人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
ヤタガラスの総本山から脱出した尚紀はネコマタと共に無事帰宅することになる。
家で待っていたクーフーリン達に事情を説明すると激おこになりながら彼をしばくのだ。
「この野郎!!俺様達を騙しやがった罪は重いぞテメェ!!」
「そうだぞ!せめて私にぐらいは事情を説明するべきだった!猿ではボロを出すだろうし!」
「何だとぉ!?それはどういう意味で言ってんだ犬っころ!?」
「マテマテ…コウシテ人修羅ガ無事ダッタノダカラ、ヨイデハナイカ」
「イテテテ…悪かったって。敵を騙すには先ず味方からだというだろ…?」
「その通りよ。それに知的な私に最重要任務を任せる尚紀の判断こそリーダーシップね♪」
「ニャンか…オイラまでバカにされてる気分になってきたニャ…」
仲魔達から手荒い歓迎を受けた尚紀は居間に置いてあったスマホを手に取り通話を始めていく。
自分を心配してくれている人達に無事を伝えた彼がソファーに座って仲魔達に視線を向ける。
話していくのはヤタガラスの狙いについてだった。
「なるほど…尚紀を新たな太陽神にして啓明結社との交渉道具にしようとしたのだな?」
「テメェがこの国の新たな天皇になるってのも…話が天元突破し過ぎてピンとこねーな…」
「我ハソウハ思ワン。アマラ深界ニオイテ、イザナギ神トイザナミ神ハ人修羅ヲ認メタノダ」
「日本の高祖神夫婦に太鼓判を押されてるのなら…尚紀は日本を背負う資格があるのかもな」
「よしてくれ。俺は国会議員を目指してるのであって、日本の皇帝になりたいわけじゃねーよ」
不機嫌になった尚紀であるが、彼の頭に過るのは牢屋の前で語られた三羽鳥達の言葉である。
「ヤタガラスの長はな…俺を
【アマツミカボシ】
日本神話・日本書紀の葦原中国平定の件に登場する星の神であり、
国譲りにおいてタケミカヅチとフツヌシが唯一倒せなかった神こそがアマツミカボシである。
彼らは倭文神建葉槌命(シトリガミタケハヅチノミコト)を派遣してようやく懐柔させたのだ。
星や月を神格化すること自体は世界各地に見られ、特に星神は主要神とされる事も多い。
この星神が悪神として扱われた理由は大和王朝に逆らう星神崇拝部族がいたからだとされた。
「アマツミカボシは金星の人格化された神だと言われているそうだ…つまりは……」
「尚紀のことを新たなルシファーだとしたいのだろうな…ヤタガラスの連中は…」
「太陽神ルシファーか…そいつは見滝原で見せてもらった。俺様も信じられない光景だったぜ」
「皮肉ダナ…魔女達ガ生ミダシタ虚構ノ太陽神ガ…ヤタガラスノ求メル太陽神ニ繋ガルトハ…」
アマツミカボシは常陸の国(茨城県)の
人修羅を封印した岩も宿魂石であり、彼を持ってしても持ち上げられない霊力があったのだ。
岩に封印される神こそ天岩戸のアマテラスであり、岩は太陽の死と再生の象徴でもあった。
「死と再生の岩こそが太陽の復活…日本神話通り封印石に押し潰されていたというわけか」
「重たかったろ?俺様も五行山で封印石に潰されてた先輩だぜ!師弟揃って岩兄弟だな!!」
「話が脱線するからやめなさい。でも変ね…悪神として扱われたなら何故天津なのかしら?」
「言われてみればそうだニャ…天津は悪神に与えられる神名じゃないはずだニャ」
「奴らはこうも語っていたな…ヤタガラスと蛇神とは繋がりがある存在だとな」
三輪山の伝承ではヤタガラス族の娘である玉依姫の元に素性が謎の男が現れて結婚するとある。
八咫烏を表す神は三嶋湟咋(みしまのみぞくい)であり、この女神の娘が玉依姫なのだ。
現れた男の正体は光の神である大物主であり、白蛇に姿を変える神として知られる存在。
大物主はオオクニヌシの国作りを助けた神であり、彼を三輪山で奉ることで国作りが完成する。
同じ蛇神であることからオオクニヌシとも同一視され、オオクニヌシの別名とされていくのだ。
三輪山は太陽崇拝の地として残っており、
「その神話にあやかり、尚紀とヤタガラスとの間で血族関係を結ばせようと企んでいたのだな」
「連中が重視したのはヨハネの黙示録内の救世主を表す記述を俺に当て嵌めたものだったんだ」
ヨハネの黙示録ではイエスを輝く明けの明星と表現しており、明星とは金星を表す。
イエスの磔刑による死と再生神話の原型とは、モーセが掲げた青銅の蛇だというのだ。
「出エジプト記においてモーセはイスラエルの民を導くために旗竿を用意して蛇を掲げたんだ」
「それじゃあ…キリストの死と再生の原点とは……蛇なのかニャ?」
「蛇、金星、太陽…色々と繋がってきたわね。連中はグノーシス主義者の太陽を掲げたいのよ」
「啓明結社はグノーシス主義の団体…なるほど、蛇の太陽であるルシファーを否定出来ないな」
「ヤタガラスにとっては救い主となり、日本の独立を救うメシアになりえるのがルシファーか」
「レビ族もユダ族も同じヘブライ…それを蛇が導くのなら
ネストリウス派キリスト教の景教を信じる秦氏が求めるのは虐げられる民族を救うメシア崇拝。
ヤタガラスの狙いを見抜いた者達であるが、当の本人はいつの間にか窓際で立っている。
夜の景色を見つめる彼の表情は重く、とてつもない岩を未だにかついでいる気分となっていく。
太陽神に至る可能性を見滝原で実現させたこともあり、彼の心は恐怖で圧し潰されていくのだ。
「どこの世界に行っても……俺は周りの連中から振り回されるだけの男のようだ」
このまま天津神族側に取り込まれて天津の星神となり、日本を独立させるのも一つの救い。
しかしそれを良しと出来ない尚紀は重い選択によって心が暗雲に飲み込まれてしまう。
そんな彼の心労に追い打ちをかける話を持ち出すのを仲魔達は辛そうにしてしまう。
それでも知る必要があるため尚紀とライドウ達が動いていた頃に起きた事件を語ってくれた。
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日本どころか世界中で巻き起こるパンデミックにおいてのワクチン接種は滞りなく進んでいく。
連日のメディア報道による恐怖誘導によって人々は世のため人の為と進んで協力していくのだ。
「世界のワクチン接種は滞りなく進んでいるようだが…神浜市の接種状況はどうだ?」
「既にほとんどの世帯が一回目の接種を終えようとしているのですが……」
「どうした?何か問題でもあるのか?」
神浜市の中央区にあるアルゴンソフト支社の都市管理部門に訪れているのはフィネガンである。
スタッフから報告を受けた彼のサングラス顔の眉間にシワが寄っていく。
「神浜の魔法少女共は……誰も接種を受けていない状況だと?」
「まさかワクチンの副作用に気が付かれていたというのでしょうか…?」
「全員が接種を受けていないとなると確信犯で行っていると判断するしかないだろうな…」
「10代の子供にそんな知識が備わっているとは思えません…誰かが入れ知恵を行ったのやも」
「……その線で調べてみるしかないようだな」
モニタールームから出てきたフィネガンはガラケーを取り出してシドに連絡を行う。
ザイオンの秘密が漏れる危険性が大きい神浜魔法少女社会は全員抹殺する予定である。
しかしワクチン接種による抹殺を狙っていたが頓挫した状況を看過出来ないようだった。
「利口な少女というよりハ…やはり彼女達に入れ知恵を行う者を疑ったほうがいいですネ」
「オーダー18が迫っているこの時期だが…私はこの状況を見過ごすことは出来ないな」
「計画によって反ワクチン派は社会悪に仕立て上げる予定ですガ…いないにこしたことはなイ」
「それについては同感だ。それにプロとして秘密が漏れる危険性も直ぐに取り除きたい」
しばしの沈黙が続いていたが、シドはフィネガンの申し出を受け入れる。
「支援部隊をそちらに送っておきまス。速やかに神浜の魔法少女達を駆逐してくださイ」
ガラケーを仕舞ったフィネガンの口元には不気味な笑みが浮かんでいく。
両手をポキポキ鳴らしていく彼はたとえ相手が女子供であろうとも容赦なく殺す者となれる。
仕事に私情は挟まず、目的達成を第一とする生き方こそがプロだと信じる男であった。
……………。
尚紀から与えられた忠告によって国への不信感が確信に変わった者とは聖丈二である。
今の彼は探偵としての活動は行っておらず、副業の職場ともいえる部屋に籠っている。
探偵事務所にある本棚の裏側の隠し部屋は東京時代と変わらず電子機器の巣になっていたのだ。
「やはり厚労省に報告される未知の病魔の死亡数は…他の病死まで合わせた抱き合わせ数だ!」
ハッキング技術に長けた丈二は厚労省にハッキングを仕掛けた末に情報を引き出している。
勿論これは重罪であるのだが、丈二は国こそが悪の元凶そのものだと考えているのだ。
見つけた情報には
「テレビが流す脅威の死亡数は捏造だ!国民に恐怖を与えてワクチン接種させるのが狙いか!」
纏めた情報を記録媒体に納めた丈二はすぐさま事務所を出て行く。
用心に越したこともないことから丈二は暫くの間、探偵事務所を休業する決断をするのだ。
「悪い…尚紀、瑠偉。お前達は金持ちだし暮らしていけるだろう。それでも俺は戦いたいんだ」
尚紀と瑠偉の連絡先に留守電を残した丈二が向かう先とは政治関連の週刊誌の出版社である。
丈二はこの出版社の者とも交友があり、情報のタレコミを行う覚悟をしているのだ。
「刑事として探偵として…俺は弱い民衆の味方でいたい。御上のための秩序なんぞ糞くらえだ」
車を運転しながらも彼は刑事時代の記憶の世界に浸っていく。
自分は誰を守るために刑事として生きてきたのか?
得体の知れない日本政府の秩序のため?民衆が安心して暮らせる秩序のため?
それを考えた時、刑事として生きてきた丈二は迷わず後者を選んでくれる。
「汚職と不正に塗れた連中の独裁利益のために俺は刑事として生きてきたんじゃないんだよ…」
探偵という情報屋として丈二は自分が出来る範囲で成さねばならないことを成そうとする。
その在り方こそ14代目葛葉ライドウにパッションを与えた鳴海と同じ信念。
そしてその信念を宿す者は極僅かであっても他の者達にも受け継がれているのだ。
「なんだ……アイツは?」
車を停車させた丈二が視線を向けている先には魔法少女達に知恵を授けた元医者の姿。
神浜中央区の広場で拡声器片手に叫んでいるのが気になったため車を停車させにいく。
「未知の病魔のワクチンは人の全ての臓器に深刻な後遺症を残します!接種してはならない!」
元医者の叫びを真剣に聞く者はおらず、スマホ片手にニヤついた連中が撮影をするばかり。
「頭のおかしい陰謀論者を発見したらSNS投稿だな♪今日のマヌケをしゃぶりつくしてやるぜ」
「ほんと陰謀論者は頭が狂ってるよなぁ。国や大手メディアが嘘をつくはずがないのに」
「この前もSNSで世界の人口削減論とか訳の分からない陰謀を垂れ流してるアホがいたぜ」
「カルトに洗脳された狂信者は怖いよなぁ。ああいう連中こそ取り締まる法律が必要だよ」
「やっぱ戦前の治安維持法が日本には必要だよな。ああいうテロリストを防ぐためにもね」
日本政府や大手メディアの支配構造すら考えない者達が根拠もなく国やメディアを信じ込む。
盲信者達から揶揄と嘲笑ばかりを浴びせられる男の光景こそが美国織莉子も経験した苦しみ。
それでも負けずに声を張り上げ続ける者の姿を丈二は見入ってしまっている。
嘲笑われるばかりの男の姿に苛立ちが爆発しかけていた時、丈二の肩を掴む者が現れるのだ。
「堪えろ。ここで暴れたところで犯罪者にされるのはお前の方なんだ」
「あ……あんたは?」
「ウラベってんだ。お前の職場の尚紀とは知り合いだし、お前も尚紀の正体は知ってる奴か?」
「尚紀のことを悪魔だと知ってる奴なら……あんたはデビルサマナーってやつなのかよ?」
「そこまで聞かされてるなら話は早い。少しだけ付き合ってくれ」
元医者の元から離れていく丈二であるが、心の中には少しだけ安心感が湧いてくる。
尚紀が認めたサマナーならば危険な自分を守ってくれるかもしれない男だと考えるのであった。
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「そうか…あんたはダークサマナー連中に報復するために神浜に潜伏してきたんだな?」
広場に隣接したカフェのテラス席に座る丈二はウラベと向かい合いながら事情を聞かされる。
彼は潜伏しながらも神浜におけるダークサマナー達の活動拠点を割り出そうとしたようだ。
「そういうことだ。お前の事は尚紀から聞かされてきてな…どんな奴かと興味を持ってたんだ」
今日は探偵の仕事で外回りなのかと質問されるのだが、丈二は重い表情を浮かべてしまう。
言葉を選びながらも彼はウラベに対して未知の病魔騒ぎについて質問がしたいようだ。
「俺だって国やメディアを信用なんてしてない。連中の支配構造なら昔から知ってるんだよ」
「なら…あんたはあそこで必死に叫んでる男の話を信じられる者だと判断していいのか?」
「医療については詳しくないが…あの男の表情を見ても嘘を言ってる奴だとは思えないな」
悪魔を召喚して読心術を行使するまでもなく、ウラベは元医者の男を信じてくれている。
この男は今の自分の行動を理解してくれる者だと判断した丈二が語ってくれたようだ。
「やはりそうだったのか…不自然なまでの死亡者数の裏には捏造があったんだな?」
「俺はこれを政治関連の出版社にタレコミに行きたい。出来ればあそこの男も味方にしたいな」
「語られる内容も医療の専門分野に通じている者の言葉に思える。元医者なのかもしれないぞ」
「だとしたら頼りに出来る奴だろう。俺はあの男と話をしてみようと思うんだが……」
不安そうな表情を浮かべる丈二はウラベに対して質問してくる。
警護を任せられないかと聞いたようだがウラベは腕を組みながら重い表情を浮かべてしまう。
彼の目的はダークサマナーへの報復であり、世直しではない。
判断に迷っていたウラベであるがこんな話を持ち出してきたようだ。
「実はな…前に所属していた組織の中で俺はこの病魔騒ぎが起こるのだと聞かされてきたんだ」
「ま…まさか……あんたが所属していた組織がこの病魔騒ぎを引き起こす元凶だってのか…?」
「連中は秘密主義の金融マフィアそのもの…秘密を追う者は容赦なく暗殺者を送り込んでくる」
「俺もまた…この国に蔓延る不審死の仲間入りを果たす日がくるのかもな…」
「だとすれば…お前の警護をしていれば連中の方から現れる可能性が高いのやもしれないな」
微笑んでくれたウラベが頷きながら警護の役目を引き受けてくれる。
政府の機関にハッキングを行うという命懸けの綱渡りをした者にとっては嬉しい限りだった。
<<このデマ野郎!!テメェのようなバイオテロリストが感染拡大を広げるんだ!!>>
大声が聞こえた方に2人が視線を向ければ正義感を爆発させた者達に襲われる男が見える。
「反日陰謀論者はこの国から消えちまえ!!どうせ中国か北朝鮮の工作員なんだろ!!」
「私が工作員だという証拠もないのに…どうしてそんな扱いをされなければならない!?」
「うるさい!!国やメディアに従わない連中なんてテロリスト扱いで十分なんだ!!」
蹴り倒されて暴行を受け続ける元医者の男を見つめる男達の手が握り込まれていく。
「口を開けばデマデマ…あんな言葉を平気で使える連中からは謙虚さを感じられねーな」
「同感だぜ…本当のことなんて当事者以外に誰が分かる…森羅万象を検証してきたのかよ…」
「陰謀論もそうだがそういう言葉を使う連中は何も調べねぇ。これはワクチン推進派も同じだ」
「子宮頸がんワクチン推進者もデマデマとバカの一つ覚えのように連呼してたな…覚えてるよ」
「
「言うとしても他にあるだろ…本当にそう?とか、知らなかったよ調べてみるとかよぉ…」
「常識、絶対を使う人間の浅さと同じだ。専門家気取りこそ視野狭窄の偏見生物だったのさ」
対局を俯瞰出来る人々こそが在野の一般人である。
何故なら権威や利権やしがらみがないから余計なバイアス無しで物事を見られるからなのだ。
学歴プライド塗れの連中こそエゴの塊であり、自分の劣等性は絶対に許さない偏見生物と化す。
指摘したところで即座に問題を追及側にすり替え、擦り付けられた者は追及する余裕が消える。
反論ばかりする羽目になった追及側は目的さえ果たせず追及内容が有耶無耶にされてしまう。
これこそが追及側に対して一方的にマウント攻撃を行える
「見ろよ…通りの連中を。嘲笑う者もいれば、見て見ぬフリをしながら通り過ぎる連中をよ」
「保身に走る条件は権力に逆らわずに従いながら、何も知らない馬鹿を装うか…」
「それこそが卑屈を極めた全体主義民族日本人が繰り返してきた物事の分かる大人だったのさ」
「こんな…こんな情けない大人の姿が物事の分かる大人だってのかよ……腐ってやがる!!」
激高して立ち上がった丈二であるが、突然の頭痛に襲われて座り込んでしまう。
「お、おい…大丈夫なのかよ?」
心配してくれる者の声も遠くなってしまう程の頭痛によってもたらされるのは記憶世界の光景。
その記憶世界とは違う並行世界で生まれてしまったLAWの天使が支配する世界の光景だった。
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大破壊から数十年の後、荒野を耕し、悪魔の群れと戦いながら無数の生と死が繰り返される。
だが人類は縋りつく存在がいなければ生きられない程にまで弱い生物。
魔界が開いた世界において明日の希望を求める者達を導いた存在こそがLAWの天使達なのだ。
彼らが築き上げたカテドラルこそが
その国は完全なる全体主義で支配された秩序の国であり、自由は失われてしまうことになる。
この独裁国家で唯一自由を享受出来るのはセンターを支配するメシア教の元老院だけであった。
……………。
機械と繋がる試験管に浮かんでいるのは数人の人間達であり、人工生命なのだと分かるだろう。
そんな者達を見つめるのは灰色のダブルボタンスーツを纏う灰色髪の主任研究員なのだ。
「メシアを人工的に生み出さなければ全体主義を維持出来ないとは…独裁にも限界があるな」
メシア教とは唯一神が地上に遣わすメシアによって地上の人々は救われると信じさせる教義。
しかし唯一神はいつになってもメシアを地上に遣わさないため人々の不満は限界まできている。
これを重くみた元老院の熾天使はメシアを待つことが出来なくなり、強硬手段を行ってしまう。
それは自分達の手でメシアを人工的に生み出す計画だったのだ。
「独裁国家とは民衆の支持があって初めて機能し続けられる。かつての歴史通りになったか…」
民衆を騙してでも独裁内容を承諾させるためにこそ偽のメシアを生み出そうとする。
そんな愚かな独裁者達の判断に対して主任研究員はやり切れない表情を浮かべてしまう。
「それでもその判断は効果的だ。民衆は何千年たとうとも流されるだけの神の子羊なのだから」
足が悪いのか杖をつきながら歩く先には複数の大型モニターが存在している。
パネル操作を片手で行った彼が見たのは複数のモニターに映ったミレニアムの光景なのだ。
研究所はテンプルナイトの都市管理部門とも情報が共有されるのか防犯カメラの映像が見える。
そこに映っていた光景とは古代ローマ帝国時代から変わらない愚民の営みの光景であった。
「カジノやディスコやコロシアム…愚民は娯楽さえ与えてやれば
センターから全体主義のための働き蟻にされようとも、僅かな余暇ぐらいは与えてくれる。
その余暇を享楽で満たすことさえしてやれば愚民は従順な家畜として牧師に従う生き物だった。
「大破壊前の世界も崩壊後の世界ですらも人々の本質は何も変わらない…自分から個を捨てる」
人々は導く者がいなければこんなにも堕落しか選ぶことが出来ない生き物。
だからこそメシア教が人々の導き手となり、ユートピアであるTOKYOミレニアムを生み出す。
そこで生きる人々もまた人修羅が流されてしまった魔法少女の世界で生きる者達と変わらない。
「パンとサーカスさえ与えてやれば人々は何も調べない無知蒙昧でいられるか…実に愚かだな」
視線を向ける先には虚偽のメシアとして用意された数人の人工生命が試験管に浮かんでいる。
この現実さえ人々は調べる努力を行わず、都合のいいメシアを早く寄越せとのたまうのだろう。
「
研究員から報告を受けた目加田が再び杖をつきながら歩いていく。
立った先とは実の娘を代理母にまでして生み出した人工生命が収まった試験管の前である。
「
目加田が語りたい話の内容とは旧約聖書の創世記に登場したアダムとエヴァを表すもの。
人間は何かを知る知恵もない羊のまま神という独裁者に飼われていたほうが幸福だったのか?
それとも知恵を求めて楽園から追放され、絶対の孤独に支配されながら抗うのが幸福か?
「どっちなのか…私にはもう分からない。君は…どんな道を選ぶんだろうね…?」
試験管に視線を向けていたのだが、中で浮かんでいる少年の異変に気が付く。
自我を構成するプログラムもまだ入れていないのに意思を宿すようにして視線が動いている。
彼が見つめる方角とは複数のモニターに映った景色の世界で過ごす堕落した人々の日常。
そんな者達に何を思ったのかは誰にも分からないまま、メシアの一個体は瞼を閉じていった。
……………。
「しっかりしろ丈二!」
「う……うぅ……?」
机にうつ向けに倒れていた丈二が目を覚まして周囲を見回してみる。
客は殆どいないようだが店内の店員からはヒソヒソ声が響いてくるようだ。
「場所を変えた方が良さそうだ…今のご時世、どんな病気でさえ未知の病魔に紐づけられるぞ」
「そうした方が……良さそうだな」
清算を済ました丈二が頭を振りながらウラベの後ろをついていく。
襲われて倒れ込んだ元医者の元に向かうようだが丈二は周囲の人々に目を向けてしまう。
見える景色にいたのは何も考えずに会社と株主の言いなりになりながら働く労働者。
マスクをつけながら未知の病魔を怖がっているくせにスマホでエンタメを楽しむ学生もいる。
そんな光景が記憶の世界に浮かぶ愚民の光景と同じように映ってしまう丈二は考えてしまう。
(あれは何だったんだ?試験管にいたのは俺か…?それとも違う情報に触れて知った記憶か?)
記憶を振り返ろうとしても深い濃霧に包まれているようにして見通すことが出来ない。
考えを切り替えた丈二はこの世界を生きる者として最善を尽くすことだけに集中するしかない。
(誰かに導かれるのが幸せか…それとも自分の力で生きるのが幸せか…どっちなんだろうな?)
倒れた元医者を助けた彼らは意気投合したのか歩き去っていく。
そんな彼らに対して車の窓ごしに視線を向けている者とはフィネガンであった。
「厚労省から不正ハッキングを仕掛けられたと通報があって尾行していたが…大物が釣れたな」
不気味な笑みを浮かべる彼が視線を送るのはウラベであり、車を発進させていく。
「マヨーネも詰めが甘い。そして俺もまたあの時は詰めが甘かった……今度はしくじらないさ」
プロフェッショナルを貫く者として仕事の失敗だけは重く受け止めなければならない。
三度目はないと腹を括った者は本気の戦いをウラベに仕掛けるために暗躍するのであった。
東京バトルの人数調整のためにキャラドラマ回収を前倒しでしようかと思ったので描いていきますね。