人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
燃え上がる靖国神社の境内ではサマナーと悪魔達の激闘が続いていく。
靖国神社の東にある招魂斎庭と呼ばれる広場ではジークフリートと機械竜が死闘を繰り広げる。
「人間如キガ再ビ我ニ挑ンデクルカ!我ハドラゴン!!全テノ財宝ヲ手ニスル者ダァァッ!!」
空中から業火を用いて攻撃するのを止めた機械竜が地上に降り立ち、剛腕の一撃を放つ。
炎に遮られて逃げ場を失っていたジークフリートに目掛けて引き裂き攻撃を仕掛ける。
「くっ!!」
跳躍して逃げると踏んでいた攻撃がクリーンヒットした一撃によって弾き飛ばされていく。
『モータルジハード』によってジークフリートは啓照館を突き抜けて相撲場に転がっていく。
強大な一撃を浴びせられたが体は肉片になっておらず、痛みも感じないまま立ち上がるのだ。
「ぬるい一撃だな。その程度では貴様から授かった不死の耐性を貫く一撃にはならんぞ」
ファフニールの血を浴びたことでジークフリートは物理的に殺すことが出来なくなった存在。
物理的な攻撃を吸収して回復する強力な『物理吸収』耐性を手にいれた英雄なのだ。
「竜になろうが所詮はドワーフの魔法使い。自慢傲慢馬鹿の内とは貴様を表す諺だ、小人よ」
ファフニールはドワーフであり、父親の財宝に目が眩んで父を殺して弟まで追放した存在。
財宝を独占したのだが財宝には呪いがかかっており、そのせいで醜悪な竜に成り果てたのだ。
「ダマレェェェェッッ!!貴様トテ!我ガ与エタ不死ノチカラデ粋ガッテイルダケダァ!!」
巨体を用いて啓照館を踏み潰しながら迫ってくるファフニールに対して剣を構える。
大きく息を吸い込んで吐き出そうとする毒ガスブレスよりも先に一撃が打ち込まれる。
「グォォォォォーーッッ!!?」
『貫く闘気』を纏った『渾身剣』がクリーンヒットしたことで竜の物理耐性を貫く。
機械の胸元に大きな亀裂が入り、後退るファフニールに対して高速斬撃を仕掛けていくのだ。
「貴様の力は有難いが、それだけで生きてきた私だと思うなぁ!!」
目にも止まらぬ霞駆けを繰り返し、ファフニールの巨体に次々と斬撃痕が生み出されていく。
「ヌゥゥゥゥゥッッ!!チョコマカトウルサイ蠅メェ!!」
大暴れしながら剛腕を振るう機械竜を翻弄しながら跳躍を繰り返し、尻尾の近くに着地する。
バルムンクを地面に突き刺し、両腕で尻尾を掴んだジークフリートが雄たけびを上げる。
「ウォォォォーーーッッ!!!」
剛腕の力を発揮したジークフリートがファフニールの巨体を振り回す程の力を発揮していく。
豪快に投げ飛ばされたファフニールの巨体が相撲場の屋根を潰しながら倒れ込むのだ。
「ウッ……ウゥ……アイモカワラズ恐ロシイ男メ。シカシ……今度コソマケン!!」
倒れ込んだファフニールにトドメを刺せるチャンスを逃すジークフリートは片膝をつく。
豪快に振り回されていた時、ファフニールの口からは毒ガスブレスが吐き出されていたのだ。
「チッ……毒ガスを吸わされたか。体の内側に対する攻撃は無効化出来ん……」
ジークフリートは外側からの攻撃は弱点部位以外は強靭でも、体の内側は弱い。
肉体に支配される彼もまた人と同じく喉も乾くし腹も減る、血が流れ過ぎれば死んでしまう。
狩りの最中に泉の水で喉の渇きを癒している隙に背後から襲われて彼は亡くなったのだ。
「全身ヲ炎デヤキツクシテヤル!!弱点部位ゴト燃ヤセバ絶命サセラレルダロウ!!」
起き上がった機械竜が迫りくるが、バルムンクを構えるジークフリートの体はふらついている。
「女ノ嫉妬トイウ毒ニ殺サレタ貴様ノ最後ニフサワシイ光景デハナイカ!存分ニ毒ヲ味ワエ!」
ジークフリートは女達の愛憎劇に巻き込まれて謀殺された者であり、女の毒を浴びた者。
毒に蝕まれて死ぬ姿こそお似合いの末路だとファフニールが息を大きく吸い込んでいく。
「私が愛する妻はクリームヒルトだけだ…ブリュンヒルトの処女を奪ったのは私ではない!!」
機械竜から放たれたファイアブレスに対して気力を振り絞ったジークフリートが跳躍する。
大きく跳躍した彼が立つのはファフニールの頭部であり、名剣バルムンクを逆手に持つ。
「オオオォォォォォッッ!!!」
機械の頭部に目掛けて一気に剣を突き立てた時、ファフニールが絶叫の叫びを上げていく。
激しく暴れて揺れ動く中、必死に剣の柄を掴みながらジークフリートは耐えている。
「あと少し…もう少し差し込めば……奴の脳みそに刃が届く!!」
巨体のぐらつきが収まるのを待っていたのが運の尽き。
「ガハッ……ッッ!!?」
巨体の動きが止まった時、持ち上げられた尻尾の先端がジークフリートの背中を貫く。
弱点を貫き背骨と心臓を潰した感触によってファフニールが勝利の雄叫びを上げるのだ。
「フハハハハァ!!ツイニ勝ッタゾ……我ハ宿敵ヲ討チ果タシタノダァァァーーッッ!!」
勝利を確信した者が盛大に勝利を喜ぶが、それこそが虚栄心の塊だった欲深き小人の弱点。
「ガッ……アッ……?」
刃の一撃がファフニールの頭部に深く刺さり、何が起きたのか分からない竜が上を見上げる。
頭部に立っていたのはジークフリートであり、死してなおトドメの一撃を放ったのだ。
「貴様……本当ニ……不死身……ダッタ……ノ……カ……?」
大きく倒れ込んだファフニールが砕け散り、MAGの光となりながら夜空を昇っていく。
相撲場に倒れ込んだジークフリートの体は貫かれた穴によっておびただしい血が流れていく。
砕けていく体ではあるが、彼は最後に夜空を見ながらこう告げる。
「すまん……私はこれまでだ。後は……頼んだ……ぞ……」
ジークフリートも砕け散り、ファフニールのMAGと共に夜空へと昇る最後を迎えてしまう。
夜空では巨大な赤い竜と激闘を繰り広げる龍神の姿が飛翔している。
「……見事であった。後は我に任せておけ」
視線を向けなくとも仲魔の激闘とその魂の輝きは感じてくれている。
仲魔の死を無駄にしないためにも、龍神ヴリトラはサマエルと死闘を繰り広げるのであった。
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【ヴリトラ】
リグ・ヴェーダに記されたナーガであり、天地を覆い隠すものと呼ばれる龍。
マハーバーラタではアスラとも呼ばれており、その姿は蛇のほか雲や蜘蛛だともいわれる。
インドラ神とは敵対関係にあり、インドラに殺される末路を遂げた存在でもあった。
「天を塞ぐ者と呼ばれる程の貴様ではあるが、何だその姿は?人間とさほど変わらん大きさだ」
天空で舞いながら激しい魔法攻撃を仕掛けていたサマエルが語り掛けてくる。
ヴリトラは巨大な龍の尻尾を生やし、袴のようなズボンの上は蛇の入れ墨をもった人の体。
白髪の長髪をオールバックにして風で揺らすその姿は二メートルを超える体でも小さく見える。
ヴリトラの名を表すのに相応しくない程の姿に対してサマエルは不快な態度を示してくるのだ。
「汝を侮っているわけではない。我はインドラに敗れた際に…かつての姿を失った者なのだ」
「その体たらくで蛇神である我に立てつくか?同じ蛇神として…恥を知れぇ!!」
サマエルが雄たけびを上げればヴリトラの周囲に無数の光の光玉が生み出されていく。
五つの目が怪しく光った時、次々と光玉が炸裂して夜空に眩い光を生み出す。
『マハンマバリオン』の一撃ではあるが、ヴリトラはさらに上昇して光の炸裂を避けている。
「次はこちらの番だぞ」
サマエルが上空を見上げれば片手を持ち上げながら天を操る蛇神が見える。
豪風が吹き荒れ、荒れ狂う天空を操る力とは『狂嵐の宴』であり、その恩恵は計り知れない。
「たとえ体は小さくとも、我が龍爪を甘く見れば細切れとなるだけだ!!」
振りかぶった腕から次々と放たれるのは『アクセルクロー』であり、真空の刃が迫りくる。
迎え撃つサマエルの目が赤く光り、真空の刃ごと相手を消し去らんとする一撃を放つ。
「ウォォォーーーーッッ!!?」
万能属性魔法のメギドラが次々と夜空で炸裂し、避け切れないヴリトラは地上に落下していく。
靖国神社の神池庭園にまで叩き落とされたヴリトラは池の中に着水するのだ。
「貴様は蛇神を名乗るに相応しい神ではない。蛇神とは天地魔界を支配する者なのだ」
ヴリトラなど眼中にないサマエルは天空を見上げながら感じている。
天使の軍勢とのハルマゲドンを乗り越えた先にある至高天を見据えていた時、雷撃が迫る。
「チッ!!」
マハジオダインの一撃がサマエルに直撃していくが微動だにせず地上に目を向けていく。
「たとえ体が小さくなろうと…我を侮ってくれるなよ」
「しつこさだけは流石だな。インドラと永遠に戦う定めを背負わされただけの蛇ではあるか」
両手を夜空に向けながらショックウェーブを放とうとするがサマエルの目が怪しく輝く。
「ぬぅ!?」
池の中で片膝をついたヴリトラの体を襲うのはあらゆる状態異常攻撃である。
「しかし貴様は誘惑に弱い蛇でもある。誘惑を得意とする我の一撃を防げまい?」
ヴリトラは和平協定によってインドラと義兄弟となるのだが、彼はインドラに謀殺された者。
美しい女神ラムバーを妻として与えられたがそれは神々の策略であり死の原因となった。
「うっ……うぅ……ッッ!!?」
体が麻痺する中、目の前に見えるのは美しい女神達の姿であり、ヴリトラは混乱してしまう。
『神の悪意』こそ人類を試す蛇に与えられた力であり、人々を惑わして堕落させる幻惑魔法。
人修羅やルシファー同様、サマエルもまた人々を惑わす力に長けた蛇であったようだ。
「甘い誘惑に抱かれながら滅びろ。我は貴様など眼中にない、もう直ぐ最終戦争が始まるのだ」
美女に囲まれながら葡萄酒を勧められる光景はまるでアダムの試練の光景を彷彿とさせる。
「またハニートラップか……何度も何度も騙される……我ではないぞぉ!!」
蛇の瞬膜の如き龍眼となったヴリトラの全身から放電現象が生み出されていく。
<<キャァァァァーーーーッッ!!?>>
全身から放つ『ショックバウンド』によって感電した女神達の幻影が消し飛ばされるのだ。
「ウォォォーーーーッッ!!!」
麻痺した体に鞭を打ち、夜空に向かって再び飛翔するヴリトラが果敢に攻めていく。
「我の誘惑を打ち破るか?フッ、それでこそ蛇神を名乗る者だ!!」
再び上空に広がっていく雷撃と光の爆発によって夜空が眩く輝いていく。
まるで神々の戦の光景に見える中、ヴリトラとサマエルが勝負に出る。
「「ウォォォーーーーッッ!!!」」
天高く飛翔していく二体の蛇が成層圏近くにまで昇っていく中、互いが最後の一撃を放つ。
「行くぞ……蛇よ!!その小さき体で我の一撃を止めてみせよぉ!!」
放たれようとするのはメギドラオンの一撃であり、迎え撃つヴリトラは咆哮を上げる。
「我こそ帝釈天インドラを滅ぼす者!!天空を支配する蛇よ!貴様も屠ろうぞ!!」
全身から混沌の波動を放ち続けるヴリトラを見たサマエルの五つの目が大きく見開いていく。
「こ……この巨大な姿は!?これがヴリトラの真の姿かぁ!!」
サマエルが見た光景とは天を覆わんとする程の巨大な蛇神の御姿。
三つの頭部には巨大な顎が備わり、大樹の如き漆黒の体から伸びるのは四つの顎をもつ頭部。
それらが腕のように振り回される光景はまさに天を塞ぐ者の名に相応しいだろう。
<<サマエル……汝を滅ぼす!!我こそが天の支配者なり!!>>
全ての顎が開いて放たれる一撃とは『灼熱の咆哮』である。
「ヌォォォォーーーーッッ!!?」
天を飲み込む口から放たれた混沌の荒波が万能特大ダメージとなってサマエルを焼き尽くす。
それだけでは済まず全身が氷結したサマエルは弱点属性を突かれたため氷の塊となる。
その姿は氷結地獄に閉じ込められたルシファーの姿を彷彿とさせる程の光景なのだ。
<<まだまだぁぁぁぁーーーーッッ!!!>>
落下する巨大な氷塊に対してさらに追い打ちを仕掛けるのは巨大な触手と化した二本の腕。
巨大な顎を広げた腕の一撃の数々が氷塊の中身ごと砕いていく。
『憎悪の暴流』によって粉砕されたサマエルは砕け散り、MAGの光となる最後を迎えるのだ。
「サマエルよ…貴様は我と同じく破れるためにある者。しかし我は太陽を滅ぼす者なのだ」
雷神であり太陽神インドラを滅ぼす者の力は凄まじいものであるが術者への反動が強過ぎる。
ヴリトラへのMAG供給を断たれたことで巨大な姿を構築出来なくなった彼もまた消えるのだ。
「蛇もまた天空神である太陽になれるか…その可能性を横で見てみたかったぞ……人修羅よ」
完全に消失してしまったヴリトラもまた敗北することとなり、神話をなぞる末路を遂げる。
残されたのはサマナー同士の意地をかけた死闘のみであった。
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互いに使役する悪魔達が激闘を繰り広げる中、サマナー達もまた全力の戦いを続けている。
「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女!!」
九字の印を素早く両手で結びながら次々と魔法攻撃を仕掛けるキョウジに対してシドも動く。
「でハ、こちらも魔法を使わせてもらいましょウ!!」
聖書を捨て、腰から取り出したのは禁忌の魔導書である。
シドの魔力が注がれればページが次々と開いていき、魔法の力を発揮していく。
炎、氷、雷、風の四属性魔法が次々とぶつかり合い、互いの一撃が相殺されていくのだ。
靖国神社は機械竜が撒き散らした業火によって本殿まで燃え上がりながら焼き尽くされる。
息をするのも苦しい中、キョウジは腰のガンベルトポーチからスモークグレネードを取り出す。
ピンを抜いて投げられたグレネードから煙幕が吹き上がり、シドの視界を奪う。
「小賢しイ……その程度で私から逃れられると思うのですカ?」
煙幕の向こう側で感じる魔力に対して一気に跳躍したシドが必殺の一撃を放つ。
「今度こそ死になさイ!!」
右手から放つ貫手の一撃がキョウジの胸部をタクティカルベストごと貫く。
しかしキョウジの口元には不気味な笑みが浮かんでおり、彼の体が一気に弾ける。
「こ、これハ!?」
弾けた体は符人形であり、膨大な数の式札がシドの体に張り付いていく。
<<急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)>>
呪文が唱えられた瞬間、式札がいばらの鎖となってシドの体を拘束するのだ。
「小賢しい手口ですネ……この程度で拘束される私ではなイ!!」
左手に持たれた魔導書が光を放ち、業火でいばらの鎖を焼き尽くす。
拘束から逃れたシドは燃え上がる拝殿前で佇むキョウジに目掛けて攻め込むのだ。
「フン……追ってくるがいい」
何を思ったのかキョウジは燃え上がる本殿の中へと逃げ込んでいく。
追ってきたシドが周囲を見れば背水の陣を敷くサマナーの姿を見つけ出す。
「格闘戦で勝てないと踏めば次は策を講じル。ネズミのようにしつこい男ですネ」
両手で素早く印を結ぼうとするキョウジに目掛けてシドが一気に仕掛けてくる。
「今度こそ貴様を殺ス!!」
獰猛な野獣の如き俊敏性で迫りくるシドが右腕を振り上げながら一気にパンチを放つ。
剛腕の一撃でキョウジの首が千切れ飛ぶのだが、式札となった幻影が消え去る。
「マヌケが」
本物のキョウジは本殿に入ってなどいない。
本殿から離れた場所で立つキョウジの右手には無線式の起爆装置が握られている。
シドを本殿に誘い込み、本物は本殿の周囲にC4爆弾を仕掛けていたようだ。
起爆装置のボタンが押された瞬間、本殿が大爆発する。
周囲の炎まで消し飛ばす程の爆発によって獲物を仕留めたかを確かめるために近寄っていく。
しかし彼の足が立ち止まり、額に冷たい汗が流れ落ちる。
「貴様ァァァーーッッ!!まともに戦う気概も見せられないカァァァーーッッ!!」
筋骨隆々の剛腕で瓦礫を弾き飛ばしたシドが立ち上がるが額には血が流れ落ちている。
片方が砕けたサングラスを指で押し上げることも忘れるほど激昂したシドが迫ってくるのだ。
(不味いな……幻蝶戯在(げんちょうぎざい)の術に使う式札も底が尽きた)
正面から相手するしかないと踏んだキョウジが印を結ぼうとするが、既にシドは懐にいる。
「ウォォォーーーーッッ!!!」
強引に掴んだキョウジの腕ごと彼を振り回し、次々と地面に叩きつけていく。
「陰陽師サマナーが蔑まれた理由も納得が出来タ!貴様らは実力もない上で卑怯者なのダ!!」
掴まれた腕の骨は握力で砕かれ、左肩も脱臼したキョウジが倒れ込む。
倒れた男に放つ怒りの蹴り上げによって体は宙を舞いながら第一鳥居の方角に飛んでいく。
「グハッ……ッッ!!!」
倒れ込んだキョウジの体はボロボロであり、全身の骨にひびが入り、内臓も破裂している。
呻き声を上げながらも立ち上がろうとする彼に対して怒りのサマナーが迫ってくるのだ。
「サマナーとしての矜持すら持たない貴様がよくもキョウジなどと名乗れル。狂い死ぬがいイ」
その言葉はキョウジの逆鱗に触れるもの。
キョウジという名を狂い死ねと表すことだけは許せない彼もまた憤怒の形相と化す。
「確かに俺は狂った道化だろう…それでもな…ジョーカーとしての誇りを持って生きてきた!」
動く右腕を持ち上げながら構える男はプライドをかけた戦いを挑もうとしている。
そう判断したシドは魔導書を投げ捨て、両手をポキポキ鳴らしていく。
「ならばそのプライドを叩きつけるがいイ。もっとモ、脆弱な陰陽師の拳など痛くはなイ」
掌を揃えながら水平に向けて構えるキョウジに対してシドもフットワークを駆使していく。
流れるような動きに対して手負いのキョウジは死中に活を求める構えを崩さない。
「……行きまス」
一気に動いたシドの連続蹴りを片手で払い、続く後ろ回し蹴りが上半身を逸らして避ける。
カポエイラだけでなく手わざも駆使するようになったシドが攻め込む。
右上腕、右肘を巧みに使って手わざを払うが肘打ちが側頭部に決まってしまう。
「くぅ!!」
怯んだキョウジを掴みながら投げ飛ばし、倒れ込んだ男に目掛けて側転の勢いを利用して跳躍。
起き上がるキョウジに目掛けてドロップキックを放たれたことでさらに倒れ込む。
「まだ……だぁ!!」
苛烈なシドの攻めに対して後退りながら攻撃を捌くキョウジは靖国神社の境内へと戻っていく。
「ウォォォーーーーッッ!!」
右回し蹴りに対して片手を地につけるシドが放ったのはメイアルーアジコンパッソの一撃。
低空から放たれた後ろ回し蹴りがカウンターで決まったキョウジがきりもみしながら倒れ込む。
虫の息になった者に対してシドは投げ捨てていた聖書を拾って銃を取り出す。
「これまでですネ。私に手傷を負わせる程度の力はあってモ…所詮は道化の足掻きでしタ」
迫りくるシドがトドメを刺さんとするが、もはやキョウジは立ち上がる余力も見せられない。
何より彼を苦しめているのはヴリトラが真の姿を解放したために膨大なMAGを奪われるせいだ。
「くそっ……ヴリトラの奴め。膨大なMAGを奪いやがった代償は高くつくぞ……必ず勝て……」
倒れ込んだキョウジの横に立ったシドが銃口を向けてくる。
「さァ、チェックメイトでス。それともまだ欺く手口を隠されているとでモ?」
「いいや……完全にネタ切れだ。貴様の勝ちだな……好きにしろ……」
「フッフッフッ……ようやくですカ。今度はしくじりませン……確実に殺ス」
拳銃の引き金が引かれようとした瞬間、シドは上空を見上げていく。
サマエルとの繋がりが消えたことで最強の悪魔を倒されたことに気が付いたのだ。
「バカな……私のサマエルが負けただとぉ!?」
「よくやった……ヴリトラ!!」
最後の力を振り絞りながら右足を蹴り上げ、拳銃が握られているシドの手を蹴り飛ばす。
拳銃を弾かれたシドがキョウジに振り向けば腕の力と蹴り足の振りで起き上がっている。
立ち上がったキョウジの近くには七星剣が刺さっており、彼は右手で剣を掴む。
「運が味方をしてくれたようだな…これが最後の悪足掻きだ。付き合ってくれよ」
怒りの形相と化したシドが雄たけびを上げながら迫りくる。
息を大きく吸い込んだキョウジの目が据わり、これが最後だと自分を奮い立たせるのだ。
「悪足搔き程度で……私が倒されるものカァァァァァッッ!!!」
左のハイキックを右肘で弾き、続く右ミドルキックに対して左側に踏み込む。
「グフッ!!?」
七星剣の柄頭でサングラスを殴りつけ、ガラスで片目が潰れて怯んだ相手に振り向く。
「五芒星を正しく扱い…五芒星に支配されない者こそが……陰陽師だぁぁぁーーッッ!!」
引き絞られた七星剣の先端が一気に放たれ、シドの上半身に描かれた五芒星を貫く一撃となる。
「ガッ……アッ……バカ……ナ……ッッ!!!」
胸部を刺し貫かれたシドが倒れ込み、最後まで立っていたのはキョウジの姿。
トドメを刺すためにライフル銃を片手で拾った彼がシドの前に立つ。
「貴様のセリフをそのまま返すぜ……最後まで立っていた者が強者だ」
「我ガ……偉大なル……魔王の御名の元ニ……命ずル……」
左手を持ち上げながら放とうとする魔術は相手の魂を肉体から分離させるシドの秘儀。
しかし秘儀が完成されるよりも先に決まるのは銃を構えた者の一撃なのだ。
「……あばよ」
発射された銃弾がシドの額を撃ち抜き、額の五芒星に風穴が開く。
持ち上げた左手が地に落ち、ついに最強のダークサマナーが倒される時がきたのだ。
「フン……ジョーカーは使うべき時には使っておけ。だから……そう……な……」
後ろ側に倒れ込んだキョウジも動けなくなり、かすれていく意識の中で夜空を見上げる。
「ここまで……だな……後の始末は……貴様がつけるが……いい……人……修羅……」
震える右手でスーツの内ポケットから取り出すのは煙草の箱。
クシャクシャの箱を口元に近づけ、最後の一本を咥えるがそこで力尽きてしまう。
右手を倒しこんだキョウジの意識も途絶えてしまい、口元に咥えた煙草もまた転がっていった。
ヴリトラのデザインは真女神転生5もいいんですけど、個人的にはアバタールチューナーのヴリトラデザインの方が好きなんですよねぇ