人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
尚紀達を家まで送ったキョウジ達は軽装甲車を隠した後、北養区のホテルで一泊している。
深夜であったため朝になったら移動しようと考えていた時、ガラケーが鳴り響く。
通話に出たキョウジに連絡をとったのはヴィクトルであったようだ。
「……そうか。ウラベがフィネガンを倒したか」
「彼を運んできた魔法少女からそう聞かされている。傷ついた彼は業魔殿で預かることにした」
「賢明な判断だな。ウラベは啓明結社から追われる者だ、病院で入院なら確実に暗殺されるぞ」
「彼の容態についてだが…至近距離で爆発を浴びてな。背骨と神経をやられて半身不随だ」
「ならば奴は用済みだ。東京においての活動は俺だけでやらせてもらう」
「意識だけはしっかりしている彼からの伝言だ。役に立てなくて済まない……だそうだ」
「いらん気遣いだと言っておけ」
通話を終えたキョウジは上着を脱いだ姿のまま窓際に移動していく。
椅子に座った彼は机に置いてある煙草の箱を取り、一服しながら不気味な笑みを浮かべる。
「あのフィネガンを倒すとはな…貴様にしては大金星だ。後は俺がケリをつけてやる」
何処までもドライな性格をしているキョウジは単独での活動計画を練り上げるのであった。
……………。
「出ろ、面会だ」
神浜警察署の留置場の独房に入れられていた丈二は警官達に連れられて行く。
面会室に入り込んだ彼が椅子に座り、面会に訪れた者達に顔を向ける。
面会に訪れていたのは丈二が留守電を残していた職員達であったようだ。
「丈二……早まりやがって……」
黒のトレンチコート姿の尚紀は極めて重い表情を浮かべており、瑠偉は隣で仁王立ちしている。
厳しい顔を向けてくる瑠偉はどうしてこんなマネをしたのかを追求してきたようだ。
「お前達には秘密にしてきたが…気が付いてたんだろ?俺の副業はハッカーだってことをな…」
「まぁな……隠し部屋の光景を見れば、おのずと答えは出てきたさ」
「どんな理由があるにせよ、不正ハッキングは重罪よ。行政機関へのハッキングなら猶更ね」
「どうしてこんな危険な世渡りをしでかしたんだ…?こうなる末路ぐらい分かってたろ!!」
「それはきっと……お前と同じ気持ちだよ、尚紀。見滝原で人探しをしてた時と同じくな」
「あの時のことは気が付いてたってわけなのかよ……?」
「正攻法で解決出来ない問題だったんだ。それなのに美国織莉子は帰ってきた…簡単な答えだ」
自分も同じ行動をした者として丈二を糾弾することは出来ないと尚紀は顔を俯けていく。
本来なら尚紀の方が丈二よりも先にブタ箱に放り込まれるべき重罪を行っているのだ。
彼に代わり今後のことについて質問してくる瑠偉に対して丈二は答えてくれる。
「探偵事務所は……廃業だな。管理者の俺が刑務所に行くんだ……維持費すら支払えねぇ」
廃業を突き付けられた職員達は沈黙するのだが、厳しい表情を崩さない瑠偉がこう告げる。
「……丁度いい機会かもね。私も副業の方が忙しくなってきたから……これを機に退職するわ」
「瑠偉…お前は俺の事務所のような貧乏所帯には相応しくないお嬢様だ。好きにしろよ…」
「そうさせてもらうわね」
椅子に座ったままの尚紀を残して瑠偉は面会室から出て行こうとする。
しかし扉の前で立ち止まった彼女が顔も向けずに最後の言葉を残すのだ。
「……未来の探偵になりたいって言ってたあの子が可哀想ね。全部貴方の責任よ、聖丈二」
部屋を出て去っていく瑠偉の口元には不気味な笑みが浮かんでいる。
彼女が残した言葉が胸に突き刺さっている男達は沈黙したまま顔を俯けてしまう。
申し訳ない気持ちで心が張り裂けそうな丈二は絞り出すような声で話してくれるのだ。
「…何が正しかったんだろうな、尚紀?保身に走る道もあった…それでも俺は…これを選んだ」
「…この行動は丈二なりの正義があったんだろ?正義を捨てた男の姿をちはるが喜ぶのか…?」
「喜ばないと思うが…未来のあの子の夢を潰した男の姿も…喜ぶとは思えないな…」
愛すべき後輩ならどう答えるのかを判断出来ない尚紀は項垂れたまま言葉が出てこなくなる。
そんな時、顔を上げた丈二はこんな話を語ってくれたようだ。
「誰かに導かれるのが幸せか…それとも自分の力で生きるのが幸せか…どっちなんだろうな?」
「丈二……?」
「これは国や企業にも言える。国会議員や社長共に面倒ごとを丸投げすれば民衆は楽が出来る」
「そうだな…労働の余暇を娯楽で埋めながら堕落出来る。民衆の中身はパンとサーカスさ…」
「それも一つの幸福の在り方なんだろう。だがな……
「俺の友人の青葉ちかも言ってたよ…登山でリーダーが失敗すれば対処出来ないとな…」
「丸投げの弊害ってやつさ……なら、自分の力で生きるのが幸せか?厳しさを極める道になる」
「企業で例えるなら…社員全員が社長と同じぐらい勉強をする羽目になる。厳しい道だな…」
「そんな苦労を誰が背負う?ただでさえ苦しい労働の上で…僅かな余暇を勉強に費やせる?」
「たとえその覚悟を背負おうとも…知識は連帯ではなく孤絶を生む。知識人は邪険にされる…」
「知恵を選べば堕落の楽園から追放されるか……まるで旧約聖書のアダムとエヴァだな」
「神というリーダーに飼われる羊のまま生きるか…知恵を選んで楽園から追放されるか…」
「どっちが人間の幸福だったんだろうな…?俺にはもう……分からねーよ」
民主主義とは個が成熟した者が多数派となって初めて機能すると瑠偉は言葉を残している。
分かり易くいえば、王様と同じぐらい知恵を手にした民衆達が運営する国家の在り方だろう。
しかし現実的に考えて、そんな国家体制が本当に完成するのだろうか?
自由民主主義国家の代表格であるアメリカ社会ですら民衆は堕落しか選ぶことが出来ない。
それは日本も同じであり、だからこそ民衆のリーダーを国会に送る間接民主制を選んでいる。
だが間接民主制を選んだところで政治と金の癒着が起こり、リーダー達は資本家の犬と化す。
買収されたリーダー達の汚職と不正を止めることは丸投げを選んだ民衆達には不可能だろう。
選挙で代表を選ぶ間接民主制など、堕落が欲しい民衆の偽民主主義でしかなかったのだ。
「本当に強い国民が国を動かす…そんな国家を創れたのはスイスの
直接民主主義とは国民が代表者を介さずに所属する共同体の意思決定に直接参加する政治体制。
起源は紀元前800年ごろの古代ギリシャの民主主義政治であり、市民が直接政治議論をする。
国民が
政治哲学者のジャック・ルソーは直接参加型民主主義のみを
「殆どが楽な丸投げ体制を選んできた…だからこそ民主主義は完成せず、独裁者に扇動される」
「ヒトラーのような扇動者が好き放題出来たのも…未熟な民主主義だったせいだろうな…」
「人はこんなにも牧師に飼われる羊でいたいんだ…俺がやったことなんて…無駄なのかもな…」
心が折れかけている丈二のためにこそ、尚紀は立ち上がって己の覚悟を示してくれる。
彼の目には未だにこの世の理不尽に抗う炎が宿っているのだ。
「お前の無念は俺が背負う。たとえ楽園から追放されようとも…俺は戦う者で在り続けたい」
「尚紀……?」
「そのために知恵を求めてきたんだ…その知恵を生かすために政治家になる道を選んだんだ」
「お前が俺達を導く牧師になってくれるっていうのかよ……?」
「佐倉牧師の道とは違うが…人々が羊でいたいというのなら、俺は導く者になってみたい」
「あまりにも危険な道になるぞ…?命さえ落とす末路になったとしてもいいのか…?」
「俺の魂はこう叫んでいる。人の魂とは…リスクを恐れて切り売りするものではないのだとな」
そう語られた時、丈二の目が見開きながら記憶の世界がフラッシュバックする。
彼が見えた光景とは、LAWの天使が独裁を敷く都市国家の中で反逆を選んだ男の姿だった。
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巨大な街頭テレビに映っている人物とはメシア計画によって生み出された人工生命の一体。
サイドとバックを刈り上げた黒髪の男は人々に真実を知らせようとしているのだろう。
「センターはファクトリーなんて言っているが、実は強制収容所だ!!」
彼が行っているのはセンターへの反逆行為であり、都市国家政府を裏切る国賊行為そのもの。
それを体制側のテンプルナイトである男が行うならば社会悪として処罰されるだろう。
「入れられた者は皆死ぬまで働かされている!何とかしなければ犠牲者は増えるばかりだ!」
ファクトリーとはミレニアム都市の食糧・工業生産の中心施設であり、人々を支える施設。
しかし実態はデモノイドと呼ばれる悪魔の人工生命生産施設であり、奴隷や食料とされる。
またそこで働かされる者は低級市民であり、ミレニアムの厄介者として低賃金で酷使される。
演説を行うテンプルナイトはその人達が騙されていることを暴露しようとしているのだ。
「死ぬまで働かされる人達を助けよう!ファクトリーという名の強制収容所を解放するんだ!」
賞賛の声が上がる光景から移り変わっていき、次に見えたのは社会悪が処罰される光景である。
「センターより
街頭モニターに映るセンターの司教の姿を見つめるザインは苦しそうな表情を浮かべている。
元体制側だった男としてメシア教の手口が分かるからこそ、辛い決断を迫られてしまう。
「本日中に出頭しない場合は…ホーリータウンに入る空気を全てストップする!」
メシア教という独裁政府に逆らう者は一都市で生きる人間全ての命を滅ぼすと宣言してくる。
独裁者なら本気で実行すると分かるザインは観念したのか仲間達に振り向いてこう告げるのだ。
「僕はセンターへ行こう…元老院のミレニアム支配と誤った千年王国計画を終わらせるために」
彼についてきた人々に別れを告げた男は殺されると分かっていてもセンターに出頭していく。
そしてザインに待っていたのは石像として封印される末路であった。
……………。
「どうした?」
一瞬の光景が経験から出た記憶なのか違う媒体で得た情報の記憶なのか分からず混乱している。
そんな丈二であったが、尚紀の覚悟を認める者として最後の言葉を送ってくれるのだ。
「尚紀…お前の道は死への旅路になるかもな。それでも進むお前の事を…心の底から尊敬する」
「俺は俺で在ればいい、人には勝手な事を言わせればいい。たとえ悪者にされようと俺は行く」
丈二の行動は正義であり、結果だけ切り取って悪にしたい連中は好きにさせろと言ってくれる。
他の人の自分に対する評価はその人の個人的な意見であり、自分の評価そのものに関係しない。
アルフレッド・アドラーの言葉を送る尚紀が伝えたいものとは周りに流されず己を貫く大切さ。
自分に嘘をつかず、己の信念に妥協しない在り方の果てに社会悪とされるならば本望なのだ。
そんな尚紀の後ろ姿が違う並行世界で己の信念を貫いたザインの後ろ姿と重なってくる。
「重荷ばかり背負わせて悪いな…尚紀。それに…そのトレンチコートも無駄にしてしまって…」
扉の前で立ち止まった彼の背中は丈二が贈ってくれた黒のトレンチコートを纏う姿。
探偵として生きていく尚紀のために与えてくれたものだったが探偵事務所は廃業するしかない。
全ては自分の責任だと己を責め立てるばかりの丈二のために尚紀は振り返ってくれる。
「無駄になんてならないさ。このトレンチコートは…俺の生涯の宝物にさせてもらうぜ、丈二」
野良犬同然だった嘉嶋尚紀に新しい人生を与えてくれた者こそが探偵として生きた聖丈二。
彼と共に生きられたからこそ今の嘉嶋尚紀があり、神浜の魔法少女達も救われている。
そんな自分の人生の象徴ともいえるコートを纏う男が部屋を出て行く。
残された丈二は彼の真心が胸を貫いたのか、泣き崩れる姿を残すのであった。
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「便利屋としての俺だけでなく……探偵としての俺まで廃業か……」
心労に耐えられなくなってきた尚紀はクリスを運転する余力もなく、徒歩で家を目指している。
呆然としている彼は方角すら意識出来ず北を目指してると思ったら西を向いて歩いているのだ。
新西区の公園ベンチに座り込んでしまった彼は頭を抱え込みながら項垂れてしまう。
「みんな……俺の傍から消えていく……。どうして俺は……大切な人達を守れないんだ……?」
ボルテクス時代から変わらず、人修羅の手の届かないところで大切な人達が犠牲となる。
流れ着いた別の世界ですらその運命は変わらず、誰も守れない悪魔として苦しんでしまう。
「俺に残されているのはもう……東京の守護者としての……プライドだけか……」
両手を伸ばして掌を見つめる彼はどれだけの人々を救えず取り零していったのかを考える。
宇宙を破壊出来る程の力をもつ悪魔であったとしても、自分の手はこんなにも小さかったのだ。
そんな時、かつての世界で取り零してしまった大切な恩師の言葉が耳の奥に聞こえてきた。
……………。
ボルテクス界においてカグツチ塔に囚われていた高尾祐子を救った人修羅は彼女を抱き起す。
「祐子先生!しっかりしてくれよ……祐子先生!」
ナイトメアシステムというマガツヒを集積するシステムに囚われていた彼女の目が開いていく。
「尚紀……君……?」
シジマの巫女という立場など何の価値もなく、氷川の道具とされた彼女は酷く消耗している。
彼女が落ち着くまで人修羅は待ち、座り込んだ彼女がようやく言葉を送ってくれたようだ。
「ありがとう…尚紀君。何故だか分からないけど…君が助けてくれる気がしてた…」
「祐子先生……」
「…可笑しいわね。私、君が困った時には力を貸してあげる、なんて言ってたけど…」
「先生が無事でいてくれたなら俺はそれでいい。こんな世界で唯一生きててくれた人間なんだ」
「私には何の力もないわ…世界を思う通りに動かすどころか、自分のことさえままならない…」
氷川にいいように使われるだけの自分の末路に対して悲嘆に暮れる表情を祐子は浮かべている。
次の世界の中心になってもらうと言う他人の言葉の裏にあったのは欺きでしかなかった。
「確かに…受胎で世界は混沌に沈み、生まれ変わろうとしている。私はそれに手を貸したわ」
「先生はどうして世界の滅びなんて望んでしまったんだ?そんなにあの世界が嫌だったのか?」
そう問われた祐子は遠い眼差しを浮かべながらかつての世界で生きた己の本音を語ってくれる。
彼女が世界の滅びといえる東京受胎を望んでしまった原因とは、堕落した人々の光景にあった。
「私ね……前の世界が好きではなかったの」
安らぎばかり求める皆の無責任で、我儘な振る舞いがとても嫌だった。
誰も気がついてはいない、それは幸福なんかじゃなく、ただ怠惰になってるだけ。
競い合うこととか、強くなることとか、誰も求めないし、必要もなくなっていた。
「だから私は思ってたの…きっと私達はこのまま力を無くして、
創世を望んだ巫女、高尾祐子が絶望したのはパンとサーカスしか求めなくなった人々の在り方。
娯楽を求め合う者同士でつるみ、国や共同体の未来を大勢で議論することもない腰抜け人生。
その中にあったのは馴れ合い社会であり、人々は強くなる道を捨ててエンタメしか求めない。
異を唱える者は出過ぎた杭として扱われて叩きのめされ、堕落の楽園から追放されていく。
SNSが普及してもその光景は変わらず、人々は自分達に都合のいい集団の中で腐るばかり。
面倒ごとは御上に丸投げしながら堕落の環を創るだけでしかない人々に祐子は絶望したのだ。
「でも、全てが終わったわけではないのよ。まだ創世はその途中……」
――
……………。
「祐子先生が求めた人間の幸福は…自分の力で生きる幸福。それでも人々はそれを求めない」
堕落しか求めない人々は尚紀に手を貸すこともなく、娯楽を与えてくれる金持ちに尻尾を振る。
古代ローマ帝国時代から人は変わらないと知っている金持ちは牧師として家畜を誘導していく。
残されたのは周りに異を唱える者の手だけであり、多くを救えなくて当然の結末なのだろう。
高尾祐子と同じ絶望を抱え込んでしまった尚紀の手が握り締められていくのだ。
「今の俺なら祐子先生の絶望が分かる…どれだけ叫んだって揶揄と嘲笑しか与えてくれない…」
そんな堕落した人々を護る価値などあるのかと一瞬だが考えてしまう。
それでも社会主義に目覚めた尚紀の答えは変わらないのだ。
「堕落した人々であっても社会を支える大切な人々だ…現代人は無人島で生きてなどいけない」
人間が消滅した砂漠と呼べたボルテクス界を彷徨った者として社会インフラの大切さは分かる。
それを守るために人間社会主義を掲げた悪魔なのだと尚紀は悔しさで震える拳を開いていく。
「今の俺が生きていられるのも先生のお陰だ…氷川から俺の命を救ってくれた人が先生なんだ」
かつての高尾祐子から与えられた命には重要な役目がある。
そう信じる尚紀は立ち上がり、空を見上げながらこう告げてくれるのだ。
「俺は祐子先生とは違う道を行く…先生と同じ絶望を抱えようとも…今の世界を変えてみたい」
「
突然声を掛けられて驚いた尚紀が視線を左に向けてみる。
電動車椅子に座っていた男とは里見那由他の父親である里見太助であった。
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「いつの間にそこにいたんだ……?」
「驚かせてしまったのなら謝るよ」
笑顔を浮かべてくる男であるが、やはり信用ならなくなってきた尚紀は厳しい顔を浮かべる。
「お前は一体何者なんだ…?どうして祐子先生やかつての創世のことまで知っている?」
「その部分を説明しだすと私が話したい内容の趣旨から外れてしまう。悪いが今度話すよ」
「……それで?お前は一体何を俺に伝えにきたってんだよ?」
電動車椅子を操作しながら彼の前にまで移動してきた太助が体を前に向けてくる。
眼鏡を指で押し上げた後、太助は新しい国作りというものについて話し合いたいというのだ。
「破壊による再生を望んだ恩師とは違う道を行くと君は言うが……本当に可能なのかい?」
「な、なにを言い出すんだ……?」
「それが不可能だということなら……薄々君も気が付いているんじゃないのかい?」
そう言われてしまった尚紀は押し黙ってしまい、動揺が拳に表れるようにして震えていく。
「支配とは仕組みをつくること。資本家達が築き上げた仕組みは完璧だ…正攻法では勝てない」
「なら……どうしろっていうんだ?まさか…破壊によって新しい国を創れとでもいうのか…?」
「それも一つの方法だ。しかし大勢の犠牲者が出る…だからこそ君は正攻法を選んだわけだ?」
「そうだ…俺は国を変える正攻法ともいえるだろう国政出馬によって…国を変える道を選んだ」
「それで、選挙には勝てそうかい?
「そ……それは……」
「選挙制度だろうが人間が仕組みを作ったもの。なら、不正の仕組みだって作れるんだよ」
選挙の不正の最たるものとは
「それについては気が付いていた…東京で暮らしていた時、投票に行ったら怒鳴られたんだ」
尚紀が語るのは探偵仕事が忙しくて期日前投票を利用しようとした時の出来事である。
油性ペンで名前を書き込もうとすれば監視の者が飛んできて怒鳴ってくる。
尚紀が理由を追求すればしどろもどろになりながら消しゴムで消せる筆記用具を使えという。
今度は自分が投票した証拠を残すスマホ撮影しようとしたらまた怒鳴ってくる。
選挙違反などしていないと尚紀は不機嫌になるが、監視の者はしどろもどろに怒鳴るばかり。
「期日前投票の正体は夜にあった…余裕の投票棄権票を使い、政権維持票の白紙にすり替える」
「また政権支持候補の票にもすり替えられるね…期日前投票は政権維持の汚い罠なのさ」
「有効な投票は選挙日当日のみだったんだ…どうりで日本の政治が何も変わらないわけだ…」
「それだけでなく政権与党はあらゆる不動票を得るために暗躍してきた…これで勝てるかい?」
「日本の選挙制度も賭場でしかない…勝てる仕組みを作った奴らが一人勝ちしてしまう…」
「これで分かっただろう。正々堂々戦おうとも、相手は素知らぬ顔で卑劣な手口を使ってくる」
再び座り込んでしまった尚紀は項垂れながら絞り出すような声で嘆きを呟いていく。
「八方塞がりだ……こんなの……俺の力だけでどうにか出来る問題じゃねぇよ……」
「最大の悲劇は国の闇を調べる努力もしない民衆さ。安らぎしか求めない者など支配は容易い」
安らぎを求める人々が真っ先に使う道具こそがテレビやSNS。
米国刑務所ではテレビ番組を流し続けることで囚人達を大人しくさせている。
これは前頭葉という自発的に考える脳の部位を退化させる効果があるのだ。
同じことを利用する日本政府もまたテレビを利用するために日本人の税金をばら撒いてきた。
それによって人々は考える力を奪われ、政権に従順な奴隷とする効果を実践してきている。
テレビの正体とは
「これだけの事が出来る敵と戦おうとするなら…君だけでは勝てない。だからこそ協力したい」
「えっ……?」
「君は重大な決断をしなければならない日が必ず訪れる。もし君が破壊を望むなら手を貸そう」
「里見太助…あんたは何がしたいんだ…?NEUTRALを求める者じゃなかったのか…?」
「NEUTRALとは、秩序と自由を両方求める思想。
「正解は……一つじゃない……」
博愛や平等・道徳精神がいくら素晴らしかろうと、国や民族を守る国防の正解にはなりえない。
娯楽であっても同じであり、投稿するサイトによって求められる小説の正解は違ってくる。
「全ての現象は正解であり不正解。ケースバイケースに対処するには一つの正解では足りない」
「一つの正解を作ろうとするから人は争い合う…その結果が…千晶と勇との殺し合いだった…」
「これは神と悪魔の関係性も表せる。神も必要であり、また悪魔も必要。だからこその中庸だ」
「世界の破壊を望んだ氷川や祐子先生の道もまた…正しかったというのか…?」
「その人達も自分の無力に絶望し、神の奇跡を用いて世界の変革を破壊と創造で成そうとした」
「俺は…奇跡など信じない。ギャンブルで神頼みしながら敗北する連中の仲間入りなんて嫌だ」
「そうだね…この世界で受胎など起こらない。だからこそ…自然のコトワリを用いる道もある」
「創造と破壊は……表裏一体……」
「君が自然のコトワリに従い、破壊を用いて変革を求めるのなら…私のところに来るといい」
項垂れたまま顔を上げようともしない尚紀の前から去っていく太助であるが動きを止める。
背中越しにだが最後の言葉を残すようだ。
「フランス革命、アメリカ革命、多くの変革には多大な犠牲者が生まれた。その覚悟は必要だ」
「俺に……歴史に名を残す程の大虐殺者となれというのか……?」
「人間の守護者を貫いた君では無理だろう。それでもその拘りを捨てるなら……私は力となる」
「消えろ……俺は人間の守護者の道は捨てない。お前の協力なんて必要ない」
「今はそれでいい…だが、現実はあまりにも残酷だ。大いに悩み……そして選択して欲しい」
姿が見えなくなっていく太助の正体のことを考える余裕もない尚紀は再び頭を抱え込む。
「何が正解なんだ…?何が人々の救いなんだ…?分からない……俺も……分からない……」
悩み苦しむ尚紀は背後に隠れている魔法少女の魔力にさえ気がついてはくれない。
整備された公園の木の後ろにいたのは父親の帰りが遅くて探していた那由他の姿である。
震えている彼女は尚紀のことを心配するよりも父親の異質な雰囲気に対して恐怖するのだ。
「世界の変革のためなら手段を選ばない提案なんて…私のパパは出来る人じゃないですの…」
本当に今の里見太助は自分の父親なのかと疑ってしまい、現実が崩壊する怖さを抱えている。
悩み苦しむ者達はそれぞれに選択を迫られ、そして決断する苦しみを与えられたのであった。
休日で筆が乗るように書けちゃったんで投稿しときます。
いつもこんな調子で書けたらいいのに(汗)
うちの人修羅君のモデルはデビルメイクライのダンテやバージルではないという話を突っ込みたかったんですよね。