人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
神浜での騒動に気が付いた魔法少女達はウラベの後を追うようにして跳躍移動を繰り返す。
現場の近くで活動していた常盤ななかと静海このは、妹の遊佐葉月も行動を共にしている。
三栗あやめは病魔騒ぎが落ち着くまで家でじっとするよう姉達に言われたため現場にはいない。
「そこら中警察のパトカーが動いてるけどさぁ…本当にウラベって人が絡んでるの、このは?」
「彼は人間だけど不思議な魔力を持ったデビルサマナーよ。彼の魔力は覚えているのよ、葉月」
「それに強大な悪魔の魔力も感じてましたが…凄い速さで遠ざかったために見失いましたね…」
北養区の端まで来た彼女達であったが活動範囲を超えてしまうために立ち止まってしまう。
このまま帰るべきか悩んでいた時、遠くの山の方角で火の手が上がる光景が見えたのだ。
「あれはウラベさんが戦っているって判断するべきなのかな…?」
「距離は遠いけど強い魔力同士がぶつかり合う余波を魔力で感じ取れる……彼が危険だわ!」
「随分とウラベさんの身を心配されますね…このはさん?」
「彼はね…美雨さんの件で世話になったの。彼の教えがなかったら私は美雨さんを傷つけてた」
「あの時の話はこのはから聞いてるよ。復讐よりも大事なことを教えてくれた大切な人だよね」
微笑む姉妹を見たななかは彼女達の意思を汲み取り、共にウラベの援軍に向かうことにする。
「彼は尚紀さんを助けたこともある大事な御方です。見捨てるわけにはいきませんね」
意を決した彼女達は活動範囲を超えてでもウラベの援軍に向かっていく後ろ姿を残すのだ。
一方、ウラベは仲魔達と共に強敵と戦う激戦を繰り広げていく。
「行くぞこわっぱ!お前さんのガッツを儂に見せてみよ!!」
アイトワラスと共にチェルノボグを迎え撃つのは四聖獣の内、北方を象徴する神獣の御姿。
【ゲンブ】
首の長い亀に蛇または龍が巻き付いた姿で描かれる事が多い存在こそが玄武である。
玄は黒を意味し、冬と五行の水も象徴している存在。
玄天上帝・真武大帝という名の強力な武神として武当山などで祀られる神獣であった。
「うん!ベス!!それか業魔殿で新しい姿になったし…ゲンブ爺ちゃんって呼んだ方がいい?」
「どっちでもええわい!!」
巨大な亀の姿をしたゲンブの尻尾となっている龍の口からアイスブレスが放射される。
攻撃を合わせるアイトワラスは尻尾の炎を強めながら大きな火球を生み出して蹴り放つ。
相手に幻惑効果まで付与する『カゲロウシュート』の火球がブレスと共に迫っていく。
迎え撃つチェルノボグは全身から禍々しいオーラを放ちながら白銀の剣を地面に突き立てる。
足元まで覆う黒いローブの周囲に生える毒々しいキノコから毒の煙が噴き上がっていくのだ。
「闇を司るワシを捉えられる者共か……見物じゃのぉ」
毒ガスを煙幕にしたチェルノボグの巨体が消失し、放たれた攻撃が素通りしてしまう。
「奴め…毒霧の中に隠れおったな。気をつけろこわっぱ……奴は魔力を感じさせてこない」
「こんな毒霧なんて火事場なら上昇気流で直ぐに流されるし、怖くないよ!」
<<ならば、それより先に貴様らを葬り去るだけじゃな>>
背後に振り向けばアイトワラスに目掛けて剣が振り下ろされようとしている。
二メートルを超える巨体から繰り出す一撃が迫る中、悪魔達は激闘を繰り広げようとしていく。
その光景は離れた場所で戦っているウラベも同じなのだ。
「ぐはっ!!」
メリケンサック型召喚管で顔面を殴り飛ばされたウラベが木に激突してしまう。
血反吐と共に折れた歯を吐き出す彼に迫りくるのは歴戦のダークサマナーなのだ。
「組織の手を逃れ、今まで身を潜めていた貴様だったが…最後はあっけない幕切れにしてやる」
立ち上がるウラベの息は切れており、悪魔の二体同時召喚の負担が彼の体を苦しめる。
14代目葛葉ライドウ程の才能を持たない者であっても男としての意地だけなら負けないのだ。
「俺は…まだ死ねん!!貴様を倒し…必ず情報を届けなければならないんだ!!」
「藁にも縋るとはこのことだな。その悪足掻きが何処まで続くのか…貴様のガッツを私に示せ」
黒のつば広ハットを被り直したウラベがファイティングポーズを構える。
不敵な笑みを浮かべるフィネガンが一気に仕掛けていくのだ。
「ウォォォォーーーーッッ!!!」
ウラベの鋭い連続突きを両腕の上腕で受け止めていき、フックパンチは上半身を振って避ける。
すぐさまボディブローが脇腹に放たれるが、ウラベは怯まず回し蹴りを放っていく。
フィネガンは裏拳を用いて蹴り足を弾き、続くローキックは持ち上げた片足で止める。
振り上げた左パンチに対して右腕を回しこんで絡め取りながら素早く関節を決めるのだ。
「ぐはっ!!」
そのまま木に目掛けて強引に顔面を叩きつけられたウラベの鼻骨が砕けて鼻血を撒き散らす。
怯んだウラベの両足を蹴り足で刈り取ったフィネガンが彼を投げ飛ばす一撃を放つ。
追撃のパンチを放つのだが首を振って避けたウラベが反撃に転じる。
左手でフィネガンの後頭部を掴んだまま上半身を崩し、抱き込む形で一回転。
マウントを返した状態となったウラベが顔面パンチを放つが股座を潜り抜けられてしまう。
背後で起き上がろうとするフィネガンに対してそのまま強引に後ろ回し蹴りを浴びせる。
「くっ!?」
倒れ込んだフィネガンの頭部に対して地を這う後掃腿を放つが転がりながら避けてくる。
同時に立ち上がった彼らは血がたぎるのか互いの口元に笑みが浮かんでいたようだ。
「いいぞ…ウラベ、その調子だ。格闘家としての血がたぎってくる!!」
「勝負ごとに拘る貴様の悪い癖に付き合ってやる。だが、今夜限りで貴様とは終わりだ!!」
構え合った状態で互いに体を動かしながら仕掛けるタイミングを計っていく。
一方、激闘を繰り広げる仲魔達は凍り付いた体のチェルノボグを相手に勝負を仕掛ける。
「貴様らァァァーーッッ!!この程度で怯むワシではないぞォォォォーーッッ!!」
アイトワラスが殺されそうになった時、巨大な氷の塊を放ったゲンブの攻撃が直撃する。
ブフーラをまとにも浴びてしまったチェルノボグの体は半ば凍り付き、動きが鈍くなっている。
それでもこの悪魔は冥府を司る死神であり、死をもたらす力を行使するのだ。
「危ない!!避けてベス!!」
地面に描かれるのは全体に即死魔法を放つマハムドオンであり、ゲンブは飲み込まれてしまう。
「くっ!?巨大な亀の儂では避け切れん!!だが……ただでは終わらんぞぉ!!」
跳躍することが出来ないゲンブは決死の覚悟で突進攻撃を行おうとする。
呪殺魔法陣の中心にいるチェルノボグに目掛けて巨大な前足を振りかぶっていく。
「死なば諸共よ!!ウラベ……必ず勝つのじゃ!!」
放たれた一撃とは『ハードヒット』であり、前足の一撃を浴びたチェルノボグが弾かれる。
それでも呪殺魔法陣は完成しており、即死の光に飲み込まれるゲンブの姿が崩壊していく。
その光景を空の上で見ていることしか出来なかった仲魔は悔しそうに震えているのだ。
「クゥゥゥゥゥ……忌々しい者共め!!ワシにこれ程までの傷を与えてくるとは…許せん!!」
空の上から強い魔力を感じたチェルノボグが上空を見上げる。
羽ばたきながら巨大な火球を生み出しているアイトワラスが仇を討つため雄叫びを上げるのだ。
「許されないのは……お前の方だァァァーーッッ!!」
コンセントレイトで魔法威力を上げたカゲロウシュートが蹴り放たれる。
迎え撃つチェルノボグは剣に毒の液を生み出しながら上空に目掛けて放ってくる。
「ガキ悪魔なんぞに殺されるワシではないぞぉ!!」
放たれた『毒の液』がカゲロウシュートとぶつかり合って対消滅していく。
毒の液が蒸発して水蒸気が吹きあがったことでアイトワラスの姿が見えなくなっている。
そのチャンスをものにした者が一気に急降下してチェルノボグの眼前にまで迫ってくるのだ。
「これで終わりだァァァーーッッ!!」
口を開けた小さな竜がドラゴンブレスの如きファイアブレスを放つ。
「ウォォォォーーーーッッ!!?」
業火に飲み込まれてしまったチェルノボグは自分よりも格下の悪魔に倒され、MAGの光を残す。
「へへ……小さいドラゴンだと侮ってたから負けたのさ…」
戦いに勝利したアイトワラスであるが力尽きたのか地面に倒れ込んでしまう。
強大な力を行使しなければ倒せなかった相手だからこそ、そのリスクは術者に返ってしまう。
体のMAGが一気に抜かれたウラベの足がふらつき、その隙を狙った強大な一撃が決まる。
「グワァァァァァーーッッ!!」
電撃裏拳がクリーンヒットしたウラベの体が弾き飛ばされてアイトワラスの隣に倒れる。
「私のチェルノボグまで倒すか…貴様もまた悪魔合体施設を利用して悪魔を強化したようだな」
近寄ってくるフィネガンであるが、倒れ込んだウラベはアイトワラスを召喚管に戻してしまう。
「プッツ…ベス…お前達の働きには感謝してる…業魔殿に戻れたらちゃんと治してやるからな」
ふらつきながらも立ち上がるウラベの前に立ったフィネガンが右拳を突き出してくる。
「私もまた合体施設を利用するものだ。見せてやる…邪教の館で生まれ変わった悪魔の力を!」
メリケンサックの形を構成する掌内の召喚管の蓋が開いていき、膨大なMAGが吹きあがる。
「出てくるがいい、ケルヌンノスだった悪魔よ……お前の新たなる姿を見せつけてやれぇ!!」
フィネガンの背後の大地が大きく爆ぜ、地中から浮かび上がっていくのは巨大な石棺。
薄く開いた石棺の隙間からは死が漏れ出るかのようにしてどす黒い霧が噴き上がっていった。
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【モト】
フェニキア神話において死を司る冥界の神。
モトの名は死を意味するものであり、彼が治める冥界世界は破滅、忌まわしさ、荒廃を表す。
死をもたらす神と言うよりは冬の大地に死という眠りを与える豊穣神としての性質が強い。
春になって多くの生物を養わせるための力を蓄えさせる豊穣に欠かせない神であった。
「う……嘘だろ……魔王クラスの悪魔を召喚出来るってのかよ…?」
宙に浮かび上がった巨大な石棺の影に飲まれるウラベは恐怖によって体が震えていく。
この悪魔こそボルテクス界においてシジマ勢力の神として人修羅を苦しめた程の存在なのだ。
石棺の中から恐ろしい死の神の念話が響いてくる。
<……フィネガンよ、我を召喚しなければならない程の相手なのか?>
石棺の中から本体を晒してこないモトを見上げるフィネガンが声を張り上げてくる。
「貴様は私の使役悪魔だぞ!!私が力を行使するべきだと判断した時はその力を行使しろ!!」
<そうであったか……かつての記憶も既に曖昧だ。我はモト……カナンの主神の宿敵ぞ>
モトはカナンの主神であるバアル神モロクとはライバル関係にある存在。
どちらが豊穣神として優れているかを競い合いながら争い合った関係性である。
ならばモトにとって、バアルが支配するイルミナティ側で働く理由など存在しないのだ。
<しかし…我は契約を果たす者。世話になってきたかつての義理だけは…果たそうぞ>
仕掛けてくると判断したウラベがフライトジャケットから召喚管を二つ抜いて振りぬく。
手持ちのカードは残り少ない彼であるが信頼出来る二体の悪魔を使役して戦うようだ。
召喚されたのはリャナンシーと傷ついた体のまま出てきたビャッコであった。
<<ウラベさん!!>>
声が聞こえた方角に振り向けば魔法少女達が援軍として駆けつけてくれる。
「お前達か……援軍として来てくれたなら有り難いけど……無駄死にになるかもよ」
魔法武器を構えるななか達であるが、あまりにも次元が違い過ぎる悪魔の力に怯えている。
「アハハ……これってさ、絶体絶命のピンチってやつかも……?」
「これ程の悪魔を使役するサマナーが相手だなんて…私達の力でも勝てるとは思えないわね…」
「神浜の魔法少女共まで訪れるとはな。丁度いい、貴様らは全員始末する予定だったのだ」
「な、なんですって!?それはどういう意味なのですか!!」
「知らぬとは言わせんぞ?貴様らは由比鶴乃の関係者である以上…ザイオンを知っているな?」
問われるななか達が押し黙ってしまった反応を見たフィネガンは確信する。
やはり彼女達はザイオンの秘密に触れた者達であり、必ず駆逐する必要があるのだと理解した。
「さぁ、新しい悪魔の力を解放しろ!!その力をもってウラベと神浜の魔法少女を殲滅せよ!」
石棺の扉が少しだけ開いていき、漆黒に包まれた内側から赤い眼光が光り出す。
「ウラベ様!それに魔法少女達!私が回復の援護を行いますから恐れないで!」
リャナンシーは全体回復魔法のメディアを行使してウラベとビャッコの傷を癒してくれる。
しかしMAGまで回復するわけではないためウラベの体は度重なる負担で足がふらつく。
「恐レルナ…魔法少女達ヨ!!我ノ背中ニツヅケ!!」
「神浜の魔法少女社会を治める者として負けられませんね……いざ、参ります!!」
決死の覚悟で戦いを挑む魔法少女達を援護しようとウラベは腰のホルスターに手を伸ばす。
しかしそれを阻止するジャンプ飛び蹴りが決まったために倒れ込んでしまう。
「貴様の相手は私だ」
「チッ……モトを倒すよりも、召喚者を狙った方が勝機があるかもな!!」
立ち上がったウラベが倒れ込みそうな体を奮い立たせながら格闘を仕掛けていく。
魔法少女達も業魔殿で得た新しい魔法の力を行使しながら魔王を相手に戦ってくれる。
しかし彼女達が行使出来るレベルの魔法ではびくともしない堅牢さを見せるのだ。
<豊穣を司る我の力……刮目して見るがいい。代償は……汝らの死だ>
分厚い石棺の隙間から伸び出てくるのは血管で血走った紫肌の巨大な手。
禍々しい手が行使したのは『マハザンダイン』であり、木々をなぎ倒す暴風を生み出す。
<<キャァァァァーーーーッッ!!?>>
弾き飛ばされていく魔法少女達であるが、ビャッコは地面に爪を立てて耐えていく。
彼の体にしがみつくリャナンシーも突風を堪え切り、ビャッコと共に攻撃を仕掛ける。
「そんな!?」
リャナンシーの放った疾風魔法は反射され、彼女の体をズタズタにしていく。
飛び掛かったビャッコが放つ『ダマスカスクロ―』の一撃は分厚い石棺が受け止めてしまう。
「ナントイウ堅牢サヲシテイルノダ!?」
本来の威力の0・1%程度しかダメージを与えられていないモトの物理耐性は強固である。
地面に着地しようとしたビャッコに対して石棺の中から伸びてきた巨大な腕が掴み取る。
<秋の季節を司る神獣よ……冬の到来だ。死を迎える準備は……出来たか?>
石棺の中に引きずり込んでいく中、ビャッコは最後の抵抗とばかりに咆哮を行う。
「タダデハヤラセン!!セメテ一矢報イナケレバ……四神ノ名折レゾ!!」
曇天の空が渦を巻いていき、地上の巨大石棺に目掛けて放たれたのはマハジオダインの一撃。
<ヌゥ!?>
次々と飛来しては直撃していく極大の雷魔法によってモトが怯んでいく。
それでもモトを止めることは出来ず、ビャッコの体は石棺世界へと引きずり込まれてしまう。
扉が閉まった時、中で絶叫が木霊すると同時にMAGの光さえ外に漏らさぬ末路を遂げるのだ。
<見事なり……秋の神獣よ。死を司る冬は地力を溜める時期……我もまた力を溜めよう>
秋の実りの如きビャッコのMAGを喰らったモトが魔法威力を上げるために魔法を行使。
マカカジャが次々とかけられていき、魔法威力がどんどん高まっていく。
しかしそれを止めるかのようにして放たれたのは葉月のマギア魔法の一撃なのだ。
「奴の弱点属性は雷みたいだよ!!」
「だったら葉月の魔法が有効ね!!」
サンダー・トレントが決まったことで怯んだモトに向けて一気に魔法少女達が攻め込む。
彼女達を援護するためにリャナンシーが放った魔法とは『雷電剣』である。
魔法少女達の武器に雷属性が付与されたことでななかとこのはも雷属性攻撃が使えるのだ。
「悪魔の魔法の力は素晴らしいですね……これなら私も戦えます!!」
先に仕掛けたのはななかであり、大きく跳躍した彼女が二刀小太刀を構える。
「白椿!!!」
高速で放った六連撃のマギア魔法であるが、堅牢な石棺に阻まれて小太刀が砕けてしまう。
それでも雷属性は通じたのか怯んだモトに対して姉妹達が合体魔法を行使するのだ。
「そんじゃ……やるよ!!」
両刃薙刀と斧に似た独特の形状の刃物を回転させながら姉妹が跳躍。
「それっ!!」
「はぁ!!」
2人の連続斬りが石棺に決まり、最後の一撃は彼女達の魔力によって生み出された幻影の攻撃。
「あちしも!!」
あやめの幻影の一撃も決まったことで石棺に大きな花の斬撃跡が浮かんでいく。
「最後よ!!」
このはと葉月の同時斬撃が炸裂したことで美しいアザレアの花のような光が生み出される。
雷属性を纏った『トリプル・デトネーション』が決まるのだが、石棺の中のモトは健在なのだ。
「そ……そんな……」
砕けた武器が手から零れ落ちる姉妹達が絶望の表情を浮かべていく。
「これ程までに実力差がある悪魔を相手に勝負を挑むのは……蛮勇でしたか……」
石棺が開いていき冥府の世界から恐ろしい角が生えた悪魔の頭部が見えてくる。
血管が血走った左腕を伸ばして放つのは極限にまで威力が上がったメギドラオンの一撃。
放たれれば神浜市どころか市を収めた県そのものが消滅する程の力が解放されてしまう。
「ウラベ様……」
絶望の表情を浮かべるリャナンシーは炎の世界で戦うウラベに視線を向ける。
悲しみが宿ったその瞳から涙が零れ落ちた後、ビャッコの覚悟に続く意思を彼女は叫ぶ。
「先立つ罪を……お許しください!!」
飛翔していくリャナンシーはメギドラオンが放たれようとしているモトの左手に迫っていく。
たとえ人々から忌み嫌われる悪魔であっても、人々のために戦う自由を行使することは出来る。
周りから呪われながらも見返りさえ求めないその意思こそ、自己犠牲を示す悪魔の愛であった。
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上半身を振りながら連続突きを避け続けるフィネガンだが、腹部に突きが入ってしまう。
「ぐふっ!?」
怯んだ相手の喉元に左手刀を打ち込み、後退った相手に対して左足のローキックを放つ。
右拳でローキックを弾いたフィネガンが軸となる右足に目掛けて関節蹴りを狙う。
蹴り足を下ろすのが早かったウラベは右足を引き、関節蹴りを避けると同時に肘打ちを放つ。
「ぐはっ!!」
右側頭部にクリーンヒットしたフィネガンの頭部に目掛けて旋風脚をお見舞いする。
連続して右側頭部にダメージを負った者が地面に倒れ込み、呻き声を上げて睨んでくるのだ。
「バカな……この私がウラベ如きに後れを取るだと…?」
「人を見下してる奴はな……たとえ実力が低い相手でも足元を掬われるんだよ!!」
衣服を掴んで強引に持ち上げたウラベが膝蹴りを放っていく。
両手で膝蹴りを受け止め、続く膝蹴りを両手で抱え込んだフィネガンが一気に持ち上げる。
払い上げるようにして投げ飛ばされたウラベに対して起き上がったフィネガンが構え直す。
「獅子は兎を狩るのも全力を尽くすべきか…いいだろう。プロとしての怠慢を詫びよう」
首を振って起きろと挑発してくるフィネガンに対して歯を食いしばりながらウラベは攻める。
左のローキックを右手で払い、右のミドルキックを片足を持ち上げて受け止める。
続くフィネガンの右拳を払ったウラベが放つ右ストレートを潜り抜けた者が一気に打ち込む。
「がはっ!!?」
カウンターを腹部に受けたウラベが後退り、なおも攻め込むがパンチを払われ肘打ちを浴びる。
既に足元もおぼつかないウラベの両足を刈るようにして放たれたローキックが決まるのだ。
一回転して倒れ込むウラベを見下ろすフィネガンこそ、歴戦のダークサマナーに恥じない男。
シド・デイビスと並ぶ程の実力者の力は本物なのだが、使役する悪魔の暴走に気が付く。
「やめろ!!それ程の魔法を行使してはザイオンにまで被害が及ぶぞ!!」
焦るフィネガンであったが、彼の目に見えたのはモトの左手に飛び込む女悪魔の姿。
魔法を放つのを止めたモトがリャナンシーの体を掴み取り、石棺の中に引きずり込もうとする。
そんな中、ウラベの方に視線を向けたリャナンシーから最後の念話が送られてくるのだ。
<ご自愛ください……ウラベ様。貴方の命はこれからの魔法少女達を支えるために必要です>
冥界に引きずり込まれるリャナンシーが放つのは悪魔の魔力を暴走させて放つ自爆魔法。
「リャナンシーーー……ッッ!!!」
叫ぶウラベの目にも愛する仲魔が身を挺して魔法行使を止めた状況が見えている。
荒れ狂う爆風が魔法少女達まで吹き飛ばし、フィネガンも両腕を構えて耐えようとする。
だが爆風に気を取られてしまったために背後で立ち上がる者の一撃に気が付かないのだ。
「フィネガンンンンンンンッッ!!!」
振り向いたフィネガンに対して強烈な右ストレートが決まったことで彼は体勢を崩す。
後退る敵に対して右足を持ち上げながら相手の左足を踏み抜く程の一撃を放つ。
「ぐっ!!?」
足を縫い付けられたフィネガンは目の前のウラベの気迫に戦慄を感じている。
「これで最後だ……技術も糞もねぇ、男らしい戦いをしようや!!」
彼の最後の闘志に心が熱くなったフィネガンは元ボクサーとしての血がたぎっていく。
「いいぞ……それでこそだ!!インファイトこそ…男の戦いだ!!」
互いに足幅を広げて上半身を駆使して戦うボクシングスタイルの構えを行う。
互いのパンチやフックを上半身を振りながら避け続ける攻防が続くのだ。
「「ウォォォォーーーーッッ!!!」」
フィネガンの猛攻を上半身を振りながら避け続けるウラベが最後の勝負に出る。
「ぐふっ!!!」
アッパーカットで顎を打ち抜かれたフィネガンの体が後退っていく。
余力がないウラベも倒れ込みそうになるが、前傾姿勢を利用しながら前に踏み出る。
「これが男達の……信念を懸けた一撃だぁ!!」
体重の乗った重いパンチがフィネガンの顎を貫き、ついに歴戦のダークサマナーが倒れ込む。
デンプシー・ロールの一撃を放ったウラベもまた倒れ込み、もはや立つ力は残っていない。
「窮鼠猫を嚙むか……この私をボクシングで倒すとは……見事だったぞ、ウラベ……」
一方、リャナンシーの自爆攻撃を受けても健在であったモトは男達の決着を見届けている。
これ以上の義理立ては必要ないと判断した彼の体から戦意が消えていくのだ。
<我はここまでだ……フィネガン。敗北者として……最後の始末をつけるのだな>
「チッ……モトの神性が強過ぎてバアル様には跪けないか。厄介な悪魔を生み出したものだ…」
生き延びた魔法少女達が近寄ってくる気配が分かるフィネガンは最後の役目を果たそうとする。
ベルトに備わったポーチから取り出したものとは三個のM67破片手榴弾なのだ。
「貴様ごと情報は消させてもらう……たとえ生き残れようとも、世界の崩壊は止められんぞ…」
「フィネガン……貴様ッッ!!」
「よく見ておけ。戦いに身を置いた人間には…安息の死などない…これは貴様の末路でもある」
手榴弾のピンを三個まとめて引き抜いたフィネガンが高笑いを行っていく。
それに気が付いたななかとこのはが一気に飛び込み、ウラベの体を持ち上げる。
彼が倒れている周囲は破片手榴弾の一撃で殺せる爆発範囲であるため飛び去ろうとするのだ。
「フ…フフフ……せいぜいあがいてみせろ……1人のサマナーとしてな……フハハハハハ……」
跳躍と同時に爆死したフィネガンの攻撃がウラベと魔法少女達の背中に襲い掛かる。
<<キャァァァァーーーーッッ!!!>>
殺傷力の高い破片が撒き散らされたことでウラベの背中だけでなくバックまで破壊される。
それは魔法少女達の背中も同じであり、爆発に吹き飛ばされた者達が倒れ込む。
「このは!!ななか!!ウラベさん!!」
慌てて走ってきた葉月が倒れ込んだ者達に駆け寄ればまだ息が残っているため安堵する。
そんな者達を見守るようにして佇んでいたモトであったが、豊穣神としての力を使う。
曇天の空から強い雨がふってきて山火事を鎮火させる中、闇が噴き上がる地面に沈むのだ。
<我には視えるぞ……多くの神々が大魔王とバアルに戦いを挑む……未来の大戦の光景がな>
石碑の中で眠りにつくようにして沈黙したモトが最後に視えた未来の人物がいる。
それはかつてのシジマ勢力に戦いを挑んだ人修羅がバアルと戦う光景だったのだ。
<フッ……かつての氷川総司令が成せなかったことが出来る者なのか……見物だな>
――
地面の闇の中に消えてしまったバアルの宿敵はその時がくるまで眠りにつくのだろう。
大雨が降りしきる中、懸命に回復魔法をかける葉月の横では意識が朦朧とするウラベがいる。
「ちくしょう……すまねぇ……丈二。俺は……お前達の信念を……守れなかった……」
破壊されてしまったバックの中身はダメになってしまったことなら後ろを見なくても分かる。
宿敵を倒すことが出来たウラベであったが、男達の信念を守ることは出来なかったのであった。
モト劇場!をやると誰も勝てないので舐めプしたまま去ってもらうぐらいが丁度いいかと思ってフィネガンと組ませてみました。