人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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289話 悪者なりに社会を救う

吸血鬼悪魔に襲われるももことみたまは妨害を乗り越えてマンションの屋上に立つ。

 

待ち構えていた三体のヴァンパイア達が高笑いを上げながら挑発してくるようだ。

 

「逃げずに来たようだな?正義を気取ったって、テメェも悪魔だ。悪魔の血がたぎるんだろ?」

 

「今夜は血の雨が降り注ぐお祭り騒ぎなんだ。会場を盛り上げたくてたまらないんだろぉ?」

 

「黙れ!アタシの中に宿ったクルースニクは…たとえ悪魔であっても戦いを好む人じゃない!」

 

「なら何を目的にして東京まで来たっていうんだ?平和ボケしながら観光中だったのか?」

 

「私達の目的は仲間を連れ戻すためよ。そして東京で暴れ回る悪魔を出来る限り倒すことなの」

 

「つまり、お前達のような悪魔を出来る限り仕留めにきたってわけさ。覚悟は出来てるよな?」

 

両手をポキポキ鳴らすももこが腰を落とし、足を半歩開いて拳法の構えを行う。

 

格下の吸血鬼ならば武器を使うまでもないという挑発的態度を見た吸血鬼達が激怒してくる。

 

「舐め腐りやがって…俺達だって強いんだ!!クドラクを倒せたからって図に乗るなよぉ!!」

 

額に血管が浮き上がる程にまで激怒した吸血鬼達が手下をけしかけてくる。

 

「みたま!上空の連中は任せた!!」

 

「了解よ!ももこは下の連中をお願いね!」

 

迫りくるストリゴイイとストリゲスの群れに対してももことみたまはチームワークを示す。

 

「くたばれクルースニクーーッッ!!」

 

高速で突進してくるストリゴイイに対し、ももこは格闘戦を仕掛けていく。

 

片手を地につける低空後ろ回し蹴りを放ち、一体を蹴り飛ばすと同時に横の敵を同時に弾く。

 

体勢を戻したももこに対して引っかき攻撃を狙う相手の一撃を避けていく。

 

振り上げた腕を掴んだももこが腕を逆に回しこみながら関節を決め、太腿の杭の一本を抜く。

 

「グギャァァァーーッッ!!?」

 

関節を決められながら後ろに回り込まれたストリゴイイは背中から杭を突き刺されてしまう。

 

心臓を刺されて倒れ込んだストリゴイイは痙攣しながら体が砕け散る末路となるのだ。

 

「フフッ♪喧嘩が強くなったももこも素敵よね。私だって負けてられないわ!」

 

宙に浮かべた死神の刃を右手で操るみたまは漆黒のドレス姿で舞いながら刃を振り回す。

 

社交ダンスを踊る女性のように水平に伸ばした腕の延長となる死神の刃が敵を切り裂くのだ。

 

「アギャァァァァァーーッッ!!?」

 

みたまが放つ『スクラッチダンス』の斬撃が彼女の周囲を高速回転しながら敵を切り裂く。

 

刃によってストリゲスの群れは斬り殺されていき、その魂はみたまのランタンに吸われていく。

 

魂を操る調整屋として生きた者であるが、今の彼女は魂を貪りながら踊る死神のようだ。

 

「どう、ももこ?弱かった頃の私と強くなった今の私、どっちが好き?」

 

「どっちだって頼りにしてるさ!」

 

軽口を叩きながら仕留められていく部下達の姿を見せられる吸血鬼達も焦りを浮かべてしまう。

 

「コイツ…マジで強いじゃねーか!?やっぱり本物のヴァンパイアハンターなんだよ……」

 

「ビ…ビビってんじゃねぇ!!俺達だってクドラクから力を与えられた吸血鬼なんだぞ!」

 

「だけど血が濃いわけじゃねぇ…クドラクが認めて本当の血の力を与えたのは別の女だ…」

 

「この腰抜け共が!!俺が行って本当の吸血鬼の力を見せてやる!!」

 

体が弾けて無数の蝙蝠となった一体がももこの元へと迫ってくる。

 

「死ねやぁぁぁぁーーッッ!!!」

 

背後で実体化した吸血鬼がマヒひっかきを狙ってくるが、胸のベルトに備わった杭を抜く。

 

上半身を右に低めながらひっかき攻撃を避けた彼女が後ろに振り向きながら杭を差し込む。

 

「ゴハァ!!?」

 

胸骨の隙間を縫うようにして杭を心臓に刺された吸血鬼が倒れ込みながら藻掻き苦しむ。

 

体が砕けていくヴァンパイアが上を見上げれば恐ろしい一撃が迫ってくるのだ。

 

「か……勘弁してくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

右手に持たれた巨大な十字架の刃が倒れ込んだ吸血鬼の体を両断する。

 

燃え上がって絶命するヴァンパイアがMAGの光となりながら消え去るのだ。

 

「「ヒ……ヒィィィィーーーーッッ!!!」」

 

弱者しか相手に出来ない腰抜け吸血鬼達は戦意を喪失したのか夜空に向かって逃げようとする。

 

しかし上空には死の円環が描かれており、逃げようとする吸血鬼達に死者の魂が群がっていく。

 

「私達に戦いを挑んだんですもの。せっかくなんだし、貴方達も死と踊っていきなさい」

 

死の悪霊となったみたまが上空に目掛けてランタンを投げ捨てる。

 

燃え上る程の灯りを生み出すランタンに目掛けて死者の魂が集結していき、極大の爆発を生む。

 

<<グギャァァァーーッッ!!?>>

 

ストリゲスの魂を用いて放つ葬々魂吸演舞(ダンス・マカブル)が決まったことで残りの二体も上空で消滅するのだ。

 

空から落ちてきたランタンを左手で受け止めるみたまが笑顔を浮かべながらももこに振り向く。

 

しかし彼女は思うところがあるのか顔を俯けたままであった。

 

「吸血鬼はいくらでも数を増やせる…こいつらを倒したって…終わりはないんだよな……」

 

倒れて砕け散った吸血鬼悪魔達も元は東京の人々であり、罪のない人間として生きた者達。

 

この吸血鬼達が未来の家族や友達の姿となって襲い掛かってくるかもしれない恐怖があるのだ。

 

震えている彼女の元まで来たみたまが肩に手を置きながらももこを元気づけてくれる。

 

「たとえ人間のように悪知恵が働く悪魔が相手でも貴女は独りじゃないわ。私達がついている」

 

「みたま……」

 

「レナちゃんもかえでちゃんも手の届かない部分をサポート出来るわ。私達はチームなのよ」

 

「そうだね……アタシはクルースニクさんのように独りぼっちじゃないんだね……」

 

「集団から遠ざからないで、ももこ。体が一つしかないからこそ集団が貴女を支えるのよ」

 

「尚紀さんも言ってたね…高度に機能した集団の長所は足りない部分を補い合えることだって」

 

みたまに元気づけられたももこが顔を上げて笑顔を向けてくれた時、十七夜の魔力を感じ取る。

 

「みたま……直ぐ近くにいるみたいだ」

 

「そうみたいね……方角から見て防衛省の襲撃に十七夜は参加していたみたいよ」

 

「それに何だ?他にも大勢の魔力を感じる…タルトさんやリズさんと同じ魔力タイプだけど…」

 

「だとすれば…造魔達の指揮を十七夜が執っていると考えるべきね……」

 

頷き合った2人がマンションの屋上から跳躍しながら防衛省の敷地内を目指す。

 

十七夜と再会出来る喜びよりも不安の方が大きいのはみたまであり、胸の赤い薔薇を抑え込む。

 

心臓の鼓動には迷いが宿っており、説得出来なかった場合の結末の怖さで高鳴っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「…八雲や十咎の魔力と似ているが違う。まさか…彼女達まで悪魔になったというのか…?」

 

防衛省の屋上に赤旗を打ち付けて制圧を示す十七夜であったが旧友達の魔力を感じ取る。

 

それに永田町の方からも雪野かなえ達の魔力が近づいており、どちらも防衛省を目指してくる。

 

「八雲…きっと自分を止めるために東京に来たのだな。それでも自分は…信念を曲げたくない」

 

防衛省は完全に制圧出来たことを十七夜に報告に来た造魔兵に振り向いて命令を下す。

 

その命令内容は悪魔の襲撃を迎え撃てという内容なのだ。

 

「自分は平等を成し遂げる道を信じたい…魔法少女の頃から変わらず…自分は平等の戦士だ」

 

格差こそが世界に紛争をもたらし、人々に終わりのない争いを生み出して金持ちは肥え太る。

 

そう信じている十七夜は神浜東西差別を憎んだ頃と変わらず平等を叫ぶ戦士となるのだ。

 

「来るがいい…旧友達よ。自分は革命精神を信じて戦う…自由と平等と博愛を守るために」

 

啓明結社と共産党が掲げる他国の侵略概念である共和国精神を信じる彼女は止まらないだろう。

 

そんな彼女に視線を向けているユダは腕時計を確認している。

 

(もう直ぐヘリが来る…我々を回収し終えた時、真に世界変革をもたらす存在が東京に現れる)

 

庁舎A棟のヘリポートで十七夜の末路を見届ける気になったユダは腕を組みながら地上を見る。

 

地上では既に戦闘が始まっており、ももことみたまを相手に銃撃戦が展開されているのだ。

 

「くそっ!!数が多過ぎる!!」

 

「このままじゃ包囲されて殲滅されてしまうわ!」

 

塀を飛び越えて大本営地下壕跡がある林の中を進んでいたら出くわしたのは造魔部隊。

 

銀の剣を生み出したももこは高速斬撃を用いて銃撃を捌き、みたまは大鎌を回転させて弾く。

 

中央棟の前にある儀式広場で陣を張った迎撃部隊が集中砲火を浴びせてくるのだ。

 

「不味い!?」

 

銃撃の猛火を捌くだけで精一杯なのに空からは攻撃ヘリまで現れる。

 

二機の攻撃ヘリが空対地ミサイルを発射しようとした時、突然の強風が吹き荒れる。

 

「なんだこの強風は!?制御が効かない!!」

 

ホバリングしていた横から強風を浴びたことで制御が効かなくなったヘリが横のヘリに激突。

 

ローターが接触したことで砕け散り、二機が地上に落下して迎撃部隊を圧し潰す。

 

「ももこ!みたま!待たせてごめん!!」

 

現れたのはかなえ達であり、メルの風魔法のお陰で窮地を脱することが出来たようだ。

 

「ナイスタイミングだよ、かなえさんにメル!」

 

「観鳥さんだってちゃんといるんですけど?」

 

後ろから声を掛けられてビックリした2人が後ろを見れば笑顔を浮かべる令がいる。

 

「革命部隊は観鳥さん達に任せていいよ。ももこさん達は十七夜さんをお願い出来る?」

 

「それは構わないけど…大丈夫なの?」

 

「任せてくれていい。観鳥さん達も悪魔になったんだ…ももこさん達に後れは取らないよ」

 

「彼女達を信じましょう、ももこ。私達は彼女達の期待に応えなければならないわ」

 

「そうだね…絶対に十七夜さんを説得してみせる。十七夜さんがいるべきなのはここじゃない」

 

覚悟を決めた2人が駆け抜けていき、見送る3人が武器を構える。

 

儀式広場の元へとバギー部隊や他の庁舎を制圧しにいった造魔部隊まで攻め込んでくるのだ。

 

ももことみたまを信じた3人は彼女達を守る盾として戦場を駆けて行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「自分に討たれる覚悟で来たと判断していいのか……十咎、八雲?」

 

庁舎A棟に入れる入口を覆う屋根の上に立つのは常闇の騎士となった夜魔の姿。

 

入口の前に立つのは夜を狩る者であり、隣には贖罪の道を生きる常闇の淑女。

 

鋭い視線を向けてくる彼女に対して言葉が詰まるももこであったが、隣の者が叫んでくる。

 

「十七夜!!貴女に何があってこんなバカなマネをしたのかは問わないわ!帰ってきて!!」

 

「八雲…自分のためにしてくれた献身は聞かされている。その件については感謝している」

 

「神浜に帰りましょう…たとえ吸血鬼になったって…貴女を差別する魔法少女はいないわ!」

 

「自分もな…吸血鬼にされて間もない頃は帰りたいと思った。それでも自分には目的が出来た」

 

「それは……暴力革命を用いて世界に平等を築き上げるということなの?」

 

「その通り…人の命を握り潰し、その血を啜るおぞましい吸血鬼であっても必要としてくれた」

 

「貴女は騙されているだけよ!その力を暴力のためだけに使わせる口車に乗らないで!」

 

「八雲…いくら君でもその言葉は許さんぞ。フリーメイソンと共産党の理念こそが世界を救う」

 

「目を覚ましなさい!!こんな暴力行為を行って平等を求めても……私と同じ末路になるわ!」

 

目に涙を浮かべながら語ってくれるのは神浜の破壊を求めてしまった時の自分の気持ち。

 

その時の気持ちこそ差別を憎んだ十七夜と同じ気持ちであったが、神浜が燃えた時に後悔する。

 

虐げられて苦しむ人々の姿に西も東もなく、それに気がつけなかった自分は愚かだったと叫ぶ。

 

「私は殺戮者よ!奇跡を悪用して神浜の人々に死を願った死神よ!貴女もそうなりたいの!?」

 

「自分の気持ちは伝えただろ?格差に支配された歴史の破壊こそが自分と君の望みだったはず」

 

「そうよ…かつての私も同じ気持ちだった。だけどね…神浜を焼いたからこそ後悔したのよ!」

 

「自分も東京を焼いたが後悔などしていない。社会の変革とは常に犠牲が伴う…歴史通りにな」

 

「十七夜……」

 

「八雲…自分達は殺戮者であり罪人だ。多くの人達から呪われるべき存在…常闇を歩む同士だ」

 

漆黒の姿に変わり果てた者同士が己の罪と向き合うが、贖罪の方向性がまるで違う。

 

みたまは自分の罪と向かい合い、後悔しながらも罪を受け入れて償いの道に進もうとしている。

 

十七夜も自分の罪と向かい合い、後悔の果てに世界を平等にする償いを求めようとしている。

 

「八雲も八雲なりに罪を認めて贖罪の人生を生きているように…自分も贖罪の人生を生きるさ」

 

中央棟の入口の屋根から飛び降りた十七夜は左手に漆黒の槍を生み出して構えてくる。

 

「引くならば追わない…だが攻めてくるならば迎え撃つ。頼む八雲…自分に君を殺させるな…」

 

同じ志を持ち、同じ境遇に苦しんだ親友と殺し合うのが辛くて堪らない顔を十七夜は浮かべる。

 

それはみたまも同じであり、十七夜と戦う構えを行うことすら出来ていない。

 

だからこそみたまの前に立ったのは戦えない親友のために決意を示す者なのだ。

 

「かなえさんから聞かされている…十七夜さんが贖罪を求めるのは東の魔法少女のためだって」

 

「その通り…東の長として彼女達の気持ちと向かい合えなかったから…彼女達を犠牲にした…」

 

「差別に苦しんだ末に革命を望んでも…本当の平等なんて得られないことぐらい分かるだろ!」

 

ももこが叫ぶ内容とは神浜ヘイト条例であり、東側の暴力革命を憎んだ西側住民が求めた事件。

 

破壊の果てに西と東が平等になるなんて幻想であり、暴力は憎しみと報復しかもたらさない。

 

「フランス革命だって報復の連鎖で地獄になったんだろ!?暴力が救いなんておかしいよ!」

 

「それでも必要なのだ!腐り切ったブルジョア共は低所得者のための政策など絶対に望まん!」

 

「だから暴力で解決するのか!?神浜テロの光景を見ながら後悔したのは聞いてるんだぞ!」

 

「水波君や秋野君にも語った通り…たとえロベスピエールと同じ末路になっても自分は進む!」

 

「いい加減にしろ!!お前は平等という脆弱な理想を押し通すためなら殺戮の限りを尽くす!」

 

「その通り!!自分もロベスピエール派と同じく恐怖政治を行う!!平等世界を築くために!」

 

「それは平等なんかじゃない!!虐められた連中が仕返しを望みたいだけの差別心なんだ!!」

 

銀の剣を生み出して抜刀したももこが剣を構える。

 

迎え撃つようにして左右に槍を振り回した後に先端を振りかざす常闇の騎士は迎え撃つだろう。

 

「所詮自分は悪魔だ…人々から疎まれる悪者だ。それでもな…()()()()()()()()()()()()!!」

 

「だったら尚紀さんと一緒になって変えればいい!そのためにも…倒してでも連れて帰る!!」

 

闇の吸血鬼を継ぐ少女と光のヴァンパイアハンターを継ぐ少女が互いに踏み込む。

 

この戦いこそクドラクとクルースニクとの因縁の再戦であり、ももこと十七夜の信念の戦い。

 

後ろで佇むみたまは立ち尽くし、そんな彼女に見守られる2人の戦いは激しさを増していった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「クドラクの力を手に入れた十七夜君を相手にあそこまで戦えるか……」

 

地上の戦いを見物しているのはヘリポートで佇むユダであり、戦況を観察している。

 

向こう側で戦っている造魔兵達の戦況も芳しくなく、支援が必要だと判断した彼が笛を抜く。

 

悪魔が内包された笛を吹き鳴らす姿は蛇使い同然であり、彼が召喚した悪魔もまた蛇なのだ。

 

「十七夜君の戦いを邪魔する者達を排除してくれ」

 

「ソイツぁ、粋な命令だ!男同士のタイマンを邪魔する奴ぁ……あいつら女じゃねーかぁ!?」

 

「男も女も関係ない。互いの信念を懸けた戦いに水を差す無粋な連中を始末しろ」

 

ユダの背後に現れたのはナーガであり、人間の上半身と蛇の下半身をもつ大男なのだ。

 

【ナーガラジャ】

 

インドの蛇神の王を表す通称であり、アナンタや仏教の八大竜王もこれに当たる存在である。

 

ナーガラジャの説話は中国へ仏教とともに伝わり、中国古来の竜伝承と習合している。

 

四海竜王など中国の竜王の観念にも影響を与えた概念存在であった。

 

「そんじゃ行ってくるぜ、サマナーさんよ!兵隊とドンパチしている女共を始末してやる!」

 

静香の母が使役したナーガをさらに大きくして王冠を頭部に纏う姿の蛇神がビルを駆け下りる。

 

「オラオラオラァ!!粋なタイマンの邪魔立てをする奴らは…オレの槍で串刺しだぁ!!」

 

「な、何なんですかぁ…この大きな蛇人間!?頭にシャンプーハットを被ってますよぉ!?」

 

「シャンプーハットじゃねぇぇぇぇ!!これは王冠だぁぁぁーーッッ!!!」

 

「変わった王冠を頭部に被る変な蛇悪魔だよね……」

 

「見た目は変でもコイツは強い!!あたしが迎え撃つ!!」

 

かなえとメルと令に襲い掛かる巨大な蛇人間が暴れ回る後ろでは激しい戦いが繰り広げられる。

 

「「ハァァァァァァーーーーッッ!!!」」

 

激しい斬撃の応酬の隙をつき、十七夜が右蹴りを放つ。

 

蹴り足で弾かれたももこに素早い突きを放ち続ける十七夜が吠える。

 

「格差の軋轢を貴様はどう解決する!?まさか売国奴を相手に話し合いで解決する気かぁ!?」

 

「それが真っ当な議会制民主主義だろうがぁ!!」

 

「貴様は何も知らないのだな…日本の国会などただの演劇!!国会議員など操り人形だぁ!!」

 

「アタシは政治に詳しいわけじゃない!それでも対話を選ぶことが民主主義だと信じたい!!」

 

「支配とは仕組みを作ること!仕組みを実行する者とそれを生み出した者がいる限り同じだ!」

 

十七夜が繰り出す高速突きによって杭を備えたベルトが切り裂かれていく。

 

それでも前に踏み込み、居合技として繰り出す刹那五月雨斬りを放つ。

 

しかし鞘から刃を抜ききるよりも早く蝙蝠化を行った十七夜が斬撃を潜り抜ける。

 

鞘に剣を収めたももこが振り向きざまにマハラギオンを放とうとするが魔法が撃てない。

 

「気が付かなかったようだな?自分の暗夜剣を浴び続ければ耐性がない限り魔封となるのだ」

 

「チッ!!」

 

魔封状態になったとしても物理的な剣技で押し込もうとするが十七夜は容赦してくれない。

 

跳躍から放つ袈裟斬りを飛んで避けた十七夜は無数の蝙蝠を纏いながら姿を変えていく。

 

変わった姿とは魔法戦を得意とする吸血鬼の姿であり、容赦なく雷魔法を放ち続ける。

 

赤黒いマハジオンガが放たれ続けるがももこは跳躍移動を繰り返しながら叫ぶのだ。

 

「一度滅べば全て平等になるだなんて破滅願望だ!そんなことをすれば誰もお前を許さない!」

 

「それで構わない!多くを殺戮した者として詫びる言葉は許されん!自分は滅んで構わん!!」

 

「そんなこと言うなよ!?お前の帰りを待ってくれている家族や友達だっているんだぞ!!」

 

「その人達も救われる時がくる!世界が平等になり、その恩恵を享受した時に分かるはずだ!」

 

「そんな問題じゃないよ!!十七夜さんが犠牲になったら…その人達が喜ぶはずがない!!」

 

「ももこの言う通りよ!貴女の壮月君はね…家族のために献身を尽くす貴女を誇りにしてる!」

 

「壮月が……そんなことを言ったのか……?」

 

「あの子は東のテロの悪行を償うためにボランティアをしてる!罪から逃げない強い男よ!!」

 

「壮月君のためにも家に帰ってくれよ…十七夜さん!家族の大切さが分からないのかぁ!!」

 

「そんなこと分かっている!愛しくてたまらない…そんな家族の未来のために戦うのだぁ!!」

 

漆黒のマントを広げて上昇していたが地上に下り立ち、無数の蝙蝠を用いて変化する。

 

再び常闇の騎士となった彼女は魔力を槍に込めながら叫ぶ。

 

「自分は平等に希望の光を感じられた…それを世界に与える啓明結社が間違うはずがない!!」

 

世界に平等をもたらし、博愛に包まれた世のためなら革マル派や中核派になることも厭わない。

 

その信念が込められた魔力の赤旗が生み出された時、マギア魔法が放たれるのだ。

 

「見ろ、貴様らの敵の姿を…滅びの果てに広がる平等のために……全てを平らげる!!」

 

赤黒く輝く旗槍を地面に突き立てた時、無数の槍が地面から突き上がっていく。

 

「うわぁぁぁぁぁーーーッッ!!?」

 

「キャァァァァーーーーッッ!!?」

 

『冥暗の断罪』の一撃によって全身を切り刻まれたももことみたまが倒れ込む。

 

串刺しこそ逃れられたようだが、回避が間に合わなければヴラド三世が生み出した景色となる。

 

その光景こそ串刺し公という逸話に相応しい、敵を串刺しにして見せしめにする地獄だった。

 

「自分は啓蒙の光を求める…君達と共に歩んだところで…希望の光を見出すことは出来ない」

 

立ち上がろうとするももこであるが、左足を魔力の槍で貫かれている。

 

「くそっ……避け切れなかったか。血が止まらない…動脈までやられちまったようだ…」

 

「十咎…もうこれ以上は追い打ちをかけん。自分は信念を譲らん…頼むから神浜に帰れ…」

 

「それは出来ない…アタシは十七夜さんを連れて帰る…神浜に帰るのは一緒がいいんだ!!」

 

「どうして分かってくれないんだ…!!自分は…自分は君達と殺し合いたくないのに…!!」

 

鉄仮面を掴んだまま投げ捨ててしまう彼女の目には感極まって大粒の涙が浮かんでいる。

 

かつては正義を信じて共に戦った魔法少女同士、殺し合えば合うほど心が切り裂かれるのだ。

 

「私達は私達の信じる救いに向かって進む…それが…神浜の破壊を求めた私達だったわね…」

 

声がした方に振り向けば立ち上がったみたまがいる。

 

彼女の右手に出現したのはマカーブルの大鎌であり、死をばら撒いた者として刃を操る。

 

「そうだな…八雲。自分は信じる救いを見出せている…今の君はどんな救いを見出せてる?」

 

「今の私が見出せた救いはね…簡単には手に入らない。きっと一生かかる程の道になるわ…」

 

「神浜の破壊を実行した者として…死ぬまで贖罪をしていく道なんだろうな…」

 

「私も貴女も簡単には許されない程の罪を犯している。それでもね…生きてこそ償えるわ」

 

「死の象徴である死神の刃を操る君が生きてこそか…似つかわしくないように聞こえるな」

 

「私は死神であり道化。たとえ人々から嘲笑われる人生であっても…誇りを持って生きたいわ」

 

大鎌を回転させながら操る親友に対して漆黒の槍の先端を向けてくる。

 

「自分だって誇りを持っている…君と共に贖罪が許されるのであれば…革命の後で望みたい」

 

激しい戦いを繰り広げる親友同士の戦いの横では頭に被ったベールを脱いだももこがいる。

 

貫かれた足に巻き付けて止血を施した彼女は銀の剣を杖代わりにして立ち上がるのだ。

 

「キャァ!!?」

 

親友を相手に死の力を解放出来ないみたまの力はあまりに弱く、十七夜の槍で追い詰められる。

 

「十七夜…お願いだから目を覚まして!貴女が愛する自由はね…何かに縋れば得られないの!」

 

「何だと…?どういう意味なんだ…?」

 

「国だろうが思想だろうが常識だろうが()()()()()()()()!自由はそれを考える思想なのよ!」

 

キャンプの夜の時に尚紀が与えた教示を理解してくれたみたまが叫んでくれる。

 

国の政策だろうが政治の左右の思想だろうが世間一般常識だろうが絶対に正しい保証はない。

 

有名な発明王のエジソンですら常識に囚われなかったからこそ世界に名を残す存在になれた者。

 

国、思想、民族、常識、あらゆる概念に縛られてそれが正しいと信じた時点で自由じゃない。

 

自由とは全てを疑いながら中身を調べ、取捨選択した上で調和を目指す考えなのだと語るのだ。

 

「貴女が求めるものの中には自由もあるはずよ!だからこそ自由に平等の中身を疑いなさい!」

 

「自由に平等の中身を疑う…?自由に博愛の中身を疑う…?」

 

「私達は東の者として平等を求めた…だからこそそれに縛られ過ぎて自由じゃなくなったの!」

 

「自分達が平等を求めて神浜の破壊を求めた気持ちは…()()()()()()()()()()()…?」

 

「自由は好き勝手になればいいわけじゃない!自由という概念の一人歩きが世界を破壊する!」

 

人は誰しも1人では生きていけない存在。

 

人との関係の中で生きていくためには、好き勝手な自由は慎むべき。

 

人との関係の中では調和を重んじるべき。

 

支配からの自由、抑圧からの自由は人権思想であるが同時に国や世界を燃やす思想にもなる。

 

それこそがフランス革命であり、今の十七夜達が繰り返している暴力革命の中身なのだ。

 

「父さん……母さん……壮月……オネェサマ……」

 

自分は間違っているのかもしれないという強い迷いに支配されてしまった十七夜。

 

震え抜く彼女であったが、それでも武器を手放すことはしないのだ。

 

「他人を重んじる調和精神も大切だと思う…だが…それは搾取のない平和な世で考えるべきだ」

 

社会の調和を重んじれば重んじるほど国や社会の奴隷となる。

 

法に縛られながら自由を破壊され、政官財がグルのブルジョア達から死ぬまで搾取されていく。

 

労働監督署は民間委託され、資本家に操られながら際限なくブラック企業が現れて搾取される。

 

アンシャン・レジームによって子供の未来を奪われた暗黒時代であっても秩序に縛られるのか?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「絶対の正解などない!!正解とは……自分達で作っていくものだぁぁぁーーッッ!!!」

 

尚紀と同じ答えとなった十七夜が雄叫びを上げながら魔力を爆発させていく。

 

その覚悟はまどかを救うためなら軍隊から盗みを働く社会悪となれたほむらの覚悟でもある。

 

そしてフランス革命の始まりであるバスティーユ襲撃で武器弾薬を強奪した市民の覚悟なのだ。

 

「十七夜……」

 

説得は通じないと悲嘆に暮れる表情を浮かべるみたまの肩をももこが掴んでくる。

 

「みたま…きっと十七夜さんの考えも正しい。だからこの戦いは正解と正解のぶつかり合いだ」

 

「ももこ……」

 

「お互いに自分が正しいと信じている以上は妥協しない。だからこそ…決着が必要なんだよ」

 

「私達は戦い合うしかないの…?」

 

「戦いを回避するには十七夜さんを尊重するしかない…だけどそれじゃあ…彼女は止まらない」

 

足を引きずりながらも十七夜の元へと歩んでいく。

 

赤黒い魔力を纏う十七夜の右目が炎のように揺らめきながら旗槍を構えてくる。

 

「十七夜さんは十七夜さんの正しさを持っていい…だけどアタシも譲れない…後は分かるね?」

 

「フフッ…雪野君とやり合った時と同じ高揚感を感じる。わからず屋が相手なのにな…」

 

「奇遇だね…アタシも同じ気持ちさ。だからね…憎しみ抜きの戦いがしたい」

 

「十咎……」

 

「どっちも正しいなら後はお互いに全力を出し切ろうよ。アタシの全てを…受け止めてね」

 

「いいだろう…その代わり…自分の全てを受け止めてもらうぞ……十咎ももこ」

 

吹っ切れた表情を浮かべる彼女達が武器を同時に構える。

 

もはやこの争いは白黒つくまで続くものになるだろう。

 

それでも十咎ももこは勝ったとしても十七夜の考えを否定する者にはならないはずだ。

 

悪者なりに社会を救いたいという願いを尊重するためにこそ、彼女は全力を出すのであった。

 




メガテンのナーガラジャの王冠がシャンプーハットに見えてしまうメガテニストは僕だけではないはず。
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