人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
元医者と共に情報のタレコミを行うことになった丈二は彼の住むマンションへと向かっていく。
車の中にはウラベも座っており、警護を任された者としての役目を果たす者となってくれる。
「見えてきたぞ、あそこのようだ」
「元医者だった男だし、住んでる家も豪華なようだな」
参京区のタワーマンションの駐車場に車を停めた2人が車を降りてマンションを見上げていく。
時刻は既に夕日が沈む時間帯であり、街灯の明かりがついた道を丈二達は進むのだ。
一方、先に家に戻っていた元医者の男は丈二に渡す情報を纏めるために忙しそうにしている。
「私と同じように周りに流されずに戦ってくれる人達もいる……とても勇気づけられたよ」
怪我塗れの体に鞭を打ってでも戦う男の姿こそ本物の愛国心である。
外資に支配された政府やメディアに操られる民衆など正義の中身も考えない偽善者でしかない。
人の為といいながらどんな後遺症をもたらすか分からないワクチンを打たせる社会正義。
そんな正義など偽善でしかないと信じる男は丈二と共に戦う決意を固めていくのだ。
「ワクチンで一番恐ろしいのは
抗体依存性免疫増強(ADE)とは、ウイルス粒子が複製される現象のことである。
ウイルス粒子と不適切な抗体とが結合すると宿主細胞への侵入が促進されてしまう。
簡単に言えば、ワクチンを接種すれば免疫反応で抗体が出来るが、逆に重症化する現象なのだ。
「私も医者としてワクチン接種をさせた経験がある…だが、患者達の経過が悲惨過ぎたんだ…」
医者としての人生の中でもっと早くに行動を起こすべきだったと後悔の念に飲まれていく。
そんな中、元医者の男が暮らす部屋のフロアに通じるエレベーターの扉が開く。
中から現れたサングラス姿の男は真っ直ぐに元医者の男がいる部屋へと向かっていくようだ。
「日本人はなんて酷い国に生まれてしまったんだ…豊かさなど見せかけだけの独裁国家だ…」
財務省が景気を悪くし、外務省は他国に媚びへつらいながら日本人の税金を外国に撒き散らす。
農水省が農業水産業を衰退させて外資に売り飛ばし、文科省が嘘の歴史を子供に刷り込む。
厚労省が石油財閥企業の製薬会社と結託して国民の健康を害し、環境省が環境を破壊する。
「日米合同委員会や経団連の外資化の話は疑っていたが…ここまでされたら疑いようがない…」
「そこにまで辿り着けるとはな。だが、それをお前が気にする必要はないぞ?」
突然背後から聞こえた声に反応した元医者が椅子を回転させて後ろを振り向くと愕然とする。
室内に音もなく侵入してきた者とはフィネガンであり、銃口が向けられている。
蛇に睨まれた蛙のようになった元医者の心音が一気に高鳴り、世界が鈍化していく。
周囲の景色も異界化しており、フィネガンの背後に立つ悪魔の姿まで見えてしまう。
「クックック……権力に迎合しない知識人の末路はワシと同じく冥府に向かうのみぞ」
背後に立つ悪魔の姿はまるで髑髏の頭部に巨大キノコの編み傘が生えたような醜い姿であった。
【チェルノボグ】
スラブ系民族の創世神話で見られる暗黒と死の神であり、名は黒い神を表す。
光と善を象徴する白い神ベロボーグと善悪二元的対立関係にあるが敗北して地に落ちてしまう。
キリスト教との勢力争いに敗れたり共産党支配の中で歴史の中に埋もれていった神であった。
「た……助け……」
「貴様は医者としてタブーを犯した。石油製品である薬で儲けるロックフェラーを怒らせた」
引き金が引かれた途端、部屋中が血の海に染まってしまう。
下顎から上が完全に破壊された遺体が崩れ、目玉と脳味噌が撒き散らされた地面に倒れ込む。
フィネガンは銃に備わったサイレンサーを取り外して懐に仕舞いながら部屋を出て行くのだ。
「ウラベという男の仕業に見せかけるよう、奴が用いた銃と同じもので始末出来たようじゃな」
「奴め…こんな反動の強過ぎるリボルバーを愛用するとはな。流石の私も腕が痛くなった」
少し時間が経った頃、丈二とウラベがエレベーターから降りてくる。
血相変えた表情をしたウラベが元医者の部屋へと走っていくのだ。
「悪魔の魔力を感じたって…マジなのかよ!?」
「ああ、間違いない!こんなところにまでダークサマナーの刺客を送り込んでくるとはな!」
元医者の部屋の前に立ったウラベは鍵が開いた入口の扉を強引に開けて中に入り込む。
丈二も後に続くようにして入るのだが、刑事時代の頃から嗅ぎ慣れた血の匂いを感じ取る。
2人が立つ目の前には無残な死を遂げた元医者の亡骸が横たわるのみ。
「なんてこった……銃撃されて殺されたようだ……」
「ちくしょう……これが日本を支配する連中のやり方なのかよ!!」
動揺して立ち尽くす2人であったが、次々と近寄ってくるサイレンの音に気が付く。
慌てた丈二がベランダの扉を開けて地上を見下ろすと絶句しながら叫んでくる。
「大変だ……特型警備車から降りてくる奴らはテロ対策部隊のSATチームだ!!」
「動きが良過ぎるだろ……どうやら、俺達はハメられたようだな……」
絶望的な状況であるが、ウラベは地上のSATチームから離れた場所で立つ男を見つける。
サングラス姿の男を見つけた彼は歯を食いしばる程の怒りを爆発させるのだ。
「フィネガン……やはりテメェの仕業だったか!!ぶっ殺してやる!!」
警察の特殊部隊に包囲されてしまった状況の中、丈二は可能な限り情報を持ち出そうとする。
「バカ野郎!!悠長に情報を集めてる場合じゃねーだろうが!!」
「社会悪になってまで民衆を守りたかった男の死を無駄にするわけにはいかねーんだよ!!」
グズグズしていたせいで特殊部隊が部屋の前にまで押し寄せてきて叫んでくる。
<<警察だ!!貴様らは完全に包囲されているぞ!両手を上げて部屋から出てこい!!>>
追い詰められたネズミとなってしまった丈二とウラベは覚悟を決める。
「いいか…奴らが踏み込んできた時、俺は一気に攻め込むからな」
「俺だって元刑事だ…元同僚を相手にするのは心苦しいが…やれるだけやってやるさ」
投降してこない態度を見た特殊部隊の隊員が声を張り上げてくる。
<<いい度胸だ!!準備はいいか、テロリスト!!>>
テロリスト扱いされてしまう2人であるが、覚悟が決まった顔をする彼らが同時に叫ぶ。
「「いつでもこい!!」」
民衆を守るために戦おうとする者達が民衆を守る役目を担う警察組織に襲われる。
これこそが秩序という独裁に歯向かう自由を行使する者達が背負う代償であった。
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ショットガンを構えた隊員が鍵穴とドアノブの間辺りに目掛けて発砲する。
鍵がかけられた扉は一発で開錠され、扉を開けた隊員が室内に突入しようとしていく。
しかし待っていたのは拳銃のグリップ部分の一撃なのだ。
「ぐはっ!!」
M500リボルバー拳銃で殴られた隊員の鼻骨が砕けて後ろに倒れ込む。
素早く銃口を次の隊員に向けて引き金を引く。
「グワァァァァァーーーーッッ!!!」
50口径マグナム弾の直撃をボディアーマーに受けた隊員が弾き飛ばされていく。
他の隊員達が銃口を向けるよりも先に仕掛けられたのはウラベの後ろから出てきた者の攻撃。
「なんだ!?」
ナイフで大きく切り開いた瓶を投げつけられ、中に入っていた油を全身で浴びてしまう隊員達。
「悪いな、こっちも命懸けなんだよ!!」
火が点いたライターを投げられたことで隊員達が火達磨となってしまう。
<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>
転げ回る隊員達を尻目にウラベと丈二は階段を目指して走っていく。
「燃えにくい装備品を纏ってる連中だし…焼け死ぬことはないと思いたいな…」
「戦場で敵の命の心配なんてしてる場合じゃねーぞ!自分の命の心配をしやがれ!」
階段まで差しかかかった時、角から下を見れば他の隊員達まで階段を昇ってきている。
「いたぞ!!発砲許可は出ている!撃てぇ!!」
次々と下から撃ってくる銃撃を身を低めながら避ける2人が真っ直ぐ駆け抜ける。
フロアの向こう側に見えるのは曲がり角の窓ガラスであり、ウラベが召喚管を抜く。
「ま、マジなのかよ!!」
「大マジだ!!死にたくなければ俺と共に飛べ!!」
一気に跳躍したウラベが窓ガラスを突き破り、決死の覚悟を決めた丈二も飛ぶ。
「さぁ、お前の生まれ変わった姿を見せてやれプッツ!!」
落下しながら召喚管を振り抜き、解き放たれたMAGが悪魔の姿を形作る。
「生まれ変わったボクはチョーカッコイイ姿のドラゴンだーっ!!」
現れた悪魔の足に掴まるウラベが隣を落ちていく丈二の手を掴み取る。
2人が上を見上げれば小さなドラゴンが頑張って翼を羽ばたかせながら支える姿が見えた。
【アイトワラス】
アイトヴァラスとも呼ばれるリトアニアの伝承に伝わる魔獣であり、蛇の精霊でもある神。
様々な姿に体を変化させられるとされ、屋内では猫、屋外では小型のドラゴンなど多岐に渡る。
尻尾が燃えている蛇などの形態をとることもあるとされる福の神のような存在であった。
「グググッ…重たい!!オジサン2人を抱えるのはキツイかも!」
「頑張れプッツ!ミノムシだった昔よりはパワーが増したはずだろうが!」
「熱い熱い!!なんか分からないが、見えない炎の塊がぶら下がってるように感じるぞ!」
「あ、ごめん。それはボクの尻尾だよ」
「ここは異界じゃねーし、プッツの姿は人間には見えないか。目立たない場所に下ろしてくれ」
赤いとさか頭をした小柄な青い竜が翼をバタつかせながら地上に下りていく。
その光景が見えているフィネガンは舌打ちしながら車に乗り込む。
「やはりサマナー相手では特殊部隊程度では抑えられんか。だが、これでお前は指名手配犯だ」
発進していく車の後ろを付いてくる車列にはダークサマナー部隊が存在している。
彼らは先ずワクチン接種の秘密をタレコミに向かう者達を獲物として狙うのであった。
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マンションから離れたビルの屋上に下ろしてもらった2人が路地裏を彷徨いながら逃げ続ける。
自分の車の元には戻れない丈二は自分の足で出版社にまで向かおうとしているのだろう。
しかし出版社は神浜市からは遠く離れており、東京都千代田区にまで向かう必要がある。
駅やバスを利用するのは危険だと判断した丈二の足が立ち止まり、ウラベが後ろを振り向く。
「どうした?こんな場所で立ち止まってる暇はないんだろ?」
「徒歩で移動してたんじゃ…東京までは向かえない。このまま包囲されて逮捕されるだけだ…」
重い沈黙が場を支配する中、周囲は未だに警察車両のサイレンの音が響き続ける。
辛い表情を浮かべる丈二であるが、決断を下した彼はショルダーバッグを肩から下ろす。
命懸けで手に入れた情報が納められたバックを丈二はウラベに託そうというのだ。
「人間の俺とは違ってサマナーなら悪魔の力で包囲網を突破出来る…これをあんたに託したい」
「バカ野郎!!俺はお前の護衛はしてやるが…世直しのために協力してんじゃねーんだよ!!」
「これには俺と死んだ男の譲れない信念が入ってる。闇の中に葬られるわけにはいかないんだ」
「……丈二、お前はどうする気だ?」
「俺が囮になる……警察の注意を引けるだけ引いた後……投降するつもりさ」
「それでいいのか…?お前は尚紀が働く探偵事務所の代表だろ!?」
「探偵として…俺は部下に恥じない生き方がしたい。それが俺の探偵としての誇りだ」
探偵という情報屋として、丈二なりの信念が宿っている。
止めることは難しいと判断したウラベがバックを受け取ってくれたようだ。
「分かったよ…俺だって啓明結社のサマナーとして生きた者だ。これは…償いにもなるな」
「あんたも周りに恥じない生き方が選べる奴で安心したよ。出会えた幸運に感謝だな」
「殺された妻と子供の墓前に行けた時、胸を張って墓参りが出来るなら…やる価値はあるさ」
不器用だが真っ直ぐな男達が微笑んでいた時、ウラベが腰のホルスターから銃を引き抜く。
シリンダーをスライドさせてマグナム弾を抜き、五芒星が刻まれた銀の弾を詰め込む。
ただならぬウラベの雰囲気を察した丈二は周囲に目を向けてしまう。
近寄ってきていたのはダークサマナー達であったのだ。
「生きていたとはな、ウラベ。しかし貴様の悪運も尽きたようだ」
「隣にいる男は厚労省に不正ハッキングを仕掛けた者で間違いなさそうだな」
「酷い濡れ衣だな…どうして俺が不正ハッキングなんて重罪をした者だと分かるんだ?」
「逆探知されてたんだよ。ネットワーク監視ツールを各省庁は導入してたというわけさ」
「ウラベは組織を裏切った者として抹殺する。ハッキング野郎は警察にでも突き出してやろう」
黒のトレンチコートを纏う男達が懐から召喚管を引き抜いて構える。
銃を構えながら迎え撃とうとするウラベであるが、丈二が叫ぶ。
「行け!!俺がこいつらを止められるのは一瞬だけだ!!」
探偵仕事で使ってきたコートの内ポケットから取り出したのは自作の閃光手榴弾である。
ピンを引き抜いた丈二は地面に投げ放ち、眩い光を路地裏に生み出す。
「くっ!!?」
ダークサマナー達が怯んだ瞬間、ウラベは召喚管を振り抜き悪魔を生み出す。
強い音と光が収まった後にはウラベの姿は何処にも見えない。
「き…貴様!!よくも俺達に恥をかかせてくれたな!!」
残っていた丈二は最後の意地とばかりに笑みを浮かべるのだが手酷く痛めつけられていく。
地面に倒れ込んだ彼は意識が薄れていく中、探偵として生きた者として最後の言葉を残す。
「悪には屈さない…それが…正義の探偵だ…。探偵こそ…個が……確立した……者……」
目の前が真っ暗になっていく中、最後に浮かんだ光景とは尚紀や広江ちはると仕事をした時期。
正義の探偵に憧れ続けた彼女ともう一度出会えた時、胸を張れる所長になりたい。
そんな思いを抱えたまま聖丈二は凶悪犯罪者として警察に連行される末路を迎えてしまう。
その末路は追われる者となった広江ちはるも同じであり、正義とは権力者のためだけにあった。
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ビルの上を疾風の如く駆け抜けていくのは巨大な白虎であり、上にはウラベが跨っている。
彼が召喚した神こそ四神の一柱であり、西方を守護する存在であった。
【ビャッコ】
古代中国に発祥する天の四方を司るとされた四聖獣の内、西方を象徴する神獣。
中国における百獣の王は虎である事を反映し、細身の体をした白い虎の姿で描かれる。
秋の季節と陰陽五行における金を象徴する存在であった。
「物事の分かる大人なんかになるよりも…お前が貫いた生き方の方がカッコ良かったぜ…丈二」
信念を貫いた探偵が与えてくれたチャンスをものにしたウラベは神浜の北養区を超えていく。
山の中にまで入り込んだことで追跡の手を巻こうとしているのだろう。
丈二から託されたショルダーバックを背負うウラベは重量以上の重みを感じている。
命と人生を捧げてでも権力に迎合しない道を選んだ男達の信念の重さなのだと彼は考えている。
自分もそんな男達に続いてみたいと思っていた時、背後から高速で迫ってくる存在に気が付く。
「気ヲツケロ、ウラベ!!奴モマタ我トオナジク獰猛ナ虎悪魔ダ!!」
高速で移動するビャッコに追いつかんとしてくるのは、まるで地を這う火球を思わせる存在。
全身が燃え上がる大きな虎悪魔こそ、ヒンズー教における聖なる獣であった。
【ドゥン】
ヒンズー教における女神ドゥルガーの乗り物である聖獣。
アスラの軍勢を殺すべく現れた女神に神々から贈られた一つであり、虎または獅子とされる。
アスラの軍勢と戦う時はドゥルガーと共に戦い、鋭い爪と牙を武器にした存在であった。
「オレサマカラニゲラレルト思ウナヨ!!」
燃え上がる虎が雄たけびを上げながら魔法を行使してくる。
放たれたのは地獄の業火であり、ビャッコの周囲が次々と爆発していく。
「チッ!!!」
大きく跳躍して爆発を避けたが周囲が燃え上がっていく光景が広がってしまう。
炎に行く手を遮られたウラベはビャッコから飛び降りて迎え撃とうとする。
しかし炎の世界を俊敏に駆け回るドゥンに狙いをつけられずに焦りの色が浮かんでいくのだ。
「我ガヤツノ動キヲ止メル!ヤツヲオサエコンダ時ヲ狙エ!!」
炎の世界に果敢に飛び込んだビャッコが山の中を駆けながらドゥンを追い詰めようとする。
背後から迫るビャッコに対して地獄の業火を放ち続ける。
聖獣とは思えない程の荒々しい攻撃に対してビャッコは傷つきながらも果敢に攻めていく。
「狂気ノ戦女神デアルドゥルガーガ所有スル虎モマタ、荒々シイ獣ノヨウダナ!!」
ビャッコもまた雄叫びを上げれば曇天の夜空から雷が次々と落ちてくる。
マハジオンガを避け続けるドゥンだったがいつの間にか追いつかれている。
直撃を狙うよりも相手の動きを制限する目的で放ったようだ。
<<グォォォォォーーーーッッ!!!>>
飛び掛かったビャッコに対してドゥンもまた鋭い牙を持って応戦していく。
ネコ科の巨大悪魔達が取っ組み合いの乱戦となるがドゥンの体は燃え上がる炎そのもの。
全身が焼かれてしまうビャッコであったが怯まずに口を開けて魔法ブレスを吐き出す。
「ギャァァァァァーーッッ!!?」
『アイスブレス』攻撃によって弱点属性を受けたドゥンの体から炎が収まっていく。
<<今だ!!飛びのけ!!>>
ウラベの声に反応したビャッコは馬乗り状態から一気に飛びのく。
体を起こすドゥンだったが動きが遅過ぎたようだ。
「ウォォォォーーーーッッ!!?」
横から飛来してきたのは悪魔の自爆エネルギーを収束させた特攻の奔流。
一直線に放たれた光の中に見える餓鬼とよく似たヤカーが悲鳴を上げながら迫りくるのだ。
直撃に飲まれたドゥンの体が消滅していき、MAGの光を放出。
ドゥンの最後を見届けたビャッコであるがダメージが酷いのか座り込んでしまったようだ。
「よくやってくれた、ビャッコ。それでこそ俺の新しい力となってくれた仲魔だ」
炎の中を突き抜けてきたウラベの体は煤塗れであるが、ビャッコもまた傷ついている。
「思ッタ以上ニ深手ヲ負ッテシマッタ……コノママ東京マデ連レテイクノハ難シイナ」
「管の中に戻って休んでいろ。ここは山の中だし包囲網は突破したはずだ」
「……ソウサセテモラウ」
召喚管にビャッコを仕舞ったウラベであるが燃え上がる山の方角に視線を向ける。
「……どうやら、しつこい奴がまだ追いかけてくるようだ」
聞こえてくるのはバイクのマフラー音であり、迫りくるのはオフロードバイク。
「ウラベェェェェーーーーッッ!!!」
奪ったバイクに乗っていたのはフィネガンであり、ホルスターから銃を抜いて構える。
「チッ!!」
S&WのM29リボルバー拳銃の銃撃を横っ飛びで避けたウラベが倒れ込む。
彼の横を通り超えてきたフィネガンがバイクをドリフトさせながら急停止。
バイクを乗り捨てた彼が銃口を向けながら歩いてくる。
「私のドゥンを倒すとはな。だが、奴はお前の足止めのために放った捨て駒に過ぎない」
引き金にかけられた指がトリガーを引き絞ろうとするが、横から放たれた一撃に気が付く。
放たれたのは敵単体に炎の火球を放つアギラオであり、フィネガンは横っ飛びで避ける。
「ウラベはやらせないよ!」
現れたのはアイトワラスであり、銃撃を避ける時に召喚を行っていたようだ。
立ち上がったフィネガンとウラベが同時に銃口を向け合う。
睨み合う両雄の因縁がついに決着を迎える時がきたのであった。
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銃口を向け合う2人が鋭い目をしながら口を開いていく。
「逃げ切れると思うのか?裏切り者の貴様は背中に背負っている情報もろとも始末してやろう」
「これはテメェのような薄汚い野郎が触れていいもんじゃねぇ。男達の魂が宿った情報だ」
「くだらん。貴様も啓明結社のサマナーだった者ならば分からないか?無駄だということがな」
そう言われたウラベは押し黙ってしまう。
国際金融資本家達の力を知っている者だからこそ情報統制が如何に完璧かが分かる者だった。
「資本主義を生み出したユダヤ財閥は世界を株式会社にした。国もメディアも思うがままだ」
「財閥企業の利益だけでなく中央銀行から手に入る利益は世界に撒かれる…金に支配される…」
「どんなメディアであっても銀行財閥には逆らえない。営利団体である限り資本に支配される」
「民衆側が株主代わりのスポンサーになれない限り…金を出す側の味方にしかならないか…」
「富める者は貧しき者を治め、借りる者は貸す人の奴隷となる。旧約聖書の
銃口が震えているのに気が付いているフィネガンは相手の動揺を誘うために言葉を続ける。
「パンデミックによってグレートリセットは成される。アジェンダ計画は滞りなく進む」
アジェンダ計画とは2021年から2030年までの目標とされている。
その計画の中身はパンデミックという火事場を利用しての世界構造の抜本的な改革なのだ。
世界統一政府、第四次産業革命、国家への完全な依存、社会信用システム、人口削減。
従順な市民へのユニバーサル・ベーシックインカム、全年齢へのワクチン接種の義務化。
プログラム可能な中央銀行のデジタル通貨、管理された妊娠と出産、ロボット労働力。
ジェンダーの破壊、母性・父性の破壊、スマートシティ、顔認証カメラに身体センサーの普及。
私有財産の廃止、カーボンフットプリント監視システム、急進的自殺幇助と中絶の合法化。
100%遺伝子操作された食品と土壌、マイクロチップと埋め込み型インターフェイスの普及。
モノのインターネットと体のインターネット、電磁波ネットワークに体を接続させる等々…。
「新世界秩序の持続可能な発展のために整備を進めなければならない。これがアジェンダだ」
「民衆の全てをデジタル管理する計画か…人々をロボットに作り替えてまで管理したいのか!」
「病魔騒ぎはショック・ドクトリンを完成させる起爆剤に過ぎない。
「今の時代で整備を押し進めた末に完成するのが未来の人類社会の光景か…」
「ハルマゲドンは目前にまで迫ってる…急がなければならないが貴様が心配することじゃない」
圧倒的絶望によってウラベは抗う気力を失いそうになってしまう。
あまりにもちっぽけ過ぎる自分の力を嘆きそうになっていた時、仲魔が勇気を与えてくれる。
「ボクはこんな悪党共に負けたくはないよ、ウラベ!」
「プッツ……」
「ちっぽけだからってなんだ!ウラベに望みを託したオジサンはサマナーですらなかったよ!」
国家権力を相手に人間として生きた丈二は自分の人生を捨てる覚悟で戦いを挑んでいる。
その覚悟は元医者も同じであり、憧れた夢をかなぐり捨ててまで戦おうとしてくれた。
「ボクだって体が小さいドラゴンだけど負けたくない!カッコつけられないけど戦いたい!!」
矮小な存在であっても
その在り方こそが本物の勇気であり、周りに対して飾らない
「負けないで!!この戦いは…復讐なんかよりも遥かに大きなものがかかってる戦いなんだ!」
個人的な感情を遥かに超えた戦う意思。
それこそが人々のために命を懸けて抗う勇気を人々のために残す道。
「へっ…ありがとな、プッツ。この絶望は復讐という個人的問題だったなら…逃げ出してたよ」
復讐者として生きる自分の道に迷いもしたウラベだが、今の彼は復讐心を超えたものを宿す。
それは全ての人々の未来を守りたいという人間社会の未来を思う社会主義精神なのだ。
「たとえ社会悪にされようとも俺は戦いたい…それこそが、復讐心を超えた俺の感情だぁ!!」
銃口の震えが収まったウラベを見たフィネガンは目を細めながら挑発してくる。
「世直し気取りか?その考え方など革マル派や中核派と変わらない暴力革命思想家でしかない」
「俺をテロリストだと罵りたいなら罵ればいい。そして俺は左翼思想のためになど戦わない」
「ならば極右を掲げた革命家か…?ククク!どちらに偏ろうとも世間は貴様を悪者と呼ぶ!!」
「周りの正しさなんてどうでもいい、俺は俺で在ればいい。さぁ…やろうぜ、フィネガン!!」
「いい目だ……怯えた羊を狩るだけではつまらないと思っていたんだ!!」
燃え上がる炎が2人の周囲にまで燃え広がり赤く照らす中、互いが銃口を上に向ける。
銃を仕舞ったサマナー達は召喚者として、男として、決着をつける戦いを求めているのだ。
メリケンサック型の召喚管を握り込んだフィネガンがチェルノボグを召喚する。
「ハハハハハ!!自由とは光であると同時に闇!希望を求める者は光と共に闇に落ちろ!!」
召喚管を構えたウラベが管を振り抜く。
MAGが構築した悪魔とは四神の最後の一体であり、アイトワラスと共に戦わせようとする。
「二体同時召喚だと!?自分の全てを出し尽くして死にたいというならば…叶えてやろう!!」
召喚した悪魔を背にした男達が地を蹴り込みながら突進していく。
ウラベの目にはもう迷いなど無い。
これは男として生きてきた者達の信念を懸けた戦いなのだと己の拳を奮い立たせるのであった。
話を描いてると映画ロボコップ3のシーンが思い浮かびました。
民営化して資本に飼われる警察組織よりも民衆を守るために警察バッジを捨て、ガムシャラに戦う警官達はカッコよかったですね。