人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
マヨーネと召喚されたむらさきカガミに率いられた悪魔とサマナーが迫りくる。
「あんた達、やっちまいな!おばちゃんはこんな場所でチンタラしていたくないんよ」
「そうね、ランディングゾーンに遅れるわけにもいかないし、早くケリをつけましょう」
マヨーネの部下達が放ったのは巨大な髑髏悪魔であり、群がって襲い掛かってくる。
【ロア】
ブードゥー教の蛇霊であり、信者達からは精霊として扱われる存在。
人間を助け、慰め、ときには苦しみをを与える存在の総称であった。
<<固まっているならば、そのまま串刺しにしてやろう!!>>
大きな髑髏のくぼみから蛇が伸び出た悪魔から放たれるのは『毒針』の一撃。
「散れ!!」
クーフーリンの叫びに反応した者達が円陣を解き、ロアの群れが放つ毒針の雨を避ける。
「あの悪魔は邪悪な力を拠り所にしている悪魔のようね!」
「ならば私が倒します!!」
ロアに目掛けて斬り込むタルトが破魔の力の象徴である光の一撃を叩きこんでいく。
「コイツ!?光の力を操る者か!?グワァァァァァーーッッ!!?」
光の衝撃波を放つ一撃とは『白龍撃』であり、単体に力依存の破魔の一撃を打ち込む。
リズとクーフーリンはダークサマナー達に斬り込んでいき、迎え撃つサマナー達が銃を構える。
「「遅い!!」」
影の曲刀と魔槍ゲイボルグを振るう師弟コンビによって次々とサマナー達が切り殺されていく。
レナとかえでにサマナー達の相手をやらせなかったのは人殺しになれない甘さがあったようだ。
レナは補助魔法のラクカジャで援護し、かえでは補助魔法のスクカジャで援護してくれる。
しかし補助魔法を使う魔法少女達の邪魔立てをするためにマヨーネが動くのだ。
「「キャァァァァーーーーッッ!!?」」
魔法陣が描かれた傘の先端を向ければ魔法陣が怪しく光り、放たれたのはマハジオである。
咄嗟に横っ飛びを用いて放たれた雷撃を避けるがマヨーネは傘を折り畳んで構えながら撃つ。
「ヒィィィィーーーーッッ!!」
転がりながら逃げようとするかえでに目掛けてライフル傘を撃ち続けるのだ。
「ネズミのようにすばしっこい小娘ね!大人しく撃ち殺されなさい!!」
「かえではやらせないわよ!!」
立ち上がったレナが槍を頭上で回転させ、周囲に広がる水を氷結させていく。
氷の針を生み出した彼女がマハブフを放とうとするのだが、むらさきカガミが割って入る。
「鏡の悪魔ですって!?」
勢いを止められず発射されたマハブフであるが、むらさきカガミは属性魔法を反射する悪魔だ。
「キャァァァァーーーーッッ!!」
反射された氷結魔法がレナに襲い掛かる中、咄嗟に身を低めて避けてくれる。
俯けに倒れたまま顔を上げれば宙に浮いた怪しい鏡に映った老婆の悪魔が見えたようだ。
「めんこいお嬢ちゃんだけど、お小遣いはあげられんわ~。年寄りに優しくないし」
「殺そうとするおばちゃんなんかに小遣いをねだる真似はしないわよ!叩き壊してあげる!」
「最近の子は節度知らんから怖いわ。でも若者に付き合ってるとおばちゃん青春を思い出すで」
レナは槍を水平に構えてマギア魔法を放つ構えを行う。
彼女の背後に複数の鏡が出現すると驚いた表情をむらさきカガミは浮かべるのだ。
「アラ~、お嬢ちゃんも鏡を扱う魔法少女なんや?おばちゃんと揃って鏡シスターやる?」
「本当に調子が狂うおばちゃん悪魔ね……だけど、戦うなら容赦はしないわよ!」
背後の鏡にレナの姿が映っていき、槍を構える姿を見せる。
本体と共に投げ放つ槍の一撃が次々と迫る中、むらさきカガミは浮遊して一撃を避ける。
属性魔法は反射するくせに物理的な一撃を避けたことで鏡悪魔の弱点を見いだせるのだ。
「かえで!!」
「う、うん!!」
マヨーネが銃弾を装填する隙をついて立ち上がった魔法少女仲間が援護してくれる。
湾曲した木の杖を掲げると地面から植物の根が次々と伸び出て空中の鏡悪魔を拘束していく。
「ええっ!?植物を操る魔法なんて…おばちゃん聞いてないんやけど!?」
空中で動けない鏡悪魔に目掛けて再び槍を投的する構えを見せるが反撃の一撃が放たれる。
「レナちゃん!?」
蝋燭のように輝く鏡悪魔が放ったのはうしの刻参りであり、修験道の呪殺秘法を浴びせられる。
「ぐっ……あっ……アァァァァーーーーッッ!!!」
倒れ込んで苦しみだすレナのソウルジェムは穢れていき、魂が呪い殺されようとしている。
周りの仲魔達は髑髏悪魔やサマナーの相手で援護に向かえず、このままでは殺されてしまう。
そう判断した秋野かえでは覚悟を示す力を解放するのだ。
「レナちゃんはやらせない!私達はみんな弱い…だからこそ支えてくれる人達が必要なの!」
木の杖が光を放ち、放つのはマギア魔法の『ジャッジメント・アース』である。
「グギャァァァーーッ!!?おばちゃんの体が…砕かれる~~ッッ!!!」
巨大な根に絡みつかれたむらさきカガミは根に締め潰されながら砕け散り、MAGの光となる。
苦しみから解放されたレナが目を向ければ走り寄ってくるかえでがいる。
「レナちゃん!!だいじょう……ぶっ……?」
発砲音が響き渡り、自分の胸の下が湿っているのを感じたかえでが胸に手を当てる。
すると右手は血塗れとなり、胸部を撃ち抜かれていたのだと気が付くのだ。
「あ……あぁぁ……」
倒れ込む仲間の背後に見えたのはライフル傘を構えたマヨーネであり、怒りの形相をしている。
「よくも私の紫鏡を滅ぼしたわね…代償は高くつくわよ!!」
傘の生地を開いたマヨーネが一回転しながら周囲に魔法陣を描き、召喚管の一つが開きだす。
「邪教の館で作った新たなる私の力よ…その怒りを解放しなさい!私の怒りと共にね!!」
傘をクルクル回転させながら召喚管のMAGを振りまき、おぞましい光を生み出していく。
かえでに駆け寄って倒れた彼女を支えようとするレナが見上げたのは狂気の女神の御姿だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「美しい魔法少女と悪魔共だね~…気に入ったわ。その首を跳ねてネックレスにしてあげる!」
赤い肌をした巨人の肩にはマヨーネが立っており、六本の腕には六本の曲刀が握られている。
「皆殺しにしなさい、カーリー。破壊と殺戮の女神の名に恥じない殺戮劇を楽しませて」
「言われなくてもそうするわよ!邪魔だからアンタは向こうの建物の屋上で見物してな!」
「フフッ…そうさせてもらうわ」
【カーリー】
ヒンズー教では黒き者と呼ばれる破壊と殺戮の女神。
肌は黒くその手に武器や生首、頭蓋骨などを持つと言われており衣服にも生首をぶら下げる。
額にシヴァの第三の目と三日月を持っていると言われ、シヴァの妃のパールヴァティの別の姿。
ドゥルガーがアスラに対して怒り、アスラ神族を食い殺したと言われる荒神がカーリーだった。
「私の部下達も全員始末されたようね…彼らの生首もアクセサリーにしてもいいわよ」
ビックサイトの中央棟の屋上で佇むマヨーネは前進するカーリーの背中に語り掛けてくる。
迫りくる巨人に対してレナはかえでを必死に呼び起こそうとするが息が絶えてきているのだ。
「かえで!!しっかりしなさいよ…レナより先に死んだら許さないんだからぁ!!」
「心臓を撃ち抜かれてますね…このままでは失血死してしまいます…」
「私達が時間を稼ぐ。相手はあのカーリーだ……そちらの助けをしている余裕はない」
返り血を纏うクーフーリンとリズが仲間の回復時間を稼ぐために前に立つ。
「師匠…サマナーはあの中央棟の屋上にいる。言いたいことは分かるな?」
「分かってるわ。召喚悪魔はサマナーのMAG供給に依存する…汚れ仕事は私に任せなさい」
「頼む。私とてカーリーを相手に何処まで持つかは分からんのだ…」
頷きあった師弟コンビが巨大な荒神に目掛けて斬り込んでいく。
「さぁさぁ、どいつから首を跳ねられたい!跳ねられたい奴から前に出てきなぁ!!」
踊りの神でもあるシヴァの妃もまた踊りを得意とする神であり、戦いの踊りを行ってくる。
地団駄するように足を踏み付けていけば大きな地震が生まれるのだ。
<<キャァァァァーーーーッッ!!?>>
ビックサイトのエントランス部分が砕けていき、瓦礫の下までタルト達が落ちていく。
「タルト!?レナ!?」
「よそ見をしてていいのかい?先ずは美丈夫のアンタの首から頂こうかぁ!!」
右側の三本の腕が一気に動き、薙ぎ払い斬撃を放ってくる。
「チィ!!」
魔槍ゲイボルグを縦に構えて斬撃を受け止めるが質量の勢いでかち上げられてしまう。
崩れてしまったエントランスエリアの瓦礫を飛びながらリズもまた攻め込んでいく。
しかし左側の三本の腕が背後から斬り込んでくるリズの斬撃を受け止めつつ薙ぎ払うのだ。
「だ……大丈夫……ですか?」
瓦礫の下敷きにされたと思ったレナとかえでであったが、隙間の中に倒れている。
レナが後ろを向けば巨大な瓦礫を持ち上げ続けているタルトがいたのだ。
「私が支えます…今のうちに秋野さんを回復してあげてください…」
「タルトさん……わ、分かったわ!かえでは絶対に……レナが死なせないから!!」
撃ち抜かれて貫通している胸部に回復魔法をかけ続けるレナをタルトは必死に支えてくれる。
その姿は神浜テロの時から変わらぬ姿であり、他者のために命を投げ出す愛を示す姿。
ジャンヌ・ダルクの魂はコピーの造魔に受け継がれ、彼女もまた本物のジャンヌとなるのだ。
「ちょこまかとすばしっこいねぇ!大人しくその美しい首をアタシに差し出しなぁ!!」
竜巻の如き剣舞を放ちながら地上を切り刻むカーリーの猛攻を二体の悪魔が掻い潜る。
激しく巻き上げられる切断された瓦礫が生み出す影こそがリズの狙い。
乱戦状態となったカーリーは獲物が一匹消えていることに気づいていない。
「無駄に多く剣を携えようとも、その巨体では小さい的を捉えきれまい!!」
瓦礫の上に立ったクーフーリンが槍を振りかぶった後に薙ぎ払い、衝撃波を放つ。
烈風破の一撃に対して六本の剣を交差させながら防御するカーリーであるが余裕の表情なのだ。
「カーリーはシヴァ神の妃であるパールヴァティの本気の御姿。貴方程度では勝てないわよ」
狂気の女神の戦いを見物するマヨーネは不気味な笑みを浮かべながらこう告げる。
「なにせ召喚したパールヴァティに蟲毒の丸薬を無理やり飲ませて暴走させた姿なんだから♪」
飢餓の呪詛に支配されたパールヴァティは敵の血と生首を所望することしか考えられない。
今のカーリーはダークサマナーに操られているだけの傀儡に成り果てているのだ。
「ウォォォォーーーーッッ!!!」
クーフーリンが大きく跳躍しながら斬撃を潜り抜け、カーリーの頭部にまで迫りくる。
狙うのは第三の目が閉じた額であり、隙間にねじ込むようにして槍を突き刺す。
「グギャァァァァァーーーーッッ!!?」
瞼の隙間に槍を差し込まれたカーリーが咆哮を上げながら右手の剣を地面に突き刺す。
右の掌がクーフーリンに迫りながら体を掴んでしまうのだ。
「グォォォォォーーーーッッ!!!」
全身の骨が砕かれていくクーフーリンの悲鳴を楽しむようにして第三の目が開いていく。
白い結膜部分から血が流れているが瞳の部分は無事であり、クーフーリンを捉える。
しかし彼の姿を捉えた目が大きく見開いていき、何かを思い出したのか手の力が緩んでいく。
「クーフー……リン?わ……わたくしは……一体何をして……」
動揺を浮かべるカーリーの声は慈愛に満ちた女神のような声に変わっている。
その声を聴いたクーフーリンはかつての仲魔の一体の姿を思い出すのだ。
「その声……もしかしてお前は……我々と共に旅をした……パールヴァティ……?」
動きが止まっているカーリーの姿を見たマヨーネは激高しながらトドメを刺せと怒鳴り散らす。
しかし彼女は気が付いていない。
自分の背後から音もなく忍び寄ってくる影の女王に気が付くのは命を終わらされた後である。
「ガハッ……ッッ!!?」
影の槍が心臓を貫き、後ろに振り向けば怒りの形相をしたリズが立っている。
「かえでの苦しみと私の弟子の苦しみ……キッチリ返してあげるわ」
影の槍を引き抜くがマヨーネは後ろを振り向きライフル傘を構えようとする。
しかし影の槍が変化してポールアックス化した一撃がマヨーネの首を跳ね落とすのだ。
「申し訳……ありま……せ……閣下……」
地上へと落ちていく生首と一緒に胴体も蹴り落とされていく。
召喚者が倒されたことでMAG供給を断たれたカーリーがクーフーリンを落としてしまう。
藻掻き苦しむかつての仲魔を助けようとするが全身の骨を砕かれた者は立つことが出来ない。
「くそっ……仲魔のパールヴァティを殺してしまっては……尚紀に合わせる顔がない……」
「では、私が彼女を救います」
横に顔を向ければタルトが立っており、片膝をつきながら祈りのポーズを行う。
「かえでは……どうした……?」
「大丈夫、命を取り留めることは出来ました。後は彼女の呪いを解放するだけです」
「そうか……後は……任せた……ぞ……」
意識を失ったクーフーリンのためにもタルトは聖なる光を放ちながら魔法を行使する。
「あ……あぁぁぁぁ……」
常世の祈りによってカーリーの傷だけでなく様々な状態異常も回復していく。
その効果によって蟲毒の呪詛によって与えられた飢餓の呪いが解放されるのだ。
巨大な体が光を放ちながら消えていく。
その足元で蹲っていたのはあまりにも美しい女神の御姿なのだ。
【パールヴァティ】
山の娘を意味する名をもつヒンズー教の三大女神の一体であり、シヴァ神の妃。
ヒマラヤの化身であり女神の中で最も美しいと称えられる存在である。
ドゥルガーやカーリーという荒々しい一面もパールヴァティは宿す女神。
シヴァ神の妃としてそうした神格を包摂するマハーディーヴィの名で知られた女神であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「むぅ……うぅ……?」
目を開けたクーフーリンが横を向けばパールヴァティが笑顔を向けてくる。
「ありがとう…クーフーリン。わたくしの呪縛を解くキッカケの一撃がなければ殺してました」
「久しぶりだな…パールヴァティ。この世界でもお前が召喚されてたと知れば尚紀も喜ぶ」
「まぁ♪人修羅もこの世界に召喚されているのですね?ボルテクス時代を思い出しますわ♪」
「ケルベロスや暴れ猿、それにこの世界で仲魔にした者達もいる。私が連れて行ってやろう」
「勿論ついて行きます。また人修羅に続けるなんて…フフッ、わたくしの炎が必要なようね?」
「お前の強力な炎魔法はサティの頃から強力だった。再び尚紀の力になってやれ」
「勿論ですわ♪今後とも、よろしく♪」
笑顔を向け合う中、見惚れているような表情をしている女達にも顔を向けてくれる。
「ふみゃみゃ……なんて美しい女神様なんだろう……」
「ほんとよね…かえでの前世が妖精なら、レナの前世はこれぐらい美しい女神に決まってるわ」
蓮華を手にした桃色の髪とインド風の衣装姿で統一されている女神の姿は目のやり場にも困る。
透き通ったベールで編まれた服装は下着も薄っすら見えており、お腹も丸出し。
傍から見ればベリーダンサーのようにも見える美しい女神こそシヴァ神の自慢の妃なのだ。
「餓鬼の間違いだと思うけど~?」
「レナは餓鬼じゃないわよ!!お腹だって膨れてないでしょ!?」
「その代わりにオッパイが膨らんじゃったんだね……」
自分の前世がどうのこうのと喧嘩する魔法少女達を無視した者達が遠くに視線を向けていく。
見える景色には黒煙が伸びる大手メディアのスタジオが見えており、リズ達が顔を向ける。
「パールヴァティ、この子達の面倒を見てあげてくれない?私とタルトとセタンタで動くわ」
「姿は違っていてもわたくしには分かる、其方の中身はスカアハね?よくてよ、任せなさい」
「この子達では人間を殺すことは無理よ…出来ればタルトも残しておきたいけど……」
「私は大丈夫です。かつてのタルトのように血濡れた道になろうと…和泉さんを見つけます」
誰かのためなら人殺しも辞さない態度を示すタルトに対してリズとクーフーリンは怖くなる。
先ほどの戦いも悪魔を相手に戦わせたが、次は人間が相手になるかもしれない。
人を殺せば穴二つだということは戦場を生きたリズとクーフーリンだからこそ分かるのだ。
<師匠…出来る限りジャンヌを前で戦わせないようにしよう。死んだペレネルのためにもな>
<その通りね…ペレネルは生前のタルトの末路を嘆いたからこそ…この子を生み出したのよ>
念話を送り合った者達が頷き合い、南西の方角に見える大手メディアスタジオを目指す。
タルトも彼らの後をついていき、残された者達はバスターミナルの広場で立ち尽くす。
「レナ達…任せちゃって大丈夫なのかしら……」
「あそこに行っちゃったら人間を殺さないといけなくなる。だから気を遣ってくれるんだよ…」
「レナちゃんとかえでちゃんね?あの者達なら大丈夫、実力ならわたくしが保証しますわ」
「ところで、パールヴァティさんは尚紀さんの仲魔だった悪魔よね?これからどうするの?」
「仲魔と一緒に人修羅の元に行こうと思うけど…今の彼が何を目的にしてるか分からないわね」
「じゃ、じゃあ…今の尚紀さんがどんな気持ちで戦ってきたのかを私達が教えてあげる!」
「それは嬉しい提案ね♪わたくしもボルテクス時代の人修羅のことを其方達に語ってあげるわ」
浮遊しながら笑顔を向けてくるパールヴァティの態度はカーリーとは真逆である。
これから付き合うことになるなら彼女を怒らせてはならないのだと誓うレナとかえでであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
赤く燃え上がる東京の景色を独房の窓から見つめることしか出来ないのは囚われの魔法少女。
御園かりんの心は怖くてたまらない恐怖に支配されており、最悪の未来を妄想してしまう。
「あの地獄の光景を生み出すのがアリナ先輩やなぎたんだとしたら…私は…私はどうすれば…」
東京の人々が殺戮によって絶望の底に突き落とされている時、マジカルきりんはどうするか?
大好きな漫画の主役であるマジカルきりんの在り方に憧れてきた自分はどうするべきか?
答えは勿論決まっている、悪をやっつけて正義を成すのが勧善懲悪作品のいつもの答え。
「だけど…それをやっちゃったら…私はアリナ先輩やなぎたんと…戦うしかないの……」
マジカルきりんの在り方を貫いてきた矜持と、大好きな先輩達と共に在れた幸福な記憶。
それらが天秤にかけられてしまい、どちらを選べばいいのか分からなくなっていく。
「私はマジカルかりん…正義の怪盗…だけど私は御園かりん…アリナ先輩の後輩でもある…」
重い選択に苦しんでしまう彼女はベットの上に座ってしまい、頭を抱え込みながら涙を流す。
「選べない…私はこんなの選べない…ッッ!!だって…どっちも愛してやまない存在なの!!」
膝の中に顔を埋めながら苦しんでいた時、小声で呼ばれる声がしたため顔を上げてくれる。
「姐さん!!良かった…無事だったんですね!!」
「その声は……リパー君!?」
鉄格子で阻まれた窓の外を見ればジャックリパーがいてくれる。
服は無数に切り裂かれ、頭には絆創膏をばってんにして張られているが無事のようだ。
「どうやって生き残れたの…?私達はここに連れてこられて悪いサマナー達に囲まれたのに…」
「逃げ足だけは韋駄天と呼ばれたオレ様に追いつけるサマナーなんていなかったわけですぜ」
「でも…よくよく思い出してみたら、リパー君は私を置き去りにして一目散に逃げ出して…」
「うぐぅ!?その部分は思い出さないで欲しかった気分!!」
ジト目を向けてくるかりんを助けるために周囲をキョロキョロ見回しながら道具を持ち出す。
持ってきたのは独房の二階に置いてあったかりんのソウルジェムであったようだ。
「姐さんのソウルジェムを見つけ出せたのは幸運でしたが…おかしいんですよね…」
「何がおかしいの…?」
「この基地…もう誰もいなくなってるんですよ。もぬけの殻になっちまってる…」
「誰もいない…?私はここで捕まったままなのに…誰もいなくなってるの…?」
「もしかして…姐さんは最初から置き去りにされる予定だったのかもしれないですぜ」
立ち上がったかりんにソウルジェムを渡し、彼女は魔法少女姿に変身する。
左手に生み出した大鎌を振りかぶり、慌てて遠ざかるリパーの後ろでは鉄格子が切断される。
窓から這い出して脱出することが出来たかりんに近寄るリパーは小躍りしながら喜びを示す。
そんな仲魔に笑顔を向けてくるかりんであったが、おもむろに大鎌を持ち上げてしまうのだ。
「ゴフッ!!?」
つば広ハットの上から盛大にどつかれたリパーは大きなコブを作りながら目を回す。
「私を見捨てて逃げ出した罰なの」
「ウゴゴゴゴ……オレ様の目の前に星が一つ…二つ…三つ……」
「今度私を置き去りにしたら、業魔殿に連れて行って合体材料の刑なの」
「身から汁が出る怖さ!!そ、それだけはご勘弁くださ~~い!!」
ポケットからまた絆創膏を取り出してばってんの形で張り付けるリパーがかりんに声をかける。
彼女は燃え上がる東京に視線を向けたまま棒立ちしており、表情は呆然としているようだ。
「姐さん…これが最後のチャンスですぜ。このまま空を飛んで神浜に帰りませんか…?」
自分の身を心配してくれているのは分かるが、それでもかりんは首を横に振ってしまう。
「私は東京に行く…ここで逃げちゃったら…きっとアリナ先輩とは一生会えないと思うから…」
「アリナに会いに行ってどうする気ですか…?もしかして…バトルな流れになるんですか…?」
「分からないの…だけどアリナ先輩となぎたんを止めたい…こんなの絶対間違ってるの…!!」
自分の正しさだけに縛られている主人の姿を見たリパーは顔を俯けてしまう。
それでも言わなければならない言葉があるようだ。
「姐さん…その気持ちのままだったら…きっと行ったところで潰し合いになると思いますよ…」
「そ…そんなことないの!!アリナ先輩は話せばきっと分かってくれる人だと思うの…!」
「姐さんはオレ様に言ってくれた…正義のヒロインが大好きだけど…それが全てじゃないって」
「悪者だって悔い改めたらやり直せるの!だからリパー君もやり直してるしアリナ先輩も…」
「もしもですよ…アリナが自分のやっていることは
「えっ……?」
「オレ様はやり直せると言ってくれた姐さんについてきた…だけどアリナはそうとは限らない」
他人の正しさを他人が勝手に決めていいものなのか?
他人の正しさを押し付けた時点で戦争や紛争を起こすのが愚かな人類の歴史だったはず。
学校、職場、地域、宗教、思想、娯楽、そういった枠組みの中で争い合いが必ず起きていく。
その最たる原因とは他人の正しさを否定して不正解にするから結果が起きるのではないのか?
「そんなの……やってみないと分からないの!私はアリナ先輩を説得しに行きたいの!!」
「それはアリナを説得出来るという目算があっての発言なんですか…?」
「そ……それは……その……」
「目算もない、必ず説得出来る根拠もない。それじゃあ……姐さんの身勝手な理想なんですよ」
信じたい気持ちとは自分勝手な理想を信じたいだけだと尚紀は言葉を残したことがある。
かりんもまた自分勝手な理想を信じたいだけであり、アリナを疑うということをしていない。
疑うのはその人物を知る行為。
反対の信じるとは他人を知る事の放棄である無関心。
無関心によって人々が騙されて裏切られる結果を残す現実があるのだとリパーは知っている。
だからこそ人は疑うべきなのだと主人に対して強く諌言してくれるのだ。
「リパー君は……アリナ先輩が嫌いなんだね。分かった…リパー君には無理をさせられないの」
大鎌を宙に浮かしたかりんが東京に向かって飛ぼうとした時、リパーが叫んでくれる。
「やってみないと分からないじゃ
「これは賭けなんだって分かってる…。漫画家だって…続ければ必ず成功出来る保証はないの」
「なのに……どうして姐さんは進んで行っちまうんですか!?失敗が怖くないんですか!?」
感極まって泣きそうな顔つきをしているリパーのために主人は振り向いてくれる。
寂しそうな笑みを浮かべた後、自分の本当の気持ちを伝えてくれるのだ。
「私はね……漫画もアリナ先輩も大好き。
たとえ目算も根拠もなくても人は自分の理想を信じて決断を下すことは出来る。
起業家だって必ず成功出来るという目算も根拠も用意出来ないし、漫画家だって同じだろう。
せいぜいそれらしい言い訳を並べてロジックする程度であり、100%の成功率などない。
それでも進んで行けた人々を支えた気持ちこそ、
「さようなら……リパー君。私が帰れなかった時は……ランタン君によろしくね」
空に飛び立とうとした時、リパーも決断を下す時が来る。
「ま……待ってください!!姐さぁぁぁぁーーーんッッ!!!」
滑走路から離陸する飛行機のように飛び立とうとした大鎌の柄に飛びついてきたのは仲魔の姿。
「リパー君!?」
足をジタバタさせながら両手で掴まるリパーは顔を向けながら主人のために叫んでくれる。
「こうなりゃ…オレ様も姐さんを信じる!生きるか死ぬかの博打なら…姐さんに全賭けだぁ!」
「リ……リパー君……私なんかを信じてくれて……グスッ……ヒック……」
「地獄までお供しますぜ!魔法少女の道だって漫画家の道だって…どこまでもついて行くぜ!」
「うわぁぁぁぁぁ~~~~……ッッ!!!」
嬉し過ぎて泣き喚くかりんと共に仲魔もまた地獄へ向かってまっしぐら。
今のジャックリパーの気持ちもまたジャックランタンと通じるものがあるのだろう。
人は決断する時、大きな不安に襲われる。
決断のための情報には際限がないことに気が付くまで悩みながら苦しむだろう。
それでも確固たる自信があるのならば、例え間違えであっても信念を通すことができる。
そのことに気づけたのなら人は劣等感に苛まれずにありのままの姿を受け入れられるのだ。
全ての人生が正しく、全ての過程もまた正しい。
別の選択肢があったかもしれないが、だとしても全ての人生が意味を持っていた。
最終章で重要な役目があるパールヴァティをどっかで突っ込みたかったのに結局最終部にまで引っ張る羽目になりました(汗)