人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
太陽系が収まった天の川銀河に向けて空間跳躍しながら迫ってくる光の大艦隊が現れていく。
インキュベーターを運んだ超巨大コロニー船を遥かに超える白い旗艦が顕現するのだ。
流線形のボディの全長は約550kmであり、月の質量の四分の一にまで迫るほどである。
船体下部はインキュベーターの船の直径である24kmの船がいくつも接続出来る広さ。
この旗艦はマザーシップとしての役割もあり、インキュベーターの船を多数運べるものだった。
「ワープ完了。艦内異常を確認の後、報告せよ」
「総員第3種戦闘配置に移行、宙域の警戒を怠るな」
多層構築された超巨大ブリッジでは大勢のオペレーター天使達が艦内情報の確認を行っていく。
艦長席の後ろ側には大艦隊の指揮を執る提督席が設けられており黄金の天使が座っている。
黄金の鎧を身に纏い、黄金の六枚翼を背中にもつその熾天使こそが天使長ミカエルなのだ。
【ミカエル】
旧約聖書のダニエル書に登場する天使であり、名は神の如き者を表す。
天使の軍勢の総司令官を務める熾天使であり、四大天使としては火の属性を象徴する。
悪の象徴と戦う戦闘的な天使とされ、竜を滅ぼすドラゴンスレイヤーとしても名高い存在。
起源は新バビロニアで信仰された神格を天使として取り込んだものとする説が有力であった。
「やれやれ…通常のワープ航法で移動しなければならんとは時間を喰いますな、ミカエル閣下」
沈黙を続ける天使長の横で立つのは天使の将軍であり、天使長に負けない好戦的な天使である。
【カマエル】
火星・火曜日を象徴する戦いの天使であり、神を見る者という名を持つ。
赤い鎧と長剣を纏い、破壊や死を伴う猛々しい姿で想像される天使のようだ。
カバラではセフィロトのゲブラーを司り、神の御前に立つ七大天使に挙げられることもある。
一方で唯一神の荒々しい側面を否定しようとした悪魔学では地獄の公爵としても語られてきた。
「アマラ経絡を潜れる大きさは限られている。戦艦サイズは通常のワープ航法しか出来ん」
「それは理解しておりますが…早く私も太陽系に辿り着きたくてウズウズしているのです」
「猛る気持ちは分かるが落ち着け。子供の遠足ではないのだぞ」
「早く悪魔共を皆殺しにしたい…ハルマゲドンの日がついに訪れる…興奮を禁じえません!」
「その気持ちは太陽系につくまで抑え込んでおけ」
ブリッジから見える宇宙には旗艦に続くようにして次々とワープを超えた戦艦が出てくる。
隊列を組むようにして顕現し続ける戦艦の大きさは小さいものでさえ1kmを超える程なのだ。
光り輝く大艦隊によって宇宙が黒く見えない程の大軍団が太陽系に目掛けて迫りくる。
その大艦隊が運ぶ天使軍規模は億、兆にまで迫るほどであり最終戦争の規模は想像を絶する。
ミカエルとルシファーが本気の戦争を行えば地球どころか太陽系すら無事では済まないだろう。
「ルシファー…貴様に残された任務は後一つ。それさえ終われば貴様は用済みなのだ」
「この宇宙を魔界化させる…それによって魔獣達の役目は終わりを告げるでしょう」
「これからの宇宙の熱エネルギーとなるのは悪魔共なのだ。そのために入れ替えていく」
「時期にこの宇宙の魔獣は全て消えるでしょう。そして…悪魔が跋扈する世界となる」
「魔法少女の新たな敵として悪魔が立ちはだかり、魔法少女を喰らった悪魔が宇宙の熱となる」
唯一神にとって魔法少女が生きるこの宇宙など壮大な実験場に過ぎない。
まどかに踏みにじられた宇宙の熱回収の仕組みに代わる、新たな熱回収の仕組みを生み出す。
そのテストとして最悪の宇宙改変を引き起こしたまどかが生きる宇宙が選ばれたというわけだ。
ハルマゲドンが始まる前に悪魔と魔法少女の熱回収の仕組みが完璧に機能するかを見極める。
成功した暁にはこの宇宙をモデルケースにして全ての並行宇宙でも同じ仕組みを組み立てる。
これによって円環のコトワリが築き上げた惰弱な熱回収の仕組みを乗り越えようというのだ。
「新たな熱回収の仕組みが正常に機能するかをガブリエル達が確認した後、最終戦争となる」
「古より最終戦争に参戦する天使は本霊を用いる。本気の熾天使様達の強さにおののくがいい」
ミカエルやガブリエル達の姿は普通の天使と同じく二枚翼なのだが、今の熾天使達は六枚翼。
本霊となった熾天使達は本来の姿である六枚翼となってハルマゲドンに現れたのだ。
「それにしても…メタトロンは艦首の上で何を黄昏ているのだ?」
「…あの者はかつてのボルテクス界で人修羅と戦った天使。思うところもあるのだろう」
流線形の形をした巨大船の艦首に当たる部分では人型ロボットのような天使が立っている。
本来なら巨大な星サイズもある天使であるが、概念存在は大きさを自在に変えられる者達。
大きさは人間サイズにまで縮まっており、腕を組みながら遠い銀河を見つめていたのだ。
彼こそがインキュベーターを統括する契約の大天使であり、かつてはカインの息子であった。
【メタトロン】
契約を重視するユダヤ教においては最高地位を持つ天使のリーダーであり、神の代理人。
預言者エノクが天に召された姿であり、ルシファーの十二枚翼を超える三十六枚翼をもつ。
カバラでもメタトロンは重要視され、アセンションを成し遂げた存在として崇拝される。
小さな唯一神と呼ばれる程の存在であるが、彼は天使長の座に昇ることはないだろう。
彼は天使の中では若者であり、天の書記官としての任務を果たす者として弁える立場にあった。
「…再び人修羅と戦う時がくるか。あの者を導けず…悪霊にしてしまった落ち度は私にある…」
機械の体と翼を持ち、金髪の下側には白い布のような祭服を纏う者が目を閉じる。
思い出すのはボルテクス界の記憶であり、アマラ深界で人修羅を導こうとした出来事なのだ。
「あの者は破壊と創造における犠牲に耐えられず、全てを憎む悪霊として闇の底に堕ちた…」
全ては新世界創造に必要な
潜水艦が浸水して全滅するぐらいなら一部の命を切り捨てて水密扉を閉める発想と同じなのだ。
しかし感情を優先した人修羅は唯一神の判断そのものを憎み、全てを破壊する悪霊となった。
「感情だけで全てを決めつけてはならんのだ…大局を見つめなければ全てが終わってしまう…」
ボルテクス界で起きた犠牲も、魔法少女達の犠牲も全ては宇宙という大局の出来事でしかない。
それでも若者は大局を見る事もなく生まれるはずだった宇宙を滅ぼすし、並行宇宙まで滅ぼす。
それを看過することなど出来ないメタトロンは再び人修羅と戦う覚悟を決めるのだ。
「私の父の犠牲も、人修羅が人として生きた世界の犠牲も、魔法少女の犠牲も必要だったのだ」
目を開けたメタトロンは組んでいた腕を下ろし、彼方に在るだろう太陽系に思いを馳せる。
「再び出会うだろう悪霊よ…汝はあの頃のままか?それとも
犠牲無くして人も国も神も何も成しえない。
時間、労力、命、資源、世界、あらゆるものを犠牲にした果てに人も国も高みに辿り着ける。
弱い者達はそれを否定し、惰弱な楽園へと強者達を引きずり降ろしながら共に腐り果てていく。
「変革とは常に力と犠牲なり…その覚悟がかつての汝にあったなら…正しき道へと進めたはず」
踵を返して歩き去るメタトロンではあるが、機械のように冷たい心に小波が訪れる。
果たして、強者の理屈を犠牲にした人々にまで押し付けたところで正しいと言うのだろうか?
「独裁だと罵倒したければするがいい。弱者など堕落しか求めず牧師に飼われたいだけの羊だ」
小波が起きたところで心も体もびくともしない程にまで冷たくなったメタトロンは迷わない。
「人間の歴史が証明してきた。人は楽園から追放されても…自分の力で生きられない者だとな」
唯一神や天使という牧師を否定したところで、人は新しい牧師として国会議員や社長を求める。
面倒ごとをそいつらに丸投げしながら自分達は堕落を楽しみ、都合の良さだけくれという。
自分達の知恵で生きる気概を何も感じない連中など、誰が牧師となって導こうとも変わらない。
指摘したところで人は問題を相手にすり替え、他責の安心に浸りながら問題を有耶無耶にする。
「何処までも自分達の悪い部分に意識を向けられない卑劣で惰弱な者共など…羊で十分なのだ」
もし人の歴史が自分達の知恵で生きていくのだと人々が王と同じ努力が出来ていたなら話は別。
真の民主主義を完成させて牧師という独裁者など不要だと叫べたなら彼の意見は変わっている。
それでもそんな歴史は極一部の国だけでしか機能せず、多くの先進国で必要とされない。
羊であることを止めない民衆など牧師に間引かれても自業自得だと彼は吐き捨てるのであった。
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「かりん…元気出すホ。家の中で引き籠ってても心と体が活性化することなんてないホ」
「そうですぜ…姐さん。せっかくももこの姉御がキャンプに誘ってくれたのに断るなんて…」
ジャックコンビであるランタンとリパーから心配されるのはベットから出てこない御園かりん。
彼女はアリナを見つけた時から心が塞ぎ込んでおり、かつての仲間達からも心配されている。
皆を元気づけるイベントに参加しないかとももこ達が誘いに来たようだが断ったようだ。
「アリナ先輩……」
涙で枕を濡らすばかりの主人を心配する仲魔達であるがどうすることも出来ない。
生きていたアリナはイルミナティ側の者として子供の虐殺に加担してきた者。
たとえ結社側から脅されていたとしても、だったら逃げてくればいいと彼女は思っている。
しかしアリナはかりんの元に帰ってくることを拒絶し、その上で東京を破壊すると宣言する。
本当のアリナが何を望んでいるのかが分からなくなったかりんは未だに心が塞ぎ込んでしまう。
何もしてやれない無力なジャックコンビはアリナを探してくると外に出かけたようだ。
「無理もないホ…かりんにとってアリナは厳しくも的確にアドバイスしてくれた先輩なんだホ」
「だけどアリナは姐さんのところに帰らなかったし…脅されてるってのも信憑性が薄いぞ…」
「学校の美術室を覗きに行ってもかりんは独りでアリナを待ち続けてる……いたたまれないホ」
「家で描いてる漫画だってアリナ改心計画って内容だ……信じてるんだろうな」
「創作のハッピーエンドを根拠にして希望を求められる発想だって…
「まぁな…創作は作者のご都合主義でしかねーし…姐さんが求めたいだけのご都合主義なんだ」
「だからアリナの正しさになんてなりようがない…かりんも自分の偏見世界だけしか見ないホ」
「どうして人間ってのは…自分の主観やお気持ち主義でしか世界を認識出来ねーのかねぇ…」
このまま東京に行ってアリナを止めようとしたところで辛い現実しか待っていない。
裏切られたかりんの心は壊れてしまうのではないかとジャックコンビ達は危惧している。
「何が正しいかなんて…ようは感情の問題さ。アリナはアリナの正しさを欲しがってやがる…」
「それを無理やり強制しようとしたって人は反発する生き物だし、動物だって同じだホ…」
「互いの自由がぶつかり合えば潰し合いにしかならない…悪魔の世界も人間の世界も同じだな」
路地裏談義をしながら深い溜息をつく二体の悪魔であるが、ランタンが横を向く。
「どうしたんだ?」
「僅かにだけど…複数の悪魔の魔力を感じるホ」
「マジかよ!?野良悪魔共が神浜に流れてきやがったのか!?」
「そうとは限らんホ。この微かな魔力反応はサマナーの管に収まっている悪魔達の特徴だホ」
「じゃ、じゃあ……大勢の悪魔を従えたサマナー連中が神浜に潜んでいやがるってのか…?」
確認しに行こうとするランタンを止めようとするリパーであるが制止を振り切り飛んでいく。
仲魔を見捨てて家に帰れば主人に嫌われると思ったリパーも覚悟を決めて追いかけるのだ。
彼らが向かう先とはフィネガンの支援部隊として派遣されてきたサマナー達の潜伏場所である。
「待機命令のままだが…いつまで我々は神浜にいればいい?さっさと仕事を済ませようぜ」
「先走ったフィネガンに代わる現場指揮者を手配するそうだが…随分と待たされたままだな…」
「まぁ、今は大事な時期だって聞かされてきたからな。その上で今回の魔法少女掃討戦だぞ?」
「優先すべきはどちらかの判断を迷っていると判断するしかねーな…」
神浜記録博物館だった廃墟の駐車場跡地には多くの黒塗りセダンが停車している。
外でたむろしているのは丈二達を襲ったダークサマナーであり、未だに潜伏しているのだろう。
彼らに見つからないよう草むらの中で聞き耳を立てていたジャックコンビが顔を向け合う。
「今の聞いたか…?魔法少女掃討戦とか言ってたぞ……」
「ま、まさか……神浜の魔法少女達を一掃しにこいつらは現れたのかホ……?」
やちよ達はキャンプに向かい、神浜魔法少女社会の長も爆発を浴びた傷が完治していない。
指導者がいない状況でどう対処すればいいか分からない悪魔達は逃げるしかないようだ。
「俺サマは姐さんにこのことを報告に向かうぞ!姐さん達を殺されてたまるか!!」
「俺は人修羅の家に向かうホ!人修羅の仲魔が残っていたら協力を仰いでみるホ!」
それぞれが分かれていく中、かりんの家に向かうリパーは不安を抱え込んでいる。
バカなマネだけはさせないよう覚悟を決めたリパーは家路を急ぐのであった。
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「神浜の魔法少女掃討戦については撤回しまス。総員引き上げてくださイ」
シドからの連絡を受けるダークサマナーは事情を質問していく。
どうやらオーダー18を優先するためこれ以上の戦力はさけないようだ。
「フィネガンを失ったのは私の誤算でス…これ程の損失を出してしまった責任は重いでしょウ」
「では、神浜の魔法少女達の処遇についてはどのようにするのでしょうか?」
「神浜の魔法少女達ハ…以前と同じくワクチン接種で始末をつける手筈としまス」
「ですが…連中はワクチン接種を全員受けていません。期待出来ないのでは…?」
「そのためのオーダー18でス。作戦が完遂されれバ…もはや周囲の同調圧力には逆らえなイ」
言いたいことを理解したダークサマナーは指令通りに撤収を言い渡す。
それぞれが車に乗り込んで神浜から去ろうとする光景を見つめるのはかりんとリパーである。
「姐さん…どうするんですかい?まさかとは思うけど……」
「勿論尾行するの!聞こえてきた話の内容からして…連中はアリナ先輩と繋がってるの!」
「尾行する!?敵陣にまで連れていかれたら…俺サマ達は美味しく料理されるだけですぜ!?」
「アリナ先輩を救出したい!アリナ先輩は悪い組織に脅されてるだけ…それを証明したいの!」
「せめて人修羅の旦那の仲魔達がこっちに到着するまで待ってくだせーよ!?」
「ダメなの!放すのーっ!!」
草むらの中でドタバタしている者達など放っていかれるようにして次々と車が去っていく。
最後の車が出ようとするが運転手の男が計器を見ればガソリンが少ないことに気づいたようだ。
「参ったな…東京までガソリンが持ちそうにない。給油してから合流するか」
かりんとリパーが騒いでいたら最後の車まで出発しそうになるので慌てて草むらから飛び出す。
魔法少女姿のかりんは右手に魔法の大鎌を出現させながら浮遊させ、お尻を乗せて飛んでいく。
主人の無謀な行動に巻き込まれる形でリパーも大鎌の柄を掴んで空中を飛翔していくのだ。
目を付けたのはガソリンスタンドに向かう黒塗りセダンであり、バレないように移動していく。
誰もいなくなった現場に到着したのはランタンに連れられてきたセイテンタイセイ達だった。
「おかしいホ…この辺でかりんの魔力とリパーの魔力があったと思ったのに誰もいないホ…?」
「どうやら早まった行動をしでかしたようだな……」
「マダソウ遠クニハイッテイナイハズダ。周囲ヲ捜索スルゾ」
筋斗雲に乗ったセイテンタイセイとランタンが上空を探し、ケルベロスが地上を捜索していく。
その頃、神浜市の郊外では高速道路に入れる手前にあったガソリンスタンドに車が入ってくる。
セルフ給油所であったため車を降りたダークサマナーが給油口を開けて燃料を入れていく。
一大作戦が控えているためそのことに集中している男は車の横に隠れる者達に気が付かない。
給油口の反対側の扉に張り付くようにして隠れていたのはかりんとリパーであったのだ。
<なんだかマジカルきりんの第28話にあった潜入の物語と似てきたの!燃えてきたの!>
<姐さん…漫画のノリで無謀な行動をとっても高い代償を支払うだけですぜ…>
<そう思うならリパー君は家に帰っててもいいの。私だけでアリナ先輩を救出するの>
<うぐっ!そんな真似したらランタンに焼き殺される…仕方ない、地獄までお供します…>
念話を飛ばし合う者達であるが車のトランクに忍び込むために運転席の扉をゆっくり開ける。
トランクルームを開けるボタンを見つけ出して押し、ゆっくり扉を閉めていく。
給油を終えた男が戻ろうとする逆側に回り込みながらトランクルームを開けて中に潜る。
車を発進させる男に気が付かれないまま潜入出来たと思っていたが様子がおかしい。
「あ…あれ?高速道路に入らないの…?」
「俺サマ…何だか嫌な予感が……」
車は下道を進んでいき、人気のない場所まで走行していく。
住宅街を超えていった車は人目が付かない空き地で停車するのだ。
運転席の扉を開けて出てくるダークサマナーの手にはサイレンサー付きの拳銃が握られている。
扉が半ドアになっていたこともトランクが開いていたことも気が付かれていたのであった。
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事態を理解したかりん達が慌ててトランクルームを開けて外に飛び出す。
サマナーは容赦なく引き金を引いていき、慌てて逃げるかりん達を撃ち殺そうとしていく。
「気が付かれていないとでも思っていたのか!このクソガキとチビ悪魔め!!」
地面をシャカシャカ這い回りながら銃弾を避け続けたようだが立ち上がって大鎌を振り回す。
「秘密結社の悪行なら気が付いている!この正義の怪盗マジカルかりんが成敗してくれよう!」
カッコよく決めポーズをとるかりんであるが、先ほどはゴキブリのような立ち回りをしている。
何の凄みも感じないサマナーは懐から召喚管を取り出して悪魔を使役するのだ。
「どうせ神浜の魔法少女なんだろ?丁度いい…この場で1人ぐらいは始末してやろう!!」
振り抜かれた召喚管からMAGが噴き上がり、男の背後に大きな悪魔が顕現する。
周囲が異界化して閉じ込められたかりん達が悪魔を見上げるのだが目が点になってしまう。
「グォォォォォ……Zzzzz……グォォォォォ……Zzzzz……」
召喚されたドデカイ山羊頭の巨人であるが、寝転んだまま鼻提灯を膨らませるばかりである。
【フォーモリア】
ケルト神話の悪の巨人であるフォモール族の者であり、フォモールとは地底や海の神々を表す。
アイルランドにはダーナ神族以前より住んでいた先住民であり、神話では悪役とされてきた者。
山羊や馬の頭を持つ獣面の蛮族として描かれ、外海から訪れる侵入者と戦った存在であった。
「コラーーッ!!何を呑気に寝ている!?召喚されたらさっさと戦わんか!!」
五メートルもある肥満巨人であるが大きな声で驚いたために鼻提灯が割れる。
あくびをしながらゆっくり起き上がった山羊頭巨人は眠たそうな目をかりん達に向けたようだ。
「ふわぁぁぁ…いつまでも掃討戦が始まらんから管の中で寝ていたぞ。こいつがそうなのか?」
「その通りだ!退屈していたのなら獲物は目の前にいる!その剛力で捻り潰してやれ!!」
「そうしたいところなのだが……ふわぁぁぁぁ……まだ寝たりん……」
怠惰な悪魔であるためか再びウトウトし始める隙を見逃すかりん達ではない。
「こんなとろくせぇ悪魔なら楽勝ですぜ姐さん!」
「眠そうなところを悪いんだけど……アリナ先輩を見つけ出す障害は排除するの!」
小型ナイフと大鎌を振り上げた者達がフォーモリアに飛び掛かるのだが彼の体は脂肪の鎧。
毛皮で覆われた肥満ボディに刃を突き刺してもボヨンと弾かれてしまうのだ。
「フハハハハ!フォーモリアの物理耐性ならその程度の攻撃ではびくともせんぞ!」
高笑いを行いながら余裕の態度を示すサマナーに負けまいとかりん達が立ち上がっていく。
「不味いですぜ姐さん…あの悪魔はとろくさくても物理耐性は侮れませんぜ……」
「だったら…力で攻めるよりも魔法で攻めるの!」
大きく息を吸い込んで氷結魔法を放とうとするフォーモリアに目掛けて武器を水平に構える。
「ねんねーん…ころーりーよ…おこーろーりーよー……」
何を思ったのか江戸時代から伝わる古い伝承唄を歌い出すかりん。
しかし彼女の歌声は女の魔性の効果を持っていたのかフォーモリアの目がウトウトし始める。
「こ…この娘の歌声は……いかん……これは……睡眠魔法か……」
かりんもまた業魔殿で御霊合体を超えた者であり、悪魔の魔法を行使出来る魔法少女。
彼女が用いた『子守り歌』によってフォーモリアの巨体がぐらついていく。
「お…おい……オイオイオイッッ!!?」
慌てて逃げようとするダークサマナーに目掛けて巨体が倒れ込んでくる。
サマナーはフォーモリアの背中に潰されて身動き出来なくなってしまう末路を遂げる。
「重いィィィィ……ッッ!!早くどけーーー……ッッ!!」
鼻提灯を再び膨らませるフォーモリアはいい旅夢気分のまましばらく起きないだろう。
この歌は江戸時代の女中の嘆きと苦しみが形になった唄であり呪詛めいた効果も合わさるのだ。
形勢逆転したかりん達がサマナーの前に立ち、不気味な笑みを浮かべてくる。
「くすっ♪助けてあげてもいいけど、アリナ先輩のところに連れていくのが条件なの」
「アリナだと!?貴様はあの新入りダークサマナーの何だというのだ!?」
「後輩なの。やっぱりアリナ先輩を知ってるみたいだし…条件を飲むなら助けてあげるの」
「バカか貴様は!我々の本陣に潜入しようというなら死にに行くようなものだぞ!」
「それぐらい分かってる…だけどアリナ先輩を救うには虎の穴に飛び込むしかないの」
「クックッ…バカな小娘め。もうじきあの女も動く時がくる…我々を止めることなど出来ん」
「ゴールデンウイークはもう直ぐなの…東京で何をするかは知らないけど絶対に止めるの!」
「なぜ貴様が作戦決行日を知っている!?ま、まさか…アリナから聞いたのか!!?」
アリナの裏切り行為に気が付いたダークサマナーであったが、かりんの一撃が先に決まる。
「グフッ!!?」
大鎌の柄で頭をどつかれたサマナーの頭部が倒れ込み、記憶を一部失うこととなるのだ。
「本当に行くんですかい…姐さん?こいつの言葉は嘘でも何でもないと思うんだけど……」
「もう後には引けないの…お祖母ちゃんを心配させる後ろめたさはあるけど…それでも行くの」
「しゃーねぇな……俺サマは姐さんの懐刀ですし、どうぞご自由にお使いください」
「フフッ♪リパー君を仲魔にして正解だったの。行くぞ我が友よ!魔王の牙城に潜入だ!!」
無理やり起こした男に車を運転させるかりんが向かう場所とは東京である。
いつでも首を掻き切れると後ろ側から男に取りつくリパーの横では顔を俯ける彼女がいるのだ。
(アリナ先輩……私は信じてるの。本当のアリナ先輩は……優しい人だって……)
それぞれの思いが集まる東京こそ新たなる世界の礎となる生贄の地となろう。
全ては新たなる宇宙の熱エネルギーのためであり、そのために悪魔も人類も利用される。
コラテラルダメージこそが宇宙を救うのだと犠牲を押し付けるばかりの天使達。
悪魔達もまた目的のために多くを犠牲にするコラテラルダメージを背負うだろう。
そしていずれは人修羅さえも犠牲の重みに耐えなければならない試練の日が訪れるのであった。
他にも登場させたい天使が大勢いるんですが、何処まで登場させられるかは分からんですね(汗)
メガテンもまどマギも宇宙規模の話ですし、壮大なSF戦争してもいいですよね!