人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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288話 白兎といかれた帽子屋

靖国神社の隣にある市ヶ谷橋を超えれば直ぐそこに防衛省が見える。

 

ユダと十七夜達が襲撃を仕掛けている防衛省は黒煙が上がっており、正門は破壊されている。

 

内部に突入した革命部隊を迎え撃ったのはデモニカ部隊ではあるが劣勢のようだ。

 

<<うわぁぁぁぁぁーーーっ!!!>>

 

乗り捨てた車で埋められた道路を無理やり乗り越えてきたバギー部隊が攻撃を仕掛けていく。

 

チャボルズM3に備わった榴弾銃で狙いをつける造魔兵が次々と榴弾を撃ち込む。

 

防衛省に配置されたデモニカ部隊は次々と爆発で吹っ飛びながら死んでいくのだ。

 

上空からはロシアの攻撃ヘリがホバリングしながら機銃攻撃を仕掛けている。

 

防衛省のそれぞれの庁舎ビルで地上を狙うデモニカ兵は機銃に撃たれて肉片と化していく。

 

「上から狙われる心配はなくなった!それぞれの部隊は庁舎ビルを制圧しろ!!」

 

AからFまである庁舎ビルに目掛けて造魔兵達が次々と突撃していく。

 

「十七夜君達は中央の庁舎A棟を制圧してくれ」

 

「了解した」

 

「君が持つその赤旗こそ我らの革命を表す色だ。庁舎A棟の屋上に突き立てて制圧を示せ」

 

「そうしよう。この旗こそ自分の願いが込められている…それを防衛省に打ち付けよう!」

 

赤と黒で彩られた十七夜の旗には装飾された三日月とその上に刃の王冠が描かれている。

 

弓月より分かれて生まれたのは太陽を表す神王であり、太陽神ルシファー崇拝のシンボル。

 

彼女もまた魔女に至る魔法少女であった者であり、魔女と同じく太陽崇拝を掲げる者だった。

 

「いくぞお前達!!自分について来い!!」

 

<<了解!!>>

 

指揮官のユダの命令を受けた十七夜達が防衛省の中央棟に目掛けて突撃していく。

 

進撃する兵士達と爆死したデモニカ部隊に視線を向けるユダは不気味な笑みを浮かべるのだ。

 

「道化共め。君達の尊い犠牲こそが次の世界を形作る生贄となってくれるのだ」

 

東京を包囲するデモニカ部隊の本陣では造魔との交戦データが次々と収集されている。

 

東京で戦わされているデモニカ部隊は戦闘データ収集のために配置された捨て駒部隊。

 

彼らの実戦データがフィードバックされたデモニカスーツはさらなる進化を遂げるであろう。

 

「くらえぇぇぇーーーーッッ!!!」

 

赤く帯電させた十七夜の右手から放つのはジオンガであり、中央棟の入口に目掛けて放たれる。

 

<<グワァァァァァーーーーッッ!!!>>

 

電撃放射によってバリケードが破壊され、突破口が作られた入口から次々と造魔兵が侵入する。

 

左肩に旗槍を担ぐ十七夜も中央棟に入り込み、内部で激しい銃撃戦が繰り広げられていく。

 

事務用品でバリケードを作っている通路に目掛けて造魔兵達も魔法を行使。

 

<<ギャァァァァァーーッッ!!!>>

 

アギラオの火球が次々とぶつかったことでバリケードは炎上してデモニカ部隊ごと焼き尽くす。

 

ルームサーチしながら素早くクリアリングしていく造魔兵達の間を通るのは部隊長の十七夜。

 

彼女は頼れる味方部隊を見回しながらも動揺の色を隠せなくなっているようだ。

 

「こいつらは何なんだ…?どうして悪魔の魔法が使える…?その戦闘技術は何処で知った…?」

 

日本を憂う市民達が武装して立ち上がる革命なのだと聞かされてきた作戦内容と違い過ぎる。

 

違和感を拭えない彼女であったが、それでも暴力革命が始まった以上は進む以外にないのだ。

 

「この作戦が終わったらユダさんやアリナ達を問い詰める必要がありそうだな……」

 

自分は騙されてるのかもしれない恐怖心に支配されながらも彼女は駆けていく。

 

程なくして防衛庁の中央棟の屋上には制圧を示す赤旗が突き立てられることとなった。

 

……………。

 

国会議事堂の前でも激しい戦いが繰り広げられており、デモニカ部隊は劣勢である。

 

支援に現れた攻撃ヘリやバギー部隊の援護攻撃によってバリケードが破壊されてしまう。

 

「これより突撃する!!国会議事堂を制圧せよ!!」

 

次々と内部に突撃していく造魔兵達を見下ろすのは衆議院第一議員会館の屋上にいる面々。

 

雪野かなえと安名メル、そして持参したカメラで戦場撮影を続ける観鳥令であったのだ。

 

「あの革命部隊の中には十七夜さんの魔力がありませんでしたね…」

 

「十七夜は別の場所を攻めているのか…?情報が少な過ぎる…」

 

「だったら…いっそのことあの連中を尋問してみます?」

 

「それしかないかも…手荒いインタビューになると思うけど…情報を引き出すしかない」

 

戦場を撮影し続けている令であったが、風圧を感じた彼女がカメラを上に向ける。

 

上空でホバリングしているのは国会議事堂を襲撃する部隊を掩護しにきた攻撃ヘリなのだ。

 

「コマンドポスト、こちらアリゲーター10。未確認の悪魔娘達を発見した、指示を問う」

 

「我々以外の悪魔ならば敵だと認識しろ。速やかに排除するがいい」

 

「了解。これより攻撃を開始する」

 

攻撃してくると判断した悪魔娘達がビルの屋上から飛び降りる。

 

搭載された空対地ミサイルが発射されたことで衆議院第一議員会館が破壊されてしまう。

 

瓦礫が次々と地上に落ちていく中、避難出来なかった民衆達が潰されていく。

 

潰された人々に顔を向けながら青ざめた表情をするメルに対してかなえと令が吠えるのだ。

 

「今は救出活動を行っている余裕はない!悔しいけど…あたし達にはあたし達の目的がある!」

 

「人道精神に縛られてばかりじゃ救える人すら救えなくなる!鬼になって決断するしかない!」

 

「これがトロッコ問題なんですね…本当にごめんなさい…恨んでくれて…構いませんから!!」

 

攻撃ヘリやバギー部隊の猛攻撃を避けながら造魔兵達が突撃した国会議事堂へと走っていく。

 

瓦礫の隙間では助けを求める人間達の手が伸びており、子供まで混ざっている。

 

血塗れになりながら助けを求める者達を見捨てる光景を例えるなら登山の遭難現場だろう。

 

二次被害を防ぐためには滑落して助けを求める人達すら見捨てなければならない時もある。

 

非道な決断を背負わなければいけない少女達の顔は悔しさと無念で歪んでいった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おーおー、派手にやってくれるねぇ。お陰様で俺達も騒ぎに便乗出来るし大助かりだぜ」

 

東新宿駅近くのビルから地上の地獄を見下ろすのはヴァンパイア悪魔達である。

 

口元には血が滴っており、騒ぎに便乗して人間達の血を吸い上げていたのだろう。

 

「関西の方に行った連中は大損だよなぁ。東京で縄張りを作ろうとした俺達は儲けもんだぜ」

 

「違いねぇぜ。お陰様で大量の子分を手に入れることが出来たからなぁ」

 

上空を見上げれば召喚された悪魔達が未だに地上を焼き払っており、狂喜乱舞している。

 

シドが死んだことでダークサマナー達の指揮系統が乱れてしまい、統制がとれていないのだ。

 

「あん?この魔力はたしか……アイツらか!?何であのクソアマ共が東京にいやがる!?」

 

ヴァンパイアの一体が感じた魔力とは神浜で逃した獲物である十咎ももこと八雲みたまの魔力。

 

彼女達は新宿区エリアを担当したこともあり、近くの防衛省に目掛けて走っていくのだ。

 

「丁度いいぜぇぇぇぇ……あいつらも騒ぎに乗じてぶっ潰してやる!!」

 

「新しいクルースニクとの因縁も、今夜をもって終わらせてやるぜぇぇぇぇ!!」

 

貴族風の衣装を纏うヴァンパイア達がマントを広げながら飛翔していく。

 

彼らと共に飛び立つのはストリゲスであり、地上では屍鬼の群れを率いるストリゴイイもいる。

 

彼らが向かうのはももこ達が避難民を掻き分けながら走っている薬王寺坂通りなのだ。

 

「ちくしょう!!革命部隊も悪魔共も好き放題東京を破壊しやがってぇ!!」

 

逃げ惑う人々を潜り抜けながら走るももこは怒りの形相を浮かべながら苦しんでいる。

 

空を飛び交う悪魔や戦闘ヘリを潰したい気持ちに駆られているが、彼女にも役目があるのだ。

 

「落ち着きなさい、ももこ!いくら私達でも広域に展開された部隊の対処は無理よ!!」

 

「だ、だけど…目の前で大勢の人が殺されてるんだぞ!!見捨てたら正義の魔法少女失格だ!」

 

「尚紀さんは言ってたわ!全てを救う力なんて国家元首だろうと神だろうとないんだって!!」

 

「そ…それは……」

 

「私も貴女も体は一つなのよ!一つだけの力を何処に向けなければならないかを考えて!!」

 

「みたま……」

 

冷静になろうとしているが顔を横に向ければ唇を噛んで辛そうにしているみたまがいる。

 

彼女の脳裏に浮かぶのは神浜テロの光景であり、あの時の彼女は呆然としながら歩くばかり。

 

目の前でガラスの破片を浴びた少女を見つけても憎しみを吐き出しながらざまぁみろと言う。

 

憎しみに支配された頃の彼女は誰も救えず見捨てることしかしていない。

 

今も同じことをしている気分に陥ってしまう彼女の表情は悔しさと無念でいっぱいなのだ。

 

「ごめんな…みたま。辛い気持ちはそっちの方が大きいのに……」

 

「いいのよ…ももこ。私達に出来ることは一刻も早く十七夜とかりんちゃんを見つけることよ」

 

「そうだな……辛い決断だけど考えを切り替えなきゃダメだよな……」

 

1・28事件の頃の尚紀と同じ苦しみの決断をした時、空から現れる存在に気が付く。

 

「あ、あいつらは!!」

 

嘲笑いながらホバリングするのは神浜で逃したヴァンパイア悪魔達である。

 

「ヒャハハハハ!また会ったな、クルースニク!今夜こそ貴様との因縁にケリをつけてやる!」

 

「お前達も東京で暴力革命をやろうとしているのかぁ!?」

 

「革命?そんなの知ったことかぁ!!東京に縄張りを築いて好き勝手にやってただけさ!!」

 

「俺達悪魔はアナーキーだ!無政府状態こそ悪魔のパーティ会場!楽しまないと損だろ!!」

 

「こいつらはあの時に逃した吸血鬼共ね…今度こそ逃れられない死を与えてあげる!!」

 

「あの時のメンツの全員ってわけじゃねーよ。俺達は関東の方角に飛んでいったグループさ」

 

「関西の方に飛んでいった連中もいずれは戦力を整えて報復にくるぜ。地獄が始まるのさ!」

 

「日常で幸福に生きられると思うなよ、クルースニク!テメェは死ぬまで報復されてろぉ!!」

 

ヴァンパイア達はマンションの屋上へと飛んでいき、ついて来いと挑発してくる。

 

ももこに視線を向ければ覚悟を決めた表情をしており、非常階段に昇れる路地裏を目指す。

 

「やっぱりアタシは悪魔を放置出来ない!こいつらを放置すれば大勢を吸血鬼にしてしまう!」

 

クルースニクの記憶を宿すももこの脳裏には多くの人が吸血鬼にされてしまった光景が浮かぶ。

 

新たなクルースニクとなった彼女は先代の怒りを燃やしながら吸血鬼と戦う者になるのだ。

 

「非情になりきれないところがももこらしいわね……だけど、私はそんな彼女を支えるわ!」

 

それぞれがそれぞれの正しさを持っており、決断内容だって違ってくる。

 

自分の正義に妥協出来ないももこの選択も正しく、感情に流されず非情になる者達も正しい。

 

全ての人生が正しく、全ての過程もまた正しいのだと示すために彼女達は悪魔変身する。

 

異界が構築された路地裏に立つのは大量の白木の杭をベルトに固定して武装したももこの姿。

 

ヴァンパイアハンターと共に立つのは常闇の世界を生きる淑女であり、死神となる道化師。

 

「ぶっ殺してやるぅぅぅーーッッ!!!」

 

路地裏の壁を蹴りながらキリングステップを繰り出すストリゴイイが迫ってくる。

 

後ろからは大量の屍鬼が群れを成しながら襲い掛かってくるのだ。

 

「死ねェェェェーーーーッッ!!!」

 

爪で引き裂かんとみたまを狙うが、俊敏に動くストリゴイイが見える彼女が顔を向ける。

 

「遅いわね」

 

鈍化した世界。

 

ストリゴイイが見たものとは、喪服のトーク帽に備わるベールの奥に見えた悪魔の魔眼。

 

瞬膜となった魔眼から放たれたのは即死魔法の『ヘルズアイ』なのだ。

 

「グギャァァァァァーーッッ!!?」

 

敵単体を即死させる魔眼魔法を浴びたストリゴイイが呪殺の光に飲まれて即死する。

 

群れを成して迫りくる屍鬼に対してはももこが手にする十字架の武器が薙ぎ払うだろう。

 

「屍鬼にされた人達に救いの手は届かない…それでも!シスターとして出来ることはある!!」

 

柄から上はY字を描くように曲がった十字架を地面に叩きつければ業火の柱が次々と打ち上る。

 

<<ウギャァァァーーッッ!!?>>

 

ゾンビの如き醜悪な姿にされた人々は清めの業火によって命を終わらせることとなるのだ。

 

「これがクルースニクさんが背負ってきた苦しみか…何の罪もない人達まで殺すだなんて…」

 

「あの人も多くを救おうとしたけれど出来なかったと思う……彼だって体は一つだけなのよ」

 

「尚紀さんもクルースニクさんも多くを守れない…正義を気取っても出来ることは限られるね」

 

「全てを背負う事なんて誰も出来ない…それでも小さな手で受け止めれる人達は救いましょう」

 

「うん…そうだね。アタシ達の両親だって…多くを救えなくてもアタシ達を守ってくれたんだ」

 

自分の限界を見極める者達は自分達の出来る範囲で正義を成そうとするだろう。

 

それは登山で遭難した人々も同じであり、自分の限界を見極めながらも最善を尽くそうとする。

 

それでも決断を下した人々の結果だけを切り取った結果論主義者達はその人達を悪者にする。

 

全員を救わず見捨てた連中に正義を名乗る資格はないと自分を棚上げして罵倒するのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

国会議事堂に侵入しようとしたかなえ達ではあるが、そんな彼女達に視線を向ける者達がいる。

 

正確に言えば同一存在であり、彼女達に視線を向けていたのは二体の魔人アリスなのだ。

 

「魔法少女なのかなーと見物してたけど…アリスと同じ悪魔だね、あの子達?」

 

「だけどアリス好みのカワイイ女の子達だし、オトモダチになりたいかも♪」

 

「フフッ、よ~し!あの子達を奪っちゃおうかな♪」

 

「そうしよう♪そうしよう♪」

 

独り芝居であっても分霊同士で行えば不気味な光景である。

 

同一存在であるアリス達が国会に入れる入口に手をかざせば異界が開いていく。

 

「「「えっ!!?」」」

 

かなえとメル、それに令達はアリスが開いた異界へと飲み込まれてしまうのだ。

 

<<うわぁぁぁぁぁーーーっ!!?>>

 

まるでうさぎの穴にでも落ちるかのようにして真っ逆さまに落ちた少女達が地面に倒れ込む。

 

「いたたた……凄く高い場所から落とされたみたいですけど、痛いぐらいで済んでますよね?」

 

「小枝と枯れ葉の山に落ちたみたい……これがクッションになってくれたんだよ」

 

「まるで絵本のような異界だね……こういう絵本内容を観鳥さんは小さい頃に読んだ記憶が…」

 

暗い通路を進んでいくと扉の隙間から光が伸びているので扉を開けてみる。

 

すると奥に長く天井が低い通路に出た3人が顔を見合わせながら何かを思い出す。

 

「思い出した…この光景はルイス・キャロルが描いた不思議の国のアリスだと思うよ…」

 

「ま…まさか、この奥で待ち構える敵って…白兎とマッドハッターとかじゃないんですか…?」

 

「あたしも小さい頃に図書館で読んだけど…内容はメルヘン過ぎて合わなかったな……」

 

一番奥の扉を開けると豪華な食堂空間に出た事で3人が奥に視線を向ける。

 

鋭い目つきが送られる机の向こう側では豪華な椅子に座った2人の少女達を見つけるのだ。

 

「いらっしゃいませ♪アリスの世界へようこそ」

 

「お姉ちゃん達は喉が乾いてない?美味しい紅茶を淹れさせたから飲んでいくといいよ♪」

 

座っているのはアリス達であるのだが、頭に身に着けたものに目がいってしまう。

 

右はバニー衣装で身に着ける兎耳ヘアバンドを纏い、左は黒のトップハットを頭に纏うのだ。

 

「魔力からしてボク達と同じ悪魔ですけど…ウサギさんとマッドハッターのマネですか…?」

 

「本物のウサギさんを連れてきても良かったけど、狩りをしてたら死んじゃったんだよねぇ」

 

「黒おじさんがいてくれたらマッドハッター役をしてくれたと思うけど、今日はお忍びなの」

 

「不気味な子供だね…見た目が同じだということは分霊を用いて分身してるんだと思うけど…」

 

「アリスっていうんだね?あたし達は急いでるんだ。アナタ達とお茶会をしている暇はないよ」

 

「え~?それだとつまんない!アリスはね、カワイイ魔法少女のオトモダチを沢山作りたいの」

 

「ボク達はもう魔法少女じゃなくなってしまいまして…今は同じ悪魔少女だと思いますけど…」

 

「そうみたいだね~、残念だな~…同じアンデット同士仲良くなれると思ったのに…」

 

「悪魔になったなら魂は体の内側なんだよね?だったら……ウフフ♪」

 

不気味な笑みを浮かべながら立ち上がったアリス達を見るメルは即座にトートの書を生み出す。

 

「メル!?」

 

かなえと令の制止を無視してマハラギオンを放ったことで大量の火球がアリスに飛んでいく。

 

<<キャァァァァーーーーッッ!!?>>

 

燃え上がるアリス達が倒れ込んだ光景を見たかなえと令が何故こんなマネをしたのかを問う。

 

「ボクの未来予知が教えてくれました……この子達は恐ろしい悪魔なのだと!」

 

悲鳴を上げながら転がっている二体のアリスであったがそれは演技。

 

不気味な笑い声が周囲から放たれたことで大きな食堂が開いていく。

 

箱が内側から四つに分かれるようにして広がった景色に視線を向ければ庭園が広がっている。

 

燃えた死体に駆け寄ったかなえと令が確認すれば大きなキングカードの燃えカスだったのだ。

 

「お姉ちゃんは勘がいいのかな?それとも何かの魔法の力?」

 

「魂を内側に戻せた魔法少女達なら、もう一度殺してアンデットに戻してあげたのにね~」

 

浮遊するメリーゴーランドの馬に乗っているのはアリス達であり、護衛の騎士達までいる。

 

11体のダイヤのカード、11体のクラブのカードで作られたトランプの使い魔達のようだ。

 

「物騒な子供だね…一つ質問していいかい?君は東京の暴力革命に関与する悪魔なの?」

 

「それを教えてあげたらアリスのオトモダチになってくれる?」

 

「内容次第かな……いい情報を与えてくれるなら観鳥さん達も悪くはしない」

 

「じゃあ教えてあげるね。アリスはこの暴力革命の指揮を執る人達の娘なの」

 

「だったら十七夜の居場所だって知ってるはずだ……十七夜の居場所を教えて欲しい」

 

「最初の質問は答えてあげたんだし、今度はお姉ちゃん達がアリスのオトモダチになる番だよ」

 

不敵な笑みを浮かべたアリス達が片手を持ち上げて号令をかけようとする。

 

トランプの兵達は槍を構えながらいつでも突撃する構えを行う。

 

「これが友達を作る態度なんですかぁ……?ボクより年下なのに怖いお嬢ちゃんですね…」

 

「答えたくないなら最初の情報だけで構わない。アナタを仕留めて情報を吐かせてみせる!」

 

「悪いけど観鳥さんだって友達は選びたい。とくに相手を殺して奪おうとする人は遠慮するよ」

 

武器を生み出して構える悪魔達を見下ろすアリス達は不気味な笑みを浮かべながらこう告げる。

 

「お姉ちゃん達、約束は守ってもらうよ。今からお姉ちゃん達はアリスのもの。だからね……」

 

――()()()()()()()

 

アリスの言葉を合図にしたトランプ兵達が急降下して串刺しにせんとする。

 

迎え撃つ悪魔娘達は謎の魔人との戦いを始めていき、情報を引き出すために奮戦していった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」

 

22体のトランプ騎士であろうと相手の体は紙であり、炎を得意とするかなえの敵ではない。

 

燃え上がる魔槍ルーンを豪快に振り回す彼女の一撃によって次々と騎士達が打ち倒される。

 

空を飛翔しているアリス達を相手するのはメルと令であり、彼女達は武器を振るっていく。

 

「君がイルミナティを導く立場だというなら、必ず捕まえて情報を引き出してやる!!」

 

ゲーデの乗馬鞭を振るう令が放つのはマハブフダインであり、空から巨大な氷塊が落ちてくる。

 

馬の乗り物を操るアリスは飛翔しながら氷塊を避けるが、すかさずメルが追い打ちを狙う。

 

「将を射んとする者はまず馬を射よって諺がありますよね?効果があるか試しますよ!」

 

浮遊しながら魔導書のページを展開するメルが放つのはマハザンマであり、真空刃が放たれる。

 

「「キャァァァァーーーーッッ!?」」

 

馬の乗り物を切断されたアリス達が空から落ちてしまうが、ゆっくり浮遊しながら着地する。

 

「お姉ちゃん達は魔法が得意な悪魔なんだね?」

 

「だったら、今度はアリスの魔法を見せてあげる」

 

邪悪な怨念の如き魔力を全身から吹き出すアリス達が同時に構える。

 

放たれたのは呪殺魔法のマハムドオンであり、呪殺魔法陣が地面に描かれていく。

 

「そうはいきませんよ!」

 

魔力でトートの書を操るメルが放つのはマカラカーンであり、呪殺魔法を反射する。

 

しかし呪殺を吸収するアリスには反射された一撃が通用しないようだ。

 

「呪殺魔法は通じないか…参ったな。死神ゲーデと融合した観鳥さんの得意属性なのに…」

 

「足りない部分はボクがカバーします!ありったけの力を出さないと彼女には勝てません!」

 

アリス達を分断するために果敢に攻め込むメルと令に対して笑顔を浮かべた彼女達が消失する。

 

<<鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪こうやって煽るんだってウサギさんから教わったよ>>

 

彼女達の声がする方に走っていけば鏡の館と呼ばれる場所へと辿り着く。

 

中に入ってみれば遊園地のミラーハウスのような構造であり、2人は道が分からなくなる。

 

「何処に行ったんだ…こういう鏡屋敷は昔から迷い易くて嫌いなんだよね…」

 

自分が複数の鏡に映っていくのだが視線を向ければ黒のトップハットを纏うアリスの姿となる。

 

「貴女は情報に拘るよね?胸元にぶら下げてるカメラもあるし、もしかしてジャーナリスト?」

 

「その卵ってところかな?独占インタビューがしたいんだけど…アポなしで大丈夫?」

 

「フフッ…聞きたいことがあるの、ジャーナリストさん。情報ってさ…()()()()()()()()()()

 

それを問われた時、返す言葉が見つからずに固まってしまう。

 

不安に駆られる令を囲うようにして鏡に映るアリス達が不気味に笑いながらこう告げてくる。

 

「人々が欲しがっているのはいつだって変わらない。パンとサーカス……そして()()()だよ」

 

「安心感……だって……?」

 

「寄らば大樹っていうでしょ?個人で情報を発信したって人々は大手情報局に流されるんだよ」

 

「観鳥さんのように肩書もない個人の情報なんかじゃ…安心は得られないって言いたいの…?」

 

「聞きたいのは権威ある情報。SNSもそれは同じ。大きい数字のアカウントだけに人が集まる」

 

「戦前も同じだった…個人で戦争反対を叫んだって…皆は大本営ラジオしか信じなかった…」

 

「聞かせるだけで人々は簡単に誘導出来る。今だって観たい聞きたい話だけを消費するよね?」

 

「聞きたくもない話を語ったところで人々は不機嫌になる…心理学の認知的不協和が起こる…」

 

「安心出来る権威主義に導かれて人々は誘導を鵜呑みにする。権威がデマと言えばデマになる」

 

「そうだ…そうなんだよ…観鳥さんがいくら頑張ったって…皆が観鳥さんをデマ屋にする…」

 

「上からデマだと聞かされた人々は自分でデマの中身を調べる?調()()()()()()()それが答え♪」

 

東京でいくら頑張って戦場カメラマンを務めても誰も彼女の情報なんて信じてくれない。

 

現場写真を証拠として持ち出したところで信じない現象ならば葛葉ライドウも経験している。

 

寄らば大樹な人間達は何千年過ぎようとも見たいものしか見ないし、信じない偏見生物。

 

努力なんて無駄だから権威に迎合してしまえ、それが保身の条件だと誘惑されてしまう。

 

「虐められて辛かったでしょ?アリスのオトモダチになれば権威側だよ♪虐め返してやろうね」

 

大事なカメラを抱えながら震え抜く令に対して鏡のアリスが伸び出てくる。

 

いかれた帽子屋に扮するアリスは優しく彼女の両肩を抱きしめながら顔を側頭部に近づける。

 

可憐な少女の見た目であるが、彼女は女王となれる者として英才教育を受けてきた悪魔少女。

 

人間の心の隙間に入り込んでマインドコントロールする手腕も兼ね備えた恐ろしい娘なのだ。

 

心を支配されそうになった時、観鳥令の脳裏に尚紀の言葉が蘇る。

 

――自分を我慢し続ける人生など死んでいるも同然だ。

 

――人生は楽しんだ者勝ちだ。他人の評価に囚われずに、納得のいく人生を生きろ。

 

「諦めて我慢を選ぶ人生は死んでいるも同じ…他人に囚われずに納得のいく人生を生きる…」

 

全てを諦めて不貞腐り、他人をバカにしながら自己完結する空しい人生。

 

そんな死んだ心になってしまうなとジャーナリストに憧れた少女を応援してくれた男がいる。

 

「観鳥さんは…他人に囚われない。善悪に関係なく自由な報道をする事を……信じたい!!」

 

周りの同調圧力に屈して流される者にはならないと覚悟を決めた彼女がアリスを振り払う。

 

鏡の中に逃げ込もうとする彼女に目掛けて令は乗馬鞭の一撃を放つのだ。

 

「キャァ!!?」

 

黒のトップハットを鞭で叩き落とされた彼女は鏡の中で怒りの形相を浮かべてくる。

 

「アリスの言葉を拒絶する貴女なんて嫌い!アリスに従わない魔法少女は消してあげる!」

 

鏡の中で膨大な魔力を練り上げていくアリスに対してメルの念話が聞こえてくる。

 

<この鏡屋敷にいる限り彼女に翻弄されます!ここは一気に殲滅しますから合わせて下さい!>

 

<了解!!>

 

乗馬鞭を振り上げる令は魔力を鞭に収束させていき、メギドの光を生み出していく。

 

それはメルも同じであり、宙に浮かべたトートの書が高速で開きながら魔力が噴き上がる。

 

「「消し飛べぇぇぇぇーーーーっ!!!」」

 

メギドの光が解放されたことで鏡の屋敷はいかれた帽子屋に扮したアリスごと消滅していく。

 

「あの子達はメギドの光まで操れるだなんて…流石に私独りだと分が悪いかも…」

 

吹き飛んだ鏡屋敷から脱兎の如く逃げ出したのは兎耳を身に纏うアリスの分霊。

 

しかし柔らかい感触で阻まれたことで上を見上げれば雪野かなえが笑顔を向けてくる。

 

「トランプの騎士達は全員始末した。十七夜の情報を吐いてもらうよ」

 

「アハッ……ハハハ……これってもしかして、お尻ぺんぺんな流れぇ!!?」

 

「イグザクトリー」

 

逃げようとする彼女を背後から掴んだかなえが膝に抱き込む形でお尻ぺんぺんしていく。

 

「いたいいたい~っ!!私にこんなマネをするなんて赤おじさんと黒おじさんに殺されるよ!」

 

「そいつらの情報も吐いてもらう。パンツが履けないぐらいお尻が腫れ上がる前に吐くんだ」

 

「ご……ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!!」

 

滝のように涙を流して謝る白兎なアリスの元へと令とメルもやってくる。

 

さっきまでの恐ろしい姿の中にもこんな愛らしい姿もあるのだと感じた令が笑顔となる。

 

「フフッ♪やっぱり()()()()()()()ね。そのシャッターチャンス、もらったぁっ!!」

 

カメラを構えた令に恥ずかしい写真まで撮影されたアリスは赤面しながら泣き喚く。

 

洗いざらい吐かされた分霊は形を成すのも嫌になり、本霊に帰るようにして消えていった。

 




漫画デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビトに登場するアリスは歴代で最高にカワイイアリスなんすよ…(偏見)
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