払い達が面倒ごとを丸投げしようと後ろをついてきていたはずのライドウに視線を向ける。
<<あ……あら……?>>
目が点になってしまう者達が目にしたのは誰もいない光景であり、寒そうな夜風が吹き抜ける。
「これで私の任務は達成出来たわ…後は本物のライドウと合流するだけね!」
ライドウに擬態していたネコマタは迎撃部隊に参加するフリを行いながら途中で抜けている。
頼りにしていたライドウまで消えていた事態に慌てふためく者達に対して、一気に踏み込む。
<<我らが仲魔よ!!この身に宿れ!!>>
振り抜かれた召喚管から召喚されたのは太陽神アマテラスと魔王シュウの御姿である。
駆け抜けていく召喚者達に憑依した悪魔達が術者を通してその力を遺憾なく発揮していく。
<<ハァァァァァァーーーーッッ!!!>>
酔っ払いサマナー達が迎え撃とうとする間もなく踏み込まれたため一気に乱戦となっていく。
レイと共に戦うナオミはまるで香港時代に帰れたかのようにして生き生きとした姿を見せる。
そんな中、レイの体に宿っているアマテラスが表に出てくるようにして彼女の顔に変化を生む。
その表情は黄昏に満ちており、こんな言葉を語ってくれる。
「我が弟よ…我らは権威という権力に囚われ過ぎたのだ。権力の奴隷に成り果てたのだ…」
旋風脚を放って蹴り飛ばした相手から視線を逸らしたレイが神宮の奥の院に視線を向ける。
彼女に宿ったアマテラスは自分の弟神の霊圧を感じているようだ。
「高天原に座す我らが父神も憂いておられるだろう…これ以上の恥を晒すのはやめてくれ」
その言葉を語った時、神宮の奥の院から憤怒を宿した霊圧と共に恐ろしい念話が響いてくる。
<<奴隷だと…?恥だと…?我が兄弟よ…汝は天津神族の長としての誇りを捨てたのか?>>
<私の血筋は既に絶えている。その時点で大和王朝は滅び…太陽もまた地平線に消えるのだ>
<<太陽が滅び…長い闇の刻を我は月神として耐えてきた。しかし…太陽は再び上るのだ>>
<そのための人修羅か……>
<<汝の血が滅びたならば新たな太陽の血筋を生み出す。我ら天津神族の支配は終わらせぬ>>
<汝のその情熱こそ……ただの執着心だ!!>
奥の院に入るための鳥居の奥に立つのは裏天皇達とお付きの巫女達。
彼女達に気が付いたキョウジはグレネードマシンガンの狙いを奥の院に向ける。
「出てきたか…ヤタガラスの親玉め。キョウジの名を侮辱してきた罪…今こそ清算の時だ!!」
次々と放たれる五芒星榴弾が奥の院を破壊しようと飛来してくる。
それを迎え撃つのは三羽鳥の右の者と左の者が召喚する天津神なのだ。
<<来たれ…天津神族最強の武神、そして剣神よ。薙ぎ払うがいい>>
手に持たれた召喚管が開いていき、膨大なMAGを放出。
迫りくる榴弾であるが空から飛来してきた複数の剣が次々と切り裂きながら攻撃を防いでいく。
それと同じくして天から轟雷が落ち、複数の剣と共に並び立つのは武神と剣神の御姿なのだ。
「フッ…落ちたものですな、アマテラス様。我々が勝ち得た権力を手放すなどありえない」
全身が赤い肌をしたふんどし一丁の武神の手に持たれているのは雷の双剣である。
【タケミカヅチ】
イザナギの妻の死の原因となったカグツチを斬った時、剣からほとばしった血から生まれた神。
イザナギの剣の神格化であるアメノオハバリの息子とも呼べる武神のようだ。
名は猛々しく厳しい者という意味であり、武神として国譲り神話の交渉役を任された存在。
タケミナカタの両腕を切り落とした者であり、オオクニヌシから国を奪う交渉を行ったのだ。
「…たとえ相手が我らの主神であろうとも、儂は剣神。儂を振るう者の意思に従おう」
全身にさらし布を巻いた黒髪の剣神はあぐら状態で浮かび上がり、複数の剣を操る。
【フツヌシ】
日本書紀に記され、古事記には登場しない刀剣の神。
タケミカズチが神武天皇に与えた剣である布都御魂(ふつのみたま)の神格化ともされる。
国譲り神話においては高天原の軍勢を率い、荒ぶる国津神達を平らげていったとされた。
「チッ…この霊圧は間違いなく天津神族だな。天から飛来した雷と剣で誰なのかは分かる」
グレネードを撃ち切ったキョウジは車の中に入り込み強引に車を走らせていく。
天津神族最強の武神と、その武神の剣であった剣神まで現れたならレイ達も苦戦するだろう。
援軍に向かうキョウジであるが、らしくもない行動を起こす自分の情熱に戸惑っている。
それでも迸る情熱の感情こそ、葛葉キョウジの一族が与えられ続けた憎しみの爆発であった。
「フフッ…
感情こそがCHAOSの羅針盤であり、大き過ぎるリスクがあろうと命懸けで突き進んでいける。
自由の代償を乗り越えるための起爆剤とは、人間の心に宿るパッションなのかもしれなかった。
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ライドウはかつて、上司である鳴海から語られた過去がある。
鳴海は帝国陸軍の密偵だった人物であるのだが、彼はそこであまりにも多くの現実を知る。
様々な思惑、人知を超えた国家の動き、そんな中では1人の人間などちっぽけでしかない。
一部の特権階級の者達に振り回される人生に嫌気がさし、鳴海は軍を辞めて探偵になった。
「自分もまた…ヤタガラスを捨てる決断をした。この道はきっと…鳴海さんが進んだ道だ…」
穿たれた祠のような場所にあった社から下りられる地下鍾乳洞を進んでいくライドウ達。
誰もいない静かな洞窟内を歩いていると超力兵団事件の頃の記憶を思い出し、語ってしまう。
「この時代も大正と変わらない…進化し続けるテクノロジーによって労働者達は失業するのだ」
「特権階級の者達が勝手に人々の生きる方向性を決めてしまう…あまりにも人間は無力だ…」
超力兵団事件の頃に起きた事件の中でも人々は巨大資本家が生み出す時代に取り残されていく。
足掻こうとすればするほど現実に絶望し、そんな絶望をヒルコと呼ばれた怪物が吸い尽くす。
ヒルコに感情を吸い尽くされた者達はゾンビーに成り果てる末路を遂げた事件であった。
「現実に絶望すれば全てが馬鹿らしくなる…鳴海という男もそんな苦しみを背負う男だった…」
「そんな頃の鳴海さんと…自分は出会ったんだ…」
ライドウの生き様に触れていくことで鳴海の中には失った熱意の感情が蘇っていく。
彼と出会えなければ、鳴海は死ぬまで極潰しの浪費家としてひっそりと死んでいただろう。
「絶望に抗うにはパッションが必要だ…
「それこそが…国や企業に死ぬまで搾取される人生に抵抗出来る…人間の尊厳なのやもしれん」
<<興味深い話をしているじゃねーか>>
ゴウトと話をしていると気が付けば人修羅が囚われている地下牢の元へと辿り着いている。
「……聞こえていたのか?」
「静か過ぎる洞窟だ、お前達の会話はここまで響いてきてたよ」
ライドウの後ろをついてきていたネコマタが牢屋に近寄ろうとするのだが、ライドウが止める。
「気をつけろ、この鉄格子もまた封印が施されている。迂闊に触れれば消し飛ぶぞ」
「何ですって!?あ…危なかったわね…危うく猫の丸焼きになるところだったわ…」
「それに人修羅を潰している封印石の下には五行の封印まで施されている…三重の封印構造か」
ライドウは大正時代の頃から所有してきた道具の『解封符』を取り出して詠唱を始めていく。
すると牢屋の鉄格子にかかっていた封印が解け、力を使い果たした符が燃え尽きてしまう。
同じ手順で五行の封印を解除したライドウが抜刀して鉄格子を切断したようだ。
「流石は悪魔召喚師だ。悪魔を封印する技法だけでなく封印を破る技術にも長けていたか」
「遅くなってすまない…尚紀。お前達の協力のお陰でヤタガラスから情報を盗み出せた」
「胸を貸してやった甲斐もあったな。このまま封印されてたら…ヤタガラスに洗脳されてたよ」
ライドウは刀を振り上げ、封印石に巻かれたしめ縄を断ち切ってくれる。
体が軽くなった人修羅が一気に体を持ち上げていき、封印石の中から脱出してくれる。
立ち上がった彼は左手に魔石を生み出して飲み込み、ライドウから受けた傷を癒していく。
「ここまでの事をしてくれたんだ…お前もヤタガラスを敵にする覚悟を決めたんだな?」
「そうだ…我々葛葉一族を切り捨てるつもりだったヤタガラスになど自分達はついていかない」
「その通りだ。我々は組織全体に尽くしてきたが…人間の尊厳まで差し出したつもりはない」
「その気持ちこそが自由なのだと私は思うわ。私達悪魔だってLAWの独裁なんて絶対嫌だし」
「悪魔はね、パッションなんだよ!感情から生まれる熱意が…悪魔の誇りになるんだから!」
悪魔達からパッションの大切さを教わったライドウの口元にも微笑みが浮かんでくれる。
自由の権化である悪魔の生き方の中にこそ人々の尊厳を奪う独裁秩序に抵抗する教訓があった。
「
「驚いたな…うちの所長の丈二が語ってた言葉をライドウの口から聞くことになるなんてな」
「フッ…尚紀が世話になった所長の中にも、鳴海さんと同じ信念が宿っていたというわけさ」
互いが頷き合った後、地上を目指して駆け抜けていく。
今まで信じてきたヤタガラスを裏切った後ろめたさなど、今のライドウには欠片も見られない。
彼の中にも人間としての熱き血潮が流れており、働き蟻で終わりたくない熱意が宿っている。
行動こそがパッションだ。
全体主義に搾取される虫けらで終わりたくない情熱なのだ。
だからこそ、ライドウ達は反逆という行動を起こす決断を下してくれる。
自由(CHAOS)とは、戦ってでも守るべき価値のあるもの。
たとえ悪者にされようとも、それこそが人々の自由なのだと信じて絶望と戦うのであった。
MAD系悪魔が叫んでたパッションこそが、絶望的な時代に負けない人間達の熱意
というのが葛葉ライドウの物語には詰められてると僕は考えてるのでこういう話を突っ込んでみました。