人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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272話 時をかける反逆者

三羽鳥達が放った天津神の猛攻を受け止めるのはレイとナオミであり、苦戦を強いられている。

 

「くっ!召喚者が違えば…こうも神の力に差が生まれるというのか!?」

 

「フハハハハ!アマテラス様が選んだ召喚者よりも、ヤタガラスの長の力の方が上の証拠!!」

 

華麗に踊るようにして雷の双剣を操り、レイが用いる三節棍を打ち付けていく。

 

防戦一方となるレイの横ではフツヌシの猛撃を防ぐナオミが奮戦していくのだ。

 

「なんて数の剣を同時に操れる神なのよ!!」

 

あぐら状態で宙を浮くフツヌシが操るのは9本の大和古剣であり、宙を浮きながら迫りくる。

 

放たれ続ける斬撃を魔王シュウの青龍偃月刀を用いて弾き続けるが押し込まれていくのだ。

 

「魔王を使役出来る程のサマナーよ、儂に剣を握らせてみよ。血がたぎる程の戦いを儂に示せ」

 

「シュウと私をここまで押し込む程の力を使役悪魔に与えられるなんて…厄介な連中ね!!」

 

燃える神宮の奥で佇む三羽鳥達の体からはレイとナオミを超える程のMAGが噴き上がっていく。

 

霊力を宿す女性の髪を生涯切らずに生きてきた彼女達の力は実力のある召喚者をも上回るのだ。

 

「そのような裏切り者など捨てて三羽鳥の元へと戻っていただけませんかな?アマテラス様?」

 

魔力を込めて光剣とした三節棍の猛攻を潜り抜けながらもタケミカズチは提案をしてくる。

 

必死の形相で戦うレイとは違い、タケミカズチは余裕の態度で交渉してくるのだ。

 

「たとえ落日となろうとも貴方様は天津神族の長。弟神と共に新たな日の本を築きましょうぞ」

 

「笑止!人修羅という新たな太陽神を求めた時点で…私は天津神族から捨てられたも同然だ!」

 

三節棍を振ると同時に跳躍したレイの飛び後ろ回し蹴りから放つのはマハラギオンの一撃。

 

燃え上がる蹴り足から放たれた無数の火炎球が迫る中、双剣を構えた武神が一気に動く。

 

二本の剣を操るタケミカズチは次々と火炎球を切り裂き、マハラギオンを防ぎきったのだ。

 

「だが…私はそれでも構わない。太陽とは地平線の彼方に落日するもの…それが自然なのだ」

 

「日没とは冥界を表すと宗教学者のエリアーデも言葉を残してますな。では、貴方様は……」

 

「神もまた死ぬ…それを表すのが太陽の落日。太陽は生であり…同時に死を表す存在なのだ」

 

「夜明け前が一番暗い…今のこの時代を表しますな。しかし、太陽は再び冥界から昇るのです」

 

「私は再び昇る太陽にはなれない…それでも、日の本を託せる新たな太陽神を…私は望む!!」

 

決死の覚悟を決めたアマテラスがレイの体を通して神霊力を爆発させていく。

 

迎え撃つタケミカズチは双剣に極大の雷を放出させながらこう叫ぶのだ。

 

「よくぞ申された!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()!我が屠らせてもらおう!!」

 

古神道の印を両手で結びながら最要祓(さいようはらい)を詠唱する者の体が極大の光を放つ。

 

布留部!!由良由良止!!布留部!!(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)

 

アマテラスへの祈祷をもって放つ一撃とは魔女の女神であるヘカーテを倒した神光破の一撃。

 

双剣を同時に振るって放つタケミカヅチの『畏怖(いふ)なる光輝(こうき)』もまた迫りくる。

 

激しくぶつかり合う極大の一撃が神宮の建物を次々と破壊する程の鍔迫り合い現象を生むのだ。

 

(ここで死んでも構わないが…せめて人修羅と出会えたならば…()()()()()()()()()()()()()

 

太陽の消失は世界の太陽神話共通のテーマである。

 

アマテラスの天岩戸だけでなく、エジプトのラーもまた毎晩冥界に旅立つ太陽神なのだ。

 

ファラオがミイラとして埋葬されたのも再び昇る太陽の如く死と再生を手に入れるためのもの。

 

またイエス・キリストやミトラといった太陽を表す存在もまた冥界からの蘇りを体現している。

 

太陽とは死と再生の輪廻を繰り返す存在であり、()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

────────────────────────────────

 

「おいおい……地上の方も大変な騒ぎになっているようだな」

 

「そのようだな…これ程の神霊力のぶつかり合いなど自分とて見た事がない…」

 

封印の社から出てきた人修羅とライドウ達の目に映ったのは激しい戦いの光景である。

 

「だが、これだけの戦闘状態なら利用しない手はない。今のうちに里に行った方がいいぞ」

 

「人修羅の申し出を断るわけにもいかん。我々は葛葉の里に情報を届けるのが急務なのだ」

 

「分かっている…しかし、尚紀達はどうするのだ?」

 

ライドウが何を言いたいのかは察している尚紀はこう答えてくれる。

 

視線を向けている先は三羽鳥であるが、憎しみよりも優先しなければならないものがあるのだ。

 

「ここには逃げ遅れた非戦闘員達が沢山いる…今日のところは引き上げた方が良さそうだな」

 

「それが聞けて安心したぞ。お前はキョウジと違って罪なき人々の味方をしてくれる者だった」

 

「あそこで戦っている連中と合流次第、逃げさせてもらう。後は任せて早く行きな」

 

後の事は人修羅達に委ねたライドウ達はヤタガラスの総本山から抜け出すために駆けていく。

 

ネコマタは心配そうに尚紀に言葉を送るが、振り向いた彼がこう告げてくる。

 

「戦闘が得意じゃないお前が前に出たら死ぬ。背後で隠れながら隙を見て逃げるんだ」

 

「分かったわ…貴方達が逃げる判断をした時に合流出来るよう、私は身を隠しておくから」

 

人修羅達が動いて間もなく、激しい激突の光が収まっていく。

 

息が切れたレイが顔を横に向ければ、ナオミと彼女が召喚した新たな悪魔が立っている。

 

ぶつかり合う一撃に対して横から放った一撃とは風魔法の奔流である真空刃であったようだ。

 

「横やりを入れるとは無粋な……太陽を守りにきたか?エジプトのホルス神の母神よ!!」

 

現れた女神とはエジプトの母であり、オシリスの妻である豊穣と魔術の女神であった。

 

【イシス】

 

エジプト神話における豊穣の女神であり、兄妹のオシリスとは夫婦関係をもつ女神。

 

セトに謀殺されて殺されたオシリスの亡骸を集めて蘇らせた死と再生の女神でもある。

 

ホルスの母であることからファラオの守護を担う存在であり、ハトホルとも同一視される。

 

死者の守護女神としても名高く、数々の墳墓でイシス崇拝の痕跡が見られるようだ。

 

また古代ギリシャ・ローマでも崇拝され、豊穣神としての側面からデメテルとも同一視された。

 

「退きなさい、天津神族よ。我らが本気で戦えば…いたずらに犠牲者を増やすばかりですよ」

 

純白のローブに黄金の翼を纏わせた褐色肌の女神の忠告を聞いた武神が周囲に目を向ける。

 

神々の激しいぶつかり合いによって倒れたサマナー達も吹き飛ばされていたようだ。

 

「チッ…雑兵といえども無駄に出来ないのが人手不足の泣き所か」

 

フツヌシがタケミカヅチに視線を向ければ口惜しい態度をしている。

 

武神として戦いから背を向ける行為が気に入らないといったところだろう。

 

「タケミカヅチよ、ここは退くべきじゃ。非戦闘員の避難さえ終わっておらぬのだぞ」

 

「汝がそう思おうと、敵の中にはまだ戦う意思を実行する者がいるようだぞ?」

 

不敵に笑うタケミカヅチが見据えた先から猛スピードで走ってくるのは軽装甲車である。

 

ドリフトしながら急停止した車の屋根から現れたのは米軍の無反動砲を構えるキョウジなのだ。

 

「くたばるがいいッッ!!!」

 

発射された翼安定成形炸薬弾には五芒星が描かれており、特大の餓鬼を特攻させようとする。

 

<<グオオオォォォーーーッッ!!!>>

 

放たれた異形の餓鬼とはヴェータラであり、自爆エネルギーを利用されながら特攻していく。

 

迎え撃つのはフツヌシであり、9本の大和古剣を前方で回転させながら冥界破を放つ。

 

互いの一撃がぶつかり合う中、タケミカヅチが斬り込んでくる。

 

「フハハハハ!!貴様らの蛮勇こそ我の望み!心ゆくまで死合おうぞ!!」

 

消耗したレイに代わり迎え撃とうとするナオミとイシスであるが何者かが割って入る。

 

「ぬぅ!?貴様……どうやって多重の封印から抜け出せたというのだ!?」

 

現れたのは人修羅であり、タケミカヅチが繰り出す剣舞を光剣で次々と打ち払っていく。

 

「無事だったのね、ナオキ!!」

 

「逃げるぞ、ナオミ!!ライドウ達の目的は果たされた!これ以上の戦闘は必要ない!!」

 

尚紀の意思を汲み取った彼女はイシスを召喚管に仕舞うとキョウジに向かって叫んでくる。

 

「聞いたでしょ!目的が果たせたなら退くべきよ!!」

 

「俺の目的はまだ終わってはいないぞ!!」

 

「あんたの目的は何もかもを破壊することでしょ!これ以上の殺戮は必要ないわよ!」

 

「やかましいぞレイ!!俺はまだヤタガラスと戦えてはいないんだ!!」

 

「これ以上の戦闘は経費の無駄遣いよ!金に無頓着だからといっても赤字は困るでしょ!?」

 

「ぐっ……それは……」

 

「退く時には退く!それがあんたのポリシーでしょ!感情に支配されないプロでいなさい!!」

 

ヤタガラスに報復するパッションがみなぎっていた時に女達は冷や水をかけてくる。

 

そんなレイとナオミの冷静な判断によってキョウジは救われることになるだろう。

 

現れた天津神は二体のみであり、三羽鳥の最後の1人が召喚する神が控えているのだ。

 

「俺の復讐心を押し留めたいというのなら……相応の額を要求するぞ、人修羅!!」

 

車の運転席に移動したキョウジに続いてレイとナオミも車に乗り込む。

 

タケミカヅチとフツヌシの連携攻撃に押されていた人修羅であるが、一気に飛びのく。

 

車の横に着地した彼が左手に生み出したのはくらましの玉であり、地面に投げ放つのだ。

 

「「くっ!?」」

 

眩い光が収まった頃にはキョウジの車は消えており、忌々しい表情を武神は浮かべてしまう。

 

「人修羅の封印を破った裏切り者がいるようだ。あれ程の封印を破れる者といえば限られる…」

 

「三羽鳥を除けば…14代目の葛葉ライドウしかおるまい」

 

「奴め…最初から裏切るつもりで人修羅を献上してきたというわけか…ぬかったわ…」

 

燃え上がる神宮が照らす赤い夜空に視線を向ければ巨大な船が下りてくる。

 

その船は三羽鳥の1人が召喚したタケミカヅチの船としても知られる神であったようだ。

 

【アメノトリフネ】

 

日本書紀に登場する神、あるいは神々が乗る船である。

 

天鳥船神(あめのとりふねのかみ)とも呼ばれ、船と海上運輸を司る神であるようだ。

 

イザナギとイザナミの間から生まれた神であり、オオクニヌシの元に送られた使者でもあった。

 

「元よりヤタガラスの総本山はザイオンに移す予定だった。丁度いい引っ越しの機会だろう」

 

雷の双剣を消したタケミカヅチは踵を返して召喚者の元へと戻っていく。

 

帆の代わりに翼が生えた巨大な船を見上げるフツヌシは大正時代の記憶に浸っていくようだ。

 

「14代目…それがうぬの選んだ道か。ならば我らの道は違えた…次に会う時は敵となろうぞ」

 

フツヌシもまたコドクノマレビト事件の頃はライドウの仲魔として共に在った存在である。

 

しかし思想を違えたならば敵同士であり、それはライドウの元を去ったミシャグジさまも同じ。

 

人と人との関係性が利害関係であるのなら、人と神の関係性もまた同じく利害関係なのだ。

 

かつての仲魔であろうとも、フツヌシは容赦なく斬る剣となることを誓うのであった。

 

────────────────────────────────

 

「上手くやれたな、ナオミ。お陰で助かったよ」

 

「これでも私は貴方のボディガードだった女よ。私の復讐に手を貸してくれた礼もあるしね」

 

キョウジが運転する車の後部座席に座るのは尚紀と彼の太腿に座る猫になったネコマタである。

 

不安そうにしているネコマタに代わり、尚紀が前の席に座る2人に声を掛けるのだ。

 

「お前達のことはウラベから聞かされてきたが…礼を言わせてくれ。キョウジ、レイ」

 

暫くは無言の態度を示してきたが苛立ちを強めるキョウジが重い口を開いてくれる。

 

「感謝の言葉などいらん。俺が要求するのは貴様を助けた謝礼金だ。相応の額になるぞ」

 

「分かってるよ…お前は金儲けには無頓着だが仕事に対する報酬はガッツリ要求する奴だって」

 

「フフッ、キョウジの取り立ては恐ろしいわよ?ちゃんと払っておかないと後が怖いからね」

 

「レイ・レイホゥ…お前とも初めて会うことになったが、美雨が言ってた通りの奴で安心した」

 

「美雨が世話になったようね…こちらこそお礼を言うわ。私とナオミにとって美雨は妹なのよ」

 

「そんなお前達が復讐心を乗り越えて互いに手を取り合えたなら…俺にとっても嬉しい結果さ」

 

人修羅と出会えたことでレイはヤタガラスの情報部員だった頃の情報を彼にも伝えてくれる。

 

それを聞かされた尚紀は牢屋の前で三羽鳥達が語った言葉との繋がりを感じられたようだ。

 

「ヤタガラスはイルミナティに支配されてきたのか…だからこそザイオンの独立を狙ったか」

 

「江戸時代に回帰したいというわけね…外国から内政干渉されずに済んだ時代の方がマシよ」

 

「ヤタガラスもまたイルミナティに憎しみを募らせる存在だというのに…争い合うなんてね…」

 

「それこそレビ族とユダ族の争いが現代に蘇った光景だろう。南北イスラエルの内紛と同じだ」

 

「ヤタガラスの狙いなどどうでもいい。それよりもウラベと繋がってるなら聞きたい話がある」

 

キョウジはイルミナティの動向とシド・デイビスを追う者である。

 

彼なりに情報を捜査してきたが東京で起こるオーダー18についての情報が不足しているのだ。

 

「なるほど…お前も俺と同じ目的を持っているようだ。なら探偵として情報を共有させてくれ」

 

尚紀はアリナから得た情報をキョウジに伝えてくれる。

 

東京で起こる計画の正確な日付を確認出来たキョウジの口元には不気味な笑みが浮かぶのだ。

 

「俺もまたゴールデンウイークの時期は東京で動く予定だ。お前達の拠点も用意してやれるぞ」

 

「必要ない。既に俺とウラベは独自に拠点を用意している。そちらで行動を起こしていくさ」

 

「ダークサマナー連中への報復か…それもまた東京を救う事に繋がるなら協力は惜しまない」

 

尚紀は上着の内ポケットから名刺入れを取り出して運転席のキョウジに一枚渡してくれる。

 

受け取った彼もまた白スーツの上着から名刺を一枚取り出して尚紀に渡してくれたようだ。

 

「葛葉探偵事務所の所長か…同業者としてこれからもよろしくな、キョウジ」

 

「フン、馴れ合いをするつもりはないが…貴様は資本家だ。金ずるとしてなら利用してやろう」

 

「参ったな…ウラベが言ってた通りの奴だ。これから先が思いやられるよ…」

 

山道を通るキョウジの車の助手席から外の景色を見つめるレイだが、視線が空に向いていく。

 

彼女が見た夜空の景色の中で佇む存在を発見した時、アマテラスの念話が響いてくるのだ。

 

<レイよ…私と汝の関係もここまでになるだろう>

 

<えっ……?どういう意味なの……アマテラス?>

 

<私は太陽神として最後の役目を果たすため旅立たねばならぬ。あの者も同じ気持ちのようだ>

 

レイの体から離れるようにしてアマテラスの霊体が車をすり抜け、夜空に舞い上がっていく。

 

人修羅やサマナー達が窓を開けて夜空を見れば、アマテラスともう一体の悪魔に気が付くのだ。

 

「不動明王……!?」

 

アマテラスと共に夜空から地上を見下ろす者とはナオミの仲魔であった不動明王。

 

しかしその姿は化身であり、本来の姿とは大日如来であるヴィローチャナなのだ。

 

「大日如来…いや、アスラ王。汝もゾロアスター教のアフラ・マズダーとしての役目があるな」

 

「その通り…我もまた太陽神として、次代の太陽神のために継承を行う必要がある」

 

不動明王は地上の車を見守りながらも目を瞑り、アフラ・マズダーとしての記憶を思い出す。

 

その起源とはインド・イラン共通時代の神話に登場する最高神である()()()()なのだ。

 

彼が思い出す記憶とはヴァルナとして在った頃にまで遡る記憶であり、そこには人修羅もいる。

 

ヴァルナとして人修羅と戦った世界こそがジャンクヤードと呼ばれる世界。

 

そこでの不動明王は1人の人間を構成するプログラムに宿ったデジタルデビルの体であった。

 

「皮肉だな…かつては殺し合った関係性なのに、今度は汝のために働くことになろうとは…」

 

「その記憶は…ヴァルナとして在った頃の記憶か?ならばミトラのことも覚えているはずだ」

 

「ヴァルナとして在った頃の我と並ぶ最高神こそミトラだ。だからこそ奴もまた継承に必要だ」

 

「我ら三体の太陽神の意思を継いでくれることを願って…我らは旅立つとしよう」

 

車を停車させた者達が夜空を見上げる中、アマテラスは夜空の彼方へと消えていく。

 

「そんな……こんな突然の別れだなんて……あたしは嫌だよ……」

 

最高の仲魔といえたアマテラスに旅立たれた苦しみなら不動明王を失ったナオミも分かる。

 

彼女の肩に手を置くナオミに振り返ったレイは彼女に抱き着きながら嗚咽を堪えていく。

 

不動明王もアマテラスに続くようにして夜空に消えていく中、最後に振り返ってくれる。

 

遠くに見える人修羅の姿を見つめる彼の口元が微笑みながらこう告げてくれるのだ。

 

「漢たる死に安らぎなし。曲折の果てにそれは訪れん。人に非ずとも、悪魔に非ずとも……」

 

――我が意思の逝くまま。

 

不動明王の背後に浮かぶのはヴァルナとして在った頃の幻影と1人の人間の幻影。

 

オレンジのシンボルカラーを纏う灰色戦闘服を着た銀髪の男もまた微笑んでくれていたようだ。

 

アマテラスと不動明王はこの世界のミトラと出会うために世界を旅する神となるのだろう。

 

それは次の太陽神のためであり、有翼光輪を継ぐ智恵ある神のために進む道であった。

 

────────────────────────────────

 

仲魔の一体であるオボログルマを走らせて葛葉の里に辿り着いたライドウ達が駆けていく。

 

向かう先とは先代の葛葉ライドウが暮らしていた家であり、彼の遺品も残っている。

 

残されたPCを用いて盗み出した情報を証拠として纏めた彼らが向かうのは葛葉宗家の御神木。

 

葛葉一族の御神木を祭る巨大社に訪れたライドウ達が巨大三本松に捜査情報を伝えていく。

 

独断捜査はヤタガラスを裏切る行為だと激怒していたが証拠を突き付けられ態度を変えるのだ。

 

<<汝が手に入れた証拠の数々が真実を物語っている…これが…我らに対する仕打ちか!!>>

 

三本松に宿った葛葉宗家の大霊が憤怒を表すかの如く憎悪の霊気を放ち、巨大社が揺れ動く。

 

天地を貫く程の怒りを宿した葛葉宗家の魂が憎しみを叫ぶのだ。

 

<<おのれヤタガラスゥゥゥ!!我ら葛葉の忠義を裏切った罪は余りにも重いぞぉぉぉ!!>>

 

怒りを爆発させる荒魂を鎮めるためにライドウとゴウトが葛葉宗家の意思を確認しようとする。

 

答えなら勿論、聞かなくても分かるものだった。

 

<<我ら葛葉一族は…今日をもってヤタガラスから離反する!!一族の者にも伝えようぞ!>>

 

「他の退魔師一族もヤタガラスから捨てられる…全てはハルマゲドンに備える大選別なのだ…」

 

<<最終戦争…そして選民都市ザイオン。これを公にするわけにはいかん…大混乱が起きる>>

 

「では、他の退魔師一族にはどのように説明するのだ?それこそザイオンを懸けた戦争になる」

 

重苦しい沈黙が場を支配する中、葛葉宗家の御神木はこんな話を語ってくれたようだ。

 

<<実はな…国津神達もまた行動を起こそうとしている。奴らの狙いは啓明結社との戦争だ>>

 

「ザイオンは啓明結社が用意したもの…ザイオンを巡る戦争とは欧米ユダヤ財閥との戦争だ」

 

<<それに呼応するように世界の悪魔達にも動きがみられる。世界大戦が起きるやもしれん>>

 

「宗家よ…我々はどうしたらいいのだろうか?たとえヤタガラスや啓明結社を倒そうとも…」

 

言いたいことならば分かっている宗家の御神木がこう告げてくる。

 

その言葉の中には影より人々を護りし退魔の一族としての誇りが宿るものだった。

 

<<我々は来る最終戦争と戦う。可能な限り人々を生き残らせるために…命を捨てようぞ>>

 

「御上のために戦うのではなく、人々を護る者として命を使い果たす…それでこそ葛葉宗家だ」

 

<<我々は見失っていたな…。我々が戦うのは御上のためか…弱き人々のためなのかをな>>

 

沈黙を続けていたライドウに対して御神木の宗家は直ぐに大正時代に帰るように言ってくる。

 

彼が命を使うべきなのは過去の時代であり、他の世界ともいえる場所で使う必要はないという。

 

それでもライドウは首を横に振り、覚悟が宿った言葉を言ってくれるのだ。

 

「令和の人々も大正の人々も…皆の命は尊いもの。見捨てて逃げれば…葛葉ライドウではない」

 

<<良いのか…14代目よ?最終戦争に参加すれば…汝とて生き残れる保証はない>>

 

「大正のヤタガラスはこう判断する筈だ。自分は未来のライドウに敗れて時空に散ったのだと」

 

巨大社から出てきたライドウを見上げるゴウトは心配そうな顔を浮かべながら語ってくる。

 

「葛葉宗家はこの証拠を他の退魔師一族にも伝えるそうだが…足並みが揃うかは分からんな…」

 

「命欲しさにヤタガラスに縋りつく一族もいれば…ザイオンを手に入れる蜂起にも動くかもな」

 

「ライドウよ…本当に良かったのか?ここで逃げようとも誰も責めはせぬというのに…」

 

歩くのを止めたライドウが日が昇りそうな空を見上げていく。

 

彼が語るのは超力兵団事件の頃の話であり、ゴウトも当事者として知っている内容だった。

 

「うぬの言葉は大道寺伽耶(だいどうじかや)に取り憑いた鬼…未来のライドウが残した言葉だったな」

 

国家の動き、文明の発展、次代に翻弄される人々。

 

様々な人がいて、様々な生き方がある。

 

そんな中、ライドウはどう感じているのかを大道寺伽耶に取り憑いた者が質問したのだ。

 

「決められた運命に従うべきか…己自身で切り拓くのが運命か…彼女は選択を迫ってきた」

 

「あの時のライドウは…己自身で切り拓いていくのが運命だと答えてくれたな」

 

人はみな、何かを成すために生まれたはず。

 

私は私自身の力で新たな将来を創ってみせる。

 

その言葉こそが大正時代に自分の記憶を未来から送り込んだ者が宿す信念の言葉だった。

 

「あのライドウは崩壊した2050年の世界を憂いて…未来を創り替えようとしたんだ」

 

ICBMが東京に落ちて世界が魔界と化した違う世界において、LAWの天使が勝利を収める。

 

その後はセンターという組織が誕生して管理統制社会という全体主義の都市国家を生み出す。

 

そこでは人は人として生きられず、全体という歯車を動かすだけの部品としての価値しかない。

 

働き蟻にされた未来の人々はセンターを存続させるためだけにしか存在を許されない。

 

人々は他人が生きる全体に尽くす優しさを利用され、死ぬまで搾取される絶望が与えられる。

 

その光景はブラック企業で社員全体のために自分も過労死するまで働く光景と同じだった。

 

「絶望そのものの未来を変えたい。その信念が…()()()()()()()()()に進ませたんだ」

 

「時をかける反逆者か…ある意味、今のライドウも未来のライドウと同じ道を進んでいるな」

 

「自分もまた40代目葛葉ライドウと同じくアカラナ回廊を悪用した者…同じなんだろうな…」

 

ライドウの前に立ったゴウトが彼を見上げながら質問をしてくる。

 

「14代目葛葉ライドウよ。うぬは時をかける反逆者になれるだけの覚悟はある者か?」

 

そう問われた時、鳴海だけでなく様々な人達が語ってくれた言葉が頭を過っていく。

 

大正時代の帝都で生きたデビルサマナー、14代目葛葉ライドウは己の答えを示してくれる。

 

「与えられた使命を投げ出すのではなく…()()()()()()()()()()

 

――それが、もっとも人間らしい生き方なのだと……自分は信じよう。

 

世界の現実に絶望した鳴海もまた自分のやれる範囲で成すべきことを成す者となる。

 

未来の現実に絶望したライドウもまた地獄の未来を救うために大虐殺の世直しを行う者となる。

 

そして14代目葛葉ライドウもまた人々の守護者としての使命を自分なりに考えて実行する。

 

「人は、その人の出来る範囲でやるべきことをやらねばならないか…鳴海の言葉は生涯忘れん」

 

「鳴海さんの言葉があったからこそ…自分はこの時代に流れ着くことが出来たんだ」

 

鳴海が与えてくれたパッションを胸に宿したライドウが行動を起こすために歩き始める。

 

その横を付いて行くのは14代目葛葉ライドウがどんな生き様を示すのかを見届ける者がいる。

 

彼の中には40代目まで続いてきた葛葉ライドウ達の魂が宿っているのだろう。

 

時をかける反逆者となった者は未来の世界を変えるためにこそ、その足を進める者となった。

 




人修羅君への太陽継承ネタは真女神転生5をプレイしたメガテニストには分かるネタかもしれませんね。
不動明王をよく使うのはやはり元ネタがヴァルナであり、アバタールチューナーが好きだからこそなんですよね。
ボス修羅のトラウマも今ではいい思い出。
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