人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
足立区及び首都高速における無差別テロ事件ニュースが連日報道さていく。
しかし警察関係者は有力な目撃証言を得られていない。
戦場となった現場の証言は曖昧なものであり、捜査は難航。
漠然としたニュースにより移民による犯行ではないのかと憶測を撒き散らすばかりである。
テレビを消し、椅子から立ち上がる人物がいる。
彼女はペンタグラムメンバーからレベッカと呼ばれるマッド・サイエンティストなのだ。
「
事務所のような部屋から出て、暗い通路を進む。
行き着いた先は無人の冷凍豚枝肉冷蔵室。
巨大な冷蔵室にはおびただしい数のミートフックが天井に並ぶ。
そこに吊り下げられている肉とは魔法少女、魔女、使い魔の死体なのだ。
上半身は大きく切り開かれており、内蔵は取り出されている。
まるで悪魔の屠殺場の如き禍々しい光景であろう。
「
悪魔の力は想像以上に強く、ゴーレムを数で行使したが悪魔相手では役に立っていない。
パワーだけで足りないならスピードも必要だろう。
レシピを考えながら肉を一つ一つ選んでいく。
後ろに控えていたゴーレムを操り、フックから下ろしていく。
台車の上に肉が置かれていき、ゴーレム製造を行う部屋へと使い魔と共に向かう。
ついた場所は手術室を思わせる部屋。
「
血で汚れきった白タイルの床には大きな魔法陣も見える。
横の棚にはホルマリン漬けの内蔵やアリスから提供を受けた兵器の山。
「
魔法少女の肉、魔女の肉、そして内側の臓器が並べられ手術台の上にある照明が光る。
「
医療の道に進んで良かったと自賛しながら蛇杖を振りかざす。
血の魔法陣が赤く輝き、手術室を狂気の光りが包み込む。
彼女は幼くして医療の道に進んだ天才だが、医療を狂気の道具として使う狂人に変化する。
魔法少女になってからはタガが外れたように生き物を玩具にして遊ぶ女。
ただ世界を玩具にして楽しみたい。
それだけを求めてペンタグラムに彼女は加わったのであった。
♦
季節は11月を迎える夜。
ペンタグラムの手がかりを掴んだ悪魔が訪れた地は聖探偵事務所が近くにある倉庫街。
「うちの事務所の近くに潜んでやがったか…灯台下暗しとはよく言ったもんだ」
彼の目の前には潰れた冷凍食品工場の建物が見える。
「そういや、近所の奴らが言ってたな。得体のしれない声が聞こえてくるって」
悪魔の職場近くに現れる東京の魔法少女はいない事が裏目に出たようだ。
「先入観ってのは厄介なもんだ…。だが、ようやく掴んだ手がかり…無駄にはしない」
決意を胸に建物内へと進む。
工場玄関と隣接している社長室や総務室を調べ始める。
「人が暮らしている形跡があるな…。ここで間違いなさそうだ」
薄暗い廊下を歩き、工場の奥に進んでいく。
非常灯の明かりと悪魔の発光する入れ墨以外は光るものはない暗闇の中、何かに気づく。
「……なんだ?」
背後に視線を感じたが気配は直ぐに消えてしまう。
「…俺を誘い込む腹づもりか」
工場内に入り、辺りを見回す。
「酷い死肉の臭いだな。壁に赤黒く描いているのは…五芒星か」
室温の低い工場内を進み、血痕が続く産業用冷凍機が並ぶエリアに辿り着く。
「俺の歩く音とは違う靴音が聞こえる…。それにペンタグラムメンバーの魔力も感じる」
非常灯だけの暗い工場の中、静かに蠢き始めるフレッシュゴーレム達。
音から察するに前回のような巨人サイズではなさそうだ。
「グガ…ガッ…ガガ……」
暗闇から姿を現すのは異形の群れ。
「…今度はナチス親衛隊地味た連中だな?両腕はどこに忘れてきた?」
ミリタリーヘルメットやガスマスクで素顔を覆われたゴーレム達。
両腕は改造され、チェーンソーや電動丸ノコに改造されている。
「なるほど…ここはフランケンシュタインを作る工場だったわけか」
ゴーレム達の武器が恐ろしい音を立てながら回転し始める。
悪魔も左右の手から光剣を放出し、工場内を光で照らす。
「悪臭を撒き散らす死肉の群れ共…俺が墓場に送り返してやる」
こうして悪魔が行う死者の埋葬劇が幕を開けるのであった。
♦
「
通話を切り、溜息をつく人物とはチェンシーである。
「バレタノ?レベッカノバショ?」
「だから言ったのだ。死肉を集める目立つ行動をとる奴が街中に潜伏すれば目撃情報が出ると」
「ワタシイク。アクマ、ゲンワクマホウ、ツカエル」
「レベッカはゴーレムを作り、操る以外は戦闘技術を持たん。ゴーレムを屠られたらお終いだ」
「ナゼ、ソンナヨワイヤツ…サイファーサマ、コエカケタノ?」
「…あの女の死を冒涜する姿が気に入ったと言っていた」
「ショウジキ、ワタシアイツキライ。アリスヨリキライ…」
「それでも、決起が成就するまでは利用するさ…」
会話のやり取りを聞いていたルイーザが動く。
それに横でテレビゲームをプレイしているアリスにも不穏な気配が見える。
ヘッドフォンを片方ずらし、会話の内容を聞いていたその表情が不気味な笑みとなるのだ。
「
♦
チェーンソーを振り下ろすゴーレムが迫る中、悪魔も動く。
右手の光剣で切り上げて腕を跳ね落とし、反転して左の光剣で胴体を切り落とす。
回転の勢いを利用し、迫り来る相手に蹴り足を放つ。
「喧しい音を撒き散らすだけか?」
電動丸ノコを振り回すゴーレムの斬りつけに対して体勢を左右に流しながら避けていく。
相手の回し蹴りを左腕で止め、軸足の膝関節に蹴りを入れて破壊する。
膝をついたゴーレムの首を跳ね落とし、後ろに反転。
後方から迫るゴーレムに対して袈裟斬りで切り払う。
「愚鈍な動きだな」
左右から同時に迫るゴーレムがチェーンソーを振り回す。
体勢を回転させて低い姿勢のまま避け、チェーンソー同士がぶつかって火花が散る。
両手の光剣で二体の両足を切断。
倒れ込むゴーレムの上を片手側転して距離をとり、次々に現れるゴーレムと切り結び合う。
「次から次へときりがない」
囲まれて背中を獲られないように動く。
細い工場内の道を使い、直線で迎え撃てるよう立ち回るが新手が現れる。
「グガッ!!」
壁を突き破った次のゴーレム達が現れていく。
首から上が大きな試験管で繋ぎ合わされ、魔女の脳が培養液に浮かぶ。
両腕は肩口まで切断され、ドリルを繋ぎ合わされたゴーレムが襲いかかってくる。
「この工場はR指定だな」
回転ドリル突きに対して身を回転しながら避けると同時に飛び上がる。
飛び膝蹴りを放ち、砕かれた試験管から魔女の脳味噌が零れ落ちてしまう。
制御を失い痙攣しながら倒れ込む中、後方からドリルで突いてくるゴーレムが迫りくる。
体勢を反転しながら回避して振り向きざまのハイキックを試験管頭部に放つ。
蹴り技の回転を使って飛び上がり、後ろ回し蹴りで横のゴーレムの頭部も破壊。
「墓場に返してやる。この国のやり方でな」
倒れた敵は炎魔法によって火葬されていく。
工場の奥に進んで巨大な冷蔵用倉庫に続く扉前まで辿り着いた時、激しい音が鳴り響く。
「なんだ?プロペラの音…?」
後ろを振り返ると機械なのか生き物なのかも判断出来ないゴーレムの姿が屹立する。
「レシプロ飛行機のプロペラをエンジンごと上半身の代わりに繋いだのか?空を飛べるかもな」
暴音のプロペラが回転し、細切れにせんと迫りくる二体のゴーレムだったが無駄である。
「誰もいない場所なら…威力を弱めた魔法ぐらい俺は使える」
右掌をかざし、威力を弱めた破邪の光弾を連続で放つ。
エンジンもろとも貫かれた二体のゴーレムが爆発して無力化する。
「この程度の雑兵しか用意出来ないペンタグラムなら…仕事は早そうだ」
冷蔵用倉庫内に進む中、ここにペンタグラムメンバーの魔力が潜んでいる事は分かっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
商品を保管しておく棚が無数に並ぶ冷蔵用倉庫内を進む。
倉庫を進む悪魔に対して棚の上から笑い声が木霊する。
「
上に視線を向けるとペンタグラムの一人をようやく見つける。
「
(フランス語か何かか…?レベッカと自己紹介しているように聞こえるが…)
「
「ちょっと待てよ」
ウィザードコートからスマホを取り出し、翻訳サイトで日本語を打ち込む。
「意味は分かるか?」
翻訳サイトが映るスマホをレベッカに掲げ、彼女が画面を覗き込む。
「
語学はからっきしの彼に対して大笑いしながら微笑む。
「
レベッカはイギリスに留学していたこともあり、英語にも精通しているようだ。
「
蛇杖を掲げ、魔法陣を生み出す。
倉庫奥のシャッターが開き、中から現れた二体の甲冑ゴーレムの姿。
「ギリシャ神話のケンタウロスに似た姿だな…一体は大盾と槍の騎士、隣は…ミニガンかよ」
「
スピアとミニガンを悪魔に向けて構えるケンタウロスゴーレム達。
スマホを黒衣に仕舞った後、二体の敵を見据える。
(もう一人いる…この工場の上だな。どうやら幻惑魔法は使えそうにない)
ならば物理的に破壊すると両拳を鳴らしていく。
片手を上げ、指で手招きしながら『挑発』を行うその口元には不敵な笑みが浮かぶ
「マッドドクターが生み出した冒涜の塊は…俺が焼却処分してやるよ」
♦
銃身が回転し、秒間100発の射撃音が雷の轟音の如く鳴っていく。
回避しながら走るが棚には何も置かれていないので隙間を通り超えて銃弾は迫ってくる。
通りを抜けながら移動し続けるが前方からは二体目が迫っていく。
スピアの先端突きを飛び越え、光剣で斬りつけるが大盾で受け止められてしまう。
「チッ…魔力出力が弱くて切断しきれなかった」
そのまま走り去るスピア・ケンタウロスだが僅かな接触でも大盾は深々と抉られた跡が残る。
悪魔もミニガン射撃を走り抜けて回避し続けるが先に倒すべき獲物を見出すだろう。
「弾幕を張るゴーレムから片付ける!」
棚の上に飛び移り、ミニガン・ケンタウロスの元まで飛び越えていく。
ジグザグに跳躍しながら射撃を避け、距離を詰める。
飛びかかり、袈裟斬りに溶断する構えをとるが罠なのだ。
「くっ!?」
回り込んできたスピア・ケンタウロスが一気に突撃。
シールドバッシュを放ち、体重の軽い悪魔は跳ね飛ばされてしまう。
俯向けに倒れ込むがハンドスタンドしながら跳ね起きる。
ミニガンの追い撃ちを棚の隙間に滑り込んで避ける事が出来たようだ。
「ゴーレムにしては随分と連携がいいじゃねーか…」
棚の通りを超え、倉庫の端の通路を走り抜ける。
前方からはスピア・ケンタウロスが槍を構えて突撃体勢を行う中、悪魔も仕掛ける。
「カウボーイのマネごとでもしてみるか!」
鈍化した一瞬、悪魔は月面宙返りによって相手の頭上を舞う。
馬の胴体部分に座り込むように着地し、同時に首を締め上げていく。
両手が武器で塞がった相手が暴れ馬のように体を跳ね上げる中、一気に勝負をかける。
「ロデオの時間は終わりだ!」
悪魔の体が青白く光り、雷を全身から放つ。
雷の魔法である『ショックウェーブ』がスピア・ケンタウロスを焼き尽くしていく。
豪雷の直撃を全身で浴び続けた事で黒焦げとなって倒れ込む。
「あと一体だ!」
射撃を繰り返す相手も弾の残量が無くなっていく。
銃身がカラカラと音を立て、弾を撃ちつくしてしまったようだ。
「もう店仕舞いか?」
光剣を放出した悪魔が不敵な笑みを浮かべながら歩み寄ってくる。
「ガッ……グガ……ガァ!!」
ミニガンを大きく振りかぶり、鈍器のように叩きつけようとするが無駄な抵抗だろう。
「そろそろ墓場に戻る時間だ」
大きく跳躍して月面宙返りを行い、背後に飛び降りると同時に真っ二つに叩き斬る。
臓腑を撒き散らして倒れ込む相手を容赦なく炎魔法で焼き尽くした後、魔法少女に振り向く。
「さぁ、次はお前の番……あれ?」
周りを見回してみたがレベッカの姿は何処にも見当たらない。
魔力の気配を探ってみたらここから遠ざかっていくのが分かったようだ。
「…勝てないとみたら尻尾を巻いて逃げ出すか。だが、逃しはしない」
開いたシャッターから走り出ようとした時、うっかりしていた事に気が付いてしまう。
「あっ……不味いかも…」
ポケットの中に手を入れてスマホを取り出す。
「……やっぱりダメか」
雷で焼かれたスマホの無残な姿を見つめながら尚紀はガックリと項垂れたようだ。
「…小さな失敗を考えてる場合じゃなかった」
風を纏いながら駆け抜けて殺すべき魔法少女を追いかける。
悪魔と魔法少女のチェイスバトルが始まっていくのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
タクシーに乗り込み、新橋に向けて逃げ続けるのはレベッカの姿である。
アイラの転送魔法陣があれば簡単に逃げられたはずなのだが?
「オマエ、ナニシャベッテルノカワカラナイ。ワタシ、イカナイト」
「
無残にもアイラに置いてけぼりを食らったようだ。
「
(何やら外国語で恨み言みたいな言葉をブツブツと…美人な少女だが、恐ろしいな)
不安な顔をした運転手だったがルームミラーに映る彼女が慌てた素振りを始める。
勝鬨橋側面の半円鉄骨の上を見れば悪魔の姿が駆け抜けている。
猛スピードで走り登っていく彼の姿に戦慄した表情を浮かべた彼女は運転手に叫びだす。
「
「英語で捲し立てないで下さいよ!?法定速度を超えて運転したら飯の種が無くなる!」
危険な客だと判断した事で運転手は社内ボタンを押す。
行灯を赤く点滅させ、車両ランプにSOSサインを表示させたようだ。
そうこうしているうちにも悪魔はどんどん迫ってくる。
「
タクシーを無理やり停止させ、震えた手で財布を取り出してお札を渡す。
慌てていたのか3万円も渡してしまったようだ。
「お客さん!?払い過ぎですよ!」
運転手の静止を振り切り、東京新橋の街へと彼女は逃げていく。
「
悪魔を振り切るために人混みを選び、全力で走りながら逃げ続ける。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
通行人を掴んで引っ張り倒しながら障害物を作っていくが、悪魔は飛び越えていく。
「危ないだろ!って、うわわっ!!?」
起き上がる通行人の曲がった背中に手を置きながら側転して着地した悪魔は追撃を緩めない。
「テメェ!?どこ見て歩いて…おわっ!?」
彼女に文句を垂れる男の股下をスライディングで潜り抜け、距離を詰めていく。
このままでは追いつかれると分かる彼女であったが電車の音が聞こえてくる。
目の前には山手線の線路を走行していく電車の姿があったようだ。
一気に跳躍して電車の上に飛び移る。
「チッ!」
スピードが出過ぎた不安定な状態だが、無理やり左折しようと一気に加速。
体を傾け、左手のアイアンクロウで地面を削りながら掴み、加速を維持して無理やり曲がる。
「こんな時のために…他の魔法の応用も磨いておいて良かったな!」
悪魔の両足が雷光を放ち初めながら跳躍し、ビルの側面に張り付きながら駆け巡っていく。
電車で使われる電磁吸着ブレーキと原理は同じのようだ。
「間に合え!」
電車の最後部車両に向けて跳躍し、なんとか飛び移れる。
「お、おい……今の、見たか?」
「映画の撮影……?」
悪魔のアクションスタントを見届けた人々は開いた口が塞がらない表情で見送ってくれるのだ。
山手線の電車が浜松駅に向かい走り続ける屋根の上では追い詰められた者が怯えて後退る。
「
「命乞いの日本語は覚えておくべきだったな。何を言ってるのか分からねーよ」
突き刺さる程の殺意を向けられるレベッカは涙目で死を覚悟していた時、何者かが現れる。
「何だ!?」
横のビルから電車の上に飛び移ってきたのは別の魔法少女の姿である。
「お前は……」
「
喜んでルイーザに走り寄るレベッカであったが、無表情な彼女は腕を持ち上げて拳を固める。
「ガベッ!!?」
レベッカの右側頭部にお見舞いされたのは右裏拳である。
電車の上から大きく弾き飛ばされたレベッカは道路に叩きつけられてしまったようだ。
「
「お前にとっては仲間じゃなかったってわけか…」
新たなペンタグラムメンバー相手に警戒する表情を浮かべていく。
(デカイ白人女だ…185センチは身長がありそうだな)
全身を防護服のように覆い、目元しか見えない姿は見る者に不気味さを与えるだろう。
その青い瞳は闘志によって燃え上がっているように見える。
「
「お前は?」
「
「ドイツ語か何かか?名前の部分以外はさっぱりだ」
「
左手に持たれた銀の鞘に収められたロングソードを悪魔に向けて構えてくる。
「
右手で柄を握り締め、引き抜きながら鞘を投げ捨てる。
「…それがお前の魔法か?」
左手で刃を下から上になぞっていくと刀身が光り輝き、悪魔の剣と同じ光熱を発していく。
右手で振るわれるロングソードが光剣と化し、刀身の長さはクレイモア大剣にも及ぶ。
「…どうやら派手なチャンバラがお望みのようだな?」
悪魔も右手から光剣を生み出す中、もう一人の気配にも意識を向ける。
(…電車内部にいやがるな。こいつらを俺の幻惑魔法から守るために…用心深いな)
アイラも転送魔法陣を用いて電車内部に乗り込んでいるようだ。
「死ぬ順番が変わっただけだ。ペンタグラムは一人残らず…俺が殺す」
睨み合う二人が今、弾かれたようにして前に踏み出すのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
先手として彼女が仕掛ける一撃は周囲に生み出す無数の魔力剣の射出攻撃。
前方から迫る剣の矢に対して光剣を振り回しながら切り払い、間合いまで跳躍する。
空中からの袈裟斬りを左切り上げで受け止め、光剣同士が激しい火花を散らす。
「俺の間合いだ!」
「
左肘を打ち込むが、剣の柄頭で打ち返される。
同時に袈裟斬りを放つのに対して悪魔も光剣で受け止めてくる。
逆袈裟、袈裟斬り唐竹割りと連続で攻めてくる彼女に対して悪魔も踏み込む。
左腕刀で相手の手首を制止させ、横腹にボディブローを狙うがバックステップ回避される。
「チッ!」
「
互いの左薙、右薙が火花を飛ばし、手首を返して放つ右薙が悪魔の頭を狙う。
それに対して悪魔は身を低くして回避を行うだろう。
低空姿勢から後ろ回し蹴りを狙うが、彼女は回転して避ける勢いを利用して逆袈裟斬りを放つ。
斬撃を受け止めた悪魔の眼前で光剣同士の火花が舞う。
「お前、我流じゃないな…?かつての世界で戦った剣術使いの悪魔共を思い出すぜ」
「
鍔迫合う中、悪魔がフックパンチを仕掛けるが彼女は後方に跳躍して一撃を避ける。
「
屋根の上で戦う光景の下では乗客達が異変に気付いた事で動揺してしまう。
「おい…上で誰かいるだろ?」
「足音が聞こえるし、屋根の上から火花が落ちてくるし…?」
「乗務員は何やってんだよ!」
そんな時、席に座りながら見物するアイラの右手が持ち上がっていく。
「サワガレルト、メンドウ」
彼女の洗脳魔法が発動し、11両編成の車両全体を念波が包み込む。
乗っている人々の顔から生気が無くなり、声も出さなくなってしまう。
電車は減速する事なく浜松駅を通り超え、慌てふためく駅員達に横目を向ける。
「サワギ、オオキクナルマエニ、カタズケテ」
アイラの上では洗脳魔法を防いだ悪魔の姿がいるようだ。
「今の感触…洗脳魔法を使いやがったか。イヨマンテを飲み込んでおいて正解だったよ…」
電車の速度が上がりながら次の駅に向けかって突き進む中、剣士同士の戦いは激しさを増す。
「
魔法剣となったロングソードを屋根に突き立てる。
周囲に青白く光る魔法陣が展開し、陣から発せられる青い粒子が彼女を包み、肉体を強化する。
魔法剣を抜いて片手で剣を振り下ろす彼女の気迫が増す中、戦いの苛烈さを感じ取るだろう。
「…ここからだな、本当の戦いは」
互いが一気に踏み込むのだが悪魔は目の前の魔法少女の動きに対して驚愕する。
(瞬発力が上がっているだと!?)
互いの斬撃がぶつかり、弾かれた魔法剣を右に返しながら袈裟斬りで振り抜く。
光剣で受け止めた悪魔の体が後方にスリップしながら弾き出されてしまうようだ。
「力まで増している…お前の固有魔法は俺達悪魔が使う強化魔法か!?」
悪魔が攻め込み、斬撃の応酬の中で右拳が彼女に決まる。
「
目を見開きながら微動だにしないところから防御力まで上がっているのが伝わるはず。
「タルカジャ・ラクカジャ・スクカジャを一気にかけれるのかよ…俺達でも真似出来ないぜ…」
魔法少女の固有魔法は種類によっては悪魔の魔法を上回ってくるものなのだと理解する。
「
剣の柄頭で相手の
追い撃ちの逆袈裟を放ち、受け止めた相手の顔に柄頭の一撃を加える。
後退する悪魔の体に踏み込み蹴りを放つ。
「ぐふっ!!」
吹っ飛ぶ悪魔に跳躍し、空中で左薙を仕掛ける。
相手が左薙を光剣で受け止めると反転した飛び蹴りをさらに打ち込んでくる。
「ガハッ!!」
立て続けの攻撃によって悪魔の体は電車の後方車両にまで蹴り飛ばされたようだ。
「くそっ……はっ!?」
俯きに倒れた悪魔の頭上から降り注ぐのは魔力剣の雨。
起き上がった彼が体勢を捻じりながら片手をつくバク転を繰り返す。
魔力剣は電車の屋根を突き破り、下の車両にいる人々の命を奪っていく。
(俺も遠距離戦を仕掛けたいが…周りに民家がある以上は…使えない!)
バク転を終えて立ち上がる悪魔が怒りの炎を宿しながら吠えてくる。
「貴様ら…人間の命を何だと思ってやがる!!」
「…
魔法剣を頭上に掲げるルイーザは一気に攻撃を仕掛けようとしていく。
夜空に次々と魔力剣が生み出されるのだが、尋常ではない数である。
魔法剣を垂直に伸ばすように構えると無数の魔力剣が雨の如く悪魔に降り注ぐ。
「くっ!!」
剣の雨に向かって走り、当たる角度の魔力剣だけを斬り落としながら接敵していく。
魔力剣が屋根を貫いていき、次々と残りの人間達も死んでいくだろう。
アイラは魔法の防御障壁を張り、見境無い攻撃を凌いでいる。
<ルイーザ…ワタシモイルノ、ワスレナイデ>
<
屋根に剣を刺し、刃で斬り裂きながら火花を散らせるルイーザも悪魔に駆け寄る。
互いの剣が激しく交差し、眩い火の粉を飛ばしていく。
光剣を跳ね上げて逆袈裟、それを受け止めた光剣を下に叩き落とし、回転連続斬りを放つ。
悪魔は堪らず後方に大きく跳躍して彼女から距離をとる。
「
追撃の跳躍斬りを行う彼女の斬撃を受け止め、火花を散らして鍔迫合う。
「
「日本語喋りやがれ!」
「
鍔迫り合い状態から互いに頭突きを放ち、互いに仰け反りながらもさらにぶつける。
彼女の三角帽子が脱げ落ちて風で飛んでいく。
素顔の一部を晒す彼女の額から血が滲み、美しいブロンドヘアーが揺れる。
「
「貴様は死んで黙るがいい!!」
彼の左肘打ちを右肘で弾き、続く袈裟斬りを受け止めながら刃を滑らせる。
鍔で刃を止めながら引き、魔法剣の刃を左頬に滑り込ませて切り裂く。
流れる斬撃のぶつかり合いの中、彼女が冷たい一言を呟いてくる。
「
――
「うっ!?」
言葉が通じないはずだが、その言葉は心の闇の中にまで届いてくる。
「
――
♦
上野東京ラインを南に向けて電車が進んでくる中、遠くのビルの屋上にはアリスがいる。
彼女の横には動画撮影用機材が並び、ガムを噛みながら軍用双眼鏡で覗き込んでくる。
「
上野東京ライン線路上には無数のC4爆弾の影。
左手のリモコン爆弾スイッチを今か今かとアリスは押したがっている。
先頭車両が近づいた瞬間、彼女はボタンをついに押すだろう。
線路が一気に起爆し、先頭車両が爆発で跳ね上げられていく。
車両連結部分も千切れていき、後方に向かって大きく宙を舞う。
「
右手でファックサインを作りながら人々の死を侮辱するアリスの顔は邪悪そのもの。
千切れた先頭車両の二両目、三両目も次々と横出しになっていく。
「チッ!!」
爆発の衝撃が悪魔とルイーザを襲う中、互いに膝をついて持ちこたえたが事態は急を要する。
「あれは……まさか!?」
空を見上げれば回転しながら先頭車両が落ちてくる。
「くそぉぉぉぉーーーーッッ!!!」
車両内部の人間達がどうなるかは分からないが、それでも見殺しには出来ない。
両腕を頭上に向ける悪魔に対して先頭車両が彼に迫る。
「くっ!!」
先頭車両を受け止めた事で悪魔の足元の屋根が一気に沈む。
悲鳴は聞こえないが、恐らく車両内部は血みどろの光景が広がっているだろう。
お人好し悪魔の行動に対してルイーザは隙を見逃さない。
「…
一気に踏み込み、剣の先端が悪魔の腹部を貫く。
「ガハッ…!!!」
大きく吐血した血が彼女の顔にかかる。
激痛よりも大きい憤怒の感情が悪魔を支配していき、悪魔の金色の目が真紅に染まる。
噛み締める歯の隙間からは吐息と共に獄炎が噴き上がり、一気に放つのだ。
「グッ……ガァァァァーーーッ!!!」
悪魔の口から放たれるのは竜の業火の如き『ファイアブレス』の一撃。
剣を引き抜くと同時に跳躍し、後方に大きく宙返りを行いながらブレス攻撃を回避する。
「ガッ…グッ……くそっ!」
持ち上げた先頭車両を隣の地上に下ろした後、悪魔は片膝をついてしまう。
腹部から溢れる大量の出血を手で抑え込み、真紅の瞳で睨みつけてくる。
ルイーザの横にはいつの間にかアイラの姿が立っているようだ。
「アリス、ムチャシスギ。アタマブツケタヨ」
「
「サスガニメダチスギルシ、キョウハ、カエロウネ」
後ろに転送魔法陣を生み出し、アイラは先に入って消えていく。
「
剣を振って血払いをするルイーザは右手を口元に伸ばしていく
無慈悲な刃から生き残れた強敵を認めた事で口を覆っていた襟ボタンを外す。
素顔を見せた彼女の顔は冷酷非情な人間とは思えない美しい白人少女のようだ。
「
指先を口に当ててキスをし、空に向けて指を開くハンドサインを見せてくる。
好敵手から踵を返したルイーザの姿が転送魔法陣へと消えていってしまう。
「ハァ…ハァ…俺は…誰かを守ろうとすればする程に…誰も守れない…」
左手から魔石を出現させた悪魔は口の中に放り込み、回復処置を施す。
切断された内蔵の回復も待たずして、人目につく前に電車から飛び降りる彼も闇の中に消える。
「許さない…殺す…殺す…殺す…殺してやる…っ!!!」
その両目は憤怒の瞳となり、その吐息は獲物の命を求める。
その感情は怒りに支配されていき、これからの戦いは怒りの感情が足かせとなっていくだろう。
しかし今の人修羅はそれを考える余裕すら無かったのであった。
読んで頂き、有難うございます。